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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055501
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】極薄シート
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240411BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240411BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 8/23 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61Q19/00
A61K8/20
A61K8/23
A61K8/24
A61K8/19
A61K8/36
A61K8/365
A61K8/362
A61K8/44
A61K8/49
A61K8/81
A61K8/64
A61K8/65
A61K8/67
A61K8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162479
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】501296380
【氏名又は名称】コスメディ製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 弘
(72)【発明者】
【氏名】権 英淑
(72)【発明者】
【氏名】神山 文男
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB011
4C083AB031
4C083AB081
4C083AB281
4C083AB351
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC241
4C083AC291
4C083AC301
4C083AC422
4C083AC531
4C083AC541
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC851
4C083AD041
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD241
4C083AD261
4C083AD271
4C083AD272
4C083AD281
4C083AD301
4C083AD321
4C083AD322
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD341
4C083AD351
4C083AD411
4C083AD431
4C083AD451
4C083AD641
4C083BB01
4C083CC07
4C083DD12
4C083EE05
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】皮膚に貼付して傷、シミ、シワなどの皮膚の欠点を隠しながら、同時に外見上目立たず、上から化粧を施してもシートを貼っていることがわからないようなきわめて薄いシートで、なおかつ汗などの水分に対しても溶けることなく、上から化粧が施せるだけの強度を兼ね備えたシートを提供する。
【解決手段】キチン、キトサン及びその誘導体からなる群より選ばれる成分;酸;さらに任意に、セルロース類、多価アルコール、タンパク質等の特定の高分子成分;湿潤剤;並びに界面活性剤を含み、厚さが10μm以下の皮膚適用シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)キチン、キトサン、キチン誘導体、キトサン誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる成分、並びに、
2)酸、
を含み、厚さは10μm以下である皮膚適用シート。
【請求項2】
厚さが5μm以下である、請求項1に記載の皮膚適用シート。
【請求項3】
3)セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、カルボキシビニルポリマー、クインスシード、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ペクチン、ポリグルタミン酸、β-グルカン、プルラン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、カゼイン、シルクプロテイン、プロテオグリカン、及びヒアルロン酸からなる群より選ばれる1種以上の高分子成分、並びに、
4)湿潤剤、
をさらに含む、請求項1に記載の皮膚適用シート。
【請求項4】
5)界面活性剤、をさらに含む、請求項1に記載の皮膚適用シート。
【請求項5】
前記酸が、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸である無機酸、及び、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸である有機酸からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の皮膚適用シート。
【請求項6】
前記湿潤剤が、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ペンタエリスリトール、ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクタンジオール、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、及びトレハロースからなる群より選ばれる1種以上である、請求項3に記載の皮膚適用シート。
【請求項7】
前記界面活性剤のHLB値が6.0~12.0である、請求項4に記載の皮膚適用シート。
【請求項8】
着色されたコンシーラーシート、又は表面印刷を施したコンシーラーシートである、請求項1に記載の皮膚適用シート。
【請求項9】
シワ、シミ、又はニキビの皮膚トラブルをケアするスキンケアシートである、請求項1に記載の皮膚適用シート。
【請求項10】
傷口、又は患部を保護するものである、請求項1に記載の皮膚適用シート。
【請求項11】
支持体なしで単独で皮膚に適用するものである、請求項1に記載の皮膚適用シート。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の皮膚適用シート、並びに、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸グアニジン、炭酸アンモニウム、アンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リシン、アルギニン、及びヒスチジンからなる群より選ばれる1種以上のアルカリ性物質を含有し、pH8.0~12.0の水溶液組成物
を含む、化粧用又は皮膚保護用キット。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の皮膚適用シートの製造方法であって、酸性下において、
6)キチン、キトサン、キチン誘導体、キトサン誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる成分、
7)セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、カルボキシビニルポリマー、クインスシード、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ペクチン、ポリグルタミン酸、β-グルカン、プルラン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、カゼイン、シルクプロテイン、プロテオグリカン、及びヒアルロン酸からなる群より選ばれる1種以上の高分子成分、
8)湿潤剤、並びに、
9)界面活性剤
を含有する水溶液を調製し、固形分20質量%以下で塗工する工程を含む、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キチン、キトサン、キチン誘導体、又はキトサン誘導体を含む皮膚適用極薄シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肌の凹凸やシワ及びシミを隠すためには、ファンデーションなどの化粧品が使われていた。しかし、このような塗布方式の化粧品で隠すためには、肌色との調和など化粧に手間と時間を要し、簡便性に欠けるほか、その隠蔽性が不足するため、ある程度目立たなくすることはできても十分にその目的を達成することはできなかった。特に、目尻のシワは、一般的に年齢が高くなるほどできやすく、しかもシワの深さも深くなる傾向があり、塗布方式の化粧品で隠すには限界がある場合が多い。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば、肌色に着色したフィルムを隠したい部分に貼る方法が考えられた。しかし、肌にフィルムを貼った場合にはフィルムに厚さがあるため、特にその端部が目立ちやすいこと、表面にテカリが出やすく、肌の状態に近づけることが難しいなどの欠点があり、満足できる性能を持ったものが出来なかった。
【0004】
特許文献1には、ナノファイバー不織布からなる化粧用シートが提案されており、その化粧用シートに糊となる成分を配合した美容液をしみこませることで、ナノファイバー不織布を皮膚に貼付させることを可能にしている。この化粧用シートを皮膚に貼付後、化粧用シートの上から化粧を施すことにより、肌のシミ、シワ、傷などを隠蔽できることが可能となり、傷、シミ、シワなどの皮膚の欠点を隠しながら同時に見た目に自然な状態を持たせ、上から化粧を施しても化粧用シートを貼っていることがわからないような化粧用シートが提案されている。しかしながら、一般の不織布の繊維径は15μm~30μm程度であり、ナノファイバー不織布の作製は、高度な技術及び設備が必要となり、実用性に欠けるものであった。
【0005】
特許文献2によれば、深いシワや傷を目立たないように隠蔽できるシートとして、5層の構成からなるシートが提案されている。構成としては、水性液浸透性ベース基材の上に水溶性の糊層があり、その上に肌色インキで着色あるいは光反射インキを塗布した層、さらに透明の肌に接着するための層があり、この上を保護フィルムが覆っている。使用時は保護フィルムをはがし、透明接着層の接着剤で皮膚に貼付し、最外層の水性液浸透性ベース基材の表面を水でぬらし、基材のみをはがすことで3層を残して皮膚に貼付する。これらは、すべてシルクスクリーン印刷という手法で作製されたものである。しかし、この方法ではあらかじめ皮膚の色が決められているため、上から化粧を施すとその部分が目立ってしまうという欠点があった。
【0006】
特許文献3には、キトサン、魚由来コラーゲンおよびセリシンから選ばれる1種以上の天然高分子を含む水溶性シートを水で溶かし、皮膚に付着させて皮膚の平滑性を向上させる機能を有するシート状化粧料が提案されている。また特許文献4には、デンプン、オブラートからなる化粧シートが提案されている。
しかし、いずれのシートも水溶性であるため、皮膚に貼付した後、汗などの水分で部分的に溶解したり、べたつきを生じたり、当初の平滑性が損なわれるという欠点があり、実用性に欠けるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-28552号公報
【特許文献2】特許第4632333号公報
【特許文献3】特開2008-69116号公報
【特許文献4】特開平10-120527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的にシート状化粧品に使用される不織布や高分子などのシートの厚みは、30~200μmと厚く、皮膚に貼付したまま生活することは不可能であり、不快な感触を伴うものであった。また、シートが着色されているものであった場合、肌の色と合わなかったりして、個人の肌の色やシミ、シワの深さなどの要望には十分対応できるとはいえないものであった。
【0009】
これらの問題を解決するためには、皮膚に貼付して傷、シミ、シワなどの皮膚の欠点を隠しながら、同時に外見上は目立たず、上から化粧を施してもシートを貼っていることがわからないことが必要で、使用する化粧用シートはきわめて薄いもので、なおかつ、汗などの水分に対しても溶けることなく、上から化粧が施せるだけの強度を兼ね備えたシートが必要となる。本発明は、かかる皮膚適用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の点を鑑みてなされたものであり、キチン、キトサン又はそれらの誘導体を含有する水溶液で極薄シートを作製することにより、本発明の目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下に示す通りである。
〔1〕 1)キチン、キトサン、キチン誘導体、キトサン誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる成分、並びに、
2)酸、
を含み、厚さは10μm以下である皮膚適用シート。
〔2〕 厚さが5μm以下である、〔1〕に記載の皮膚適用シート。
〔3〕 3)セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、カルボキシビニルポリマー、クインスシード、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ペクチン、ポリグルタミン酸、β-グルカン、プルラン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、カゼイン、シルクプロテイン、プロテオグリカン、及びヒアルロン酸からなる群より選ばれる1種以上の高分子成分、並びに、
4)湿潤剤、
をさらに含む、〔1〕に記載の皮膚適用シート。
〔4〕 5)界面活性剤、をさらに含む、〔1〕又は〔3〕に記載の皮膚適用シート。
〔5〕 前記酸が、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸である無機酸、及び、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸である有機酸からなる群より選ばれる1種以上である、〔1〕に記載の皮膚適用シート。
〔6〕 前記湿潤剤が、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ペンタエリスリトール、ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクタンジオール、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、及びトレハロースからなる群より選ばれる1種以上である、〔3〕に記載の皮膚適用シート。
〔7〕 前記界面活性剤のHLB値が6.0~12.0である、[4]に記載の皮膚適用シート。
〔8〕 着色されたコンシーラーシート、又は表面印刷を施したコンシーラーシートである、〔1〕に記載の皮膚適用シート。
〔9〕 シワ、シミ、又はニキビの皮膚トラブルをケアするスキンケアシートである、〔1〕に記載の皮膚適用シート。
〔10〕 傷口、又は患部を保護するものである、〔1〕に記載の皮膚適用シート。
〔11〕 支持体なしで単独で皮膚に適用するものである、〔1〕に記載の皮膚適用シート。
〔12〕 〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の皮膚適用シート、並びに、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸グアニジン、炭酸アンモニウム、アンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リシン、アルギニン、及びヒスチジンからなる群より選ばれる1種以上のアルカリ性物質を含有し、pH8.0~12.0の水溶液組成物
を含む、化粧用又は皮膚保護用キット。
〔13〕 〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の皮膚適用シートの製造方法であって、酸性下において、
6)キチン、キトサン、キチン誘導体、キトサン誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる成分、
7)セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、カルボキシビニルポリマー、クインスシード、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ペクチン、ポリグルタミン酸、β-グルカン、プルラン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、カゼイン、シルクプロテイン、プロテオグリカン、及びヒアルロン酸からなる群より選ばれる1種以上の高分子成分、
8)湿潤剤、並びに、
9)界面活性剤
を含有する水溶液を調製し、固形分20質量%以下で塗工する工程を含む、製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ニキビ痕、毛穴、シワ等の皮膚の形状をカバーするためや、シミ、そばかす、あざなどの皮膚色の変色部分をカバーするために、化粧用シートとして使用することができる。長時間皮膚に貼付することを目的とするため、皮膚になじみ易い感触であることや、貼付しているのがわからないような薄さで、かつシートの上から化粧することも可能である。
【0012】
さらに、本発明は、任意の色に着色が可能であり、またシートの上から印刷を行うことも可能である。このため、より一層肌と一体となるコンシーラーシートとして提供することが可能となる。また、キチン、キトサンは生体適合性が高いため、傷口や患部をカバーする皮膚保護シートとしても最適である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、1)キチン、キトサン、キチン誘導体、キトサン誘導体及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれた成分、及び2)酸、さらに任意に、3)特定の高分子成分、4)湿潤剤、及び5)界面活性剤を含む皮膚適用シートを提供するものである。
【0014】
キチンは、エビ、カニをはじめとして、昆虫、貝、キノコにいたるまで、多くの生物に含まれている天然素材である。その構造は、N-アセチル-D-グルコサミンが鎖状に長くつながったアミノ多糖で、キチンをアルカリで処理するとアセチル基が除かれ、主としてD-グルコサミン単位からなるキトサンに変換される。アルカリ処理により、D-グルコサミン単位の割合は70-95%程度まであがると、酸の水溶液に溶けるようになる。キチンにもD-グルコサミン単位がある程度含まれている。また、キトサンの主な構成単位はD-グルコサミンであるが、N-アセチル-D-グルコサミンも含まれている場合がほとんどで、その割合はまちまちである。そのため、構成単位の割合によってキチンとキトサンのあいだに線を引いて区分けすることは難しく、あまり意味がない場合がある。一般的には酸性水溶液に溶けるものをキトサン、溶けないものをキチンと呼んでいる。
【0015】
キチン誘導体、及びキトサン誘導体としては、カルボキシメチルキチン及びカルボキシメチルキトサン、N-アシルキチン及びN-アシルキトサン、N-アルキルキチン及びN-アルキルキトサン、ヒドロキシプロピル化キチン及びヒドロキシプロピル化キトサン、サクシニル化カルボキシメチルキチン及びサクシニル化カルボキシメチルキトサン、硫酸化キチン及び硫酸化キトサン、リン酸化キチン及びリン酸化キトサンが挙げられる。
【0016】
キトサン、及びキトサン誘導体は、酸の水溶液に溶解する。溶解させる水の量は、キトサン濃度で1.5質量%程度が適当であるが、キトサンの分子量が大きい場合は溶解液の粘度が高くなり溶解し難くなるので、1.0質量%程度の濃度にすると調製が容易になる。酸の添加量を増やすとキトサンは溶解しやすくなるが、シートにした場合、酸の添加量が多い程シートが水に溶け易くなるため、耐水性の弱いシートになってしまう。
【0017】
キチン、及びキチン誘導体は、脱アセチル化度が低く、酸には溶解しない。しかしながら、ナノファイバー化することにより、水に分散しジェル状の半透明な溶液になり、キトサンの酸性溶液と併用することにより、シートを作製することが可能となる。
【0018】
キトサンを溶解させる酸性水溶液にする酸であって、本発明のシートに含まれる酸としては、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸、及び酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸などの有機酸からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0019】
本発明のシートの任意成分である、特定の高分子成分、及び湿潤剤は、シートの強度を補強し、肌に対する感触を向上させる働きを付与させることができる。また、界面活性剤を配合することにより、シートの厚さを均一に作製することが容易となる。
【0020】
本発明のシートに含まれる特定の高分子成分としては、
3)セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸,ポリアクリルアミド、カルボキシビニルポリマー、クインスシード、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ペクチン、ポリグルタミン酸、β-グルカン、プルラン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、カゼイン、シルクプロテイン、プロテオグリカン、ヒアルロン酸からなる群より選ばれる1種以上の高分子成分、
が挙げられる。
【0021】
本発明のシートに含まれる湿潤剤としては、
4)グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ペンタエリスリトール、ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクタンジオール、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、及びトレハロースからなる群より選ばれる1種以上、
が挙げられる。湿潤剤を含むことにより、肌への感触を向上させ、長時間シートを貼付しても違和感のない肌感触を持ったシートを提供することができる。
【0022】
本発明のシートを作製する場合、離型紙、離型ペット(PET)等の基材に原料水溶液を塗工後、乾燥してシートを成形することになる。基材は、シートを剥がし易くするため、撥水処理が施されていることが多く、このため、原料水溶液を塗工した場合には、基材面に均一に塗工することが難しい場合がある。一般に、塗膜上である箇所の膜厚が薄くなる塗工上の不良をハジキと呼んでいて、塗工膜が薄くなるほど、ハジキによる不良が生じやすくなる。しかし、原料水溶液に
5)界面活性剤を配合することにより、均一な厚さのシートを得ることが容易となる。ここで使用される界面活性剤は、一般的に化粧品に使用されるどのような種類の界面活性剤でも使用できるが、HLB値が6.0~12.0の範囲にあるものが好ましい。界面活性剤は複数のものを組み合わせて使用可能であるが、組み合わせて使用した界面活性剤のHLB値が上記の範囲内であることが好ましい。さらに、7.0~11.0のHLB値が望ましく、7.0~10.0のHLB値が最適である。
HLB値が6.0未満の場合、水系への分散が悪く均一に溶解しない為、使用に不適である。また、12.0を超える場合、親水性が強すぎる為、基材面からのハジキが強くなり、均一に塗工することが難しくなる。
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、その他、天然界面活性剤、タンパク質加水分解物の誘導体、高分子界面活性剤などが利用できる。中でも、非イオン界面活性剤が適しており、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤が利用できる。
【0023】
酸で可溶性になっているキチン、キトサンは、シートにした場合でも汗や水分で溶解しやすい。短時間での使用では、本発明のシートのみを皮膚に貼付することで、本発明の目的を達成することができる。長時間の皮膚への適用のためには、
6)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸グアニジン、炭酸アンモニウム、アンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リシン、アルギニン、及びヒスチジンからなる群より選ばれる1種以上のアルカリ性物質
を含有するアルカリ水溶液組成物を肌に塗布した後に、本発明のシートを皮膚に貼付することで、キチン、キトサンシートが不溶性になり、汗や水分に対する耐水性を付与させることが可能となった。
前記アルカリ性物質の中でも、炭酸グアニジン、炭酸アンモニウム、アンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リシン、アルギニン、ヒスチジンなどの弱アルカリ性物質が望ましい。アルカリ性物質は、各物質によりアルカリ性の強さが異なるため、pHで8.0~12.0の範囲の水溶液組成物となるように配合することが望ましい。さらに望ましくはpH8.5~11.5であり、pH9.0~11.0が最適である。これらのアルカリ性物質は、2種以上の成分を組み合わせて利用することも可能である。また、これらのアルカリ性物質は、そのまま水溶液で使用しても良いが、本発明のシートに含まれる特定の高分子成分を配合して、ジェル状の状態にして使用しても良い。
【0024】
本発明は、本発明のシートと、上記アルカリ性水溶液組成物との組み合わせである、化粧用又は皮膚保護用キットを提供する。本発明のキットは、使用の便宜に供するため、アルカリ性水溶液組成物を化粧水容器に収容し、シート単体を包装、あるいは、下記3層構造シートとして提供されるのが通常である。
本発明のシートは、具体的には、離型紙、離型ペット(PET)等のセパレーター基材に原料水溶液を塗工し、乾燥してシートを成型し、その上に工程紙の支持体をセットすることができる。つまり、セパレーター・シート・工程紙の3層構造からなるシート組成物としてもよい。使用においては、適量のアルカリ性水溶液組成物を容器から取り出して皮膚に塗布し、その後、シート組成物のセパレーターのみを剥がしたシートを皮膚に貼付させる。最後に工程紙を剥がして、最終的にシートのみが皮膚上に残るようにして使用する。
【0025】
皮膚に貼付するシートは、厚さが薄い程肌なじみが良くなり、かつ目立ちにくく、貼付しているのがわかり難くなる。しかし、シートが薄くなればなるほど塗工によるシートの作製は困難になる。キチン、キトサン等を主成分とするシートの場合、厚さが10μm以下の場合は、皮膚に貼付していても目立たず、肌への違和感もないことが明らかとなった。
【0026】
本発明のシートの厚さは、薄ければ薄い程、皮膚に貼付した場合に目立ちにくくなる。しかし、薄くなれば膜強度が弱くなるとともに、膜の作製が困難になっていく。膜が薄くなればなるほど、均一な膜を作製することが難しく、かつハジキなどの不良が生じてしまう。厚さが10μm以内であれば皮膚に貼付した場合に目立たなく、長時間貼付していても肌への負担もない。かつ、シートの作製も困難ではなく、取り扱いも容易である。さらに、化粧用途の場合、厚さが5μm以下だと顔の皮膚に貼付した場合、より目立たなくなるとともに、取り扱いも可能である。また、厚さが1μmだと顔の皮膚に貼付した場合、ほとんど目立たなく無くなるとともに、取り扱いも可能である。しかし、1μm未満になると、シートの作製が困難になり、実用性に乏しいものになる。好ましいシートの厚さは、1~10μmであり、1~5μmがより好ましい。
【0027】
本発明のシートにおいては、キチン、キトサン及びその誘導体、酸、湿潤剤、特定の高分子成分、界面活性剤以外にも公知の有効成分を配合することができる。例えば、抗炎症剤、ビタミン類、アミノ酸及びその誘導体、角質柔軟成分、老化防止成分、抗糖化成分、血行促進作用成分、美白成分、ポリフェノール類等が挙げられる。なお、本発明において、これらの成分はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記抗炎症剤としては、例えば、植物に由来する成分、アラントイン及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその塩又は誘導体、サリチル酸誘導体、アミノカプロン酸、アズレン及びその誘導体、等が挙げられる。
【0029】
上記ビタミン類としては、水溶性ビタミン及び油溶性ビタミンのいずれであってもよい。油溶性成分であれば界面活性剤で可溶化して配合することが可能である。例えば、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、5’-リン酸ピリドキサール、及びそれらの塩等のビタミンB6類:パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール、D-パンテサイン、D-パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル、及びそれらの塩等のパントテン酸類:ニコチン酸、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸アミド、及びそれらの塩等のニコチン酸類:γ-オリザノール、チアミン、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミントリリン酸エステル、及びそれらの塩等のビタミンB1類:リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビン5’-リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル、及びそれらの塩等のビタミンB2類:ビオチン、ビオシチン、及びそれらの塩等のビオチン類:葉酸、プテロイルグルタミン酸、及びそれらの塩等の葉酸類:シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン、及びそれらの塩等のビタミンB12類:アスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸-2-グルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸、グリセリルアスコルビン酸、ビスグリセリルアスコルビン酸、アルキルグリセリルアスコルビン酸等のアスコルビン酸誘導体、及びそれらの塩等の水溶性のビタミンC類:dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、トコフェロール、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウム等のビタミンE類:、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ジパルミチン酸L-アスコルビル、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル等の油溶性のビタミンC及びその塩類:エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等のビタミンD類:フィロキノン、ファルノキノン等のビタミンK類;レチノール、レチナール、レチノイン酸、3-デヒドロレチノール、3-デヒドロレチナール、3-デヒドロレチノイン酸、水添レチノールなどのビタミンA類及びその誘導体であるパルミチン酸レチノール、リノール酸レチノール、酢酸レチノールなどのビタミンA誘導体類、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、クリプトキサンチンなどのプロビタミンA類:フェルラ酸、ピロロキノリンキノン又はその塩、ヘスペリジン及びグルコシルヘルペリジン等のヘスペリジン誘導体、ユビキノン、グルクロラクトン、グルクロン酸アミド、オロチン酸、L-カルニチン、α-リポ酸、オロット酸等のビタミン様作用因子等が挙げられる。
【0030】
上記アミノ酸及びその誘導体としては、例えば、ベタイン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、スレオニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、トレオニン、チロシン、タウリン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、カルニチン、カルノシン、クレアチン、イプシロンアミノカプロン酸、トリプトファン、オルニチン等が挙げられる。
【0031】
上記角質柔軟成分としては、例えば、乳酸、サリチル酸、グルコン酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、フルーツ酸、フィチン酸、尿素、イオウ等が挙げられる。
【0032】
上記老化防止成分としては、例えば、加水分解大豆タンパク、レチノイド(レチノール及びその誘導体、レチノイン酸、及びレチナール等)、カイネチン、アデノシン、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)、AMP(アデノシン一リン酸)、ADP(アデノシン二リン酸)、ATP(アデノシン三リン酸)、ウルソール酸、ウコンエキス、スフィンゴシン誘導体、メバロノラクトン等が挙げられる。
【0033】
上記抗糖化成分としては、例えば、ブドレジャアキシラリス葉エキス等の植物エキス、月見草油、アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物、L-アルギニン、L-リジン、加水分解カゼイン、加水分解性タンニン、カルノシン等が挙げられる。
【0034】
上記血行促進作用成分としては、例えば、オタネニンジン、アシタバ、アルニカ、イチョウ、ウイキョウ、エンメイソウ、オランダカシ、カミツレ、ローマカミツレ、カロット、ゲンチアナ、ゴボウ、コメ、サンザシ、シイタケ、ショウガ、セイヨウサンザシ、セイヨウネズ、センキュウ、センブリ、タイム、チョウジ、チンピ、トウガラシ、トウキ、トウニン、トウヒ、ニンジン、ニンニク、ブッチャーブルーム、ブドウ、ボタン、マロニエ、メリッサ、ユズ、ヨクイニン、リョクチャ、ローズマリー、ローズヒップ、チンピ、トウキ、トウヒ、モモ、アンズ、クルミ、トウモロコシ、ゴールデンカモミール、イクタモール、カンタリスチンキ、セファランチン等植物に由来する成分:ガンマーオリザノール、ニコチン酸トコフェロール、グルコシルヘスペリジン等が挙げられる。
【0035】
上記美白成分としては、例えば、トラネキサム酸、アスコルビン酸とその塩、アスコルビン酸誘導体等のビタミンC類(アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、2-O-エチルアスコルビン酸、3-O-エチルアスコルビン酸、アスコルビン酸グルコシドなど)、アルブチン、コウジ酸、プラセンタ、エラグ酸、ニコチン酸アミド、ハイドロキノン、リノール酸及びその誘導体、等が挙げられる。
【0036】
上記ポリフェノール類には、クルクミノイド、フラバノン、スチルペノイド、ポリメトキシフラボノイド類、フラボノール、キサントノイド、カルコン、リグノイド、フラバノール、イソフラボン等のフラボノイド系ポリフェノール類があげられる。
【0037】
上記成分の添加量は様々であり、物質の種類および性質および望まれる効果の度合いによって異なるが、一般的には、シートの総質量に対して0.001質量%から20質量%まで配合が可能である。0.001質量%未満の配合では十分な効果を発揮し得なく、20質量%を超えて配合しても期待しうる効果が高まることはない。より好ましくは0.01質量%~10質量%であり、最も好ましくは0.1質量%~5質量%である。
【0038】
本発明のシートを作製する場合、離型紙、離型ペット(PET)等の基材に原料水溶液を塗工してシートを成形することになる。基材はシートを剥がれ易くするため、撥水処理が施されていることが多く、シートを塗工した場合に基材上に均一に塗工することが難しい。しかし、原料水溶液が界面活性剤を含有することにより、ハジキの無い均一な厚さのシートを得ることが容易となる。
【0039】
一般的にシートを作製する場合は、不織布や薄膜状のポリマーを支持体として、その上にシートを作製し、支持体と一体化した状態で使用することが多い。しかし、支持体と一体化した状態のシートを皮膚に貼付すると支持体の感触が皮膚に残ることとなる。本発明のシートは、最終的に皮膚に貼付した場合に、支持体も皮膚から除去し、作製したシートだけを肌上に残すことを特徴とするものである。
【0040】
本発明のシートの製造方法は、酸性下で水溶液を調製し、固形分20質量%以下に調整して、離型紙、離型ペット等の基材に塗工する工程を含む。本発明のシートは、塗工液の溶媒が水であるので、固形分が20質量%を超えると、塗工液の粘度が高くなりすぎて塗工が困難となる。なかでも、固形分は15質量%以下が望ましく、さらに12.5質量%以下が最適である。
【0041】
塗工工程後、基材上の塗工液を乾燥させる。乾燥条件は、60~80℃で5~10分程度である。
【0042】
乾燥後のシートは、目的に応じて特定の形状と大きさに切断して使用することができる。
【実施例0043】
以下、本発明を下記実施例によりさらに詳しく説明する。これら実施例は、単に本発明を具体的に説明するための例であり、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0044】
キトサン溶液-1の作製
コーヨーキトサンSK-400(脱アセチル化度75%以上:甲陽ケミカル株式会社)1.4gに、10v/w%の塩酸6g、精製水92.6gを加え、撹拌しながらキトサンを溶解させて、可溶性キトサン溶液100gを得た。
【0045】
キトサン溶液-2の作製
コーヨーキトサンFH-80(脱アセチル化度75%以上:甲陽ケミカル株式会社)1.0gに、乳酸(発酵乳酸90:扶桑化学工業株式会社)0.5g、精製水98.5gを加え、撹拌しながらキトサンを溶解させて、可溶性キトサン溶液100gを得た。
【0046】
キトサン溶液-3の作製
コーヨーキトサンFH-80(脱アセチル化度75%以上:甲陽ケミカル株式会社)1.0gに、グリコール酸(GLYPURE 70:Chemours(ケマーズ)社)0.7g、精製水98.3gを加え、撹拌しながらキトサンを溶解させて、可溶性キトサン溶液100gを得た。
【0047】
ポリビニルアルコール(ポバールJP-18:日本酢ビ・ポバール株式会社)50gに、精製水950gを加え、撹拌しながら、ホットプレート水浴上で、90-95℃で撹拌しながら加熱した。40-50分間加熱撹拌を続けると、ポリビニルアルコールが均一に溶解した。
【0048】
シートに耐水性を付与させる組成物の作製
キチン、キトサン溶液からなるシートを作製し、作製したシートに耐水性を付与させるために、シートを肌に貼付する前に肌に塗布する組成物として、表1に記載のジェル状エッセンスを作製した。ヒアルロン酸FCH-200は、キッコーマンバイオケミファ株式会社、グリセリンはミヨシ油脂株式会社、アルギニンは協和発酵バイオ株式会社の製品を使用した。
【0049】
【表1】
【0050】
上記で作製した組成物の効果を確認するため、表1のエッセンスと、L-アルギニンを添加していないエッセンスを準備した。それぞれのエッセンスを腕に塗布し、その上から実施例1で調製したシートを貼付した。シートが肌になじんだのち、シート上に水分を加えると、L-アルギニンを含んでいないエッセンスを塗布したシートは、水に溶解し膜が破損した。しかし、L-アルギニンを含有したエッセンスを塗布したシートでは、シートは溶解することなく膜は破損しなかった。
【0051】
界面活性剤のHLB値と塗工性を確認するため、表2のように塗工原料と界面活性剤を組み合わせて塗工液を調製し、リンテック株式会社のペットフィルムPET75GS-GSに3μmの厚さになるように塗工し、80℃で5分間乾燥してシートを作製した。セスキカルリル酸ポリグリセリル-2は、日清オイリオグループ株式会社のサラコスDG-158を使用した。ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10は、日光ケミカルズ株式会社のデカグリン 2-ISVを使用した。トリオレイン酸ポリグリセリル-10は、日光ケミカルズ株式会社のデカグリン3-OVを使用した。イソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油は、日本エマルジョン株式会社のEMALEX RWS-120を使用した。イソステアリン酸ポリグリセリル-6は、坂本薬品工業株式会社のS-Face IS-601Pを使用した。ペンタオレイン酸デカグリセリルは、日光ケミカルズ株式会社のデカグリン5-OVFを使用した。モノミリスチン酸ポリグリセリル-10は、日光ケミカルズ株式会社のデカグリン1-Mを使用した。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
塗工性は、表3の評価基準によって評価した。表2から明らかなように、HLB値が6.0~12.0の範囲にある実施例1から4の場合は、ハジキが無く綺麗に塗工可能であったが、比較例1、比較例2の場合はハジキが多く、良好なシートにならなかった。
【0055】
キトサンシートの膜強度を補強するために、各種高分子成分を配合し検討を行った。カルボキシメチルセルロースNa1260は、ダイセルミライズ株式会社製を使用した。ヒアルロン酸FCH-200は、キッコーマン株式会社製を使用した。ポリビニルピロリドンK-90は株式会社日本触媒製を使用した。プルランは、株式会社林原製を使用した。
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
5名の評価者にシートを渡し、肌への貼付を行ってもらった結果を下記の表に示した。
表5には、シートの貼付のしやすさの判断基準を示した。表4に示すように、高分子物質でシートの膜強度を補強したものと、比較例としてキトサンのみからなるシートを作製した。実施例1及び実施例5~実施例8のシートは、膜の強度が強いためシートが扱いやすく、綺麗に貼付することができたが、キトサンだけからなる実施例0及び参考例3のシートは、膜の強度が弱く、ふわふわした状態のためシートが扱い難いが、5名中2名は綺麗に貼付することができた。
【0059】
5名の評価者に貼付した膜を観察してもらい、シートの貼付状態の観察した結果を表に示した。表6には、シートの厚さとシートを貼付した場合の見た目の評価を行った結果を示した。表7にはシートの厚さに対する評価基準を示した。シートの厚さが10μmより厚くなると、他の人が見てどこにシートが貼付されているかが判別できるが、5μm以下になると肌になじんで、何処に貼付しているかわからないくらいに肌と一体化していることが分かった。
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
表8にはキチン、キトサン誘導体からなるシートを示した。ナノサイズのキチン水分散物としてキチンナノファイバーNANO(大村塗料株式会社)、キトサン誘導体としてカルボキシメチルキトサンサクシナミド(キトアクア 川研ファインケミカル株式会社)を使用してシートを調製した。
【0063】
【表8】
【0064】
実施例9から13の組成物は塗工性も良好で、乾燥後綺麗なシートを作製することができた。
【0065】
表9には、シートへの着色のため、カラメル色素(仙波糖化工業株式会社:タイヨウカラメルKS-NB)によって着色を行った実施例14の組成を示した。カラメル色素によって肌色に近い着色がなされたため、実施例1のシートと比較して、より一層コンシーラーシートとして使用出来るようになった。
【0066】
【表9】
【0067】
表10には、溶液の固形分と塗工性の確認のための一覧表を作製した。固形分の計算は溶液を80℃で5分間乾燥した場合、シート中の水分量は蒸発してしまうため、水溶液になっている溶液の水分量を除外して計算を行った。固形分が21.87質量%となった比較例4では、塗工溶液が粘稠となりすぎて均一なシートに塗工出来なかった。しかし、実施例1及び実施例15~17の塗工溶液の固形分が20質量%以下のものは、塗工性が良好であった。なかでも、固形分が12.5質量%以下の実施例1及び実施例15では塗工性は最良であった。比較例4の塗工液に50gの精製水を加え、固形分を14.58質量%に調整した塗工液を調製し塗工を行った結果、良好に塗工が行えた。このことから、固形分を20質量%以下に調製することで、良好な塗工生産が行えることが明らかとなった。
【0068】
【表10】