(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055464
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】使い捨て作業用帽子、及び使い捨て作業用帽子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A42B 1/012 20210101AFI20240411BHJP
A42B 1/019 20210101ALI20240411BHJP
A42B 1/04 20210101ALI20240411BHJP
A42B 1/041 20210101ALI20240411BHJP
【FI】
A42B1/012
A42B1/019 B
A42B1/04 A
A42B1/041
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162414
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】517042645
【氏名又は名称】株式会社つばさ
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】胡 翼
(57)【要約】
【課題】収縮状態での放電を抑制して帯電を持続させることにより、展開状態において毛髪やホコリを容易に付着させる使い捨て作業用帽子1を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る使い捨て作業用帽子1は、蛇腹状に収縮する収縮状態からドーム形状に展開する展開状態へと変形可能に形成されるとともに静電気が帯電される布地部材10と、展開状態の布地部材10の縁部11に沿って設けられる弾性部材30と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇腹状に収縮する収縮状態からドーム形状に展開する展開状態へと変形可能に形成されるとともに静電気が帯電される布地部材と、
展開状態の前記布地部材の縁部に沿って設けられる弾性部材と、を備える、使い捨て作業用帽子。
【請求項2】
前記布地部材は、スパンボンド不織布である、請求項1に記載の使い捨て作業用帽子。
【請求項3】
前記布地部材は、陽イオン界面活性剤を含む、請求項2に記載の使い捨て作業用帽子。
【請求項4】
前記弾性部材は、伸張した状態で前記縁部に縫い付けられ、前記弾性部材が伸張した状態から縮小した状態へと変化する際に前記縁部がプリーツ状に折り込まれ、
前記布地部材は、プリーツ状に折り込まれた前記縁部に合わせてプリーツ状に縮小される、請求項3に記載の使い捨て作業用帽子。
【請求項5】
前記布地部材は、収縮状態から展開状態へと変化する際に剥離帯電が発生する、請求項4に記載の使い捨て作業用帽子。
【請求項6】
原料樹脂から紡糸して陽イオン界面活性剤を含む不織布を製造する製布工程と、
前記不織布に静電気を帯電させる帯電工程と、
帯電した前記不織布で収縮状態における請求項1から5のいずれかに記載の使い捨て作業用帽子を成形する成形工程と、を含む、使い捨て作業用帽子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪や塵などの落下を防ぐ使い捨て作業用帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体や精密機器といった細かいものを作る工場や、医療品や食料品といった高い衛生基準が必要なものを作る工場では、毛髪やふけ、或いはホコリ等の落下防止のために様々な対策が行われてきた。その対策の一つとして、工場内において、作業員が頭部の毛髪部分を覆う使い捨て作業用帽子を着用している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業用帽子には、静電気によって作業員の毛髪やホコリなどを付着する機能が備えられているものがある。しかし、このような作業用帽子は、展開した状態で保管された場合、静電気が徐々に自然放電されてしまう。作業用帽子の帯電が低下すると、使用する際に毛髪やホコリの付着効果が低減する。このため、保管時に静電気の帯電が維持され、使用する際に毛髪やホコリを付着させるために必要な静電気を備えている使い捨て作業用帽子が求められている。
【0005】
本発明の目的は、収縮状態での放電を抑制して帯電を持続させることにより、展開状態において毛髪やホコリを容易に付着させる使い捨て作業用帽子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る使い捨て作業用帽子は、蛇腹状に収縮する収縮状態からドーム形状に展開する展開状態へと変形可能に形成されるとともに静電気が帯電される布地部材と、展開状態の前記布地部材の縁部に沿って設けられる弾性部材と、を備える。
【0007】
この構成によれば、使い捨て作業用帽子は、収縮状態での放電を抑制して帯電を持続させることにより、展開状態において毛髪やホコリを容易に付着させることができる。
【0008】
また、前記布地部材は、スパンボンド不織布であることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、使い捨て作業用帽子は、安価で生産性が高く、通気性や強度に優れたものとすることができる。
【0010】
また、前記布地部材は、陽イオン界面活性剤を含むことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、陽イオン界面活性剤が布地部材に含まれることで、毛髪やホコリを付着させるために必要な静電気量を使い捨て作業用帽子が維持し易くなることができる。
【0012】
また、前記弾性部材は、伸張した状態で前記縁部に縫い付けられ、前記弾性部材が伸張した状態から縮小した状態へと変化する際に前記縁部がプリーツ状に折り込まれ、前記布地部材は、プリーツ状に折り込まれた前記縁部に合わせてプリーツ状に縮小されることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、使い捨て作業用帽子は、弾性部材の縮小に応じて収縮状態の布地部材が縮小することで、布地部材の帯電性を維持することができる。
【0014】
また、前記布地部材は、収縮状態から展開状態へと変化する際に剥離帯電が発生することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、静電気を帯電する布地部材が収縮状態から展開状態へと変化する際に剥離帯電が発生することで、展開状態の際により多くの静電気を帯電した状態で使い捨て作業用帽子を用いることができる。
【0016】
本発明に係る使い捨て作業用帽子の製造方法は、原料樹脂から紡糸して陽イオン界面活性剤を含む不織布を製造する製布工程と、前記不織布に静電気を帯電させる帯電工程と、帯電した前記不織布で収縮状態における請求項1から5のいずれかに記載の使い捨て作業用帽子を成型する成形工程を含む。
【0017】
この方法によれば、陽イオン界面活性剤を加えて不織布を製造し、帯電処理を行うことで、収縮状態での放電を抑制して帯電を継続し、展開状態において毛髪やホコリを容易に付着させる使い捨て作業用帽子を製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のことから、本発明に係る使い捨て作業用帽子は、収縮状態での放電を抑制して帯電を持続させることにより、展開状態において毛髪やホコリを容易に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る使い捨て作業用帽子の収縮状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した使い捨て作業用帽子を展開する途中の様子を示す平面図である。
【
図3】(a)は
図2に示した使い捨て作業用帽子のA-A線端面図であって、(b)は
図3(a)の局部拡大図である。
【
図4】
図1に示した使い捨て作業用帽子の展開状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る使い捨て作業用帽子の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。各図には、方向関係を明確にするために適宜XYZ直交座標軸が示される。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る使い捨て作業用帽子1の収縮状態を示す。
図2は、使い捨て作業用帽子1が収縮状態から展開状態へと展開する変形途中を示す。
図3(a)は
図2に示した使い捨て作業用帽子のA-A線端面図であって、
図3(b)は
図3(a)の局部拡大図を示す。
図4は、使い捨て作業用帽子1の展開状態を示す。
図5は、本発明の実施形態に係る使い捨て作業用帽子1の製造工程を示すフローチャートを示す。
【0022】
図1から
図4で示す使い捨て作業用帽子1は、布地部材10と、弾性部材30とを備える。なお、異なる方向で行われる折り込み動作を明確にするために、以下において「縮小する」は布地部材10がX軸に沿って折り込まれる場合に使用する。また、同様に「収縮する」は布地部材10がY軸に沿って折り込まれる場合に使用する。
【0023】
布地部材10は、略矩形形状に裁断された布地で、静電気が帯電されている。布地部材10は、Y軸に沿って蛇腹状に収縮する略帯状形状の収縮状態から、ドーム形状に展開する展開状態へと変形可能に形成される。
【0024】
なお、本実施形態では、布地部材10は、
図1で示すとおり、端部12,12がそれぞれ圧着されている。布地部材10が収縮状態を保持し且つ布地部材10がドーム形状に展開する際の妨げにならない構成であれば、端部12,12は縫い合わせた構成であってもよい。
【0025】
また、使い捨て作業用帽子1を装着する際、端部12,12のうちの一方が、ユーザの額側、即ちユーザの前方を指す目印として利用することもできる。
【0026】
弾性部材30は、布地部材10の縁部11に設けられる。使い捨て作業用帽子1が収縮状態の場合、
図1に示すとおり、弾性部材30は、略帯状形状の布地部材10のX軸に沿って設けられる。縁部11は、ドーム形状に展開した布地部材10に形成される環状の開口にあたる。弾性部材30は、伸張した状態で、縁部11に沿って所定の間隔に縫い付けられる。
【0027】
なお、本実施形態では、弾性部材30は、ゴム糸である。装着したユーザの頭部から使い捨て作業用帽子1がズレ落ちない構成であれば、弾性部材30は、ゴム紐やゴムバンド等であってもよい。
【0028】
また、使い捨て作業用帽子1が展開状態の際に、布地部材10が環状の開口を形成することが可能であれば、端部12,12を設けなくてもよい。
【0029】
伸張した状態の弾性部材30が元の形状へと縮小する際、縁部11はX軸に沿ってプリーツ状に縮小される。蛇腹状に収縮した布地部材10は、プリーツ状に縮小した縁部11に合わせて、X軸に沿ってプリーツ状に縮小される。したがって、布地部材10は、Y軸に沿って蛇腹状に収縮し、X軸に沿ってプリーツ状に縮小される。弾性部材30の縮小に応じて収縮状態の布地部材10が縮小することで、布地部材10が接し合う面積が広くなり、布地部材10の自然放電が抑制され、静電気の帯電が維持される。
【0030】
布地部材10は、陽イオン界面活性剤を含むスパンボンド不織布が好ましい。スパンボンド不織布は、安価で生産性が高く、通気性や強度に優れている。陽イオン界面活性剤は、スパンボンド不織布である布地部材10に含まれることで、布地部材10に帯電した静電気が保持され、静電気の自然放電をさらに抑制することができる。
【0031】
ユーザは、自身の手(図示されていない)で、収縮状態の使い捨て作業用帽子1をまずY軸に沿って離間する方向に引張っる。その後、X軸、Z軸のそれぞれに沿って離間する方向に適宜引張って展開状態へと変形させることができる。
図2は、収縮状態の使い捨て作業用帽子1が、Y軸に沿って離間する矢印方向に引張されて展開する様子を示している。収縮状態の使い捨て作業用帽子1が、
図3(a)に示すとおり、矢印方向に引き離されると、接し合っていた布地部材10で剥離帯電が発生する。
【0032】
例えば、
図3(b)に示すとおり、接し合っていた布地部材10の、第1接面領域101と第2接面領域102とがY軸に沿って引き離され、第1接面表域101と第2接面領域102との間で剥離帯電が発生する。なお、収縮状態で接し合っていた布地部材10は引き離されることで剥離帯電が発生するため、剥離帯電が発生する箇所は例示した箇所に限定するものではない。
【0033】
展開状態の使い捨て作業用帽子1は、
図4に示すとおり、頭髪全体と耳部とを含むユーザの頭部に装着される。使い捨て作業用帽子1は、布地部材10が帯電される静電気と、剥離帯電による静電気とを帯電している。使い捨て作業用帽子1は、ユーザに痛みや痒みといった不快を与えない程度でこれらの静電気量を帯電している。このため、使い捨て作業用帽子1は、ユーザが使い捨て作業用帽子1からの静電気を体感することなく、毛髪やホコリを付着することができる。
【0034】
以上のことから、収縮状態の使い捨て作業用帽子1は、布地部材10が蛇腹状に折り込まれることで、布地部材10が接し合って静電気の自然放電が抑制される。使い捨て作業用帽子1は、収縮状態からドーム形状の展開状態に展開されると、それまで布地部材10に帯電された静電気により、毛髪やホコリを布地部材10に付着させることができる。
【0035】
本実施形態に係る使い捨て作業用帽子1の製造工程について説明する。
【0036】
本実施形態に係る使い捨て作業用帽子1の製造方法は、
図5で示すとおり、原料樹脂から紡糸して陽イオン界面活性剤を含む不織布を製造する製布工程S1と、不織布に静電気を帯電させる帯電工程S2と、帯電した不織布で収縮状態における請求項1から5のいずれかに記載の使い捨て作業用帽子1を成形する成形工程S3と、を含む。
【0037】
製布工程S1では、ポリプロピレン(PP)に陽イオン界面活性剤を加えた原料樹脂から、静電気の帯電性が高い繊維が紡糸される。紡糸された繊維を集積層等に形成し、陽イオン界面活性剤を含む不織布が製造される。陽イオン界面活性剤を含む不織布は、陽イオン界面活性剤によって静電気の帯電が保持され易くなる。
【0038】
帯電工程S2では、静電気が帯電され易くなった該不織布に対して放電加工を行い、該不織布に静電気を帯電させる。不織布に所定の電圧が加わると、不織布の原子、分子間の原子構成が変化し、各電子殻に正電荷が保持される。これにより、毛髪やホコリを付着させるために必要な静電気量が不織布に帯電される。
【0039】
成形工程S3では、帯電工程S2で帯電された不織布を蛇腹状に折り込み、略帯状形状に収縮させて両端の端部を圧着させる。その後、不織布において、使い捨て作業用帽子1の開口となる縁部に伸張した状態のゴム糸が設けられる。ゴム糸が設けられた不織布は、ゴム糸の縮小に応じて、縁部とともに略帯状形状の不織布をプリーツ状に折り込み、略スティック形状に縮小され、使い捨て作業用帽子1を成形する。この使い捨て作業用帽子1は、略スティック形状から、ドーム形状に展開される展開状態へと変形することができる。
【0040】
以上のことから、本実施形態に係る製造方法では、陽イオン界面活性剤を加えて不織布を製造し、帯電処理を行うことで、収縮状態での放電を抑制して帯電を継続し、展開状態において毛髪やホコリを容易に付着させる使い捨て作業用帽子1を製造することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 作業用帽子
10 布地部材
11 縁部
12,12 端部
30 弾性部材
101 第1接面領域
102 第2接面領域
S1 製布工程
S2 帯電工程
S3 成形工程