(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055524
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物及び硬化膜
(51)【国際特許分類】
C08G 63/82 20060101AFI20240411BHJP
C07C 69/67 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C08G63/82
C07C69/67
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162537
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】森脇 佑也
(72)【発明者】
【氏名】松田 知也
(72)【発明者】
【氏名】浅田 耕資
(72)【発明者】
【氏名】呑海 克
(72)【発明者】
【氏名】中川 浩気
(72)【発明者】
【氏名】吉田 成寿
(72)【発明者】
【氏名】竹中 直巳
【テーマコード(参考)】
4H006
4J029
【Fターム(参考)】
4H006AA03
4H006AB46
4H006KC12
4J029AB07
4J029AE11
4J029AE13
4J029BE07
4J029CE06
4J029CF00
4J029CF12
4J029DA02
4J029HA01
4J029HB03C
4J029JC171
4J029JC221
4J029JC311
4J029JC411
4J029JC631
4J029JF181
4J029JF221
4J029JF251
4J029JF321
4J029JF331
4J029JF561
4J029KD02
4J029KE02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低温での硬化性能を有するようなエステル化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表され、分子量が3000以下である化合物(A)、2以上の水酸基を含むポリオール(B)、並びに、エステル交換触媒(C)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
式中、n=0~20、m=2又は3である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表され、分子量が3000以下である化合物(A)、2以上の水酸基を含むポリオール(B)、並びに、エステル交換触媒(C)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
n=0~20
m=2又は3
R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
R
2は、炭素及び水素のみからなる脂肪族、脂環族又は芳香族炭化水素基
R
3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【請求項2】
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(11)で表される化合物及び/又は下記一般式(12)で表される化合物である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化2】
【請求項3】
下記一般式(21)~(26)のいずれかで表される構造を分子中に少なくとも2有する分子量が3000以下である化合物(A)、2以上の水酸基を含むポリオール(B)、並びに、エステル交換触媒(C)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【化3】
式(21)~(23)中、nは、0~20
R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
R
3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【化4】
式(24)~(26)中、nは、0~20
R
31は、炭素数50以下のアルキル基。
R
32は、水素又はメチル基。
R
33は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【請求項4】
シアヌル酸骨格及び下記一般式(32)で表される構造の両方を有する化合物(A)、2以上の水酸基を含むポリオール(B)、並びに、エステル交換触媒(C)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【化5】
式中、nは、0~20
R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
R
3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【請求項5】
エステル交換触媒(C)は、亜鉛、スズ、チタン、アルミニウム、ジルコニウム及び鉄からなる群より選択される少なくとも1の金属元素を含む化合物、並びに、有機リン化合物、尿素、アルキル化尿素、チオ尿素、アルキル化チオ尿素、スルホキシド化合物、第4級アンモニウム化合物、第4級ホスホニウム化合物、及び、ピリジン、キノリン、イソキノリン、フェナントロリン、イミダゾール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1の化合物を含有するものである請求項1、3または4記載の熱硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物及び硬化膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、エステル交換反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物についての検討を行っている(特許文献1~2)。最近の検討によって、エステル交換反応を硬化反応とすることで、一般的に知られているメラミン樹脂やポリイソシアネート化合物を使用した硬化と同等又はそれ以上の硬化性能を確保することができることが明らかになりつつある。
【0003】
一方、近年、省エネルギーの要請から、従来以上に低温での硬化を図ることが望まれている。特許文献1~2に記載したような各種方法においても、十分な低温化を図ることができているが、従来にないさらに低温での硬化を図ることができれば好ましいものである。
【0004】
熱硬化性樹脂組成物は、電子分野の製造工程、塗料、接着剤、加飾体等、極めて多くの分野において使用されるものであることから、これら用途、必要物性に対応できるようなものについての要請がある。そして、これらの多岐にわたる用途に適用するためには、種々の性質を有する熱硬化性樹脂組成物について検討を行い、各用途に応じて使い分ける必要がある。
【0005】
特許文献1、2においては、一般式(1)で表される構造を有する樹脂組成物が開示されており、更に特定の触媒と併用した場合に、従来にない高い反応性を有し、非常に良好な硬化特性を有する熱硬化性樹脂組成物が得られる旨を開示している。
【0006】
一般式(1)で表される構造を有する樹脂組成物は、一般式(1)で表される構造を側鎖に有する重合体を使用する場合と、このような構造を分子中に2以上有するような比較的低分子の化合物を使用する場合とがある。これらはそれぞれ、相違する性質があるため、使用する目的に応じて使い分ける必要がある。
【0007】
このような一般式(1)で表される構造を分子中に2以上有するような比較的低分子量の化合物としては、特許文献1においては、クエン酸のカルボン酸基を一般式(1)の構造に変換したものが具体的に開示されているのみである。
【0008】
また、特許文献1,2に記載された化合物はカルボン酸のカルボキシル基を特定の構造に変換したものであるが、よって、その他の構造を有する化合物については、検討がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開2021/095202
【特許文献2】国際公開2021/172307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記に鑑み、低温での硬化性能を有するようなエステル化合物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記一般式(1)で表され、分子量が3000以下である化合物(A)、2以上の水酸基を含むポリオール(B)、並びに、エステル交換触媒(C)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【0012】
【化1】
n=0~20
m=2又は3
R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
R
2は、炭素及び水素のみからなる脂肪族、脂環族又は芳香族炭化水素基
R
3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【0013】
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(11)で表される化合物及び/又は下記一般式(12)で表される化合物であることが好ましい。
【0014】
【0015】
本発明は、下記一般式(21)~(26)のいずれかで表される構造を分子中に少なくとも2有する分子量が3000以下である化合物(A)、2以上の水酸基を含むポリオール(B)、並びに、エステル交換触媒(C)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物でもある。
【0016】
【化3】
式(21)~(23)中、nは、0~20
R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
R
3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【化4】
式(24)~(26)中、nは、0~20
R
31は、炭素数50以下のアルキル基。
R
32は、水素又はメチル基。
R
33は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【0017】
本発明は、シアヌル酸骨格及び上記一般式(32)で表される構造の両方を有する化合物(A)、2以上の水酸基を含むポリオール(B)、並びに、エステル交換触媒(C)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物でもある。
【0018】
【化5】
式中、nは、0~20
R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
R
3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【0019】
上記熱硬化性樹脂組成物において、エステル交換触媒(C)は、亜鉛、スズ、チタン、アルミニウム、ジルコニウム及び鉄からなる群より選択される少なくとも1の金属元素を含む化合物(C-1)、並びに、有機リン化合物、尿素、アルキル化尿素、チオ尿素、アルキル化チオ尿素、スルホキシド化合物、第4級アンモニウム化合物、第4級ホスホニウム化合物、及び、ピリジン、キノリン、イソキノリン、フェナントロリン、イミダゾール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1の化合物(C-2)を含有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のエステル化合物は、良好なエステル交換反応特性を有するものである。このため、水酸基含有成分と併用した場合に硬化性能を有する熱硬化性樹脂組成物とすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図2】実施例2の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図3】実施例3の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図4】実施例4の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図5】実施例5の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図6】実施例6の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図7】実施例7の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図8】実施例8の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図9】実施例9の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図10】実施例10の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図11】実施例11の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図12】実施例12の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図13】実施例13の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図14】実施例14の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図15】実施例15の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図16】実施例16の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図17】実施例17の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図18】実施例18の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図19】実施例19の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図20】実施例20の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図21】実施例21の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図22】実施例22の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図23】比較例1の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図24】比較例2の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図25】比較例3の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図26】比較例4の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図27】実施例23の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図28】実施例24の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図29】実施例25の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図30】実施例26の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図31】比較例5の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図32】比較例6の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図33】比較例7の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図34】比較例8の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図35】実施例27の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図36】実施例28の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図37】実施例29の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図38】実施例30の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図39】実施例31の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図40】実施例32の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図41】実施例33の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図42】実施例34の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図43】実施例35の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図44】実施例36の剛体振り子試験の結果を示す図である。
【
図45】実施例における硬化開始温度の読み取り方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
(第一の発明)
低温硬化可能であり、安全性が高く低コストを実現できるエステル交換型の熱硬化性樹脂組成物について、本発明者らは検討を行ってきた。そのなかでも、特許文献1,2において開示した技術は、優れた低温硬化性能を有する点で非常に好ましいものである。
【0024】
ここで具体的に記載されているのは、上記一般式(1)で表される官能基及び不飽和結合を有する単量体の重合によって得られた重合体、及び、クエン酸のカルボン酸基を一般式(1)で表される構造に変換した化合物のみである。
【0025】
一方、塗料組成物や接着剤組成物等の熱硬化性樹脂組成物の使用は極めて多岐にわたるものであり、求められる物性、必要とされる量等においてバリエーションが多く、これらの特定の化合物のみで、そのすべてに対応することは困難である。
【0026】
例えば、既存のポリオール樹脂をそのまま使用して、硬化剤として一般式(1)で表される官能基を有する低分子量化合物を使用すれば、塗膜物性を既存のポリオールの選択によって調整できるため塗料設計が容易になるという利点がある。
【0027】
このような硬化剤として作用する一般式(1)で表される官能基を有する低分子量化合物は、各種ポリカルボン酸のカルボキシル基を一般式(1)で表される構造に置換することで得られる。そして、その性質は、原料となるポリカルボン酸の性質を反映するものとなる。
【0028】
第1の本発明は、エステル化合物として、下記一般式で表される分子量が3000以下の化合物を使用したものである。
【化6】
n=0~20
m=2又は3
R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
R
2は、炭素及び水素のみからなる脂肪族、脂環族又は芳香族炭化水素基
R
3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【0029】
すなわち、分子量が比較的小さく、更に、水酸基、アミノ基等の親水性の官能基を有さず、炭素及び水素のみからなる、脂肪族、脂環族又は芳香族炭化水素基を有するポリカルボン酸のカルボキシル基を上述した一般式(1)の構造に変換した化合物である。
【0030】
更に、低分子量化合物であることから、硬化後の樹脂組成物は、ポリオールの性質を大きく反映するものとなる。よって、ポリオールとして適切なものを選定することで、硬化物の物性を容易に調整できる点で好ましい。
【0031】
更に、本発明の樹脂組成物において、一般式(1)の構造を有する化合物は、芳香族化合物であってもよい。すなわち、芳香族ポリカルボン酸のカルボン酸基を一般式(1)の構造に変換したものであってもよい。
芳香族を有する化合物は、耐熱性や強度において優れたものとすることができる。このような観点から、このような性質が求められる場合には、芳香族を有する化合物とすることが好ましい。
【0032】
一般式(1)の構造について
上記一般式(1)で表される化合物は、以下の一般式(2)で表される構造を分子中に2又は3有するものである。
【0033】
【0034】
n=0~20
R1は、炭素数50以下のアルキル基。
R3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【0035】
このような官能基を2有するものは、低粘度であり、かつ樹脂に対する相溶性及び希釈性が良好な化合物となり易いという点で好ましいものであり、3有するものは、高架橋度でより実用的な熱硬化塗膜を得られるという点で好ましいものである。このような構造を1しか有さない化合物は硬化反応を生じさせることができない。また、4以上有する場合は、合成時に副反応が生じ易く、高粘度であり、かつ樹脂に対する相溶性も低い化合物となり易いという点で好ましくない。
【0036】
上記一般式(2)で表される構造を有する化合物や重合体は、エステル交換反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物として優れた反応性を有するものであることは、特許文献1,2等において開示した。本発明においては、更に、上記一般式(1)で表される構造のR2として特定のものを使用することで、特に優れた効果が得られることを見出すことで完成したものである。
【0037】
上記一般式(1)の化合物において、nは0~20である。
nの上限は5であることがより好ましい。
更に、上記一般式(1)においてnの値が異なる複数の成分の混合物であってもよい。この場合nの平均値navは、0~5であることが好ましい。navの下限は、1であることがより好ましい。navの上限は3であることがより好ましい。navの測定は、NMR分析によって行うことができる。さらに、nの値についてもNMR分析によって測定することができる。
【0038】
nは、0であることが特に好ましい。n=0であっても充分な反応性が得られ、かつ、製造が容易となり、コストダウンを図ることができる点で好ましい。1以上であるほうが、より反応性が高い熱硬化性樹脂組成物を得ることができるため、より高い硬化性能を得る必要がある場合には、nを1以上とすることが好ましい。
すなわち、nが1以上であるほうが、より低い温度での硬化を図ることができ、これによって本発明の効果をより好適に発揮することができる。
【0039】
上記一般式(1)において、R1としては炭素数50以下の任意のアルキル基を使用することができ、1級、2級、3級のいずれであってもよい。但し、R1としては、1級であることが最も好ましい。
【0040】
上記アルキルエステル基におけるアルキル基(すなわち、上記一般式におけるR1)は、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1~20の範囲内であり、更に好ましくは、1~10の範囲内であり、更に好ましくは、1~6の範囲内である。最も好ましくは、1~4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
【0041】
上記アルキル基として具体的には、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、ベンジルエステル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基、t-ブチルアルキル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。
【0042】
上記一般式(1)におけるR3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基である。当該アルキル基は、特に限定されるものではないが、水素、メチル基、エチル基、ベンジル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等の任意のアルキル基とすることができる。なかでも、水素、メチル基であることが特に好ましい。
【0043】
上記官能基(2)を有する化合物は、上記一般式(2)で表される構造に対応した下記一般式(4)
【0044】
【0045】
(Xは、ハロゲン、水酸基を表す)
の構造を有するカルボニル基のα位に活性基Xが導入されたエステル化合物を、ポリカルボン酸又はポリカルボン酸塩と反応させることで得ることができる。これを一般式で表すと以下のようになる。
【0046】
【0047】
上記一般式において、一般式(5)で表される原料として使用することができる化合物は、上述した反応を生じることができるカルボン酸又はカルボン酸誘導体であれば特に限定されない。カルボン酸誘導体としては、YがOM(カルボン酸塩)、OC=OR(酸無水物)、Cl(酸塩化物)等を挙げることができる。上記Y=OMのカルボン酸塩である場合、カルボン酸塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、亜鉛塩等を挙げることができる。
【0048】
上記一般式(5)で表される化合物としては、目的とする一般式(2)で表される構造に対応した骨格を有する化合物とすることができる。
【0049】
また、上記一般式(4)で表される化合物は、その製造方法を特に限定されるものではない。上記一般式(4)で表される化合物のうち、n=0の化合物は、α位にXで表される活性基を有する化合物であり、各種αヒドロキシ酸、αハロゲン化カルボン酸を挙げることができる。具体的には、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、ブロモ酢酸メチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸t-ブチル、2-クロロプロピオン酸メチル、グリコール酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等を挙げることができる。
【0050】
上記一般式(4)で表される化合物のうち、n=1以上の化合物については、以下にその製造方法の一例を示す。
なお、以下に示す内容は製造方法の一例であり、本発明においては以下の製造方法によって得られた化合物に限定されるものではない。
【0051】
例えば、α位にハロゲンを有するカルボン酸、その塩又はその誘導体と、α位にハロゲン又は水酸基を有するカルボン酸アルキルエステルとの反応によって得ることができる。これを一般式で表すと、下記のようなものとなる。
【0052】
【0053】
α位にハロゲンを有するカルボン酸、その塩又はその誘導体としては、カルボン酸のアルカリ金属塩(カリウム塩、ナトリウム塩等)、酸無水物、酸クロライド等を挙げることができる。上記一般式(6)であらわされる化合物として具体的には、クロロ酢酸ナトリウム等を使用することができる。
【0054】
α位にハロゲン又は水酸基を有するカルボン酸アルキルエステルとしては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、乳酸、等のα置換カルボン酸化合物のアルキルエステルを挙げることができる。上記アルキルエステルのアルキル基は特に限定されず、炭素数1~50のアルキル基であればよい。
このようなアルキル基は、1~3級のいずれであってもよく、具体的にはメチル基、エチル基、ベンジル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等を挙げることができる。
【0055】
上記反応においては、X1とX2とを別種のものとすることが好ましい。これらを別種の官能基として反応性が相違するものとし、X1が未反応で残存するよう官能基の組み合わせを選択することが好ましい。具体的には、X1がブロモ基、X2がクロロ基の組み合わせが特に好ましい。
【0056】
また、上記反応において2種の原料の混合比を調整することで,nの値を調整することができる。上記反応においては、一般に相違するnを有する複数種の化合物の混合物として得られる。上記一般式(4)で表される化合物は精製することで、nが特定の値を有するもののみを使用してもよいし、nの値が相違する複数種の化合物の混合物であってもよい。
【0057】
上記一般式(2)で表される化学構造は、上記一般式(4)で表される化合物を、各種カルボン酸化合物と反応させることで形成させることができる。したがって、任意の「カルボン酸基を有する化合物」について、上記一般式(4)で表される化合物を反応させることができ、上記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物としては、極めて多くの種類の化合物が考えられる。
【0058】
ここで使用するポリカルボン酸としては特に限定されず、例えば、カルボキシル基以外の構造においては炭素及び水素のみからなり、炭素数が50以下のものを使用することができる。
より具体的には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;
等を挙げることができる。
【0059】
本発明においては、一般式(1)で表される化合物の好適な例として、下記一般式(11)で表される化合物を挙げることができる。
【0060】
【化11】
(R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
R
3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
xは、1~8
n=0~20)
【0061】
更に、上記一般式(1)のR2は、ベンゼン環であることも好ましい。すなわち、ベンゼン環に2又は3のカルボキシル基を有するような化合物のカルボキシル基を上記一般式(2)の構造に置換した化合物がこれにあたる。
【0062】
このような化合物を硬化剤として使用すると、ベンゼン環を有することによって、耐熱性や強度に優れた硬化物とすることができる点で好ましい。このようなカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等を挙げることができる。これらのなかでも、トリメリット酸を使用することが特に好ましい。トリメリット酸のカルボキシル基を一般式(2)の構造に変換した化合物の化学式を下記一般式(12)として表す。
【0063】
【化12】
R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
R
3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
n=0~20
【0064】
上記ポリカルボン酸のカルボン酸基を上記一般式(2)で表される構造に置換した化合物は、分子量が3000以下である。分子量が3000を超える化合物は、架橋剤として使用する場合は粘性等の問題から、その他の成分と均一に混和させることが困難になる点で好ましくない。
上記分子量は2000以下、1000以下といった、より低分子量のものとすることもできる。上記分子量は、NMR等の化学分析手段によって、化合物の化学構造を明らかとして、これによって明らかにすることができる。また、nの値が異なる複数種の化合物の混合物である場合は、当該混合物中に分子量が3000以下の成分を一部に含んでいるものであればよい。
【0065】
上記一般式(1)で表される構造の化合物は2種以上のものを混合して使用してもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記一般式(1)で表され、分子量が3000以下(より好ましくは、分子量2000以下、更に好ましくは分子量1000以下)の化合物を組成物の固体成分の全量に対して、1~70重量%含有するものであることが好ましい。
【0066】
(エステル化合物2)
第二の本発明は、エステル化合物として下記一般式(21)~(26)
【0067】
【化13】
n=0~20
R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
R
3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【化14】
R
31は、炭素数50以下のアルキル基。
R
32は、水素又はメチル基。
R
33は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
n=0~20
のいずれかで表される構造を有する化合物を使用するものである。
当該構造は、上述した一般式(1)で表される構造に類似したものであるが、アミノ基を分子中に有するものである。
【0068】
上記エステル化合物2は、上記一般式(21)~(26)のいずれかで表される構造を有し、分子量が3000以下であれば特に限定されるものではない。なかでも、分子量2000以下、更に好ましくは分子量1000以下であることが好ましい。
【0069】
上記エステル化合物2は、上記一般式(21)~(26)で表される構造中のエステル基を2以上有するものである。分子中の当該構造の数の上限は特に限定されるものではないが、(21)(24)は6以下、(22)(25)は3以下、(23)(26)は2以下であることが好ましい。より具体的には、末端に位置する架橋性エステル基を1分子あたり2~6個有することが最も好ましい。上述した構造より、一般式(22)、(23)、(25)(26)で表される構造の場合は、当該構造を1有するものであってもよいが、一般式(21)(24)で表される構造の場合は、当該構造を2以上有することが好ましい。
【0070】
上記エステル化合物2は、分子量が3000以下である。分子量が3000を超える化合物は、ポリマーに該当する化合物となり、架橋剤として使用する場合は粘性等の問題から、その他の成分と均一に混和させることが困難になる点で好ましくない。
上記分子量は2000以下、1000以下といった、より低分子量のものとすることもできる。上記分子量は、NMR等の化学分析手段によって、化合物の化学構造を明らかとして、これによって明らかにすることができる。また、nの値が異なる複数種の化合物の混合物である場合は、当該混合物中に分子量が3000以下の成分を一部に含んでいるものであればよい。
【0071】
上述した一般式(21)(22)(24)(25)で表される化合物においては、一般式中に表された窒素に1又は2の水素原子が結合したものであってもよい。
【0072】
上記エステル化合物2の製造方法は特に限定されるものではなく、上述したエステル化合物1の製造方法において詳述した方法において、ポリカルボン酸にかえてアンモニア又はアミン化合物を原料として同様の反応を行うことによって得ることができる。
【0073】
上記一般式(4)で表される化合物とアンモニア又はアミン化合物と反応させた場合、アンモニア又は1級アミンとの反応においては、窒素原子上の複数の水素を上記一般式(21)で表される構造に置換することができる。このため、アンモニアやモノアミン化合物のように、窒素原子を一しか有さない化合物であっても、2以上のアルキルエステル基を有する化合物に置換することができる。
【0074】
【0075】
なお、上記一般式は、1級アミンを使用した場合について記載したものであるが、2級アミンを原料として使用した場合は、上記一般式(21)で表される化合物を得ることができ、アンモニアを原料として使用した場合は、上記一般式(23)で表される化合物を得ることができる。
【0076】
このようなエステル化合物2は、上記反応で使用される一般式(5)で表される化合物に由来する骨格を有するものとなる。すなわち、原料として使用されるアミン化合物に応じて、これに由来する骨格が分子中に存在することとなる。
【0077】
上記一般式でも表されるような原料となるアミン化合物としては特に限定されず、任意の1級アミン化合物、2級アミン化合物を使用することができる。また、アミノ基を2以上有するようなポリアミン化合物であってもよい。アミン化合物としては、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミンのいずれであってもよい。
【0078】
上記エステル化合物2は、2以上のエステル基を有するものであることが好ましいため、1級アミンを使用する場合は、アミノ基数が1であるような化合物であってもよいが、2級アミンを使用する場合は、アミノ基を2以上有する化合物であることが好ましい。
【0079】
このようなアミノ化合物としては特に限定されず、例えば、炭素数50以下で、炭素、水素、窒素以外の原子を含まないようなアミノ化合物を挙げることができる。当該化合物において、窒素原子の数は1~6であることが好ましい。上記アミノ化合物は、脂肪族、芳香族、脂環族のいずれであってもよいが、脂肪族であることが特に好ましい。
【0080】
このようなアミノ化合物として具体的には、メチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等を挙げることができる。
【0081】
また、アミノ基を有する化合物中のN-H結合のすべてを上述した官能基に置換するものであってもよいし、一部のN-H結合を残存させるものであってもよい。
【0082】
このようなエステル化合物2として具体的には、下記一般式で表されるものを挙げることができる。
【化16】
R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
【0083】
上記一般式(21)~(23)で表されるような化合物としては、以下で示す別の合成方法によって得られたものであってもよい。
このような合成方法は、アミノ基及びカルボキシル基の両方を有する化合物に対して、上述した一般式(4)で表される化合物を反応させる方法である。
これを一般式で表すと、以下のようになる。
【化17】
【0084】
当該反応は、上述したエステル化合物1の製造方法において、カルボキシル基含有化合物として一般式(5-1)で表されるようなものを使用して行ったものである。
一般式(5-1)中のYは、OM(カルボン酸塩)、OC=OR(酸無水物)、Cl(酸塩化物)等を挙げることができる。上記Y=OMのカルボン酸塩である場合、カルボン酸塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、亜鉛塩等を挙げることができる。
【0085】
このような合成方法において、一般式(5-1)で表される化合物として使用できるものとしては、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸などを挙げることができる。
【0086】
上述した一般式(24)~(26)で表されるような構造を分子中に少なくとも1有する化合物は、国際公開2021/095202において記載された不飽和基と下記一般式(1)の両方を有する化合物とアミン化合物とを反応させることで得られた構造である。
【0087】
【0088】
不飽和基と下記一般式(1)の両方を有する化合物としては、より具体的には下記一般式(51)で表される化合物等を挙げることができる。
【0089】
【化19】
(式中、nは、0~20の整数)
R
31は、炭素数1~50のアルキル基
R
32は、水素又はメチル基。
R
33は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【0090】
上記一般式(51)で表される化合物は、国際公開2021/095202において記載された方法に従って製造することができる。
【0091】
上記一般式(51)で表される化合物とアミン化合物又はアンモニアとの反応は、下記反応式で表すことができる。なお、下記反応式は、アミン化合物として1級アミンを使用して、一般式(25)であらわされる構造を有する化合物を得る方法について示している。同様の方法で、2級アミンを使用すると、一般式(24)で表される構造を有する化合物を得ることができ、アンモニアを使用すると、一般式(26)で表される構造を有する化合物を得ることができる。
【0092】
【化20】
n=0~20
R
31は、炭素数50以下のアルキル基。
R
32は、水素又はメチル基。
R
33は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【0093】
このような化合物も、分子中に多数のエステル基を有する化合物であるから、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、硬化剤として好適に使用することができるものである。
【0094】
上記一般式での反応において使用されるアミン化合物の骨格が一般式(24)~(26)で表される化合物中にも存在することとなる。
【0095】
ここで上記反応の原料として使用することができるアミン化合物は、上述した一般式(21)~(23)で表される構造を有する化合物において使用することができるアミン化合物と同様のものを挙げることができる。
【0096】
また、アミノ基を有する化合物中のN-H結合のすべてを上述した官能基に置換するものであってもよいし、一部のN-H結合を残存させるものであってもよい。
【0097】
このようなエステル化合物2として具体的には、下記一般式で表されるものを挙げることができる。
【0098】
【0099】
(エステル化合物3)
本発明におけるエステル化合物3は、シアヌル酸骨格及び上記一般式(32)で表される構造の両方を有する化合物である。
より具体的には、
【化22】
で表されるシアヌル酸骨格を有し、3つのR
51中に2以上の下記一般式(32)で表される構造を有する化合物である。
【化23】
【0100】
このような化合物もまた、エステル交換反応性が高く、本発明の目的において好適に使用することができるものである。
【0101】
上記R51で表される官能基は、同一であっても相違するものであってもよい。一般式(31)中のR51のすべてが上述した一般式(32)で表される構造を有するものであってもよいが、その一部は、一般式(32)で表される構造を有さないものであってもよく、例えば、一部が水素、炭素数50以下のアルキル基で置換されたものであってもよい。
【0102】
上記一般式(2)で表される構造は、1のR51基中に1存在するものであってもよいし、2以上存在するものであってもよい。
【0103】
上記R51で表される官能基は、
【化24】
(R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
R
3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
nは、0~5の整数を表す)
で表される構造であることが最も好ましい。
【0104】
このようなシアヌル酸骨格及び上記一般式(32)で表される化合物の製造方法は特に限定されるものではないが、シアヌル酸等の化合物が有するN-H基に対して、上述したエステル化合物2の製造と同様の反応を行うことによって行うことができる。このような化合物の具体例を以下に示す。
【0105】
【0106】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上述したエステル化合物1,2に該当せず、上記一般式(2)で表される官能基を有する化合物をさらに含有するものであっても差し支えない。このような化合物としては、上述した官能基を有し、分子量が3000以上であるような重合体等を挙げることができる。さらに、以下で詳述するポリオール(B)が一部に上記一般式(2)の構造を有する場合もこれに該当する。
【0107】
(2以上の水酸基を含むポリオール(B))
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、更に、2以上の水酸基を含むポリオール(B)を含有するものである。当該ポリオール(B)は、特に限定されるものではないが、以下に具体的なものを例示する。
【0108】
アクリルポリオール(B-1)
アクリルポリオールは、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)及び上記(a1)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(a2)を、公知の方法により共重合することによって製造することができる。より具体的には、有機溶媒中での溶液重合法、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法、水溶液重合法、等の重合方法を挙げることができる。
【0109】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)としては、特に限定されない。このような水酸基含有ビニル単量体として特に代表的なものを以下に例示する。2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテルもしくは6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテルのような、種々の水酸基含有ビニルエーテル類;またはこれら上掲の各種のビニルエーテルと、ε-カプロラクトンとの付加反応生成物;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、3-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アリルエーテル、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アリルエーテルもしくは6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテルのような、種々の水酸基含有アリルエーテル;またはこれら上掲の各種のアリルエーテルと、ε-カプロラクトンとの付加反応生成物;
あるいは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような、種々の水酸基含有(メタ)アクリレート類;またはこれら上掲の各種の(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンの付加反応主成分などである。
【0110】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(a2)としては、例えば、下記モノマー(i)~(xix)等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0111】
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:
例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、等
【0112】
(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:
イソボルニル(メタ)アクリレート等
【0113】
(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:
アダマンチル(メタ)アクリレート等
【0114】
(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:
トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等
【0115】
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー:
ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等
【0116】
(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等
【0117】
(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:
パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等
【0118】
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー
【0119】
(ix)ビニル化合物:
N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等
【0120】
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等
【0121】
(xi)含窒素重合性不飽和モノマー:
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等
【0122】
(xii)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:
アリル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等
【0123】
(xiii)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:
グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等
【0124】
(xiv)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート
【0125】
(xv)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等
【0126】
(xvi)リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:
アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等
【0127】
(xvii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:
2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等
【0128】
(xviii)紫外線安定性重合性不飽和モノマー:
4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等
【0129】
(xix)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:
アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、炭素数約4~約7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等
【0130】
本明細書において、「重合性不飽和基」は、ラジカル重合、またはイオン重合しうる不飽和基を意味する。上記重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0131】
アクリルポリオール(B-1)を製造する際の水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)の割合は、モノマー成分の合計量を基準として、0.5~50重量%が好ましい。このような範囲内とすることで、適度な架橋反応を生じさせることができ、優れた塗膜物性を得ることができる。
上記下限は、1.0重量%であることがより好ましく、1.5重量%であることが更に好ましい。上記上限は、40重量%であることがより好ましい。
【0132】
アクリルポリオール(B-1)の水酸基価は、形成される塗膜の耐水性等の観点から、1~250mgKOH/gであることが好ましい。上記下限は、2mgKOH/gであることがより好ましく、5mgKOH/gであることが更に好ましい。上記上限は、230mgKOH/gであることがより好ましく、220mgKOH/gであることが更に好ましい。
【0133】
このようなアクリルポリオール(B-1)としては、市販のものを使用することもできる。市販のものとしては特に限定されず、例えば、DIC株式会社品のアクリディックA-801-P、A-817、A-837,A-848-RN、A-814,57-773、A-829、55-129、49-394-IM、A-875-55、A-870、A-871、A-859-B、52-668-BA、WZU―591、WXU-880、BL-616、CL-1000、CL-408等を挙げることができる。
【0134】
また、本発明の熱硬化性塗料は、アクリルポリオール(B-1)由来の水酸基数に対して、エステル化合物(A)におけるエステル基は任意に配合できるが、エステル基が3級エステルの場合は、1~200%(個数比)であることが好ましい。
【0135】
ポリエステルポリオール(B-2)
ポリエステルポリオール(B-2)は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物が挙げられる。上記酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等、並びにそれらの無水物及びエステル化物を挙げることができる。
【0136】
また、ポリエステル樹脂としては、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイド等のα-オレフィンエポキシド、カージュラE10(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物等をポリエステル樹脂の酸基と反応させたものであってもよい。
【0137】
また、ポリエステル樹脂は、ウレタン変性されたものであってもよい。
【0138】
該ポリエステル樹脂は、2,000~100,000、好ましくは3,000~30,000の範囲内の重量平均分子量を有することができる。かかるポリエステル樹脂の重量平均分子量は、上記アクリル樹脂の重量平均分子量と同様の方法にて測定することができる。
【0139】
上記脂肪族多塩基酸並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、上記脂肪族化合物の酸無水物及び上記脂肪族化合物のエステル化物、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;上記脂肪族多価カルボン酸の無水物;上記脂肪族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物であることが好ましい。
【0140】
上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基とを有する化合物、上記化合物の酸無水物及び上記化合物のエステル化物が挙げられる。脂環式構造は、主として4~6員環構造である。上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;上記脂環族多価カルボン酸の無水物;上記脂環族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0141】
上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物が好ましく、そして1,2-シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物がより好ましい。
【0142】
上記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、上記芳香族化合物の酸無水物及び上記芳香族化合物のエステル化物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;上記芳香族多価カルボン酸の無水物;上記芳香族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、及び無水トリメリット酸が好ましい。
【0143】
また、上記酸成分として、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0144】
上記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,1,1-トリメチロールプロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;上記3価以上のアルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
【0145】
また、上記アルコール成分として、上記多価アルコール以外のアルコール成分、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXIONSpecialtyChemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸とを反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0146】
ポリエステルポリオールは、特に限定されず、通常の方法に従って製造されうる。例えば、上記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、約150~約250℃で、約5~約10時間加熱し、上記酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応を実施することにより、ポリエステルポリオールを製造することができる。
【0147】
上記ポリエステル樹脂のカルボキシル基は、必要に応じて前述の塩基性物質を用いて中和することができる。
【0148】
ポリエステル樹脂は、水酸基を含有することが望ましく、水分散性又は他成分との相溶性、形成される塗膜の硬化性等の観点から、一般に20~200mgKOH/g、特に20~150mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。また、ポリエステル樹脂は、一般に100mgKOH/g以下、特に70mgKOH/g以下の範囲内の酸価を有することが好ましい。
【0149】
低分子量ポリオール(B-3)
また、分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物として低分子量ポリオール(具体的には分子量2,000以下)を使用してもよい。
低分子量ポリオール(B-3)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,1,1-トリメチロールプロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール等を挙げることができる。
【0150】
このような低分子量ポリオールは、汎用品として知られているものであり、安価で入手することができる。
【0151】
上記化合物(A)とポリオール(B)との混合比は特に限定されるものではないが、具体的には例えば、(A):(B)=10:1~1:10(官能基数比)の範囲内とすることができる
【0152】
(エステル交換触媒(C))
本発明の熱硬化型樹脂組成物は、エステル交換触媒(C)を含有するものである。すなわち、エステル基と水酸基との間のエステル交換反応を効率よく生じさせ、充分な熱硬化性を得るために、エステル交換触媒(C)を配合する。
【0153】
上記エステル交換触媒(C)としては、エステル交換反応を活性化させることができるものとして公知の任意の化合物を使用することができる。
具体的には、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、燐酸又はスルホン酸、ヘテロポリ酸などのような種々の酸性化合物;LiOH、KOH又はNaOH、アミン類、ホスフィン類などのような種々の塩基性化合物;PbO、酸化マグネシウム、酢酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マンガン、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸パラジウム、アルミニウムイソプロピレート、ジルコニウムアセチルアセトナート、塩化鉄、塩化コバルト、塩化パラジウム、ジチオカルバミン酸亜鉛、三酸化アンチモン、テトライソプロピルチタネート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、モノブチル錫酸、トリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウムまたはトリフルオロメタンスルホン酸スカンジウムなどのような種々の金属化合物;テトラメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムメチルカルボナートなどの4級アンモニウム塩等、テトラブチルホスホニウムブロミド、水酸化テトラブチルホスホニウムなどのホスホニウム塩等、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7などの強塩基等を挙げることができる。また、光や熱によって酸を発生させる光応答性触媒、熱潜在性触媒も使用することができる。更に、亜鉛クラスター触媒(例えば、東京化成工業株式会社製のZnTAC24(商品名)等を使用することもできる。
更に、上述した化合物のうち、2種以上を併用して使用するものであってもよい。
【0154】
本発明の水性熱硬化性樹脂組成物においては、アルカリ金属以外の金属を含有する金属化合物及び塩基性触媒からなる群より選択される少なくとも1の化合物を触媒として使用することがより好ましい。更には触媒の一部として、アルカリ金属以外の金属を含有する金属化合物を使用することが最も好ましい。本発明の水性熱硬化性樹脂組成物においては、金属化合物が触媒活性という観点において特に優れるものとなる。また水不溶性の触媒については、分散体にしても良いし、水溶性溶剤に溶かし添加しても良い。特に、1級、2級のアルキルエステル基を有する水性熱硬化性樹脂組成物において、この傾向が顕著である。
有機リン化合物、尿素、アルキル化尿素、チオ尿素、アルキル化チオ尿素、スルホキシド化合物、第4級アンモニウム化合物、第4級ホスホニウム化合物、及び、ピリジン,キノリン,イソキノリン,フェナントロリン、イミダゾール化合物及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1の化合物(C-2)を含有することが好ましい。以下、これらの化合物について詳述する。
【0155】
上記有機リン化合物としては特に限定されず、例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、亜ホスホン酸、有機ホスフィンオキシド、有機ホスフィン化合物並びにこれらの種々のエステル、アミド及び塩を挙げることができる。エステルは、アルキル、分岐アルキル、置換アルキル、二官能性アルキル、アルキルエーテル、アリール、及び置換アリールのエステルであってよい。アミドは、アルキル、分岐アルキル、置換アルキル、二官能性アルキル、アルキルエーテル、アリール、及び置換アリールのアミドであってよい。
【0156】
これらのなかでも、ホスホン酸エステル、リン酸アミド及び有機ホスフィンオキシド化合物からなる群より選択される少なくとも1の化合物であることが特に好ましい。これらの有機リン化合物を使用すると、エステル交換触媒機能が最も良好なものとなる。さらに具体的には、トリフェニルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリシクロヘキシルホスフィンオキシドなどの、有機ホスフィンオキシド化合物;ヘキサメチルリン酸トリアミド、トリス(N,N-テトラメチレン)リン酸トリアミド等のリン酸アミド化合物、トリフェニルホスフィンスルフィド、トリブチルホスフィンスルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド等の有機ホスフィンスルフィド化合物、等を好適に使用することができる。
【0157】
上記アルキル化尿素としては、特に限定されず、尿素、ジメチル尿素、ジメチルプロピレン尿素等を挙げることができる。なお、ジメチルプロピレン尿素等のように、環状構造を有するものであってもよい。
【0158】
上記アルキル化チオ尿素としては、特に限定されず、ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素等を挙げることができる。
上記スルホキシド化合物としては、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等を挙げることができる。
【0159】
上記第4級アンモニウム化合物としては、下記一般式(i)で表される化合物が好適に用いられる。
【化26】
(ただし、式(i)中、R41~R44は、それぞれ独立して、1価の炭化水素基、または反応に不活性な官能基が結合した1価の炭化水素基を表し、Y1-は、1価の陰イオンを表す。)
【0160】
R41~R44が炭化水素基である場合、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基などが挙げられ、アルキル基、アリール基が好ましい。R41~R44の各炭素原子数は、1~100が好ましく、4~30がより好ましい。R41~R44は、それぞれ同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。
【0161】
R41~R44が、反応に不活性な官能基が結合した1価の炭化水素基である場合の官能基は、反応条件に応じて適宜選択されるが、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ニトリル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシル基などが挙げられる。
【0162】
上記式(i)における第4級アンモニウム(R41R42R43R44N+)としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ-n-プロピルアンモニウム、テトラ-n-ブチルアンモニウム、メチルトリ-n-オクチルアンモニウム、n-ドデシルトリメチルアンモニウム、n-ドデシルトリ-n-ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、セチルベンジルジメチルアンモニウム、トリメチル-2-ヒドロキシエタンアミニウム、セチルピリジニウム、n-ドデシルピリジニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、フェニルトリエチルアンモニウム、N-ベンジルピコリニウム、ペンタメトニウム、ヘキサメトニウムなどが挙げられる。
【0163】
上記一般式(i)におけるY1-としては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、硫酸水素イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオンなどが挙げられ、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、水酸化物イオン、酢酸イオンが好ましく、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、水酸化物イオンがより好ましく、塩素イオンまたは臭素イオンがさらに好ましい。
【0164】
上記一般式(i)で表される化合物としては、汎用性および反応性の観点から、下記第4級アンモニウム(R41R42R43R44N+)と、下記Y1-との組合せが好ましい。
第4級アンモニウム(R41R42R43R44N+):テトラメチルアンモニウム、テトラ-n-ブチルアンモニウム、n-ドデシルトリメチルアンモニウム、n-ドデシルトリ-n-ブチルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリメチル-2-ヒドロキシエタンアミニウム。
Y1-:フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン。
【0165】
第4級アンモニウム化合物としては、反応性、工業的入手容易さや価格、扱いやすさ等の点から、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド、テトラ-n-ブチルアンモニウムヨージド、テトラ-n-ブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート、n-ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n-ドデシルトリ-n-ブチルアンモニウムブロミド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチル-2-ヒドロキシエタンアミニウムクロリド(コリンクロリド)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0166】
第4級ホスホニウム化合物としては、
下記一般式(ii)で表される化合物が挙げられる。
【化27】
(ただし、式(ii)中、R
51~R
54は、それぞれ独立して、1価の炭化水素基を表し、Y
2-は、1価の陰イオンを表す。R
51~R
54は、それぞれ同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。)
【0167】
R51~R54における炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基などが挙げられ、アルキル基、アリール基が好ましい。
【0168】
上記一般式(ii)における第4級ホスホニウム(R51R52R53R54P+)としては、テトラエチルホスホニウム、テトラ-n-ブチルホスホニウム、エチルトリ-n-オクチルホスホニウム、セチルトリエチルホスホニウム、セチルトリ-n-ブチルホスホニウム、n-ブチルトリフェニルホスホニウム、n-アミルトリフェニルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムなどが挙げられる。
【0169】
上記第4級ホスホニウム化合物としては、反応性、工業的入手容易さの点から、テトラ-n-ブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムクロリドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0170】
Y2-としては、塩素イオン、フッ素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、硫酸水素イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオンなどが挙げられ、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、水酸化物イオンが好ましい。
【0171】
上記イミダゾール化合物としては、下記一般式で表される化合物が好適である。
【化28】
(式中、Rは枝分かれ構造もしくは環構造を有していてもよい炭素数10以下のアルキル基、アルケニル基または芳香族置換基である。)
上記一般式で表される化合物として、具体的には、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、1-ビニルイミダゾール等が挙げられる。
中でも、1-メチルイミダゾールが、製造コストの点で好ましい。
【0172】
上記ピリジン誘導体としては、ジメチルアミノピリジン、キノリン、イソキノリン、ニコチン酸エステル等を挙げることができる。
【0173】
上記キノリン誘導体としては、8-ヒドロキシキノリン、2-メチル-8-キノリノール等を挙げることができる。
【0174】
エステル交換触媒は、化合物(C-1)と化合物(C-2)とを(C-1):(C-2)=100:1~1:100(重量比)の割合で含有することが好ましい。このような割合で配合することで、特に好適な結果を得ることができる。上記下限は、50:1であることがより好ましく、10:1であることがさらに好ましい。上記上限は、1:50であることがより好ましく、1:10であることがさらに好ましい。
【0175】
上記化合物(C-1)は、反応を生じさせる際の反応系中の反応に関与する化合物の量に対して、0.01~50重量%の割合で含有させることが好ましい。
上記化合物(C-2)は、反応を生じさせる際の反応系中の反応に関与する化合物の量に対して、0.01~50重量%の割合で含有させることが好ましい。
【0176】
本発明の樹脂組成物においては、エステル交換触媒(C)として、(1)ジルコニウム化合物を使用する、(2)上記化合物(C-1)及び化合物(C-2)を使用する、という方法によって、上述した物性を特に好適に得ることができる点で好ましいものである。
上記(1)、(2)のエステル交換触媒を使用し、樹脂組成として特にエステル交換反応性が高いものを選択して使用すると、硬化開始温度が130℃以下であり、150℃以下30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上であるという性質を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0177】
-COOR(Rは、炭素数50以下のアルキル基)及び水酸基を有する樹脂成分(A)(B)、及び、エステル交換触媒(C)としての上記(2)のエステル交換触媒を含有する熱硬化性樹脂組成物も本発明の一つである。
【0178】
更に、亜鉛アセチルアセトネートをエステル交換触媒として使用し、樹脂組成として特にエステル交換反応性が高いものを選択して使用すると、硬化開始温度が100℃以下であり、100℃以下30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上であるという性質を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0179】
上記エステル交換触媒(C)の使用量は、樹脂成分(A)(B)の重量の合計に対して、0.01~50重量%であることが好ましい。このような範囲内のものとすることで、良好な硬化反応を低温で行うことができる点で好ましい。
【0180】
また、上記熱硬化性樹脂組成物を、水性の組成物とする場合、このような金属化合物触媒は、水溶性の化合物あるいは、水溶性の分散体あるいは乳化物であることが好ましい。
以上の観点から、本発明において好適に使用することができる、水溶性の金属化合物触媒としては特に限定されず、テトラメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムメチルカルボナート、酢酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7、ジブチル錫ジラウレート等を挙げることができる。
【0181】
本発明の熱硬化性組成物は、上記(A)(B)(C)の成分に加えて、更に、塗料や接着剤の分野において一般的に使用されるその他の架橋剤を併用して使用するものであってもよい。使用できる架橋剤としては特に限定されず、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シラン化合物等を挙げることができる。また、ビニルエーテル、アニオン重合性単量体、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体等を併用するものであってもよい。これらの併用した架橋剤の反応を促進させるための硬化剤を併用するものであってもよい。
【0182】
なお、上述したその他架橋剤は必須ではなく、本発明の熱硬化性樹脂組成物はこれを含有しないものであっても、良好な硬化性を得ることができる点で好ましいものである。
【0183】
上記架橋剤がポリイソシアネート化合物及び/又はメラミン樹脂である場合、樹脂成分(A)と架橋剤との合計量に対する配合量(すなわち、(架橋剤量)/(架橋剤量+樹脂成分量)が0.01~50重量%であることが好ましい。このような配合量の範囲であることで、エステル交換反応による硬化反応と他の硬化剤による硬化反応とを同時に生じさせるという点で好ましい。
上記下限は、0.01重量%であることがより好ましく、1重量%であることが更に好ましい。上記上限は、30重量%であることがより好ましく、20重量%であることが更に好ましい。
【0184】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、水性熱硬化性樹脂組成物であっても、溶剤系熱硬化性樹脂組成物であってもよい。さらに、粉体塗料等の固体の性状を有する熱硬化性樹脂組成物であってもよい。
【0185】
熱硬化性塗料として使用する場合は、上述した各成分以外に、塗料分野において一般的に使用される添加剤を併用するものであってもよい。例えば、レベリング剤、消泡剤、反応性希釈剤、非水分散型塗料(NAD)、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等、顔料分散剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、UV吸収剤、並びにそれらの任意の組み合わせを併用してもよい。
【0186】
顔料を使用する場合、樹脂成分の合計固形分100重量%を基準として、好ましくは合計で1~500重量%の範囲で含むことが好ましい。上記下限はより好ましくは3重量%であり、更に好ましくは5重量部である。上記上限はより好ましくは400重量%であり、更に好ましくは300重量%である。
【0187】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0188】
上記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられ、硫酸バリウム及び/又はタルクが好ましく、そして硫酸バリウムがより好ましい。
【0189】
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウム及びリーフィング型アルミニウムが含まれる。
【0190】
上記着色顔料は、顔料分散樹脂により分散された状態で、水性熱硬化性樹脂組成物に配合されることが好ましい。着色顔料の量は、顔料の種類等によって変化しうるが、一般には、顔料分散樹脂中に含まれる樹脂成分の固形分100質量部に対して、好ましくは約0.1~約300質量部、そしてより好ましくは約1~約150質量部の範囲内である。
【0191】
上記熱硬化性塗料は、所望により、有機溶剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤、分散剤、色分かれ防止剤、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、基材湿潤剤、スリップ剤等の塗料用添加剤をさらに含有するものであってもよい。
【0192】
上記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、上記疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着する、上記疎水性部分同士が会合する等により増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニック(登録商標)ポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0193】
上記ポリアクリル酸系増粘剤は市販されており、例えば、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLASE-60」、「ACRYSOLTT-615」、「ACRYSOLRM-5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0194】
また、上記会合型増粘剤は市販されており、例えば、ADEKA社製の「UH-420」、「UH-450」、「UH-462」、「UH-472」、「UH-540」、「UH-752」、「UH-756VF」、「UH-814N」(以上、商品名)、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLRM-8W」、「ACRYSOLRM-825」、「ACRYSOLRM-2020NPR」、「ACRYSOLRM-12W」、「ACRYSOLSCT-275」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0195】
上記顔料分散樹脂としては、アクリル系顔料分散樹脂を使用することが好ましい。より具体的には、例えば、重合性不飽和モノマーを、親水性有機溶剤の存在下で、重合開始剤により重合することにより得られたアクリル樹脂を挙げることができる。
【0196】
上記重合性不飽和モノマーとしては、上述した樹脂の合成において例示した化合物を挙げることができ、適宜組み合わせて用いられうる。
上記顔料分散樹脂は、水に溶解するか、又は分散できる樹脂であることが好ましく、具体的には、好ましくは10~100mgKOH/g、そしてより好ましくは20~70mgKOH/gの水酸基価と、好ましくは10~80mgKOH/g、そしてより好ましくは20~60mgKOH/gの酸価とを有する。
【0197】
上記重合に用いられる上記親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系有機溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノtert-ブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル系有機溶剤;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert-ブチルエーテル等のジエチレングリコールエーテル系有機溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のジプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3-メトキシブチルアセテート等のエステル系有機溶剤等、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0198】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を適用することができる被塗物としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器、等の家庭電気製品、建築材料、家具、接着剤、フィルムやガラスのコーティング剤等、様々な例を挙げることができる。また、高温短時間硬化によって塗膜を形成するプレコートメタル、金属缶への塗装を挙げることもできる。更に、電着塗料、接着剤、パーティクルボード等への使用も挙げることができる。
【0199】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、複層塗膜の形成に使用することもできる。複層塗膜の中でも、ウェットオンウェットによる多層塗膜の形成においても好適に使用することができる。
ウェットオンウェット方式は、第1の塗膜層を形成した後、乾燥のみで硬化を生じさせないまま第2の塗膜層を塗装し、複数の塗膜層を同時に加熱硬化するものを意味する。3層以上の塗膜層をこのような方法で形成することもできる。
【0200】
このようなウェットオンウェットによる複層塗膜の形成においては層間で塗膜成分の移行が生じる。このため、層中に含まれる成分が他の層に溶出して硬化性に悪影響を与える場合がある。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、反応性が良好であり、他の成分による悪影響を受けにくいことから、ウェットオンウェットによる複層塗膜の形成に好適に使用することができる。
【0201】
ウェットオンウェット塗装の汎用されている方法として、水性ベース塗料を第1層とし、溶剤系クリヤー塗料を第2層とする方法が挙げられる。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、第1層、第2層の両方において使用するものであってもよいし、これらのうち、一方の層においてのみ使用するものであってもよい。
【0202】
上記水性熱硬化性樹脂組成物は、電着塗料組成物として使用することもできる。電着塗料としては、カチオン電着塗料とアニオン電着塗料とを挙げることができるが、これらのいずれとすることもできる。
【0203】
上記被塗物は、上記金属材料及びそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、また、塗膜を有する被塗物であってもよい。
上記塗膜を有する被塗物としては、基材に所望により表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの等を挙げることができる。特に、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が好ましく、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体がより好ましい。
【0204】
上記被塗物は、上記プラスチック材料、それから成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望により、表面処理、プライマー塗装等がなされたものであってもよい。また、上記プラスチック材料と上記金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
【0205】
上記水性熱硬化性樹脂組成物の塗装方法としては、特に制限されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等が好ましい。塗装に際して、所望により、静電印加してもよい。上記塗装方法により、上記水性塗料組成物からウェット塗膜を形成することができる。
【0206】
上記ウェット塗膜は、加熱することにより硬化させることができる。当該硬化は、公知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉により実施することができる。上記ウェット塗膜は、好ましくは約80~約180℃、より好ましくは約100~約170℃、そしてさらに好ましくは約120~約160℃の範囲の温度で、好ましくは約10~約60分間、そしてより好ましくは約15~約40分間加熱することにより硬化させることができる。また、80~140℃での低温硬化にも対応することができる点で好ましいものである。
【0207】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ウェットオンウェットでの複層塗膜形成方法に使用することもできる。この場合、本発明の熱硬化性樹脂組成物からなる塗料を塗装した後、硬化を行わない状態でその上に別の塗料組成物を塗装し、これらの2層の塗膜を同時に焼き付けることによって複層塗膜を形成する方法等を挙げることができる。また、このような塗装方法においては、2層又は3層以上の複層塗膜として、そのうち少なくとも1の層を本発明の水性熱硬化性樹脂組成物によって形成するものであってもよい。
【0208】
このような複層塗膜の形成に本発明の熱硬化性樹脂組成物を使用する場合、組み合わせて使用する塗料は、水系であってもよいし、溶媒系であってもよい。更に、その硬化系は、上述したようなエステル交換反応による硬化系であってもよいし、メラミン硬化、イソシアネート硬化等のその他の硬化系であってもよい。
【0209】
なお、本発明の水性熱硬化性樹脂組成物は、塗料分野において使用する場合は平滑性や耐水性・耐酸性等の性能を有する充分な硬化性能が必要とされる。
一方、接着剤や粘着剤等の分野において使用する場合は、塗料において要求されるほどの高い硬化性能は必要とされない。本発明の水性熱硬化性樹脂組成物は、塗料として使用できるレベルのものとすることが可能であるが、このような水準に到達しない組成物であっても、接着剤や粘着剤等の分野においては使用できる場合がある。
【0210】
本発明は、上述した熱硬化型樹脂組成物を三次元架橋することによって形成されたことを特徴とする硬化膜である。
このような硬化膜は、塗料・接着剤として使用することができるような充分な性能を有したものである。
上記硬化膜は、上述した複層塗膜の形成方法によって形成された硬化膜も包含するものである。
【実施例0211】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。実施例中、「部」「%」とある場合は、特に限定のない限りは、「重量部」「重量%」をあらわす。
【0212】
合成例1
還流可能な4つ口フラスコにマロン酸88部、水酸化カリウム95部、トルエン223部を入れ、常温で撹拌しながらマロン酸二カリウムの合成を行った。その後トリエチルアミン9部、クロロ酢酸メチル190部を投入し、90℃で8時間反応した。反応終了後に水200部を入れ、析出した塩化カリウムを除去した。有機層を水200部で3度水洗した後に、減圧下で濃縮および蒸留を行うことでエステル化合物Aを得た。
【0213】
合成例2
合成例1のマロン酸88部をコハク酸100部に変更し、同様の実験操作でクロロ酢酸メチルとの反応物であるエステル化合物Bを得た。
【0214】
合成例3
合成例1のマロン酸88部をアジピン酸124部に変更し、同様の実験操作でクロロ酢酸メチルとの反応物であるエステル化合物Cを得た。
【0215】
合成例4
還流可能な4つ口フラスコにトリメリット酸無水物140部、トルエン310部、イオン交換水14部を入れ、80℃で1時間撹拌してトリメリット酸を合成した。その後水酸化カリウム115部を入れ、トリメリット酸三カリウムを合成した。またトリエチルアミン232部、クロロ酢酸メチル244部を入れ、90℃で10時間以上反応させた。反応終了後に水210部を入れ、析出した塩化カリウムを除去した。有機層を水200部で3度水洗した後に、減圧下で濃縮することでエステル化合物Dを得た。
【0216】
合成例5
還流可能な4つ口フラスコにアクリル酸カリウム183部、クロロ酢酸メチル150部、テトラメチルアンモニウムクロリド15部、トルエン348部を入れ、90℃で10時間反応させた。反応後に水300部を添加し、析出した塩化カリウムを除去した。水150部で3度水洗した後、減圧下で濃縮、蒸留することでモノマーAを得た。
【0217】
合成例6
還流可能な4つ口フラスコにシアヌル酸60部、テトラプロピルアンモニウムブロミド6部、モノマーA210部、ジメチルホルムアミド350部を入れ、100℃で10時間反応させた。反応終了後に有機層を水300部で3度水洗した後に、得られた有機層を減圧下で濃縮する事でエステル化合物Eを得た。
【0218】
合成例7
合成例6のモノマーA210部をアクリル酸メチル126部に変更し、同様の実験操作でシアヌル酸との反応物であるエステル化合物Fを得た。
【0219】
合成例8
還流可能な4つ口フラスコに1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン173部を入れ、常温で撹拌しながらモノマーA700部を滴下した。発熱が治まった後、常温で更に4時間以上反応させる事でエステル化合物Gを得た。
【0220】
合成例9
合成例8のモノマーA700部をアクリル酸メチル420部に変更し、同様の実験操作で1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンとの反応物であるエステル化合物Hを得た。
【0221】
合成例10
合成例1のマロン酸88部をニトリロ三酢酸108部に変更し、同様の実験操作でクロロ酢酸メチルとの反応物であるエステル化合物Iを得た。
【0222】
合成例11
合成例1のマロン酸88部をエチレンジアミン四酢酸124部に変更し、同様の実験操作でクロロ酢酸メチルとの反応物であるエステル化合物Jを得た。
【0223】
合成例12
合成例8の1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン173部を1,3-プロパンジアミン90部に変更し、同様の実験操作でモノマーAとの反応物であるエステル化合物Kを得た。
【0224】
合成例13
合成例8の1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン173部をヘキサメチレンジアミン141部に変更し、同様の実験操作でモノマーAとの反応物であるエステル化合物Lを得た。
【0225】
合成例14
合成例8の1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン173部をジエチレントリアミン100部に変更し、同様の実験操作でモノマーAとの反応物であるエステル化合物Mを得た。
【0226】
合成例15
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)40部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート50部、スチレン10部をモノマー混合液とし、開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株) パーオクタO)5部を酢酸ブチルに溶解し、開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコに酢酸ブチルを100部入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Aを得た。重量平均分子量は16,000、分散度は2.3であった。
【0227】
合成例16
合成例15のモノマー混合液をn-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)40部、4-ヒドロキシブチルアクリレート50部、スチレン10部に変更し、同様の実験操作でポリマー溶液Bを得た。重量平均分子量は11,000、分散度は2.2であった。
【0228】
なお、上記表中の塗膜評価方法は、以下の様な方法で行った。
【0229】
塗膜状態
焼付け後の塗膜を目視にて表面状態を観察した。
◎ : 光沢があり、表面状態が滑らかなもの
○ : 僅かにユズ肌が見られるもの
△ : ユズ肌、ワキが見られ、光沢が無いもの
× : 光沢が無く、表面の凹凸、ユズ肌、ワキが酷いもの
【0230】
ゲル分率
実施例で得られた塗膜について、ソックスレー抽出法によりアセトン還流中で30分間溶解を行い、塗膜の残存重量%をゲル分率として測定した。
ゲル分率は0~40%を実用に耐えられないものとして×とした。
ゲル分率は40~60%を一定の硬化が認められるものとして△とした。
ゲル分率は60~80%を実用に耐えるものとして○とした。
ゲル分率は80~100%を性能が優れているものとして◎とした。
【0231】
キシレンラビング
焼き付け後の塗板に、キシレンを染み込ませた薬方ガーゼで10回擦った。キシレンを乾燥後、表面状態を目視で観察した。
◎:全く変化が無かったもの
〇:僅かにキズが付いたもの
△:僅かに溶解したもの
×:表面が白化、溶解したもの
【0232】
剛体振り子試験器
エーアンドディ社製剛体振り子試験器(型番 RPT-3000W)を用いて、昇温速度3℃/分 で180℃まで昇温しその時の周期及び対数減衰率の変化を求めた。特に塗膜の硬化状態を確認するために用いた。
振り子:FRB-100
膜厚(WET):100μm
【0233】
硬化開始温度は、3℃/minの昇温条件で剛体振り子試験を実施した際の周期の減少開始温度を指し、
図1のようにして硬化開始点を測定することにより求めた値である。
【0234】
なお、本実施例中、重量平均分子量および分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した、ポリスチレン換算分子量の値である。カラムはGPC KF-804L(昭和電工(株)製)、溶剤はテトラヒドロフランを使用した。
結果を以下の表に示す。
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
上述した結果から明らかなように、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、良好な硬化性能を有することが明らかである。