(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055571
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】加工位置設定方法、研削加工装置および成形加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 47/22 20060101AFI20240411BHJP
B24B 9/00 20060101ALI20240411BHJP
B24B 19/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B24B47/22
B24B9/00 601L
B24B19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162612
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(72)【発明者】
【氏名】福田 将彦
【テーマコード(参考)】
3C034
3C049
【Fターム(参考)】
3C034AA20
3C034DD20
3C049AA04
3C049AB04
3C049BB09
3C049BC02
(57)【要約】
【課題】研削加工を施す場合の加工開始位置を精度良く求める。
【解決手段】ワークWについて複数の加工点を抽出し、各加工点に対して砥石を低速で回転させながら接触させ、各加工点における接触位置を求める。各加工点における接触位置の分布に基づいて、最小切り込み量をもつ接触位置から加工開始位置を定め、最大切り込み量をもつ接触位置から加工終了位置を定める。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する砥石を用いてワークに対して研削加工を施す際の加工位置を設定する加工位置設定方法において、
前記砥石を用いて前記ワークに対して研削加工を施す際の複数の加工点を抽出する工程と、
前記ワークの各加工点に対して、研削加工時に比べて前記砥石を低速で回転させながら接触させ、各加工点における前記砥石の接触位置を求める工程と、
各加工点における接触位置の分布に基づいて、加工開始位置および加工終了位置を求める工程と、を備えた加工位置設定方法。
【請求項2】
各加工点における接触位置の分布に基づいて、1番小さな切り込み量を加工開始位置とし、1番大きな切り込み量を加工終了位置とする、請求項1記載の加工位置設定方法。
【請求項3】
前記複数の加工点は5~20点に定められている、請求項1または2記載の加工位置設定方法。
【請求項4】
回転する成形用ホイールを用いて砥石に対して成形加工を施す際の加工位置を設定する加工位置設定方法において、
前記成形用ホイールを用いて前記砥石に対して成形加工を開始する際の複数の加工点を抽出する工程と、
前記砥石の各加工点に対して、成形加工時に比べて前記成形用ホイールを低速で回転させながら接触させ、各加工点における前記成形用ホイールの接触位置を求める工程と、
各加工点における接触位置の分布に基づいて、加工開始位置および加工終了位置を求める工程と、を備えた加工位置設定方法。
【請求項5】
各加工点における接触位置の分布に基づいて、1番小さな切り込み量を加工開始位置とし、1番小さな切り込み量を加工終了位置とする、請求項4記載の加工位置設定方法。
【請求項6】
前記複数の加工点は5~20点に定められている、請求項4または5記載の加工位置設定方法。
【請求項7】
回転する砥石と、ワークに対して前記砥石を相対的に駆動させる駆動機構と、制御部とを備え、
前記制御部は、前記砥石を用いて前記ワークに対して研削加工を施す際の複数の加工点を抽出する加工点抽出部と、
前記ワークの各加工点に対して、研削加工時に比べて前記砥石を低速で回転させながら接触させ、各加工点における前記砥石の接触位置を求める接触位置検出部と、
各加工点における接触位置の分布に基づいて、加工開始位置および加工終了位置を求める加工開始位置および加工終了位置決定部と、を備えた研削加工装置。
【請求項8】
回転する成形用ホイールと、砥石に対して前記成形用ホイールを相対的に駆動させる駆動機構と、制御部とを備え、
前記制御部は、前記成形用ホイールを用いて前記砥石に対して成形加工を施す際の複数の加工点を抽出する加工点抽出部と、
前記砥石の各加工点に対して、成形加工時に比べて前記成形用ホイールを低速で回転させながら接触させ、各加工点における前記成形用ホイールの接触位置を求める接触位置検出部と、
各加工点における接触位置の分布に基づいて、加工開始位置および加工終了点を求める加工開始位置および加工終了位置決定部と、を備えた成形加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は砥石を用いて研削加工する場合の加工位置設定方法、研削加工装置および成形加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転する砥石を用いてワークに対して研削加工を施す場合、加工開始位置および加工終了位置を適切に定めることが必要である。
【0003】
例えば砥石をワークから離した位置から加工を開始した場合、過大な切り込みを防止することができるが、加工時間が長くなる。他方、砥石をワークに過度に近づけて加工を開始した場合、過大な切り込みが生じてしまう。
【0004】
同様に、加工終了位置が浅すぎると、未加工部分が残り、追加加工が必要となる。他方、加工終了位置が深すぎると、加工時間が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、加工開始位置および加工終了位置を正しく設定することができる加工位置設定方法、研削加工装置および成形加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、回転する砥石を用いてワークに対して研削加工を施す際の加工位置を設定する加工位置設定方法において、前記砥石を用いて前記ワークに対して研削加工を施す際の複数の加工点を抽出する工程と、前記ワークの各加工点に対して、研削加工時に比べて前記砥石を低速で回転させながら接触させ、各加工点における前記砥石の接触位置を求める工程と、各加工点における接触位置の分布に基づいて、加工開始位置および加工終了位置を求める工程と、を備えた加工位置設定方法である。
【0008】
本開示は、各加工点における接触位置の分布に基づいて、1番小さな切り込み量を加工開始位置とし、1番大きな切り込み量を加工終了位置とする、加工位置設定方法である。
【0009】
本開示は、前記複数の加工点は5~20点に定められている、加工位置設定方法である。
【0010】
本開示は、回転する成形用ホイールを用いて砥石に対して成形加工を施す際の加工位置を設定する加工位置設定方法において、前記成形用ホイールを用いて前記砥石に対して成形加工を開始する際の複数の加工点を抽出する工程と、前記砥石の各加工点に対して、成形加工時に比べて前記成形用ホイールを低速で回転させながら接触させ、各加工点における前記成形用ホイールの接触位置を求める工程と、各加工点における接触位置の分布に基づいて、加工開始位置および加工終了位置を求める工程と、を備えた加工位置設定方法である。
【0011】
本開示は、各加工点における接触位置の分布に基づいて、1番小さな切り込み量を加工開始位置とし、1番小さな切り込み量を加工終了位置とする、加工位置設定方法である。
【0012】
本開示は、前記複数の加工点は5~20点に定められている、加工位置設定方法である。
【0013】
本開示は、回転する砥石と、ワークに対して前記砥石を相対的に駆動させる駆動機構と、制御部とを備え、前記制御部は、前記砥石を用いて前記ワークに対して研削加工を施す際の複数の加工点を抽出する加工点抽出部と、前記ワークの各加工点に対して、研削加工時に比べて前記砥石を低速で回転させながら接触させ、各加工点における前記砥石の接触位置を求める接触位置検出部と、各加工点における接触位置の分布に基づいて、加工開始位置および加工終了点を求める加工開始位置および加工終了位置決定部と、を備えた研削加工装置である。
【0014】
本開示は、回転する成形用ホイールと、砥石に対して前記成形用ホイールを相対的に駆動させる駆動機構と、制御部とを備え、前記制御部は、前記成形用ホイールを用いて前記砥石に対して成形加工を施す際の複数の加工点を抽出する加工点抽出部と、前記砥石の各加工点に対して、成形加工時に比べて前記成形用ホイールを低速で回転させながら接触させ、各加工点における前記成形用ホイールの接触位置を求める接触位置検出部と、各加工点における接触位置の分布に基づいて、加工開始位置および加工終了点を求める加工開始位置および加工終了位置決定部と、を備えた成形加工装置である。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、砥石を用いてワークに対して研削加工を施す場合、あるいは成形用ホイールを用いて砥石に成形加工を施す場合、加工開始位置および加工終了位置を適切に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは本開示の第1の実施の形態による研削装置の一例を示す概略図。
【
図2】
図2はワークと砥石の配置関係を示す斜視図。
【
図4】
図4は加工位置設定方法の具体的作用を示す図。
【
図6】
図6は研削加工におけるアタリ確認加工点における接触位置の分布を示す図。
【
図7】
図7は本開示の第2の実施の形態の作用を示す図。
【
図8】
図8は成形加工におけるアタリ確認加工点における接触位置の分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施の形態>
以下、本開示の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
まず、
図1および
図2により、回転する砥石を用いてワークに対して研削加工を施す研削加工装置1について説明する。
図1に示すように研削加工装置1は、その主要な構成として、機台10と、機台10上に設けられたX軸テーブル12と、X軸テーブル12上に設けられたY軸カラム13と、Y軸カラム13に取り付けられたY軸テーブル14と、Y軸テーブル14に取り付けられた支持台15と、支持台15に設けられた工具スピンドルユニット20とを備えている。このうち工具スピンドルユニット20は工具スピンドル20aと、工具スピンドルモータ20bとを有する。
【0019】
また工具スピンドル20aに、砥石22が保持され、この工具スピンドル20aにより砥石22が回転する。
【0020】
X軸テーブル12は、機台10上に設けられる。X軸テーブル12は、X軸方向に直線移動が可能である。X軸テーブル12は、例えば、図示しないサーボモータにより駆動される。
【0021】
また機台10上にZ軸テーブル16が設けられ、このZ軸テーブル16は、Z軸方向に直線移動が可能である。Z軸テーブル16は、例えば、図示しないサーボモータによりZ軸方向に駆動される。X軸テーブル12,Y軸テーブル14およびZ軸テーブル16により、駆動機構10Aが構成されている。
【0022】
Z軸テーブル16上には、ワークスピンドルユニット18が搭載されている。ワークスピンドルユニット18は、回転可能なワークスピンドル18aと、ワークスピンドルモータ18bと、ワークスピンドル18aに連結されるとともに、後述するワークWを保持するワーク保持具18cとを有する。
【0023】
ワークスピンドル18aは、空気軸受けにより回転軸Aの周りに回転可能であり、ワークスピンドル18aは、ワークスピンドルモータ18bにより回転駆動される。
【0024】
ワーク保持具18cは、ワークスピンドル18aの先端部に固定され、ワークWを保持する。またワークスピンドル18aは、ワークWを回転軸Aの周りに所望の回転数で回転させる。
【0025】
Y軸カラム13は、X軸テーブル12上に固定される。Y軸カラム13は、Y軸テーブル14を支持するとともに、Y軸テーブル14は、Y軸方向(鉛直方向)に直線移動が可能である。Y軸テーブル14は、例えば、図示しないサーボモータにより駆動される。
【0026】
またY軸テーブル14には、上述のように、支持台15を介して工具スピンドルユニット20が固定されている。工具スピンドルユニット20は、工具スピンドル20a、及び工具スピンドルモータ20bを備える。
【0027】
図1および
図2に示すように、ワークスピンドル18aの回転軸Aと、工具スピンドル20aの回転軸Bは同一水平面上にあって平面視でみて所定角度をもって互いに交差する。
【0028】
また工具スピンドル20aは、空気軸受けにより回転軸Bの周りに回転可能である。工具スピンドル20aは、工具スピンドルモータ20bにより回転駆動される。
【0029】
工具スピンドル20aの先端に、工具としての砥石22が取付られ、工具スピンドル20aにより砥石22が回転する。回転する砥石22により、ワークWが研削される。
【0030】
工具スピンドル20aは、X軸テーブル12に間接的に連結され、X軸テーブル12は、砥石22をX軸方向に所望の送り速度で移動させる。
【0031】
砥石22は、例えば、円盤状をなし、ダイヤモンド砥粒が樹脂で固められたレジンボンド系砥石を含む。
【0032】
ワークWは、例えば、自由曲面を有するガラス材からなる。
【0033】
またX軸テーブル12、Y軸テーブル14、工具スピンドルモータ12b、ワークスピンドルモータ18bおよびZ軸テーブル16には、制御部24が接続されている。
【0034】
制御部24は、例えば、マイクロコントローラを含む。制御部24を構成するマイクロコンピュータは、例えば、CPU、メモリを備え、メモリには、NC加工プログラムが記憶される。
【0035】
制御部24は、X軸テーブル12、Y軸テーブル14、及び、Z軸テーブル16をNC加工プログラムに従って制御する。すなわち制御部24は、X軸、Y軸、及び、Z軸の同時3軸制御を行う。
【0036】
X軸、Y軸、及び、Z軸の各制御軸に関しては、図示しないリニアスケール等が設けられ、フルクローズド方式による位置フィードバック制御が行われる。
【0037】
X軸テーブル12、Y軸テーブル14、及び、Z軸テーブル16の位置を、1nm以下の精度で制御することが、非球面の加工精度を向上させる観点から望ましい。
【0038】
また、制御部24は、NC加工プログラムに従って、ワークスピンドルユニット18、及び、工具スピンドルユニット20を制御する。具体的には制御部24は、ワークスピンドルモータ18bの回転を制御することで、ワークWの回転数を制御する。また、制御部24は、工具スピンドルモータ20bの回転を制御することで、砥石22の回転数を制御する。
【0039】
ワークWの回転数は、例えば、10rpm以上3000rpm以下である。ワークWの回転数は、回転軸Aから砥石22とワークWの接触点(加工点)までの距離を関数として制御することが可能である。ワークWの回転数を、0.01rpm以下の精度で制御することが、非球面の加工精度を向上させる観点から望ましい。
【0040】
砥石22の回転数は、例えば、100rpm以上80000rpm以下である。
【0041】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0042】
図3に示すように、まず凸部表面(自由曲面)を有するガラス材からなるワークWを準備する。本実施の形態において、ワークWに対しては予め前処理加工工程において、前処理加工が施され、ワークWの凸状表面はある程度の精度をもって加工済みとなっている。本実施の形態においては、ワークWの凸状表面に対して更に研削加工を施し、高精度に凸状表面を仕上げる。
【0043】
図1乃至
図3に示すように、まずワークWを回転軸Aの周りに所望の回転数で回転させる。また、砥石22を回転軸Bの周りに回転させる。
【0044】
次に、砥石22の外周を、ワークWの凸部の外周縁部に接触させる。そして、砥石22を凸部表面に沿って凸部の中心部まで所望の送り速度で移動させながらワークWの研削加工を行う。砥石22の送り速度は、例えば、1mm/min以上15mm/min以下である。砥石22によるワークWの切り込み量(研削厚み)は、例えば、0.25μm以上10μm以下である。
【0045】
ワークWと砥石22の相対移動は、制御部24によるX軸テーブル12、Y軸テーブル14およびZ軸テーブル16の制御により行われる。
【0046】
砥石22とワークWの接触点(加工点)を、図中Pで表す(
図3参照)。
【0047】
このように自由曲面を有するガラス材からなるワークWに対して砥石22を回転させながら接触させる。このようにして、ワークWに対して砥石22を用いて研削加工が施される。
【0048】
本実施の形態においては、上述した砥石22を用いたワークWに対する研削加工を施す前に、ワークWに対する砥石22の加工開始位置および加工終了位置を予め設定しておく。
【0049】
以下ワークWに対する砥石22の加工開始位置および加工終了位置を設定する加工位置設定方法について述べる。
【0050】
はじめに
図5により、砥石22の加工開始位置および加工終了位置を設定する加工位置設定の原理について述べる。
【0051】
一般に
図5に示すように、ワークWに対して砥石22を用いて研削加工を施す場合、砥石22を回転させながらワークWも回転させる。
図5において回転するワークWは便宜上、水平方向に移動する状態で示されている。
【0052】
このように砥石22を回転させながら、ワークWも回転させ、この状態でワークWに対して砥石22を接近させる。次にワークWに対して砥石22を接触させながら、ワークWに対して砥石22により研削加工を施す。
【0053】
この場合、研削加工を施す前に、研削加工を開始する際のワークWと砥石22との間の加工開始位置および加工終了位置を設定する必要がある。
【0054】
図5に示すように、研削加工を開始する際のワークWと砥石22とを接近させすぎると、ワークWに形成された凸部W1に対して過大な切り込みを行う必要がある。この場合は、ワークWに対して砥石22から過大な力が加わることが考えられ、ワークWに対する加工精度に支障が生じる。
【0055】
他方、研削加工を開始する際のワークWと砥石22とを過度に離すと、ワークWの凸部W1に対する過大な切り込みを防ぐことができるが、加工開始時にワークWに対して砥石22が大きく離れ、このため加工時間が増大することも考えられる。
【0056】
同様に研削加工を終わらせるワークWと砥石22との間の加工終了位置が浅すぎるとワークWに凹部W2のような未加工部分が残り、追加の加工が必要となることがある。他方、ワークWと砥石22との間の加工終了位置が深すぎると、ワークWに凹部W2のような未加工部分は残らないが、加工時間が長くなる。
【0057】
そこで本実施の形態においては、研削加工を開始する際の加工開始位置および研削加工を終了させる際の加工終了位置を以下のように設定する。
【0058】
はじめに制御部24がワークW表面上の数点、3~30点、好ましくは、5~20点をアタリ確認用加工点(以下、単に加工点ともいう)として抽出する。この場合、制御部24は内蔵されている工具軌跡生成プログラムのデータファイルから相当する工具軸を抽出する。ここで、アタリ確認用加工点を3未満の点に定めると、加工開始位置および加工終了位置を精度良く設定することが難しくなる。他方、アタリ確認用加工点を31以上に定めると、加工開始位置および加工終了位置を精度よく設定することができるが、加工開始位置および加工終了位置を設定する加工位置の設定工程に長時間を要してしまう。
【0059】
次に、制御部24は自動探索プログラムを作成し、上述のデータファイルから確認用加工点を自動的に抽出する。制御部24による加工点抽出は加工点抽出部24Aにより行われる。
【0060】
制御部24は、次にアタリ確認用プログラムを作成し、アタリ確認用工具動作を自動生成する。
【0061】
次に制御部24は、砥石22を実際の研削加工時の回転数(200rpm以上8000rpm以下)よりかなり低速の回転数(100rpm)にて回転させる。
【0062】
この場合
図4に示すように、制御部24は工具スピンドル20aの回転数をエンコーダ信号により管理する。
【0063】
具体的には制御部24は、工具スピンドルモータ20bを所望の回転数で駆動制御するドライバ24aと、高速カウンタ24bを含み、工具スピンドル20aからのエンコーダ信号がドライバ24aに送られる。次にドライバ24aからの高速カウンタ24bへパルス信号が送られ、この高速カウンタ24bにより工具スピンドル20aの回転数が求められる。
【0064】
ところで高速カウンタ24bにより求められた工具スピンドル20aの回転数が基準値以下となった場合、制御部24はトリガ信号を発生させ、砥石22を退避させるスキップ動作を行う。
【0065】
その後、制御部24は(1)ワークWと砥石22を相対的に移動させ、ワークW上の上述したアタリ確認用加工点近傍まで砥石22をもってくる。この間、砥石22は低速回転数で回転している。
【0066】
(2)次に制御部24は、ワークW上のアタリ確認用加工点において、砥石22を切り込み方向へ移動させる。
【0067】
(3)制御部24は、次に高速カウンタ24bにより工具スピンドル20aの回転数を監視し、工具スピンドル20aの回転数が基準値より低下した段階で、ワークWと砥石22とが接触したと判断する。この時、制御部24は砥石22が退避するスキップ動作を生じさせる。
【0068】
制御部24はこのとき、内蔵された接触位置検出部24Bにより当該アタリ確認用加工点における接触位置を求めることができる。
【0069】
(4)制御部24は、すべてのアタリ確認用加工点において、上述した(1)(2)(3)の作用を繰り返す。
【0070】
このことによりすべてのアタリ確認用加工点において、砥石22の接触位置が求められる。
【0071】
(5)このようにして各アタリ確認用加工点における砥石22の接触位置から接触位置の分布が求められる。
【0072】
図6はワークW上の各アタリ確認用加工点における砥石22の接触位置の分布を示す図である。
【0073】
図6に示す各アタリ確認用加工点における砥石22の接触位置は、砥石22のワークWに対する切り込み量に対応する。制御部24はこの砥石22の接触位置の分布に基づいて、砥石22のワークWに対する切り込み量が最も小さな加工点(最小切り込み量をもつ加工点)、すなわち切り込み量が-1.3μmの加工点が最も外方へ突出する加工点と判断する。制御部24は内蔵された加工開始位置および加工終了位置決定部24Cにより、この切り込み量が-1.3μmの加工点の切り込み量に基づいて加工開始位置を定める。
【0074】
すなわち、切り込み量が-1.3μmの加工点の切り込み量に基づいて研削加工を開始する際のワークWと砥石22との間の加工開始位置を定める(
図5参照)。
【0075】
また、制御部24は、この砥石22の接触位置の分布に基づいて、砥石22のワークWに対する切り込み量が最も大きな加工点(最大切り込み量をもつ加工点)、すなわち切り込み量が-4.6μmの加工点が最も内方へ引っ込む加工点と判断する。制御部24は内蔵された加工開始位置および加工終了位置決定部24Cにより、この切り込み量が-4.6μmの加工点の切り込み量に基づいて、研削加工を終了する際のワークWと砥石22との間の加工終了位置を定める(
図5参照)。
【0076】
図6に示すように本実施の形態においては、例えば9点のアタリ確認用加工点が設定されている。
【0077】
制御部24は、このようにして加工開始位置および加工終了位置決定部24Cにより、加工位置開始位置および加工終了位置を求めた後、この加工開始位置からワークWに対する砥石22による研削加工を開始する。次に制御部24は研削加工を続けた後、加工終了位置において、研削加工を終了させる。
【0078】
以上のように本実施の形態によれば、ワークW上のアタリ確認用加工点を予め求めておき、各アタリ確認用加工点毎にワークWに対する砥石22の接触位置を求めることができる。そして制御部24は、砥石22の接触位置の分布に基づいて、切り込み量が最も小さな加工点を特定し、この加工点における切り込み量から加工開始位置を適切に定めることができる。このためワークWと砥石22とを過度に接近させて砥石22によりワークWに対して過大な切り込みを行うことはない。このように砥石22からワークWに対して過大な力が加わることもないため、ワークWに対する加工精度が低下することはない。
【0079】
またワークWと砥石22とを過度に離すことにより加工時間が増大する状態をなくすことができる。
【0080】
また、制御部24は砥石22の接触位置の分布に基づいて、切り込み量が最も大きな加工点を特定し、この加工点における切り込み量から加工終了位置を適切に定めることができる。このため、ワークWと砥石22との間の加工終了位置を過度に浅くとることにより、ワークWに凹部W2のような未加工部分が残ることはなく、追加加工を行う必要もなくなる。同様にワークWと砥石22との間の加工終了位置を深く取り過ぎて加工時間が長くなることもない。
【0081】
なお、ワークWに対する砥石22による加工開始位置および加工終了位置は、上述のように制御部24によりすべて自動的に求められる。
【0082】
そして、制御部24は自動的に加工開始位置および加工終了位置を求めた後、ワークWに対する砥石22による研削加工を開始する。
【0083】
このため例えば、従来のようにワークWと砥石22との接触音等を聞きながらワークWに対する砥石22による加工開始位置を現場の作業者が定め、作業者がワークWに対して砥石22をこの加工開始位置にもってきて研削加工を開始する場合、あるいは作業者がマジック等を用いてマーキングしたり、あるいは目視により確認し、研削終了位置を定めて研削加工を終了する場合に比べて、当業者の熟練度と無関係に加工開始位置および加工終了位置を精度良く求めることができる。
【0084】
また加工開始位置を定めるにあたり、作業者がワークWと砥石22との接触音を聞く等の関与をする必要がないため、作業現場における作業リスクが軽減される。また加工開始位置を作業者が関与することなく自動的に求めることができるので、研削加工作業の効率化を図ることができ、かつ精度良く研削加工を実施することができる。また、加工終了位置を定めるにあたり、作業者が目視で確認して加工終了位置を定めて、研削加工を終了する必要はない。このため、作業現場における作業リスクが軽減される。また加工終了位置位置を作業者が関与することなく自動的に求めることができるので、研削加工作業の効率化を図ることができ、かつ精度良く研削加工を実施することができる。
【0085】
なお、上記本実施の形態において、
図6に示すように、9点のアタリ確認用加工点を設けた例を示した。しかしながらこのアタリ確認用加工点の数は、上述のように3~30点の任意の数だけ定めることができる。
<第2の実施の形態>
次に本開示の第2の実施の形態について
図7により説明する。
【0086】
図7に示す第2の実施の形態は、回転する成形用ホイール30A,30Bを用いて砥石32に対して成形加工を施す場合において、成形用ホイール30A,30Bによる成形加工の加工開始位置および加工終了位置を設定するものである。
【0087】
図7に示す第2の実施の形態において、成形用ホイール30A,30Bは、いずれもダイヤモンドホイールからなり、砥石32に対して成形加工を施し、砥石32の形状を精度良く仕上げるものである。このうち、成形用ホイール30Aは砥石32の側面32Aを仕上げるために用いられ、成形用ホイール30Bは砥石32の端面32Bを仕上げるために用いられる。
【0088】
図7に示す第2の実施の形態において、砥石32および成形用ホイール30A,30Bは、図示しないX軸テーブル、Y軸テーブルおよびZ軸テーブルを含む駆動機構35によりX軸、Y軸及びZ軸の3軸方向に沿って相対的に駆動される。そしてこの駆動機構35は制御部34により駆動制御される。
【0089】
砥石32に対して成形用ホイール30A,30Bを用いて成形加工を施し、砥石32の側面32Aおよび端面32Bを仕上げる場合、砥石32に対する成形用ホイール30A,30Bの加工開始位置および加工終了位置を以下のように設定する。
【0090】
本実施の形態において成形用ホイール30A,30Bを用いて成形加工を施す際の加工開始位置および加工終了位置は互いに同様の方法により設定されるため、ここでは砥石32の側面32Aを仕上げる成形用ホイール30Aを例にとって説明する。
【0091】
はじめに制御部34が内蔵する加工点抽出部24Aにおいて、砥石32の側面32A表面上の数点、3~20点、好ましくは、3~10点をアタリ確認用加工点(以下、単に加工点ともいう)として抽出する。この場合、制御部34は内蔵されている工具軌跡生成プログラムのデータファイルから相当する工具軸を抽出する。ここで、アタリ確認用加工点を3未満の点に定めると、加工開始位置および加工終了位置を精度良く設定することが難しくなる。他方、アタリ確認用加工点を31以上に定めると、加工開始位置および加工終了位置を精度よく設定することができるが、加工開始位置および加工終了位置を設定する設定工程に長時間を要してしまう。
【0092】
次に、制御部34は自動探索プログラムを作成し、上述のデータファイルから確認用加工点を自動的に抽出する。
【0093】
制御部34は、次にアタリ確認用プログラムを作成し、アタリ確認用工具動作を自動生成する。
【0094】
次に制御部34は、成形用ホイール30Aを実際の成形加工時の回転数よりかなり低速の回転数(100rpm)にて回転させる。
【0095】
この場合、制御部34は成形用ホイール30Aの回転数をエンコーダ信号により管理する。
【0096】
具体的には制御部34は、成形用ホイール30Aを所望の回転数で駆動制御すると、高速カウンタを含み、成形用ホイール30Aからのエンコーダ信号がドライバに送られる。次にドライバからの高速カウンタへパルス信号が送られ、この高速カウンタにより成形用ホイール30Aの回転数が求められる。
【0097】
その後、制御部34は(1)砥石32と成形用ホイール30Aを相対的に移動させ、砥石32の側面32A上の上述したアタリ確認用加工点近傍まで成形用ホイール30Aをもってくる。この間、成形用ホイール30Aは低速回転数で回転している。
【0098】
(2)次に制御部34は、砥石32の側面32A上のアタリ確認用加工点において、成形用ホイール30Aを切り込み方向へ移動させる。
【0099】
(3)制御部34は、次に高速カウンタにより成形用ホイール30Aの回転数を監視し、成形用ホイール30Aの回転数が基準値より低下した段階で、砥石32の側面32Aと成形用ホイール30Aとが接触したと判断する。この時、制御部34は成形用ホイール30Aが退避するスキップ動作を生じさせる。
【0100】
制御部34はこのとき、内蔵された接触位置検出部24Bにより、当該アタリ確認用加工点における接触位置を求めることができる。
【0101】
(4)制御部34は、すべてのアタリ確認用加工点において、上述した(1)(2)(3)の作用を繰り返す。
【0102】
このことによりすべてのアタリ確認用加工点において、成形用ホイール30Aの接触位置が求められる。
【0103】
(5)このようにして各アタリ確認用加工点における成形用ホイール30Aの接触位置から接触位置の分布が求められる。
【0104】
図8は砥石32の側面32A上の各アタリ確認用加工点における成形用ホイール30Aの接触位置の分布を示す図である。
【0105】
図8に示す各アタリ確認用加工点における成形用ホイール30Aの接触位置は、成形用ホイール30Aの砥石32の側面32Aに対する切り込み量に対応する。制御部34はこの成形用ホイール30Aの接触位置の分布に基づいて、成形用ホイール30Aの砥石32の側面32Aに対する切り込み量が最も小さな加工点(最小切り込み量をもつ加工点)、すなわち切り込み量が-1.3μmの加工点が最も外方へ突出する加工点と判断する。制御部34は内蔵された加工開始位置および加工終了位置決定部24Cにより、この切り込み量が-1.3μmの加工点の切り込み量に基づいて加工開始位置を定める。
【0106】
また、制御部34はこの成形用ホイール30Aの接触位置の分布に基づいて、成形用ホイール30Aの砥石32の側面32Aに対する切り込み量が最も大きな加工点(最大切り込み量をもつ加工点)、すなわち切り込み量が-4.5μmの加工点が最も内方へ引っ込む加工点と判断する。制御部34は内蔵された加工開始位置および加工終了位置決定部24Cにより、この切り込み量が-4.5μmの加工点の切り込み量に基づいて加工終了位置を定める。
【0107】
図8に示すように本実施の形態においては、例えば9点のアタリ確認用加工点が設定されている。
【0108】
制御部34は、このようにして加工開始位置および加工終了位置を求めた後、この加工開始位置から砥石32の側面32Aに対する成形用ホイール30Aによる成形加工を開始する。
【0109】
次に制御部34は、成形加工を続けた後、加工終了位置で成形加工を終了させる。
【0110】
以上のように本実施の形態によれば、砥石32の側面32A上のアタリ確認用加工点を予め求めておき、各アタリ確認用加工点毎に砥石32の側面32Aに対する成形用ホイール30Aの接触位置を求めることができる。そして制御部34は、成形用ホイール30Aの接触位置の分布に基づいて、切り込み量が最も小さな加工点を特定し、この加工点における切り込み量から加工開始位置を適切に定めることができる。このため砥石32の側面32Aと成形用ホイール30Aとを過度に接近させて成形用ホイール30Aにより砥石32の側面32Aに対して過大な切り込みを行うことはなく、成形用ホイール30Aから砥石32の側面32Aに対して過大な力が加わることもないため、砥石32の側面32Aに対する加工精度が低下することはない。
【0111】
また砥石32の側面32Aと成形用ホイール30Aとを過度に離すことにより、加工時間が増大する状態をなくすことができる。
【0112】
そして制御部34は、成形用ホイール30Aの接触位置の分布に基づいて、切り込み量が最も大きな加工点を特定し、この加工点における切り込み量から加工終了位置を適切に定めることができる。このため砥石32の側面32Aと成形用ホイール30Aとの間の加工終了位置を浅くとることにより、砥石32の側面32Aに凹部W2のような未加工部分が残ることはなく、追加加工を行う必要もなくなる。同様に砥石32の側面32Aと成形用ホイール30Aとの間の加工終了位置を深く取り過ぎて、加工時間が長くなることを防ぐことができる。
【0113】
さらにまた、砥石32の側面32Aに対する成形用ホイール30Aによる加工開始位置および加工終了位置は、上述のように制御部34によりすべて自動的に求められる。
【0114】
そして制御部34は自動的に加工開始位置および加工終了位置を求めた後、砥石32の側面32Aに対する成形用ホイール30Aによる成形加工を開始する。
【0115】
このため例えば、従来のように、砥石32の側面32Aと成形用ホイール30Aとの接触音等を聞きながら砥石32の側面32Aに対する成形用ホイール30Aの加工開始位置を現場の作業者が求め、作業者が砥石32の側面32Aに対して成形用ホイール30Aをこの加工開始位置にもってきて成形加工を開始する場合に比べて、当業者の熟練度と無関係に加工開始位置を精度良く求めることができる。
【0116】
また加工開始位置を定めるにあたり、作業者が砥石32の側面32Aと成形用ホイール30Aとの接触音を聞く等の関与をする必要がないため、作業現場における作業リスクが軽減される。また加工開始位置を作業者が関与することなく自動的に求めることができるので、成形加工作業の効率化を図ることができ、かつ精度良く成形加工を実施することができる。
【0117】
また加工終了位置を定めるにあたり、作業者が目視で確認して加工終了位置を定め、成形加工を終了する必要がないため、作業現場における作業リスクが軽減される。また加工終了位置位置を作業者が関与することなく自動的に求めることができるので、成形加工作業の効率化を図ることができ、かつ精度良く成形加工を実施することができる。
【0118】
なお、上記本実施の形態において、
図8に示すように、9点のアタリ確認用加工点を設けた例を示したが、しかしながらこのアタリ確認用加工点の数は、上述のように3~30点の任意の数だけ定めることができる。
【符号の説明】
【0119】
1 研削加工装置
10 機台
12 X軸テーブル
13 Y軸カラム
14 Y軸テーブル
16 Z軸テーブル
18 ワークスピンドルユニット
18a ワークスピンドル
18b ワークスピンドルモータ
18c ワーク保持具
20 工具スピンドルユニット
20a 工具スピンドル
20b 工具スピンドルモータ
22 砥石
24 制御部
24a ドライバ
24b 高速カウンタ
30A 成形用ホイール
30B 成形用ホイール
32 砥石
32A 側面
32B 端面
34 制御部
35 駆動機構