(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055469
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】扉構造および該扉構造を用いたブース
(51)【国際特許分類】
E06B 3/36 20060101AFI20240411BHJP
E06B 7/36 20060101ALI20240411BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
E06B3/36
E06B7/36 A
E04H1/12 A
E04H1/12 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162419
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】武田 絢子
(72)【発明者】
【氏名】今井 良輔
(72)【発明者】
【氏名】平野 佑太
【テーマコード(参考)】
2E014
【Fターム(参考)】
2E014AA02
2E014DA04
2E014DA06
2E014DB02
(57)【要約】
【課題】意匠性と遮音性に優れた扉構造および該扉構造を用いたブースを提供する。
【解決手段】扉構造110は、戸板部1と、戸板部1の第二側RTの側端部に設けられて高さ方向Vに延びる吊元側端部2とを有し、吊元側端部2における高さ方向Vに延びる回転軸Rを中心に回動可能な扉部10と、開口部の第二側RTの縁部に配置され、高さ方向Vに延びる縦枠部20とを備え、縦枠部20は、第一側LTに延出して内部空間S2側に設けられた内側延出部3と、第一側LTに延出して外部空間S1側に設けられた外側延出部4とを有し、扉部10が閉位置に位置するとき、吊元側端部2の外部空間S1側の面と、縦枠部20の外部空間S2側の面とは略同一平面であり、吊元側端部2の最も第二側RTに位置する先端部2tは、内側延出部3の最も第一側LTに位置する先端部3tおよび外側延出部4の最も第一側LTに位置する先端部4tより第二側RTに配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空間と内部空間とを連通する開口部を開閉可能な扉構造であって、前記扉構造の開閉時に最も移動する自由端側を幅方向における第一側、前記第一側と反対側を幅方向における第二側としたとき、
略平板の戸板部と、前記戸板部の前記第二側の側端部に設けられて高さ方向に延びる吊元側端部と、を有し、前記吊元側端部における前記高さ方向に延びる回転軸を中心に回動可能な扉部と、
前記開口部の前記第二側の縁部に配置され、前記高さ方向に延びる縦枠部と、
を備え、
前記縦枠部は、前記第一側に延出して前記内部空間側に設けられた内側延出部と、前記第一側に延出して前記外部空間側に設けられた外側延出部と、を有し
前記扉部が閉位置に位置するとき、
前記吊元側端部の前記外部空間側の面と、前記縦枠部の前記外部空間側の面とは略同一平面であり、
前記吊元側端部の最も前記第二側に位置する先端部は、前記内側延出部の最も前記第一側に位置する先端部および前記外側延出部の最も前記第一側に位置する先端部より前記第二側に配置されている、
扉構造。
【請求項2】
前記扉部が前記閉位置に位置するとき、前記回転軸と垂直な断面において、前記吊元側端部は、前記回転軸より前記第二側および前記内部空間側の範囲が前記回転軸を中心とする円弧形状である、
請求項1に記載の扉構造。
【請求項3】
前記吊元側端部は、前記扉部が前記閉位置に位置するときに、前記吊元側端部から前記第二側に延出した突出片を有する、
請求項2に記載の扉構造。
【請求項4】
前記突出片は、遮音部材を有する、
請求項3に記載の扉構造。
【請求項5】
前記内側延出部の最も前記第一側に位置する前記先端部と、前記吊元側端部との距離は、8mm未満である、
請求項2に記載の扉構造。
【請求項6】
前記外側延出部の最も前記第一側に位置する前記先端部と、前記吊元側端部との距離は、8mm未満である、
請求項5に記載の扉構造。
【請求項7】
前記内部空間を囲う壁体および前記開口部を有する箱体と、
前記箱体の前記開口部に取り付けられた請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の扉構造と、
を備える、
ブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉構造および該扉構造を用いたブースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外部からの騒音に影響されずに執務する内部空間を備えたブース(個室又は防音室)がある。使用者がブースの内部空間で集中して作業するため、ブースの内側と外側とを隔てる壁体や扉構造は、優れた遮音性が求められる。
【0003】
ブース等に適用できる扉構造として、特許文献1に記載されるドア装置がある。特許文献1に記載されるドア装置において、ドアの吊元側の膨出部は、ドアの厚さと同一直径の半円弧状であり、ピボットヒンジのヒンジピンと同心に形成されている。そのため、ドアを開閉しても、ドア枠の段部との相対関係が変わることがなく、ドアとドア枠との隙間を十分小さく保つことができる。また、段部に設ける段差は、ドアの開放側(外側)に形成されているため、ドアを開いてもドアの表面が実質的に段部に接近することがない。そのため、ドアの吊元側における指詰め(指挟み)事故を有効に防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるドア装置は、ドアの外側において、ドア枠の段部とドアとに段差があるため、見栄えが煩雑となり意匠性が劣る虞がある。また、ドアの回転軸に垂直な断面において、ドアとドア枠との隙間が単純なL字形状をしている。そのため、ドアとドア枠との隙間を経由してドアの外側から内側へ伝搬する音が減衰しにくく、遮音性が劣る虞がある。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、意匠性と遮音性に優れた扉構造および該扉構造を用いたブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の扉構造は、外部空間と内部空間とを連通する開口部を開閉可能な扉構造であって、前記扉構造の開閉時に最も移動する自由端側を幅方向における第一側、前記第一側と反対側を幅方向における第二側としたとき、略平板の戸板部と、前記戸板部の前記第二側の側端部に設けられて高さ方向に延びる吊元側端部と、を有し、前記吊元側端部における前記高さ方向に延びる回転軸を中心に回動可能な扉部と、前記開口部の前記第二側の縁部に配置され、前記高さ方向に延びる縦枠部と、を備え、前記縦枠部は、前記第一側に延出して前記内部空間側に設けられた内側延出部と、前記第一側に延出して前記外部空間側に設けられた外側延出部と、を有し前記扉部が閉位置に位置するとき、前記吊元側端部の前記外部空間側の面と、前記縦枠部の前記外部空間側の面とは略同一平面であり、前記吊元側端部の最も前記第二側に位置する先端部は、前記内側延出部の最も前記第一側に位置する先端部および前記外側延出部の最も前記第一側に位置する先端部より前記第二側に配置されている。
【0008】
本態様では、扉部が閉位置に位置するとき、吊元側端部の外部空間側の面と、縦枠部の外部空間側の面とは同一平面を形成しているため、外部空間側から見た扉構造は段差形状が少なく、優れた意匠性を有する。また、吊元側端部の最も第二側に位置する先端部は、内側延出部の最も第一側に位置する先端部および外側延出部の最も第一側に位置する先端部より第二側に配置されているため、外部空間から内部空間へ伝わる音は、入り組んだ略U字形状の経路(隙間)を通過するため、単純なL字形状の隙間を通過するよりも減衰しやすく、扉構造は遮音性に優れる。
【0009】
上記扉構造では、前記扉部が前記閉位置に位置するとき、前記回転軸と垂直な断面において、前記吊元側端部は、前記回転軸より前記第二側および前記内部空間側の範囲が前記回転軸を中心とする円弧形状であってもよい。
【0010】
本態様では、内側延出部の最も第二側に位置する先端部から吊元側端部までの距離は、扉部が閉位置と開位置とを回動しても一定の距離に維持されるため、内部空間側において、扉部と縦枠部との隙間に使用者の指が挟まれるのを抑制できる。
【0011】
上記扉構造では、前記吊元側端部は、前記扉部が前記閉位置に位置するときに、前記吊元側端部から前記第二側に延出した突出片を有してもよい。
【0012】
本態様では、吊元側端部から第二側に延出した突出片により、外部空間から内部空間へ伝わる音が通る経路がより入り組んだ経路になるため、扉構造は、より遮音性に優れる。
【0013】
上記扉構造では、前記突出片は、遮音部材を有してもよい。
【0014】
本態様では、突出片が遮音部材を有することで、外部空間から内部空間へ伝わる音が通る経路をより入り組んだ経路にすることや、吸音性能を備えることが可能となり、扉構造は、より遮音性に優れる。
【0015】
上記扉構造では、前記内側延出部の最も前記第一側に位置する前記先端部と、前記吊元側端部との距離は、8mm未満であってもよい。
【0016】
本態様では、内側延出部の最も第一側に位置する先端部から吊元側端部までの距離を8mm未満とすることで、内部空間側において、扉部と縦枠部との隙間に使用者の指が挟まれるのをより抑制できる。
【0017】
上記扉構造では、前記外側延出部の最も前記第一側に位置する前記先端部と、前記吊元側端部との距離は、8mm未満であってもよい。
【0018】
本態様では、外側延出部の最も第一側に位置する先端部から吊元側端部までの距離を8mm未満とすることで、外部空間側において、扉部と縦枠部との隙間に使用者の指が挟まれるのを抑制できる。
【0019】
本発明のブースは、前記内部空間を囲う壁体および前記開口部を有する箱体と、前記箱体の前記開口部に取り付けられた上記に記載のいずれかの扉構造と、を備える。
【0020】
本態様では、内部空間と外部空間とを箱体および扉構造で分割し、扉構造を開閉可能とすることで、使用者が内部空間で執務することができるブースを提供できる。また、上記の意匠性および遮音性に優れた扉構造を備えることで、意匠性および遮音性に優れたブースを提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の扉構造および該扉構造を用いたブースによれば、意匠性と遮音性に優れた扉構造および該扉構造を用いたブースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係るブースの概略を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る扉構造を模式的に示す正面図である。
【
図5】変形例3に係る扉構造の閉位置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係るブース100の概略を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る扉構造110を模式的に示す正面図である。
図3は、扉構造110の閉位置P1を示す断面図である。
図4は、扉構造110の開位置P2を示す断面図である。
【0025】
ブース100は、ブース100の外部にある外部空間S1と、ブース100の内部にある内部空間S2とを分割可能な個室ブースである。使用者は、扉構造110を開けることで外部空間S1と内部空間S2とを連通してブース100の内部空間S2へ入ることができ、扉構造110を閉じることでブース100の外部空間S1と内部空間S2とを分割できる。
【0026】
本実施形態では、
図1に示すように、ブース100における鉛直方向を「高さ方向(上下方向)V」、鉛直上向きを高さ方向Vにおける「上側UP」、鉛直下向きを高さ方向Vにおける「下側LO」と定義する。また、ブース100における前後方向を「前後方向D」、ブース100において扉構造110が配置されている側を前後方向Dにおける「前側FR」、前側FRと反対側を前後方向Dにおける「後側RR」と定義する。また、ブース100における左右方向を「幅方向(左右方向)H」、扉構造110の開閉時に最も移動する自由端側を幅方向Hにおける「第一側(左側)LT」、第一側と反対側を幅方向Hにおける「第二側(右側)RT」と定義する。
【0027】
ブース100は、扉構造110と、箱体120とを備える。ブース100は、外部空間S1と内部空間S2とを分割する個室ブースである。扉構造110は、外部空間S1と内部空間S2とを連通する箱体120の開口部40を開閉可能な片開きの扉構造である。
【0028】
扉構造110は、扉部10と、縦枠部20とを備える。扉部10は、回転軸Rを回転中心として閉位置P1と開位置P2とを縦枠部20に対して回動可能である。
【0029】
ここで、本実施形態において、扉構造110が閉位置P1に位置するとき、扉構造110に対して、外部空間S1側は前側FRと一致する。また、内部空間S2側は後側RRと一致する。なお、扉構造110において、外部空間S1と内部空間S2とを分割しない扉構造も含まれるため、外部空間S1側が前側FRを示すとは限られない。また、内側空間S2側が後側RRを示すとは限られない。外部空間S1側と後側RRとが一致し、内部空間S2側と前側FRとが一致してもよい。
【0030】
扉部10は、戸板部1と、吊元側端部2とを備える。戸板部1は、
図1に示すように、開口部40を閉塞可能な略平板状である。
【0031】
吊元側端部2は、戸板部1の第二側(右側)RTの側端部に設けられ、高さ方向(上下方向)Vに延びている。
図2に示すように、吊元側端部2は、上側UPに設けられた円柱状の第一軸部2aと、下側LOに設けられ、下側LOに縮径した円錐台状の第二軸部2bとを備える。
【0032】
ここで、第一軸部2aおよび第二軸部2bの中心軸を通る回転軸Rを中心に吊元側端部2を回動可能に支持する縦枠部20について説明する。
【0033】
縦枠部20は、高さ方向Vに延びる略棒状であり、開口部40の第二側RTの縁部に配置されている。縦枠部20は、上側UPに設けられて開孔を有する第一軸受け20aと、下側LOに設けられ、内周面が吊元側端部2の第二軸部2bの外周面と当接可能な窪みを有する第二軸受け20bとを備える。
【0034】
図2に示すように、上側UPにおいて、第一軸受け20aに設けられた開孔内に吊元側端部2の第一軸部2aが配置されている。また、下側LOにおいて、吊元側端部2の第二軸部2bは、第二軸部2bの外周面が第二軸受け20bの内周面と当接して配置されている。
【0035】
吊元側端部2は、高さ方向Vに延びる第一軸部2aおよび第二軸部2bの中心軸を通る回転軸Rを中心に回動可能に縦枠部20に支持されている。すなわち、扉部10は、吊元側端部2における高さ方向Vに延びる回転軸Rを回転中心として縦枠部20に対して回動可能である。
【0036】
また、縦枠部20は、内側延出部3と、外側延出部4とを備える。
図3に示すように、内側延出部3は、第一側(左側)LTに延出しており、内部空間S2側(後側RR)に設けられている。また、外側延出部4は、第一側LTに延出しており、外部空間S1側(前側FR)に設けられている。
【0037】
図3に示すように、回転中心Rに垂直な断面において、縦枠部20は、第一側LTに開口を向けた略U字形状をしている。内側延出部3は、縦枠部20における略U字形状の後側RRの端部を形成している。外側延出部4は、縦枠部20における略U字形状の前側FRの端部を形成している。外側延出部4の最も第一側LTに位置する先端部4tは、吊元側端部2の第二側RTに配置されている。
【0038】
また、内側延出部3の最も第一側LTに位置する先端部3tは、吊元側端部2の後側RRに配置され、外側延出部4の最も第一側LTに位置する先端部4tより第一側LTに配置されている。その結果、吊元側端部2と縦枠部20との隙間において、内側延出部3に遮られて、外側空間S1側から内側空間S2は見えない。
【0039】
縦枠部20の形状は、
図3に示す形状に限られず、例えば、内側延出部3の最も第一側LTに位置する先端部3tと、外側延出部4の最も第一側LTに位置する先端部4tとが、回転軸Rを中心とする円弧形状でなだらかに接続されていてもよい。その結果、外部空間S1側の吊元側端部2と縦枠部20との隙間から見える縦枠部20は、段差形状が少なく単純な形状であるため、意匠性に優れる。
【0040】
ここで、
図3に示すように、扉部10が閉位置P1に位置するとき、吊元側端部2の外部空間S1側の面と、縦枠部20の外部空間S1側の面とは同一平面を形成している。そのため、外部空間S1側から見た扉構造110は段差形状が少なく、優れた意匠性を有する。吊元側端部2の外部空間S1側の面と、縦枠部20の外部空間S1側の面とが同一平面を形成する範囲は、吊元側端部2と縦枠部20との隙間の近傍が望ましく、吊元側端部2および縦枠部20の外部空間S1側の幅方向Hにおける範囲において、吊元側端部2における第二側RTの端部から2mmの範囲と、縦枠部20における第一側LTの端部から2mmの範囲とが同一平面であることが望ましい。
【0041】
また、吊元側端部2の最も第二側RTに位置する先端部2tは、内側延出部3の最も第一側LTに位置する先端部3tおよび外側延出部4の最も第一側LTに位置する先端部4tより第二側RTに配置されている。
【0042】
そのため、回転軸Rに垂直な断面における吊元側端部2と縦枠部20との隙間は、第一側LTに開口を向けた略U字形状をしている。外部空間S1から吊元側端部2と縦枠部20との隙間を通って内部空間S2へ伝わる音は、外部空間S1から、外側延出部4の最も第一側LTに位置する先端部4tと吊元側端部2との隙間へ入り、吊元側端部2の最も第二側RTに位置する先端部2tに沿って第二側RTへ屈曲し、その後、内側延出部3に沿って第一側LTに屈曲し、内側延出部3の最も第一側LTに位置する先端部3tと吊元側端部2との隙間を通過して内部空間S2へ到達する。外部空間S1から内部空間S2へ伝わる音は、入り組んだ略U字形状の経路(隙間)を通過するため、単純なL字形状の隙間を通過するよりも減衰しやすく、扉構造110は遮音性に優れる。
【0043】
図3および
図4に示すように、閉位置P1と開位置P2とを回転する扉部10と、縦枠部20とは接触しない。また、本実施形態において、扉部10は、閉位置P1と開位置P2とを略90°回転可能である。
【0044】
ここで、吊元側端部2における回転軸Rより第二側RTおよび内部空間S2側の範囲2sは、回転軸Rを中心とする円弧形状が望ましい。その結果、吊元側端部2と、内側延出部3の最も第一側LTに位置する先端部3tとの距離D1は、扉部10が閉位置P1と開位置P2とを回転しても変わらずに一定の距離に維持される。その結果、内部空間S2側において、扉部10と縦枠部20との隙間に使用者の指が挟まれるのを抑制できる。
【0045】
扉部10の開閉角度が90°よりも大きい場合、開閉角度によって、吊元側端部2における円弧形状の範囲を回転中心Rより外側空間S1側へ広くすることで、開閉する扉部10における距離D1を一定に維持できる。
【0046】
さらに、内側延出部3の最も第一側LTに位置する先端部3tから吊元側端部2までの距離D1は、0mmより大きく、8mm未満が望ましい。距離D1を8mm未満とすることで、扉部10と縦枠部20との隙間に使用者の指が挟まれるのをより抑制できる。
【0047】
また、外側延出部4の最も第一側LTに位置する先端部4tから吊元側端部2までの距離D2は、0mmより大きく、8mm未満が望ましい。距離D2を8mm未満とすることで、外部空間S1側においても、扉部10と縦枠部20との隙間に使用者の指が挟まれるのを抑制できる。
【0048】
距離D1および距離D2は、扉部10の回転を阻害しないために0mmより大きいことが望ましいが、距離D1および距離D2が0mmでも扉部10の回転が阻害されない場合は、これに限られない。例えば、吊元側端部2の材質がゴム等の弾性材であり、吊元側端部2と縦枠部20とが接触していても扉部10が回転可能な場合、距離D1および距離D2は0mmでもよい。
【0049】
吊元側端部2の回転軸Rより外部空間S1側において、第二側RTの形状は、回転軸Rを中心とする円弧形状をしていてもよい。その結果、外部空間S1側においても、内部空間S2側と同様に、扉部10が閉位置P1と開位置P2とを回動しても距離D2が一定の距離に維持され、扉部10と縦枠部20との隙間に使用者の指が挟まれるのをより抑制できる。
【0050】
本実施形態において、縦枠部20は、吊元側端部2における第二側RTの円弧形状の範囲を覆って配置されている。
【0051】
吊元側端部2の第二側RTにおいて、縦枠部20に覆われた範囲を円弧形状とすることで、内部空間S2側および外部空間S1側において使用者が指を挟むのを抑制できる。例えば、吊元側端部2において、回転軸Rより第二側RTの範囲が回転軸Rを中心とする円弧形状でもよく、さらに、回転軸Rより第二側RTおよび外側空間S1の範囲は、中心角が30°以上90°未満の回転軸Rを中心とする円弧形状でもよい。
【0052】
また、本実施形態において、吊元側端部2における第二側RTの円弧形状の半径は、吊元側端部2の前後方向Dにおける厚さ(寸法)より小さく、吊元側端部2の前後方向Dにおける厚さの半分の値より大きい。また、回転軸Rは、吊元側端部2の前後方向Dにおける中心より外側空間S1側に配置されている。
【0053】
使用者が扉部10を閉めるときの動作において、扉部10の第一側LTに設けられたドアノブ等から手を離して勢いをつけて扉部10を閉める可能性がある。また、扉部10を容易に閉められるようにするため、扉部10が閉じる方向に対して付勢するバネ等の機構を取り付けてもよい。扉部10が閉まる方向に付勢されることで、扉部10と縦枠部20との隙間において、内部空間S2側の隙間は外部空間S1側の隙間よりも使用者が指を挟む可能性が高く、使用者が指を挟むのを抑制する構造がより求められる。
【0054】
箱体120は、外部空間S1と内部空間S2とを分割する壁体30と、壁体30に設けられた貫通孔であり外部空間S1と内部空間S2とを連通する開口部40とを備える。箱体120は、
図1に示すように、壁体30によって形成された直方体であり、前側FRの面の一部が開口部40によって開いている。
【0055】
ブース100は、箱体120の開口部40に扉構造110が取り付けられて形成されている。すなわち、ブース100の内部空間S2において、上側UP、下側LO、第一側LT、第二側RTおよび後側RRと、前側FRの開口部40以外の一部分とが壁体30によって囲われている。内部空間S2の壁体30によって囲われていない前側FRの一部分(開口部40)には扉構造110が配置されており、扉部10が閉位置P1に位置するとき、内部空間S2は、壁体30および扉構造110に囲われて外部空間S1と分割されている。
【0056】
箱体120および扉構造110に囲われた内部空間S2は、使用者が執務等の作業をするのに十分な大きさを有する。使用者は、扉部10を回転軸Rを回転中心として回動させることで閉位置P1から開位置P2に移動させ、外部空間S1とブース100の内部空間S2とを行き来できる。また、扉部10を閉位置P1にすることで、外部空間S1と内部空間S2とを分割できる。さらに、遮音性に優れた扉構造110を用いることで、使用者は、内部空間S2において、外部空間S1からの騒音が伝わりにくい静かな環境で執務することができる。
【0057】
本実施形態の扉構造110および扉構造110を用いたブース100によれば、扉部10が閉位置P1に位置するとき、吊元側端部2の外部空間S1側の面と、縦枠部20の外部空間S1側の面とは同一平面を形成している。そのため、外部空間S1側から見た扉構造110は段差形状が少なく、優れた意匠性を有する。また、吊元側端部2の最も第二側RTに位置する先端部2tは、内側延出部3の最も第一側LTに位置する先端部3tおよび外側延出部4の最も第一側LTに位置する先端部4tより第二側RTに配置されている。そのため、外部空間S1から内部空間S2へ伝わる音は、略U字形状の経路(隙間)を通過するため、単純なL字形状の隙間を通過するよりも減衰しやすく、扉構造110は遮音性に優れる。
【0058】
その結果、意匠性と遮音性に優れた扉構造110および扉構造110を用いたブース100を提供することができる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0060】
(変形例1)
上記実施形態において、
図3および
図4に示すように、扉部10は、戸板部1の第二側RTの側端部に吊元側端部2が接続されているが、扉部の態様はこれに限定されない。扉部は、戸板部と吊元側端部が一体に形成されてもよい。例えば、戸板部と吊元側端部とが一体に形成された平板状の扉部において、第二側RTの形状が上記実施形態の吊元側端部2の形状をしていればブースおよび扉構造は優れた意匠性および遮音性を有することができる。
【0061】
(変形例2)
上記実施形態において、ブース100は、片開きの扉構造110を備えるが、ブースの態様はこれに限定されない。ブースは、両開きの扉構造を備えてもよい。ブースが両開きの扉構造を備える場合、例えば、上記実施形態の扉構造110と、扉構造110を幅方向Hに反転した構造の扉構造とを備える両開きの扉構造とすることで、上記実施形態と同様に、ブースおよび扉構造は優れた意匠性および遮音性を有することができる。
【0062】
(変形例3)
上記実施形態において、閉位置P1に位置する扉部10において、吊元側端部2の最も第二側RTに位置する先端部2tが扉部10の最も第二側RTに位置するが、扉部の態様はこれに限定されない。扉部10Aの吊元側端部2Aは、閉位置P1に位置する扉部10Aにおいて最も第二側RTに設けられた突出片5を有してもよい。
図5は、変形例3に係る扉構造110Aの閉位置P1を示す断面図である。
【0063】
吊元側端部2Aは、
図5に示すように、扉部10Aが閉位置P1に位置するときに、吊元側端部2Aから第二側RTに延出した突出片5を有する。突出片5は、吊元側端部2Aの最も第二側RTに位置する先端部2tより第二側RTに延出している。そのため、吊元側端部2Aと縦枠部20との隙間において、外部空間S1から内部空間S2へ伝わる音は、突出片5に遮られ、突出片5を第二側RTに避けた経路を進んで内側空間S2側へ伝わる。その結果、吊元側端部2Aと縦枠部20との隙間における外部空間S1から内部空間S2へ伝わる音は、上記実施形態と比較してより入り組んだ経路を通過するため、音がより減衰しやすくなり、扉構造110の遮音性がより向上する。
【0064】
また、突出片5は、遮音部材5aを有してもよい。
図5に示すように、扉部10Aが閉位置P1に位置するとき、遮音部材5aは、突出片5と、外側延出部4の後側RRの面4sとの間に配置されている。また、突出片5は、遮音部材5aを介して外側延出部4の後側RRの面4sに接触している。そのため、吊元側端部2Aと縦枠部20との隙間は、突出片5および遮音部材5aで塞がれて外部空間S1と内部空間S2とが連通していない。その結果、扉部10Aが閉位置P1に位置するとき、外部空間S1から内部空間S2へ音が伝わりにくく、扉構造110は、より優れた遮音性を有することができる。突出片5が遮音部材5aを有さない場合でも、突出片5が外側延出部4に接触し、突出片5によって吊元側端部2Aと縦枠部20との隙間が塞がれていれば、扉構造110はより優れた遮音性を有することができる。
【0065】
遮音部材5aは、突出片5に設けられてもよいし、外側延出部4に設けられてもよい。また、遮音部材5aは、閉位置P1に位置する突出片5と、外側延出部4の後側RRの面4sとの間に配置されていなくてもよい。
【0066】
例えば、突出片5に設けられた遮音部材5aが、閉位置P1に位置する突出片5よりもさらに第二側RTに突出して配置されていれば、吊元側端部2Aと縦枠部20との隙間を伝わる音が通る経路がより入り組んだ経路になるため、音が減衰しやすくなり、扉構造110Aの遮音性が向上する。
【0067】
また、遮音部材5aとして、発泡ゴム等の弾性材を使用できる。遮音部材5aとして弾性材を用いることで、突出片5が遮音部材5aを介して外側延出部4と接触する場合に、突出片5と外側延出部4との接触による打音を抑制できる。また、遮音部材5aとして、吸音性能を有する材料を使用してもよい。遮音部材5aとして吸音性能を有する材料を用いることで、吊元側端部2Aと縦枠部20との隙間を通過する音を遮音部材5aが吸音し、扉構造110の遮音性を向上できる。
【符号の説明】
【0068】
100 ブース
110 扉構造
10 扉部
1 戸板部
2 吊元側端部
2t 吊元側端部の最も第二側に位置する先端部
2s 吊元側端部における回転軸より第二側および内部空間側の範囲
20 縦枠部
3 内側延出部
3t 内側延出部の最も第一側に位置する先端部
4 外側延出部
4t 外側延出部の最も第一側に位置する先端部
5 突出片
5a 遮音部材
120 箱体
30 壁体
40 開口部
S1 外部空間
S2 内部空間
R 回転軸
V 高さ方向(上下方向)
UP 上側
LO 下側
H 幅方向(左右方向)
LT 第一側(左側)
RT 第二側(右側)
P1 閉位置
P2 開位置
D1 内側延出部の最も第一側に位置する先端部から吊元側端部までの距離
D2 外側延出部の最も第一側に位置する先端部から吊元側端部までの距離