(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005547
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ツール取替装置および調心機構
(51)【国際特許分類】
B25J 15/04 20060101AFI20240110BHJP
B23K 9/12 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B25J15/04
B23K9/12 331H
B23K9/12 331L
B23K9/12 331R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105762
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 寿朗
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS12
3C707CY03
3C707CY04
3C707CY12
3C707CY32
3C707GS04
3C707GS05
3C707GS12
(57)【要約】
【課題】このツール取替装置は、ロボットアームへの不要な外力を加えることなく、ロボットアームへの動作負荷を軽減させることができるとともに、ショックセンサが動作した後の復帰作業時間を低減する。
【解決手段】このツール取替装置1は、円筒状ハウジング21と弾性力付与部材40との間には、静止状態に対してスイングシャフト60が揺動し、弾性力付与部材40が円筒状ハウジング21側に所定量移動した状態を検知する検知装置30が設けられ、円筒状ハウジング21とスイングシャフト60との間には、スイングシャフト60の揺動状態から静止状態に戻った際に、スイングシャフト60の中心と円筒状ハウジング21の中心とを一致させ、中心軸CL回りの位置決めを行なう調心機構が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールが装着される装着面と、ロボットアームに取り付けられる取付面とを備えるツール取替装置であって、
中心軸に対して環状に設けられ、前記取付面を有し、前記中心軸を中心とする第1貫通孔が設けられる円盤状の環状アダプタと、
前記環状アダプタに対して同軸に取り付けられ、前記中心軸を中心とする第2貫通孔を有する円筒状ハウジングと、
前記円筒状ハウジングの内側に揺動可能に配置され、静止状態において前記円筒状ハウジングと同軸に設けられ、前記装着面および前記中心軸を中心とする第3貫通孔が設けられスイングシャフトと、
前記円筒状ハウジングと前記スイングシャフトとの間に設けられ、前記スイングシャフトが揺動状態において、前記スイングシャフトを前記円筒状ハウジングから遠ざかる方向に付勢して、前記スイングシャフトを静止状態にするための弾性力を発揮する弾性力付与部材と、
を備え、
前記円筒状ハウジングと前記弾性力付与部材との間には、前記静止状態に対して前記スイングシャフトが揺動し、前記弾性力付与部材が前記円筒状ハウジング側に所定量移動した状態を検知する検知装置が設けられ、
前記円筒状ハウジングと前記スイングシャフトとの間には、前記スイングシャフトの揺動状態から静止状態に戻った際に、前記スイングシャフトの中心と前記円筒状ハウジングの中心とが一致し、前記中心軸回りの位置決めを行なう調心機構が設けられている、
ツール取替装置。
【請求項2】
前記円筒状ハウジングは、
環状プレートと、
前記環状プレートの内側に円筒状に設けられ、前記第2貫通孔を規定する第1円筒状部材と、
前記環状プレートの外側に、前記第1円筒状部材と環状空間を隔てて円筒状に設けられる第2円筒状部材と、
を含み、
前記弾性力付与部材は、
前記環状空間に配置される弾性部材と、
前記弾性部材を前記スイングシャフト側から前記環状プレートと共に挟み込み、前記第2円筒状部材の内壁に内接する環状ガイドと、
を含み、
前記検知装置は、
前記第2円筒状部材の外面側に設けられ、スイッチレバーを有するスイッチ本体と、
前記環状ガイドの外周面には、前記第2円筒状部材に設けられた開口部の内側から外側に向けて突出し、前記スイッチレバーの第1状態と第2状態とを切替える押圧レバーと、
を含み、
前記スイングシャフトが静止状態においては、前記環状ガイドに設けられた前記押圧レバーは、前記スイッチ本体の前記第1状態を選択し、
前記スイングシャフトの揺動に応じて前記弾性力付与部材が前記円筒状ハウジング側に所定量移動した場合には、前記環状ガイドに設けられた前記押圧レバーは、前記スイッチ本体の前記第2状態を選択する、
請求項1に記載のツール取替装置。
【請求項3】
前記円筒状ハウジングは、
環状プレートと、
前記環状プレートの内側に円筒状に設けられ、前記第2貫通孔を規定する第1円筒状部材と、
前記環状プレートの外側に、前記第1円筒状部材と環状空間を隔てて円筒状に設けられる第2円筒状部材と、
前記第2円筒状部材の前記環状プレートとは反対側の位置において、内方に向かって環状に設けられた第1環状受プレートと、
を含み、
前記弾性力付与部材は、
前記環状空間に配置される弾性部材と、
前記弾性部材を前記スイングシャフト側から前記環状プレートと共に挟み込み、前記第2円筒状部材の内壁に内接する環状ガイドと、
を含み、
前記スイングシャフトは、
前記第3貫通孔を規定するシャフト部材と、
前記シャフト部材の前記弾性力付与部材側の一端に設けられ、前記第1環状受プレートと前記環状ガイドとに挟み込まれる位置に内側から外側に向かって延在する環状の第2環状受プレートと、
を含み、
前記調心機構として、
前記第1環状受プレートと前記第2環状受プレートとの間には、位置決め環状リングが保持され、
前記第1環状受プレートの前記第2環状受プレートが対向する面には、前記位置決め環状リングの内面側を支持する第1環状ガイド溝が設けられ、
前記第2環状受プレートの前記第1環状受プレートが対向する面には、前記位置決め環状リングの外面側を支持する第2環状ガイド溝が設けられ、
前記第1環状ガイド溝は、前記中心軸に対して偏心する位置に設けられ、
前記第2環状ガイド溝は、前記第1環状ガイド溝に対して対向配置した場合に、前記第1環状ガイド溝に対して、前記中心軸を中心にして点対称となる位置に偏心して設けられ、
前記位置決め環状リングが前記第1環状ガイド溝と前記第2環状ガイド溝とに挟み込まれることで、前記スイングシャフトの中心軸と前記円筒状ハウジングの中心軸とが一致し、前記スイングシャフトと前記円筒状ハウジングとの前記中心軸回りの位置決めが行なわれる、
請求項1に記載のツール取替装置。
【請求項4】
円筒状の第1シャフトと、
前記第1シャフトの内側に配置され、前記第1シャフトの一端側に連結される第2シャフトと、
前記第1シャフトと前記第2シャフトとの中心軸が一致するとともに、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの前記中心軸回りの位置決めを行なう調心機構であって、
前記第1シャフトの一端側は、内方に向かって環状に設けられた第1環状受プレートを含み、
前記第2シャフトの前記第1シャフト側は、前記第1環状受プレートの内側から外側に向かって延在する環状に設けられた第2環状受プレートを含み、
前記第1環状受プレートと前記第2環状受プレートとの間には、位置決め環状リングが保持され、
前記第1環状受プレートの前記第2環状受プレートが対向する面には、前記位置決め環状リングの内面側を支持する第1環状ガイド溝が設けられ、
前記第2環状受プレートの前記第1環状受プレートが対向する面には、前記位置決め環状リングを外面側を支持する第2環状ガイド溝が設けられ、
前記第1環状ガイド溝は、前記中心軸に対して偏心する位置に設けられ、
前記第2環状ガイド溝は、前記第1環状ガイド溝に対して、前記中心軸を中心にして点対称となる位置に設けられ、
前記位置決め環状リングが前記第1環状ガイド溝と前記第2環状ガイド溝とに挟み込まれることにより、前記第1シャフトの中心と前記第2シャフトの中心とが一致し、前記第1シャフトと前記第2シャフトの前記中心軸回りの位置決めが行なわれる、
調心機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツール取替装置および調心機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアームの先端に取り付けられるツールの取替えに用いられるツール取替装置を開示した先行技術文献として、特開2009-248148号公報(特許文献1)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年ロボットアームが高速で動作することから、ロボットアームの手首軸回転近くにツール取替装置を設けることが望ましい。ロボットアームの動作中に、ツールに想定以上の外力が加わった場合には、ツールおよびロボットアームを保護する観点から、ツールおよびロボットアームに、不要な外力が加わらないようにするためのショックセンサをツール取替装置に設ける必要もある。
【0005】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ロボットアームへの不要な外力が加わることを抑制して、ロボットアームへの動作負荷を軽減させることができるとともに、ショックセンサが動作した後の復帰作業時間を低減することが可能な構成を備える、ツール取替装置および調心機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本開示のツール取替装置においては、ツールが装着される装着面と、ロボットアームに取り付けられる取付面とを備えるツール取替装置であって、以下の構成を備える。
【0007】
中心軸に対して環状に設けられ、上記取付面を有し、上記中心軸を中心とする第1貫通孔が設けられる円盤状の環状アダプタと、上記環状アダプタに対して同軸に取り付けられ、上記中心軸を中心とする第2貫通孔を有する円筒状ハウジングと、上記円筒状ハウジングの内側に揺動可能に配置され、静止状態において上記円筒状ハウジングと同軸に設けられ、上記装着面および上記中心軸を中心とする第3貫通孔が設けられスイングシャフトと、上記円筒状ハウジングと上記スイングシャフトとの間に設けられ、上記スイングシャフトが揺動状態において、上記スイングシャフトを上記円筒状ハウジングから遠ざかる方向に付勢して、上記スイングシャフトを静止状態にするための弾性力を発揮する弾性力付与部材と、を備える。
【0008】
上記円筒状ハウジングと上記弾性力付与部材との間には、上記静止状態に対して上記スイングシャフトが揺動し、上記弾性力付与部材が上記円筒状ハウジング側に所定量移動した状態を検知する検知装置が設けられ、上記円筒状ハウジングと上記スイングシャフトとの間には、上記スイングシャフトの揺動状態から静止状態に戻った際に、上記スイングシャフトの中心と上記円筒状ハウジングの中心とが一致し、上記中心軸回りの位置決めを行なう調心機構が設けられている。
【0009】
[2]:[1]に記載のツール取替装置において、上記円筒状ハウジングは、環状プレートと、上記環状プレートの内側に円筒状に設けられ、上記第2貫通孔を規定する第1円筒状部材と、上記環状プレートの外側に、上記第1円筒状部材と環状空間を隔てて円筒状に設けられる第2円筒状部材と、を含む。
【0010】
上記弾性力付与部材は、上記環状空間に配置される弾性部材と、上記弾性部材を上記スイングシャフト側から上記環状プレートと共に挟み込み、上記第2円筒状部材の内壁に内接する環状ガイドと、を含む。
【0011】
上記検知装置は、上記第2円筒状部材の外面側に設けられ、スイッチレバーを有するスイッチ本体と、上記環状ガイドの外周面には、上記第2円筒状部材に設けられた開口部の内側から外側に向けて突出し、上記スイッチレバーの第1状態と第2状態とを切替える押圧レバーと、を含む。
【0012】
上記スイングシャフトが静止状態においては、上記環状ガイドに設けられた上記押圧レバーは、上記スイッチ本体の上記第1状態を選択し、上記スイングシャフトの揺動に応じて上記弾性力付与部材が上記円筒状ハウジング側に所定量移動した場合には、上記環状ガイドに設けられた上記押圧レバーは、上記スイッチ本体の上記第2状態を選択する。
【0013】
[3]:[1]または[2]のいずれかに記載のツール取替装置において、上記円筒状ハウジングは、環状プレートと、上記環状プレートの内側に円筒状に設けられ、上記第2貫通孔を規定する第1円筒状部材と、上記環状プレートの外側に、上記第1円筒状部材と環状空間を隔てて円筒状に設けられる第2円筒状部材と、上記第2円筒状部材の上記環状プレートとは反対側の位置において、内方に向かって環状に設けられた第1環状受プレートと、を含む。
【0014】
上記弾性力付与部材は、上記環状空間に配置される弾性部材と、上記弾性部材を上記スイングシャフト側から上記環状プレートと共に挟み込み、上記第2円筒状部材の内壁に内接する環状ガイドと、を含む。
【0015】
上記スイングシャフトは、上記第3貫通孔を規定するシャフト部材と、上記シャフト部材の上記弾性力付与部材側の一端に設けられ、上記第1環状受プレートと上記環状ガイドとに挟み込まれる位置に内側から外側に向かって延在する環状の第2環状受プレートと、を含む。
【0016】
上記調心機構として、上記第1環状受プレートと上記第2環状受プレートとの間には、位置決め環状リングが保持され、上記第1環状受プレートの上記第2環状受プレートが対向する面には、上記位置決め環状リングの内面側を支持する第1環状ガイド溝が設けられ、上記第2環状受プレートの上記第1環状受プレートが対向する面には、上記位置決め環状リングの外面側を支持する第2環状ガイド溝が設けられ、上記第1環状ガイド溝は、上記中心軸に対して偏心する位置に設けられ、上記第2環状ガイド溝は、上記第1環状ガイド溝に対して対向配置した場合に、上記第1環状ガイド溝に対して、上記中心軸を中心にして点対称となる位置に偏心して設けられる。
【0017】
上記位置決め環状リングが上記第1環状ガイド溝と上記第2環状ガイド溝とに挟み込まれることで、上記スイングシャフトの中心軸と上記円筒状ハウジングの中心軸とが一致し、上記スイングシャフトと上記円筒状ハウジングとの上記中心軸回りの位置決めが行なわれる。
【0018】
[4]:本開示の調心機構においては、円筒状の第1シャフトと、上記第1シャフトの内側に配置され、上記第1シャフトの一端側に連結される第2シャフトと、上記第1シャフトと上記第2シャフトとの中心軸が一致するとともに、上記第1シャフトと上記第2シャフトとの上記中心軸回りの位置決めを行なう調心機構であって、以下の構成を備える。
【0019】
上記第1シャフトの一端側は、内方に向かって環状に設けられた第1環状受プレートを含み、上記第2シャフトの上記第1シャフト側は、上記第1環状受プレートの内側から外側に向かって延在する環状に設けられた第2環状受プレートを含み、上記第1環状受プレートと上記第2環状受プレートとの間には、位置決め環状リングが保持され、上記第1環状受プレートの上記第2環状受プレートが対向する面には、上記位置決め環状リングの内面側を支持する第1環状ガイド溝が設けられ、上記第2環状受プレートの上記第1環状受プレートが対向する面には、上記位置決め環状リングを外面側を支持する第2環状ガイド溝が設けられ、上記第1環状ガイド溝は、上記中心軸に対して偏心する位置に設けられ、上記第2環状ガイド溝は、上記第1環状ガイド溝に対して、上記中心軸を中心にして点対称となる位置に設けられる。
【0020】
上記位置決め環状リングが上記第1環状ガイド溝と上記第2環状ガイド溝とに挟み込まれることにより、上記第1シャフトの中心と上記第2シャフトの中心とが一致し、上記第1シャフトと上記第2シャフトの上記中心軸回りの位置決めが行なわれる。
【発明の効果】
【0021】
本開示のツール取替装置によれば、ロボットアームへの不要な外力が加わることを抑制し、ロボットアームへの動作負荷を軽減させることができるとともに、ショックセンサが動作した後の復帰作業時間を低減する。また、本開示の調心機構によれば、第1シャフトに対する第2シャフトの復帰作業時間を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施の形態のツール取替装置を装着した産業用ロボット装置の全体構成図である。
【
図2】実施の形態のツール取替装置の全体斜視図である。
【
図3】実施の形態のツール取替装置の分解斜視図である。
【
図4】
図2中のIV-IV線矢視における第1断面図である。
【
図5】
図2中のIV-IV線矢視における第2断面図である。
【
図6】実施の形態のツール取替装置に採用される検知装置の第1部分拡大図である。
【
図7】実施の形態のツール取替装置に採用される検知装置の第2部分拡大図である。
【
図8】実施の形態のツール取替装置に採用されるスイングシャフトの平面図である。
【
図10】実施の形態のツール取替装置に採用されるスイングシャフトのシャフト部材を外した状態の平面図である。
【
図12】実施の形態のツール取替装置に採用されるスイングシャフトのシャフト部材を見上げた状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施の形態のツール取替装置および調心機構について、以下、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0024】
以下に示すツール取替装置には、本開示に基づいた調心機構が採用されているが、この中心軸回り位置決機構は、以下に示すツール取替装置に限定して適用されるものでなく。第1シャフトの中心と第2シャフトの中心とを一致させ、第1シャフトと2シャフトの中心軸回りの位置決めが行なう場合に広く適用可能な機構である。
【0025】
(産業用ロボット装置100の全体構成)
図1を参照して、本実施の形態のツール取替装置1が採用された産業用ロボット装置100の全体構成について説明する。
図1は、ツール取替装置1を装着した産業用ロボット装置100の全体構成図である。
【0026】
産業用ロボット装置100は、6軸方向に自在に移動できるロボットアーム2の先端部にツール取替装置1が設けられている。ツール取替装置1には、溶接トーチ3が装着されている。ロボットアーム2は、各アームの関節部位が、
図1中に示す矢印の方向に回動することで、ツール取替装置1に装着された溶接トーチ3を、3次元空間の所定位置へ移動させることができる。ロボットアーム2の内部は中空に形成されており、溶接ワイヤやケーブル4が挿通されている。ツール取替装置1に装着された溶接トーチ3は、加工対象物に対しアーク溶接等を行なう。溶接トーチ3に供給される電力、シールドガス、冷却水及び溶接ワイヤは、ロボットアーム2内に挿通されたケーブル4を通じて供給される。
【0027】
(ツール取替装置1)
次に、
図2から
図4を参照して、本実施の形態のツール取替装置1の構成について説明する。
図2は、ツール取替装置1の全体斜視図、
図3は、ツール取替装置1の分解斜視図、
図4は、
図2中のIV-IV線矢視における第1断面図である。
【0028】
図2に示すように、ツール取替装置1は、溶接トーチ3が装着される装着面60Aと、ロボットアーム2に取り付けられる取付面10Aとを備える。ツール取替装置1は、環状アダプタ10と、ハウジング20と、スイングシャフト60とを備える。
【0029】
環状アダプタ10は、中心軸CLに対して環状に設けられ、上記取付面10Aを有し、中心軸CLを中心とする第1貫通孔10hが設けられる円盤状の形態を有している。ハウジング20は、環状アダプタ10に対して同軸に取り付けられ、中心軸CLを中心とする第2貫通孔20hを有する。スイングシャフト60は、ハウジング20の内側に揺動可能に配置され、静止状態においてハウジング20と同軸に設けられ、装着面60Aおよび中心軸CLを中心とする第3貫通孔60hが設けられている。揺動の詳細については、後述する。
【0030】
図3を参照して、ツール取替装置1の全体的な構成部材について説明する。ツール取替装置1は、環状アダプタ10、ハウジング20、弾性力付与部材40、および、スイングシャフト60を含む。ハウジング20は、円筒状ハウジング21、および、第1環状受プレート22を含む。弾性力付与部材40は、弾性部材として多重巻型のウェーブスプリング41、および、環状ガイド42を有する。円筒状ハウジング21は、環状アダプタ10に対してボルト等を用いて固定されている。第1環状受プレート22は、円筒状ハウジング21に対してボルト等を用いて固定されている。
【0031】
スイングシャフト60は、シャフト部材61、位置決め環状リング62、アダプタ63、および、連結部材64を有する。連結部材64は、シャフト部材61に対してボルト等を用いて固定されている。アダプタ63は、連結部材64の外表面に設けられたネジ等を用いて螺合されている。
【0032】
円筒状ハウジング21には、検知装置30が設けられている。さらに、円筒状ハウジング21とスイングシャフト60との間には、中心軸回り位置決機構が設けられている。以下、弾性力付与部材40、検知装置30、および、中心軸回り位置決機構の詳細について説明する。
【0033】
(弾性力付与部材40)
図4および
図5を参照して、弾性力付与部材40の詳細構成、および、その機能について説明する。
図4および
図5は、
図2中のIV-IV線矢視における第1および第2断面図である。
図4は、スイングシャフト60の静止状態を示し、
図5は、スイングシャフト60が最も揺動した状態を示す。
【0034】
弾性力付与部材40は、円筒状ハウジング21とスイングシャフト60との間に配置され、スイングシャフト60が揺動状態において、スイングシャフト60を円筒状ハウジング21から遠ざかる方向(
図4中の矢印F1方向)に付勢して、スイングシャフト60を静止状態にするための弾性力を発揮する。
【0035】
図4を参照して、円筒状ハウジング21は、環状プレート21aと、環状プレート21aの内側に円筒状に設けられ、第2貫通孔20hを主として規定する第1円筒状部材21bと、環状プレート21aの外側に、第1円筒状部材21bと環状空間21cを隔てて円筒状に設けられる第2円筒状部材21dを含む。中心軸CLが延びる方向に沿って、第1円筒状部材21bよりも第2円筒状部材21dの方が、スイングシャフト60側に長くなるように設けられている。
【0036】
弾性部材としてのウェーブスプリング41は、上記環状空間21cに配置される。ウェーブスプリング41のスイングシャフト60側には、ウェーブスプリング41を、環状プレート21aと共に挟み込み、第2円筒状部材21dの内壁に内接する環状ガイド42が設けられている。環状ガイド42は、環状プレート21aに対向する位置に配置される環状当接プレート42aと第2円筒状部材21dの内壁側に配置される円筒部材42bとを有する。
図4の断面形状において、環状ガイド42は、環状プレート21aと円筒部材42bとによりL字形状を有し、ウェーブスプリング41をスイングシャフト60側から支持する形態を有している。
【0037】
本実施の形態では、中心軸CLが延びる方向において、ツール取替装置1の外形のコンパクト化を図るため、必要な弾性力を得ながら、弾性方向の長さを小さくできるものとして、ウェーブスプリング41を採用している。しかし、同等の機能が得られるものであれば、複数のコイルスプリングを環状空間21cに並べてもよい。
【0038】
ここで、円筒状ハウジング21は、第2円筒状部材21dの環状プレート21aとは反対側(スイングシャフト60側)の位置において、内方に向かって環状に設けられた第1環状受プレート22を含む。
【0039】
スイングシャフト60は、第3貫通孔60hを主として規定するシャフト部材61と、シャフト部材61の弾性力付与部材40側の一端に設けられ、第1環状受プレート22と環状ガイド42とに挟み込まれる位置に内側から外側に向かって延在する環状の第2環状受プレート61bを含む。
【0040】
この構成により、スイングシャフト60の第2環状受プレート61bが、第1環状受プレート22と環状ガイド42とに挟み込まれた状態となるため、スイングシャフト60が、ハウジング20から脱落することはない。また、スイングシャフト60は、中心軸CLを回転中心として回動することができる。さらに、円筒状ハウジング21の環状空間21cに配置された環状ガイド42は、隙間Sを有するように、ウェーブスプリング41が収容されていることから、ウェーブスプリング41は、隙間Sでの弾性移動(収縮)が可能である。
【0041】
(揺動の定義)
スイングシャフト60に外力が加わった場合には、ウェーブスプリング41が収縮可能な範囲で、スイングシャフト60は、中心軸CLの周りにおいて、図中の矢印Sに示す方向に傾斜することができるとともに、中心軸CLの軸方向(図中の矢印Vに示す方向)に移動することができる。このように、スイングシャフト60が、中心軸CLに対して、回動、傾斜、移動できる状態を揺動と呼ぶ。
【0042】
図5を参照して、スイングシャフト60が最も円筒状ハウジング21側に移動した状態を示している。この状態は、スイングシャフト60に装着された溶接トーチ3に想定外の外力が加わった状態である。このような状態になる前は、溶接トーチ3に加わった外力は、ウェーブスプリング41の弾性力に応じてスイングシャフト60が揺動することで、外力を吸収することができる。しかし、
図5の状態では、ウェーブスプリング41は最も圧縮されているために、外力(図中の矢印F2で示す力)を吸収することはできない。したがって、このような状態になった場合を、産業用ロボット装置100は、検知することが必要となる。
【0043】
(検知装置30)
次に、
図6および
図7を参照して、円筒状ハウジング21と弾性力付与部材40との間に設けられる検知装置30について説明する。
図6および
図7は、ツール取替装置1に採用される検知装置30の第1および
図2部分拡大図である。
【0044】
ツール取替装置1に採用される検知装置30は、円筒状ハウジング21と弾性力付与部材40との間に、静止状態に対してスイングシャフト60が揺動し、弾性力付与部材40が円筒状ハウジング21側に所定量移動した状態を検知する装置である。
【0045】
図3を参照して、円筒状ハウジング21の外周面に、検知装置30が固定されている。円筒状ハウジング21の外周面には、検知装置30を固定するためのベース部21yが設けられている。また、このベース部21yには、開口部21xが設けられている。他方、環状ガイド42の外周面には、開口部21xの内側から外側に向けて突出する押圧レバー42tが設けられている。
【0046】
図6を参照して、検知装置30の詳細構造について説明する。説明の便宜上、
図6および
図7には、カバー30C(
図3参照)および円筒状ハウジング21の図示は省略している。
【0047】
検知装置30のカバー30C(
図3参照)の内部には、取付ベース31、この取付ベース31に支持されたスイッチ本体32が収容されている。この取付ベース31は、円筒状ハウジング21に固定されている。スイッチ本体32には、本実施の形態ではリミットスイッチが用いられている。スイッチ本体32には、ON状態(第1状態)およびOFF状態(第2状態)を切替えるためのスイッチレバー33が設けられている。スイッチ本体32のON/OFF状態の信号は、産業用ロボット装置100の制御部に送られる。
【0048】
図6に示す状態は、
図4で示したスイングシャフト60が静止状態であり、ツール取替装置1に装着された溶接トーチ3に外力が加わっていない状態である。この状態においては、環状ガイド42に設けられた押圧レバー42tにより、スイッチレバー33が押さえ込まれており、スイッチ本体32は、ON状態が選択されていることとなる。
【0049】
図7に示す状態は、
図5に示したスイングシャフト60がスイングシャフト60が最も円筒状ハウジング21側に移動した状態を示している。この状態は、スイングシャフト60に装着された溶接トーチ3に想定外の外力が加わった状態である。この状態においては、環状ガイド42に設けられた押圧レバー42tが、円筒状ハウジング21側に所定量移動し、その結果、押圧レバー42tによるスイッチレバー33の押さえ込みが開放された状態である。スイッチ本体32は、OFF状態が選択されていることとなる。
【0050】
このように、円筒状ハウジング21と弾性力付与部材40との間に検知装置30を設けておくことで、スイングシャフト60の揺動状態を産業用ロボット装置100が検知することが可能となり、溶接トーチ3に想定以上の外力が加わった場合には、産業用ロボット装置100は、運転を停止して、溶接トーチ3およびロボットアーム2を保護することが可能となる。
【0051】
図5に示すスイングシャフト60が円筒状ハウジング21側に所定量移動した後、スイングシャフト60に加わっていた外力が開放された場合、ウェーブスプリング41の復元力に基づき、スイングシャフト60は、円筒状ハウジング21から遠ざかる方向(
図4参照)に押されることとなる。この際、スイングシャフト60には、溶接トーチ3が装着されていることから、スイングシャフト60の中心と円筒状ハウジング21の中心とを一致させ、中心軸CL回りの位置決めを行なう必要がある。以下、この調心機構について説明する。
【0052】
(調心機構)
図8から
図13を参照して、ツール取替装置1に採用される調心機構について説明する。
図8は、スイングシャフト60の平面図、
図9は、
図8中のIX-IX線矢視断面図、
図10は、スイングシャフト60のシャフト部材を外した状態の平面図、
図11は、
図10中のXI-XI線矢視断面図、
図12は、スイングシャフト60のシャフト部材61を見上げた状態の平面図、
図13は、
図12中のXIII-XIII線矢視断面図である。
図12において、視認し易くするために、第2環状ガイド溝61mには、ドットハッチングを付している。
【0053】
ツール取替装置1に採用される調心機構は、円筒状ハウジング21とスイングシャフト60との間において、スイングシャフト60の揺動状態から静止状態に戻った際に、スイングシャフト60の中心と円筒状ハウジング21の中心とを一致させ、中心軸CL回りの位置決めを行なう機構である。
【0054】
図8および
図9を参照して、スイングシャフト60について説明する。なお、連結部材64、および、アダプタ63の図示は省略する。スイングシャフト60は、第3貫通孔60hを規定するシャフト部材61と、シャフト部材61の弾性力付与部材40側の一端に設けられ、第1環状受プレート22と環状ガイド42とに挟み込まれる位置に内側から外側に向かって延在する環状の第2環状受プレート61bと、を含む。第1環状受プレート22と第2環状受プレート61bとの間には、位置決め環状リング62が保持されている。
【0055】
第1環状受プレート22の第2環状受プレート61bが対向する面には、位置決め環状リング62の内面側を支持する第1環状ガイド溝22mが設けられている。第2環状受プレート61bの第1環状受プレート22が対向する面には、位置決め環状リング62の外面側を支持する第2環状ガイド溝61mが設けられている。
【0056】
図10に示すように、位置決め環状リング62の内面側を支持する第1環状ガイド溝22mは、中心軸Clに対して偏心する位置に設けられている。本実施の形態では、中心軸CLに対して左側にずれた位置に第1環状ガイド溝22mが設けられている。その結果、
図10に示すように、第1環状受プレート22においては、貫通孔22hを規定する内壁面22h1と第1環状ガイド溝22mと間の壁22rの厚さ(t11>t12)は、中心軸CLから見て左側が厚く、右側が薄く設けられる。
【0057】
次に、
図12および
図13を参照して、シャフト部材61において、第2環状受プレート61bの第1環状受プレート22が対向する面には、位置決め環状リング62の外面側を支持する第2環状ガイド溝61m(ドットハッチングを付した領域)が設けられている。
【0058】
この第2環状ガイド溝61mは、第1環状ガイド溝22mに対して対向配置した場合に、第1環状ガイド溝22mに対して、中心軸Clを中心にして点対称となる位置に偏心して設けられている。本実施の形態では、中心軸CLに対して右側にずれた位置に第2環状ガイド溝61mが設けられている。その結果、
図12および
図13に示すように、シャフト部材61においては、シャフト部材61の外面を規定する外壁面61gと第2環状ガイド溝61mと間の壁61rの厚さ(t21<t22)は、中心軸CLから見て左側が薄く、右側が厚く設けられる。
【0059】
これにより、再び、
図4を参照して、ウェーブスプリング41の復元力に基づき、環状ガイド42によりスイングシャフト60が、円筒状ハウジング21から遠ざかる方向(
図4中の矢印F1方向)に押さえ付けられると、位置決め環状リング62が第1環状ガイド溝22mと第2環状ガイド溝61mとに挟み込まれることになる。
【0060】
この場合、第1環状ガイド溝22mと第2環状ガイド溝61mとは中心軸Clを中心にして点対称となる位置に偏心して設けられていることから、
図4に示す状態に至るまで、シャフト部材61が中心軸Clの回りを徐々に回転しながら調心する。最終的には、スイングシャフト60の中心軸と円筒状ハウジング21の中心軸とが一致し。さらに、スイングシャフト60と円筒状ハウジング21との中心軸CL回りの位置決めが行なわれる(
図4に示す状態)。
【0061】
以上、本実施の形態におけるツール取替装置1によれば、ロボットアーム2への不要な外力が加わることを抑制して、ロボットアーム2への動作負荷を軽減させることができる。さらに、検知装置30(ショックセンサ)が動作した後の復帰作業であるスイングシャフト60の中心と円筒状ハウジング21の中心とを一致させ、中心軸CL回りの位置決めを行なう作業が、上記した調心機構で実施されることから、復帰作業時間を低減することが可能となる。
【0062】
(調心機構)
上記した調心機構は、上記したツール取替装置1への採用に限定されるものでなく、第1環状受プレート22を第1シャフトとし、シャフト部材61を第2シャフトとした場合には、以下に示すように、広く上記した調心機構を他の構成に適用することができる。
【0063】
この調整機構は、円筒状の第1シャフトと、上記第1シャフトの内側に配置され、上記第1シャフトの一端側に連結される第2シャフトと、上記第1シャフトと上記第2シャフトとの中心軸が一致するとともに、上記第1シャフトと上記第2シャフトとの上記中心軸回りの位置決めを行なう調心機構であって、以下の構成を備える。
【0064】
上記第1シャフトの一端側は、内方に向かって環状に設けられた第1環状受プレートを含み、上記第2シャフトの上記第1シャフト側は、上記第1環状受プレートの内側から外側に向かって延在する環状に設けられた第2環状受プレートを含む。
【0065】
上記第1環状受プレートと上記第2環状受プレートとの間には、位置決め環状リングが保持され、上記第1環状受プレートの上記第2環状受プレートが対向する面には、上記位置決め環状リングの内面側を支持する第1環状ガイド溝が設けられ、上記第2環状受プレートの上記第1環状受プレートが対向する面には、上記位置決め環状リングを外面側を支持する第2環状ガイド溝が設けられる。
【0066】
上記第1環状ガイド溝は、上記中心軸に対して偏心する位置に設けられ、上記第2環状ガイド溝は、上記第1環状ガイド溝に対して、上記中心軸を中心にして点対称となる位置に設けられ、上記位置決め環状リングが上記第1環状ガイド溝と上記第2環状ガイド溝とに挟み込まれることにより、上記第1シャフトの中心と上記第2シャフトの中心とが一致する、上記第1シャフトと上記第2シャフトの上記中心軸回りの位置決めが行なわれる。
【0067】
上記調心機構によれば、第1シャフトに対する第2シャフトの復帰作業時間を低減することができる。
【0068】
以上、実施の形態において本開示のツール取替装置および調心機構について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1 ツール取替装置、2 ロボットアーム、3 溶接トーチ、4 ケーブル、10 環状アダプタ、10A 取付面、10h 第1貫通孔、20 ハウジング、20h 第2貫通孔、21 円筒状ハウジング、21a 環状プレート、21b 第1円筒状部材、21c 環状空間、21d 第2円筒状部材、21x 開口部、21y ベース部、22 第1環状受プレート、22h 貫通孔、22h1 内壁面、22m 第1環状ガイド溝、22r,61r 壁、30 検知装置、30C カバー、31 取付ベース、32 スイッチ本体、33 スイッチレバー、40 弾性力付与部材、41 ウェーブスプリング、42 環状ガイド、42a 当接プレート、42b 円筒部材、42t 押圧レバー、60 スイングシャフト、60A 装着面、60h 第3貫通孔、61 シャフト部材、61b 第2環状受プレート、61g 外壁面、61m 第2環状ガイド溝、62 位置決め環状リング、63 アダプタ、64 連結部材、100 産業用ロボット装置。