(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055554
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 401
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162588
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】成島 裕一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA25
2C056EC06
2C056EC38
2C056FA10
2C056FD20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】記録媒体に着弾したインクの硬化に影響を与えることを抑えつつ、光の照射に要する電流又は電圧のピーク値を小さくできる、印刷装置及び印刷方法を提供する。
【解決手段】印刷装置は、メディアに対して主走査方向Yに相対移動しながらメディアへ光硬化型のインクを吐出するインク吐出ヘッド40と、インク吐出ヘッド40と共に相対移動しながらメディアへ光を照射する照射部32と、を有する印刷装置であって、照射部32は、主走査方向Yに対して交差する副走査方向Xに複数のLED34が配列され、主走査方向Yへインク吐出ヘッド40及び照射部32が相対移動する1周期の間に、所定の順番で複数のLED34の照射のオン及びオフを繰り返し行うように照射部32を制御する照射制御部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して第1方向に相対移動しながら前記記録媒体へ光硬化型のインクを吐出するインク吐出手段と、前記インク吐出手段と共に相対移動しながら前記記録媒体へ光を照射する照射手段と、を有する印刷装置であって、
前記照射手段は、前記第1方向に対して交差する第2方向に複数の光照射素子が配列され、
前記第1方向へ前記インク吐出手段及び前記照射手段が相対移動する1周期の間に、所定の順番で前記複数の光照射素子の照射のオン及びオフを繰り返し行うように前記照射手段を制御する照射制御手段と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
前記照射制御手段は、前記第2方向に対して所定の順番で前記複数の光照射素子の照射のオン及びオフを繰り返し行うように前記照射手段を制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記照射制御手段は、
所定の前記光照射素子の照射をオンとしてから第1時間経過後に他の前記光照射素子の照射をオンとし、
前記光照射素子の照射をオンとしてから第2時間経過後に前記光照射素子の照射をオフとし、オフとしてから第3時間経過後に前記光照射素子の照射をオンとする、
請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1時間は前記第2時間及び前記第3時間より短く、
前記第2時間は前記第3時間より長い、
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記照射制御手段は、複数の前記光照射素子が全て消灯する時間帯を生じさせない、請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記複数の光照射素子は、複数のグループに分けられ、
前記照射制御手段は、前記グループ毎に前記光照射素子の照射を制御する、請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記照射制御手段は、所定の前記グループに含まれる前記光照射素子の照射をオンとしてから所定時間経過後に、隣接する他の前記グループに含まれる前記光照射素子の照射をオンとする、請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
記録媒体に対して第1方向に相対移動しながら前記記録媒体へ光硬化型のインクをインク吐出手段が吐出し、
前記インク吐出手段と共に相対移動しながら前記記録媒体へ照射手段が光を照射する、
印刷方法であって、
前記照射手段は、前記第1方向に対して交差する第2方向に複数の光照射素子が配列され、
前記第1方向へ前記インク吐出手段及び前記照射手段が相対移動する1周期の間に、所定の順番で前記複数の光照射素子の照射のオン及びオフを繰り返し行うように前記照射手段を制御する、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録媒体に光硬化型のインクを吐出し、記録媒体に着弾したインクを紫外線等を照射することで硬化させて画像を形成する印刷装置が開発されている。
【0003】
このような光硬化型のインクを用いた印刷装置は、特許文献1に記載のように、インクを硬化させるための紫外線を照射する照射部を備える。この照射部は、インクを吐出するノズルヘッドを搭載したキャリッジユニットに設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
照射部は、記録媒体に着弾したインクを十分に硬化させるための光を照射ことにより、印刷装置に対して負荷を与えることとなる。照射部による印刷装置への負荷を低減させるためには、光の照射に要する電流又は電圧のピーク値を小さくすることが求められている。
【0006】
そこで本発明は、記録媒体に着弾したインクの硬化に影響を与えることを抑えつつ、光の照射に要する電流又は電圧のピーク値を小さくできる、印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様の印刷装置は、記録媒体に対して第1方向に相対移動しながら前記記録媒体へ光硬化型のインクを吐出するインク吐出手段と、前記インク吐出手段と共に相対移動しながら前記記録媒体へ光を照射する照射手段と、を有する印刷装置であって、前記照射手段は、前記第1方向に対して交差する第2方向に複数の光照射素子が配列され、前記第1方向へ前記インク吐出手段及び前記照射手段が相対移動する1周期の間に、所定の順番で前記複数の光照射素子の照射のオン及びオフを繰り返し行うように前記照射手段を制御する照射制御手段と、を備える。
【0008】
本構成によれば、記録媒体に対して第1方向に相対移動しながら記録媒体へ光硬化型のインクが吐出される。照射手段にはインクを硬化させる光を照射する複数の光照射素子が第1方向に交差する第2方向に配列され、照射手段はインク吐出手段と共に第1方向へ記録媒体に対して相対移動する。
【0009】
そして、本構成は、第1方向へインク吐出手段及び照射手段が相対移動する1周期の間に、所定の順番で複数の光照射素子の照射のオン及びオフを繰り返し行う。すなわち、複数の光照射素子のオン・オフのタイミングをずらして、記録媒体に着弾したインクを硬化させるための光の照射が行われる。これにより、本構成は、記録媒体に着弾したインクの硬化に影響を与えることを抑えつつ、光の照射に要する電流又は電圧のピーク値を小さくできる。
【0010】
第2態様の印刷装置は第1態様の印刷装置において、前記照射制御手段は、前記第2方向に対して所定の順番で前記複数の光照射素子の照射のオン及びオフを繰り返し行うように前記照射手段を制御してもよい。
【0011】
第3態様の印刷装置は第1態様又は第2態様の印刷装置において、前記照射制御手段は、所定の前記光照射素子の照射をオンとしてから第1時間経過後に他の前記光照射素子の照射をオンとし、前記光照射素子の照射をオンとしてから第2時間経過後に前記光照射素子の照射をオフとし、オフとしてから第3時間経過後に前記光照射素子の照射をオンとしてもよい。
【0012】
第4態様の印刷装置は第3態様の印刷装置において、前記第1時間は前記第2時間及び前記第3時間より短く、前記第2時間は前記第3時間より長くてもよい。
【0013】
第5態様の印刷装置は第1態様から第4態様の何れか1つの態様の印刷装置において、複数の前記光照射素子が全て消灯する時間帯を生じさせなくてもよい。
【0014】
第6態様の印刷装置は第1態様から第5態様の何れか1つの態様の印刷装置において、前記複数の光照射素子は、複数のグループに分けられ、前記照射制御手段は、前記グループ毎に前記光照射素子の照射を制御してもよい。
【0015】
第7態様の印刷装置は第6態様の印刷装置において、前記照射制御手段は、所定の前記グループに含まれる前記光照射素子の照射をオンとしてから所定時間経過後に、隣接する他の前記グループに含まれる前記光照射素子の照射をオンとしてもよい。
【0016】
第8態様の印刷方法は、記録媒体に対して第1方向に相対移動しながら前記記録媒体へ光硬化型のインクをインク吐出手段が吐出し、前記インク吐出手段と共に相対移動しながら前記記録媒体へ照射手段が光を照射する、印刷方法であって、前記照射手段は、前記第1方向に対して交差する第2方向に複数の光照射素子が配列され、前記第1方向へ前記インク吐出手段及び前記照射手段が相対移動する1周期の間に、所定の順番で前記複数の光照射素子の照射のオン及びオフを繰り返し行うように前記照射手段を制御する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、記録媒体に着弾したインクの硬化に影響を与えることを抑えつつ、光の照射に要する電流又は電圧のピーク値を小さくできる、印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】実施形態のキャリッジの外観図であり、(A)は正面図であり、(B)は底面図である。
【
図5】従来の照射部のオン・オフのタイミングチャートである。
【
図6】実施形態の照射部のオン・オフのタイミングチャートである。
【
図7】照射部の消費電流を示した図であり、(A)は従来の照射部の消費電流を示し、(B)は実施形態の照射部の消費電流を示す。
【
図8】実施形態の平均照度分布を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の印刷装置10について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の印刷装置10の概略全体図である。なお、本実施形態の印刷装置10は、下記に説明する構成のようにいわゆるインクジェットプリンタである。
【0020】
図1に示すように、印刷装置10は、床に設置される脚12と、脚12の上側(Z方向)に配置される本体14とを備えている。本体14は、ガイドレール16、キャリッジ18、及びプラテン20等を備える。
【0021】
ガイドレール16は、印刷装置10の左右方向(主走査方向Y)に延在し、キャリッジ18の走査方向への移動を誘導するものである。キャリッジ18は、記録媒体(以下「メディア」という。)22へインクを吐出するインク吐出ヘッド40(
図2参照)が一又は複数搭載され、ガイドレール16に沿って主走査方向Yに移動しながらメディア22へインクを吐出する。なお、以下の説明において、キャリッジ18がメディア22に対して相対移動する第1方向を主走査方向Yとし、主走査方向Yと交差(本実施形態では直交)する第2方向を副走査方向Xという。
【0022】
プラテン20は、メディア22が載置される載置台である。プラテン20に載置されているメディア22は、搬送機構によって副走査方向Xに搬送される。なお、メディア22は、紙、塩化ビニールフィルム、ラバーシート、又は布等のシート状の記録媒体が適用可能である。
【0023】
図2は、本実施形態のキャリッジ18の外観図である。
図2(A)はキャリッジ18の正面図である。
図2(B)はキャリッジ18の底面図である。キャリッジ18は、キャリッジ本体30の内部に複数のインク吐出ヘッド40が搭載されている。
【0024】
キャリッジ本体30の底面にはインク吐出ヘッド40からメディア22へインクを吐出するためのノズル42が露出している。インク吐出ヘッド40から吐出されるインクは光硬化型のインクであり、本実施形態では紫外線により硬化する。このため、キャリッジ18は、メディア22に着弾したインクを硬化させるために光(紫外光)を照射するための照射部32を備える。
【0025】
本実施形態の照射部32は、インク吐出ヘッド40を挟んで主走査方向Y側に左右一対でキャリッジ18に設けられる。これにより、照射部32は、インク吐出ヘッド40と共に相対移動しながらメディア22へ光を照射する。以下の説明では、キャリッジ18の左右に設けられる照射部32を区別する場合は、末尾にR又はLを付して区別する。
【0026】
また、本実施形態の照射部32は、主走査方向Y及び副走査方向Xに複数の光照射素子(以下「LED」という。)34が配列される。本実施形態の照射部32は、主走査方向Yに3列、副走査方向Xに24行、計84個のLED34が配列される。なお、LED34の個数及び配列は、一例であり、メディア22に着弾したインクを硬化できる光量を照射できればよい。
【0027】
図3は、実施形態の照射部32の断面図である。照射部32は、LED34が配列されるLED基板50が設けられる。LED基板50はLED34の発光と共に発熱もする。このため、LED基板50の上部には、LED基板50と一体化された放熱用のヒートシンク52が設けられる。そして、ヒートシンク52の上方にヒートシンク52を冷却するためにファン54が設けられる。このように、本実施形態の照射部32は、発熱したLED34を冷却するために空冷としているが、これに限らず、水冷によってLED34を冷却してもよい。
【0028】
なお、LED基板50、ヒートシンク52、ファン54の形状、大きさ等は、照射部32が有するLED34の数や配列に応じて、適宜最適化される。
【0029】
図4は、本実施形態の照射部32の機能ブロック図である。本実施形態の印刷装置10は、照射制御部60及び複数の駆動IC62を備える。
図4では、照射部32Lを図示しているが、照射部32Rも同様に、駆動IC62を介してLED34が照射制御部60に接続される。
【0030】
照射制御部60は、駆動IC62に対してLED34をオン又はオフさせるための駆動信号を出力することで、LED34の駆動制御を行なう。
【0031】
照射制御部60は、キャリッジ18の主走査方向Yの位置や移動方向に応じて、照射部32Rと照射部32Lとで異なる駆動制御を行なってもよい。キャリッジ18の主走査方向Yの位置はエンコーダからの信号に基づいて照射制御部60が判定する。例えば、キャリッジ18が主走査方向Yに対する移動方向に応じて、照射部32R及び照射部32Lの何れか一方を駆動させたり、キャリッジ18が主走査方向Yの所定位置に達した場合に、照射部32R又は照射部32Lを駆動させる。
【0032】
駆動IC62は、照射制御部60から出力された駆動信号に基づいて、接続されているLED34のオン又はオフを行う。本実施形態のLED34は、副走査方向Xで複数のグループに仮想的に分けられる。すなわち、本実施形態の照射制御部60は、グループ毎にLED34の照射を制御するための駆動信号を駆動IC62へ出力する。駆動IC62は、照射制御部60からの駆動信号に基づいて、グループ毎にLED34を駆動する。
【0033】
本実施形態のLED34は、一例として、
図4の上側から2行毎に6個ずつのLED34を一つのグループとして分けられるが、グループとされるLED34の数はこれに限られない。また、以下の説明では、グループを点灯ブロックともいい、その末尾に番号を付して区別する。すなわち、本実施形態の照射部32Lが有する複数のLED34は、点灯ブロック1~14のグループに分けられ、14個の駆動IC62によって点灯ブロック毎に駆動する。また、照射部32Rが有する複数のLED34は、点灯ブロック15~28のグループに分けられ、14個の駆動IC62によって点灯ブロック毎に駆動する。
【0034】
本実施形態の照射制御部60は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によってLED34の駆動制御を行なう。本実施形態では、LED34の駆動制御は電圧を一定とした電流制御によって行うが、これに限らず、LED34の駆動制御は電流を一定とした電圧制御によって行われてもよい。
【0035】
ここで、
図5は、従来の照射部32のオン(点灯)・オフ(消灯)のタイミングチャートである。
図5の例では、点灯ブロック1~28に対して、全て同じタイミングでオンとオフとを繰り返し行っている。
【0036】
一方で本実施形態の照射制御部60は、主走査方向Yへキャリッジ18が相対移動する1周期の間に、所定の順番で複数のLED34の照射のオン及びオフを繰り返し行うように照射部32を制御する。
【0037】
図6は、本実施形態の照射部32のオン・オフのタイミングチャートである。
図6に示されるように本実施形態の照射制御部60は、副走査方向Xに対して所定の順番で複数のLED34(点灯ブロック)の照射のオン及びオフを繰り返し行うように照射部32を制御する。
【0038】
具体的には照射制御部60は、所定の点灯ブロックの照射をオンとしてから第1時間(以下「間隔時間T1」という。)の経過後に他の点灯ブロックの照射をオンとする。そして、照射制御部60は、点灯ブロックの照射をオンとしてから第2時間(以下「点灯時間T2」という。)の経過後に点灯ブロックの照射をオフとし、オフとしてから第3時間(以下「消灯時間T3」という。)の経過後に点灯ブロックの照射をオンとする。
【0039】
図6の例では、照射制御部60は、点灯ブロック1の照射をオンとしてから間隔時間T1の経過後に隣接する点灯ブロック2の照射をオンとする。そして、照射制御部60は、点灯ブロック1の照射をオンとしてから点灯時間T2の経過後に点灯ブロック1の照射をオフとし、消灯時間T3の経過後に点灯ブロック1の照射を再びオンとする。また、照射制御部60は、点灯ブロック2の照射をオンとしてから間隔時間T1の経過後に、点灯ブロック2に隣接する点灯ブロック3の照射をオンとし、これを点灯ブロック28まで行う。このように本実施形態の駆動制御では、副走査方向Xに隣接する点灯ブロック毎にタイミングをずらして照射のオン・オフを繰り返す。
【0040】
ここで、照射部32に対するPWM制御の1周期(1回ずつの点灯と消灯)は、キャリッジ18が主走査方向Yに移動する1周期よりも十分に短い必要がある。仮に、PWM制御の1周期がキャリッジ18の移動周期よりも十分に短くない場合には、メディア22に着弾したインクに硬化不良が生じる可能性がある。
【0041】
なお、本実施形態の間隔時間T1は点灯時間T2及び消灯時間T3より短く、点灯時間T2は消灯時間T3より長い。点灯時間T2が消灯時間T3よりも長い理由は、インクを硬化させるための十分な照度を得るためである。間隔時間T1が点灯時間T2及び消灯時間T3よりも短い理由も同様であり、仮に間隔時間T1が長いと、インクを硬化させるための十分な照度を得ることができない。
【0042】
また、
図5に示す従来の駆動制御では、全てのLED34のオン・オフが同じタイミングで行われる。このため、全てのLED34が消灯する時間帯が生じる。一方で、本実施形態の駆動制御では、LED34をオンとするタイミングをずらすことにより、複数のLED34が全て消灯する時間帯を生じさせない。例えば
図6を参照すると、点灯ブロック1が消灯しても、他の点灯ブロックは点灯している。このような本実施形態の駆動制御により、ピーク電流を従来に比べて小さくすることと、インクを硬化させるための十分な照度を得ることを両立できる。
【0043】
図7は、照射部32の消費電流の一例を示した図である。
図7(A)は従来の照射部32の消費電流を示し、
図7(B)は本実施形態の照射部32の消費電流を示す。従来の照射部32の消費電流は、ピーク値が11.2Aである一方、本実施形態の照射部32の消費電流は、ピーク値が8.0Aとなった。このように、本実施形態の照射部32の消費電流のピーク値は従来に比べて有意な差で小さくなった。
【0044】
なお、本実施形態の照射制御部60は、
図6に示すように、一例として、照射部32Lの点灯ブロック14の照射をオンとしてから間隔時間T1の経過後に、照射部32Rの点灯ブロック15の照射をオンとする。これにより、左右の照射部32R,32Lによる駆動制御が重なることを抑制し、照射部32の電流ピーク値を小さくできる。
【0045】
図8は、本実施形態の照射部32Lにおける平均照度分布を示す模式図である。
図8では、色の濃いハッチング領域ほど相対的に照度が高いことを示している。
図8に示されるように、照射部32Lの中央部分の照度がその周辺に比べて高くなる。この照射部32Lの中央部分は、キャリッジ18においてインクを吐出するノズル42が配置される領域と同じ領域である(
図3参照)。このため、本実施形態の駆動制御では、メディア22に着弾したインクを硬化させるために適した照度分布となり、かつ照射部32の電流ピーク値を小さくできる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の印刷装置10は、主走査方向Yへキャリッジ18が相対移動する1周期の間に、副走査方向Xに対して所定の順番で複数のLED34の照射のオン及びオフを繰り返し行う。すなわち、本実施形態の印刷装置10は、副走査方向Xに対して複数のLED34のオン・オフのタイミングをずらして、メディア22に着弾したインクを硬化させるための光の照射を行う。これにより、本実施敬啓の印刷装置10は、照射部32の電流ピーク値を従来よりも低下できるので、メディア22に着弾したインクの硬化に影響を与えることを抑えつつ、光の照射に要する電流のピーク値を小さくできる。
【0047】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0048】
上記実施形態では、点灯ブロック毎に照射をオンとするタイミングをずらす形態について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、点灯ブロック毎にオンとするタイミングをずらすのではなく、複数の点灯ブロックに分けられたLED34毎にオンとするタイミングをずらす形態としてもよい。また、点灯ブロック1から点灯ブロック28の順番ではなく、点灯ブロック28から点灯ブロック1の順番で点灯ブロックをオンとするタイミングをずらしたり、中央部分の点灯ブロック7又は点灯ブロック8から端部の点灯ブロック1又は点灯ブロック14の順番でオンとするタイミングをずらす形態としてもよい。また、照射部32Lの点灯ブロック28の次に照射部32Rの点灯ブロック29を点灯させるのではなく、照射部32Lの点灯ブロックと照射部32Rの点灯ブロックのオン・オフを同じタイミングで行ってもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、所定数のLED34を含むグループ(点灯ブロック)毎にLED34の駆動制御を行なう形態について説明したが、本発明はこれに限られず、LED34をグループとせずに、LED34毎に駆動制御を行なう形態としてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、副走査方向Xで複数のLED34をオンとするタイミングをずらす形態について説明したが、本発明はこれに限られず、主走査方向Yで複数のLED34をオンとするタイミングをずらす形態としてもよい。この形態の場合、複数のLED34は、主走査方向Yで複数のグループに仮想的に分けられてもよい。
【0051】
(実施形態の効果)
(1)本実施形態の印刷装置10は、メディア22に対して主走査方向Yに相対移動しながらメディア22へ光硬化型のインクを吐出するインク吐出ヘッド40と、インク吐出ヘッド40と共に相対移動しながらメディア22へ光を照射する照射部32と、を有する印刷装置10であって、照射部32は、主走査方向Yに対して交差する副走査方向Xに複数のLED34が配列され、主走査方向Yへインク吐出ヘッド40及び照射部32が相対移動する1周期の間に、所定の順番で複数のLED34の照射のオン及びオフを繰り返し行うように照射部32を制御する照射制御部60と、を備える。
【0052】
本実施形態によれば、メディア22に対して主走査方向Yに相対移動しながらメディア22へ光硬化型のインクが吐出される。照射部32にはインクを硬化させる光を照射する複数のLED34が主走査方向Yに交差する副走査方向Xに配列され、照射部32はインク吐出ヘッド40と共に主走査方向Yへメディア22に対して相対移動する。
【0053】
そして、本実施形態によれば、主走査方向Yへインク吐出ヘッド40及び照射部32が相対移動する1周期の間に、所定の順番で複数のLED34の照射のオン及びオフを繰り返し行う。すなわち、複数のLED34のオン・オフのタイミングをずらして、メディア22に着弾したインクを硬化させるための光の照射が行われる。これにより、メディア22に着弾したインクの硬化に影響を与えることを抑えつつ、光の照射に要する電流のピーク値を小さくできる。なお、本実施形態のようにLED34の駆動制御として電圧を一定とした電流制御で行うことで電流のピーク値が小さくするが、LED34の駆動制御として電流を一定とした電圧制御で行うことにより、光の照射に要する電圧のピーク値が小さくできる。
【0054】
(2)本実施形態の照射制御部60は、副走査方向Xに対して所定の順番で複数のLED34の照射のオン及びオフを繰り返し行うように照射部32を制御する。本実施形態によれば、メディア22に着弾したインクの硬化に影響を与えることを抑えつつ、光の照射に要する電流のピーク値を小さくできる。
(3)本実施形態の照射制御部60は、所定のLED34の照射をオンとしてから間隔時間T1経過後に他のLED34の照射をオンとし、LED34の照射をオンとしてから点灯時間T2経過後にLED34の照射をオフとし、オフとしてから消灯時間T3経過後にLED34の照射をオンとする。本実施形態によれば、メディア22に着弾したインクの硬化に影響を与えることを抑えつつ、光の照射に要する電流のピーク値を小さくできる。
【0055】
(4)本実施形態の間隔時間T1は点灯時間T2及び消灯時間T3より短く、点灯時間T2は消灯時間T3より長い。本実施形態によれば、メディア22に着弾したインクの硬化に影響を与えることを抑えつつ、光の照射に要する電流のピーク値を小さくできる。
【0056】
(5)本実施形態の照射制御部60は、複数のLED34が全て消灯する時間帯を生じさせない。本実施形態によれば、メディア22に着弾したインクの硬化に影響を与えることを抑えつつ、光の照射に要する電流のピーク値を小さくできる。
【0057】
(6)本実施形態の複数のLED34は、複数のグループに分けられ、照射制御部60は、グループ毎にLED34の照射を制御する。本実施形態によれば、メディア22に着弾したインクの硬化に影響を与えることを抑えつつ、光の照射に要する電流のピーク値を小さくできる。
【0058】
(7)本実施形態の照射制御部60は、所定のグループに含まれるLED34の照射をオンとしてから所定時間経過後に、隣接する他のグループに含まれるLED34の照射をオンとする。本実施形態によれば、メディア22に着弾したインクの硬化に影響を与えることを抑えつつ、光の照射に要する電流のピーク値を小さくできる。
【符号の説明】
【0059】
10 印刷装置
18 インク吐出ヘッド(インク吐出手段)
22 メディア(記録媒体)
32 照射部(照射手段)
34 LED(光照射素子)
60 照射制御部(照射制御手段)