(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055506
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】油性固形化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240411BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240411BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20240411BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240411BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/02
A61K8/92
A61K8/37
A61K8/891
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162491
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】五島 敏行
(72)【発明者】
【氏名】神谷 千尋
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB212
4C083AB222
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC442
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083BB12
4C083BB14
4C083BB21
4C083DD21
4C083DD30
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】 ラスティング性及び使用性に優れるとともに、外観の変化及び硬度の変動が小さい十分な保存安定性を有する油性固形化粧料を提供すること。
【解決手段】 油性固形化粧料は、(A)水添ヒマシ油、炭素数10~24の1価アルコール、及びホホバエステルのうちの1種以上を含む安定化剤と、(B)固形油(ただし、(A)成分に該当するものを除く)と、(C)揮発性シリコーン油と、を含み、(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)が、1/50~1/9である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水添ヒマシ油、炭素数10~24の1価アルコール、及びホホバエステルのうちの1種以上を含む安定化剤と、(B)固形油(ただし、前記(A)成分に該当するものを除く)と、(C)揮発性シリコーン油と、を含み、
前記(A)成分と前記(B)成分との質量比(A/B)が、1/50~1/9である、油性固形化粧料。
【請求項2】
(D)皮膜剤を更に含む、請求項1に記載の油性固形化粧料。
【請求項3】
(E)粉体成分を更に含み、
前記(D)成分及び前記(E)成分の合計含有量が、化粧料全量を基準として、25~80質量%である、請求項2に記載の油性固形化粧料。
【請求項4】
前記(A)成分の含有量が、化粧料全量を基準として、0.1~2質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の油性固形化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
アイライナー、アイブロウ、コンシーラーなどに用いられる油性固形化粧料は、多くの場合、固形油、液状油、皮膜剤、色材などの非揮発性成分と、揮発性油剤などの揮発性成分とが配合されており、揮発性成分の蒸発にともない色材などの非揮発性成分が含まれる塗布膜を均一に形成することができる。また、このような化粧料においては、皮膜剤によって化粧持ちがよく、色移りしにくい特性(ラスティング性)を得ることができる(例えば、下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、油性固形化粧料では、塗布時の伸展性やべたつきの抑制といった使用性を考慮して、固形油を減らす又は液状油を増やすなどの調整が行われるが、揮発性油剤が配合された油性固形化粧料の場合、保存時に油が染み出しやすくなるなど外観が変化しやすい傾向にある。また、本発明者らの検討によると、揮発性油剤を含む油性固形化粧料は、低温と高温との間を繰り返す温度サイクル試験において化粧料の硬度が大きく変動する場合があることが判明した。これらの問題に対し、単に固形油を増やす或いは揮発性油剤を減らす対応では、使用性やラスティング性が損なわれてしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ラスティング性及び使用性に優れるとともに、外観の変化及び硬度の変動が小さい十分な保存安定性を有する油性固形化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、(A)水添ヒマシ油、炭素数10~24の1価アルコール、及びホホバエステルのうちの1種以上を含む安定化剤と、(B)固形油(ただし、(A)成分に該当するものを除く)と、(C)揮発性シリコーン油と、を含み、(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)が、1/50~1/9である、油性固形化粧料を提供する。
【0007】
本発明の油性固形化粧料は、(D)皮膜剤を更に含むことができる。この場合の油性固形化粧料は、(E)粉体成分を更に含み、(D)成分及び(E)成分の合計含有量が、化粧料全量を基準として、25~80質量%であってもよい。
【0008】
本発明の油性固形化粧料は、(A)成分の含有量が、化粧料全量を基準として、0.1~2質量%であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ラスティング性及び使用性に優れるとともに、外観の変化及び硬度の変動が小さい十分な保存安定性を有する油性固形化粧料を提供することができる。
【0010】
また、本発明の油性固形化粧料によれば、十分な硬度を有する棒状化粧料を形成することができ、この棒状化粧料は、上述した特性に加えて、落下試験を満足する十分な強度を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の油性固形化粧料は、(A)水添ヒマシ油、炭素数10~24の1価アルコール、及びホホバエステルのうちの1種以上を含む安定化剤(以下(A)成分という場合もある)と、(B)固形油(ただし、(A)成分に該当するものを除く)(以下(B)成分という場合もある)と、(C)揮発性シリコーン油(以下(C)成分という場合もある)と、を含む。
【0012】
<(A)安定化剤>
(A1)水添ヒマシ油(以下(A1)成分という場合もある)は、ヒマシ油を水素添加して得られるものであり、香粧品に用いられるものであれば特に限定されず使用することができる。水添ヒマシ油は、ヒマシ硬化油A(伊藤製油株式会社製、製品名)、カスターワックスAフレーク(日油株式会社製、製品名)、ヒマ硬(ケイエフ・トレーディング株式会社製、製品名)などの市販品を用いることができる。
【0013】
(A2)炭素数10~24の1価アルコール(以下(A2)成分という場合もある)は、直鎖若しくは分岐、及び、飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールであってもよい。(A2)成分としては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びオレイルアルコールなどが挙げられる。温度変化に対する硬度の安定性の観点から、(A2)成分は、炭素数14~22の直鎖飽和脂肪族アルコールであってもよく、炭素数14~18の直鎖飽和脂肪族アルコールであってもよく、炭素数16~18の直鎖飽和脂肪族アルコールであってもよい。(A2)成分は、2種以上の混合物であってもよく、セテアリルアルコールであってもよい。
【0014】
(A3)ホホバエステル(以下(A3)成分という場合もある)としては、ホホバ油を水素添加して得られる部分水添ホホバエステル及び完全水添ホホバエステルなどが挙げられる。硬度の変動を抑制する観点から、(A3)成分は、部分水添ホホバエステルであってもよい。このようなエステル油は、例えば、FLORAESTERS20、FLORAESTERS30、FLORAESTERS60(以上、INTERNATIONAL FLORA TECHNOLOGIES社製、商品名)等の市販品を用いることができる。
【0015】
本実施形態の油性固形化粧料は、硬度の変動を抑制する観点から、(A)成分として(A1)成分を含んでいてもよい。
【0016】
本実施形態の油性固形化粧料における(A)成分の配合量は、化粧料全量を基準として、0.1~2質量%であってもよく、0.2~1.5質量%であってもよく、0.3~1質量%であってもよい。(A)成分の配合量がこれらの範囲内であると、優れたラスティング性及び使用性と、硬度が変動しにくい保存安定性とを高水準で両立することが容易となる。
【0017】
<(B)固形油>
(B)成分は、炭化水素系ワックスや植物系ワックスなどの通常化粧品に使用される固形油を、1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。なお、本明細書において、固形油とは、40℃で流動性を示さない油を指す。固形油は、融点が40℃以上であってもよい。なお、固形油の融点は以下の方法によって測定される。
【0018】
試料を約5mg秤量し、アルミニウム試料パン中に入れる。このパンにアルミニウムカバーを取り付け、示差走査熱量計「DSC7020」(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)中に設置する。電気冷却ユニット「Polyscience」(日立ハイテクサイエンス社製、製品名)を用いて、窒素ガス流量30~35mL/minのもと、試料及び基準試料を-10℃で1分間保持した後、昇温速度10℃/minで0℃から120℃まで昇温させ、降温条件-10℃/minで120℃から-10℃まで降温させ、-10℃で5分間保持した後に再び昇温速度10℃/minで-10℃から120℃まで昇温することにより、融解吸熱カーブを得る。このときの2回目の昇温における融解吸熱カーブのピーク温度を融点とする。
【0019】
固形油としては、例えば、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、キャンデリラロウ炭化水素、ヒマワリ種子ロウ、ライスワックス、モクロウ、ミツロウ、鯨蝋、高級脂肪酸などが挙げられる。
【0020】
(B)成分は、形状保持の観点から、融点が、50~120℃であってもよく、60~110℃であってもよい。
【0021】
本実施形態の油性固形化粧料における(B)成分の配合量は、形状保持の観点から、化粧料全量を基準として、5~30質量%であってもよく、10~20質量%であってもよく、12~18質量%であってもよい。
【0022】
本実施形態の油性固形化粧料においては、優れたラスティング性及び使用性と、外観の変化及び硬度の変動が小さい十分な保存安定性とを両立する観点から、(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)を1/50~1/9とすることができ、1/45~1/10としてもよく、硬度の変動をより小さくする観点から、(A/B)を1/35~1/13としてもよい。
【0023】
なお、本実施形態の油性固形化粧料において(A)成分が安定化剤として機能し、上記の効果が奏される(特には化粧料の硬度を安定化できる)理由について、本発明者らは以下のとおり考えている。固形油及び揮発性シリコーン油が含まれる系に、揮発性シリコーン油との相溶性が比較的小さい(A)成分が、固形油に対して上記の割合で配合されることにより、固形油(例えばワックス)の結晶化を微細にすることができると考えられ、これにより、皮膜剤を良好に分散させることができる揮発性シリコーン油が十分に含まれる系において、べたつきを感じさせにくい固形油量であっても十分な強度を有する固形化粧料を形成することができたと推察される。
【0024】
<(C)揮発性シリコーン油>
(C)成分としては、ジメチルポリシロキサンなどの低分子量の直鎖状シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状シリコーン、メチルトリメチコンなどの分岐状シリコーンが挙げられる。
【0025】
(C)成分は、1気圧(101.325kPa)における沸点が250℃以下であってもよく、210℃以下であってもよく、200℃以下であってもよい。
【0026】
(C)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
本実施形態の油性固形化粧料における(C)成分の配合量は、ラスティング性の観点から、化粧料全量を基準として、10~40質量%であってもよく、15~35質量%であってもよく、20~30質量%であってもよい。
【0028】
本実施形態の油性固形化粧料においては、温度変化に対する硬度の安定性の観点から、(A)成分と(C)成分との質量比(A/C)が1/150~1/20であってもよく、ラスティング性と、温度変化に対する硬度の安定性との両立の観点から、(A/C)が1/125~1/23であってもよく、1/60~1/23であってもよい。
【0029】
本実施形態の油性固形化粧料は、ラスティング性と使用性との両立の観点から、(D)皮膜剤(以下、(D)成分という場合もある)を更に含有することができる。
【0030】
<(D)皮膜剤>
(D)成分としては、トリメチルシロキシケイ酸、ポリアルキルシルセスキオキサン等のシリコーン樹脂、(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー等のアクリル・シリコーン樹脂などのシリコーン系皮膜剤、キャンデリラレジン等が挙げられる。
【0031】
本実施形態の油性固形化粧料は、ラスティング性の観点から、(D)成分として、シリコーン系の皮膜剤を含むことができる。
【0032】
本実施形態の油性固形化粧料における(D)成分の配合量は、ラスティング性と使用性との両立の観点から、化粧料全量を基準として、10~50質量%であってもよく、15~40質量%であってもよく、20~35質量%であってもよい。
【0033】
本実施形態の油性固形化粧料は、用途に応じて、(E)粉体成分を更に含有することができる。
【0034】
<(E)粉体成分>
粉体成分としては、通常化粧品に使用されるものであれば特に限定されず用いることができる。例えば、体質粉体、着色顔料等が挙げられる。
【0035】
体質粉体としては、無機粉体、合成無機粉体、有機粉体、金属セッケン、合成高分子粉体などが挙げられる。より具体的には、マイカ、カオリン、セリサイト、タルク、金雲母、合成雲母、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ミリスチン酸亜鉛、ポリエチレン末、ウレタンビーズ、ポリメタクリル酸メチル、オルガノポリシロキサンエラストマー等が挙げられる。体質粉体の形状についても特に限定されないが、例えば、平均粒径が1~50μmの球状粉体を用いることができる。
【0036】
着色顔料としては、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛、パール顔料(雲母チタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス等)、有機顔料(赤色228号、赤色226号、青色404号、赤色202号、黄色4号アルミニウムレーキ等)、天然色素(カルミン、ベニバナ等)などが挙げられる。
【0037】
本実施形態の油性固形化粧料における(E)成分の配合量は、使用性や発色の観点から、化粧料全量を基準として、20~45質量%であってもよく、15~50質量%であってもよく、25~40質量%であってもよい。
【0038】
本実施形態の油性固形化粧料においては、上述した(A)成分及び(B)成分の組み合わせにより、(D)成分及び(E)成分を含む場合であっても保存安定性の確保が容易となることから、(D)成分及び(E)成分の合計含有量が、化粧料全量を基準として、25~80質量%であってもよく、40~70質量%であってもよく、50~60質量%であってもよい。
【0039】
本実施形態の油性固形化粧料は、上述した成分以外のその他の油性成分を更に含有することができる。
【0040】
<その他の油性成分>
その他の油性成分としては、例えば、通常化粧品に使用されるペースト状油、液状油を用いることができ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0041】
ペースト状油としては、例えば、ワセリン、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、イソステアリン酸水添ヒマシ油、オレイン酸フィトステリル、ヘキサ(オレイン酸/パルミチン酸/ステアリン酸)スクロース、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2等が挙げられる。
【0042】
液状油としては、例えば、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソステアリル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸プロパンジオール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等のエステル油;ジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(メチルフェニルポリシロキサン)等の不揮発性シリコーン油;流動パラフィン、スクワラン、オレフィンオリゴマー、流動パラフィン、スクワラン、水添ポリイソブテン等の炭化水素油;ヒマワリ種子油、ホホバ種子油、オリーブ油、ヒマシ油等の植物油;(A2)成分以外の高級アルコール、などが挙げられる。
【0043】
本実施形態の油性固形化粧料におけるペースト状油及び液状油の合計含有量は、化粧料全量を基準として、0~30質量%とすることができ、1~20質量%とすることができる。
【0044】
<その他の成分>
本実施形態の油性固形化粧料には、上記の(A)~(E)成分及びその他の油性成分の他に通常化粧品に使用される他の成分、例えば保湿剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、防腐剤、ビタミン類、美容成分、酸化防止剤、香料等を必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0045】
本実施形態の油性固形化粧料は、下記の条件で測定される25℃における硬度が、0.1~2.5Nであってもよく、0.2~2.3Nであってもよく、0.5~2.1Nであってもよい。
測定装置:レオメーター((株)レオテック製)
測定条件:感圧軸の先端形状:直径1mmの円盤、針入速度:6cm/min、針入深度:10mm
【0046】
本実施形態に係る油性固形化粧料の用途としては特に限定されないが、口紅、ファンデーション、チーク、コンシーラー、アイシャドウ、アイライナー、アイブロウ、マスカラ、化粧下地、ヘアカラー等のメイクアップ用化粧料や、リップクリーム、リップバーム、アイクリーム、保湿クリーム、日焼け止め等のスキンケア用化粧料などが挙げられる。
【0047】
本実施形態に係る油性固形化粧料は、スティック状、ペンシル状等の棒状に成形されていてもよく、中皿などの容器内に直接充填したものであってもよい。棒状の油性固形化粧料は、例えば、アイブロウペンシル、アイライナー、リップライナー、コンシーラーペンシル、アイシャドウペンシル等に適している。
【0048】
本実施形態に係る油性固形化粧料の製造方法としては、例えば、上述した(A)成分、(B)成分、及び(C)成分、必要に応じて、(D)成分、(E)成分及びその他の成分を混合して得られる化粧料基材を、所定の容器若しくは金型に充填し、固化する方法が挙げられる。
【0049】
化粧料基材を充填する所定の容器としては、例えば、金皿、樹脂皿などの中皿が挙げられる。これらの中皿は、油性固形化粧料が形成された後にそのままコンパクト容器に装着することが可能である。また、コンパクト容器、ジャー容器に直接充填することも可能である。
【0050】
棒状の油性固形化粧料は、例えば、以下の手順で製造することができる。先ず、液状及び固形の油性成分を加熱溶解した中に粉体成分を添加し、これをロール機などで分散後、揮発性油剤及び皮膜剤などを添加し、均一混合することで化粧料基材を得る。次に、押し出し成型、溶融充填成型などの成型工程を行うことで棒状に成形することができる。なお、本実施形態に係る化粧料基材は、(C)成分などの揮発性油剤を含むため、金型を用いた溶融充填成型、又は、筒状容器への直接溶融充填成型を行ってもよい。
【実施例0051】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。
【0052】
実施例に先立ち、各実施例で採用した評価方法を説明する。
【0053】
(1)化粧料の初期硬度
化粧料の25℃におけるバルク硬度を、レオメーター((株)レオテック製)を用い、下記の条件で測定した。
[測定条件]
感圧軸の先端形状:直径1mmの円盤、針入速度:6cm/min、針入深度:10mm
【0054】
(2)保存安定性(硬度の変動)
化粧料をジャー容器に20g充填し、5℃~40℃のサイクル恒温槽に4週間保存した。保存後の化粧料について、初期硬度と同様の方法で硬度を測定した。下記式で定義される初期硬度に対する硬度の変動率を求め、下記の判定基準に従って、硬度の変化の観点から保存安定性を評価した。
硬度の変動率(%)=[初期硬度-保存後の硬度]×100/初期硬度
[判定基準]
◎:初期硬度に対する変動率が±0%以上20%以下
○:初期硬度に対する変動率が±20%超40%以下
×:初期硬度に対する変動率が±40%超
【0055】
(3)保存安定性(外観の変化)
化粧料をジャー容器に20g充填し、50℃で4週間保管した。保管後の化粧料の状態を目視にて確認し、下記の判定基準に従って、外観の変化の観点から保存安定性を評価した。
[判定基準]
◎:油の染み出し及び発汗が見られない
○:若干の油の染み出し又は発汗が見られる
△:油の染み出し又は発汗が見られる
×:著しい油の染み出し又は発汗が見られる
【0056】
(4)ラスティング性
化粧料を、バイオスキンプレート(ビューラックス社製)上に、1cm×3cmの範囲に均一となるよう塗布した。10分後、塗布部に紙を押圧し、化粧料の付着度合を目視により下記の4段階で判定した。
[判定基準]
◎:紙への化粧料の付着が見られない
○:紙に微量の化粧料の付着が見られる
△:紙に少量の化粧料の付着が見られる
×:塗布した化粧料の半分以上が紙に付着
【0057】
(5)使用性
化粧料を、10人の専門パネルに使用してもらい、塗布時の伸展性の良さと塗布時及び塗布直後のべたつきのなさの観点から、1~5点(1点が最も不良で、5点が最も良好である)の5段階で評点をつけてもらった。なお、使用性は、全パネルの評点の平均点を求め、下記の評価基準に従って判定した。
[評価基準]
◎:平均点が4.5点以上
○:平均点が3.5点以上4.5点未満
△:平均点が1.5点以上3.5点未満
×:平均点が1.5点未満
【0058】
(6)落下強度
成形された棒状化粧料を繰り出し式ペンシル容器に装着し、25℃で24時間静置後、50cmの高さから5回水平落下した。落下後の棒状化粧料の外観を目視にて確認し、下記の評価基準で落下強度を評価した。
[評価基準]
◎:異常なし
○:微かな曲がりが見られる
△:少量のカケ、又は、曲がり(但し、容器からの繰り出し可能)が見られる
×:折れ、又は、容器から繰り出し不能な曲がりが見られる
【0059】
(実施例1~14及び比較例1~4)
表1~3に示す組成(質量%)の油性固形化粧料(アイライナー)を以下の製法により調製し、上記の評価を行った。その結果を併せて表1~3に示す。
【0060】
<製法>
液状及び固形の油性成分を加熱溶解した中に粉体成分を添加し、これをロール機などで分散後、揮発性油剤と皮膜剤とを添加し、均一混合することで化粧料基材を得た。次に、化粧料基材を、金型を用いた溶融充填成型によって棒状に成形した。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
表1~3中、各成分の詳細は下記のとおりである。
キャンデリラロウ炭化水素:「キャンデリラワックス炭化水素FC-31」(株式会社日本ナチュラルプロダクツ製商品名)
ポリエチレンワックス(合成ワックス):「PERFORMA SW-87 Synthetic Wax」(NuCera Solutions LLC社製商品名)
ホホバエステル:「FLORAESTERS30」(INTERNATIONAL FLORA TECHNOLOGIES社製、商品名、部分水添ホホバエステル)
ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル:「サラコスDP518N」(日清オイリオグループ株式会社製商品名)
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン:「KF-56A」(信越化学工業株式会社製商品名)
粉体成分-1:黒酸化鉄、ベンガラ、黄酸化鉄、酸化チタン、合成マイカ、ホウケイ酸(Ca/Al)
【0065】
表1及び表2に示されるように、実施例1~14で得られる化粧料は、保存安定性(硬度の変動)、保存安定性(外観の変化)、ラスティング性、使用性、及び落下強度のすべてについて「○」又は「◎」の評価であった。
【0066】
(実施例13:アイライナー)
(成分) (配合割合(質量%))
1. 水添ヒマシ油 1.0
2. キャンデリラロウ炭化水素 2.0
3. ポリエチレンワックス(合成ワックス) 7.0
4. メチルトリメチコン 20.0
5. トリメチルシロキシケイ酸 24.0
6. ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル 1.5
7. ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 9.5
8. 粉体成分-1 35.0
【0067】
上記成分は表1~3に示すものと同様である。
【0068】
<製法>
液状及び固形の油性成分(成分1~3、6及び7)を加熱溶解した中に粉体成分(成分8)を添加し、これをロール機などで分散後、揮発性油剤(成分4)と皮膜剤(成分5)とを添加し、均一混合することで化粧料基材を得た。次に、化粧料基材を、金型を用いた溶融充填成型によって棒状に成形し、アイライナーを得た。
【0069】
<評価>
得られたアイライナーについて、上記と同様の評価を行ったところ、初期硬度:1.35N@25℃、保存安定性(硬度の変動)「○」、保存安定性(外観の変化)「○」、ラスティング性「○」、使用性「○」、落下強度「◎」の評価であった。