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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055442
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ゴム組成物および架橋ゴム成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240411BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20240411BHJP
   C08K 5/46 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/098
C08K5/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162375
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】新藤 絢香
(72)【発明者】
【氏名】兼子 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】唯岡 弘
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002DA066
4J002DA096
4J002DA106
4J002DA116
4J002EF047
4J002EK009
4J002EV318
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD146
4J002FD147
4J002FD148
4J002FD156
4J002FD157
4J002FD158
4J002FD209
4J002GC00
4J002GC01
4J002GL00
4J002GM01
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】反発性能に優れた架橋ゴム成形体が得られるゴム組成物を提供する。
【解決手段】本発明のゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤および(c)架橋開始剤を含有するゴム組成物であって、前記(b)共架橋剤が(b1)金属錯体を含有しており、前記(b1)金属錯体が、(b11)金属成分、(b12)炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸化合物に由来する配位子、および、(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子から構成されたものであることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基材ゴム、(b)共架橋剤および(c)架橋開始剤を含有するゴム組成物であって、
前記(b)共架橋剤が、(b1)金属錯体を含有しており、
前記(b1)金属錯体が、(b11)金属成分、(b12)炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸化合物に由来する配位子、および、(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子から構成されたものであることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子が、式(1)で表される化合物、式(1)で表される化合物の金属塩、式(2)で表される化合物、および、式(2)で表される化合物の金属塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する配位子である請求項1に記載のゴム組成物。
【化1】
[式(1)、(2)中、R1は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、または、炭素数が4~14のアリール基を表す。R2~R5は、同一又は異なって、電子吸引性基または水素原子を表す。]
【請求項3】
前記R2~R5の少なくとも1つの電子吸引性基が、ハロゲン基、パーフルオロアルキル基、および、ペンタフルオロスルファニル基よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記前記(b1)金属錯体中の(b12)炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸化合物に由来する配位子と、(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子とのモル比(b12/b13)が、1.0~6.0である請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記(b)共架橋剤100質量%における前記(b1)金属錯体の含有率が、1.0質量%~70質量%である請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項6】
さらに、(f)有機硫黄化合物を含む請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載のゴム組成物から形成されたことを特徴とする架橋ゴム成形体。
【請求項8】
請求項1または2に記載のゴム組成物から形成された構成部材を有することを特徴とするゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物に関し、特に新規な共架橋剤を用いたゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールのコアを形成する材料として、反発性が良い点から、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤を含有するゴム組成物が広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、不飽和重合体、架橋剤、および、有機硫黄化合物の非金属塩であるペプタイザ、ならびに、2-メルカプトベンゾチアゾールおよび2-メルカプトベンゾチアゾールの塩より成る群から選ばれる促進剤を含む組成物を含んでいるゴルフボールが記載されている(特許文献1(請求項1、7、11)参照)。
【0004】
また、特許文献2には、不飽和ポリマー、架橋剤、素練り促進剤、および、加硫促進剤を含み、加硫促進剤が2-メルカプトベンゾチアゾールおよび2-メルカプトベンゾチアゾールの塩からなる群から選ばれる組成物を含有するゴルフボールが記載されている(特許文献2(請求項1、25)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-000647号公報
【特許文献2】特開2005-000657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、ゴルフボールのコアを形成するためのゴム組成物が種々提案されているが、コアの反発性能のさらなる向上が求められていた。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、反発性能に優れた架橋ゴム成形体が得られるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することができた本発明のゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤および(c)架橋開始剤を含有するゴム組成物であって、前記(b)共架橋剤が(b1)金属錯体を含有し、前記(b1)金属錯体が、(b11)金属成分、(b12)炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸化合物に由来する配位子、および、(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子から構成されたものであることを特徴とする。共架橋剤として、前記(b1)金属錯体を配合することで、得られる架橋ゴム成形体の反発性能が向上する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のゴム組成物を用いれば、反発性能に優れた架橋ゴム成形体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤および(c)架橋開始剤を含有し、前記(b)共架橋剤が(b1)金属錯体を含有し、前記(b1)金属錯体が、(b11)金属成分、(b12)炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸化合物に由来する配位子、および、(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子から構成されたものであることを特徴とする。
【0010】
以下、ゴム組成物に用いられる原料について説明する。
【0011】
((a)基材ゴム)
前記(a)基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができる。前記合成ゴムとしては、例えば、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンポリブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴム;エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムなどの非ジエン系ゴムが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
前記(a)基材ゴムは、天然ゴムおよび/またはジエン系ゴムを含有することが好ましい。前記(a)基材ゴム中の天然ゴムおよび/またはジエン系ゴムの合計含有量は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。前記(a)基材ゴムが、天然ゴムおよび/またはジエン系ゴムのみを含有することも好ましい。
【0013】
前記(a)基材ゴムは、ポリブタジエンゴムを含有することが好ましい。特に、反発に有利なシス-1,4-結合を、40質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上有するハイシスポリブタジエンが好適である。前記(a)基材ゴム中のハイシスポリブタジエンの含有量は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上である。
【0014】
前記ハイシスポリブタジエンは、1,2-ビニル結合の含有量が2.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.7質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が2.0質量%以下であればゴム成形体の反発性がより向上する。
【0015】
前記ハイシスポリブタジエンは、希土類元素系触媒で合成されたものが好適であり、特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が、1,4-シス結合が高含量、1,2-ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましい。
【0016】
前記ハイシスポリブタジエンとしては、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.4以上、最も好ましくは2.6以上であり、6.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.4以下である。ハイシスポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)が2.0以上であれば成形の作業性が向上し、6.0以下であれば得られる成形体の反発性がより向上する。なお、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC-8120GPC」)により、検知器として示差屈折計を用いて、カラム:GMHHXL(東ソー社製)、カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフランの条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した値である。
【0017】
前記ハイシスポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上であり、140以下が好ましく、より好ましくは120以下、さらに好ましくは100以下、最も好ましくは80以下である。なお、本発明においてムーニー粘度(ML1+4(100℃))とは、JIS K6300に準じて、Lローターを使用し、予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間、100℃の条件下にて測定した値である。
【0018】
((b)共架橋剤)
前記(b)共架橋剤は、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有する。前記(b)共架橋剤は、前記(b1)金属錯体を含有する。前記(b)共架橋剤として特定の配位子を有する前記(b1)金属錯体を含有することで、得られる架橋ゴム成形体の反発性能が向上する。
【0019】
前記(b1)金属錯体は、(b11)金属成分、(b12)炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸化合物に由来する配位子、および、(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子から構成されたものである。
【0020】
前記(b11)金属成分としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属;カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金などの遷移金属;ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、ガリウム、カドミウム、インジウム、スズ、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウムなどの卑金属が挙げられる。前記(b11)金属成分は、単独または2種以上であってもよい。これらの中でも、前記(b11)金属成分としては、酸化数が+2であるものが好ましく、より好ましくはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、鉛である。
【0021】
前記(b12)炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸化合物に由来する配位子は、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸が有するカルボキシ基の水素原子が解離した構造を有する。前記炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸化合物としては、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩等が挙げられる。
【0022】
前記炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸化合物の炭素数は、好ましくは3~6、より好ましくは3または4である。前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられる。なお、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0023】
前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。
【0024】
前記(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子は、メルカプトベンゾチアゾール系化合物のメルカプト基の水素原子(水素原子が置換されている場合は置換基)が解離した構造、あるいは、チアゾール環の窒素原子に結合する水素原子(水素原子が置換されている場合は置換基)が解離した構造を有する。前記メルカプトベンゾチアゾール系化合物としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールの金属塩、置換基を有する2-メルカプトベンゾチアゾール、置換基を有する2-メルカプトベンゾチアゾールの金属塩等が挙げられる。
【0025】
前記(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子は、式(1)で表される化合物、式(1)で表される化合物の金属塩、式(2)で表される化合物、および、式(2)で表される化合物の金属塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する配位子が好ましい。
【0026】
【化1】
[式(1)、(2)中、R1は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、または、炭素数が4~14のアリール基を表す。R2~R5は、同一又は異なって、電子吸引性基または水素原子を表す。]
【0027】
式(1)または式(2)中のR1で表される炭素数1~8のアルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基が挙げられる。前記アルキル基の炭素数は1以上が好ましく、6以下が好ましく、より好ましくは4以下である。
直鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。
分岐状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基等が挙げられる。
環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0028】
1で表される炭素数が4~14のアリール基の炭素数は、6以上が好ましく、12以下が好ましく、より好ましくは10以下である。前記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0029】
前記R1としては、水素原子、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0030】
前記R2~R5で表される電子吸引性基は、結合している炭素原子から電子を引き付ける力が水素原子よりも大きい置換基である。前記R2~R5で表される電子吸引性基としては、ハロゲン基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ペンタフルオロスルファニル基(-SF5)、ニトロ基(-NO2)、シアノ基(-CN)、カルボキシ基(-COOH)、アルデヒド基(-CHO)、スルファニル基(-SH)、スルホ基(-SO3H)、アルキルスルホニル基、アルコキシスルホニル基、パーフルオロアルキルスルホニル基等が挙げられる。
【0031】
前記ハロゲン基としては、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)等が挙げられる。
前記パーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基(-CF3)、ペンタフルオロエチル基(-C25)、ヘプタフルオロプロピル基(-C37)等が挙げられる。
前記ハロゲン化アルキル基としては、トリクロロメチル基(-CCl3)、モノクロロメチル基(-CH2Cl)等が挙げられる。
前記アルキルカルボニル基としては、アセチル基(-COCH3)、プロピオニル基(-COC25)等が挙げられる。
前記アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基(-COOCH3)、エトキシカルボニル基(-COOC25)等が挙げられる。
前記アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基(-SO2CH3)、エチルスルホニル基(-SO225)等が挙げられる。
前記アルコキシスルホニル基としては、メトキシスルホニル基(-SO2OCH3)、エトキシスルホニル基(-SO2OC25)等が挙げられる。
前記パーフルオロアルキルスルホニル基としては、トリフルオロメチルスルホニル基(-SO2CF3)、ペンタフルオロエチルスルホニル基(-SO225)等が挙げられる。
【0032】
前記R2~R5は全て水素原子でもよいし、少なくとも1つが電子吸引性基であることも好ましい。前記R2~R5で表される電子吸引性基としては、ハロゲン基、パーフルオロアルキル基、および、ペンタフルオロスルファニル基よりなる群から選択される1種が好ましい。
【0033】
前記(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、5-メチル-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-フルオロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-クロロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-ブロモ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-トリフルオロメチル-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-ニトロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-シアノ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-カルボキシ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-スルホ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-スルファニル-2-メルカプトベンゾチアゾール、および、5-(トリフルオロメチル)スルホニル-2-メルカプトベンゾチアゾールよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する配位子が好ましい。
【0034】
前記(b1)金属錯体中の(b12)炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸に由来する配位子と、(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子とのモル比(b12/b13)は、1.0以上が好ましく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上であり、6.0以下が好ましく、より好ましくは5.5以下、さらに好ましくは5.0以下である。前記モル比(b12/b13)が1.0以上であれば、ゴム組成物から形成される部材が適当な硬さとなり、架橋ゴム成形体の反発性がより向上し、6.0以下であれば、ゴム組成物から形成される部材が硬くなりすぎることが抑制される。
【0035】
前記ゴム組成物中の前記(b1)金属錯体の配合量は、前記(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上であり、25質量部以下が好ましく、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは18質量部以下である。前記(b1)金属錯体の配合量が0.1質量部以上であれば、ゴム組成物から形成される部材が適当な硬さとなり、架橋ゴム成形体の反発性がより向上し、25質量部以下であれば、ゴム組成物から形成される部材が硬くなりすぎることが抑制される。
【0036】
前記(b)共架橋剤は、本発明の効果を損なわない程度に、前記(b1)金属錯体以外の他の共架橋剤を含有してもよい。前記他の共架橋剤としては、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩が挙げられる。炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有する。前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられる。
【0037】
炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記金属成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記金属成分としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属が好ましい。炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の二価の金属塩を用いることにより、ゴム分子間に金属架橋が生じやすくなる。
【0038】
前記他の架橋剤を使用する場合、前記(b)共架橋剤中の前記(b1)金属錯体の含有率は、1.0質量%以上が好ましく、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上であり、70質量%以下が好ましく、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。前記(b)共架橋剤中の前記(b1)金属錯体の含有率が1.0質量%以上であれば、ゴム組成物から形成される部材が適当な硬さとなり、架橋ゴム成形体の反発性がより向上し、70質量%以下であれば、ゴム組成物から形成される部材が硬くなりすぎることが抑制される。
【0039】
前記ゴム組成物中の前記(b)共架橋剤の含有率は、前記(a)基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、50質量部以下が好ましく、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。前記(b)共架橋剤の含有量が1質量部以上であれば、ゴム組成物から形成される部材が適当な硬さとなり、架橋ゴム成形体の反発性がより向上し、50質量部以下であれば、ゴム組成物から形成される部材が硬くなりすぎることが抑制される。
【0040】
((c)架橋開始剤)
前記(c)架橋開始剤は、(a)基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。(c)架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。前記有機過酸化物としては、例えば、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルが挙げられる。前記パーオキシケタールとしては、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシバレレート)、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。前記ジアルキルパーオキサイドとしては、ジクミルパーオキサイド、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどが挙げられる。前記パーオキシエステルとしては、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエートなどが挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。
【0041】
前記(c)架橋開始剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.7質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは2.5質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下である。含有量が0.2質量部以上であれば、ゴム組成物から形成される架橋ゴム成形体が柔らかくなり過ぎず、反発性が良好となり、5.0質量部以下であれば、ゴム組成物から形成される架橋ゴム成形体が適切な硬さとなり、反発性および耐久性が良好となる。
【0042】
((d)金属化合物)
前記ゴム組成物は、さらに(d)金属化合物を含有してもよい。前記(d)金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。(d)金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記(d)金属化合物としては、金属酸化物が好ましく、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0043】
前記ゴム組成物中の(d)金属化合物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1.0質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、20質量部以下が好ましく、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0044】
((e)カルボン酸および/またはその塩)
前記ゴム組成物は(e)カルボン酸および/またはその塩を含有してもよい。前記(e)カルボン酸および/またはその塩を含有することで、得られる架橋ゴム成形体の硬度分布を制御できる。前記(e)カルボン酸および/またはその塩としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸および芳香族カルボン酸塩が挙げられる。前記(e)カルボン酸および/または塩は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。なお、(e)カルボン酸および/またはその塩には、前記(b)共架橋剤として使用する(b1)金属錯体、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は含まない。
【0045】
前記脂肪族カルボン酸は、飽和脂肪族カルボン酸(以下、「飽和脂肪酸」と称する場合がある。)、不飽和脂肪族カルボン酸(以下、「不飽和脂肪酸」と称する場合がある。)のいずれであっても良い。また、脂肪族カルボン酸は、分岐構造や環状構造を有していてもよい。前記飽和脂肪酸の炭素数は、6以上が好ましく、より好ましくは7以上、さらに好ましくは8以上であり、24以下が好ましく、より好ましくは18以下、さらに好ましくは13以下である。前記不飽和脂肪酸の炭素数は、6以上が好ましく、より好ましくは7以上、さらに好ましくは8以上であり、24以下が好ましく、より好ましくは18以下、さらに好ましくは13以下である。
【0046】
前記芳香族カルボン酸としては、分子中にベンゼン環を有するもの、分子中に複素芳香環を有するものが挙げられる。前記芳香族カルボン酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ベンゼン環を有するカルボン酸としては、例えば、ベンゼン環にカルボキシル基が直接結合した芳香族カルボン酸、ベンゼン環に脂肪族カルボン酸が結合した芳香族-脂肪族カルボン酸、縮合ベンゼン環にカルボキシル基が直接結合した多核芳香族カルボン酸、縮合ベンゼン環に脂肪族カルボン酸が結合した多核芳香族-脂肪族カルボン酸などが挙げられる。前記複素芳香環を有するカルボン酸としては、例えば、複素芳香環に直接カルボキシル基が結合したものが挙げられる。
【0047】
脂肪族カルボン酸塩または芳香族カルボン酸塩としては、上述した脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の塩を用いることできる。これらの塩のカチオン成分としては、例えば、金属イオン、アンモニウムイオン、および、有機陽イオンを挙げることができる。前記カチオン成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。金属イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀などの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、銅、コバルト、ニッケル、マンガンなどの2価の金属イオン;アルミニウム、鉄などの3価の金属イオン;錫、ジルコニウム、チタンなどのその他のイオンが挙げられる。これらの中でも、金属イオンとしては、2価の金属イオンが好ましく、より好ましくはマグネシウム、亜鉛、カルシウムである。
【0048】
前記有機陽イオンとは、炭素鎖を有する陽イオンである。前記有機陽イオンとしては、特に限定されず、例えば、有機アンモニウムイオンが挙げられる。前記有機アンモニウムイオンとしては、例えば、ステアリルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2-エチルヘキシルアンモニウムイオンなどの1級アンモニウムイオン、ドデシル(ラウリル)アンモニウムイオン、オクタデシル(ステアリル)アンモニウムイオンなどの2級アンモニウムイオン;トリオクチルアンモニウムイオンなどの3級アンモニウムイオン;ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオンなどが挙げられる。これらの有機陽イオンは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記脂肪族カルボン酸および/またはその塩としては、飽和脂肪酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩が挙げられる。前記飽和脂肪酸および/またはその塩が好ましく、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、または、これらのカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩が好ましい。前記不飽和脂肪酸および/またはその塩としては、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸もしくはアラキドン酸、または、これらのカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩が好ましい。
【0050】
前記芳香族カルボン酸および/またはその塩としては、特に、安息香酸、ブチル安息香酸、アニス酸(メトキシ安息香酸)、ジメトキシ安息香酸、トリメトキシ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸、クロロ安息香酸、ジクロロ安息香酸、トリクロロ安息香酸、アセトキシ安息香酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、フランカルボン酸もしくはテノイル酸、または、これらのカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩が好ましい。
【0051】
前記(e)カルボン酸および/またはその塩の含有量は、例えば、(a)基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であって、30質量部以下が好ましく、より好ましくは20質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以下である。
【0052】
((f)有機硫黄化合物)
前記ゴム組成物は、さらに(f)有機硫黄化合物を含有してもよい。(f)有機硫黄化合物としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類、ポリスルフィド類、チウラム類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、ジチオカルバミン酸塩類、チアゾール類およびこれらの金属塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を挙げることができる。(f)有機硫黄化合物としては、チオール基(-SH)を有する有機硫黄化合物、または、その金属塩が好ましく、チオフェノール類、チオナフトール類、または、これらの金属塩が好ましい。
【0053】
チオール類としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類が挙げられる。前記チオフェノール類としては、例えば、チオフェノール;4-フルオロチオフェノール、2,5-ジフルオロチオフェノール、2,6-ジフルオロチオフェノール、2,4,5-トリフルオロチオフェノール、2,4,5,6-テトラフルオロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノールなどのフルオロ基で置換されたチオフェノール類;2-クロロチオフェノール、4-クロロチオフェノール、2,4-ジクロロチオフェノール、2,5-ジクロロチオフェノール、2,6-ジクロロチオフェノール、2,4,5-トリクロロチオフェノール、2,4,5,6-テトラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールなどのクロロ基で置換されたチオフェノール類;4-ブロモチオフェノール、2,5-ジブロモチオフェノール、2,6-ジブロモチオフェノール、2,4,5-トリブロモチオフェノール、2,4,5,6-テトラブロモチオフェノール、ペンタブロモチオフェノールなどのブロモ基で置換されたチオフェノール類;4-ヨードチオフェノール、2,5-ジヨードチオフェノール、2,6-ジヨードチオフェノール、2,4,5-トリヨードチオフェノール、2,4,5,6-テトラヨードチオフェノール、ペンタヨードチオフェノールなどのヨード基で置換されたチオフェノール類;または、これらの金属塩が挙げられる。金属塩としては、亜鉛塩が好ましい。
【0054】
前記チオナフトール類(ナフタレンチオール類)としては、2-チオナフトール、1-チオナフトール、1-クロロ-2-チオナフトール、2-クロロ-1-チオナフトール、1-ブロモ-2-チオナフトール、2-ブロモ-1-チオナフトール、1-フルオロ-2-チオナフトール、2-フルオロ-1-チオナフトール、1-シアノ-2-チオナフトール、2-シアノ-1-チオナフトール、1-アセチル-2-チオナフトール、2-アセチル-1-チオナフトール、またはこれらの金属塩を挙げることができ、2-チオナフトール、1-チオナフトール、またはこれらの金属塩が好ましい。金属塩としては、好ましくは2価の金属塩、より好ましくは亜鉛塩である。金属塩の具体的としては、例えば、1-チオナフトールの亜鉛塩、2-チオナフトールの亜鉛塩が挙げられる。
【0055】
ポリスルフィド類とは、ポリスルフィド結合を有する有機硫黄化合物であり、例えば、ジスルフィド類、トリスルフィド類、テトラスルフィド類が挙げられる。前記ポリスルフィド類としては、ジフェニルポリスルフィド類が好ましい。
【0056】
ジフェニルポリスルフィド類としては、ジフェニルジスルフィドの他;ビス(4-フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタヨードフェニル)ジスルフィド等のハロゲン基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド等のアルキル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;などが挙げられる。
【0057】
チウラム類としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラムモノスルフィド類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラムテトラスルフィド類が挙げられる。チオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンチオカルボン酸が挙げられる。ジチオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンジチオカルボン酸が挙げられる。スルフェンアミド類としては、例えば、N-シクロへキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドが挙げられる。
【0058】
(f)前記有機硫黄化合物は、単独もしくは二種以上を混合して使用することができる。(f)有機硫黄化合物としては、チオフェノール類および/またはその金属塩、チオナフトール類および/またはその金属塩、ジフェニルジスルフィド類、チウラムジスルフィド類が好ましく、より好ましくは2,4-ジクロロチオフェノール、2,6-ジフルオロチオフェノール、2,6-ジクロロチオフェノール、2,6-ジブロモチオフェノール、2,6-ジヨードチオフェノール、2,4,5-トリクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール、1-チオナフトール、2-チオナフトール、ジフェニルジスルフィド、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。
【0059】
(f)有機硫黄化合物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下である。(f)有機硫黄化合物の含有量が、0.05質量部以上であれば、(f)有機硫黄化合物を添加した効果が十分に得られ、ゴルフボールの反発性が向上する。また、(f)有機硫黄化合物の含有量が、5.0質量部以下であれば、得られるゴルフボールの圧縮変形量が大きくなりすぎず、反発性がより良好となる。
【0060】
(他の成分)
前記ゴム組成物は、必要に応じて、顔料、重量調整などのための充填剤、老化防止剤、しゃく解剤、軟化剤などの添加剤を含有してもよい。また、ゴム組成物は、ゴルフボールのコアや、コア作製時に発生した端材を粉砕したゴム粉末を含有してもよい。
【0061】
ゴム組成物に配合される顔料としては、例えば、白色顔料、青色顔料、紫色顔料などを挙げることができる。前記白色顔料としては、酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンの種類は、特に限定されないが、隠蔽性が良好であるという理由から、ルチル型を用いることが好ましい。また、酸化チタンの含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であって、8質量部以下が好ましく、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0062】
ゴム組成物が白色顔料と青色顔料とを含有することも好ましい態様である。青色顔料は、白色を鮮やかに見せるために配合され、例えば、群青、コバルト青、フタロシアニンブルーなどを挙げることができる。また、前記紫色顔料としては、例えば、アントラキノンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、メチルバイオレットなどを挙げることができる。
【0063】
ゴム組成物に用いる充填剤としては、主として架橋ゴム成形体の重量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。
【0064】
前記充填剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは0.7質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。充填剤の含有量が0.5質量部以上であれば、重量調整をし易く、30質量部以下であればゴム成分の重量分率が小さくなり過ぎず反発性がより良好となる。
【0065】
前記老化防止剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0066】
[ゴム組成物の製造方法]
((b1)金属錯体の調製)
前記(b1)金属錯体は、金属成分の原料、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸化合物、および、メルカプトベンゾチアゾール化合物を接触させることで得られる。なお、α,β-不飽和カルボン酸化合物として、市販のα,β-不飽和カルボン酸化合物の金属塩を用いてもよい。また、メルカプトベンゾチアゾール化合物として、市販のメルカプトベンゾチアゾールの金属塩または置換基を有するメルカプトベンゾチアゾールの金属塩を用いてもよい。
【0067】
前記(b1)金属錯体を製造する方法の態様としては、金属成分の原料、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸、および、メルカプトベンゾチアゾール類(メルカプトベンゾチアゾールまたは置換基を有するメルカプトベンゾチアゾール)を一括で混合する方法;金属成分の原料と炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とを混合し、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を調製した後、得られた金属塩とメルカプトベンゾチアゾール類とを混合する方法;金属成分の原料とメルカプトベンゾチアゾール類とを混合し、メルカプトベンゾチアゾール類の金属塩を調製した後、得られた金属塩と炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とを混合する方法等が挙げられる。
【0068】
前記(b1)金属錯体を製造する方法の具体例としては、例えば、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩とメルカプトベンゾチアゾール類を、溶媒に溶解または分散させ、撹拌しながら加熱する工程(反応工程);反応液から溶媒を除去する工程(乾燥工程)を有する製造方法が挙げられる。
【0069】
反応工程では、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸化合物の金属塩とメルカプトベンゾチアゾール類を、溶媒に溶解または分散させ、撹拌しながら加熱する。この工程では、溶媒中で、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸化合物の金属塩とメルカプトベンゾチアゾール類を反応させて、(b1)金属錯体を生成させる。
【0070】
前記溶媒は特に限定されず、反応により生成した(d1)金属錯体を溶解し得る溶媒が使用できる。前記溶媒としては、例えば、トリクロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルムが挙げられる。前記溶媒の使用量は、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸化合物の金属塩とメルカプトベンゾチアゾール類との合計100質量部に対して、1000質量部以上が好ましく、より好ましくは2000質量部以上、さらに好ましくは3000質量部以上であり、10000質量部以下が好ましく、より好ましくは8000質量部以下、さらに好ましくは6000質量部以下である。
【0071】
なお、反応中は、溶媒を還流させることが好ましい。前記反応工程における液温は、特に限定されず、溶媒が還流する程度の温度であればよい。前記反応工程における反応時間は、1時間以上が好ましく、より好ましくは1.5時間以上である。
【0072】
乾燥工程では、反応液から溶媒を除去する。溶媒を除去することで、(d1)金属錯体が得られる。溶媒を除去する方法としては、減圧乾燥、加熱乾燥などが挙げられ、減圧乾燥が好ましい。減圧乾燥を行う際に、反応液を加熱してもよい。乾燥時の反応液の温度は、100℃以下とすることが好ましく、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。
【0073】
(マスターバッチの調製)
前記(b1)金属錯体は、ゴム組成物調製時の凝集を防止するため、マスターバッチ化してもよい。マスターバッチは、(b1)金属錯体と(a)基材ゴムの一部とを混合することで調製できる。
【0074】
また、(b1)金属錯体の分散性をより高めるために、(b1)金属錯体を、第1溶媒で膨潤させた(a)基材ゴムに混合することが好ましい。この場合、第1溶媒としては、(a)基材ゴムを膨潤させることができ、かつ、(d1)金属錯体を溶解し得る溶媒が好ましい。前記第1溶媒の使用量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、1000質量部以上が好ましく、より好ましくは2000質量部以上、さらに好ましくは3000質量部以上であり、10000質量部以下が好ましく、より好ましくは8000質量部以下、さらに好ましくは6000質量部以下である。
【0075】
また、(b1)金属錯体の分散性をより一層高めるために、(b1)金属錯体を第2溶媒に溶解させた溶液を、(a)基材ゴムに添加することが好ましい。この場合、第2溶媒としては、(d1)金属錯体を溶解し得る溶媒が使用できる。また、前記第1溶媒と第2溶媒とが同一溶媒であることが好ましい。前記第2溶媒の使用量は、(b1)金属錯体100質量部に対して、100質量部以上が好ましく、より好ましくは200質量部以上、さらに好ましくは300質量部以上であり、1000質量部以下が好ましく、より好ましくは800質量部以下、さらに好ましくは600質量部以下である。なお、上述した(b1)金属錯体の調製において、反応工程後、乾燥工程前の反応液を濃縮し、マスターバッチの調製に使用してもよい。
【0076】
(ゴム組成物の調製)
前記ゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、必要に応じて(d)金属化合物、(e)カルボン酸および/またはその塩、(f)有機硫黄化合物、および、その他の添加剤などを混合して、混練することにより得られる。前記(b)共架橋剤は、予め(a)基材ゴムの一部とマスターバッチ化してもよい。混練の方法は、特に限定されず、例えば、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の混練機を用いて行えばよい。
【0077】
[架橋ゴム成形体]
本発明の架橋ゴム成形体は、前記ゴム組成物から形成されたことを特徴とする。前記架橋ゴム成形体は、混練後のゴム組成物を金型内で成形することにより得ることができる。成形温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、250℃以下が好ましい。また、成形時の圧力は、2.9MPa~11.8MPaが好ましい。成形時間は、10分間~60分間が好ましい。
【0078】
前記架橋ゴム成形体の用途としては、ゴルフボール、テニスボール、グリップなどのスポーツ用品;ホース、ベルト、マットなどの工業用品;靴底、タイヤ、樹脂添加物、防振ゴム、防舷材などが挙げられる。前記ゴルフボールとしては、前記ゴム組成物から形成された構成部材を有するものが挙げられる。
【実施例0079】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0080】
[評価方法]
(1)圧縮変形量(mm)
球状成形体に初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向に球状成形体が縮む量)を測定した。
【0081】
(2)反発係数
各球状成形体に198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の円筒物および球状成形体の速度を測定し、それぞれの速度および質量から各球状成形体の反発係数を算出した。測定は各球状成形体について12個ずつ行って、その平均値を各球状成形体の反発係数とした。なお、各コアの反発係数は、No.5のコアの反発係数との差(反発係数の差=各コアの反発係数-No.5のコアの反発係数)で示した。
【0082】
[金属錯体の作製]
(1)金属錯体1
フラスコにメルカプトベンゾチアゾール30g(0.18mоl)、アクリル酸亜鉛(ZN-DA90S:日触テクノファインケミカル社製、ステアリン酸亜鉛を10質量%含有)90gを量りとり、溶媒としてCHCl3を2.7L加え反応液を調製した。反応液をオイルバスで60℃に加熱し、1.5時間還流させた。反応液を冷却し、溶媒を留去した。得られた析出物を粉砕し、真空乾燥させることで金属錯体1を得た。得られた金属錯体1は、(b1)金属錯体中の(b12)炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸に由来する配位子と、(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子とのモル比(b12/b13)が、4.43である。
【0083】
(2)金属錯体2
フラスコに5-クロロ-メルカプトベンゾチアゾール36.2g(0.18mоl)、アクリル酸亜鉛(ZN-DA90S:日触テクノファインケミカル社製、ステアリン酸亜鉛を10質量%含有)90gを量りとり、溶媒としてCHCl3を2.7L加え反応液を調製した。反応液をオイルバスで60℃に加熱し、1.5時間還流させた。反応液を冷却し、溶媒を留去した。得られた析出物を粉砕し、真空乾燥させることで金属錯体2を得た。得られた金属錯体2は、(b1)金属錯体中の(b12)炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸に由来する配位子と、(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子とのモル比(b12/b13)が、4.43である。
【0084】
[マスターバッチの作製]
(1)金属錯体1とブタジエンゴムを含有するマスターバッチ
ブタジエンゴム(BR730)180gを、溶媒(CH2Cl2)600mLと混合し、3日以上放置してブタジエンゴムを膨潤させた。次に、フラスコにメルカプトベンゾチアゾール30g(0.18mоl)、アクリル酸亜鉛(ZN-DA90S:日触テクノファインケミカル社製、ステアリン酸亜鉛を10質量%含有)90gを量りとり、溶媒としてCH2Cl2を2.7L加え反応液を調製した。反応液をオイルバスで60℃に加熱し、1.5時間還流させた。反応液を冷却し、溶媒の一部(1.8L~2.2L)を留去した。濃縮した反応液を、膨潤させたブタジエンゴムに添加し、混合した。混合物から溶媒を留去し、真空乾燥させることで、金属錯体1とブタジエンゴムを含有するマスターバッチを得た。なお、金属錯体1は、(b1)金属錯体中の(b12)炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸に由来する配位子と、(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子とのモル比(b12/b13)が、4.43である。
【0085】
(2)金属錯体2とブタジエンゴムを含有するマスターバッチ
ブタジエンゴム(BR730)180gを、溶媒(CH2Cl2)600mLと混合し、3日以上放置してブタジエンゴムを膨潤させた。次に、フラスコに5-クロロ-メルカプトベンゾチアゾール36.2g(0.18mоl)、アクリル酸亜鉛(ZN-DA90S:日触テクノファインケミカル社製、ステアリン酸亜鉛を10質量%含有)90gを量りとり、溶媒としてCH2Cl2を2.7L加え反応液を調製した。反応液をオイルバスで60℃に加熱し、1.5時間還流させた。反応液を冷却し、溶媒の一部(1.8L~2.2L)を留去した。濃縮した反応液を、膨潤させたブタジエンゴムに添加し、混合した。混合物から溶媒を留去し、真空乾燥させることで、金属錯体2とブタジエンゴムを含有するマスターバッチを得た。なお、金属錯体2は、(b1)金属錯体中の(b12)炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸に由来する配位子と、(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子とのモル比(b12/b13)が、4.43である。
【0086】
[球状成形体の作製]
表1に示す配合のゴム組成物を混練ロールにより混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、20分間加熱プレスすることにより、直径40.86mmの球状成形体を得た。
【0087】
【表1】
BR730:JSR社製、「BR730」(ハイシスポリブタジエンゴム(シス-1,4-結合含有量=96質量%、1,2-ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3))
ZN-DA90S:日触テクノファインケミカル社製、アクリル酸亜鉛(ステアリン酸亜鉛を10質量%含有)
MBT:大内新興化学工業社製、2-メルカプトベンゾチアゾール(ノクセラーM-P)
5Cl-MBT:東京化成工業社製、5-クロロ-2-メルカプトベンゾチアゾール
DCP:日油社製、「パークミル(登録商標)D」(ジクミルパーオキサイド)
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
PCTP-Zn:富士フィルム和光純薬製、ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩
【0088】
球状成形体No.1~4は、共架橋剤として、(b1)金属錯体を含有するゴム組成物から形成されている。球状成形体No.5は、共架橋剤として、アクリル酸亜鉛のみ含有するゴム組成物から形成されている。球状成形体No.6、7は、共架橋剤として、アクリル酸亜鉛とベンゾチアゾール系化合物とを含有するゴム組成物から形成されている。
表1に示したように、球状成形体No.1~4は、球状成形体No.5~7よりも反発性能が優れていた。
【0089】
本発明(1)は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤および(c)架橋開始剤を含有するゴム組成物であって、前記(b)共架橋剤が(b1)金属錯体を含有しており、前記(b1)金属錯体が、(b11)金属成分、(b12)炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸に由来する配位子、および、(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子から構成されたものであることを特徴とするゴム組成物である。
【0090】
本発明(2)は、前記(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子が、式(1)で表される化合物、式(1)で表される化合物の金属塩、式(2)で表される化合物、および、式(2)で表される化合物の金属塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する配位子である本発明(1)に記載のゴム組成物である。
【0091】
【化2】
[式(1)、(2)中、R1は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、または、炭素数が4~14のアリール基を表す。R2~R5は、同一又は異なって、電子吸引性基または水素原子を表す。]
【0092】
本発明(3)は、前記R2~R5の少なくとも1つの電子吸引性基が、ハロゲン基、パーフルオロアルキル基、および、ペンタフルオロスルファニル基よりなる群から選択される少なくとも1種である本発明(2)に記載のゴム組成物である。
【0093】
本発明(4)は、前記前記(b1)金属錯体中の(b12)炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸に由来する配位子と、(b13)メルカプトベンゾチアゾール系化合物に由来する配位子とのモル比(b12/b13)が、1.0~6.0である本発明(1)~(3)のいずれか1つに記載のゴム組成物である。
【0094】
本発明(5)は、前記(b)共架橋剤100質量%における前記(b1)金属錯体の含有率が、1.0質量%~70質量%である本発明(1)~(4)のいずれか1つに記載のゴム組成物である。
【0095】
本発明(6)は、さらに、(f)有機硫黄化合物を含む本発明(1)~(5)のいずれか1つに記載のゴム組成物である。
【0096】
本発明(7)は、本発明(1)~(6)のいずれか1つに記載のゴム組成物から形成されたことを特徴とする架橋ゴム成形体である。
【0097】
本発明(8)は、本発明(1)~(6)のいずれか1つに記載のゴム組成物から形成された構成部材を有することを特徴とするゴルフボールである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のゴム組成物を用いれば、反発性能に優れた架橋ゴム成形体が得られる。よって、本発明のゴム組成物は、ゴルフボール、テニスボール、グリップなどのスポーツ用品;ホース、ベルト、マットなどの工業用品;靴底、タイヤ、樹脂添加物、防振ゴム、防舷材などに利用できる。