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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055440
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】冷媒液注入及び封止方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20240411BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
F28D15/02 106F
H01L23/46 B
F28D15/02 106D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162369
(22)【出願日】2022-10-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】514306364
【氏名又は名称】大沢 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】大沢 健治
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136CC11
(57)【要約】
【課題】注入口における注入ノズルの解放から、封止部材の圧着に至るまでの間に、ヒートパイプの注入口からの冷媒液の排出の程度を桁違いに小さい状態とするか又は流出を防止する構成の提供。
【解決手段】冷媒液の流動を予定しているウイック、及び当該ウイックに隣接している蒸気流動部を、上板、下板、又は上板、中板、下板、及び周囲壁によって囲んでいるヒートパイプ1において、ヒートパイプ1が投入されたチャンバー2に対する真空脱気、ヒートパイプ1に対する冷媒液の注入、注入後の注入口11に対する封止部材5の圧着に至るステップを採用し、かつ前記注入と前記圧着の間に、チャンバー2内の気圧を、ヒートパイプ1内にて形成されている冷媒液の飽和蒸気圧と同一の気圧に調整するステップを採用することによって、前記課題を達成する冷媒液注入及び封止方法。
【選択図】図1(d)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定しているウイック、及び当該ウイックの隣接領域にて冷媒蒸気の流動を予定している蒸気流動部を、上板、下板、又は上板、中板、下板、及び周囲壁によって囲んでおり、かつ加熱された対象物の冷却に使用するヒートパイプにおいて、以下のステップを採用している冷媒液注入及び封止方法。
1 ヒートパイプのチャンバー内への投入。
2 真空ポンプによるチャンバーに対する真空脱気の開始及び継続。
3 冷媒液供給機と連通している注入器の先端に備えられている注入ノズルからのヒートパイプの注入口に対する冷媒液の注入及び注入完了段階における注入器に備えられている開閉弁の閉鎖。
4 チャンバーに対する空気又は窒素ガスの流入によって、チャンバー内の気圧を、ヒートパイプ内にて形成されている冷媒液の飽和蒸気圧と同一の気圧状態とする調整。
5 注入ノズルのヒートパイプの注入口からの解放。
6 チャンバー内におけるヒートパイプの封止部材搭載装置の位置への移動並びに1個の封止部材の注入口への配置。
7 ヒートパイプの加圧ロッドの位置への移動。
8 加圧ロッドの封止部材に対する加圧に基づく当該加圧部材の注入口への圧着。
9 加圧ロッドの封止部材からの解放及びヒートパイプのチャンバーからの脱出。
【請求項2】
ステップ7とステップ8の間に、以下のステップを採用していることを特徴とする請求項1記載の冷媒液注入及び封止方法。
加圧ロッドがステップ6によって配置された封止部材を上側からの接触によって留着した上で、ステップ4によって流入したチャンバーに対する空気又は窒素ガスの脱気によって、ステップ4の気圧状態とステップ2の真空脱気による気圧状態との中間の気圧状態に至る減圧によるステップ5の解放からステップ6への配置の間に、注入口内部付近に流入した空気又は窒素ガスの排出。
【請求項3】
減圧によるチャンバー内の気圧状態が常温にて500~1500Paであることを特徴とする請求項2記載の冷媒液注入及び封止方法。
【請求項4】
ステップ3による注入量を、冷媒液の注入過程において設置した流量計の積算量を基準として、ヒートパイプにおける冷媒液の収容量に対応して一定とすることを特徴とする請求項1記載の冷媒液注入及び封止方法。
【請求項5】
冷媒液供給機と注入器との間に流量計を設置することを特徴とする請求項4記載の冷媒液注入及び封止方法。
【請求項6】
注入器において開閉弁と注入ノズルとの間に流量計を設置することを特徴とする請求項4記載の冷媒液注入及び封止方法。
【請求項7】
チャンバー及びヒートパイプを所定の温度に設定した上で、ステップ4における気圧状態の調整に際し、当該温度に対応する冷媒液の飽和蒸気圧を採用することを特徴とする請求項1記載の冷媒液注入及び封止方法。
【請求項8】
冷媒液として水を採用した上で、チャンバー及びヒートパイプの温度を、20℃又は25℃に設定し、かつステップ4における飽和水蒸気圧を、それぞれ2400Pa又は3200Paに設定することを特徴とする請求項7記載の冷媒液注入及び封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定しているウイック、及び当該ウイックと隣接しており、冷媒蒸気が流動を予定している蒸気流動部を空洞部内に設置しており、かつ加熱された対象物の冷却に使用するヒートパイプに対する冷媒液の注入及び封止方法を対象としている。
【背景技術】
【0002】
従来技術においては、冷媒液が流動する一層又は複数層のウイック及び隣接する空洞部を備えたヒートパイプにおいて、冷媒液の注入及び封止を実現するために、以下のステップを採用している。
(1)ヒートパイプのチャンバー内への投入。
(2)真空ポンプによるチャンバーに対する真空脱気の開始及び継続。
(3)冷媒液供給機と連通している注入器の先端に備えられている注入ノズルからのヒートパイプの注入口に対する冷媒液の注入及び注入完了段階における注入器に備えられている開閉弁の閉鎖。
(4)注入ノズルの注入口からの解放。
(5)注入口に対する封止部材の加圧を伴う圧着による閉鎖。
(6)真空脱気の中止及びヒートパイプのチャンバーからの脱出。
【0003】
しかしながら、ステップ(4)の解放の段階では、チャンバー内がステップ(2)の継続によって真空状態であるため、ステップ(4)の解放から、ステップ(5)の閉鎖に至るまでの間に、注入した冷媒液が注入口から流出するという弊害を免れることができない。
【0004】
本願の出願人の出願に係る特許文献1の発明における請求項13は、冷媒液の注入及び封止に係る構成を提唱しているが、当該構成もまた、ステップ(1)~(6)に立脚しており、前記弊害を免れることができない。
【0005】
然るに、出願人がサーチする限り、前記弊害をクリアするような先行技術は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第7041445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、加熱された対象物の冷却に使用するヒートパイプにおいて、注入ノズルの注入口における解放から、封止部材の圧着に至るまでの間に、冷媒液の注入口からの排出の程度を桁違いに小さい状態とするような構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、以下の(1)、(2)、(3)の基本構成を採用している。
(1)冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定しているウイック、及び当該ウイックの隣接領域にて冷媒蒸気の流動を予定している蒸気流動部を、上板、下板、又は上板、中板、下板、及び周囲壁によって囲んでおり、かつ加熱された対象物の冷却に使用するヒートパイプにおいて、以下のステップを採用している冷媒液注入及び封止方法。
1 ヒートパイプのチャンバー内への投入。
2 真空ポンプによるチャンバーに対する真空脱気の開始及び継続。
3 冷媒液供給機と連通している注入器の先端に備えられている注入ノズルからのヒートパイプの注入口に対する冷媒液の注入及び注入完了段階における注入器に備えられている開閉弁の閉鎖。
4 チャンバーに対する空気又は窒素ガスの流入によって、チャンバー内の気圧を、ヒートパイプ内にて形成されている冷媒液の飽和蒸気圧と同一の気圧状態とする調整。
5 注入ノズルのヒートパイプの注入口からの解放。
6 チャンバー内におけるヒートパイプの封止部材搭載装置の位置への移動並びに1個の封止部材の注入口への配置。
7 ヒートパイプの加圧ロッドの位置への移動。
8 加圧ロッドの封止部材に対する加圧に基づく当該加圧部材の注入口への圧着。
9 加圧ロッドの封止部材からの解放及びヒートパイプのチャンバーからの脱出。
(2)ステップ7とステップ8の間に、以下のステップを採用していることを特徴とする前記(1)の冷媒液注入及び封止方法。
加圧ロッドがステップ6によって配置された封止部材を上側からの接触によって留着した上で、ステップ4によって流入したチャンバーに対する空気又は窒素ガスの脱気によって、ステップ4の気圧状態とステップ2の真空脱気による気圧状態との中間の気圧状態に至る減圧によるステップ5の解放からステップ6への配置の間に、注入口内部付近に流入した空気又は窒素ガスの排出。
(3)ステップ3による注入量を、冷媒液の注入過程において設置した流量計の積算量を基準として、ヒートパイプにおける冷媒液の収容量に対応して一定とすることを特徴とする前記(1)の冷媒液注入及び封止方法。
【発明の効果】
【0009】
基本構成(1)は、チャンバーに対する窒素ガス又は空気の流入によって、ヒートパイプ内に形成されている冷媒蒸気による飽和蒸気圧と同一の気圧状態の設定というステップ4を採用していることに特徴点が存在する。
【0010】
ステップ4の採用の技術的趣旨について説明するに、ステップ3によって、ヒートパイプの注入口に対する冷媒液の注入が終了した段階では、チャンバー内は真空状態が継続しているが、ヒートパイプにおいては、注入された冷媒液がヒートパイプ内に残留している気体(大抵の場合は空気)と平衡状態を実現し、その結果、冷媒液による飽和蒸気が形成されている。
【0011】
このような場合、チャンバー内をステップ4のように、チャンバーの気圧を、ヒートパイプにおいて形成されている冷媒液の飽和蒸気圧と同一の気圧状態に調整した場合には、ステップ5によって注入器のノズルを注入口から解放したとしても、ヒートパイプの内側の気圧と外側の気圧とは平衡状態が形成されている。
【0012】
その結果、ステップ8による圧着に至るまでの過程において、従来技術における真空状態のチャンバー内への冷媒液の流出の程度に比し、桁違いに小さい状態とするか、又は当該流出を防止することができる。
【0013】
基本構成(1)においては、チャンバーの気圧状態をヒートパイプにおける冷媒蒸気の飽和蒸気圧と同一の気圧状態に調整するというステップ4の気圧状態を継続した場合には、ステップ5による解放からステップ8による圧着に至る1個の封止部材の注入口への配置が行われている過程において、注入口に対し、チャンバー内に流入した空気又は窒素ガスがヒートパイプの注入口又はその近辺に流入することを避けることができない。
【0014】
このような空気又は窒素ガスがヒートパイプ内に相当量流入した場合には、冷媒蒸気のヒートパイプ内における円滑な循環に対する支障と化すことから、ステップ5の解放及びステップ6の配置を速やかに実現することによって、ステップ8の圧着に至ることを必要不可欠とする。
【0015】
しかしながら、たとえステップ5及びステップ6を速やかに実現したとしても、前記流入を完全に防止することは不可能である。
【0016】
基本構成(2)は、ステップ7の移動とステップ8の圧着の間に、以下のステップを採用している。
加圧ロッドがステップ6によって配置された封止部材を上側からの接触によって留着した上で、ステップ4によって流入したチャンバーに対する空気又は窒素ガスの脱気によって、ステップ4の気圧状態とステップ2の真空脱気による気圧状態との中間の気圧状態、即ちステップ4の飽和蒸気圧と同一の気圧よりも低く、かつステップ2の真空脱気による気圧よりも高い気圧状態に至る減圧によるステップ5の解放からステップ6への配置の間に、注入口内部付近に流入した空気又は窒素ガスの排出。
【0017】
基本構成(2)は、前記ステップの採用によって、前記のような冷媒液の円滑な循環に対する支障を防止している。
尚、前記中間の気圧状態を、注入口内部に流入した空気又は窒素ガスの排出が終了した後においても継続した場合には、ヒートパイプ中の冷媒液をも排出することから、上記終了の時点において前記中間の気圧状態を中止していることを必要不可欠とする。
【0018】
このような中止の時期は、試行錯誤を伴う経験の蓄積によって判断し、かつ選択する以外にない。
【0019】
通常、ステップ3において、冷媒液を注入口を介してヒートパイプ中に注入する場合には、ヒートパイプにおける冷媒液の収容量に対応する注入時間を設定し、注入量を設定している。
【0020】
しかしながら、冷媒液供給機から注入器に流動する冷媒蒸気の単位時間当たりの注入量は、決して一定という訳ではなく、その結果、ヒートパイプにおける前記収容量に対応して、正確な冷媒液の注入量が設定されている訳ではない。
【0021】
このような状況を改善するために、基本構成(3)においては、ステップ3による注入量を、冷媒液の注入過程において設置した流量計の積算量を基準として、ヒートパイプにおける冷媒液の収容量に対応して一定とすることによって、正確な冷媒液の注入を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1(a)】チャンバー内にヒートパイプを移動するステップ1、及びチャンバーに対する真空状態を実現しているステップ2の状態を示す側断面図である。
図1(b)】ヒートパイプの注入口に注入器に備えられている注入ノズルを介して、冷媒液の注入を実現しているステップ3の状態を示す側断面図である。
図1(c)】ステップ3において、開閉弁を閉鎖することによって、冷媒液の注入を実現している状態を示す側断面図である。
図1(d)】チャンバーに対し、ヒートパイプ中の飽和蒸気圧と同一の気圧状態を実現しているステップ4の状態を示す側断面図である。
図1(e)】ステップ4によるチャンバー内の気圧の下に、ヒートパイプの注入口に対する解放を実現しているステップ5の状態を示す側断面図である。
図1(f)】ステップ5の解放の後に、1個の封止部材を注入口に配置するステップ6を実現している状態を示す側断面図である。
図1(g)】封止部材の加圧ロッドによる注入口に対する圧着を実現しているステップ8を実現している状態を示す側断面図である
図1(h)】基本構成(1)のステップ7とステップ8との間に、基本構成(2)による減圧状態を実現していることを示す側断面図である。
図2】飽和水蒸気圧と温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
基本構成(1)は、冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定しているウイック、及び当該ウイックの隣接領域にて冷媒蒸気の流動を予定している蒸気流動部を、上板、下板、又は上板、中板、下板、及び周囲壁によって囲んでおり、かつ加熱された対象物の冷却に使用するヒートパイプ1において、以下のステップを採用している冷媒液注入及び封止方法である。
図1(a)に示すようなヒートパイプ1のチャンバー2内への投入。
図1(a)に示すような真空ポンプによるチャンバー2に対する真空脱気の開始及び継続。
図1(b)に示すような冷媒液供給機4と連通している注入器3の先端に備えられている注入ノズル31からのヒートパイプ1の注入口11に対する冷媒液の注入及び図1(c)に示すような注入完了段階における注入器3に備えられている開閉弁32の閉鎖。
図1(d)に示すようなチャンバー2に対する空気又は窒素ガスの流入によって、チャンバー2内の気圧を、ヒートパイプ1内にて形成されている冷媒液の飽和蒸気圧と同一の気圧状態とする調整。
図1(e)に示すような注入ノズル31のヒートパイプ1の注入口11からの解放。
6 チャンバー2内におけるヒートパイプ1の封止部材搭載装置6の位置への移動並びに図1(f)に示すような1個の封止部材5の注入口11への配置。
7 ヒートパイプ1の加圧ロッド7の位置への移動。
図1(g)に示すような加圧ロッド7の封止部材5に対する加圧に基づく当該加圧部材の注入口11への圧着。
9 加圧ロッド7の封止部材5からの解放及びヒートパイプ1のチャンバー2からの脱出。
【0024】
従来技術の場合には、ステップ3において、注入器3に加圧装置を備えることによって、冷媒液の加圧注入を実現する実施形態が少なからず存在した。
【0025】
しかしながら、ステップ2の真空脱気によって、ヒートパイプ1もまた低圧状態に変化している以上、注入器3の冷媒液は、ヒートパイプ1の真空脱気による低圧状態によってヒートパイプ1内に吸引され、前記加圧注入は必ずしも必要ではない。
【0026】
冷媒液の飽和蒸気圧と温度とは所定の関係があり、温度が高いほど飽和蒸気圧が上昇し、水蒸気の場合には、図2のグラフに示すような曲線を得ることができる。
【0027】
ステップ4の飽和蒸気圧と同一の気圧状態とする調整は、チャンバー2及びヒートパイプ1内の温度に対応して、冷媒液の飽和蒸気圧を設定することによって、当該蒸気圧と同一の気圧状態を実現するために、チャンバー2に対する空気又は窒素ガスの流入を行っている。
尚、前記の「同一の気圧状態」とは、冷媒液の飽和蒸気圧と正確に同一の気圧状態及び当該飽和蒸気圧と略同一の気圧状態の双方が包摂されている。
【0028】
ステップ4の採用を特徴とする基本構成(1)の効果については、既に発明の効果の項において説明した通りである。
但し、冷媒液の飽和蒸気圧と正確に同一の気圧状態に調整した場合には、ステップ5の解放からステップ8の圧着に至るまでの過程における冷媒液の注入口11からの流出を殆ど防止することが可能となる一方、冷媒液の飽和蒸気圧と略同一の場合には、従来技術の場合の冷媒液の流出の程度に比し、桁違いに小さい流出状態が実現可能と化す。
【0029】
基本構成(2)は、図1(h)に示すように、ステップ7とステップ8の間に、以下のステップを採用することを特徴としている。
加圧ロッド7がステップ6によって配置された封止部材5を上側からの接触によって留着した上で、ステップ4によって流入したチャンバー2に対する空気又は窒素ガスの脱気によって、ステップ4の気圧状態とステップ2の真空脱気による気圧状態との中間の気圧状態、即ちステップ4の飽和蒸気圧と同一の気圧よりも低く、かつステップ2の真空脱気による気圧よりも高い気圧状態に至る減圧によるステップ5の解放からステップ6への配置の間に、注入口11内部付近に流入した空気又は窒素ガスの排出。
【0030】
基本構成(2)において、図1(h)に示すように、加圧ロッド7が上側から接触することによって、封止部材5を留着しているのは、空気又は窒素ガスの排出に伴う減圧措置であって、注入口11に配置されている封止部材5が当該配置位置から外れることを防止することにある。
【0031】
前記中間の気圧状態における減圧については、ヒートパイプ1の入口付近の構造によって左右されるが、発明者の経験では、減圧によるチャンバー2内の気圧状態が常温にて500~1500Pa内の範囲の場合に、注入口11内部付近に流入した空気又は窒素ガスは適切に排出することができる。
【0032】
基本構成(2)の効果についても、発明の効果の項において説明した通りである。
【0033】
基本構成(3)は、図1(a)~(h)に示すように、ステップ3による注入量を、冷媒液の注入過程において設置した流量計8の積算量を基準として、ヒートパイプ1における冷媒液の収容量に対応して一定とすることを特徴としている。
尚、前記の一定の積算量は、注入器3における開閉弁32を閉鎖する時期を選択することによって実現している。
【0034】
基本構成(3)は、チャンバー2内において、ヒートパイプ1に対し、注入器3によって冷媒液を注入する場合の全ての構成、及び当該構成に基づく各実施形態に適用することができる。
【0035】
基本構成(3)の具体的実施形態は、図1(a)、(b)、(c)に示すように、冷媒液供給機4と注入器3との間に流量計8を設置することを特徴とする実施形態、又は、図1(d)、(e)に示すように、注入器3において開閉弁32と注入ノズル31との間に流量計8を設置することを特徴とする実施形態の何れをも採用することができる。
【0036】
基本構成(3)の効果については、発明の効果の項において説明した通りである。
【実施例0037】
ステップ4の調整を常温にて行う場合に、チャンバー2及びヒートパイプ1の温度を特定の値に設定していない場合には、チャンバー2及びヒートパイプ1の温度変化に対応して、チャンバー2内の気圧状態を調整することを必要不可欠とする。
【0038】
これに対し、実施例においては、チャンバー2及びヒートパイプ1を所定の温度に設定した上で、ステップ4における気圧状態の調整に際し、当該温度に対応する冷媒液の飽和蒸気圧を採用することを特徴としている。
【0039】
即ち、実施例においては、チャンバー2及びヒートパイプ1の温度を所定温度に設定していることから、ステップ4において採用する飽和蒸気圧、即ち気圧状態も当該温度に対応しており、温度変化に左右されることはあり得ない。
【0040】
特に、冷媒液として水を採用した場合には、図2に示すように、チャンバー2及びヒートパイプ1の温度を、20℃又は25℃に設定し、かつステップ4における飽和水蒸気圧をそれぞれ2400Pa又は3200Paに設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
ステップ4を採用している本発明においては、ステップ5による注入ノズルの注入口からの解放から、ステップ8の封止部材の注入口に対する圧着に至るまでの間における冷媒液の注入口からの流出の程度を桁違いに小さい状態とすることができ、ヒートパイプの利用につき、多大な利用価値を実現することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ヒートパイプ
11 注入口
2 チャンバー
3 注入器
31 注入ノズル
32 開閉弁
4 冷媒液供給機
5 封止部材
6 封止部材搭載装置
7 加圧ロッド
8 流量計
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図1(e)】
図1(f)】
図1(g)】
図1(h)】
図2