(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055496
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】差動増幅回路
(51)【国際特許分類】
H03F 3/68 20060101AFI20240411BHJP
H03F 3/181 20060101ALI20240411BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H03F3/68 210
H03F3/181 210
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162469
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】居藤 悠馬
【テーマコード(参考)】
5D220
5J500
【Fターム(参考)】
5D220AA24
5D220AA27
5J500AA02
5J500AA23
5J500AA51
5J500AC55
5J500AC92
5J500AF14
5J500AF15
5J500AF17
5J500AF18
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH33
5J500AH39
5J500AK17
5J500AK42
5J500AK62
5J500AM08
5J500AS05
5J500AT06
5J500LV03
5J500LV05
5J500LV07
5J500LV08
(57)【要約】
【課題】差動信号の状態を簡素な回路構成で検出可能な増幅回路を提供する。
【解決手段】増幅回路200は、スピーカ102を駆動する。第1メインアンプ210pは、差動信号S3の正極信号S3pを増幅する。第2メインアンプ210nは、差動信号S3の負極信号S3nを増幅する。判定回路220は、正極信号S3pおよび負極信号S3nを監視する。選択回路224は、コンパレータ222の第1入力に、正極信号S3pに応じた第1検出信号S4pと、負極信号S3nに応じた第2検出信号S4nを時分割で選択的に供給する。電圧源226は、コンパレータ222の第2入力に、時分割で複数のしきい値電圧Vthを供給する。判定部228は、コンパレータ222の出力にもとづいて、差動信号S3の状態を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカを駆動する差動増幅回路であって、
差動信号の正極信号を増幅する第1アンプと、
前記差動信号の負極信号を増幅する第2アンプと、
前記正極信号および前記負極信号を監視する判定回路と、
を備え、
前記判定回路は、
コンパレータと、
前記コンパレータの第1入力に、前記正極信号に応じた第1検出信号と前記負極信号に応じた第2検出信号を時分割で選択的に供給する選択回路と、
前記コンパレータの第2入力に、時分割で複数のしきい値電圧を供給する電圧源と、
前記コンパレータの出力にもとづいて、前記差動信号の状態を判定する判定部と、
を備える、差動増幅回路。
【請求項2】
前記複数のしきい値電圧は2個である、請求項1に記載の差動増幅回路。
【請求項3】
前記2個のしきい値電圧はそれぞれ、複数の電圧レベルから選択可能である、請求項2に記載の差動増幅回路。
【請求項4】
前記選択回路は、
前記正極信号を分圧して前記第1検出信号を生成する第1分圧回路と、
前記負極信号を分圧して前記第2検出信号を生成する第2分圧回路と、
を含む、請求項1から3のいずれかに記載の差動増幅回路。
【請求項5】
前記第1分圧回路の分圧比と、前記第2分圧回路の分圧比はそれぞれ切りかえ可能である、請求項4に記載の差動増幅回路。
【請求項6】
前記判定部は、前記差動信号が直流成分を含む状態を検出する、請求項1から3のいずれかに記載の差動増幅回路。
【請求項7】
前記判定部は、前記差動信号が過大入力である状態を検出する、請求項1から3のいずれかに記載の差動増幅回路。
【請求項8】
前記判定部は、前記差動信号の振幅を検出する、請求項1から3のいずれかに記載の差動増幅回路。
【請求項9】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1から3のいずれかに記載の差動増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オーディオ用の差動増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカの駆動方式として、BTL(Bridge-Tied Load)がある。BTL方式の増幅回路は、オーディオ信号の正極入力信号を増幅するアンプと、負極入力信号を増幅するアンプを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
正常状態において、正極入力信号と負極入力信号は、相補的な交流信号であるが、何らかの異常が発生して、正極入力信号もしくは負極入力信号がある一定レベルをとると、スピーカに直流の駆動信号が供給され、信頼性を低下させる要因となる。
【0004】
あるいは、オーディオアンプでは、ゲイン制御やアラート生成のために、差動信号の振幅を検出したい場合がある。
【0005】
本開示は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、差動信号の状態を簡素な回路構成で検出可能な増幅回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様は、スピーカを駆動する差動増幅回路に関する。差動増幅回路は、差動信号の正極信号を増幅する第1アンプと、差動信号の負極信号を増幅する第2アンプと、正極信号および負極信号を監視する判定回路と、を備える。判定回路は、コンパレータと、コンパレータの第1入力に、正極信号に応じた第1検出信号と負極信号に応じた第2検出信号を時分割で選択的に供給する選択回路と、コンパレータの第2入力に、時分割で複数のしきい値電圧を供給する電圧源と、コンパレータの出力にもとづいて、差動信号の状態を判定する判定部と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0008】
本開示のある態様によれば、差動信号の状態を簡素な回路構成で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るオーディオシステムを示す図である。
【
図2】
図2は、増幅回路の動作を説明する波形図である。
【
図3】
図3は、比較技術に係る判定回路の回路図である。
【
図4】
図4は、判定回路の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0011】
一実施形態に係る差動増幅回路は、スピーカを駆動する。差動増幅回路は、差動信号の正極信号を増幅する第1アンプと、差動信号の負極信号を増幅する第2アンプと、正極信号および負極信号を監視する判定回路と、を備える。判定回路は、コンパレータと、コンパレータの第1入力に、正極信号に応じた第1検出信号と負極信号に応じた第2検出信号を時分割で選択的に供給する選択回路と、コンパレータの第2入力に、時分割で複数のしきい値電圧を供給する電圧源と、コンパレータの出力にもとづいて、差動信号の状態を判定する判定部と、を備える。
【0012】
この構成によると、1個のコンパレータで、差動信号の正極信号と負極信号それぞれの電圧レベルを時分割で判定することにより、簡素な構成で、差動信号の状態を判定できる。
【0013】
一実施形態において、複数のしきい値電圧は2個であってもよい。
【0014】
一実施形態において、2個のしきい値電圧はそれぞれ、複数の電圧レベルから選択可能であってもよい。
【0015】
一実施形態において、選択回路は、正極信号を分圧して第1検出信号を生成する第1分圧回路と、負極信号を分圧して第2検出信号を生成する第2分圧回路と、を含んでもよい。
【0016】
一実施形態において、第1分圧回路の分圧比と、第2分圧回路の分圧比はそれぞれ切りかえ可能であってもよい。
【0017】
一実施形態において、判定部は、差動信号が直流成分を含む状態を検出してもよい。
【0018】
一実施形態において、判定部は、差動信号が過大入力である状態を検出してもよい。
【0019】
一実施形態において、判定部は、差動信号の振幅を検出してもよい。
【0020】
一実施形態において、差動増幅回路はひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0021】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0022】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0023】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0024】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタ、インダクタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは回路定数(抵抗値、容量値、インダクタンス)を表すものとする。
【0025】
図1は、実施形態に係るオーディオシステム100を示す図である。オーディオシステム100は、スピーカ102、フィルタ104、音源106および増幅回路200を備える。
【0026】
音源106は、差動オーディオ信号S1を、増幅回路200に供給する。以下の説明において、差動信号の正極信号には添え字のpを、負極信号には添え字のnを付すものとする。
【0027】
増幅回路200は、差動オーディオ信号S1を増幅しスピーカ102を駆動する。オーディオシステム100はBTL形式で構成され、増幅回路200は正極出力OUTPと負極出力OUTNから増幅後の差動オーディオ信号S2を出力する。差動オーディオ信号S2の正極信号S2pは、フィルタ104pを介してスピーカ102の一端に供給され、差動オーディオ信号S2の負極信号S2nは、フィルタ104nを介してスピーカ102の他端に供給される。
【0028】
増幅回路200は、ひとつの半導体基板に集積化された機能IC(Integrated Circuit)であり、第1メインアンプ(パワーアンプともいう)210p、第2メインアンプ210n、判定回路220、第1プリアンプ230p、第2プリアンプ230nを備える。
【0029】
第1プリアンプ230pは、差動オーディオ信号S1の正極信号S1pを増幅する。第2プリアンプ230nは、差動オーディオ信号S1の負極信号S1nを増幅する。
【0030】
第1メインアンプ210pは、第1プリアンプ230pによって増幅された信号S3pにもとづいてスピーカ102を駆動し、第2メインアンプ210nは、第2プリアンプ230nによって増幅された信号S3nにもとづいてスピーカ102を駆動する。
【0031】
第1メインアンプ210p、第2メインアンプ210nは、D級アンプである。第1メインアンプ210p、第2メインアンプ210nはそれぞれ、パルス幅変調器、ドライバ回路、出力段を含むことができる。
【0032】
判定回路220は、差動信号S3の正極信号S3pおよび負極信号S3nを監視する。
【0033】
判定回路220は、コンパレータ222、選択回路224、電圧源226、判定部228を備える。
【0034】
選択回路224は、正極信号S3pおよび負極信号S3nを受ける。選択回路224は、コンパレータ222の第1入力(たとえば非反転入力)に、正極信号S3pに応じた第1検出信号S4pと負極信号S3nに応じた第2検出信号S4nを時分割で選択的に供給する。
【0035】
電圧源226は、コンパレータ222の第2入力(たとえば反転入力)に、時分割で複数のしきい値電圧Vth1,Vth2…を供給する。
【0036】
判定部228は、コンパレータ222の出力COMP_OUTにもとづいて、差動信号S3の状態を判定する。判定部228は、選択回路224と電圧源226の状態を切りかえるシーケンサとしても機能する。
【0037】
差動信号S3が直流成分を含んでいると、スピーカ102に直流電流が流れ続け、スピーカ102の信頼性を低下させるおそれがある。一実施例において、判定回路220は、差動信号S3が直流成分を含んでいるか否かを判定する。
【0038】
電圧源226は、第1しきい値電圧Vth1と第2しきい値電圧Vth2を時分割で出力する。第1しきい値電圧Vth1は、正極信号S3pおよび負極信号S3nのコモン電圧Vcよりも上側に定められ、第2しきい値電圧Vth2は、正極信号S3pおよび負極信号S3nのコモン電圧Vcよりも下側に定められる。
【0039】
たとえば、コモン電圧Vcは、電源電圧Vccの0.5倍に定めることができる。その場合において、第1しきい値電圧Vth1は、0.6×Vcc、第2しきい値電圧Vth2は、0.4×Vccのように定めることができる。あるいは、第1しきい値電圧Vth1は、0.7×Vcc、第2しきい値電圧Vth2は、0.3×Vccのように定めてもよい。
【0040】
たとえば、判定部228は、4つの状態φ1~φ4を時分割で順に繰り返す。なお、状態遷移の順番は、特に限定されない。
【0041】
・第1状態φ1
選択回路224は、正極信号S3pに応じた第1検出信号S4pを出力する。
電圧源226は、第1しきい値電圧Vth1を出力する。
【0042】
・第2状態φ2
選択回路224は、正極信号S3pに応じた第1検出信号S4pを出力する。
電圧源226は、第2しきい値電圧Vth2を出力する。
【0043】
・第3状態φ3
選択回路224は、負極信号S3nに応じた第2検出信号S4nを出力する。
電圧源226は、第1しきい値電圧Vth1を出力する。
【0044】
・第4状態φ4
選択回路224は、正極信号S3pに応じた第1検出信号S4pを出力する。
電圧源226は、第2しきい値電圧Vth2を出力する。
【0045】
判定部228は、選択回路224に対して、制御信号pn_selを供給する。制御信号pn_selは、第1状態φ1、第2状態φ2において第1レベル(たとえばハイ)、第3状態φ3、第4状態φ4において第2レベル(たとえばロー)をとる。選択回路224は、制御信号pn_selが第1レベルのときに、正極信号S3pに応じた第1検出信号S4pを出力し、制御信号pn_selが第2レベルのときに、負極信号S3nに応じた第2検出信号S4nを出力する。
【0046】
また判定部228は、電圧源226に対して、制御信号hl_selを供給する。制御信号hl_selは、第1状態φ1、第3状態φ3において第1レベル(たとえばハイ)、第2状態φ2、第4状態φ4において第2レベル(たとえばロー)をとる。電圧源226は、制御信号hl_selが第1レベルのときに、第1しきい値電圧Vth1を出力し、制御信号hl_selが第2レベルのときに、第2しきい値電圧Vth2を出力する。
【0047】
状態φ1~φ4の切りかえ周波数(時分割周波数)は、オーディオ信号の最大周波数(20kHz)の2倍以上、すなわち40kHz以上に定めることが好ましい。
【0048】
以上が増幅回路200の構成である。続いてその動作を説明する。
【0049】
図2は、増幅回路200の動作を説明する波形図である。判定部228は、コンパレータ222の出力COMP_OUTをデジタル系処理にて時分割処理し、4つの状態φ1~φ4での検出結果にもとづいて、異常を検出する。
【0050】
第1状態φ1では、コンパレータ222によって、第1検出信号S4pおよび第1しきい値電圧Vth1が比較される。Posi_High,Posi_Low,Nega_High,Nega_Lowはφ1~φ4それぞれの区間におけるコンパレータ222の出力COMP_OUTを表す。なお、Posi_LowとNega_Lowについては、コンパレータ222の出力COMP_OUTを反転した論理値を有している。
【0051】
判定情報COMP_ORは、Posi_High,Posi_Low,Nega_High,Nega_Lowの論理和である。Posi_High,Posi_Low,Nega_High,Nega_LowおよびCOMP_ORは、判定部228の内部信号である。
【0052】
時刻t0より前は正常状態である。正常状態では、コンパレータCOMP_OUTの出力はランダムに変化する。
【0053】
時刻t0に、差動信号S3が直流成分を含むDC(直流)入力異常が発生したとする。この場合、φ1~φ4の少なくともひとつにおいて、コンパレータ222の出力COMP_OUTが連続してアサートされることとなる。
図2の例では、第1状態φ1と第4状態φ4において、毎サイクル、連続して判定情報COMP_ORがハイとなる。判定部228は、この状態を検出すると、DC入力異常と判定することができる。
【0054】
以上が増幅回路200の動作である。この増幅回路200によれば、1個のコンパレータによって、差動信号S3の正極信号S3pと負極信号S3nそれぞれの電圧レベルを時分割で判定することにより、簡素な構成で、差動信号の状態を判定できる。
【0055】
図1の増幅回路200の利点は、比較技術との対比によって明確となる。
【0056】
図3は、比較技術に係る判定回路250の回路図である。判定回路250は、アンプ252、コンパレータ254,256、判定部258を含む。アンプ252は、差動信号S3をシングルエンド信号S5に変換する。コンパレータ254は、シングルエンド信号S5を、第1しきい値電圧Vth1と比較し、コンパレータ256は、シングルエンド信号S5を、第2しきい値電圧Vth2と比較する。判定部258は2つのコンパレータ254,256の出力にもとづいて、DC入力異常を判定する。
【0057】
増幅回路200はDC入力異常を検出すると、回路保護を実行してもよい。具体的には、増幅回路200は、出力OUTP,OUTNをハイインピーダンス(もしくは両方をロー)とし、負荷であるスピーカ102への電力供給を停止してもよい。
【0058】
比較技術に係る判定回路250は、アンプ252が必要であり、コンパレータが2個必要であるため、回路面積および消費電力が大きい。これに対して実施形態に係る判定回路220では、回路面積を小さくでき、また消費電力を削減できる。
【0059】
本開示は、
図1のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本開示の範囲を狭めるためではなく、本開示や本発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0060】
図4は、判定回路220の構成例を示す回路図である。電圧源226は、抵抗ストリング型のD/Aコンバータであり、複数の抵抗R0~R6と、スイッチSW1~SW6含む。この電圧源226は、第1しきい値電圧Vth1を、検出信号S4の振幅レベルに応じて設定可能となっており、第1状態φ1および第3状態φ3では、制御信号hl_selにもとづいて、スイッチSW4~SW6のいずれか一つがオンとなる。スイッチSW4を選択した場合、しきい値電圧Vth1は低くなり、スイッチSW6を選択した場合、しきい値電圧Vth1は高くなる。
【0061】
同様に、電圧源226は、第2しきい値電圧Vth2を、検出信号S4の振幅レベルに応じて設定可能となっており、第2状態φ2および第4状態φ4では、制御信号hl_selにもとづいて、スイッチSW1~SW3のいずれか一つがオンとなる。スイッチSW1を選択した場合、しきい値電圧Vth2は低くなり、スイッチSW3を選択した場合、しきい値電圧Vth2は高くなる。
【0062】
選択回路224は、第1分圧回路224pと、第2分圧回路224nを備える。第1分圧回路244pは、正極信号S3pを分圧し、第1検出信号S4pを生成する。第2分圧回路244nは、負極信号S3nを分圧し、第2検出信号S4nを生成する。
【0063】
第1分圧回路224pと第2分圧回路224nの分圧比は切りかえ可能となっている。具体的には第1分圧回路224pは、複数の抵抗RP1~PR3と、複数のスイッチSWP1,SWP2を含む。第1状態φ1と第2状態φ2において、制御信号pn_selに応じて、複数のスイッチSWP1,SWP2のうちの所定の一つがオンとなる。
【0064】
同様に第2分圧回路224nは、複数の抵抗RN1~PN3と、複数のスイッチSWN1,SWN2を含む。第3状態φ3と第4状態φ4において、制御信号pn_selに応じて、複数のスイッチSWN1,SWN2のうちの所定の一つがオンとなる。
【0065】
以上が判定回路220の構成例である。
【0066】
続いて変形例を説明する。
【0067】
(変形例1)
判定部228を利用して、オーディオ信号の過大入力状態を判定することもできる。この場合、しきい値電圧Vth1,Vth2を、過大入力の判定レベルに定めればよい。判定部228は、たとえば判定情報COMP_ORが、所定時間内に所定回数を超えてアサートされたときに、過大入力と判定してもよい。
【0068】
増幅回路200は、判定回路220によって過大入力が検出されると、外部にアラートを出力してもよい。
【0069】
(変形例2)
判定部228を利用して、オーディオ信号の振幅レベルを判定することもできる。この場合、しきい値電圧Vthの個数を増やせばよい。たとえば増幅回路200が、AGC(自動ゲイン制御)機能を有する場合、判定部228によって判定した振幅レベルを、ゲイン制御に利用してもよい。
【0070】
(変形例3)
実施形態では、1チャンネルの増幅回路200について説明したが、増幅回路200は、多チャンネルで構成されてもよい。この場合において、判定回路220は、複数のチャンネルで時分割で兼用することができる。これにより、回路面積の増加を抑制できる。
【0071】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0072】
(項目1)
スピーカを駆動する差動増幅回路であって、
差動信号の正極信号を増幅する第1アンプと、
前記差動信号の負極信号を増幅する第2アンプと、
前記正極信号および前記負極信号を監視する判定回路と、
を備え、
前記判定回路は、
コンパレータと、
前記コンパレータの第1入力に、前記正極信号に応じた第1検出信号と前記負極信号に応じた第2検出信号を時分割で選択的に供給する選択回路と、
前記コンパレータの第2入力に、時分割で複数のしきい値電圧を供給する電圧源と、
前記コンパレータの出力にもとづいて、前記差動信号の状態を判定する判定部と、
を備える、差動増幅回路。
【0073】
(項目2)
前記複数のしきい値電圧は2個である、項目1に記載の差動増幅回路。
【0074】
(項目3)
前記2個のしきい値電圧はそれぞれ、複数の電圧レベルから選択可能である、項目2に記載の差動増幅回路。
【0075】
(項目4)
前記選択回路は、
前記正極信号を分圧して前記第1検出信号を生成する第1分圧回路と、
前記負極信号を分圧して前記第2検出信号を生成する第2分圧回路と、
を含む、項目1から3のいずれかに記載の差動増幅回路。
【0076】
(項目5)
前記第1分圧回路の分圧比と、前記第2分圧回路の分圧比はそれぞれ切りかえ可能である、項目4に記載の差動増幅回路。
【0077】
(項目6)
前記判定部は、前記差動信号が直流成分を含む状態を検出する、項目1から5のいずれかに記載の差動増幅回路。
【0078】
(項目7)
前記判定部は、前記差動信号が過大入力である状態を検出する、項目1から5のいずれかに記載の差動増幅回路。
【0079】
(項目8)
前記判定部は、前記差動信号の振幅を検出する、項目1から5のいずれかに記載の差動増幅回路。
【0080】
(項目9)
ひとつの半導体基板に一体集積化される、項目1から8のいずれかに記載の差動増幅回路。
【0081】
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものであり、したがって、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
100 オーディオシステム
102 スピーカ
104 フィルタ
106 音源
200 増幅回路
210p 第1メインアンプ
210n 第2メインアンプ
220 判定回路
222 コンパレータ
224 選択回路
226 電圧源
228 判定部
230p 第1プリアンプ
230n 第2プリアンプ