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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055528
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】車両用衝撃吸収構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
B62D25/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162543
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栃木 祐介
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA31
3D203BB06
3D203BB12
3D203CA25
3D203CA33
3D203CA37
3D203CA52
3D203DB05
(57)【要約】
【課題】衝撃吸収部材の波板形状の稜線のエッジ部の方向を当該稜線の中央部位置の車幅方向からずらすことにより、側突時における衝撃吸収部材によるエネルギ吸収作用を確実に行わせる。
【解決手段】車両用衝撃吸収構造は、車両の前後方向に中空形状に形成されるサイドシル部材内に衝撃吸収部材22が、車両の側突時にエネルギ吸収作用をする構成として配設されている。衝撃吸収部材22は車両前後方向に波板形状に形成されて配設されている。波板形状は車両前後方向の所定の範囲におけるエッジ部26の線長L1と、当該エッジ部26以外の部位28における線長L2が異なる長さ構成となるように形成されており、波板形状のエッジ部26における稜線24の方向が車幅方向からずれて傾斜した方向として形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に中空形状に形成されるサイドシル部材内に、車両の側突時にエネルギ吸収作用をする衝撃吸収部材が配設された構成の車両用衝撃吸収構造であって、
前記衝撃吸収部材は車両前後方向に波板形状に形成されて配設されており、前記波板形状は車両前後方向の所定の範囲におけるエッジ部の線長と、当該エッジ部以外の部位における線長が異なる長さ構成となるように形成されており、前記波板形状のエッジ部における稜線の方向が車幅方向からずれて傾斜した方向とされて形成されている、車両用衝撃吸収構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用衝撃吸収構造であって、
前記エッジ部の線長L1と、当該エッジ部以外の部位における線長L2の関係が、L1<L2とした構成に前記衝撃吸収部材の波板形状が形成されており、前記波板形状の稜線のエッジ部における端部構成が巻き込み形状のR形状に形成されている、車両用衝撃吸収構造。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用衝撃吸収構造であって、
前記エッジ部の線長L1と、当該エッジ部以外の部位における線長L2の関係が、L1<L2とした構成に前記衝撃吸収部材の波板形状が形成されており、前記波板形状の稜線のエッジ部における端部構成が傾斜面状に形成されている、車両用衝撃吸収構造。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用衝撃吸収構造であって、
前記エッジ部の線長L1と、当該エッジ部以外の部位における線長L2の関係が、L1<L2とした構成に前記衝撃吸収部材の波板形状が形成されており、車両前後方向の2本の稜線間のエッジ部の形状が当該稜線間の全面に亘って傾斜面形状に形成されている、車両用衝撃吸収構造。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用衝撃吸収構造であって、
前記エッジ部の線長L1と、当該エッジ部以外の部位における線長L2の関係が、L1>L2とした構成に前記衝撃吸収部材の波板形状が形成されており、前記エッジ部が全長に亘って拡張方向に拡張形成されている、車両用衝撃吸収構造。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかの請求項に記載の車両用衝撃吸収構造であって、
前記波板形状の車両上下方向に配設される縦壁に、ビードが車両上下方向に形成されている、車両用衝撃吸収構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用衝撃吸収構造に関する。詳細には、車両の側面衝突(側突)時における衝撃荷重を効果的に吸収するための車両用衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、特に電気自動車においては、車両のフロア下に電池を格納する構成がとられる。そして、この電池を車両衝突時における衝撃作用から保護するための衝撃吸収構造がとられる。特に、衝撃吸収構造は、電池が車両中央部のフロア下に配置されることから、車両の側部からの衝突衝撃作用に対する衝撃吸収構造が重要となっている。
【0003】
車両の側部からの衝突衝撃作用に対する衝撃吸収構造は、通常、電池が下部に配置されるフロアと、自動車の側面ドアとの間に配設される車両骨格部材のサイドシル部材(「ロッカー部材」とも称される)で行われる構成となっている。サイドシル部材は車両の前後方向に中空形状に形成された構成となっており、内部に衝撃吸収部材が配設されて、側突時におけるエネルギ吸収作用を強力に行うようになっている。
【0004】
サイドシル部材内に配設される衝撃吸収部材は、車両前後方向に長尺形状に形成されて配設されている。長尺形状は、詳細には、車両前後方向の断面形状で見て波板形状の部材が延設して配設された形態となっている。この波板形状により車両幅方向から作用する衝撃荷重に対して強度を強化させて、衝撃吸収部材の変形に伴うエネルギ吸収作用を強力に行うようにしている(特許文献1参照)。
【0005】
なお、車両の側部からの衝撃作用に対する衝撃吸収構造におけるエネルギ吸収作用の評価試験は、一般的に、自動車等車両の側面部と、この側面部に対して立設させた円柱状のポールとを衝突させることにより行っている。これを通常「ポール側突試験」と称している。そして、このポール側突試験において所定の評価を得ることが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-146973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した衝撃吸収構造における波板形状の衝撃吸収部材にあっては、波板形状を形成する稜線方向が車幅方向となっており、当該稜線のエッジ部の配設方向もその延長線上の同じ車幅方向の向きとなっている。このため、前述のポール衝突試験においては、ポールと波板形状の稜線のエッジ部とが反対方向の真正面から衝突する関係となり、波板形状の稜線のエッジ部から避けを生じて、波板形状の稜線部が破断するおそれがある。
【0008】
波板形状に避けや破断が生じる場合には、波板形状に形成してエネルギ吸収作用を強力に行うようにした衝撃吸収部材の狙いが確実に発揮されないおそれがある。
【0009】
而して、本発明は上述した点に鑑みて創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、衝撃吸収部材の波板形状の稜線のエッジ部の方向を当該稜線の中央部位置の車幅方向からずらすことにより、側突時における衝撃吸収部材によるエネルギ吸収作用を確実に行わせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る車両用衝撃吸収構造は、次の手段をとる。
【0011】
本発明の第1の発明は、車両の前後方向に中空形状に形成されるサイドシル部材内に、車両の側突時にエネルギ吸収作用をする衝撃吸収部材が配設された構成の車両用衝撃吸収構造であって、前記衝撃吸収部材は車両前後方向に波板形状に配設されており、前記波板形状は車両前後方向の所定の範囲におけるエッジ部の線長と、当該エッジ部以外の部位における線長が異なる長さ構成となるように形成されており、前記波板形状のエッジ部における稜線の方向が車幅方向からずれて傾斜した方向とされて形成されている、車両用衝撃吸収構造である。
【0012】
本発明の第2の発明は、上述した第1の発明の車両用衝撃吸収構造であって、前記エッジ部の線長L1と、当該エッジ部以外の部位における線長L2の関係が、L1<L2とした構成に前記衝撃吸収部材の波板形状が形成されており、前記波板形状の稜線のエッジ部における端部構成が巻き込み形状のR形状に形成されている、車両用衝撃吸収構造である。
【0013】
本発明の第3の発明は、上述した第1の発明の車両用衝撃吸収構造であって、前記エッジ部の線長L1と、当該エッジ部以外の部位における線長L2の関係が、L1<L2とした構成に前記衝撃吸収部材の波板形状が形成されており、前記波板形状の稜線のエッジ部における端部構成が傾斜面状に形成されている、車両用衝撃吸収構造である。
【0014】
本発明の第4の発明は、上述した第1の発明の車両用衝撃吸収構造であって、前記エッジ部の線長L1と、当該エッジ部以外の部位における線長L2の関係が、L1<L2とした構成に前記衝撃吸収部材の波板形状が形成されており、車両前後方向の2本の稜線間のエッジ部の形状が当該稜線間の全面に亘って傾斜面形状に形成されている、車両用衝撃吸収構造である。
【0015】
本発明の第5の発明は、上述した第1の発明の車両用衝撃吸収構造であって、前記エッジ部の線長L1と、当該エッジ部以外の部位における線長L2の関係が、L1>L2とした構成に前記衝撃吸収部材の波板形状が形成されており、前記エッジ部が全長に亘って拡張方向に拡張形成されている、車両用衝撃吸収構造である。
【0016】
本発明の第6の発明は、上述した第1の発明から第5の発明のいずれかの発明の車両用衝撃吸収構造であって、前記波板形状の車両上下方向に配設される縦壁に、ビードが車両上下方向に形成されている、車両用衝撃吸収構造である。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明の手段によれば、衝撃吸収部材の波板形状の稜線のエッジ部の方向を当該稜線の中央部位置の車幅方向からずらすことができて、側突時における衝撃吸収部材によるエネルギ吸収作用を確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の車両用衝撃吸収構造の断面構成を模式的に示し、ポールが配置されたポール側突試験状態を示す配置図である。
図2】衝撃吸収部材を内部に配設するサイドシル部材を車両幅方向に分解して示す分解斜視図である。
図3】第1実施形態の波板形状の衝撃吸収部材を示す斜視図である。
図4図3に示される衝撃吸収部材をIV矢視方向から視た側面図である。
図5】第1実施形態における衝撃吸収部材の側突時における変形状態を示す斜視図である。
図6】第1実施形態に対比して示す従来の波板形状の衝撃吸収部材を示す斜視図である。
図7図6に示す従来の衝撃吸収部材における側突時の変形状態を図5に対比して示す斜視図である。
図8】第2実施形態の波板形状の衝撃吸収部材を示す斜視図である。
図9】第3実施形態の波板形状の衝撃吸収部材を示す斜視図である。
図10】第4実施形態の波板形状の衝撃吸収部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかる車両用衝撃吸収構造の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、電気自動車の電池に対する側突時の車両用衝撃吸収構造についてである。なお、図の説明の方向表示におけるUPRは上方向を示し、OUTは自動車の室内から見た外方向を示し、FRは自動車の前方向を示す。したがって、UPRで示される方向が車両上下方向、OUTで示される方向が車両幅方向、FRで示される方向が車両前後方向である。
【0020】
〔車両用衝撃吸収構造の全体構成〕
図1は本実施形態が適用される車両用衝撃吸収構造10の全体構成の主要部の断面構成を模式的に示したものであり、ポール12が配置されたポール側突試験状態として示したものである。本実施形態は、電気自動車の電池14が電気自動車のフロア16の下部に配置された構成である。図1で見て、フロア16の右側の側部には、自動車の車体の骨格を形成するサイドシル部材18が配設されており、更に、その右側には側部ドア20(通常フロントドア)が配置されている。ポール側突試験におけるポール12は、更に、その右側位置に配置される。本実施形態では、ポール12に側部ドア20が衝突した場合に、側部ドア20と電池14との間の範囲S内で、衝突におけるエネルギ吸収作用がなされて、電池14を保護するようになっている。特に、サイドシル部材18においてエネルギ吸収作用がなされるようになっている。
【0021】
本実施形態では、サイドシル部材18内に衝撃吸収部材22を配設して、サイドシル部材18の位置において、強力に側突の衝撃吸収作用がなされる構成がとられている。サイドシル部材18は、図1で見て、右側に配置される外側サイドシル部材18Aと、左側に配置される内側サイドシル部材18Bが、いわゆるハット型断面形状に形成されており、両部材18A、18Bが重ね組合わされて構成されている。その結果、サイドシル部材18は中空形状に形成されており、この中空形状は車両の前後方向に配置される形態となっている。なお、衝撃吸収部材22の材質は、軸圧壊による変形によりエネルギ吸収作用を行うに適する鋼材とされている。
【0022】
図2はサイドシル部材18内に配設される衝撃吸収部材22の配設形態を、外側と内側のサイドシル部材18A、18Bを分解して示すものである。衝撃吸収部材22は車両前後方向の断面で見て波板形状に形成されており、車両前後方向に長尺状に配設されている。衝撃吸収部材22は側突時の車両幅方向からの衝撃作用により車両幅方向に変形して衝撃吸収作用のエネルギ吸収作用がなされる。この際、衝撃吸収部材22が波板形状に形成されて強度向上が図られていることから、衝撃吸収部材22によるエネルギ吸収作用が強力に行われる形態となっている。
【0023】
なお、衝撃吸収部材22の波板形状は、車両前後方向に長尺形状に配設されることから、複数の部材が連接して形成されている。しかし、可能であれば、一枚で形成しても良い。図2に示されるように、衝撃吸収部材22の内側端は、その上面と下面に配設された取付部材30により内側サイドシル部材18Bに位置決めされて固定されている。
【0024】
〔衝撃吸収部材22の第1実施形態〕
図3及び図4は波板形状の衝撃吸収部材22の第1実施形態を示す。図3は斜視図を示し、図4図3をIV矢視方向から視た側面図を示す。衝撃吸収部材22は車両前後方向に波板形状に形成されることから、車両幅方向に稜線24が形成される。説明の都合上、図3で見て、波板形状の上面に形成される2本の稜線を24a、24bとし、波板形状の下面に形成される2本の稜線を24c、24dとする。なお、本実施形態の稜線24は、波板形状の屈曲部が丸み形状で形成されていることから、所定の丸み幅を以って形成されている。
【0025】
本実施形態では、衝撃吸収部材22の波板形状は車両前後方向の所定の長さ範囲、例えば波板形状の一山分の長さ範囲における波板形状のエッジ部26の車両前後方向の形成線長L1と、当該エッジ部26以外の部位、例えば中央部位置28における車両前後方向の形成線長L2とが異なる長さとして構成される。なお、本実施形態で問題とするエッジ部26は、側突時に衝撃荷重が加わる図1で見て右端のエッジ部26である。
【0026】
第1実施形態では、波板形状のエッジ部26における車両前後方向の形成線長L1と、当該エッジ部26以外の部位、例えば中央部位置28における車両前後方向の形成線長L2の関係が、L1<L2とした構成に形成されている。これは、波板形状の稜線24におけるエッジ部26の形状が次のように形成されていることによる。すなわち、第1実施形態における稜線24a、24b、24c、24dの外側のエッジ部26a、26b、26c、26dの端部形状が巻き込み形状のR形状に形成されており、エッジ部26における稜線24の方向が車幅方向から傾斜した方向として形成されていることによる。
【0027】
なお、図3に示されるように、第1実施形態の衝撃吸収部材22の波板形状には、波板形状を形成する車両上下方向に配設される縦壁32と、車両前後方向に配設される平面壁34にはビード36、38が形成されている。縦壁32にはビード36が車両上下方向に形成されている。詳細には、ビード36は稜線24aと稜線24cとの間の縦壁32に設けられている。ビード36は図3に示される実施形態では2本設けられており、外側のエッジ部26から等間隔配置で2本が中央部位置までの間に設けられている。そして、ビード36は凹部形状として形成されている。
【0028】
平面壁34に形成されるビード38は、波板形状の上面34Uと底面34Lに形成されている。上面34Uに形成されるビード38は稜線24aと稜線24bとの間に車両前後方向に亘って形成されている。底面34Lに形成されるビード38は稜線24cと稜線24dとの間に車両前後方向に亘って形成されている。ビード38は波板形状の内側端部寄りの位置にそれぞれ1カ所設けられている。そして、ビード38は凸部形状として形成されている。
【0029】
〔第1実施形態の作用効果〕
次に、上述した第1実施形態の作用効果を説明する。従来構成の作用効果と比較するために、先ず、図6及び図7に示す従来構成の作用効果を説明する。図6に示すように、従来構成では、衝撃吸収部材22の波板形状の稜線24における外側のエッジ部26はストレート形状となっている。このため、側突時の衝撃荷重は、エッジ部26に真正面から加えられる関係となり、稜線24のエッジ部26が裂けて変形する。稜線24のエッジ部26が裂けて稜線24に破断が生じることにより、図7に示すように、波板形状の縦壁32と平面壁34はそれぞれ独自に変形して、エネルギ吸収作用がなされる。このように縦壁32と平面壁34が別個に変形してエネルギ吸収作用がなされる場合には、衝撃吸収部材22を波板形状としてエネルギ吸収作用を高めようとした狙いが充分に発揮されない。
【0030】
これに対して、図3及び図4に示す第1実施形態においては、側突時に衝撃荷重が加わる稜線24のエッジ部26a、26b、26c、26dの形状は、当該エッジ部26a~26dの端部形状が巻き込み形状のR形状に形成されている。その結果、エッジ部26a~26dにおける稜線24の方向が車幅方向から傾斜した方向として形成される。このため、従来のように側突時における衝撃荷重がエッジ部26a~26dに真正面から加えられることがなく、ずらされた関係で加えられる。これにより、従来生じていた稜線24のエッジ部26における裂けが阻止ないし抑制されて、衝撃荷重による軸圧壊は蛇腹形状40として変形して、エネルギ吸収作用が行われる。その変形状態が図5に示された状態である。第1実施形態における蛇腹形状40の変形は、縦壁32と平面壁34が一体状態で行われるため、衝撃吸収部材22を波板形状としてエネルギ吸収作用を高めようとした狙いが確実に発揮される。
【0031】
なお、第1実施形態によれば、車両用衝撃吸収構造10において同様のエネルギ吸収作用をなす構成部品との比較において、部品の軽量化と部品コストの低減を図ることが可能となる効果もある。
【0032】
なお、第1実施形態においては、図3に示されるように、衝撃吸収部材22の波板形状の縦壁32にビード36が形成されている。このビード36の形成位置を図5に示す蛇腹形状40が形成される位置とすることにより、側突時における衝撃荷重の蛇腹形状40の形成が確実に形成される。なお、図5においては、蛇腹形状40は一山しか示されていないが、衝撃荷重の大きさによっては二山形成される場合もある。そのため、図3に示されるビード36は2本形成されている。なお、図5の縦壁32のビードは省略されて図示されている。
【0033】
また、第1実施形態においては、図3に示されるように、衝撃吸収部材22の波板形状の平面壁34にビード38が形成されている。このビード38は、車幅方向に配設される稜線24の間隔の位置関係を、衝突荷重が加わった際においても車両前後方向に変形しないように保持する補強作用をなす。これにより、稜線24の位置関係も保持されて、エッジ部26のエネルギ吸収作用の軸圧壊も適正に行われて、確実なエネルギ吸収作用がなされる。なお、図5では平面壁34のビード38の図示は省略されている。
【0034】
〔第1実施形態以外の各種実施形態〕
以下、第1実施形態以外の各種実施形態を説明する。以下に説明する各実施形態おいては、上述した第1実施形態の構成内容と同じ個所には、同じ符号を付して示すことにより、その説明を省略する。
【0035】
〔第2実施形態〕
先ず、第2実施形態について説明する。第2実施形態は図8に示される。第2実施形態は、第1実施形態の場合と同様に、衝撃吸収部材22における波板形状は、波板形状のエッジ部26の形成線長L1と、当該エッジ部26以外の部位における形成線長L2の関係が、L1<L2とした構成とされている。そして、図8に示されるように、波板形状の稜線24のエッジ部26a、26bの端部構成が傾斜面状に形成されている。これにより、稜線24のエッジ部26の方向は、第1実施形態の場合と同様に、当該エッジ部26以外の稜線方向の車幅方向に対してずれた方向となる。図8で見た場合には、エッジ部26a、26bの傾斜面状は下向きに形成されている。その結果、側突時における衝撃荷重の作用方向とはずれた方向となり、側突時における稜線24のエッジ部26からの裂けを阻止ないし抑制することができる。その結果、稜線24の破断も阻止ないし抑制されて、側突時における衝撃吸収部材22によるエネルギ吸収作用が確実に行われる。なお、図8では、エッジ部26の傾斜面状の図示は2ヵ所のエッジ部26a、26bしか図示されていないが、その他のエッジ部26にも、同様に形成されている。その詳細図示は省略されている。
【0036】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は図9に示される。第3実施形態も、前述した第1実施形態及び第2実施形態の場合と同様に、衝撃吸収部材22における波板形状は、波板形状のエッジ部26の形成線長L1と、当該エッジ部26以外の部位における形成線長L2の関係が、L1<L2とした構成とされている。そして、図9に示されるように、車両前後方向の2本の稜線24a、24b間の外側のエッジ部26Xの形状が当該稜線24a、24b間の全面に亘って傾斜面形状に形成されている。これにより、稜線24a、24bのエッジ部26の方向は、第1実施形態の場合と同様に、当該エッジ部以外の稜線方向の車幅方向に対して異なった方向となっている。図9で見た場合には、傾斜面状は下向きに形成されている。その結果、側突時における衝撃荷重の作用方向とはずれた方向となり、側突時における稜線24のエッジ部26からの裂けを阻止ないし抑制することができる。その結果、稜線24の破断も阻止ないし抑制されて、側突時における衝撃吸収部材22によるエネルギ吸収作用が確実に行われる。なお、図9では、エッジ部26Xの傾斜面形状の図示は1ヵ所のしか図示されていないが、その他のエッジ部26も同様に形成されている。その詳細図示は省略されている。
【0037】
〔第4実施形態〕
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態は図10に示される。第4実施形態の衝撃吸収部材22の波板形状は、エッジ部26の形成線長L1と、当該エッジ部26以外の部位における形成線長L2の関係が、L1>L2とした構成とされている。そして、図10に示されるように、エッジ部26が全長に亘って拡張方向に拡張形成されている。この第4実施形態においては、稜線24のエッジ部26の方向は当該エッジ部26以外の稜線方向の車幅方向に対して異なった方向となっている。図10で見た場合には、傾斜面状は下向きに形成されている。これにより、この第4実施形態においても、第1実施形態の場合と同様に、側突時における衝撃荷重の作用方向とはずれた方向となり、側突時における稜線24のエッジ部26からの裂けを阻止ないし抑制することができる。その結果、稜線24の破断も阻止ないし抑制されて、側突時における衝撃吸収部材22によるエネルギ吸収作用が確実に行われる。
【0038】
〔その他の実施形態〕
以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明は、その他各種の形態でも実施できる。
【0039】
例えば、上述した実施形態は、電気自動車の電池に対する側突時の車両用衝撃吸収構造10の場合であったが、電気自動車以外の車両用衝撃吸収構造10にも適用可能である。
【0040】
また、上述した第1実施形態では、衝撃吸収部材22の波板形状の縦壁32と平面壁34にビード36、38を形成したが、このビード36、38は必ずしも設定する必要はない。ただ、設定することにより軸圧壊による蛇腹形状40を確実に形成することができて、エネルギ吸収作用をより確実に行わせることができる。
【0041】
また、上述した第1~第4の実施形態におけるエッジ部26の構成を組合せた実施形態とすることもできる。
【0042】
〔「課題を解決するための手段」に記載した各発明の作用効果〕
なお、最後に上述の「課題を解決するための手段」における各発明に対応する上記実施形態の作用効果を付記しておく。
【0043】
先ず、第1の発明によれば、サイドシル部材内に配設される衝撃吸収部材の波板形状は車両前後方向の所定の範囲におけるエッジ部の線長と、当該エッジ部以外の部位における線長が異なる長さ構成となるように形成されている。その結果、波板形状のエッジ部における稜線の方向が車幅方向からずれた傾斜した方向となる。すなわち、衝撃吸収部材の波板形状の稜線のエッジ部の方向が、当該稜線の中央部位置の車幅方向から向きを変えた方向となる。これにより、側突時における衝撃作用方向とはずれた方向となり、側突時における稜線のエッジ部の裂けを阻止ないし抑制することができて、稜線の破断を阻止ないし抑制することができる。その結果、波板形状による側突時における衝撃吸収部材によるエネルギ吸収作用が確実に行われる。
【0044】
次に、第2の発明から第4の発明によれば、第1の発明におけるエッジ部の線長L1と、当該エッジ部以外の部位における線長L2の関係が、L1<L2とした構成に波板形状が形成される。そして、第2の発明は、波板形状の稜線のエッジ部における端部構成が巻き込み形状のR形状に形成される。第3の発明は、波板形状の稜線のエッジ部における端部構成が傾斜面状に形成される。第4の発明は、車両前後方向の2本の稜線間のエッジ部の形状が当該稜線間の全面に亘って傾斜面形状に形成される。これにより、稜線のエッジ部の方向は当該エッジ部以外の稜線方向に対して下向きの方向となる。その結果、第1の発明と同様に、側突時における衝撃作用方向とはずれた方向となり、側突時における稜線のエッジ部の裂けを阻止ないし抑制することができて、稜線の破断を阻止ないし抑制することができる。その結果、波板形状による側突時における衝撃吸収部材によるエネルギ吸収作用が確実に行われる。
【0045】
次に、第5の発明によれば、第1の発明におけるエッジ部の線長L1と、当該エッジ部以外の部位における線長L2の関係が、L1>L2とした構成に波板形状が形成される。そして、第5の発明においては、エッジ部が全長に亘って拡張方向に拡張形成される。その結果、稜線のエッジ部の方向は当該エッジ部以外の稜線方向に対して上向きの方向となる。これにより、前述した各発明と同様に、側突時における衝撃作用方向とはずれた方向となり、側突時における稜線のエッジ部の裂けを阻止ないし抑制することができて、稜線の破断を阻止ないし抑制することができる。その結果、波板形状による側突時における衝撃吸収部材によるエネルギ吸収作用が確実に行われる。
【0046】
次に、第6の発明によれば、衝撃吸収部材の波板形状における車両上下方向に配設される縦壁には、ビードが車両上下方向に形成される。前述した各本発明によれば側突時における稜線のエッジ部からの裂け及び破断が阻止ないし抑制される結果、波板形状は車幅方向に蛇腹変形してエネルギ吸収作用がなされる。この蛇腹変形が、縦壁にビードを設けることにより確実に行われて、エネルギ吸収作用が効果的に行われる。なお、ビード形状の形成位置は蛇腹形状が山形状となる位置に形成するのが効果的である。
【符号の説明】
【0047】
10 車両用衝撃吸収構造
12 ポール
14 電池
16 フロア
18 サイドシル部材
18A 外側サイドシル部材
18B 内側サイドシル部材
20 側部ドア
22 衝撃吸収部材
24 稜線
26 エッジ部
28 中央部位置
30 取付部材
32 縦壁
34 平面壁
36 ビード
38 ビード
40 蛇腹形状
L1 エッジ部の線長
L2 エッジ部以外の部位における線長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10