(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055497
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ボイドスラブ及びボイド形成用竹
(51)【国際特許分類】
E04B 5/43 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
E04B5/43 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162470
(22)【出願日】2022-10-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】522396470
【氏名又は名称】株式会社原口工業
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】原口 力男
(57)【要約】
【課題】 脱プラスチックや竹林問題解決の一助となるボイドスラブ及びボイド形成用竹を提案することにある。
【解決手段】 本発明のボイドスラブは、コンクリート中にボイドを備えたものであって、コンクリート中に中空部を有する竹が埋設され、当該中空部によってボイドが形成されたものである。ボイドを形成する竹は複数本埋設することができる。ボイドを形成する竹として、内部に内板を備えた竹、一又は二以上の節を備えた竹、内面と外面の双方又はいずれか一方にガラス層を備えた竹、油抜きをして乾燥させた竹等を用いることができる。本発明のボイド形成用竹は、ボイドを形成する用途でコンクリート中に埋設される竹である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート中にボイドを備えたボイドスラブにおいて、
前記コンクリート中に中空部を有する竹が埋設され、
前記中空部によって前記ボイドが形成された、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項2】
請求項1記載のボイドスラブにおいて、
ボイドを形成する竹が複数本埋設された、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のボイドスラブにおいて、
ボイドを形成する竹として、内部に内板を備えた竹が用いられた、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のボイドスラブにおいて、
ボイドを形成する竹として、一又は二以上の節を備えた竹が用いられた、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載のボイドスラブにおいて、
ボイドを形成する竹として、内面と外面の双方又はいずれか一方にガラス層を備えた竹が用いられた、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項6】
請求項1又は請求項2記載のボイドスラブにおいて、
ボイドを形成する竹として、油抜きをして乾燥させた竹が用いられた、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項7】
ボイドを形成する用途でコンクリート中に埋設されるボイド形成用竹。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイドスラブとボイド形成用の竹(ボイド形成用竹)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートスラブの一態様として、コンクリート中にボイド(空隙部)が設けられたボイドスラブが知られている(特許文献1)。ボイドは、鋼管や発泡を埋設することによって形成されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、環境問題が世界的な関心事となっている昨今、脱プラスチックの重要性が認識されはじめ、多くの企業が脱プラスチックの活動に取り組んでいる。
【0005】
また、別の環境問題として、近年、竹が過剰に生えることによる問題(いわゆる、竹林問題)が全国各地で深刻化しており、放置竹林の拡大防止や伐採した竹の活用方法の提案が望まれている。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、前記各課題の解決の一助となるボイドスラブ及びボイド形成用竹を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[ボイドスラブ]
本発明のボイドスラブは、コンクリート中にボイドを備えたものであって、コンクリート中に中空部を有する竹が埋設され、当該中空部によってボイドが形成されたものである。ボイドを形成する竹は複数本埋設することができる。ボイドを形成する竹として、内部に内板を備えた竹、一又は二以上の節を備えた竹、内面と外面の双方又はいずれか一方にガラス層を備えた竹、油抜きをして乾燥させた竹等を用いることができる。
【0008】
[ボイド形成用竹]
本発明のボイド形成用竹は、ボイドを形成する用途でコンクリート中に埋設される竹である。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ボイドが中空部を有する竹の当該中空部によって形成されるため、前述の脱プラスチック及び竹林問題解決の一助となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】(a)はボイド形成用竹の一例を示す断面図、(b)は(a)のIIIb-IIIb矢視断面図。
【
図4】(a)はボイド形成用竹の他例を示す断面図、(b)は(a)のIVb-IVb矢視断面図。
【
図5】(a)~(d)はボイドスラブの施工手順の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
本発明の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。一例として
図1に示すボイドスラブは、コンクリート1中にボイド2を備えたものであって、ボイド2が中空部3aを有する竹(ボイド形成用竹)3の当該中空部3aによって形成されたものである。
【0012】
図1のボイドスラブは、主筋4(上主筋4a及び下主筋4b)や配力筋5(上配力筋5a及び下配力筋5b)と共に、中空部3aを備えた竹3がコンクリート1中に埋設されている。主筋4や配力筋5は既存の方法で埋設される。図示は省略しているが、コンクリート1中には、主筋4や配力筋5のほか、縦筋等の鉄筋も埋設される。
【0013】
この実施形態では、複数本の竹3が間隔をあけて平行に埋設されている。埋設する竹3の本数や間隔、向き等は現場ごとに調節することができる。竹3は、複数段(たとえば二段)に重ねて設置することもできる。この場合、上段の竹3と下段の竹3は平行に設置することも、交差する向きに設置することもできる。このほか、竹3は長手方向に複数本並べて設置することもできる。
【0014】
この実施形態では、竹3として、鉄筋の1/3~1/2程度の強度を有する孟宗竹(もうそうちく、もうそうだけ)を用いている。竹3には、孟宗竹のほか、真竹(マダケ)、淡竹(ハチク)、女竹(メダケ)、黒竹(クロチク)、布袋竹(ホテイチク)、四方竹(シホウチク)、唐竹(トウチク)、隈笹(クマザサ)、千島笹(チシマザサ)、都笹(ミヤコザサ)等を用いることができる。
【0015】
この実施形態では、竹3として、内部に複数枚の内板3bが残存するものを用いている。各内板3bの間には中空部3aが確保されている。内板3bが残存したものは内板3bを除いたものに比べて強度に優れる。残存する内板3bの枚数は竹3の長さに応じて異なり、特に制限はない。
【0016】
竹3には、内板3bの全部又は一部を抜いたものを用いることもできる。ここで言う一部には、一枚の内板3bの一部という意味と、複数枚あるうちの一部(一又は二枚以上)という意味の双方が含まれる。内板3bの全部又は一部を抜いたものを用いることで、ボイドスラブの軽量化を図ることができる。
【0017】
竹3には、
図3(a)(b)に示すような節3cが残存したものを用いることもできる。節3cが残存したものは節3cを除いたものに比べて強度に優れる。竹3の長さに限定はないが、一又は二以上の節3cが残存する(含む)長さとするのが好ましい。
【0018】
竹3はそのまま用いることもできるが、油抜き(たとえば、湿式油抜きや乾式油抜き)をして乾燥させたものを用いることもできる。油抜きして乾燥させることで、これをしない場合に比べて竹3を長持ちさせることができる。油抜きに用いるお湯の温度や油抜き時間、乾燥の手法や乾燥時間等は、竹3の種類等に応じて調節することができる。
【0019】
強度確保のため、竹3の内面と外面の双方又はいずれか一方に、
図4(a)(b)のようなガラス層6を設けることもできる。ガラス層6は、たとえば、容器に入れた液体ガラスに竹3を浸漬したのち、その竹3を引き上げることによって形成することができる。ガラス層6はこれ以外の方法で形成することもできる。
【0020】
その他、コンクリート1の食いつきを良くするため、竹3の表面を粗面化しておくこともできる。ガラス層6を設ける場合、ガラス層6の表面を粗面化しておくことができる。いずれの場合も、粗面化の程度は適宜決めることができる。
【0021】
次に、前記実施形態のボイドスラブの施工方法の一例について説明する。なお、説明は省略しているが、ボイドスラブの施工にあたっては、適時に型枠を設置する。
(1)はじめに、
図5(a)のように下主筋4bを配筋する。
(2)下主筋4bを配筋した後、
図5(b)のように下主筋4bの上側に下配力筋5bを配筋する。
(3)下配力筋5bを配筋した後、
図5(c)のようにボイド形成用竹3を設置する。図示する例では、複数本の竹3を、間隔をあけて平行に設置している。
(4)竹3の設置後、
図5(d)のように上配力筋5a及び上主筋4aを順次配筋する。
(5)前記(1)~(4)の工程後、型枠内にコンクリート1を流し込み、所定強度が出るまで養生する(
図1参照)。
【0022】
ここで説明した施工方法は一例であり、本発明のボイドスラブはこれ以外の手順で施工することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のボイドスラブは鋼管や発泡スチロール等を用いて構成される従来のボイドスラブの代替技術として、本発明のボイド形成用竹はボイドの形成に用いられる鋼管や発泡スチロール等の代替技術として利用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 コンクリート
2 ボイド
3 竹(ボイド形成用竹)
3a 中空部
3b 内板
3c 節
4 主筋
4a 上主筋
4b 下主筋
5 配力筋
5a 上配力筋
5b 下配力筋
6 ガラス層
【手続補正書】
【提出日】2023-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート中にボイドを備えたボイドスラブにおいて、
下主筋又は/及び下配力筋が配置され、
前記下主筋又は/及び下配力筋の上側に、上下方向に貫通する貫通孔のない竹が複数本配置され、
前記竹の上側に上主筋又は/及び上配力筋が配置され、
前記竹は、その内部に当該竹の周方向の外周面に開口しない中空部を備え、
前記複数本の竹は、その長手方向に交差する方向に間隔を開けて配置され、
前記下主筋又は/及び下配力筋、竹並びに下主筋又は/及び下配力筋が前記コンクリート中に埋設され、
前記竹の内部の中空部によって前記ボイドが形成された、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項2】
請求項1記載のボイドスラブにおいて、
ボイドを形成する竹として、内部に内板を備えた竹が用いられた、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のボイドスラブにおいて、
ボイドを形成する竹として、一又は二以上の節を備えた竹が用いられた、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のボイドスラブにおいて、
ボイドを形成する竹として、内面と外面の双方又はいずれか一方にガラス層を備えた竹が用いられた、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項5】
請求項4記載のボイドスラブにおいて、
ガラス層の表面が粗面化された、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項6】
請求項1又は請求項2記載のボイドスラブにおいて、
複数本の竹が複数段設置された、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項7】
請求項1又は請求項2記載のボイドスラブにおいて、
ボイドを形成する竹として、油抜きをして乾燥させた竹が用いられた、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート中にボイドを備えたボイドスラブにおいて、
下主筋又は/及び下配力筋が配置され、
前記下主筋又は/及び下配力筋の上側に、上下方向に貫通する貫通孔のない竹が複数本配置され、
前記竹の上側に上主筋又は/及び上配力筋が配置され、
前記竹は、その内部に当該竹の周方向の外周面に開口しない中空部を備え、
前記複数本の竹は、その長手方向に交差する方向に間隔を開けて配置され、
前記下主筋又は/及び下配力筋、竹並びに下主筋又は/及び下配力筋が前記コンクリート中に埋設され、
前記竹の内部の中空部によって前記ボイドが形成され、
前記ボイドを形成する竹は、内面と外面の双方又はいずれか一方にガラス層を備え、
前記ガラス層の表面が粗面化された、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項2】
請求項1記載のボイドスラブにおいて、
ボイドを形成する竹として、内部に内板を備えた竹が用いられた、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のボイドスラブにおいて、
ボイドを形成する竹として、一又は二以上の節を備えた竹が用いられた、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のボイドスラブにおいて、
複数本の竹が複数段設置された、
ことを特徴とするボイドスラブ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載のボイドスラブにおいて、
ボイドを形成する竹として、油抜きをして乾燥させた竹が用いられた、
ことを特徴とするボイドスラブ。