(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055553
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】スラリ回収装置
(51)【国際特許分類】
B02C 19/06 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
B02C19/06 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162583
(22)【出願日】2022-10-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000179328
【氏名又は名称】リックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】森光 孝典
(72)【発明者】
【氏名】星野 高明
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 賢哲
【テーマコード(参考)】
4D067
【Fターム(参考)】
4D067CA03
4D067CA08
4D067GA20
(57)【要約】
【課題】配管の内壁面へのスラリの付着を防止することが可能な整流体およびこれを備えたスラリ回収装置の提供。
【解決手段】固体粒子を含む液体を気体流によって加速して流動状態の微小液滴とし、この微小液滴を衝突部20に衝突させることにより、固体粒子を微細粒子に微粒化する微粒化装置2の流れ方向後方の垂直配管3内に設けられる整流体4であり、垂直配管3の内壁面30との間に微小な隙間45を形成する頭頂部40を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体粒子を含む液体を気体流によって加速して流動状態の微小液滴とし、この微小液滴を衝突部に衝突させることにより、固体粒子を微細粒子に微粒化する微粒化装置の流れ方向後方の垂直配管内に設けられる整流体であり、前記垂直配管の内壁面との間に微小な隙間を形成する頭頂部を有する整流体。
【請求項2】
前記頭頂部は、上方から下方へ向かって拡径する円錐状である請求項1記載の整流体。
【請求項3】
前記頭頂部の円錐状の底部から縮径する縮径部を有する請求項2記載の整流体。
【請求項4】
前記縮径部の下方に接続された円柱部を有する請求項3記載の整流体。
【請求項5】
前記円柱部の下方に接続されたスカート部であり、前記円柱部の下方から拡径して前記垂直配管の内壁面との間に微小な隙間を形成するスカート部を有する請求項4記載の整流体。
【請求項6】
上方から下方へ向かって縮径する逆円錐状の尾部を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の整流体。
【請求項7】
前記微小な隙間は、当該隙間を流れる流速を20~40m/秒とする隙間である請求項1記載の整流体。
【請求項8】
前記衝突部への前記微小液滴の衝突速度が、超音速である請求項1記載の整流体。
【請求項9】
請求項1記載の整流体を備えたスラリ回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体粒子を含む液体を気体流によって加速して流動状態の微小液滴とし、この微小液滴を衝突部に衝突させることにより、固体粒子を微細粒子に微粒化する微粒化装置に用いられる整流体およびこれを備えたスラリ回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体粒子を含む液体を気体流によって加速して流動状態の微小液滴とし、この微小液滴を衝突部に衝突させることにより、固体粒子を微細粒子に微粒化する装置として、例えば特許文献1に記載された微粒化装置がある。また、衝突部への衝突により微粒化が行われた後の微小液滴をスラリとして回収する装置として、例えば特許文献2に記載されたスラリ回収装置がある。
【0003】
図3は特許文献2に記載のスラリ回収装置を示す一部省略垂直断面図である。
図3に示すように、スラリ回収装置100では、微粒化装置150において気体供給配管152を経由して気体流(空気流)を供給するとともに、液体供給配管151を経由して固体粒子を含む液体を供給すると、液体供給配管151を経由して供給される固体粒子を含む液体は、気体供給配管152を経由して供給される気体流によって加速され、流動状態の微小液滴となって微細化処理部153に送り込まれる。
【0004】
微細化処理部153においては、送り込まれた微小液滴を衝突部材155に衝突させることにより固体粒子が微細粒子に微粒化され、固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った空気流S100となって気体流動空間154を経由してスラリ回収装置100の給気経路105へ供給される。給気経路105へ供給された空気流S100は、エルボ105bによって進行方向が90度曲げられ、チャンバ101の軸心101cとねじれの位置関係をなす方向へ吹き出し、チャンバ101の内周面101dに衝突するので、チャンバ101および回収部103の内部には軸心101cの周りを螺旋状に回転する旋回流が発生し、サイクロン効果が生じる。
【0005】
このサイクロン効果により、空気流S100に含まれている固体粒子を含む液体であるスラリは遠心力でチャンバ101の内周面101dに接近する方向へ移動して内周面101dに付着した後、重力により内周面101dに沿って回収部103の内周面103dに向かって下降し、内周面103dに到達した後は内周面103dに沿って下降して排液管108に流れ込み、所定の回収容器(図示せず)に回収される。また、サイクロン効果により、チャンバ101内の軸心101c近傍の旋回流はスラリの含有量が著しく低下した状態となった後、排気経路104の下端開口部104bから排気経路104内へ吸い込まれ、排気経路104を経由して排気ユニット109へ流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4447042号公報
【特許文献2】特許第7039666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、このスラリ回収装置100では、微細化処理部153において、送り込まれた微小液滴を衝突部材155に衝突させることにより固体粒子が微細粒子に微粒化され、固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った空気流S100となって気体流動空間154を経由して給気経路105へ供給されるが、この気体流動空間154を形成する配管の内壁面にスラリが付着して再凝集してしまうことがある。
【0008】
そこで、本発明においては、配管の内壁面へのスラリの付着を防止することが可能な整流体およびこれを備えたスラリ回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の整流体は、固体粒子を含む液体を気体流によって加速して流動状態の微小液滴とし、この微小液滴を衝突部に衝突させることにより、固体粒子を微細粒子に微粒化する微粒化装置の流れ方向後方の垂直配管内に設けられる整流体であり、垂直配管の内壁面との間に微小な隙間を形成する頭頂部を有するものである。本発明の整流体によれば、垂直配管の内壁面との間に形成された微小な隙間により気体流が加速され、垂直配管の内壁面の境界層を破壊するので、垂直配管の内壁面への付着液滴を除去することができる。
【0010】
頭頂部は、上方から下方へ向かって拡径する円錐状であることが望ましい。整流体の頭頂部には、整流体の上方より流れてくるスラリと気体とが衝突するが、この頭頂部にスラリが付着したままでは気体流によりスラリの液体分が気化し、固体分が固化して凝着する。そこで、頭頂部は、上方から下方へ向かって拡径する円錐状とすることで、気体流によりスラリの液体分が気化するより早く短時間でスラリを押し流すことができ、頭頂部へのスラリの付着を防止することができる。
【0011】
本発明の整流体は、頭頂部の円錐状の底部から縮径する縮径部を有することが望ましい。整流体の円錐状の頭頂部により急な拡大断面変化があるため、円錐状の底部で渦が発生する。このとき、流体の流れが整流体の表面から大きく剥離すると、流体の滞留領域ができ、この滞留領域でスラリが凝集し、固化する場合がある。そこで、整流体が頭頂部の円錐状の底部から縮径する縮径部を有する構成とすることで、整流体の表面からの剥離を防いで流体の滞留領域の発生を防止して、スラリの凝集固化を防ぐことができる。また、スラリが整流体に付着した状態で気体流を停止した場合、付着したスラリが重力により整流体表面から垂れ下がるため、この付着したスラリを縮径部により整流体の中心側へ導き、垂直配管の内壁面との間の微小な隙間を閉塞しないようにすることができる。
【0012】
本発明の整流体は、縮径部の下方に接続された円柱部を有することが望ましい。これにより、整流体の縮径部からの断面変化をなだらかにし、流体の流れを滞留させずに付着スラリを下部へ導くことができる。
【0013】
本発明の整流体は、円柱部の下方に接続されたスカート部であり、円柱部の下方から拡径して垂直配管の内壁面との間に微小な隙間を形成するスカート部を有することが望ましい。これにより、縮径部および円柱部と垂直配管の内壁面との間の空間を通過することにより減速された気体流が、スカート部により垂直配管の内壁面との間に形成された微小な隙間により再び加速され、垂直配管の内壁面の境界層を破壊するので、垂直配管の内壁面への付着液滴を除去することができる。
【0014】
本発明の整流体は、上方から下方へ向かって縮径する逆円錐状の尾部を有することが望ましい。これにより、流体が整流体と垂直配管の内壁面との間に形成された微小な隙間を通過後、上方から下方へ向かって縮径する逆円錐状の尾部によって整流体の表面から剥離するのを防いで流体の滞留領域の発生を防止して、スラリの凝集固化を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
(1)固体粒子を含む液体を気体流によって加速して流動状態の微小液滴とし、この微小液滴を衝突部に衝突させることにより、固体粒子を微細粒子に微粒化する微粒化装置の流れ方向後方の垂直配管内に設けられる整流体であり、垂直配管の内壁面との間に微小な隙間を形成する頭頂部を有する整流体によれば、気体流が垂直配管の内壁面と整流体との間を高速で流れ、垂直配管の内壁面の境界層を破壊し、垂直配管の内壁面への付着液滴を除去することができるので、垂直配管の内壁面へのスラリの付着を防止し、スラリの回収性を向上させることができる。また、整流体は垂直配管の流路を狭めるため、バッフルとして機能し、騒音を抑えることができる。
【0016】
(2)頭頂部が、上方から下方へ向かって拡径する円錐状であることにより、スラリの液体分が気化するより早く短時間でスラリを押し流すことができ、頭頂部へのスラリの付着を防止することができる。
【0017】
(3)頭頂部の円錐状の底部から縮径する縮径部を有することにより、整流体の表面からの剥離を防いで流体の滞留領域の発生を防止して、スラリの凝集固化を防ぐことができる。また、スラリが整流体に付着したスラリを縮径部により整流体の中心側へ導き、垂直配管の内壁面との間の微小な隙間を閉塞しないようにすることができる。
【0018】
(4)縮径部の下方に接続された円柱部を有することにより、整流体の縮径部からの断面変化をなだらかにし、流体の流れを滞留させずに付着スラリを下部へ導くことができ、整流体へのスラリの付着を防止することができる。
【0019】
(5)円柱部の下方に接続されたスカート部であり、円柱部の下方から拡径して垂直配管の内壁面との間に微小な隙間を形成するスカート部を有することにより、縮径部および円柱部と垂直配管の内壁面との間の空間を通過することにより減速された気体流が再び加速され、垂直配管の内壁面の境界層を破壊するので、垂直配管の内壁面への付着液滴を除去することができるので、垂直配管の内壁面へのスラリの付着を防止することができる。
【0020】
(6)上方から下方へ向かって縮径する逆円錐状の尾部を有することにより、流体が整流体と垂直配管の内壁面との間に形成された微小な隙間を通過後、整流体の表面から剥離するのを防いで流体の滞留領域の発生を防止して、スラリの凝集固化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態におけるスラリ回収装置の微粒化装置を示す一部省略垂直断面図である。
【
図2】(A)は本実施形態における整流体を備えた微粒化装置の気流解析を行った結果を示す図、(B)は比較のために整流体が無い場合の気流解析結果を示す図である。
【
図3】従来のスラリ回収装置を示す一部省略垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明の実施の形態におけるスラリ回収装置の微粒化装置を示す一部省略垂直断面図である。
図1に示すスラリ回収装置1は、固体粒子を含む液体を気体流によって加速して流動状態の微小液滴とし、この微小液滴を衝突部20に衝突させることにより、固体粒子を微細粒子に微粒化する微粒化装置2を備える。スラリ回収装置1は、この微粒化装置2の衝突部20への衝突により微粒化が行われた後の微小液滴をスラリとして回収する装置である。衝突部20への微小液滴の衝突速度は、超音速(340m/秒以上)である。
【0023】
また、このスラリ回収装置1の微粒化装置2の流れ方向後方の垂直配管3内には、垂直配管3内の流路を狭めて整流する整流体4が設けられている。整流体4は、上方から下方に向かって拡径する円錐状の頭頂部40と、頭頂部40の円錐状の底部から縮径する縮径部41と、縮径部41の下方に接続された円柱部42と、円柱部42の下方に接続されたスカート部43と、上方から下方へ向かって縮径する円錐状の尾部44とを有する。
【0024】
頭頂部40は、上方を頂点とし、上方から下方に向かって拡径する円錐状である。整流体4は、この頭頂部40の径が最大となる底部において、垂直配管3の内壁面30との間に微小な隙間45を形成する。この微小な隙間45は、隙間45を流れる流速を20~40m/秒とする隙間である。本実施形態においては、隙間45は5~7mm程度である。この微小な隙間45により気体流が加速され、垂直配管3の内壁面30の境界層を破壊し、垂直配管3の内壁面30への付着液滴を除去する。
【0025】
また、この整流体4の頭頂部40には、整流体4の上方より流れてくるスラリと気体とが衝突する。このとき、頭頂部40にスラリが付着したままでは、気体流によりスラリの液体分が気化し、固体分が固化して凝着する。そこで、頭頂部40は、上方から下方へ向かって拡径する円錐状とすることで、気体流によりスラリの液体分が気化するより早く短時間でスラリを押し流し、頭頂部40へのスラリの付着を防止している。
【0026】
本実施形態においては、頭頂部40に対するスラリの付着面積をできるだけ小さくし、スラリの除去効果を上げるために、頂角αを90°としている。なお、スラリの粘度によって、頂角αは80~120°とすることが望ましい。粘度が高い場合には、頭頂部40表面におけるスラリの流れが悪くなるので、頂角αは80°とすることが望ましい。仮に、頂角αを30°とした場合、スラリはより落ちやすくなるが、頭頂部40の円錐面の表面積が頂角α=90°の場合と比較して約5.4倍大きくなるため、表面に付着したスラリが凝集し、この固化した凝集分がスラリ中に多く混入してしまう懸念がある。
【0027】
縮径部41は、上方から下方へ向かって縮径する逆円錐台状である。本実施形態における整流体4では、円錐状の頭頂部40により急な拡大断面変化があるため、円錐状の底部で渦が発生する。このとき、流体の流れが整流体4の表面から大きく剥離すると、流体の滞留領域ができ、この滞留領域でスラリが凝集し、固化する場合がある。そこで、整流体4が頭頂部40の円錐状の底部から縮径する縮径部41を有する構成とすることで、整流体4の表面からの剥離を防いで流体の滞留領域の発生を防止して、スラリの凝集固化を防いでいる。
【0028】
また、スラリが整流体4に付着した状態で気体流を停止した場合、付着したスラリが重力により整流体4表面から垂れ下がるため、この付着したスラリを縮径部41により整流体4の中心側へ導き、垂直配管3の内壁面30との間の微小な隙間を閉塞しないようにする。なお、縮径部41の逆円錐台状の頂角βは、前述の頭頂部40の頂角αと同様の理由により、80~90°とすることが望ましい。
【0029】
円柱部42は、上方から下方へ向かって一定の径とした円柱状である。円柱状の下方には上方から下方へ向かって拡径するスカート部43が接続されており、仮に縮径部41の縮径断面からスカート部43の拡径断面へ直接変化した場合、その変化部において流体の流れがなくなり、スラリが滞留する。そこで、縮径部41とスカート部43との間に円柱部42を設けることで、整流体4の縮径部41からの断面変化をなだらかにし、流体の流れを滞留させずに付着スラリを下部へ導くようにしている。
【0030】
スカート部43は、上方から下方へ向かって円柱部42の下方から拡径する円錐台状である。スカート部43は、垂直配管3の内壁面30との間に微小な隙間46を形成する。この微小な隙間46は、隙間46を流れる流速を20~40m/秒とする隙間である。本実施形態においては、隙間46は5~7mm程度である。この隙間46により、縮径部41および円柱部42と垂直配管3の内壁面30との間の空間を通過することにより減速された気体流が再び加速され、垂直配管3の内壁面30の境界層を破壊し、垂直配管3の内壁面30への付着液滴を除去する。
【0031】
尾部44は、上方から下方へ向かって縮径する逆円錐状である。尾部44は、スカート部43の下面に設けられた凹部43aに設けられている。これにより、流体が整流体4と垂直配管3の内壁面30との間に形成された微小な隙間46を通過後、この上方から下方へ向かって縮径する逆円錐状の尾部44によって整流体4の表面から剥離するのを防いで流体の滞留領域の発生を防止して、スラリの凝集固化を防ぐことができる。
【0032】
なお、垂直配管3の下部の内壁面30には、整流体4を支持する支持部31が4箇所に設けられている。支持部31の上部には、整流体4の凹部43aが係止される凸部31aが設けられている。整流体4の凹部43aは、すり鉢状に形成されている。凸部31aは、この整流体4の凹部43aのすり鉢状の斜めに形成された側面43bと面接触することにより、整流体4が垂直配管3の中心位置に固定されるように形成されている。
【0033】
図2(A)は本実施形態における整流体4を備えた微粒化装置2の気流解析を行った結果を示す図、(B)は比較のために整流体4が無い場合の気流解析結果を示す図である。
図2(B)に示すように、整流体4を備えていない場合、衝突部20へ超音速で衝突した気体流は、衝突部20の側方の流路が絞られた部分において最も高速となるが、その後、垂直配管3へ向かって流路が単純に拡大するため、垂直配管3の内壁面30の流れがほぼなくなる。そのため、この垂直配管3の内壁面30にはスラリが付着して再凝集してしまうことがある。
【0034】
一方、
図2(A)に示すように、整流体4を備えた微粒化装置2では、衝突部20へ超音速で衝突した気体流は、垂直配管3へ向かって流路が拡大することにより一旦減速されるが、整流体4の頭頂部40によって垂直配管3の内壁面30との間に形成された微小な隙間45により気体流が加速されている。これにより、この隙間45の後方の垂直配管3の内壁面30の境界層が破壊され、垂直配管3の内壁面30への付着液滴が除去されるので、スラリの付着が防止される。
【0035】
また、整流体4を備えた微粒化装置2では、縮径部41および円柱部42と垂直配管3の内壁面30との間の空間を通過することにより減速された気体流が、スカート部43により垂直配管3の内壁面30との間に形成された微小な隙間46により再び加速されている。これにより、この隙間46の後方の垂直配管3の内壁面30の境界層が破壊され、垂直配管3の内壁面30への付着液滴が除去されるので、スラリの付着が防止される。
【0036】
以上のように、本実施形態における整流体4を備えた微粒化装置2では、気体流が垂直配管3の内壁面30と整流体4との間を高速で流れ、垂直配管3の内壁面30の境界層を破壊し、垂直配管3の内壁面30への付着液滴を除去することができるので、垂直配管3の内壁面30へのスラリの付着を防止することができ、スラリの回収性を向上させることができる。また、整流体4は垂直配管3の流路を狭めるため、バッフルとして機能し、騒音を抑えることができる。また、整流体4に撥水撥油性が高い樹脂コーティングを施工することで、整流体4へのスラリの付着を防止し、さらにスラリの回収性を向上させることができる。
【実施例0037】
上記構成の整流体4を備えた微粒化装置2においてスラリの付着試験を行った。
スラリの組成は以下の通りである。
・固形粉:酸化チタン(中位径D50=1.2μm)
・溶媒:水
・分散剤:ポリアクリル系分散剤
・スラリの固形分濃度:15wt%
・粘度:2mPas
【0038】
上記スラリを用いて、エア圧:0.5MPa(エア噴射量5000L/min)、スラリ流量5L/minで処理した場合、垂直配管3内の付着量は1.3gであった。なお、整流体4無しの場合の付着量は3gであった。
【0039】
また、上記スラリに増粘用CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を入れて粘度40mPasとしたところ、垂直配管3内の付着量は2.5gとなった。なお、整流体4無しの場合の付着量は4.5gであった。
【0040】
また、整流体4の有無により騒音測定したところ、整流体4無しの場合は86.1dB(A)であったのに対し、整流体4有りの場合は83.4dB(A)であった。整流体4が騒音低減に効果的であることが分かった。
本発明は、固体粒子を含む液体を気体流によって加速して流動状態の微小液滴とし、この微小液滴を衝突部に衝突させることにより、固体粒子を微細粒子に微粒化する微粒化装置に用いられる整流体およびこれを備えたスラリ回収装置として有用であり、特に、配管の内壁面へのスラリの付着を防止することが可能な整流体およびこれを備えたスラリ回収装置として好適である。