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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055505
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】リフタ構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/10 20060101AFI20240411BHJP
   F01L 1/14 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
F02M59/10 A
F01L1/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162489
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】貴志 正輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章宏
【テーマコード(参考)】
3G016
3G066
【Fターム(参考)】
3G016AA19
3G016BB03
3G016CA04
3G016GA04
3G066BA22
3G066CA01S
3G066CE02
(57)【要約】
【課題】簡易な構成によって異音の発生を抑制できるリフタ構造を提供する。
【解決手段】リフタ構造1は、ガイド孔13を形成するハウジング11、及びローラ40及びリフタ本体30を有するローラリフタ20を備えている。リフタ本体30は、ローラ40を回転可能に支持し、カム60の回転に応じてガイド孔13内を往復移動する円筒状である。ハウジング11は、ガイド孔13の内壁におけるカム60のカム面60Aの対向方向に、ローラリフタ20の回り止め部50を配置する溝15を有している。溝15には、フタ本体30の往復移動に伴う回り止め部50の往復移動を許容する空間R(許容空間)が形成されている。ハウジング11は、空間Rを残して溝15を埋める閉塞部材80を有する。リフタ本体30は、ガイド孔13の周方向において溝15の位置する側に形成された円周状面に摺動可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形状のガイド孔を形成したハウジングと、
カムに回転可能に接触するローラと、一端側において前記ローラを回転可能に支持し、前記カムの回転に応じて前記ガイド孔内を往復移動する円筒状のリフタ本体と、を有するローラリフタと、
を備え、
前記ハウジングは、前記ガイド孔の内壁における前記カムのカム面の対向方向に、前記リフタ本体の移動方向に沿って延びる溝を有し、
前記ローラリフタは、前記リフタ本体の外周面から前記ローラの外周面の対向方向に突出して形成されて前記溝内に配置される回り止め部を有し、
前記溝には、前記リフタ本体の往復移動に伴う前記回り止め部の往復移動を許容する許容空間が形成され、
前記ハウジングは、少なくとも前記許容空間を残して前記溝を埋める閉塞部材を有し、
前記リフタ本体は、前記ガイド孔の周方向において前記溝の位置する側に形成された円周状面に摺動可能である、リフタ構造。
【請求項2】
前記溝は、前記ガイド孔の全長に亘って形成され、
前記閉塞部材は、前記円周状面を構成する円弧状面を有する、請求項1に記載のリフタ構造。
【請求項3】
前記溝の前記一端側は前記閉塞部材によって閉塞され、前記溝の前記一端側とは反対側の他端側は、前記ガイド孔の内壁における前記円周状面を有する部分に閉塞されている、請求項1に記載のリフタ構造。
【請求項4】
前記閉塞部材は、前記ガイド孔を塞ぐ部品に固定されている、請求項1又は請求項2に記載のリフタ構造。
【請求項5】
前記溝には、前記リフタ本体の移動方向に対して交差する方向の段差状部が形成され、
前記閉塞部材は、前記溝に挿入された際に前記段差状部に挿入方向と対向して当接する当接部を有している、請求項1又は請求項2に記載のリフタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リフタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来のリフタ構造を開示している。このリフタ構造は、ローラリフタとハウジングとを備えている。ローラリフタは、カムに回転可能に接触するローラと、円筒状のリフタ本体と、リフタ本体の外周面から突出した回り止め部と、を有している。ハウジングは、ガイド孔及び回り止め溝を形成している。ガイド孔はリフタ本体を往復移動可能に収容する。回り止め溝は、ガイド孔の内周面に沿って設けられてローラリフタの回り止め部を配置する。これによって、このローラリフタは、軸周りに回転することなく、カムの回転に応じてガイド孔内を往復移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-166368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のリフタ構造において、リフタ本体の外周とガイド孔の内壁との間には、リフタ本体の円滑な往復移動動作を担保するべく、所定の隙間が存在する。この場合、ローラリフタには、回転するカムから受ける力や、回り止め片による重心位置の偏り等に起因して、ガイド孔の内壁との間の隙間の範囲で首振り状の揺動が生じることが知られている。このような揺動が生じると、ローラリフタは、シリンダ内壁面に衝突して異音を発生させてしまう。
【0005】
特に、特許文献1のようなリフタ構造では、ガイド孔の内壁におけるリフタの衝突部位は、油膜が形成され難い回り止め溝の開口縁のエッジ部であるため、衝突時の異音が大きくなり易い、といった事情がある。
【0006】
そこで、本開示は、簡易な構成によって異音の発生を抑制できるリフタ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るリフタ構造は、断面円形状のガイド孔を形成したハウジングと、カムに回転可能に接触するローラと、一端側において前記ローラを回転可能に支持し、前記カムの回転に応じて前記ガイド孔内を往復移動する円筒状のリフタ本体と、を有するローラリフタと、を備え、前記ハウジングは、前記ガイド孔の内壁における前記カムのカム面の対向方向に、前記リフタ本体の移動方向に沿って延びる溝を有し、前記ローラリフタは、前記リフタ本体の外周面から前記ローラの外周面の対向方向に突出して形成されて前記溝内に配置される回り止め部を有し、前記溝には、前記リフタ本体の往復移動に伴う前記回り止め部の往復移動を許容する許容空間が形成され、前記ハウジングは、少なくとも前記許容空間を残して前記溝を埋める閉塞部材を有し、前記リフタ本体は、前記ガイド孔の周方向において前記溝の位置する側に形成された円周状面に摺動可能である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、簡易な構成によって異音の発生を抑制できるリフタ構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1に係るリフタ構造を示す側断面図である。
図2図2は、図1のII-II線相当断面図であり、一部の構造を省略して示す。
図3図3は、図2の要部を拡大して示す。
図4図4は、実施例2に係るリフタ構造を示す側断面図である。
図5図5は、実施例3に係るリフタ構造を示す側断面図である。
図6図6は、実施例4に係るリフタ構造を示す側断面図である。
図7図7は、他の実施形態に係るリフタ構造を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の好ましい形態を以下に示す。
【0011】
前記溝は、前記ガイド孔の全長に亘って形成され、前記閉塞部材は、前記円周状面を構成する円弧状面を有することができる。この場合、溝を容易に形成できるとともに、溝への回り止め部の配置も容易である。
【0012】
前記溝の前記一端側は、前記閉塞部材によって閉塞され、前記溝の前記一端側とは反対側の他端側は、前記ガイド孔の内壁における前記円周状面を有する部分に閉塞されていることができる。この場合、円周状面をガイド孔の内壁によって容易に形成できるとともに、回り止め部を配置した後の溝を閉塞部材によって閉塞することによって組み付け後のローラリフタのガイド孔からの脱落を防止できる。
【0013】
前記閉塞部材は、前記ガイド孔を塞ぐ部品に固定されているとよい。この場合、ガイド孔を塞ぐ部品のハウジングへの組み付け時に、閉塞部材の溝への配置も同時に行うことができる。このため、閉塞部材とガイド孔を塞ぐ部品とをハウジングに別々に組み付ける場合と比較して、リフタ構造全体の組み立てに係る工数を削減できる。
【0014】
前記溝には、延伸方向に対して交差する方向の段差状部が形成され、前記溝に挿入された際に前記段差状部に挿入方向と対向して当接する当接部を有していることができる。この場合、閉塞部材の溝内での位置決めを容易に行うことができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、便宜上、後述するローラリフタの往復移動の方向を上下方向と定義する。すなわち、上下の方向については、図1、及び図4から図7に表れる向きをそのまま上方、下方と定義する。但し、ここで定義した方向は、本開示に係るリフタ構造の設置方向を限定するものではない。
【0016】
<実施例1>
本実施形態の実施例1に係るリフタ構造1を図1図3を用いて説明する。本実施例に係るリフタ構造1は、図1に示す内燃機関の燃料供給装置に用いられている。燃料供給装置は、リフタガイド10にローラリフタ20を組み込んで構成されている。燃料供給装置は、ローラリフタ20の上下の往復移動によって高圧に調整された燃料を図示しないエンジンの燃焼室に供給する。
【0017】
図1に示すように、リフタガイド10は、ハウジング11と、ポンプ側ハウジング12とを有している。ハウジング11は、例えば、金属焼結体に機械加工を施して形成される。ハウジング11にはガイド孔13が形成されている。ガイド孔13は、断面円形状をなし、上下方向に延びている。本実施例の場合、ガイド孔13は、ハウジング11を上下に貫通している。ガイド孔13には、カム60の回転に応じて上下方向に往復摺動するローラリフタ20が挿入されている。カム60は、回転軸に平行なカム面60Aを有している。
【0018】
ポンプ側ハウジング12は、本開示に係る「ガイド孔を塞ぐ部品」の例示である。図1に示すように、ポンプ側ハウジング12は、ハウジング11の上端部に組み付けられてガイド孔13を上方から閉塞している。ポンプ側ハウジング12には、上下方向に貫通する断面円形の貫通孔14が形成されている。貫通孔14には、プランジャ16が上下方向に往復移動可能に挿入される。プランジャ16の上端部は、貫通孔14の上端に連通する図示しない圧力室に進退可能とされている。プランジャ16の上端部が圧力室に進入することで、圧力室の燃料が加圧される。
【0019】
図1から図3に示すように、ハウジング11は溝15を有している。溝15は、ガイド孔13の内壁において、ローラリフタ20の後述するリフタ本体30の移動方向、すなわち、ガイド孔13の軸方向に沿って延びている。溝15は、ガイド孔13の内壁から外周方向に窪んだ断面凹状に形成されている。溝15は、リフタ本体30の移動方向であるガイド孔13の軸方向に沿って延びている。本実施例の場合、溝15は、ガイド孔13の全長に亘って形成されている。すなわち、溝15は、ガイド孔13と同様に、ハウジング11を上下に貫通しており、上端及び下端は開放されている。
【0020】
溝15は、ガイド孔13の内壁において、ガイド孔13を上方から見た平面視におけるカム60の回転軸に対して直交する方向、すなわちカム60のカム面60Aの対向方向に形成されている。溝15には、ローラリフタ20の後述する回り止め部50が上下方向に移動可能に進入している。溝15は空間Rを形成している。空間Rは、本開示に係る許容空間の例示である。空間Rは、溝15内に収容された回り止め部50の往復移動を許容する。
【0021】
図1及び図2に示すように、ローラリフタ20は、リフタ本体30、シャフト70、ローラ40、及び回り止め部50を備えている。リフタ本体30は、下端側においてローラ40を回転可能に支持する。リフタ本体30は、カム60の回転に応じて上下方向に往復移動する構成である。リフタ本体30は、例えば耐摩耗性に優れた金属材料からなる。
【0022】
リフタ本体30は、周壁31及び隔壁32を備えている。周壁31は略円筒状をなしている。周壁31は、リフタ本体30の外郭を構成する。周壁31は、上下方向に沿った略円筒状である。周壁31の外周面は、ガイド孔13の内周面に沿って配置される。周壁31の外周面は、油膜を介して、ガイド孔13の内周面に摺接する。周壁31は、下端部において、シャフト70の両端部を支持している。
【0023】
図1に示すように、隔壁32は、周壁31の内部を上下に分割する。隔壁32は、径方向に沿った平板状をなし、周壁31の内周面の上下方向途中に一体に連なる形態になっている。リフタ本体30における隔壁32の下方にはローラ40が収容されている。リフタ本体30における隔壁32の上方には、プランジャ16の下端部と、後述するリテーナ17と、後述する付勢部材18と、が収容されている。
【0024】
ローラ40は、シャフト70を介して、周壁31の下端部に回転可能に支持されている。本実施例の場合、ローラ40は、ニードル軸受72を介して、シャフト70に回転可能に支持されている。なお、ローラ40は、ニードル軸受等を介さず、シャフト70に直接的に支持されてもよい。ローラ40の外周面は、カム60に接触するように配置されている。カム60は、図1に示すように、カムシャフト61に設けられている。カム60は、カムシャフト61の軸周りを図1における反時計回り方向に回転し、ローラリフタ20を所定のリフト量Lで上下方向に往復移動させる。
【0025】
図1に示すように、回り止め部50は、リフタ本体30の外周面から、リフタ本体30の軸方向から見た平面視におけるローラ40の回転軸に対して直交する方向、すなわち、ローラ40の外周面の対向方向に突出している。本実施例の場合、回り止め部50は、リフタ本体30における周壁31と一体に設けられており、周壁31の下端から下方に突出した延出片を外方に折り曲げてなる。回り止め部50は、リフタ本体30がガイド孔13に収容されたときに溝15に進入する。回り止め部50は、ハウジング11の溝15に進入することで、ガイド孔13内におけるリフタ本体30の回転を規制する回り止めとして機能する。回り止め部50は、リフタ本体30が上下方向に移動するのに伴い、上下方向に変位可能とされている。
【0026】
リテーナ17は、周壁31の径方向に沿った円板状をなし、その中心部にプランジャ16の下端部が係止して固定されている。付勢部材18は、圧縮コイルばねからなるばね材であって、その下端がリテーナ17の上面に当接して支持され、その上端がポンプ側ハウジング12に当接して支持され、上下方向に弾性的に伸縮可能とされている。付勢部材18は、ローラリフタ20を下方のカム60側に付勢し、ローラ40をカム60に押し付ける付勢力を作用させている。
【0027】
図1に示すように、溝15内には、ハウジング11とは別体の閉塞部材80が配置されている。閉塞部材80は、空間Rを残して溝15を埋める。閉塞部材80は、長尺棒状の部材であり、断面長方形状をなしている。図2及び図3に示すように、閉塞部材80は円弧状面81を有している。円弧状面81は、閉塞部材80の一面側において円弧状に凹んだ面である。円弧状面81の曲率は、ガイド孔13の内周面の曲率と同等である。円弧状面81は、図3に示すように、閉塞部材80を溝15内に配置した状態において、ガイド孔13の内周面と略面一に連続する。換言すると、円弧状面81は、ガイド孔13の周方向における溝15の位置する側に、ガイド孔13の内周面とともに円周状面を構成する。本実施例の場合、閉塞部材80は、溝15内に圧入固定されている。
【0028】
閉塞部材80の下端80Bは、空間Rの上端を区画する。具体的には、閉塞部材80の長さは、上端80Aにおいて溝15の上縁部と高さが合わせられた状態で、下端80Bが回り止め部50の往復移動範囲よりも上方に位置するように設定されている。これによって、閉塞部材80は、回り止め部50が往復移動する範囲を残して溝15を埋める。回り止め部50の往復移動の範囲は、図1に示すように、カム60のリフト量Lと、回り止め部50の上下方向の長さ(厚さ)tとを加えた大きさの範囲である。閉塞部材80は、上端80Aを溝15の上縁部に合わせた状態で溝15内に配置されることによって、その下端80Bが回り止め部50の往復移動範囲よりも上方に位置する。
【0029】
次に、実施例1のリフタ構造1の作用について、組み立て手順と併せて説明する。リフタ構造1の組み立てでは、ハウジング11がカム60側の他のハウジング(図示せず)に組み付けられた状態において、ハウジング11にローラリフタ20を組み付ける。具体的には、回り止め部50の位置を溝15の位置に合わせ、リフタ本体30をガイド孔13内にハウジング11の上方から挿入する。これによって、回り止め部50が溝15内に配置される。この状態において、ローラリフタ20は、ローラ40の外周面がカム60の外周面に接触した状態で仮保持される。
【0030】
溝15は、ガイド孔13の全長に亘って形成されている。このため、溝15は、閉塞部材80を配置する前の状態であれば、ガイド孔13と同様に上方に開放されている。このため、リフタ構造1では、回り止め部50の溝15内への配置を、ローラリフタ20のガイド孔13への挿入に併せて上方から挿入して行うことができる。なお、ローラリフタ20のハウジング11への組み付けは、ハウジング11がカム60側の他のハウジングに組み付けられる前の状態において行われてもよい。この場合、例えば、溝15の下端側に他の閉塞部材を配置する等(図6の符号480参照)、ローラリフタ20がハウジング11から脱落するのを防止する手段を別途設けておくことが好ましい。
【0031】
次に、閉塞部材80を溝15に圧入固定する。すなわち、本実施例の場合、リフタ構造1の組み立てでは、ローラリフタ20をハウジング11に組み付けた後に、閉塞部材80を組み付ける。閉塞部材80は、ハウジング11の上方から溝15内に挿入する。閉塞部材80は、上端80Aが溝15の上縁部と合致するまで挿入されることによって、回り止め部50の往復移動範囲よりも上方の位置において空間Rの上端を区画し得るように構成されている。また、閉塞部材80を溝15に圧入固定することによって、ローラリフタ20がガイド孔13から上方へ抜け出るのを防止できる。その後、プランジャ16、リテーナ17、及び付勢部材18をローラリフタ20の上部に組み付けるとともに、ハウジング11にポンプ側ハウジング12を組み付けることによって、リフタ構造1の組み立てが完了する。
【0032】
このようにして組み立てられたリフタ構造1は、図3に示すように、閉塞部材80の円弧状面81とガイド孔13の内周面とが周方向に面一に連続する。これによって、円弧状面81の表面には、ガイド孔13の内周面に形成される油膜に連続する油膜が形成される。
【0033】
次に、本実施例のリフタ構造1の動作について説明する。カム60がカムシャフト61の軸周りに回転すると、ローラリフタ20におけるローラ40が従動回転する。燃料の吸入工程では、リフタ本体30が付勢部材18の付勢力によって押圧され、リフタ本体30における周壁31がガイド孔13の内周面を摺動しつつ下方に変位するとともに、プランジャ16が同様に下方に変位して、プランジャ16の上端部が圧力室から退避する。一方、燃料の吐出工程では、リフタ本体30が付勢部材18の付勢力に抗して、周壁31がガイド孔13の内周面を摺動しつつ上方に変位するとともに、プランジャ16が同様に上方に変位して、プランジャ16の上端部が圧力室に進入する。こうしてリフタ本体30がガイド孔13を上下方向に往復移動する間、回り止め部50は、リフタ本体30に伴って溝15内を上下方向に往復移動する。この往復移動の際、ローラリフタ20には、回転するカム60から受ける力や、回り止め部50による重心位置の偏り等により、ガイド孔13の内壁との間の隙間の範囲で首振り状の揺動が生じる。
【0034】
ここで、リフタ本体30の周壁31のうち、周方向において回り止め部50が設けられた側の上端部(端部31A)がガイド孔13の内周面に接触する方向に首振りする場合を考える。この端部31Aに対応するガイド孔13の内周面には溝15が形成されている。溝15には閉塞部材80が配置されている。閉塞部材80は、回り止め部50の往復移動範囲を残して溝15を埋める。閉塞部材80は、端部31Aの往復移動の範囲における溝15を埋めている。閉塞部材80におけるガイド孔13の側の表面には、ガイド孔13の内周面と略面一に連続する円弧状面81が形成されている。このため、円弧状面81には、ガイド孔13の内周面に形成される油膜と連続する油膜が形成される。この油膜によって、ローラリフタ20の首振りによる衝突の衝撃が緩和される。
【0035】
仮に、閉塞部材80が設けられていない場合、溝15の開口縁のエッジ部には油膜が形成されにくい。このため、ローラリフタ20とガイド孔13の内周面との衝突時の衝撃が緩和され難い。本実施例の場合、溝15内に閉塞部材80を配置したことによって、閉塞部材80における円弧状面81に油膜が形成される。本実施例のリフタ構造1は、ガイド孔13の内周面において油膜切れ箇所が形成されるのを回避し得る構成としたことによって、ローラリフタ20とガイド孔13の内周面との衝突による衝撃を緩和し、異音の発生を抑制している。
【0036】
以上説明したように、実施例1に係るリフタ構造1は、ハウジング11及びローラリフタ20を備えている。ハウジング11は、断面円形状のガイド孔13を形成している。ローラリフタ20は、ローラ40及びリフタ本体30を有している。ローラ40は、カム60に回転可能に接触する。リフタ本体30は、一端側である下端側においてローラ40を回転可能に支持する。リフタ本体30は、カム60の回転に応じてガイド孔13内を往復移動する円筒状である。ハウジング11は溝15を有している。溝15は、ガイド孔13の内壁におけるカム60のカム面60Aの対向方向に、リフタ本体30の移動方向に沿って延びる。ローラリフタ20は回り止め部50を有する。回り止め部50は、リフタ本体30の外周面からローラ40の外周面の対向方向に突出して形成されて溝15内に配置される。溝15には、許容空間としての空間Rが形成されている。空間Rは、リフタ本体30の往復移動に伴う回り止め部50の往復移動を許容する。ハウジング11は閉塞部材80を有する。閉塞部材80は、空間Rを残して溝15を埋める。リフタ本体30は、ガイド孔13の周方向において溝15の位置する側に形成された円周状面に摺動可能である。
【0037】
このような構成により、リフタ構造1は、ガイド孔13の内周面において、溝15に起因する油膜切れを回避することができる。具体的には、本実施例の場合、閉塞部材80におけるガイド孔13の中心側を向いた面である円弧状面81に、ガイド孔13の内周面から連続する油膜を形成できる。このため、リフタ構造1は、往復移動の際にローラリフタ20に振れが生じた場合でも、この油膜によって、ローラリフタ20がガイド孔13の内壁に衝突する際の衝撃を緩和することができる。したがって、リフタ構造1は、簡易な構成によって異音の発生を抑制できる。
【0038】
また、溝15は、ガイド孔13の全長に亘って形成される。閉塞部材80は円弧状面81を有する。円弧状面81は、ガイド孔13の周方向において溝15の位置する側に形成された円周状面を構成する。このため、リフタ構造1は、溝15を容易に形成できるとともに、溝15への回り止め部50の配置も容易である。また、リフタ構造1は、上記構成により、従来と同様、ハウジング11の上方からローラリフタ20をガイド孔13に挿入して組み付けることができる。その結果、リフタ構造1は、ローラリフタ20のハウジング11への組み付け性を損なうことなく、異音発生の抑制を実現できる。
【0039】
<実施例2>
図4は、本実施形態の実施例2に係るリフタ構造201を示す。実施例2では、閉塞部材280が、ガイド孔を塞ぐ部品としてのポンプ側ハウジング212に組み付けられている点等において、実施例1と相違する。以下の説明において、実施例1と同一又は相当する構造には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0040】
図4に示すように、実施例2に係るリフタガイド210はポンプ側ハウジング212を有している。ポンプ側ハウジング212は、閉塞部材280を固定する固定部212Aを有している。閉塞部材280は、ポンプ側ハウジング212の固定部212Aにおいて、ビスBによって固定されている。閉塞部材280は、ポンプ側ハウジング212をハウジング11に組み付ける前に、ポンプ側ハウジング212に組み付けられる。閉塞部材280は、ポンプ側ハウジング212に組み付けられた状態、且つポンプ側ハウジング212をハウジング11に組み付けた状態において、その下端280Bが回り止め部50の往復移動範囲よりも上方の位置において空間Rの上端を区画し得るように構成されている。
【0041】
上記構成のリフタ構造201もまた、実施例1のリフタ構造1と同様の作用及び効果を奏する。また、リフタ構造201では、閉塞部材280がポンプ側ハウジング212に組み付けられているため、ポンプ側ハウジング212をハウジング11に組み付ける際に閉塞部材280の溝15内への配置を同時にできる。このため、リフタ構造201は、実施例1のように閉塞部材と他の部品とをハウジングに別々に組み付ける場合と比較して、ハウジングに対する組み付け工数を削減できる。
【0042】
<実施例3>
図5は、本実施形態の実施例3に係るリフタ構造301を示す。実施例3では、溝315に段差状部315Aが形成されている点、閉塞部材380が当接部380Cを有している等において、実施例1と相違する。以下の説明において、実施例1と同一又は相当する構造には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0043】
図5に示すように、実施例3に係るリフタガイド310はハウジング311を有している。ハウジング311は溝315を形成している。溝315には、段差状部315Aが形成されている。段差状部315Aは、溝315における上下方向の中間部に設けられている。段差状部315Aは、溝315の延伸方向に対して交差する方向に段差状に形成されている。具体的には、段差状部315Aは、溝315における上端側を下端側よりも奥行き方向(深さ方向)に拡開したことによって段差状に形成されている。当接部380Cは、閉塞部材380が溝315に挿入された際に、段差状部315Aに対して閉塞部材380の挿入方向と対向して接触する。具体的には、本実施例の場合、当接部380Cは、閉塞部材380の上端側を下端側よりも奥行き方向において肉厚にして段差状に形成されている。
【0044】
リフタ構造301において、閉塞部材380は、溝315への組み付け時には、実施例1と同様に溝315に対して上方から圧入される。この際、閉塞部材380は、溝315における段差状部315Aに当接部380Cが当接するまで圧入される。これによって、閉塞部材380は下方への変位が規制される。閉塞部材380の上方への変位は、ポンプ側ハウジング12によって規制される。よって、閉塞部材380は、上下方向において正規の位置に位置決めされる。すなわち、閉塞部材380は、当接部380Cを溝315における段差状部315Aに当ててハウジング311に組み付けた状態において、その下端380Bが回り止め部50の往復移動範囲よりも上方の位置において空間Rの上端を区画し得るように構成されている。
【0045】
上記構成のリフタ構造301もまた、実施例1のリフタ構造1と同様の作用及び効果を奏する。また、リフタ構造301では、溝315に段差状部315Aを形成し、閉塞部材380が当接部380Cを有したことによって、溝315内における適切な位置に閉塞部材380を容易に位置決めすることができる。
【0046】
<実施例4>
図6は、本実施形態の実施例4に係るリフタ構造401を示す。実施例4では、溝415が一端側である下端側においてのみ開放され、他端側である上端側では閉塞されている点、閉塞部材480が溝415における下端側に配置されている点等において、上記実施例と相違する。以下の説明において、上記各実施例と同一又は相当する構造には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0047】
実施例4に係るリフタガイド410はハウジング411を有している。ハウジング411は溝415を形成している。溝415は、ハウジング411の下端側においてのみ開放されており、上端側は閉塞されている。すなわち、実施例4のリフタ構造401では、リフタ本体30の周壁31における端部31Aに対応するガイド孔13の内周面には、溝が形成されていない。溝415は、上端側において、ガイド孔13の内壁における円周状面を有する部分によって閉塞されており、下端側において、閉塞部材480によって閉塞されている。このため、端部31Aの往復移動の範囲に対応するガイド孔13の内周面には周方向の全周に亘る油膜が形成され、ローラリフタ20の首振りによる衝突の衝撃が緩和される。
【0048】
実施例4の場合、溝415の上端側が閉塞されているため、ローラリフタ20のハウジング11への組み付けは、ハウジング411の下方からガイド孔13に挿入することによって行われる。この場合、ローラリフタ20は、ハウジング411をカム60側の他のハウジングに組み付ける前の状態において行う必要がある。閉塞部材480は、ハウジング411をカム60側の他のハウジングに組み付ける前の状態において、ローラリフタ20がガイド孔13から下方に脱落するのを防止する。
【0049】
すなわち、実施例4に係るリフタ構造401は、上記各実施例と同様に、ガイド孔13の内周面において溝415に起因する油膜切れを回避する手段として、上端側が閉塞された溝415を形成している。また、この場合の組み立て性の向上を図るために、リフタ構造401では、溝415における下端側に、空間Rを残して溝415を埋める閉塞部材480を配置したものである。この場合、閉塞部材480には、ローラリフタ20との摺動面が生じない。このため、閉塞部材480は、上記各実施例の閉塞部材のように円弧状面を有している必要はなく、落下防止機能を有して単に溝415を閉塞できるものであればよい。
【0050】
<他の実施例>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような態様も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)本開示に係る閉塞部材の材質や形状等は特に限定されない。閉塞部材は、例えば、リフタ本体、リフタガイド等に用いられる金属と同様の金属製であることができる。閉塞部材は、ゴム、樹脂等の弾性に優れる材料からなるものであってもよい。この場合、閉塞部材は、リフタ本体の周壁に対して弾性力を付与し得る構成を採用し、リフタの傾き自体を抑制するようにしてもよい。
(2)本開示に係るリフタ構造において、閉塞部材は、例えば、図7に示すような形態であってもよい。図7に示すリフタ構造501において、閉塞部材580は、カム60のリフト量Lよりも上下方向に少し大きな長さを有している。閉塞部材580の下端580Bは、実施例1の閉塞部材80の下端80Bよりも上方に配置されている。閉塞部材580は、溝15において、リフタ本体30の周壁31における端部31Aの往復移動の範囲のみを埋めるように配置される。この場合も、溝15に起因する油膜切れを回避することができる。
(3)本開示に係る「ガイド孔を塞ぐ部品」は、上記各実施例において例示したポンプ側ハウジングに限定されない。
【符号の説明】
【0051】
1,201,301,401,580…リフタ構造
11,311,411…ハウジング
12,212…ポンプ側ハウジング(ガイド孔を塞ぐ部品)
13…ガイド孔
15,315,415…溝
20…ローラリフタ
30…リフタ本体
50…回り止め部
80,280,380,480,580…閉塞部材
315A…段差状部
380C…当接部
R…空間(許容空間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7