(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055438
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】外壁目地の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/684 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
E04B1/684 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162366
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】510310336
【氏名又は名称】渡辺 ▲勧▼
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 ▲勧▼
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001FA04
2E001FA52
2E001FA63
2E001GA58
2E001HB04
2E001HD03
2E001HD11
(57)【要約】
【課題】止水性が高く、建物の解体時の目地材の分離が容易で、資材の繰り返し使用が可能な外壁目地の施工方法を提供する。
【解決手段】目地材1として、隣り合う壁パネル54の隙間より幅が広く上下方向に延びるカバー部2と、隣り合う壁パネル54の隙間への差し込みが可能な差込部3とが連設されたものを用い、差込部3は、可撓性を有する二股状の差込片4の外側面に弾性体の緩衝材5が貼り着けられ、差込片4の内側に袋6が挟まれたものとし、差込部3を袋6を空として縮閉させておき、差込部3を隣り合う壁パネル54の隙間に差し込んで、カバー部2の両側の裏面をそれぞれ隣り合う壁パネル54の表面に沿わせ、袋6に上端から流動性を有する砂等の充填材7を流し込み、袋6の膨張に伴う側圧により差込片4を拡開させて、緩衝材5を壁パネル54の側端面に密着させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地材(1)として、隣り合う壁パネル(54)の隙間より幅が広く上下方向に延びるカバー部(2)と、前記隙間への差し込みが可能な差込部(3)とが連設されたものを用い、
前記目地材(1)の差込部(3)は、可撓性を有する二股状の差込片(4)の外側面に弾性体の緩衝材(5)が貼り着けられ、前記差込片(4)の内側に袋(6)が挟まれたものとし、
前記目地材(1)の差込部(3)を前記袋(6)を空として縮閉させておき、前記差込部(3)を前記隣り合う壁パネル(54)の隙間に差し込んで、前記カバー部(2)の両側の裏面をそれぞれ前記隣り合う壁パネル(54)の表面に沿わせ、前記袋(6)に上端から流動性を有する充填材(7)を流し込み、前記袋(6)の膨張に伴う側圧により前記差込片(4)を拡開させて、前記緩衝材(5)を前記壁パネル(54)の側端面に密着させる外壁目地の施工方法。
【請求項2】
前記目地材(1)は、前記カバー部(2)の最下部に蓋(9)を備えた取出口(8)が形成され、前記取出口(8)が前記袋(6)の穴に連通するものとし、
前記カバー部(2)から前記蓋(9)を取り外して前記取出口(8)を開口させると、前記袋(6)から前記充填材(7)が流出し、前記袋(6)が萎んで前記差込片(4)が縮閉し、前記目地材(1)を前記壁パネル(54)から分離できるようにしておくことを特徴とする請求項1に記載の外壁目地の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の外壁の隙間をシールする目地の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外壁目地の施工方法として、下記特許文献1に記載されたように、隣り合う壁パネルの隙間に、予め成型された目地材を圧入するものや、下記特許文献2に記載されたように、建物の骨組材にベースプレートを取り付け、隣り合う壁パネルの隙間を介して目地材をベースプレートにドリルビス等で結合するものが知られている。
【0003】
一方、本出願人は、下記特許文献3において、
図6に示すように、コンテナ型のユニット51を、柱52と梁53とを箱枠状に接合して、各面に壁パネル54を取り付けることにより製作し、複数個のユニット51を隣り合わせて積み重ね、ユニット51同士を連結して、建物を構築するユニット建築を提案している。
【0004】
このユニット建築においては、最上階から最下階のユニット51にかけて、角形鋼管の柱52に長軸のPC鋼棒又はPC鋼線から成る連結軸55を挿通し、建物の下方に連結軸55の先端部を係止した後、建物の上部で連結軸55に螺合したナット56を締め付けることにより、上下のユニット51を連結する。
【0005】
このようなユニット建築は、各階に隣り合わせて配置したユニット51を積み重ね、安定的に高層化でき、短い工期での建設が可能で、移設作業も簡単に行えることから、大規模災害からの復興拠点や長期間に及ぶ開発プロジェクト等における仮設建物の建築に適したものとなる。各階の隣り合うユニット51の間には隙間が生じるが、この隙間をシールする目地の処理方法に関しては、下記特許文献3では提示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5-42407号公報
【特許文献2】特開平6-2757235号公報
【特許文献3】特許第5707418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献3に記載されたようなユニット建築において、隣り合うユニット間に生じる隙間をシールする場合、特許文献1に記載されたように、予め成型された目地材を隙間に圧入するだけでは、目地材の経年劣化等に伴い止水性が損なわれるおそれがある。
【0008】
また、特許文献2に記載されたような施工方法によると、目地材を建物の骨組材側のベースプレートにドリルビス等で固定するので、建物を解体してユニットや目地材を再使用する場合に、建物からの目地材の分離が困難になるというも問題がある。
【0009】
そこで、この発明は、止水性が高く、建物の解体時の目地材の分離が容易で、資材の繰り返し使用が可能な外壁目地の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明に係る外壁目地の施工方法は、目地材として、隣り合う壁パネルの隙間より幅が広く上下方向に延びるカバー部と、前記隙間への差し込みが可能な差込部とが連設されたものを用い、
前記目地材の差込部は、可撓性を有する二股状の差込片の外側面に弾性体の緩衝材が貼り着けられ、前記差込片の内側に袋が挟まれたものとし、
前記目地材の差込部を前記袋を空として縮閉させておき、前記差込部を前記隣り合う壁パネルの隙間に差し込んで、前記カバー部の両側の裏面をそれぞれ前記隣り合う壁パネルの表面に沿わせ、前記袋に上端から流動性を有する充填材を流し込み、前記袋の膨張に伴う側圧により前記差込片を拡開させて、前記緩衝材を前記壁パネルの側端面に密着させるものとしたのである。
【0011】
また、前記目地材は、前記カバー部の最下部に蓋を備えた取出口が形成され、前記取出口が前記袋の穴に連通するものとし、
前記カバー部から前記蓋を取り外して前記取出口を開口させると、前記袋から前記充填材が流出し、前記袋が萎んで前記差込片が縮閉し、前記目地材を前記壁パネルから分離できるようにしたのである。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る外壁目地の施工方法によると、目地材の差込部の袋に上端から流動性を有する充填材を流し込み、袋の膨張に伴う側圧により拡開した差込片の外側の緩衝材を壁パネルの側端面に密着させて、目地からの雨水の浸入を阻止するので、高い止水性が得られ、建物の壁パネルや骨組材の傷みが抑制される。
【0013】
また、建物の解体時には、目地材から蓋を取り外して、袋から充填材を流出させるだけで、目地材を壁パネルから分離して、容易に撤去することができる。
【0014】
そして、目地材を壁パネルから分離しても、壁パネルや骨組材が傷むことがなく、目地材が傷むこともないので、ユニット建築に適用した場合、ユニットや目地材を繰り返して使用でき、仮設建物を必要とされる場所に迅速に移設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明に係る施工方法を適用した外壁目地の施工例を示す斜視図
【
図3】(a)~(c)同上の施工手順を示す概略平面図
【
図5】同上のカバー部と差込部を別体とした目地材の概略平面図
【
図6】特許文献3に記載のユニット建築を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
この実施形態は、
図6に示すようなユニット建築を施工する際、隣り合うユニット51の壁パネル54の隙間をシールする目地の処理方法に関するものである。
【0018】
図1に示すように、隣り合うユニット51の隅部の柱52は、基礎脚体50のベースプレート50aから立ち上がる柱脚50bに接続され、上下階のユニット51を連結する連結軸55が柱52に端板52aの穴を介して挿通されている。柱52の連結部は、ジョイント枠材52bで包囲されている。
【0019】
図2に示すように、壁パネル54は、壁仕上材54aの裏面に木毛版54bを積層したものとされ、柱52の中間部に渡された胴縁57に固定されている。なお、壁パネル54がCLT版(直交集成板)である場合には、胴縁57は不要である。
【0020】
この外壁目地の施工方法で使用する目地材1は、
図1及び
図2に示すように、隣り合う壁パネル54の隙間より幅が広く上下方向に延びる板状のカバー部2と、隣り合う壁パネル54の隙間への差し込みが可能な差込部3とが連設されたものとする。
【0021】
差込部3は、可撓性を有する二股状の差込片4の外側面に弾性体の緩衝材5が貼り着けられ、差込片4の内側に袋6が挟まれたものとする。
【0022】
カバー部2と差込片4とは、
図2に示す例では一体の部材としている。この部材は、アルミニウム板や鉄板、プラスチック、金属とプラスチックの複合素材等から形成されたものとし、耐火性の優れたものとすることが望ましい。
【0023】
緩衝材5は、壁パネル54の側端面に密着させて止水性を得るためのものであり、ウレタンフォームや硬質ゴムとする。
【0024】
袋6は、砂等の流動性を有する充填材7を流し込む細長いものであり、目の詰まった金網や不織布製のもの、ポリエチレン製のもの等とする。なお、袋6として、1本~数本の連続したホースを用いてもよい。
【0025】
充填材7は、差込部3の内圧を高めて目地の隙間をシールするものであり、その条件として、比重が大きく、袋6への詰替が容易で、経年により流動性が失われないものであることを要する。この条件を満たすものとして、乾燥した砂や、粒の小さい砂利、鉄粉、比重の大きな液体等が挙げられる。
【0026】
また、
図1及び
図4に示すように、カバー部2の最下部には、袋6の最下部に形成された穴に連通するように、充填材7を取り出すための取出口8が形成され、取出口8に着脱される蓋9を備えたものとする。取出口8は、施工に際し、蓋9により塞いでおく。
【0027】
上記のような目地材1を用いて、隣り合うユニット51の壁パネル54の隙間をシールするには、
図3(a)に示すように、目地材1の差込部3を袋6を空として縮閉させておき、その状態で、
図3(b)に示すように、差込部3を隣り合う壁パネル54の隙間に差し込み、カバー部2の両側の裏面をそれぞれ隣り合う壁パネル54の表面に沿わせる。
【0028】
その後、
図3(c)に示すように、袋6に上端から流動性を有する砂等の充填材7を流し込み、袋6の膨張に伴う側圧により二股状の差込片4を拡開させ、緩衝材5を壁パネル54の側端面に密着させる。
【0029】
このように、差込部3の拡開した差込片4の外側の緩衝材5を壁パネル54の側端面に密着させると、目地からの雨水の浸入が阻止されるので、高い止水性が得られ、建物の壁パネルや骨組材の傷みが抑制される。また、目地材1が壁パネル54にしっかりと固定され、経年により目地材1が壁パネル54から外れることもない。
【0030】
また、目地材1は、安価な資材で構成されるので、資材の調達コストが抑制され、目地の施工も容易であるので、作業に要するコストも低減される。
【0031】
一方、建物の解体時には、
図4に示すように、目地材1のカバー部2から蓋9を取り外して、取出口8を開口させると、袋6から充填材7が流出し、袋6が萎んで差込片4が縮閉するので、目地材1を壁パネル54から分離して、容易に撤去することができる。
【0032】
そして、目地材1を壁パネル54から分離しても、壁パネル54や骨組材が傷むことがなく、目地材1が傷むこともないので、ユニット建築に適用した場合、ユニット51や目地材1を繰り返して使用でき、仮設建物としてのユニット建築を必要とされる場所に迅速に移設することができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、目地材1として、カバー部2と差込部3の差込片4とが一体となったものを例示したが、
図5に示すように、目地材1は、カバー部2と差込部3の差込片4とを別体とし、二股状の差込片4のヒンジ部分に、カバー部2をビス10等により止着する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 目地材
2 カバー部
3 差込部
4 差込片
5 緩衝材
6 袋
7 充填材
8 取出口
9 蓋
10 ビス
50 基礎脚体
50a ベースプレート
50b 柱脚
51 ユニット
52 柱
52a 端板
52b ジョイント枠材
53 梁
54 壁パネル
54a 壁仕上材
54b 木毛版
55 連結軸
56 ナット
57 胴縁