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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005548
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 5/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A46B5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105763
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 綾祐
(72)【発明者】
【氏名】高井 良輔
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB19
3B202CA00
(57)【要約】
【課題】ハンドル体の両面に閉鎖空間や略閉鎖空間を有するデザインを施す場合でも、成形不良が抑制される、意匠性に優れた歯ブラシを提供することを目的とする。
【解決手段】ヘッド部及び把持部を有するハンドル体10を備え、前記ヘッド部の正面に刷毛部を有する歯ブラシにおいて、ハンドル体10はハンドル本体30の少なくとも一部が被覆部40で被覆され、ハンドル体10の長軸方向に垂直な方向から見て、ハンドル本体30の一方の側に第1空間50、他方の側に第2空間60を設け、第1空間50と第2空間60を第1貫通路31で繋げる、第2の樹脂が第1空間50から第1貫通路31を通じて第2空間60まで到達するようにし、それら第1空間50、第1貫通路31及び第2空間60に第2の樹脂が充填される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部及び把持部を有するハンドル体を備え、前記ヘッド部の正面に刷毛部を有する歯ブラシであって、
前記ハンドル体は、芯棒を含むハンドル本体と、前記ハンドル本体の少なくとも一部を被覆する被覆部と、を有し、
前記ハンドル本体は第1の樹脂で構成され、前記被覆部は第2の樹脂で構成され、
前記ハンドル体の長軸方向に垂直な方向から見て、前記ハンドル本体は、一方の側に、周囲がすべて壁に囲われた閉鎖空間、又は周囲が一部を除いて壁に囲われた略閉鎖空間からなる第1空間を有し、且つ、他方の側に、周囲がすべて壁に囲われた閉鎖空間、又は周囲が一部を除いて壁に囲われた略閉鎖空間からなる第2空間を有し、
前記第1空間と前記第2空間はいずれも前記ハンドル体の表面に開口しており、
前記第1空間と前記第2空間は前記ハンドル本体を貫通する少なくとも1つの第1貫通路で繋がり、前記第2の樹脂が前記第1空間から前記第1貫通路を通じて前記第2空間まで到達するようになっており、
前記第1空間、前記第1貫通路及び前記第2空間に前記第2の樹脂が充填されている、歯ブラシ。
【請求項2】
前記第1貫通路は、前記第1空間を囲う壁の内側、且つ前記第2空間を囲う壁の内側に位置し、
前記ハンドル本体に、前記第2空間を囲う壁の外側の領域と前記第1空間とを繋ぐ第2貫通路が形成され、前記第2の樹脂が、前記第2貫通路から前記第1空間に入り、さらに前記第1貫通路を通じて前記第2空間まで到達するようになっており、
前記第2貫通路、前記第1空間、前記第1貫通路及び前記第2空間に前記第2の樹脂が充填されている、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記第1空間が閉鎖空間である、請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記第1空間が閉鎖空間であり、且つ前記第2空間が閉鎖空間である、請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記第1空間を開口側から正面視したときの開口面積をSA1(mm)、当該第1空間に繋がる前記第1貫通路の通路断面積の総和をSB1(mm)としたとき、
A1/SB1が1.0以上60.0以下である、請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記第1空間を囲う壁、及び前記第2空間を囲う壁が前記芯棒上に設けられ、且つ前記第1貫通路及び前記第2貫通路が前記芯棒を貫通している、請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記ハンドル本体の長軸方向に垂直な断面において、前記第1空間を囲う壁が前記芯棒の外側に配置されており、前記第1貫通路が前記芯棒を貫通している、請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
前記第1空間を開口側から正面視したときの開口面積をSA1(mm)、前記第2空間を開口側から正面視したときの開口面積をSA2(mm)としたとき、SA1≧SA2を満たす、請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
硬質樹脂で構成されたハンドル本体の把持部などに軟質樹脂が被覆されたハンドル体を備える歯ブラシは、グリップ性が高く、使用時に安心感を与える(例えば、特許文献1、2)。
このような歯ブラシは、一次金型を用いた射出成形によって得たハンドル本体を二次金型内に配置し、二次金型内に軟質樹脂を射出充填してハンドル体を成形する、いわゆる二色成形によって製造される。
【0003】
上記の機能性付与以外に、二色成形によって、ハンドル体の形状や色を工夫し、表面にロゴやモチーフを入れることで歯ブラシの意匠性が向上し、商品の魅力が高まる。
ロゴやモチーフを入れる方法としては、ハンドル本体と被覆部を異なる色とし、ハンドル本体を一部露出させて縁取る方法、ホットスタンプや転写シールを付与する方法が主流である。
この中で、製造上、最も工夫が必要な方法は、前述のハンドル本体を一部露出させて縁取る方法である。
例えば、内側が空洞で周囲が壁に囲まれることで、内側に閉鎖空間を有する「О」のようなロゴやモチーフを形成する場合、ハンドル本体に閉鎖空間のある側と、その反対側へと通じる貫通孔を設け、「О」のようなロゴやモチーフが設けられていない閉鎖空間の反対側から、貫通孔を通じて閉鎖空間に軟質樹脂を流し込む方法が、従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-299450号公報
【特許文献2】特開2002-336049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術では、「О」などの内部が空洞で周囲が全て壁に囲まれた閉鎖空間や、「V」などの一部を除いて壁に囲まれた略閉鎖空間を有する文字や模様(ロゴやモチーフ)を、ハンドル体の一方側に設けると共に、その反対側にも同様のロゴやモチーフを設ける場合、従来技術では、成形の困難性を要する。具体的には、一方側にロゴ等がある場合と比べて、双方にロゴ等があると、双方へと通じる貫通孔の設置位置がロゴ等によって制限されてしまうことで、適切に設けないと、成形時の射出圧が分散されてしまい、貫通孔に向かって上手く樹脂が流れず、その結果、それら閉鎖空間や略閉鎖空間の全体に軟質樹脂を充分に行き渡らせることが難しく、成形不良が生じることがある。
そのため、従来は、閉鎖空間や略閉鎖空間を有する文字や模様(ロゴやモチーフ)はハンドル体における正面(ヘッド部の植毛面側の表面)か背面のいずれか一方のみに設けられており、デザインの設計自由度に制限があった。
これらの事情から、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、双方にロゴ等を有する二色成形の歯ブラシの実現には、ロゴ等や貫通孔の位置・配置を制御することで、二次側樹脂の射出圧を低減させないことが有効であることを見出し、本発明に至った。
【0006】
本発明は、ハンドル体の両面に閉鎖空間や略閉鎖空間を有するデザインを施す場合でも、成形不良が抑制される、意匠性に優れた歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を含む。
[1]ヘッド部及び把持部を有するハンドル体を備え、前記ヘッド部の正面に刷毛部を有する歯ブラシであって、
前記ハンドル体は、芯棒を含むハンドル本体と、前記ハンドル本体の少なくとも一部を被覆する被覆部と、を有し、
前記ハンドル本体は第1の樹脂で構成され、前記被覆部は第2の樹脂で構成され、
前記ハンドル体の長軸方向に垂直な方向から見て、前記ハンドル本体は、一方の側に、周囲がすべて壁に囲われた閉鎖空間、又は周囲が一部を除いて壁に囲われた略閉鎖空間からなる第1空間を有し、且つ、他方の側に、周囲がすべて壁に囲われた閉鎖空間、又は周囲が一部を除いて壁に囲われた略閉鎖空間からなる第2空間を有し、
前記第1空間と前記第2空間はいずれも前記ハンドル体の表面に開口しており、
前記第1空間と前記第2空間は前記ハンドル本体を貫通する少なくとも1つの第1貫通路で繋がり、前記第2の樹脂が前記第1空間から前記第1貫通路を通じて前記第2空間まで到達するようになっており、
前記第1空間、前記第1貫通路及び前記第2空間の全体に前記第2の樹脂が充填されている、歯ブラシ。
[2]前記第1貫通路は、前記第1空間を囲う壁の内側、且つ前記第2空間を囲う壁の内側に位置し、
前記ハンドル本体に、前記第2空間を囲う壁の外側の領域と前記第1空間とを繋ぐ第2貫通路が形成され、前記第2の樹脂が、前記第2貫通路から前記第1空間に入り、さらに前記第1貫通路を通じて前記第2空間まで到達するようになっており、
前記第2貫通路、前記第1空間、前記第1貫通路及び前記第2空間の全体に前記第2の樹脂が充填されている、[1]に記載の歯ブラシ。
[3]前記第1空間が閉鎖空間である、[1]又は[2]に記載の歯ブラシ。
[4]前記第1空間が閉鎖空間であり、且つ前記第2空間が閉鎖空間である、[1]又は[2]に記載の歯ブラシ。
[5]前記第1空間を開口側から正面視したときの開口面積をSA1(mm)、当該第1空間に繋がる前記第1貫通路の通路断面積の総和をSB1(mm)としたとき、SA1/SB1が1.0以上60.0以下である、[1]又は[2]に記載の歯ブラシ。
[6]前記第1空間を囲う壁、及び前記第2空間を囲う壁が前記芯棒上に設けられ、且つ前記第1貫通路及び前記第2貫通路が前記芯棒を貫通している、[2]に記載の歯ブラシ。
[7]前記ハンドル本体の長軸方向に垂直な断面において、前記第1空間を囲う壁が前記芯棒の外側に配置されており、前記第1貫通路が前記芯棒を貫通している、[1]又は[2]に記載の歯ブラシ。
[8]前記第1空間を開口側から正面視したときの開口面積をSA1(mm)、前記第2空間を開口側から正面視したときの開口面積をSA2(mm)としたとき、SA1≧SA2を満たす、[1]又は[2]に記載の歯ブラシ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハンドル体の両面に閉鎖空間や略閉鎖空間を有するデザインを施す場合でも、成形不良が抑制される、意匠性に優れた歯ブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の一例の歯ブラシの概略構成を示した側面図である。
図2図1の歯ブラシの正面図である。
図3図1の歯ブラシの背面図である。
図4図1の歯ブラシにおけるハンドル本体の概略構成を示した正面図である。
図5図4のハンドル本体の側面図である。
図6図3の歯ブラシのA-A断面図である。
図7図3の歯ブラシのB-B断面図である。
図8図3の歯ブラシのC-C断面図である。
図9】閉鎖空間及び略閉鎖空間の定義を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の歯ブラシについて、一例を示し、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0011】
図1は、実施形態の一例の歯ブラシ1の概略構成を示した側面図である。
図2は歯ブラシ1の正面図であり、図3は歯ブラシ1の背面図である。
本実施形態の歯ブラシ1は、ヘッド部12と、把持部14と、ヘッド部12と把持部14とを繋ぐネック部16と、を有するハンドル体10を備えている。ハンドル体10におけるヘッド部12の正面側の植毛面12aには刷毛部20が植設されている。
【0012】
以下、ハンドル体10におけるヘッド部12の先端から把持部14の後端に向かう方向を「長軸方向」とする。
また、ヘッド部12の植毛面12aに平行で且つ長軸方向に垂直な方向を「短軸方向」とする。
また、ヘッド部12の植毛面12aに垂直な方向を「厚さ方向」とする。
【0013】
ハンドル体10は、第1の樹脂で構成されるハンドル本体30と、ハンドル本体30の少なくとも一部を被覆する、第2の樹脂で構成される被覆部40とを有している。
【0014】
第1の樹脂としては、硬質樹脂が好ましいが、限定されるものではない。ただし、本発明において、「硬質樹脂」とは、ショアA硬度が90超の樹脂を意味する。硬質樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル系樹脂を例示できる。
第2の樹脂としては、軟質樹脂が好ましいが、限定されるものではない。ただし、「軟質樹脂」とは、硬質樹脂よりもショアA硬度が低い樹脂、すなわちショアA硬度が90以下の樹脂を意味する。軟質樹脂としては、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等のエラストマーを例示できる。
「ショアA硬度」は、JIS K 7215に従って測定されるプラスチックのディロメータA硬さを意味する。
【0015】
図4及び図5に示すように、この例のハンドル本体30は、芯棒32と、芯棒32における把持部14に相当する部分の正面側(植毛面12a側)に突出する突出部34と、芯棒32における把持部14に相当する部分の背面側に突出する突出部36と、芯棒32における把持部14に相当する部分の側面側に突出する突出部38と、を備えている。本発明において、「芯棒」とは、図4図5のように、棒状のハンドル本体を主要に形成するものを意味する。
そして、図1~3及び図6~8に示すように、ハンドル本体30におけるヘッド部12の外周縁部分と背面側部分、ネック部16の外周部分、及び把持部14の突出部34,36,38以外の部分が第2の樹脂で覆われることによって被覆部40が形成されている。
なお、本態様では、成形時の第2の樹脂のゲート位置80(図3)は、ハンドル体10の長軸方向の中央付近でハンドル体10の背面側に存在している。また、ネック部16にはヘッド部12に繋がる凹状の溝が存在しているため、第2の樹脂のゲート位置80から射出された第2の樹脂は、把持部14の突出部34,36,38以外の部分を覆うと同時に、ヘッド部12の外周縁部分と背面側部分、ネック部16の外周部分も覆って被覆部40を形成する。
【0016】
突出部34,36,38の先端面は、それぞれハンドル体10の表面に露出した露出面34a,36a,38aとなっている。また、ハンドル本体30と被覆部40は異なる色になっており、ハンドル体10の把持部14の表面には、突出部34,36,38の露出面34a,36a,38aによって縁取られた文字や模様が形成されている。
突出部34,36,38の露出面34a,36a,38aと被覆部40の表面の位置関係は、特に限定されず、露出面34a,36a,38aは被覆部40の表面と面一であってもよく、外側に突き出ていてもよく、内側に凹んでいてもよい。
【0017】
この例の歯ブラシ1では、把持部14の正面に、突出部34の露出面34aによって「KODOMO」という文字、動物キャラクター、及びその足跡が形成されている。
また、把持部14の背面に、突出部36の露出面36aによって「KODOMO」という文字及び足跡が形成されている。
また、把持部14の側面には、突出部38の露出面38aによって丸印が形成されている。
なお、ハンドル体10の表面に形成する文字や模様などは、この例のものには限定されない。
【0018】
図2~4に示すように、ハンドル本体30は、
正面側に、周囲がすべて壁に囲われた閉鎖空間、又は周囲が一部を除いて壁に囲われた略閉鎖空間からなる第1空間50を有し、且つ、
背面側に、周囲がすべて壁に囲われた閉鎖空間、又は周囲が一部を除いて壁に囲われた略閉鎖空間からなる第2空間60を有している。
第1空間50と第2空間60はいずれもハンドル体10の表面に開口している。
【0019】
ただし、「閉鎖空間」とは、ハンドル本体の露出面側から見た正面視で、連続した壁によって周囲がすべて囲われた空間であって、壁の長さLが5.0mm以上である壁で囲われた空間を意味する。また、閉鎖空間を形成する壁の長さLは、ハンドル本体の露出面側から見た正面視で、当該壁の内壁面の露出面側の縁の全周の長さを意味する。
例えば、図9(A)に示すように、ハンドル本体の露出面側から見た正面視で、円弧状の内壁面71aと、内側に凸の屈曲した内壁面71bとを有する壁71で囲まれた空間72の場合、内壁面71aの露出面側の縁の円弧の長さと、内壁面71bの露出面側の縁の2本の直線の長さの合計が壁の長さLであり、壁の長さLが5.0mm以上のときの空間72を閉鎖空間とする。
【0020】
閉鎖空間を囲う壁の長さLは、5.0mm以上であり、5.5mm以上、6.0mm以上、6.5mm以上、又は7.0mm以上であってもよい。
閉鎖空間を囲う壁の長さLの上限については、60.0mm以下、55.0mm以下、50.0mm以下、又は45.0mm以下であってもよい。閉鎖空間を囲う壁の長さLの下限と上限は任意に組み合わせることができる。
【0021】
この例の歯ブラシ1においては、図2に示すように、ハンドル体10の正面の第1空間50のうち、「D」及び「O」という文字と、動物キャラクターの顔及びお腹の内側の空間が、突出部34を構成する壁52によって周囲がすべて囲まれた閉鎖空間である。また、図3に示すように、ハンドル体10の背面の第2空間60のうち、「D」及び「O」という文字の内側の空間が、突出部36を構成する壁62によって周囲がすべて囲まれた閉鎖空間である。
【0022】
また、「略閉鎖空間」とは、ハンドル体におけるハンドル本体が露出している表面を正面視したときに、3.0mm以上連続した壁によって周囲が一部を除いて囲われた空間であって、下記式(1)で表される割合Pが70.0%以上である壁で囲われた空間を意味する。
P={L/(L+D)}×100 ・・・(1)
ただし、式(1)中の記号は以下の意味を示す。
P:略閉鎖空間を囲う壁の割合(%)
L:略閉鎖空間を囲う壁の長さ(mm)
D:略閉鎖空間を囲う壁の開放部分の最短距離(mm)
【0023】
「略閉鎖空間を囲う壁の開放部分の最短距離」とは、周囲が一部を除いて壁で囲われた略閉鎖空間をハンドル本体の露出面側から見た正面視で、以下の(i)~(iii)を意味する。
(i)略閉鎖空間の周囲の壁がない開放部分の両側に、略閉鎖空間を囲う壁の端部が存在する場合には、それら端部同士の最短距離を意味する。
(ii)略閉鎖空間の周囲の壁がない開放部分の一方の側のみに、略閉鎖空間を囲う壁の端部が存在する場合には、当該端部と当該端部に対向する壁面との最短距離を意味する。
(iii)略閉鎖空間の周囲の壁がない開放部分の両側に、略閉鎖空間を囲う壁の端部が存在しない場合には、両側の対向する内壁面同士の最短距離を意味する。
また、ハンドル本体の露出面側から見た正面視で、略閉鎖空間を囲う壁における開放部分の両側の最短距離となる地点同士を、当該壁の内壁面の露出面側の縁に沿って結んだときの長さを、略閉鎖空間を形成する壁の長さLとする。
【0024】
例えば、上記(i)の定義に当てはまるものとしては、図9(B)に示すように、周囲が一部を除いて壁71で囲われた空間72をハンドル本体の露出面側から見た正面視で、開放部分73の両側にいずれも壁71の端部74,75が存在する場合には、それら端部74と端部75の最も近い地点(図9(B)における点a,b)同士の距離を最短距離Dとする。
また、ハンドル本体の露出面側から見た正面視で、壁71の内壁面71aの露出面側の縁に沿った地点aから地点bまでの長さを、略閉鎖空間を形成する壁の長さLとする。
【0025】
上記(ii)の定義に当てはまるものとしては、図9(C)に示すように、周囲が一部を除いて壁71で囲われた空間72をハンドル本体の露出面側から見た正面視で、開放部分73の一方の側のみに壁71の端部74が存在する場合には、その端部74と、その端部74に対向する内壁面71aの最も近い地点(図9(C)における点a,b)同士の距離を最短距離Dとする。
また、ハンドル本体の露出面側から見た正面視で、壁71の内壁面71aの露出面側の縁に沿った地点aから地点bまでの長さを、略閉鎖空間を形成する壁の長さLとする。
【0026】
また、上記(iii)の定義に当てはまるものとしては、図9(D)に示すように、周囲が一部を除いて壁71で囲われた空間72をハンドル本体の露出面側から見た正面視で、開放部分73の両側にいずれも壁71の端部が存在しない場合には、開放部分73の両側の内壁面71aの距離を最短距離Dとする。このとき、ハンドル本体の露出面側から見た正面視で、開放部分73の両側の内壁面71aの露出面側の縁形状が曲線である場合には、その曲線における曲率が開放部分73の内側から外側に変化する位置(変曲点)を、両側の内壁面71aの距離の基準点(図9(D)における点a)とし、その基準点に対向する内壁面71aの最も近い地点bまでの距離を最短距離Dとする。
また、ハンドル本体の露出面側から見た正面視で、壁71の内壁面71aの露出面側の縁に沿った地点aから地点bまでの長さを、略閉鎖空間を形成する壁の長さLとする。
【0027】
割合Pは、70.0%以上であり、75.0%以上、80.0%以上、85.0%以上、又は90.0%以上が好ましい。割合Pの上限値は、100.0%未満であり、99.0%以下、98.0%以下、97.0%以下、又は95.0%以下が好ましい。割合Pの下限と上限は任意に組み合わせることができる。
【0028】
略閉鎖空間を囲う壁の長さLは、3.0mm以上であり、4.0mm以上、5.0mm以上、7.0mm以上、又は10.0mm以上が好ましい。略閉鎖空間を囲う壁の長さLの上限については、20.0mm以下、18.0mm以下、15.0mm以下、又は12.0mm以下が好ましい。閉鎖空間を囲う壁の長さLの下限と上限は任意に組み合わせることができる。
【0029】
この例の歯ブラシ1において、代表的なものを1例として挙げると、図2に示すように、ハンドル体10の正面の第1空間50のうち、動物キャラクターのしっぽの先端部分によって一部を除いて囲われた内側の空間が、突出部34を構成する壁52によって囲まれた略閉鎖空間である。
【0030】
第1空間50の開口形状は、特に限定されず、目的のロゴやモチーフなどによって適宜設計することができる。同様に、第2空間60の開口形状も特に限定されず、目的のロゴやモチーフなどによって適宜設計することができる。
図2図4及び図7に示す第1空間50Bのように、第1空間50を囲う壁52の内側には、壁52を構成しない突出部34(キャラクターの目など)が設けられていてもよい。第2空間60についても同様である。
【0031】
(第1貫通路)
ハンドル本体30には、図6に示すように、ハンドル本体30を厚さ方向から見たときに正面と背面で重なる位置に配置された第1空間50A(50)と第2空間60A(60)の間に、ハンドル本体30を貫通し、それら第1空間50Aと第2空間60Aを繋ぐ第1貫通路31が形成されている。
同様に、図7に示すように、第1空間50B(50)と第2空間60B(60)が第1貫通路31によって繋がれており、図8に示すように、第1空間50C(50)と第2空間60C(60)が第1貫通路31によって繋がれている。
第1貫通路31で繋がれた第1空間50と第2空間60は、厚さ方向から見て完全に重なっていてもよく、部分的に重なっていてもよい。
【0032】
このように、射出充填時の第2の樹脂は第1空間50から第1貫通路31を通じて第2空間60まで到達し、第1空間50、第1貫通路31及び第2空間60の全体に第2の樹脂が充填されるようになっている。これにより、射出充填時に第2空間60の隅々まで第2の樹脂が充填されやすくなり、成形不良が生じにくくなる。
これは、第2空間60に向かう第2の樹脂が、その手前に存在する壁52に囲まれた第1空間50に、一旦トラップされることで、第1空間50に樹脂が行き渡ると共に、第1空間50内で射出圧が高まるため、射出圧の低下が抑制され、第2の樹脂を第2空間60に向けて流動させる圧力が充分に確保されるためである。
【0033】
射出圧の低下を抑制する効果が高く、第2の樹脂を第2空間60の隅々まで行き渡らせやすく、成形不良がより生じにくい点では、第1空間50は、略閉鎖空間よりも閉鎖空間であることが好ましい。第1空間50が閉鎖空間であると、第2空間60が閉鎖空間であっても、第2の樹脂を第2空間60に向けて流動させる圧力を充分に確保しやすく、成形不良が生じにくい。
【0034】
1つの第1空間50に繋がる第1貫通路31の数は、1本には限定されず、2本以上であってもよく、例えば1~3本とすることができる。
1つの第2空間60に繋がる第1貫通路31の数は、1本には限定されず、2本以上であってもよく、例えば1~3本とすることができる。
第1貫通路31によって、複数の第1空間50が1つの第2空間60と繋がっていてもよく、1つの第1空間50が複数の第2空間60と繋がっていてもよい。
【0035】
1つの第1空間50と第1貫通路31によって繋がった第2空間60の数は、3個以下が好ましく、1個がより好ましい。前記第2空間60の数が上限値以下であれば、第2空間60へ樹脂を流すために必要な射出圧を確保できる。
【0036】
(第2貫通路)
図6及び図7に示すように、ハンドル本体30には、ハンドル体10の背面側における第2空間60を囲う壁62の外側の領域と、第1空間50とを繋ぐ第2貫通路33が形成されていることが好ましい。この場合、第2の樹脂は、第2貫通路33から第1空間50に入り、さらに第1貫通路31を通じて第2空間60まで到達することにより、第2貫通路33、第1空間50、第1貫通路31及び第2空間60の全体に第2の樹脂が充填される。
【0037】
第2貫通路33を形成することにより、流入する際の過剰な樹脂量と射出圧を制限できるため、第2の樹脂を第1空間50へと流動させることが容易になり、第1空間50内における射出圧の低下をさらに抑制することができる。そして、壁52に囲まれた第1空間50に、一旦トラップされることで、第1空間50に樹脂が行き渡ると共に、第1空間50内で射出圧が高まる。その結果、第2の樹脂を第2空間60に向けて流動させる圧力を確保する効果がさらに高くなり、成形不良がさらに生じにくくなる。
1つの第1空間50に繋がる第2貫通路33の数は、1本には限定されず、2本以上であってもよく、例えば1~5本とすることができる。
【0038】
図6に示すように、歯ブラシ1においては、第1空間50A(50)を囲う壁52、及び第2空間60A(60)を囲う壁62が芯棒32上に設けられ、且つ第1貫通路31及び第2貫通路33が芯棒32を貫通していることが好ましい。特に、図3図6のようにゲート位置から離れた場所に「第1空間50と第1貫通路31と第2貫通路33と第2空間60」が存在する場合、ゲート位置付近に存在する場合に比べて、射出圧が低減する恐れがあるため、ゲート位置から離れた場所に存在する態様においては、当該構成が好ましい。
これにより、第1空間50と第1貫通路31と第2貫通路33と第2空間60を流れる樹脂の距離が短くできるため、第1空間50内で第2の樹脂の射出圧がさらに低下しにくくなり、第2空間60に隅々まで第2の樹脂を充填することが容易になる。
【0039】
また、図7に示すように、ハンドル本体30の長軸方向に垂直な断面において、第1空間50B(50)を囲う壁52が芯棒32の外側に配置されており、第1貫通路31が芯棒32を貫通していることも好ましい。特に、図3図7のようにゲート位置から近い場所に「第1空間50と第1貫通路31と第2貫通路33と第2空間60」が存在する場合、ゲート位置より遠い場合に比べて、ゲートから射出直後の高温の樹脂と高い射出圧を受けやすいことを利用できるため、ゲート位置から近い場所に存在する態様においては、当該構成が好ましい。
これにより、より大きな通路断面積の第2貫通路33を確保しやすくなるため、より高い温度の第2の樹脂をより高い射出圧を維持しながら第1空間50に流し込むことが容易になる。その結果、第1空間50内での射出圧の低下がさらに抑制されるため、第2空間60に隅々まで第2の樹脂を充填することがさらに容易になる。また、第1空間50の壁52を芯棒32の外側に設ける構成は、第1空間50の壁52を芯棒32上に設ける構成に比べて設計自由度が高い。当該態様の場合、芯棒32の外側に壁52が配置されることで、ハンドルの太さが太くなり過ぎる恐れがあるため、図5のキャラクターの顔の頬部のように、壁52はハンドルの縁に沿って湾曲した形状(すり鉢状)が好ましい。これにより、ハンドルを太くし過ぎることを改善できるだけでなく、湾曲面があることで第1空間に流入する樹脂を隙間なくストックしやすくできる利点がある。
【0040】
この場合、第1貫通路31の中心点から短軸方向の第1空間50の壁52までの距離が最長となる位置での当該距離(最長距離)は、その位置における第1貫通路31の中心点から芯棒32の側縁までの距離よりも長いことが好ましく、また15.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましい。
【0041】
第1空間50を開口側(露出面側)から正面視したときの開口面積をSA1(mm)、
第2空間60を開口側から正面視したときの開口面積をSA2(mm)、
それら第1空間50及び第2空間60に繋がる第1貫通路31の通路断面積の総和をSB1(mm)、
当該第1空間50に繋がる第2貫通路33の通路断面積の総和をSB2(mm)とする。
ただし、略閉鎖空間の開口面積は、略閉鎖空間の周囲の壁のない開放部分を最短距離Dで結んだときの直線を開口縁の一部として仮定したときの当該開口の面積を意味するものとする。
また、第1空間50の開口面積SA1と第2空間60の開口面積SA2の合計を総開口面積Sとする。
【0042】
第1空間50に流れ込む第2の樹脂の量が多くなり、第1空間50内で第2の樹脂が冷却されにくく、第2の樹脂が第2空間60へと流れやすくなることから、SA1/SB1は、1.0以上が好ましく、5.0以上がより好ましく、10.0以上がさらに好ましく、20.0以上が特に好ましい。また、第1貫通路31から壁52までの距離が遠くなり過ぎず、第1空間50内における射出圧の低下を抑制しやすいことから、SA1/SB1は、60.0以下が好ましく、55.0以下がより好ましく、50.0以下がさらに好ましく、40.0以下が特に好ましい。SA1/SB1の好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば1.0以上60.0以下が好ましい。
【0043】
第1空間50の開口面積SA1は、第2空間60の開口面積SA2と同等以上の大きさであること、すなわちSA1≧SA2を満たすことが好ましい。これにより、第1空間50から第2空間60に向かう第2の樹脂の流動速度がより大きくなり、第2空間60の隅々まで第2の樹脂が行き渡りやすくなる。
なお、複数の第1空間50が同じ第2空間60と繋がっている場合は、それら複数の第1空間50の開口面積の合計をSA1とする。また、1つの第1空間50が複数の第2空間60と繋がっている場合は、それら複数の第2空間60の開口面積の合計をSA2とする。
【0044】
A1/SA2は、1.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、5.0以上がさらに好ましく、10.0以上が特に好ましい。また、SA1/SA2は、30.0以下が好ましく、25.0以下がより好ましく、20.0以下がさらに好ましく、15.0以下が特に好ましい。SA1/SA2の好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば1.0以上30.0以下が好ましい。
【0045】
/SB1は、1.0以上が好ましく、20.0以上がより好ましい。S/SB1が下限値以上であれば、樹脂が冷えて固まるまでに第2空間60へ樹脂を流しやすい。S/SB1は、60.0以下が好ましく、40.0以下がより好ましい。S/SB1が上限値以下であれば、第2空間60に樹脂を満たすために充分な流量を確保しやすい。S/SB1の好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば1.0以上60.0以下が好ましい。
【0046】
第1空間50の開口面積SA1は、5.0mm以上が好ましく、20.0mm以上がより好ましい。開口面積SA1が下限値以上であれば、第2空間60に樹脂を満たすために充分な流量を確保しやすい。開口面積SA1は、60.0mm以下が好ましく、50.0mm以下がより好ましい。開口面積SA1が上限値以下であれば、第2空間60に樹脂を流すために必要な射出圧を確保しやすい。開口面積SA1の好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば5.0mm以上60.0mm以下が好ましい。
【0047】
第2空間60の開口面積SA2は、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましい。開口面積SA2が下限値以上であれば、第2空間60に樹脂を流すために必要な射出圧が高くなり過ぎない。開口面積SA2は、40.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましい。開口面積SA2が上限値以下であれば、第2空間60に樹脂を流すために必要な時間が長くなり過ぎない。開口面積SA2の好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば1.0mm以上40.0mm以下が好ましい。
【0048】
第1貫通路31の通路断面積の総和SB1は、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましい。総和SB1が下限値以上であれば、第2空間60に樹脂を満たすために充分な流量を確保しやすい。総和SB1は、5.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましい。総和SB1が上限値以下であれば、第2空間60に樹脂を流すために必要な射出圧を確保しやすい。総和SB1の好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.5mm以上5.0mm以下が好ましい。
【0049】
第2貫通路33の通路断面積の総和SB2は、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましい。総和SB2が下限値以上であれば、第1空間50への樹脂供給として充分な流量を確保しやすい。総和SB2は、20.0mm以下が好ましく、15.0mm以下がより好ましい。総和SB2が上限値以下であれば、第2空間60に樹脂を流すために必要な射出圧を確保しやすい。総和SB2の好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば1.0mm以上20.0mm以下が好ましい。
【0050】
第1貫通路31の通路断面積の総和SB1は第2貫通路33の通路断面積の総和SB2よりも大きさであること、すなわちSB2>SB1を満たすことが好ましい。これにより、第2空間60に樹脂を流すための樹脂量を確保しやすい。
B2/SB1は、1.5以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、4.5以上がさらに好ましく、6.0以上が特に好ましい。また、SB2/SB1は、20.0以下が好ましく、18.5以下がより好ましく、17.0以下がさらに好ましく、15.5以下が特に好ましい。SB2/SB1の好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば1.5以上20.0以下が好ましい。
【0051】
第1空間50の壁52の最小厚さは、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましい。壁52の最小厚さが前記下限値以上であれば、第1空間50内に流れ込んできた第2の樹脂を堰き止めて第2空間60へと送りことが容易になる。壁52の最小厚さは、10.0mm以下が好ましく、5.0mm以下がより好ましい。壁52の最小厚さが前記上限値以下であれば、第1空間50に流れ込んできた第2の樹脂を堰き止めて第2空間60へと送りやすい。壁52の最小厚さの好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.5mm以上10.0mm以下が好ましい。
【0052】
第2空間60の壁62の最小厚さは、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましい。壁62の最小厚さが前記下限値以上であれば、成形不良(バリ)が発生しにくい。壁62の厚さは、10.0mm以下が好ましく、5.0mm以下がより好ましい。壁62の最小厚さが前記上限値以下であれば、成形不良(ショートショット)が発生しにくい。壁62の最小厚さの好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.5mm以上10.0mm以下が好ましい。
【0053】
刷毛部20としては、特に限定されず、毛束の数や断面形状、毛丈、毛束径、植毛面12aへの毛束の配置パターンなど、用途に応じて適宜設定することができる。
毛束を構成する用毛の材質は、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィンを例示できる。
【0054】
歯ブラシ1の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。例えば、一次金型を用いた射出成形により、第1の樹脂によってハンドル本体30を成形した後、二次金型内にハンドル本体30を配置した状態で第2の樹脂を射出充填してハンドル体10を成形する、いわゆる二色成形を採用することができる。
【0055】
以上説明したように、本発明の歯ブラシにおいては、ハンドル体の長軸方向に垂直な方向から見て、ハンドル本体の一方の側に第1空間、他方の側に第2空間が設けられ、それらが第1貫通路によって繋がっている。これにより、射出充填時に第2の樹脂が第1空間に入ることで射出圧の低下が抑制され、充分な射出圧を保持した状態で第2空間まで流動させることができるため、第2空間の隅々まで第2の樹脂を満たすことができる。その結果、成形不良が充分に抑制されるため、デザイン自由度が高くなり、両面に複雑なロゴやモチーフなどを有する意匠性に優れた歯ブラシとすることができる。
また、第1空間及び第2空間はゲート位置から離れるほど成形の難易度が上がるが、本発明の歯ブラシでは、二次金型のゲート位置と第1空間及び第2空間の位置が10.0mm以上離れていても、成形不良を充分に抑制することができる。
【0056】
なお、本発明の歯ブラシは、前記した歯ブラシ1には限定されない。
例えば、第1空間と第2空間は、ハンドル本体の短軸方向の一方の側と他方の側に配置されていてもよい。
図2図3では、「一方の側」と「他方の側」は、正面側と背面側で例示しているが、これに限らず、図1の側面側(右側面側と左側面側)であってもよい。また、「一方の側」と「他方の側」は、同一直線上の反対側となっていない態様でもよく、例えば、正面側と右側面側であってもよい。
ハンドル本体は、芯棒から突出し、その先端面がハンドル体の表面に露出していない突出部を有していてもよい。
ハンドル本体において、ロゴやモチーフなどを形成する、ハンドル体の表面に露出する突出部は、把持部に設けられていることが好ましいが、ヘッド部やネック部に設けられていてもよい。
【0057】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…歯ブラシ、10…ハンドル体、12…ヘッド部、14…把持部、16…ネック部、20…刷毛部、30…ハンドル本体、31…第1貫通路、32…芯棒、33…第2貫通路、34,36,38…突出部、34a,36a,38a…露出面、40…被覆部、50,50A~50C…第1空間、52…壁、60,60A~60C…第2空間、62…壁、71…壁、71a,71b…内壁面、72…空間、73…開放部分、74,75…端部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9