(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055495
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】開閉体制御装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/43 20150101AFI20240411BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20240411BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20240411BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20240411BHJP
E05F 15/622 20150101ALI20240411BHJP
【FI】
E05F15/43
B60J5/04 C
B60J5/06 D
B60J5/10 K
E05F15/622
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162467
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】田中 壮稔
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 悦朗
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052EA09
2E052EB01
2E052EC02
2E052GA06
2E052GB01
2E052GB06
2E052GB12
2E052GB13
2E052GC01
2E052GC02
2E052GC05
2E052GC06
2E052GC10
2E052GD01
2E052GD09
2E052GD11
2E052LA02
(57)【要約】
【課題】 開閉体の動作中における開閉体の衝突の発生を抑制する。
【解決手段】 開閉体制御装置100が、開閉体4の周辺の被検出物Xまでの距離である検出距離dXを検出する距離検出部41と、開閉体4の開放動作または閉鎖動作の開始指令が入力されると、開閉体4を動作させるべく駆動部10を制御する制御部20とを備える。制御部20は、開始指令が入力されると、被検出物Xが移動物および静止物のいずれであるのかを判定し、被検出物Xが静止物である場合には、衝突判定距離dとして第1衝突判定距離d1を設定し、被検出物Xが移動物である場合には、衝突判定距離dとして第1衝突判定距離d1よりも長い第2衝突判定距離d2を設定する。制御部20は、検出距離dXが衝突判定距離dよりも小さければ、開閉体4の動作を停止させるべく駆動部10を制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の開口を開放および閉鎖する開閉体を駆動する駆動部と、
前記開閉体の周辺の被検出物までの距離である検出距離を検出する距離検出部と、
前記開閉体の開放動作または閉鎖動作の開始指令が入力されると、前記開閉体を動作させるべく前記駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記開始指令が入力されると、前記距離検出部の検出結果に基づいて、前記被検出物が移動物および静止物のいずれであるのかを判定し、
前記被検出物が前記静止物である場合には、前記検出距離と比較されるべき衝突判定距離として第1衝突判定距離を設定し、
前記被検出物が前記移動物である場合には、前記衝突判定距離として前記第1衝突判定距離よりも長い第2衝突判定距離を設定し、
前記検出距離が前記衝突判定距離よりも大きければ、前記開閉体の動作を継続させるべく前記駆動部を制御し、前記検出距離が前記衝突判定距離よりも小さければ、前記開閉体の動作を停止させるべく前記駆動部を制御する
開閉体制御装置。
【請求項2】
前記開閉体の動作位置を検出する開閉体位置検出部を更に備え、
前記制御部は、前記開閉体の動作位置が、前記開閉体の前記車体からの張出量が前記開閉体の可動範囲内で最大となる最大張出位置に近いほど、前記衝突判定距離が大きくなるようにして、前記衝突判定距離を設定する
請求項1に記載の開閉体制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記開閉体の前記動作位置が前記最大張出位置に近いほど、前記第2衝突判定距離の前記第1衝突判定距離に対する超過量が大きくなるようにして、前記第2衝突判定距離を設定する
請求項2に記載の開閉体制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記被検出物が前記静止物である場合には、前記第1衝突判定距離を前記張出量に応じて可変させ且つ前記張出量と前記第1衝突判定距離との差が一定となるようにして、前記第1衝突判定距離を設定する
請求項2に記載の開閉体制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記動作位置と前記第1衝突判定距離との対応関係を定義した第1テーブルと、前記動作位置と前記第2衝突判定距離との対応関係を定義した第2テーブルとを予め記憶し、
前記被検出物が前記静止物である場合には、前記第1テーブルを参照して前記動作位置に応じて前記第1衝突判定距離を設定し、
前記被検出物が前記移動物である場合には、前記第2テーブルを参照して前記動作位置に応じて前記第2衝突判定距離を設定する
請求項2に記載の開閉体制御装置。
【請求項6】
前記第1又は前記第2テーブルは、
前記開放動作の前記開始指令が入力されたときに参照される開放時テーブルと、
前記閉鎖動作の前記開始指令が入力されたときに参照される閉鎖時テーブルと、を含む
請求項5に記載の開閉体制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記開始指令が入力されると、前記検出距離に応じて前記開閉体の動作を停止させる衝突防止処理の開始条件の成否を判定し、
前記開始条件が成立すると、前記検出距離と前記衝突判定距離との比較結果に基づく前記駆動部の制御を実行する
請求項1~6のいずれか1項に記載の開閉体制御装置。
【請求項8】
前記開始条件は、前記検出距離が、前記衝突判定距離よりも長い処理開始距離よりも大きいとの条件を含む
請求項7に記載の開閉体制御装置。
【請求項9】
前記開始指令の入力時点で前記検出距離が前記処理開始距離よりも小さい場合には、その後に前記検出距離が前記処理開始距離よりも大きくなると、前記開始条件が成立する
請求項8に記載の開閉体制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記開始条件が成立すると、前記衝突防止処理の終了条件の成否を判定し、
前記終了条件は、前記開閉体の動作位置が所定の終了位置に達したとの条件、または前記開始指令が入力されてから所定時間が経過したとの条件を含み、
前記終了位置が全閉位置と全開位置との間に設定され、前記所定時間が前記全閉位置と前記全開位置との間での前記開閉体の動作の所要時間よりも短い
請求項7に記載の開閉体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、モータの作動により車両用バックドアを閉位置から開位置に向けて開放させる制御装置を開示している。バックドアには、障害物センサが設けられている。障害物センサがバックドアの開放動作中に障害物を検知すると、制御装置は、バックドアと障害物との衝突を回避すべく、モータの作動ひいてはバックドアの開放動作を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
障害物がバックドアに向かって接近する移動物(例えば、車両の利用者)である場合には、モータおよびバックドアの停止が移動物の接近に対して遅れ、バックドアと障害物との衝突を生じるおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、例えばバックドアのような開閉体の動作中における開閉体の衝突の発生を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、車体の開口を開放および閉鎖する開閉体を駆動する駆動部と、前記開閉体の周辺の被検出物までの距離である検出距離を検出する距離検出部と、前記開閉体の開放動作または閉鎖動作の開始指令が入力されると、前記開閉体を動作させるべく前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記開始指令が入力されると、前記距離検出部の検出結果に基づいて、前記被検出物が移動物および静止物のいずれであるのかを判定し、前記被検出物が前記静止物である場合には、前記検出距離と比較されるべき衝突判定距離として第1衝突判定距離を設定し、前記被検出物が前記移動物である場合には、前記衝突判定距離として前記第1衝突判定距離よりも長い第2衝突判定距離を設定し、前記検出距離が前記衝突判定距離よりも大きければ、前記開閉体の動作を継続させるべく前記駆動部を制御し、前記検出距離が前記衝突判定距離よりも小さければ、前記開閉体の動作を停止させるべく前記駆動部を制御する、開閉体制御装置を提供する。
【0007】
上記構成によれば、被検出物までの距離としての検出距離が、制御部により設定される衝突判定距離よりも小さければ、開閉体の動作が停止する。被検出物が静止物である場合には、制御部が衝突判定距離として第1衝突判定距離を設定する一方で、被検出物が移動物である場合には、制御部が衝突判定距離として第2衝突判定距離を設定する。第2衝突判定距離は、第1衝突判定距離よりも長い。したがって、被検出物が移動物である場合には、被検出物がより遠い位置に存在していても、開閉体の動作が停止する。そのため、被検出物が開閉体に近づきすぎる前に、開閉体を停止させることができ、被検出物が移動物であっても開閉体の衝突の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、開閉体の動作中における開閉体の衝突の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る開閉体制御装置が搭載された車両を示す左側面図。
【
図4】第1実施形態に係る開閉体制御装置の構成を模式的に示すブロック図。
【
図6A】衝突防止処理の開始条件を説明する模式図。
【
図6B】衝突防止処理の開始条件を説明する模式図。
【
図7】開放動作中に衝突判定距離を設定するためのテーブルを説明するグラフ。
【
図8】閉鎖動作中に衝突判定距離を設定するためのテーブルを説明するグラフ。
【
図9】
図4に示す開閉体制御装置により実行される処理の一部を示すフローチャート。
【
図10】
図4に示す開閉体制御装置により実行される処理の一部を示すフローチャート。
【
図11】第2実施形態に係る開閉体制御装置の構成を模式的に示すブロック図。
【
図12】
図11に示す開閉体制御装置により実行される処理の一部を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、同一のまたは対応する要素には全図を通じて同一の符号を付して詳細説明の重複を省略する。また、特段断らない限り車両が接地している地面は水平であるものと仮定するが、以下の説明における方向は、地面の勾配に応じて適宜変更され得る。
【0011】
(第1実施形態)
図1~
図3を参照して、本実施形態に係る開閉体制御装置100は、自動四輪車等の車両1に設けられた開閉体の開放動作および閉鎖動作を制御する。車両1は、開閉体の一例として、車体2の後部に設けられた開口3を開放および閉鎖するバックドア4を備える。バックドア4は、開口3を閉鎖する全閉位置θ0(
図1および
図2実線を参照)と、開口3を開放する全開位置θF(
図1および
図2破線を参照)との間の可動範囲内でその動作位置を変えるようにして動作する。
【0012】
全閉状態は、バックドア4が全閉位置θ0に位置付けられている状態である。全開状態は、
図3に示すように、バックドア4が全開位置θFに位置付けられている状態である。開放動作は、全開位置θFに向かう開方向への動作であり、一旦開始すれば本来的には全開状態まで継続される。閉鎖動作は、全閉位置θ0に向かう閉方向への動作であり、一旦開始すれば本来的には全閉状態まで継続される。開放動作は典型的には全閉状態で開始し、閉鎖動作は典型的には全開状態で開始する。
【0013】
バックドア4は、車幅方向に延びる軸線A周りに回動可能に、開口3の上縁にヒンジ5を介して取り付けられている。この場合、開方向は、左側面視で反時計回りであり、バックドア4の動作位置は、軸線Aを中心とする回転角(deg)によって定量的に表されることができる。
【0014】
バックドア4は、全閉状態で、軸線Aから下に向かうほど後に向かうように傾けられている。バックドア4が全閉位置θ0から開方向に動作すると、バックドア4の車体2からの張出量Bが増加する。なお、張出量Bは、車体2の最後端面からバックドア4の先端までの車長方向の距離である。バックドア4が全閉位置θ0と全開位置θFとの間の最大張出位置θMに位置付けられている状態で、バックドア4は、軸線Aから地面Gと平行に延び、張出量Bは、バックドア4の可動範囲内で最大となる。バックドア4は、最大張出位置θMから全開位置θFへと更に開方向へ動作できる。それにより、開口3がより広く開放され、張出量Bは減少していく。
【0015】
ここでは、全閉位置θ0が最小値あるいは基準値としての0度、全開位置θFが正の最大値であるものとし、全開位置θFの角度値がバックドア4の可動範囲と対応する。単なる一例として、全開位置θFまたは可動範囲は約73度である。全閉状態におけるバックドア4の地面直交方向に対する傾斜角φは、最大張出位置θMの余角である。単なる一例として、最大張出位置θMは約54度(傾斜角φが約36度)である。
【0016】
図4を参照して、開閉体制御装置100は、駆動部10、制御部20、距離センサ41、およびドア位置センサ42を備える。駆動部10は、バックドア4を駆動する。距離センサ41は、
図5等に示すように、バックドア4の周辺の被検出物Xまでの距離である検出距離dXを検出する。ドア位置センサ42は、バックドア4の動作位置を検出する。
【0017】
制御器20は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含むメモリ、および入出力インタフェースを有するハードウェアと、それに実装されたソフトウェアとにより構築される。CPUは、メモリに予め記憶されたプログラムを読み出し、プログラムにより指示されるステップに従って情報処理を実行する。
【0018】
これにより、制御部20は、バックドア4の開放動作あるいは閉鎖動作の開始指令が入力されると、バックドア4を動作させるべく駆動部10を制御する。バックドア4の動作中におけるバックドア4と被検出物Xとの衝突を避けるため、制御部20は、少なくとも検出距離dXに応じてバックドア4の動作を停止させる衝突防止処理を実行する。本実施形態では、衝突防止処理の実行中におけるバックドア4の動作継続可否を決定するため、検出距離dXとともに、バックドア4の動作位置も参照される。そのため、制御部20は、開始指令出力部45、駆動部10、距離センサ41、およびドア位置センサ42と接続されている。
【0019】
開始指令出力部45は、電子キー46、開スイッチ47a、および閉スイッチ47bを含む。電子キー46は、車両1の利用者により携帯され、制御部20と無線通信可能に構成される。制御部20は、電子キー46と無線通信することで、電子キー46が適正か否かを判断する認証処理を行う。電子キー46には、車両1の利用者がバックドア4の動作の開始指令を入力するためのボタン(図示せず)が設けられていてもよい。この場合、利用者がボタンを操作すると、電子キー46が制御部20に開始指令を出力する。電子キー46には、利用者が開放動作の開始指令と閉鎖動作の開始指令とを区別して入力可能なように、2つのボタンが設けられていてもよい。開スイッチ47aおよび閉スイッチ47bは、バックドア4の外面に設けられる(
図3を参照)。利用者が電子キー46を携帯している状態で認証処理が行われた後、その利用者が開スイッチ47aを操作すると、開スイッチ47aが開放動作の開始指令を制御部20に出力する。利用者が閉スイッチ47bを操作すると、閉スイッチ47bが閉鎖動作の開始指令を制御部20に出力する。なお、認証処理は、利用者が開スイッチ47a又は閉スイッチ47bを操作した後に行われるようにしてもよい。
【0020】
開始指令出力部45は、開閉体制御装置100の構成要素の一部であってもよいし、開閉体制御装置100の外部の構成要素であってもよい。開始指令出力部45から開始指令が出力されると、制御部20は、駆動部10を制御する。
【0021】
図3および
図4を参照して、駆動部10は、例えば、一対のスピンドルドライブ機構6によって構成される。各スピンドルドライブ機構6は、円筒状のハウジング6a、およびハウジング6aに挿入されたプッシュロッド6bを有し、バックドア4を車体2と連結する。ハウジング6aの基端部が開口3の側縁部に連結され、プッシュロッド6bの先端部がバックドア4の内面に連結される。各スピンドルドライブ機構6は、電気モータ11および運動変換機構12を更に有する。電気モータ11は、正逆回転自在である。運動変換機構12には、ねじ対偶が適用される。電気モータ11および運動変換機構12は、ハウジング6aに内蔵される。電気モータ11が作動すると、運動変換機構12が、電気モータ11により発生された回転駆動力を直線運動に変換してプッシュロッド6bに伝達し、プッシュロッド6bは、電気モータ11の回転方向に応じてハウジング6aの中心軸に沿って伸長または収縮する。バックドア4は、プッシュロッド6bの伸長により車体2から持ち上げられて開方向に動作し、また、プッシュロッド6bの収縮により車体2に引き寄せられて閉方向に動作する。
【0022】
図1および
図5を参照して、距離センサ41により検出される検出距離dXは、距離センサ41それ自体から被検出物Xまでの距離である。本実施形態では、距離センサ41が、バックドア4ではなく、車体2側に取り付けられている。そのため、検出距離dXの起点が、バックドア4の動作位置に関わらず、車体2から見ると変位しない。バックドア4の開放動作および閉鎖動作は原則的に停車中に行われることから、検出距離dXの起点は、地面から見ても変位しない。起点が車体2および地面に対して変位しないことから、ある被検出物Xまでの検出距離dXが時間の経過に伴って変化するのは、当該被検出物Xが地面上を移動している場合に限られるといえる。そのため、バックドア4が動作している最中に、地面上で車体2に近づくように移動している被検出物Xを検出しやすい。
【0023】
本実施形態では、距離センサ41が、単体のセンサによって構成される。距離センサ41は、車両1の後端面に設定された単一のセンサ取付位置に配置される。一例として、センサ取付位置は、開口3の下方(すなわち、全閉状態のバックドア4の下方)に設けられているリアバンパ7の後端面の下部かつ車幅方向中心部に設定されている。距離センサ41は、車両1の後端面から車両1の後方の被検出物Xまでの距離を検出距離dXとして検出する。
【0024】
本実施形態では、距離センサ41が、一例として、超音波センサによって構成されている。超音波センサは、超音波を後方に向けて発信し、センサ取付位置から後方へ円錐状に広がる1つの走査範囲Rを形成する。被検出物Xが走査範囲R内に存在する場合、距離センサ41は、被検出物Xからの反射波を受信し、TOF(time of flight)の原理に従って自身から被検出物Xまでの直線距離を検出距離dXとして検出する。超音波センサは、被検出物Xの色が検出精度に影響を及ぼしにくい点や、走査範囲Rが広い点で有益である。
【0025】
なお、距離センサ41に用いられる測距の原理は、TOFに限定されず、例えば、三角測量でもよい。その場合、車体2からの被検出物Xまでの直線距離のみならず、その前後方向成分を測定可能となる。走査範囲Rの形成のために距離センサ41から発信される媒体は、超音波に限定されず、例えば、レーザ光でもよい。距離センサ41は、車幅方向に間隔をあけて並べられた複数のセンサによって構成されてもよい。その場合、隣接する2つの走査範囲Rが互いに部分的に重複するようにして、複数の走査範囲Rが車幅方向に並べられてもよい。
【0026】
図4に戻り、ドア位置センサ42は、必ずしもバックドア4の動作位置そのものを検出するセンサでなくてもよく、動作位置の導出または推定に利用可能な情報を検出可能であればよい。例えば、ドア位置センサ42は、電気モータ11に取り付けられたエンコーダによって構成される。エンコーダは、電気モータ11の回転角ひいては回転の回数を検出する。バックドア4および駆動部10の仕様が決まった段階で、開閉体制御装置100に関する当業者は、電気モータ11がどれだけ回転すればバックドア4がどれだけ動作するのかを示す関数を、幾何学および機構学に照らして予め導出可能である。制御部20が当該関数を予め記憶していれば、制御部20は、予め記憶された関数を参照することにより、エンコーダの検出結果に基づいてバックドア4の動作位置を算術的に容易に導出できる。
【0027】
制御部20は、記憶部21、タイマ22、駆動制御部23、通信部24、ドア位置算出部25、判定部26、および設定部27を有する。
【0028】
記憶部21は、バックドア4の動作を制御するために必要な情報を一時的にまたは永続的に格納する。一例として、記憶部21は、第1テーブル31および第2テーブル32(
図7および
図8も参照)を記憶する。テーブル31,32については、後述する。
【0029】
タイマ22は、時間を計測する。駆動制御部23は、電気モータ11を制御し、駆動部10ひいてはバックドア4を作動させたり停止させたりする。通信部24は、電子キー46との間で情報あるいは信号の送受信を行う。通信部24は、開スイッチ47aおよび閉スイッチ47bから開始指令を受信する。通信部24は、開始指令出力部45から出力された開始指令を受信する開始指令受信部としての機能を果たす。通信部24は、距離センサ41およびドア位置センサ42の検出結果を受信する。距離センサ41およびドア位置センサ42は、検出結果を所定サンプリング周期(例えば、5msec)で逐次出力する。
【0030】
ドア位置算出部25は、ドア位置センサ42が動作位置そのものを検出しない場合において、記憶部21に予め記憶される動作位置算出テーブル(図示略)を参照し、ドア位置センサ42の検出結果に基づき、バックドア4の動作位置を算出する。動作位置算出テーブルは、ドア位置センサ42によって検出されるパラメータ(例えば、電気モータ11の回転角ないし回転の回数)と、バックドア4の動作位置との相関を定義する。
【0031】
判定部26は、バックドア4の動作の制御に際して種々の判断処理を行う。判定部26は、例えば、条件判定部26a、移動判定部26b、および停止判定部26cを有する。
【0032】
条件判定部26aは、開始指令が通信部24で受信された時点で、検出距離dXに応じてバックドア4の動作を停止させる衝突防止処理の開始条件の成否を判定する。また、条件判定部26aは、衝突防止処理の実行中に、衝突防止処理の終了条件の成否を判定する。
【0033】
開始条件は、「衝突判定距離d」の説明後に
図6Aおよび
図6Bを参照して説明する。本実施形態では、終了条件が、バックドア4の動作位置が全閉位置θ0と全開位置θFとの間の所定の終了位置に達したとの条件を含む。終了位置は、動作が完了する直前の位置に設定される。よって、開放動作中に適用される開放時終了位置θEaは、閉鎖動作中に適用される閉鎖時終了位置θEbと異なる。開放時終了位置θEaは、全開位置θFの近くに設定される。例えば、開放時終了位置θEaは、最大張出位置θMに設定される。閉鎖時終了位置θEbは、全閉位置θ0の近くに設定される。例えば、閉鎖時終了位置θEbは、約12度である。
【0034】
移動判定部26bは、衝突防止処理の実行中に、距離センサ41から逐次出力される検出結果に基づき、被検出物Xが移動物であるか静止物であるかを判定する。この判定処理の実行のため、記憶部21は、現時点を含む時間窓内で逐次受信された検出距離dXの時系列データを保存する。移動判定部26bは、検出距離dXの現在値および過去値から被検出物Xの変位量を推定し、現在値および過去値の時間差と変位量とから被検出物Xの移動速度を推定する。移動判定部26bは、移動速度の推定値を所定の移動判定閾値(例えば、10mm/sec)と比較する。移動判定部26bは、推定値が移動判定閾値以上であれば、被検出物Xが移動物であると判定する一方、推定値が移動判定閾値未満であれば、被検出物Xが静止物であると判定する。なお、図示省略するが、記憶部21は、移動判定閾値を永続的に記憶している。
【0035】
停止判定部26cは、衝突防止処理の実行中において、検出距離dXを衝突判定距離dと比較する。停止判定部26cは、検出距離dXが衝突判定距離dよりも大きければ、バックドア4の動作を継続可能と判定する。これを受けて、駆動制御部23は、バックドア4の動作を継続させるべく駆動部10を制御する。一方、停止判定部26cは、検出距離dXが衝突判定距離dよりも小さければ、バックドア4の動作を継続不可と判定する。これを受けて、駆動制御部23は、バックドア4の動作を停止させるべく駆動部10を制御する。
【0036】
設定部27は、衝突防止処理の実行中に、停止判定部26cによるバックドア4の動作継続可否の判定において検出距離dXと比較されるべき衝突判定距離dを設定する。衝突判定距離dは、被検出物Xが移動物であるのか静止物であるのかに応じて変化する。設定部27は、被検出物Xが静止物である場合には、検出距離dXと比較されるべき衝突判定距離dとして、「第1衝突判定距離d1」を設定する。設定部27は、被検出物Xが移動物である場合には、検出距離dXと比較されるべき衝突判定距離dとして、「第2衝突判定距離d2」を設定する。このように、衝突判定距離dには、第1衝突判定距離d1と第2衝突判定距離d2とがあるが、両者を特段区別しない場合(換言すれば、両者に共通する場合)には、用語「衝突判定距離d」を用いる。
【0037】
本実施形態においては、衝突判定距離dが、開放動作中であるのか閉鎖動作中であるのかに応じても変化する。本実施形態においては、衝突判定距離dが、バックドア4の動作位置に応じても変化する。バックドア4の動作方向および動作位置が同一の状況下において、第2衝突判定距離d2は、第1衝突判定距離d1よりも長い。
【0038】
設定部27は、前述したテーブル31,32を参照して、上記のとおり状況に即して衝突判定距離dを可変的に設定する。第1テーブル31は、被検出物Xが静止物である場合に衝突判定距離dとして第1衝突判定距離d1を設定するために参照され、動作位置と第1衝突判定距離d1との対応関係を定義する。第2テーブル32は、被検出物Xが移動物である場合に衝突判定距離dとして第2衝突判定距離d2を設定するために参照され、動作位置と第2衝突判定距離d2との対応関係を定義する。
【0039】
第1テーブル31は、開放動作時の第1衝突判定距離d1の設定に参照される開放時第1テーブル31a、および閉鎖動作時の第1衝突判定距離d1の設定に参照される閉鎖時第1テーブル31bを含む。第2テーブル32は、開放動作時の第2衝突判定距離d2の設定に参照される開放時第2テーブル32a、および閉鎖動作時の第2衝突判定距離d2の設定に参照される閉鎖時第2テーブル32bを含む。2種の被検出物Xを区別し、2種の動作方向を区別して衝突判定距離dを設定することから、合計4通りのテーブル31a,31b,32a,32bが、記憶部21に予め記憶される。
【0040】
図7は、開放時第1テーブル31aおよび開放時第2テーブル32aそれぞれにおいて定義されている対応関係を2次元直交座標系において模式的に示すグラフである。横軸が動作位置、縦軸が衝突判定距離dである。横軸方向の右側ほど動作位置の値が大きくなっており、開放動作が進行していくにつれて、動作位置および衝突判定距離dは、線図上で左側から右側へと移行していく。なお、
図7は、テーブル31a,32aとともに、動作位置に対する張出量Bを示す線図を併せて示す。なお、張出量Bの単位は、衝突判定距離dの単位と同じであり(例えば、mm)、張出量Bと衝突判定距離dとの差は、縦軸座標の差で表される。
【0041】
ところで、衝突判定距離dが、衝突防止処理の実行中に用いられて動作位置に基づいて設定される一方で、衝突防止処理の終了条件は、動作位置によって規定される。よって、特段断らない限り、開放動作時に適用される衝突判定距離dに関する説明では、バックドア4の可動範囲のうち、開放時終了位置θEaから開方向側(
図7横軸方向右側)の動作位置を無視する。具体例を挙げると、特段断らない限り、用語「動作位置が最大張出位置θMに近いほど」によって特定される動作位置のなかには、開放時終了位置θEaから全開位置θFまでの動作位置が含まれない。本実施形態では、開放時終了位置θEaが最大張出位置θMであるから、当該用語によって特定される動作位置のなかに、開放時終了位置θEaとしての最大張出位置θMから全開位置θFまでの動作位置が含まれないことになる。
【0042】
動作位置が、全閉位置θ0から最大張出位置θMに近づいていくにつれて、張出量Bが増加する。これに呼応して、動作位置が最大張出位置θMに近いほど、衝突判定距離dも大きくなる。
【0043】
第1衝突判定距離d1と張出量との差分Δdaは、動作位置に関わらず略一定である。つまり、第1衝突判定距離d1の上昇は、張出量Bの上昇に応じている。換言すれば、仮に距離センサ41がバックドア4に取り付けられており検出距離dXの起点が動作位置に応じて変位する場合においては、第1衝突判定距離d1は動作位置に関わらず略一定となる。なお、「略一定」は、差分Δdaが動作位置に関わらず一定値である場合のみならず、差分Δdaが動作位置によって若干変動する場合も含む。
【0044】
これに対し、第2衝突判定距離d2と張出量Bとの差分Δdbは、動作位置が最大張出位置θMに近いほど大きくなる。差分Δdaは動作位置に関わらず略一定であることから、第2衝突判定距離d2の第1衝突判定距離d1に対する超過量Δdabも、動作位置が最大張出位置θMに近いほど大きくなる。
【0045】
差分Δdbは、移動物である被検出物Xに想定された移動速度と、各動作位置におけるバックドア4の動作速度と、制御部20内で電気モータ11を停止させることが決定されて電気モータ11およびバックドア4の制動が開始してから実際にバックドア4が停止するまでに要する時間(以下、停止所要時間)または停止所要時間内のバックドア4の動作量とに基づいて、設定される。動作速度は、動作位置が全閉位置θ0から遠ざかるほど速くなる。動作速度が速いほど、停止所要時間が長くなり、停止所要時間内の動作量が大きくなる。動作速度が速く停止所要時間が長いほど、差分Δdbが大きい。その結果として、差分Δdbは、動作位置が最大張出位置θMに近いほど大きくなっている。
【0046】
図8は、閉鎖時第1テーブル31bおよび閉鎖時第2テーブル32bそれぞれにおいて定義されている対応関係を2次元直交座標系において模式的に示すグラフである。通例と異なり、横軸方向の右側ほど動作位置の値は小さい。これにより、閉鎖動作が進行していくにつれて、動作位置および衝突判定距離dは、
図7と同様にして、線図の左側から右側へと移行していくことになる。特段断らない限り、閉鎖動作時に適用される衝突判定距離dに関する説明では、バックドア4の可動範囲のうち、閉鎖時終了位置θEbから閉方向側(
図8横軸方向右側)の動作位置を無視する。
【0047】
閉鎖動作時に、バックドア4の動作位置が、全開位置θFから最大張出位置θMを経由して全閉位置θ0へと変化し、動作位置が全閉位置θ0付近の閉鎖時終了位置θEbに達すると衝突防止処理が終了する。閉鎖動作時にも、動作位置が最大張出位置θMに近いほど、衝突判定距離dが大きい。閉鎖動作時にも、第1衝突判定距離d1と張出量Bとの差分Δdaは、動作位置に関わらず略一定である。閉鎖動作時にも、動作位置が最大張出位置θMに近いほど、第2衝突判定距離d2と張出量Bとの差分Δdbが大きく、第2衝突判定距離d2の第1衝突判定距離d1に対する超過量Δdabが大きい。
【0048】
以下、
図9および
図10を参照して、上記のように構成される制御部20によって実行されるバックドア4の開放動作および閉鎖動作を制御する方法について説明する。
【0049】
通信部24が開放動作の開始指令を受信すると(S1:YES)、駆動制御部23が、バックドア4の開放動作を開始すべく、電気モータ11を作動させる(ステップS3)。通信部24が開放動作ではなく閉鎖動作の開始指令を受信すると(S1:NO AND S2:YES)、駆動制御部23が、バックドア4の閉鎖動作を開始すべく、電気モータ11を開放動作時とは逆方向に作動させる(ステップS4)。開始指令が入力されていなければ(S1:NO AND S2:NO)、制御部20は、電気モータ11を停止させた状態で開始指令の入力を待機する。
【0050】
開始指令が入力されると(S1:YES OR S2:YES)、距離センサ41が検出距離dXを逐次検出し、通信部24がその検出結果を逐次受信する(ステップS11)。また、ドア位置算出部25が、通信部24に逐次入力されるドア位置センサ42の検出結果に基づいて、記憶部21に記憶される動作位置算出テーブル(図示略)を参照し、バックドア4の動作位置を逐次算出する(ステップS12)。
【0051】
以下、説明の単純化のため、全閉状態で開放動作の開始指令が入力された場合を例にとって説明する。判定部26は、動作が完了したか否か(すなわち、バックドア4が全開状態にあるか否か)を判定する(ステップS13)。動作完了の判定手法は、特に限定されないが、本実施形態では、ドア位置算出部25の算出結果を用いることができる。全開状態でない場合(S13:NO)、条件判定部26aが、衝突防止処理S20の開始条件の成否を判定する(ステップS14)。
【0052】
図6Aおよび
図6Bを参照して、衝突防止処理S20の開始条件は、検出距離dXが、処理開始距離Lよりも大きいとの条件を含む。処理開始距離Lは、衝突判定距離dよりも長い。衝突判定距離dは、上記のとおり、バックドア4の動作方向および動作位置に応じて変わり、また、被検出物Xが移動物であるか否かに応じて変わる。本実施形態において、処理開始距離Lは、このように可変的に設定される衝突判定距離dの最大値よりも長い。一例として、衝突判定距離dの最大値は、動作位置が最大張出位置θMであるときの第2衝突判定距離d2である。本実施形態では、処理開始距離Lが、予め定められた一定値として、記憶部21に記憶されている。
【0053】
図6Aに示すように、開始指令が入力された時点(S1:YES)で、被検出物Xとしての利用者が車体2から処理開始距離Lよりも遠い場所にいれば、開始条件がその時点で成立する(S14:YES)。開始指令が入力された時点で開始条件が成立する場合として、利用者が車体2から十分に離れた位置で、電子キー46のボタンを操作した場合を例示できる。
【0054】
図6Bに示すように、開始指令が入力された時点(S1:YES)で、被検出物Xとしての利用者が、車体2から処理開始距離Lよりも近い場所にいれば、開始条件はその時点で成立しない(S14:NO)。開始指令が入力された時点で開始条件が成立しない場合として、利用者がバックドア4に設けられた開スイッチ47aを操作した場合を例示できる。仮にこの状況下で衝突判定処理S20が開始しても、利用者はバックドア4に触れるほどに車体2に近づいているから、開放動作は即座に停止してしまう。よって、このような状況下では、開始条件が非成立となり、衝突防止処理S20は実行されない。換言すれば、衝突防止モードに移行することなく、駆動制御部23は、バックドア4の開放動作を継続すべく電気モータ11を制御する(ステップS16)。
【0055】
ただし、その後も、条件判定部26aは、被検出物Xとしての利用者が車体2から処理開始距離Lよりも遠い場所に移動したか否かを監視し続ける(S14:NO → S11,S14)。被検出物Xとしての利用者が、車体2から処理開始距離Lよりも遠い場所まで移動すると、開始条件がその時点で成立する(S14:YES)。
【0056】
衝突防止処理S20の開始条件が成立すると(S14:YES)、条件判定部26aが、衝突防止処理S20の終了条件が成立しているか否かを判定する(ステップS15)。前述したとおり、開放動作時の終了条件は、動作位置が、開放時終了位置θEaまたはそれよりも開方向側であるとの条件を含む。概略的に言って、開始条件の成立時点では、終了条件は成立せず(S15:NO)、そのため、衝突防止処理S20が開始する。
【0057】
衝突防止処理S20において、まず、移動判定部26bが、通信部24に逐次入力される距離センサ41の検出結果(記憶部21に記憶される検出距離dXの時系列データ)に基づき、被検出物Xが移動物であるのか静止物であるのか判定する(ステップS21)。
【0058】
被検出物Xが静止物である場合には(S21:NO)、設定部27が、記憶部21に記憶される開放時第1テーブル31aを参照し、直近のステップS12で算出されたバックドア4の動作位置の現在値に基づき、第1衝突判定距離d1を衝突判定距離dとして設定する(ステップS22)。
【0059】
被検出物Xが移動物である場合には(S21:YES)、設定部27が、記憶部21に記憶される開放時第2テーブル32aを参照し、直近のステップS12で算出されたバックドア4の動作位置の現在値に基づき、第2衝突判定距離d2を衝突判定距離dとして設定する(ステップS23)。
【0060】
次に、停止判定部26cが、直近のステップS11で検出された検出距離dXを、直近のステップS22またはステップS23で設定された衝突判定距離dと比較する(ステップS24)。
【0061】
検出距離dXが衝突判定距離d以上である場合(S24:NO)、衝突のおそれは低い。駆動制御部23は、バックドア4の開放動作を継続すべく電気モータ11を制御する(ステップS16)。処理は、ステップS11から繰り返される。開始条件は成立済であり、処理がステップS14からステップS15に進む。検出距離dXが衝突判定距離d以上であり続け、開放動作が継続すると、バックドア4の動作位置が開放時終了位置θEaに達する。これにより、終了条件が成立し(S15:YES)、衝突判定処理が終了する。つまり駆動制御部23が、検出距離dXに関わらず、バックドア4の開放動作が全開状態になるまで実行される(ステップS17)。バックドア4が全開状態になると、処理が終了する。
【0062】
一方、終了条件が非成立である状態(すなわち、動作位置が開放時終了位置θEaに未達の状態)で、検出距離dXが衝突判定距離d未満となった場合(S24:YES)、バックドア4と被検出物Xとの衝突が発生するおそれがある。駆動制御部23は、バックドア4の開放動作を停止させるべく電気モータ11を制御する(ステップS25)。電気モータ11が制動され、それによりバックドア4の動作速度は急減する。電気モータ11ひいてはバックドア4の開放動作が完全に停止すると、処理が終了する。
【0063】
全開状態で閉鎖動作の開始指令が入力された場合も上記同様である。判定部26は、動作が完了したか否か、すなわちバックドア4が全閉状態にあるか否かを判定する(ステップS13)。全閉状態であれば(S13:YES)、駆動制御部23が電気モータ11を停止させ、処理が終了する。全閉状態でなければ(S13:NO)、開始条件の成否が判定される(ステップS14)。開始条件の成立後は終了条件が成立するまで(S14:YES AND S15:NO)、衝突防止処理S20が実行される。衝突防止処理S20において、被検出物Xが移動物であるのか静止物であるのか判定される(ステップS21)。
【0064】
被検出物Xが静止物であれば(S21:NO)、設定部27が、記憶部21に記憶される閉鎖時第1テーブル31bを参照し、直近のステップS12で算出されたバックドア4の動作位置の現在値に基づき、第1衝突判定距離d1を衝突判定距離dとして設定する(ステップS22)。被検出物Xが移動物であれば(S21:YES)、設定部27が、記憶部21に記憶される閉鎖時第2テーブル32bを参照し、直近のステップS12で算出されたバックドア4の動作位置の現在値に基づき、第2衝突判定距離d2を衝突判定距離dとして設定する(ステップS23)。
【0065】
次に、停止判定部26cが、直近のステップS11で検出された検出距離dXを、直近のステップS22またはステップS23で設定された衝突判定距離dと比較する(ステップS24)。検出距離dXが衝突判定距離d以上であれば(S24:NO)、バックドア4の閉鎖動作が継続する(ステップS16)。バックドア4の動作位置が閉鎖時終了位置θEbに達するまで閉鎖動作が継続されると、終了条件が成立する(S15:YES)。衝突判定処理S20は終了し、バックドア4の閉鎖動作が全閉状態になるまで実行される(ステップS17)。バックドア4が全閉状態になると、処理が終了する。
【0066】
一方、終了条件が非成立である状態(すなわち、動作位置が閉鎖時終了位置θEbに未達の状態)で、検出距離dXが衝突判定距離d未満となった場合(S24:YES)、駆動制御部23は、バックドア4の閉鎖動作を停止させるべく電気モータ11を制御する(ステップS25)。電気モータ11が制動され、それによりバックドア4の動作速度は急減する。電気モータ11ひいてはバックドア4の閉鎖動作が完全に停止すると、処理が終了する。
【0067】
なお、バックドア4の開放動作または閉鎖動作が衝突防止処理S20によって途中で停止した後、開放動作の開始指令が入力されると、ステップS3から処理が開始する。閉鎖動作の開始指令が入力されると、ステップS4から処理が開始する。このように、全閉状態から開放動作が開始する場合や、全開状態からの閉鎖動作が開始する場合でなくとも、上記同様にして、開始条件の成否が判定され(ステップS14)、開始条件の成立後は終了条件が成立するまでの間(S14:YES AND S15:NO)、衝突防止処理S20が実行される。
【0068】
全閉状態から開放動作が行われた後すぐに衝突防止処理S20によりバックドア4の動作が停止すると、バックドア4の動作位置が閉鎖時終了位置θEbに達していない場合がある。その後、閉鎖動作の開始指令が入力された場合、開始指令の入力時点で既に終了条件が成立している。開始指令の入力時点で開始条件が成立しても同時的に終了条件も成立し(S14:YES AND S15:YES)、衝突防止処理S20が実行されずにバックドア4が閉鎖される(ステップS17)。全開状態から閉鎖動作が行われた後すぐに衝突防止処理S20によりバックドア4の動作が停止し、その後に開放動作の開始指令が入力された場合についても、これと同様である。
【0069】
ここまで、開始指令が入力された後に動作が完了するまでの間に開始条件が成立することを前提とした。ただし、開始条件が非成立のまま開放動作が継続し続けた場合においても(S14:NO→S16)、バックドア4が全開状態になれば(S13:YES)、処理は適切に終了する。閉鎖動作が継続し続けた場合についても、これと同様である。
【0070】
また、全開状態で開放動作の開始指令が入力された場合には、バックドア4が既に全開状態であるため(S13:YES)、処理は即座に適切に終了する。全閉状態で閉鎖動作の開始指令が入力された場合についても、これと同様である。
【0071】
上記構成によれば、距離センサ41から被検出物Xまでの距離としての検出距離dXが、制御部20により設定される衝突判定距離dよりも小さければ、バックドア4の動作が停止する。被検出物Xが静止物である場合には、制御部20が衝突判定距離dとして第1衝突判定距離d1を設定する一方で、被検出物Xが移動物である場合には、制御部20が衝突判定距離dとして第2衝突判定距離d2を設定する。第2衝突判定距離d2は、第1衝突判定距離d1よりも長い。したがって、被検出物Xが移動物である場合には、被検出物Xがより遠い位置に存在していても、バックドア4の動作が停止する。そのため、被検出物Xがバックドア4に近づきすぎる前に、バックドア4を停止させることができ、被検出物Xが移動物であってもバックドア4の衝突の発生を抑制できる。
【0072】
バックドア4の動作位置が最大張出位置θMに近いほど、第2衝突判定距離d2の第1衝突判定距離d1に対する超過量Δdabが大きい。バックドア4の動作位置が最大張出位置θMに近いと、バックドア4の動作速度も大きく、バックドア4の停止を開始してからバックドア4が実際に停止するまでの停止所要時間が長い。超過量Δdabを大きくすることで、停止が間に合わずに移動物がバックドア4に衝突するような事態を抑制できる。
【0073】
開放動作時において、バックドア4の動作位置が、全開位置θF付近の開放時終了位置θEaに達すると、衝突防止処理S20が終了し、検出距離dXに関わらずバックドア4は全開位置θFまで動作する。被検出物Xが人間である場合に、頭部がバックドア4と衝突するような状態でバックドア4が停止するのを抑止でき、安全性が向上する。最大張出位置θMは開放時終了位置θEaとして好適である。張出量Bが減少していくので、その後は衝突防止処理S20が終了しても、衝突が発生するおそれが低い。このため、利便性の維持と安全性の確保とを両立できる。
【0074】
閉鎖動作時についても同様である。バックドア4の動作位置が、全閉位置θ0付近の閉鎖時終了位置θEbに達すると、衝突防止処理S20が終了し、検出距離dXに関わらずバックドア4は全閉位置θ0まで動作する。バックドア4が全閉位置θ0付近に位置付けられた微開状態で停止した場合に、利用者が気づかずに微開状態で放置するおそれがある。隙間を利用した盗難を抑止でき、安全性が向上する。
【0075】
(第2実施形態)
以下、
図11~
図12を参照しながら、第1実施形態との相違を中心に、第2実施形態について説明する。
【0076】
図11を参照して、本実施形態に係る開閉体制御装置100は、ドア位置センサ42を備えていない。換言すれば、制御部20が、電気モータ11のエンコーダにより検出される情報を取得できない。そこで、上記実施形態においてバックドア4の動作位置を参照して実行されていた制御が、以下のように変更される。
【0077】
例えば、テーブル31,32(
図4を参照)が記憶部21から省略される。代わりに、記憶部21は、第1衝突判定距離d1および第2衝突判定距離d2を記憶している。設定部27は、被検出物Xが移動物であるのか静止物であるのかに応じて、第1衝突判定距離d1および第2衝突判定距離d2のいずれかを選択的に設定する。第1衝突判定距離d1は、開放時と閉鎖時とで互いに異なっていてもよいし、共通でもよい。第2衝突判定距離d2についてもこれと同様である。なお、上記実施形態と同様にして、第2衝突判定距離d2は、第1衝突判定距離d1よりも長い。
【0078】
また、終了条件がバックドア4の動作位置に基づく条件を含まない。代わりに、終了条件は、開始指令が入力された時点から所定時間Tが経過したとの条件を含む。タイマ22は、開始指令が入力されると、その時点からの経過時間を計測する。条件判定部26aは、計測された経過時間が所定時間Tに達したか否かを判定する。所定時間Tは、全閉位置θ0と全開位置θFとの間でのバックドア4の動作の所要時間よりも短く、記憶部21に予め記憶される。所要時間は、バックドア4および駆動部10の設計段階において予め想定可能である。
【0079】
図12は、第1実施形態を示す
図9に相当し、
図12内の丸囲みアルファベットは、
図10内の丸囲みアルファベットと対応する。
図12および
図10を参照して、開始指令が入力されると、第1実施形態と同様にして検出距離dXが逐次受信される一方(ステップS11)、動作位置の算出工程S12(
図9を参照)は省略される。代わりに、タイマ22が、開始指令の入力時点からの経過時間の計測を開始する(ステップS18)。
【0080】
次に、第1実施形態と同様にして、判定部26が、動作が完了したか否かを判定する(ステップS13)。動作完了の判定手法は、特に限定されないが、本実施形態では、タイマ22により計測された経過時間が、全閉位置θ0と全開位置θFとの間でのバックドア4の動作の所要時間に達したか否かに基づき、当該判定を行うことができる。なお、閉鎖動作時についても同様に所要時間に達したか否かで動作の完了を判定してもよく、バックドア4に設けられているラッチ機構の状態に基づいて動作の完了を判定してもよい。動作が完了していなければ(S13:NO)、条件判定部26aが、衝突防止処理S20の開始条件の成否を判定する(ステップS14)。開始条件が成立しないまま動作が完了すれば(S14:NO → S13:YES)、処理が終了する。開始条件が成立すると(S14:YES)、条件判定部26aが、タイマ22の計測値を参照し、衝突防止処理S20の終了条件の成否を判定する(ステップS15)。開始条件は、上記実施形態と同様である。終了条件は、上記実施形態とは異なり、開始指令が入力された時点から所定時間Tが経過したとの条件である。終了条件が成立していなければ(S15:NO)、衝突防止処理S20が実行される。
【0081】
衝突防止処理S20の流れは、上記実施形態と同様である。移動判定部26bが、被検出物Xが移動物であるのか静止物であるのか判定する(ステップS21)。被検出物Xが静止物である場合には(S21:NO)、設定部27が、記憶部21に記憶される第1衝突判定距離d1を衝突判定距離dとして設定する(ステップS22)。被検出物Xが移動物である場合には(S21:YES)、設定部27が、記憶部21に記憶される第2衝突判定距離d2を衝突判定距離dとして設定する(ステップS23)。このように、テーブルを用いず、所定値が衝突判定距離dとして設定される。次に、停止判定部26cが、直近のステップS11で検出された検出距離dXを衝突判定距離dと比較する(ステップS24)。検出距離dXが衝突判定距離d以上である場合(S24:NO)、バックドア4の動作が継続され(ステップS16)、処理がステップS11から繰り返される。終了条件が成立すると(S15:YES)、衝突判定処理S20が終了し、バックドア4の動作が完了まで実行される(ステップS17)。検出距離dXが衝突判定距離d未満である場合(S24:YES)、バックドア4の動作が停止する(ステップS25)。電気モータ11ひいてはバックドア4の動作が完全に停止すると、処理が終了する。
【0082】
このように、開閉体制御装置100がドア位置センサ42を備えておらず、バックドア4の動作位置を参照できない構成であっても、制御部20は、被検出物Xが移動物であるのか静止物であるのかの判定結果に応じて衝突判定距離dを設定する。この場合においても、開放動作時の衝突判定処理S20が全開状態の直前に終了し、閉鎖動作時の衝突防止処理S20が全閉状態の直前に終了する。これにより、上記実施形態と同様にして、安全性の確保と利便性の維持とを両立できる。
【0083】
(変形例)
これまで本発明の実施形態について説明したが、上記構成は、本発明の趣旨の範囲内で適宜追加、変更、または削除可能である。
【0084】
第1実施形態において、開放時と閉鎖時とで異なるテーブルが用いられたが、開放時と閉鎖時とでテーブルが共通であってもよい。
【0085】
第2実施形態において、第1衝突判定距離d1および第2衝突判定距離d2が所定値とされたが、第1衝突判定距離d1が、開始指令の入力時点からの経過時間に応じて、可変的に設定されてもよい。第1実施形態における第1テーブル31の横軸を動作位置から経過時間に置き換えることにより、このような可変設定を実現可能である。第2衝突判定距離d2についても同様である。
【0086】
距離センサ41は、バックドア4に取り付けられていてもよい。開閉体は、バックドアに限定されず、例えば、サイドドアあるいはトランクリッドでもよい。開閉体の動作は、車幅方向の軸線周りの回動に限定されず、上下方向の軸線周りの回動でもよく、車体の側面に沿ったスライド移動でもよい。開閉体制御装置100は、自動四輪車以外の車両にも適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 車両
2 車体
3 開口
4 バックドア(開閉体)
10 駆動部
20 制御部
31 第1テーブル
31a 開放時第1テーブル
31b 閉鎖時第1テーブル
32 第2テーブル
32a 開放時第2テーブル
32b 閉鎖時第2テーブル
41 距離センサ(距離検出部)
42 ドア位置センサ(開閉体位置検出部)
100 開閉体制御装置
d 衝突判定距離
d1 第1衝突判定距離
d2 第2衝突判定距離
dX 検出距離
L 処理開始距離
X 被検出物
θ0 全閉位置
θF 全開位置
θM 最大張出位置
θEa 開放時終了位置
θEb 閉鎖時終了位置
T 所定時間
S20 衝突防止処理