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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055444
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】バッテリ保持構造および建設機械
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20240411BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20240411BHJP
   B60L 50/64 20190101ALI20240411BHJP
【FI】
B60K1/04
E02F9/00 C
B60L50/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162378
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岸田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】西山 伸一
【テーマコード(参考)】
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D235AA19
3D235BB05
3D235BB19
3D235CC15
3D235DD21
3D235FF02
3D235FF44
5H125AA12
5H125AC12
5H125FF05
(57)【要約】
【課題】大掛かりな機械加工を必要とせず、振動に起因するバッテリの破損を抑制できるバッテリ保持構造およびこれを備えた建設機械を提供する。
【解決手段】バッテリ保持構造25は、複数のバッテリ20の下部に取り付けられる支持板29を備える。各バッテリ20には、複数の支持板29が取り付けられる。各バッテリ20に取り付けられる複数の支持板29の少なくともいずれかは、そのバッテリ20に隣接するバッテリ20に設定された支持板29のいずれかと一体化されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリの下部に取り付けられる支持板を備え、
各バッテリには、複数の支持板が取り付けられ、
各バッテリに取り付けられる複数の支持板の少なくともいずれかは、そのバッテリに隣接するバッテリに設定された支持板のいずれかと一体化されている
ことを特徴とするバッテリ保持構造。
【請求項2】
支持板を支持部に対して弾性的に支持する弾性部材を備える
ことを特徴とする請求項1記載のバッテリ保持構造。
【請求項3】
支持板は、長尺に形成され、バッテリの下部において互いに離れた辺部に沿ってそれぞれ取り付けられ、
互いに隣接するバッテリの辺部に沿って取り付けられた支持板同士が一体化されている
ことを特徴とする請求項1記載のバッテリ保持構造。
【請求項4】
電動部と、
電動部の電源となる複数のバッテリと、
支持部を有する機体フレームと、
バッテリを機体フレームに支持する請求項1乃至3いずれか一記載のバッテリ保持構造と、
を備えることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池部を支持部に支持するバッテリ保持構造およびこれを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設機械の省燃費化や脱炭素化が求められており、エンジンと電動モータを組み合わせたハイブリッド車両や、電動モータで駆動する電動車両の需要が増えてきている。このような車両の稼働時間を長くするためには、電動部の電源となるバッテリの大容量化が必要となる。バッテリの取り扱い性を考慮してモジュール化したバッテリユニットを複数搭載する構造が知られている(例えば、特許文献1乃至3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-64575号公報
【特許文献2】特開2014-208509号公報
【特許文献3】特開2013-139675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設機械の振動に耐えるために、バッテリユニットには防振対策が必要となる。一般的に、バッテリもしくはバッテリユニットの底部を、弾性部材を介して保持する構造を採用することが多い。
【0005】
車体内の搭載スペースが限定されているため、搭載できるバッテリの数が限定される中、少しでも総容量を大きくするために複数並ぶバッテリ間の隙間をなるべく小さくしたいというニーズがある。しかしながら、バッテリそれぞれの底部に弾性部材を設けた構造の場合、振動を受けたバッテリ同士がそれぞれ異なる振動系となることで、互いに衝突するおそれがある。
【0006】
また、バッテリユニットを固定した際にバッテリユニットを捻じ曲げるような応力が加わらないようにするためには、取り付け平面度が必要となる。そのため、複数のバッテリユニットを1枚の板に搭載して全体を弾性支持する場合には、大掛かりな機械切削加工が必要となり、コストが高くなる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、大掛かりな機械加工を必要とせず、振動に起因するバッテリの破損を抑制できるバッテリ保持構造およびこれを備えた建設機械を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、複数のバッテリの下部に取り付けられる支持板を備え、各バッテリには、複数の支持板が取り付けられ、各バッテリに取り付けられる複数の支持板の少なくともいずれかは、そのバッテリに隣接するバッテリに設定された支持板のいずれかと一体化されているバッテリ保持構造である。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のバッテリ保持構造において、支持板を支持部に対して弾性的に支持する弾性部材を備えるものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のバッテリ保持構造における支持板が、長尺に形成され、バッテリの下部において互いに離れた辺部に沿ってそれぞれ取り付けられ、互いに隣接するバッテリの辺部に沿って取り付けられた支持板同士が一体化されているバッテリ保持構造である。
【0011】
請求項4記載の発明は、電動部と、電動部の電源となる複数のバッテリと、支持部を有する機体フレームと、バッテリを機体フレームに支持する請求項1乃至3いずれか一記載のバッテリ保持構造と、を備える建設機械である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、個々の支持板を機械加工することでバッテリに応じて要求される平面度を比較的安価に満たすことができ、かつ、隣接する複数のバッテリの振動系をまとめることができる。そこで、複数のバッテリの振動の方向が一致するので、バッテリが近接していても振動により互いに接触することがなく、大掛かりな機械加工を必要とせず、振動に起因するバッテリの破損を抑制できる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、振動を弾性部材により減衰させ、バッテリが振動を直接受けないようにすることができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、バッテリを近接させて配置することにより、最小限の支持板の大きさで複数のバッテリをまとめて支持できる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、低コストでコンパクトにバッテリを配置した建設機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るバッテリ保持構造の一実施の形態を示す斜視図である。
図2】同上バッテリ保持構造を示す側面図である。
図3】同上バッテリ保持構造を示す平面図である。
図4】同上バッテリ保持構造を備える建設機械の一部を示す斜視図である。
図5】同上建設機械を示す側面図である。
図6】本発明に係るバッテリ保持構造の他の実施の形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、図1乃至図5に示された一実施の形態、図6に示された他の実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0018】
先ず、図1乃至図5に示された実施の形態を説明する。
【0019】
図5に示される建設機械1は、本実施の形態において、電動式油圧ショベルを例に挙げて説明する。建設機械1は、機体2が、下部走行体3とこの下部走行体3に旋回可能に設けられた上部旋回体4とを備え、機体2の上部旋回体4に作業装置5およびオペレータの運転席を有するキャブ6が搭載されている。なお、以下、前後、左右、上下などの方向については、オペレータの視点を基準として説明する。
【0020】
本実施の形態において、作業装置5は、基端部が上部旋回体4に連結されたブーム7と、基端部がブーム7の先端部に連結されたアーム8と、アーム8の先端部に連結されたバケット9と、を有する。そして、ブーム7が、上部旋回体4に対して油圧アクチュエータであるブームシリンダ11の伸縮に応じて回動され、ブーム7に対してアーム8が油圧アクチュエータであるアームシリンダ12の伸縮に応じて回動され、アーム8に対してバケット9が油圧アクチュエータであるバケットシリンダ13の伸縮に応じて回動される。そして、作業装置5のブーム7、アーム8およびバケット9を各シリンダ11,12,13の伸縮に応じて回動させることで、建設機械1が掘削作業などの各種作業を行うようになっている。これに限らず、作業装置5は、任意の油圧アクチュエータにより作動されて作業を行うように構成されていてよい。
【0021】
上部旋回体4は、旋回フレームである機体フレーム15を有する。図4に示されるように、機体フレーム15には、センタフレーム16が前後方向に延びて設けられているとともに、センタフレーム16の左右両側部に、サイドフレーム17,18が連なって前後方向に延びて形成されている。センタフレーム16の前端部には、図5に示される作業装置5のブーム7の基端部が支持される。また、センタフレーム16の後部には、駆動源としての電動部である電動モータ、電動モータの出力軸に接続される油圧ポンプ、および、作動油タンクなどが搭載される。さらに、図4に示されるサイドフレーム17の前端部に、図5に示されるキャブ6が支持される。また、図4に示されるサイドフレーム18に、コントロールバルブが搭載されている。そして、電動モータにより駆動された油圧ポンプによって、作動油タンクから高圧の作動油を図5に示されるシリンダ11,12,13などの油圧アクチュエータに対して給排し、その給排される作動油の流量および方向がコントロールバルブにより制御される。
【0022】
また、図4に示されるように、機体フレーム15には、電動モータの電源となるバッテリ20が搭載されている。本実施の形態において、バッテリ20の配置スペースは、センタフレーム16に設定されており、作業装置5の後方で、かつ、機体フレーム15の後端部付近となっている。
【0023】
バッテリ20としては、例えばリチウムイオンバッテリが用いられる。図1および図2に示されるように、本実施の形態では、バッテリ20は、バッテリ本体である複数のバッテリセル21が積み重ねられた略直方体状のユニットとして構成されている。つまり、バッテリ20は、平面視で一対の長辺部と、それらに直交する一対の短辺部と、を有する。バッテリセル21の下部は、長方形状の支持体としてのベースプレート22に対して締結ボルトなどの固定部材23により固定されて一体的なバッテリ20が構成されている。なお、バッテリ20には、バッテリセル21以外の電装品などが一体的に配置されていてもよい。そして、バッテリ20は、複数設定されており、機体フレーム15(図4)に対し、バッテリ保持構造25により保持されている。
【0024】
図1乃至図4に示されるバッテリ保持構造25は、配線の都合上、バッテリ20を整列した状態で機体フレーム15に保持固定する。本実施の形態では、バッテリ20が前後左右に2つずつ隣接して計4つ配置され、長辺部を前後方向に隣接させ、短辺部を左右方向に隣接させた、つまり長手方向を左右方向として配置された例を示す。バッテリ保持構造25は、機体フレーム15側の支持部としてのマウントベース27に対し、弾性部材28を介して支持板29が弾性的に支持されて構成されている。
【0025】
マウントベース27は、金属材料により平板状に形成されている。図示される例では、マウントベース27は、1枚の金属板により連なった平面状に構成されている。マウントベース27は、複数のバッテリ20全体の配置に亘る面積を有する。マウントベース27の下部に突設された脚部31の下部が、機体フレーム15に一体的に固定される。
【0026】
弾性部材28は、走行時などに生じる機体2の振動を吸収してバッテリ20に直接伝達しないようにする振動吸収部材である。弾性部材28は、公知の構成としてよい。例えば、弾性部材28は、マウントベース27に対して直接固定される下部取付部と、支持板29に対して直接固定される上部取付部と、の間に、ゴムなどの弾性体が介在されて構成されている。
【0027】
支持板29は、金属材料により平板状に形成されている。支持板29に対し、バッテリ20の下部が直接固定される。すなわち、支持板29の上面にバッテリ20のベースプレート22が重ねられた状態で固定される。図3に示されるように、本実施の形態では、バッテリ20には、複数、例えば固定穴である4つの固定部33がベースプレート22に設定されている。固定部33は、バッテリ20の下部において、長手方向の両端部、かつ、短手方向の両側部の位置に突出する。つまり、固定部33は、バッテリ20の各長辺部の端部、すなわち下部(ベースプレート22)の四隅近傍にそれぞれ設定されている。したがって、固定部33は、バッテリ20の長辺部に2つずつ設定されている。そして、図2に示されるように、各固定部33に締結ボルトなどの支持固定部材34が挿入され、この支持固定部材34が、支持板29に形成された締結穴である被固定部35に対して締結固定されることで、バッテリ20の下部が支持板29に一体的に連結される。
【0028】
図1に示されるように、各バッテリ20には、複数の支持板29が取り付けられている。支持板29は、長尺に形成されている。本実施の形態では、支持板29は、その長手方向が、バッテリ20の長手方向に沿うように取り付けられる。図1に示される例では、バッテリ20の下部は、各長辺部がそれぞれ1つの支持板29に取り付けられている。すなわち、バッテリ20の下部において短手方向に離れた位置にそれぞれ支持板29が取り付けられている。
【0029】
そこで、支持板29は、要求される平面度を満たしていないとバッテリ20に対し捻じ曲げるような応力が発生することとなる。そのため、支持板29は、機械切削加工によりバッテリ20に応じて要求される平面度を満たすように形成され、取り付けられたバッテリ20の捻れに起因する損傷を防止している。また、バッテリ20全体を一つの支持板29で支持しようとすると、大きく広い平面状の支持板29全体に対して平面度を満たす機械切削加工が必要となる点、長尺の支持板29に分割してバッテリ20を支持することで、比較的安価に平面度を満たすことができるようになっている。
【0030】
他方、複数の支持板29によってバッテリ20を支持する場合には、振動などに起因して隣接するバッテリ20同士が接触、衝突することが懸念される。つまり、隣接するバッテリ20同士が独立した振動系を有する場合、各バッテリ20が互いに接近する方向に傾いたときに、バッテリ20間の距離が近ければバッテリ20同士が互いに接触するおそれがある。特に、バッテリ20の設置スペースが狭い建設機械1の場合には、バッテリ20はなるべく近接して配置したいものの、近接させるためには振動によりバッテリ20同士が接触しないようにする必要がある。
【0031】
そこで、本実施の形態では、バッテリ20に設定された複数の支持板29の少なくともいずれかが、そのバッテリ20に隣接するバッテリ20に設定された支持板29のいずれかと一体化されていることで、隣接するバッテリ20の振動系を1つにしている。図示される例では、長手方向に隣接するバッテリ20同士、および、短手方向(前後方向)に隣接するバッテリ20同士が、支持板29により1つの振動系にまとめられている。
【0032】
第一の方向である長手方向(左右方向)に隣接するバッテリ20については、長手方向の一側に位置するバッテリ20と長手方向の他側に位置するバッテリ20とが、バッテリ20の長手方向に一体化された支持板29に支持されている。また、第一の方向と交差または直交する第二の方向である短手方向(前後方向)に隣接するバッテリ20については、短手方向の一側に位置するバッテリ20の短手方向の他側と、短手方向の他側に位置するバッテリ20の短手方向の一側と、がバッテリ20の短手方向または幅方向に一体化された支持板29に支持されている。
【0033】
したがって、支持板29には、互いに別体の第一支持板29aと第二支持板29bとが設定されている。
【0034】
本実施の形態において、第一支持板29aは、長手方向に隣接するバッテリ20を一体的に支持する。第一支持板29aは、バッテリ20の長辺部のうち、そのバッテリ20に対し短手方向に隣接するバッテリ20とは反対側の長辺部を支持する。つまり、本実施の形態の場合、第一支持板29aは、前側に位置する2つのバッテリ20の前側の長辺部を一体的に支持するものと、後側に位置する2つのバッテリ20の後側の長辺部を一体的に支持するものと、が設定されている。
【0035】
また、第二支持板29bは、長手方向に隣接するバッテリ20および短手方向に隣接するバッテリ20を一体的に支持する。第二支持板29bは、第一支持板29aと同等の長さを有し、かつ、第一支持板29aよりも短手方向に広く、第一支持板29aの2倍以上の幅を有する。第二支持板29bは、バッテリ20の長辺部のうち、そのバッテリ20に対し短手方向に隣接するバッテリ20側の長辺部を支持する。つまり、本実施の形態の場合、第二支持板29bは、前側に位置する2つのバッテリ20の後側の長辺部と後側に位置する2つのバッテリ20の前側の長辺部とを一体的に支持する。すなわち、隣接するバッテリ20において、互いに近接した辺部同士が共通の第二支持板29bに取り付けられる。
【0036】
図示される例では、第一支持板29aがバッテリ20の短手方向の両端部に位置し、それら第一支持板29a,29a間に第二支持板29bが位置する。第一支持板29aと第二支持板29bとは、互いに平行または略平行に配置される。
【0037】
また、支持板29には、長手方向の両端部と、長手方向における両端部間の中間部と、に弾性部材28を固定するための被固定部35が形成されている。本実施の形態では、第一支持板29aには、長手方向の両端部に1つずつの被固定部35が形成され、それらの中央部に2つの被固定部35が幅方向に並んで形成されている。第二支持板29bには、長手方向の両端部に2つずつの被固定部35が幅方向に離れて形成され、それらの中央部に2つずつ、計4つの被固定部35が幅方向に並んで形成されている。
【0038】
支持板29の長手方向において、被固定部35,35間に、弾性部材28の上部取付部が取り付けられる取付部36が形成されている。取付部36は、支持板29の長手方向に離れて複数設定されている。本実施の形態では、取付部36は、第一支持板29aの長手方向において、被固定部35間に2つずつ設定されている。また、取付部36は、第二支持板29bの長手方向において、被固定部35間に1つのバッテリ20当たり2つずつ、計4つ設定されている。これら取付部36は、被固定部35にそれぞれ近接して位置する。すなわち、弾性部材28は、バッテリ20毎に複数ずつ設定されており、本実施の形態では、1つのバッテリ20当たり4つずつ設定されて、バッテリ20の平面視での四隅近傍を弾性的に支持している。
【0039】
そして、以上のように構成された建設機械1においては、バッテリ20の下部に取り付けられる支持板29をマウントベース27に対して弾性部材28により弾性的に支持することで、走行時などに生じた振動を弾性部材28により減衰させ、バッテリ20が振動を直接受けないようにすることができる。
【0040】
また、支持板29は、各バッテリ20に複数取り付けられ、各バッテリ20に設定された複数の支持板29の少なくともいずれかが、そのバッテリ20に隣接するバッテリ20に設定された支持板29のいずれかと一体化されているため、個々の支持板29を機械切削加工することでバッテリ20に応じて要求される平面度を、例えば大きな1枚板に複数のバッテリ20を取り付ける場合と比較して安価に満たすことができるとともに、隣接する複数のバッテリ20の振動系をまとめることができる。本実施の形態では、バッテリ20の長手方向と短手方向とのそれぞれについて、複数のバッテリ20に対して支持板29を共通化でき、4つのバッテリ20が同一の振動系となる。そこで、複数のバッテリ20の振動の方向が一致するので、バッテリ20が近接していても振動により互いに接触することがない。
【0041】
したがって、大掛かりな機械加工を必要とせず、振動に起因するバッテリ20の破損を抑制できる。つまり、バッテリ20同士を振動により衝突させることなく近接配置できる。本実施の形態では、図3に示されるように、バッテリ20の長手方向には固定部33の突出幅相当の隙間G1、バッテリ20の短手方向にはそれ未満の隙間G2にバッテリ20を近接配置できる。そのため、支持板29自体も大型化する必要がなく、機械切削加工のコストもより安く抑えることができるとともに、組み立て性の面でも優れ、かつ、設置スペースを小さくでき、コンパクトに配置できる。
【0042】
支持板29は、長尺に形成され、バッテリ20の下部において互いに離れた辺部に沿ってそれぞれ取り付けられ、互いに隣接するバッテリ20の辺部に沿って取り付けられた支持板29同士が一体化されているので、バッテリ20を近接させて配置することにより、最小限の支持板29の大きさ(面積)で複数のバッテリ20をまとめて支持できる。
【0043】
そして、上記のバッテリ保持構造25を備えることで、低コストでコンパクトにバッテリ20を配置した建設機械1を提供できる。
【0044】
次に、図6に示される他の実施の形態を説明する。
【0045】
本実施の形態のバッテリ保持構造25は、支持板29が、バッテリ20の長手方向に複数に分割されている。つまり、本実施の形態の支持板29は、一実施の形態における支持板29の長手方向に対して直交する方向に長尺に形成されている。
【0046】
第一の方向である長手方向(左右方向)に隣接するバッテリ20については、長手方向の一側に位置するバッテリ20の長手方向の他側と、長手方向の他側に位置するバッテリ20の長手方向の一側と、がバッテリ20の長手方向に一体化された支持板29に支持されている。また、第一の方向と交差または直交する第二の方向である短手方向(前後方向)に隣接するバッテリ20については、短手方向の一側に位置するバッテリ20と短手方向の他側に位置するバッテリ20とが、バッテリ20の短手方向に一体化された支持板29に支持されている。
【0047】
本実施の形態において、第一支持板29aは、短手方向に隣接するバッテリ20を一体的に支持する。第一支持板29aは、バッテリ20の短辺部のうち、そのバッテリ20に対し長手方向に隣接するバッテリ20とは反対側の短辺部を支持する。つまり、本実施の形態の場合、第一支持板29aは、左側に位置する2つのバッテリ20の左側の短辺部を一体的に支持するものと、右側に位置する2つのバッテリ20の右側の短辺部を一体的に支持するものと、が設定されている。
【0048】
また、第二支持板29bは、短手方向に隣接するバッテリ20および長手方向に隣接するバッテリ20を一体的に支持する。第二支持板29bは、第一支持板29aと同等の長さを有し、かつ、第一支持板29aよりも短手方向に広く、第一支持板29aの2倍以上の幅を有する。第二支持板29bは、バッテリ20の短辺部のうち、そのバッテリ20に対し長手方向に隣接するバッテリ20側の短辺部を支持する。つまり、本実施の形態の場合、第二支持板29bは、左側に位置する2つのバッテリ20の右側の短辺部と右側に位置する2つのバッテリ20の左側の短辺部とを一体的に支持する。すなわち、隣接するバッテリ20において、互いに近接した辺部同士が共通の第二支持板29bに取り付けられる。
【0049】
図示される例では、第一支持板29aがバッテリ20の長手方向の両端部に位置し、それら第一支持板29a,29a間に第二支持板29bが位置する。第一支持板29aと第二支持板29bとは、互いに平行または略平行に配置される。
【0050】
また、被固定部35および取付部36は、マウントベース27を基準として一実施の形態と同じ位置にあり、支持板29の位置および形状に応じて、支持板29における被固定部35および取付部36の位置や配分が設定されている。
【0051】
このように、支持板29の長手方向とバッテリ20の長手方向および短手方向との関係が一実施の形態と逆となっていても、バッテリ20に設定された複数の支持板29の少なくともいずれかを、そのバッテリ20に隣接するバッテリ20に設定された支持板29のいずれかと一体化するなどの点で一実施の形態と同様の構成を有することにより、大掛かりな機械加工を必要とせず、振動に起因するバッテリ20の破損を抑制できるなど、一実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0052】
なお、上記の各実施の形態においては、バッテリ20が第一の方向と第二の方向との二方向に隣接する場合を例に挙げたが、一方向にのみ隣接する場合でも、同様に一体化された支持板29によって隣接するバッテリ20を支持することで、大掛かりな機械加工を必要とせず、振動に起因するバッテリ20の破損を抑制できるなど、同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
また、3つ以上のバッテリ20が隣接する構成であっても、隣接するバッテリ20の辺部を一体化された支持板29によって支持することで、大掛かりな機械加工を必要とせず、振動に起因するバッテリ20の破損を抑制できるなど、同様の作用効果を奏することができる。
【0054】
さらに、建設機械1の例として電動式油圧ショベルを示したが、これに限らず、例えば駆動源としてエンジンおよび電動部である電動モータを備えるハイブリッド式の建設機械などにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、バッテリを用いる建設機械の製造業、販売業などに携わる事業者にとって産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0056】
1 建設機械
15 機体フレーム
20 バッテリ
25 バッテリ保持構造
27 支持部としてのマウントベース
28 弾性部材
29 支持板
図1
図2
図3
図4
図5
図6