(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055581
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240411BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240411BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 H
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162634
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100183678
【弁理士】
【氏名又は名称】丸島 裕
(72)【発明者】
【氏名】高杉 祐也
(72)【発明者】
【氏名】柏原 知美
(72)【発明者】
【氏名】河野 真一朗
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AC12
3E086AC13
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA43
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA31
3E086CA32
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK06B
4F100AK63C
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CB00B
4F100CB03C
4F100DC13
4F100EH23B
4F100EJ37A
4F100EJ38A
4F100GB16
4F100JC00A
4F100JC00C
4F100JL12C
(57)【要約】
【課題】モノマテリアル化された積層体を用いて製造された包装袋の開封性の向上。
【解決手段】延伸ポリエチレン基材とシーラント層とを少なくとも備える積層体であって、延伸ポリエチレン基材は、ポリエチレンを主成分として含有し、シーラント層は、ポリエチレンを主成分として含有し、積層体は、積層体の表面において第1の方向を有し、積層体は、第1の方向に延びる切り込み線を有し、切り込み線は、複数の切り込み部を第1の方向に沿って所定間隔を空けて有する、積層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸ポリエチレン基材とシーラント層とを少なくとも備える積層体であって、
前記延伸ポリエチレン基材は、ポリエチレンを主成分として含有し、
前記シーラント層は、ポリエチレンを主成分として含有し、
前記積層体は、前記積層体の表面において第1の方向を有し、
前記積層体は、前記第1の方向に延びる切り込み線を有し、前記切り込み線は、複数の切り込み部を前記第1の方向に沿って所定間隔を空けて有する、
積層体。
【請求項2】
前記延伸ポリエチレン基材が、1軸延伸ポリエチレン基材または2軸延伸ポリエチレン基材である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記延伸ポリエチレン基材と前記シーラント層との間に、ポリエチレンを主成分として含有する押出樹脂層、または接着剤により構成される接着剤層を備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記延伸ポリエチレン基材および前記シーラント層の少なくとも一つが、バイオマス由来のポリエチレンを含有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
ポリエチレンの含有割合が、前記積層体100質量%中、80質量%以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体を備える包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム製品は、様々な機能を発現させるために、異なる材質のフィルム同士(例えば、基材としての2軸延伸ポリエステルフィルムまたは2軸延伸ナイロンフィルムと、シーラント層としてのポリエチレンフィルム)を用いて製造されている(例えば、特許文献1参照)。このようなフィルム製品から、包装袋が作製されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、プラスチック海洋汚染および地球温暖化など、環境問題に対する取り組みが重要視されている。したがって、包装材料などには、高いリサイクル性が求められている。しかしながら、異なる材質のフィルム同士を用いて製造されたフィルム製品は、それぞれのフィルムに分離することが一般的に困難であり、リサイクルしにくいという問題がある。この問題を解決するために、フィルム製品を、同種の素材であるポリエチレンフィルム同士を用いて製造することにより、リサイクル性を高めるという、単一素材(モノマテリアル)化という技術が検討されている。ポリエチレンによるモノマテリアル化は、特性の異なるポリエチレンフィルム同士を用いることで、例えば、基材としての延伸ポリエチレンフィルムと、シーラント層としてのポリエチレンフィルムとを用いることで、実現することができる。
【0005】
しかしながら、本開示者らは、ポリエチレンによりモノマテリアル化された積層体を用いて製造された包装袋は、開封性が低いという問題を見出した。本開示の目的は、モノマテリアル化された積層体を用いて製造された包装袋の開封性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の積層体は、延伸ポリエチレン基材とシーラント層とを少なくとも備え、延伸ポリエチレン基材は、ポリエチレンを主成分として含有し、シーラント層は、ポリエチレンを主成分として含有し、積層体は、積層体の表面において第1の方向を有し、積層体は、第1の方向に延びる切り込み線を有し、切り込み線は、複数の切り込み部を第1の方向に沿って所定間隔を空けて有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、モノマテリアル化された積層体を用いて製造された包装袋の開封性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の積層体の一実施形態の模式断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の積層体の一実施形態の模式断面図である。
【
図3】
図3は、切り込み部の形状を説明する上視図である。
【
図4】
図4は、切り込み部の列を説明する上視図である。
【
図5】
図5は、切り込み線を説明する上視図である。
【
図6】
図6は、本開示の包装袋の一実施形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。本開示は多くの異なる形態で実施でき、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されない。図面は、説明をより明確にするため、実施形態に比べ、各層の幅、厚さおよび形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。本明細書と各図において、既出の図に関してすでに説明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
本開示において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補および複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。上記パラメータとしては、例えば、物性値、成分の含有割合および層の厚さが挙げられる。一例として、「パラメータBは、好ましくはA1以上、より好ましくはA2以上、さらに好ましくはA3以上である。パラメータBは、好ましくはA4以下、より好ましくはA5以下、さらに好ましくはA6以下である。」との記載について説明する。この例において、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下でもよく、A1以上A5以下でもよく、A1以上A6以下でもよく、A2以上A4以下でもよく、A2以上A5以下でもよく、A2以上A6以下でもよく、A3以上A4以下でもよく、A3以上A5以下でもよく、A3以上A6以下でもよい。
【0011】
本明細書において、以下の説明で登場する各成分(例えば、ポリエチレンなどのポリオレフィン、α-オレフィン、樹脂材料、および添加剤)は、それぞれ1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0012】
本明細書において、ある層における「主成分」とは、当該層中の含有割合が50質量%超、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である成分をいう。
【0013】
[積層体]
本開示の積層体は、延伸ポリエチレン基材とシーラント層とを少なくとも備える。延伸ポリエチレン基材は、ポリエチレンを主成分として含有する。シーラント層は、ポリエチレンを主成分として含有する。本開示の積層体は、延伸ポリエチレン基材とシーラント層との間に、接着層を備えてもよい。
【0014】
図1および
図2に、本開示の積層体の一実施形態に係る模式断面図を示す。
図1の積層体1は、延伸ポリエチレン基材10と、接着層20と、シーラント層30とを厚さ方向にこの順に備える。
図2の積層体1は、延伸ポリエチレン基材10と、接着補助層40と、押出樹脂層20と、シーラント層30とを厚さ方向にこの順に備える。
図1および
図2の積層体1は、延伸ポリエチレン基材10上に、図示せぬ意匠層をさらに備えてもよい。
【0015】
本開示の積層体は、後述するバイオマスポリエチレンを含有してもよい。本開示の積層体の後述するバイオマス度は、5%以上でもよく、8%以上でもよく、10%以上でもよく、また、70%以下でもよく、50%以下でもよく、40%以下でもよい。
【0016】
本開示の積層体において、延伸ポリエチレン基材とシーラント層とが、それぞれ、同種の樹脂材料であるポリエチレンを主成分として含有する。このような構成を有する積層体を用いることにより、例えば、リサイクル性に優れる包装袋を作製できる。ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンが挙げられるが、これらは同種の樹脂材料に分類される。一方、例えばポリエチレンとポリエステルとは、同種の樹脂材料には分類されない。
【0017】
本開示の積層体におけるポリエチレンの含有割合は、積層体100質量%中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは97質量%以上である。このような積層体は、いわゆるモノマテリアル材料に分類でき、例えばモノマテリアル包装袋の作製に好適に使用できる。
【0018】
本開示の積層体の厚さは、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上、特に好ましくは50μm以上であり、好ましくは350μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは175μm以下、特に好ましくは140μm以下である。
【0019】
本開示の積層体は、積層体の表面において第1の方向を有し、第1の方向に延びる切り込み線を有する。第1の方向は、積層体の表面において所定の一方向に延びる。第1の方向は、例えば、延伸ポリエチレン基材の流れ方向(機械方向、MD)でもよく、延伸ポリエチレン基材の幅方向(TD)でもよく、流れ方向に対して所定の角度(例えば45°)をなす方向でもよい。切り込み線は、積層体および該積層体を備える包装袋を引き裂く際の経路として機能する。切り込み線を有する積層体は、引裂き性に優れる。積層体は、異なる箇所に、第1の方向に延びる複数の切り込み線を有してもよい。積層体は、積層体の表面において第1の方向に対して所定の角度(例えば45°、90°)をなす第2の方向に延びる切り込み線をさらに有してもよい。第2の方向は、積層体の表面において所定の一方向に延びる。このように積層体は、異なる方向に延びる複数の切り込み線を有してもよい。
【0020】
切り込み線は、複数の切り込み部を第1の方向に沿って所定間隔を空けて有する。切り込み部は、積層体を貫通していてもよく、積層体を貫通していなくともよい。例えば、積層体は、延伸ポリエチレン基材とシーラント層とを備え、延伸ポリエチレン基材を貫通する切り込み部を有してもよく、この場合、切り込み部は積層体を貫通していない。
【0021】
個々の切り込み部の形状としては、例えば、第1の方向に対して平行に線状に延びる形状(
図3A)、第1の方向に対して所定の角度をなす方向に線状に延びる形状(
図3B)、V字状(
図3C)、V字の頂点近傍が欠損した形状(
図3D)、およびY字状(
図3E)が挙げられる。上記形状は、積層体の表面の法線方向から視た(平面視した)形状である。個々の切り込み部の形状としては、その他、円形状および楕円形状が挙げられる。
【0022】
一つの切り込み線は、切り込み部の列を、少なくとも1列有し、2列以上有してもよい。本明細書において、切り込み部の列とは、第1の方向に沿った切り込み部の並びを指す。
図4Aは、第1の方向に対して平行に線状に延びる形状を有する切り込み部の列である。
図4Bは、第1の方向に対して所定の角度をなす方向に線状に延びる形状を有する切り込み部の列である。
図4Cは、V字状の切り込み部の列である。
図4Dは、V字の頂点近傍が欠損した形状を有する切り込み部の列である。
図4Eは、Y字状の切り込み部の列である。
【0023】
一つの切り込み線が有する切り込み部の列数は、1以上であり、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは7以下、さらに好ましくは5以下である。列数が2以上であると、例えば、切り込み線を有する表面シートと切り込み線を有する裏面シートとを用いて包装袋を作製する際に、表面シートが備える切り込み線と裏面シートが備える切り込み線との位置合わせを行いやすい。表面シートおよび裏面シートは、それぞれ、本開示の積層体である。
【0024】
【0025】
個々の切り込み部の長さLは、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.6mm以上、さらに好ましくは1mm以上であり、好ましくは6mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは4mm以下である。個々の切り込み部の長さLは、個々の切り込み部を第1の方向に正射影してできる線分の長さを意味する。
【0026】
第1の方向における個々の切り込み部同士の間隔D1は、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.6mm以上、さらに好ましくは1mm以上であり、好ましくは6mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは4mm以下である。
【0027】
切り込み部の列同士の間隔D2は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下、さらに好ましくは3mm以下である。
【0028】
切り込み部は、例えばミシン目である。例えば、積層体に任意の方法でミシン目加工を施することにより積層体に切り込み部を形成してもよく、延伸ポリエチレン基材にミシン目加工を施すことにより延伸ポリエチレン基材に切り込み部を形成し、切り込み部が形成された延伸ポリエチレン基材を用いて積層体を製造してもよい。切り込み部は、レーザー加工により形成してもよい。
【0029】
例えば、ロール状積層体から積層体を巻き出して、ロールにミシン目刃を積層体の進行方向と同じ方向または直交する方向に設け、当該ロールを回転させることにより、上記ミシン目刃により積層体の一定間隔毎にミシン目を貫通形成し、再び積層体をロール状に巻き取る方法が挙げられる。例えば、ロール状延伸ポリエチレン基材から基材を巻き出して、ロールにミシン目刃を基材の進行方向と同じ方向または直交する方向に設け、当該ロールを回転させることにより、上記ミシン目刃により基材の一定間隔毎にミシン目を貫通形成し、再び基材をロール状に巻き取る方法が挙げられる。
【0030】
<延伸ポリエチレン基材>
本開示の積層体は、延伸ポリエチレン基材を備える。
延伸ポリエチレン基材は、ポリエチレンを主成分として含有する。
【0031】
本明細書において、ポリエチレンとは、全繰返し構成単位中、エチレン由来の構成単位の含有割合が50モル%超の重合体をいう。この重合体において、エチレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。上記含有割合は、NMR法により測定される。
【0032】
本明細書において、ポリエチレンは、エチレンの単独重合体でもよく、エチレンと、エチレン以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体でもよい。エチレン以外のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび6-メチル-1-ヘプテン等の炭素数3以上20以下のα-オレフィン、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル等のビニルモノマー、ならびに(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。上記α-オレフィンの炭素数は、好ましくは3以上12以下、より好ましくは3以上8以下である。
【0033】
本明細書において、ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレン、ならびにエチレン-酢酸ビニル共重合体およびエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。延伸ポリエチレン基材の強度および耐熱性という観点から、高密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンが好ましい。延伸ポリエチレン基材の製膜性および加工性という観点から、直鎖状低密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンが好ましい。
【0034】
本明細書において、ポリエチレンの密度は、以下のとおりである。
高密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.945g/cm3を超える。高密度ポリエチレンの密度の上限は、例えば0.965g/cm3である。中密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.930g/cm3を超えて0.945g/cm3以下である。低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.900g/cm3を超えて0.930g/cm3以下である。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.900g/cm3を超えて0.930g/cm3以下である。超低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.900g/cm3以下である。超低密度ポリエチレンの密度の下限は、例えば0.860g/cm3である。本明細書において、ポリエチレンの密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。
【0035】
低密度ポリエチレンは、例えば、高圧重合法によりエチレンを重合して得られるポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン)である。直鎖状低密度ポリエチレンは、例えば、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒またはメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いた重合法によりエチレンおよび少量のα-オレフィンを重合して得られるポリエチレンである。
【0036】
密度または分岐が異なるポリエチレンは、重合方法を適宜選択することによって得られる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒、またはメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で重合を行うことが好ましい。
【0037】
本明細書において、ポリエチレンとしては、バイオマス由来のポリエチレン(以下「バイオマスポリエチレン」ともいう)を用いてもよい。すなわち、ポリエチレンを得るための原料として、化石燃料から得られるエチレン等に代えて、バイオマス由来のエチレン等を用いてもよい。バイオマスポリエチレンは、カーボンニュートラルな材料であることから、積層体または包装袋による環境負荷を低減できる。バイオマスポリエチレンは、例えば、特開2013-177531号公報に記載されている方法により製造できる。市販されているバイオマスポリエチレンを用いてもよい。
【0038】
バイオマスポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーを重合して得られるポリエチレンである。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリエチレンはバイオマス由来となる。
【0039】
バイオマスポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。バイオマスポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンとともに、化石燃料由来のエチレンをさらに含んでもよい。
【0040】
大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出できる。本明細書において、「バイオマス度」とは、バイオマス由来成分の重量比率を示す。例えば、ポリエチレンテレフタレートを例にとる。ポリエチレンテレフタレートは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合した重合体である。エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、ポリエステル中のバイオマス由来成分の重量比率は31.25%である。したがって、バイオマス度の理論値は31.25%である。具体的には、ポリエチレンテレフタレートの質量は192であり、そのうちバイオマス由来のエチレングリコールに由来する質量は60である。したがって、60÷192×100=31.25である。化石燃料由来のエチレングリコールと、化石燃料由来のジカルボン酸とを用いて製造した化石燃料由来のポリエステル中のバイオマス由来成分の重量比率は0%であり、化石燃料由来のポリエステルのバイオマス度は0%である。以下、特に断りのない限り、「バイオマス度」とはバイオマス由来成分の重量比率を示す。
【0041】
理論上、ポリエチレンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマスポリエチレンのバイオマス度は100%となる。化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料ポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料ポリエチレンのバイオマス度は0%である。
【0042】
バイオマスポリエチレンとしては、具体的には、例えば、バイオマス高密度ポリエチレン、バイオマス中密度ポリエチレン、バイオマス低密度ポリエチレン、バイオマス直鎖状低密度ポリエチレンおよびバイオマス超低密度ポリエチレンが挙げられる。バイオマスポリエチレンのバイオマス度は、一実施形態において、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上である。
バイオマスポリエチレンとしては、植物由来ポリエチレンが好ましい。
【0043】
本明細書において、バイオマスポリエチレンやバイオマス由来の樹脂層は、バイオマス度が100%である必要はない。積層体の一部にでもバイオマス由来の原料が用いられていれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減するという趣旨に沿うからである。
【0044】
ポリエチレンとしては、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエチレン(以下「リサイクルポリエチレン」ともいう)を用いてもよい。これにより、積層体または包装袋による環境負荷を低減できる。メカニカルリサイクルとは、一般的に、回収されたポリエチレンフィルムなどを粉砕し、アルカリ洗浄してフィルム表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してフィルム内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、フィルムの汚れを取り除き、再びポリエチレンに戻す方法である。ケミカルリサイクルとは、一般的に、回収されたポリエチレンフィルムなどをモノマーレベルまで分解し、当該モノマーを再度重合してポリエチレンを得る方法である。
【0045】
以上のポリエチレンの説明は、以下の記載におけるポリエチレンに適用できる。
【0046】
延伸ポリエチレン基材に含まれるポリエチレンとしては、延伸ポリエチレン基材の強度および耐熱性という観点からは、高密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンが好ましく、延伸性という観点からは、中密度ポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては、環境負荷の低減という観点から、バイオマスポリエチレンおよび/またはリサイクルポリエチレンを用いてもよい。
【0047】
延伸ポリエチレン基材に含まれるポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、製膜性および加工性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.2g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは30g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。本明細書において、ポリエチレンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。
【0048】
例えばインフレーション法により延伸ポリエチレン基材を製造する場合、延伸ポリエチレン基材に含まれるポリエチレンのMFRは、製膜性および加工性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上5g/10分以下である。例えばTダイ法により延伸ポリエチレン基材を製造する場合、延伸ポリエチレン基材に含まれるポリエチレンのMFRは、製膜性および加工性という観点から、好ましくは3g/10分以上20g/10分以下である。
【0049】
延伸ポリエチレン基材に含まれるポリエチレンの融点(Tm)は、耐熱性という観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、好ましくは140℃以下である。本明細書において、ポリエチレンのTmは、JIS K7121:2012に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により得られる融解ピーク温度である。
【0050】
延伸ポリエチレン基材におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。このような延伸ポリエチレン基材を備える積層体は、例えば、リサイクル性に優れる。
【0051】
延伸ポリエチレン基材が多層構造を有する場合は、延伸ポリエチレン基材を構成する各層におけるポリエチレンの含有割合は、それぞれ独立に、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。このような延伸ポリエチレン基材を備える積層体は、例えば、リサイクル性に優れる。
【0052】
延伸ポリエチレン基材は、ポリエチレン以外の樹脂材料を含有してもよい。当該樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド、ポリエステルおよびアイオノマー樹脂が挙げられる。
【0053】
延伸ポリエチレン基材は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、アンチブロッキング剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、染料および改質用樹脂が挙げられる。
【0054】
延伸ポリエチレン基材は、延伸処理が施されたポリエチレン基材である。延伸処理により、例えば、ポリエチレン基材の耐熱性および強度を向上できる。このような延伸ポリエチレン基材は、例えば包装袋の外層として要求される物性を満足できる。
【0055】
延伸は、1軸延伸でもよく、2軸延伸でもよい。延伸ポリエチレン基材における流れ方向(機械方向、MD)の延伸倍率は、一実施形態において、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下である。延伸ポリエチレン基材における幅方向(TD)の延伸倍率は、一実施形態において、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下である。延伸倍率が2倍以上であると、例えば、ポリエチレン基材の剛性、強度および耐熱性を向上でき、ポリエチレン基材への印刷性を向上でき、また、ポリエチレン基材の透明性を向上できる。延伸倍率が10倍以下であると、例えば、フィルムの破断等を起こさず、良好な延伸を実施できる。延伸ポリエチレン基材は、一実施形態において、1軸延伸フィルムであり、より具体的には、流れ方向に延伸処理された1軸延伸フィルムである。
【0056】
延伸ポリエチレン基材は、手による引裂き性が一般的には高くない。したがって、延伸ポリエチレン基材を備える包装袋は、手による引裂き性、すなわち開封性が充分ではないことがある。本開示の積層体は、切り込み線を有し、引裂き性に優れることから、該積層体を備える包装袋は、基材として延伸ポリエチレン基材を備えながら、開封性に優れる。
【0057】
延伸ポリエチレン基材は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。以下、多層構造を有する延伸ポリエチレン基材を「延伸多層PE基材」ともいう。延伸多層PE基材は、その強度、剛性、耐熱性、印刷性および延伸性に優れるという観点から好ましい。延伸多層PE基材は、2層以上の多層構造を有する。延伸多層PE基材の層数は、一実施形態において、2層以上7層以下であり、例えば、3層以上7層以下、または3層以上5層以下である。延伸多層PE基材の層数は、例えば、3層、5層または7層である。延伸多層PE基材の各層は、それぞれ、ポリエチレンを主成分として含有することが好ましい。
【0058】
多層構造を有する延伸ポリエチレン基材としては、例えば、
(1)高密度ポリエチレンを含有する第1の樹脂層と、中密度ポリエチレンを含有する第2の樹脂層と、高密度ポリエチレンを含有する第3の樹脂層とを厚さ方向にこの順に備える延伸ポリエチレン基材、
(2)中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンを含有する第1の樹脂層と、高密度ポリエチレンを含有する第2の樹脂層と、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第3の樹脂層と、中密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第4の樹脂層と、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンを含有する第5の樹脂層とを厚さ方向にこの順に備える延伸ポリエチレン基材、ならびに
(3)中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンを含有する第1の樹脂層と、中密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第2の樹脂層と、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第3の樹脂層と、中密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第4の樹脂層と、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンを含有する第5の樹脂層とを厚さ方向にこの順に備える延伸ポリエチレン基材
が挙げられる。
【0059】
延伸ポリエチレン基材のヘイズ値は、好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは12%以下である。ヘイズ値は小さいほど好ましいが、一実施形態において、その下限値は0.1%または1%でもよい。延伸ポリエチレン基材のヘイズ値は、JIS K7136:2000に準拠して測定される。
【0060】
延伸ポリエチレン基材の厚さは、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下である。厚さが10μm以上の延伸ポリエチレン基材は、例えば、剛性および強度に優れる。厚さが60μm以下の延伸ポリエチレン基材は、例えば、加工性に優れる。
【0061】
延伸ポリエチレン基材には、表面処理が施されていてもよい。このような延伸ポリエチレン基材は、例えば、他の層との密着性に優れる。表面処理の方法としては、例えば、物理的処理および化学的処理が挙げられる。物理的処理としては、例えば、コロナ処理、オゾン処理、酸素ガスおよび/または窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、ならびにグロー放電処理が挙げられる。化学的処理としては、例えば、化学薬品を用いた酸化処理が挙げられる。
【0062】
延伸ポリエチレン基材は、例えば、インフレーション法またはTダイ法により、ポリエチレンまたはその樹脂組成物を製膜し、延伸することにより製造できる。延伸多層PE基材は、例えば、インフレーション法またはTダイ法により、複数のポリエチレンまたはその樹脂組成物を製膜して積層物を形成し、得られた積層物を延伸することにより製造できる。延伸処理により、ポリエチレン基材の透明性、剛性、強度および耐熱性を向上できる。延伸ポリエチレン基材は、例えば包装袋の基材として好適に使用できる。インフレーション製膜機において延伸も合わせて行うことができる。
【0063】
多層構造を有する延伸ポリエチレン基材は、一実施形態において、共押出樹脂フィルムであり、該延伸ポリエチレン基材を構成する各層は、共押出樹脂層である。共押出樹脂フィルムは、例えば、インフレーション法またはTダイ法などを利用して製膜することにより作製できる。
【0064】
延伸多層PE基材は、一実施形態において、多層構造を有する積層物(前駆体)を、延伸処理して得られる。具体的には、各層を構成する樹脂材料をチューブ状に共押出して製膜し、積層物を製造できる。あるいは、各層を構成する樹脂材料をチューブ状に共押出し、次いで、対向する層同士をゴムロールなどにより圧着することによって、積層物を製造できる。このような方法により積層物を製造することにより、欠陥品数を顕著に低減でき、生産効率を向上できる。
【0065】
延伸ポリエチレン基材は、バイオマスポリエチレンを含有してもよい。延伸ポリエチレン基材のバイオマス度は、10%以上でもよく、20%以上でもよく、25%以上でもよく、また、65%以下でもよく、55%以下でもよく、50%以下でもよい。
【0066】
延伸ポリエチレン基材が多層構造を有する場合、すなわち延伸ポリエチレン基材がポリエチレンを主成分として含有する樹脂層を2層以上備える場合、樹脂層の少なくとも1層が、バイオマスポリエチレンを含有してもよい。例えば、高密度ポリエチレンを含有する第1の樹脂層と、中密度ポリエチレンを含有する第2の樹脂層と、高密度ポリエチレンを含有する第3の樹脂層とを厚さ方向にこの順に備える延伸ポリエチレン基材について説明する。この場合、第1の樹脂層における高密度ポリエチレン、第2の樹脂層における中密度ポリエチレン、および第3の樹脂層における高密度ポリエチレンから選択される少なくとも1つが、バイオマスポリエチレンでもよい。
【0067】
本開示の積層体は、基材を2つ以上備えてもよい。例えば、第1の基材としての蒸着フィルムと、第2の基材としての延伸ポリエチレン基材と、シーラント層とを厚さ方向にこの順に備える積層体でもよく、第1の基材としての延伸ポリエチレン基材と、第2の基材としての蒸着フィルムと、シーラント層とを厚さ方向にこの順に備える積層体でもよい。蒸着フィルムは、延伸ポリエチレン基材と、蒸着膜と、必要に応じてバリアコート層とを備える。
【0068】
<シーラント層>
本開示の積層体は、シーラント層を備える。
シーラント層は、ポリエチレンを主成分として含有する。このようなシーラント層を備える積層体およびその包装袋は、リサイクル性に優れ、例えば使用済みの包装袋を回収した後、延伸ポリエチレン基材とシーラント層とを分離する必要がない。
【0069】
シーラント層に含まれるポリエチレンは、延伸ポリエチレン基材に含まれるポリエチレンと同一でもよく、異なってもよい。シーラント層に含まれるポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンが挙げられ、ヒートシール性という観点から、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては、環境負荷の低減という観点から、バイオマスポリエチレンおよび/またはリサイクルポリエチレンを用いてもよい。
【0070】
シーラント層に含まれるポリエチレンの融点(Tm)は、耐熱性およびヒートシール性のバランスという観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下、特に好ましくは110℃以下であり、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上である。
【0071】
シーラント層に含まれるポリエチレンのMFRは、製膜性および加工性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは30g/10分以下、さらに好ましくは15g/10分以下である。
【0072】
シーラント層におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。このようなシーラント層を備える積層体およびその包装袋は、例えば、リサイクル性に優れる。
【0073】
シーラント層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0074】
シーラント層は、バイオマスポリエチレンを含有してもよい。シーラント層のバイオマス度は、10%以上でもよく、20%以上でもよく、30%以上でもよく、また、80%以下でもよく、75%以下でもよく、70%以下でもよい。
【0075】
シーラント層は、帯電防止剤を含有してもよい。このようなシーラント層は、例えば、モノマテリアル化された積層体における埃または内容物の付着を抑制することができる。例えば包装袋を構成する包装材料として本開示の積層体を用いる場合、シーラント層表面の特にヒートシールされる個所に内容物や埃が付着することを抑制でき、したがって良好なヒートシール強度が得られる。
【0076】
帯電防止剤としては、例えば、低分子型帯電防止剤、高分子型帯電防止剤およびドナー・アクセプター型帯電防止剤が挙げられる。
【0077】
低分子型帯電防止剤としては、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキシド付加物、脂肪酸エチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤;ポリエチレンオキシド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビットもしくはソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン界面活性剤;高級脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等のカルボン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0078】
高分子型帯電防止剤としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルエステルアミドおよびポリエーテルブロック含有帯電防止剤などの非イオン性高分子型帯電防止剤;ポリスチレンスルホン酸などのアニオン性高分子型帯電防止剤;四級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体、四級アンモニウム塩基含有スチレン重合体、四級アンモニウム塩基含有ポリエチレングリコールメタクリレート系共重合体などのカチオン性高分子型帯電防止剤;アイオノマー樹脂が挙げられる。
【0079】
ポリエーテルブロック含有帯電防止剤としては、例えば、ポリエーテルブロックと、ポリエーテル以外のブロックとを含むブロックポリマーが挙げられる。ポリエーテル以外のブロックとしては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステルおよびポリエステルアミドなどのポリマーブロックが挙げられる。
【0080】
アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、パーフルオロカーボン系アイオノマー、ポリウレタン系アイオノマーが挙げられる。エチレン系アイオノマーのベース樹脂としては、例えば、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-マレイン酸共重合体、エチレン-フマル酸共重合体およびエチレン-無水マレイン酸共重合体などのエチレン-不飽和カルボン酸系共重合体が挙げられる。スチレン系アイオノマーのベース樹脂としては、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-フマル酸共重合体およびスチレン-無水マレイン酸共重合体などのスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体が挙げられる。
【0081】
アイオノマー樹脂を構成する金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、カリウムイオンおよびナトリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンおよびバリウムイオン等の多価金属イオンが挙げられる。
【0082】
高分子型帯電防止剤のMFRは、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは3g/10分以上であり、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは40g/10分以下、さらに好ましくは30g/10分以下である。本明細書において、高分子型帯電防止剤のMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。
【0083】
高分子型帯電防止剤の融点(Tm)は、良好なヒートシール性という観点から、好ましくは90℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。本明細書において、高分子型帯電防止剤のTmは、JIS K7121:2012に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により得られる融解ピーク温度である。
【0084】
シーラント層における帯電防止剤の含有割合は、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。シーラント層における帯電防止剤の含有割合は、例えば20質量%以下、15質量%以下または10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。帯電防止剤の含有割合が下限値以上であると、充分な帯電防止性が得られる傾向にある。帯電防止剤の含有割合が上限値以下であると、シーラント層表面への帯電防止剤のブリードアウトや、帯電防止剤の含有量が多いことに起因するシーラント層の機械的強度の低下などの問題が生じにくく、またリサイクル性が高い傾向にある。帯電防止剤等の添加剤の含有割合は、GC/MS法により測定される。
【0085】
本開示の積層体のシーラント層表面の表面固有抵抗率は、一実施形態において、例えば9.0×1012Ω/□以下、好ましくは9.0×1011Ω/□以下、より好ましくは9.0×1010Ω/□以下である。シーラント層表面の表面固有抵抗率は、例えば1.0×108Ω/□以上であり、1.0×109Ω/□以上でもよい。本明細書において、表面固有抵抗率は、JIS K6911:1995に準拠して測定され、表面固有抵抗率の測定時の環境は、温度20℃、相対湿度65%RHとする。
【0086】
シーラント層は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。
シーラント層の厚さは、ヒートシール性および包装袋のリサイクル性という観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上、特に好ましくは20μm以上である。シーラント層の厚さは、積層体の加工性という観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
【0087】
シーラント層は、ヒートシール性という観点から、一実施形態において未延伸の樹脂フィルムである。上記樹脂フィルムは、例えば、キャスト法、Tダイ法またはインフレーション法等を利用することにより作製できる。「未延伸」とは、全く延伸されていないフィルムだけでなく、製膜の際に加えられる張力に起因してわずかに延伸されているフィルムも含む概念である。
【0088】
例えば、シーラント層に対応する未延伸の樹脂フィルムを必要に応じて接着層を介して延伸ポリエチレン基材上に積層してもよく、ポリエチレンまたはその樹脂組成物を延伸ポリエチレン基材または接着層上に溶融押出しすることによりシーラント層を形成してもよい。後者の場合、接着層が設けられていなくてもよい。接着層としては、例えば、後述する接着層が挙げられる。
【0089】
<接着層>
本開示の積層体は、延伸ポリエチレン基材とシーラント層との間に、接着層を備えてもよい。接着層としては、例えば、ポリエチレンを主成分として含有する押出樹脂層、および接着剤により構成される接着剤層が挙げられる。
【0090】
本開示の積層体は、一実施形態において、延伸ポリエチレン基材とシーラント層との間に、ポリエチレンを主成分として含有する押出樹脂層を備える。押出樹脂層は、上記両者の接着層として機能する。
【0091】
本開示の積層体が、上記接着層として、ポリエチレンを主成分として含有する押出樹脂層を備えることにより、従来の非ポリエチレン系接着剤(例えば2液硬化型ポリウレタン接着剤)を用いた場合と比較して、積層体におけるポリエチレンの含有割合をより高くすることができる。これにより、積層体のリサイクル性をより向上できる。
【0092】
押出樹脂層は、ポリエチレンを主成分として含有する。ポリエチレンの詳細は、上述したとおりである。押出樹脂層におけるポリエチレンと、シーラント層におけるポリエチレンとは、同一でもよく、異なってもよい。
【0093】
押出樹脂層に含まれるポリエチレンとしては、接着性という観点から、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種が好ましく、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。ポリエチレンとしては、環境負荷の低減という観点から、バイオマスポリエチレンおよび/またはリサイクルポリエチレンを用いてもよい。
【0094】
押出樹脂層に含まれるポリエチレンの融点(Tm)は、耐熱性および接着性のバランスという観点から、好ましくは100℃以上であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
【0095】
押出樹脂層に含まれるポリエチレンのMFRは、製膜性および加工性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは3g/10分以上であり、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは30g/10分以下、さらに好ましくは20g/10分以下である。
【0096】
押出樹脂層におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。このような押出樹脂層を備える積層体およびその包装袋は、例えば、接着性およびリサイクル性に優れる。
【0097】
押出樹脂層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0098】
押出樹脂層は、バイオマスポリエチレンを含有してもよい。押出樹脂層のバイオマス度は、30%以上でもよく、50%以上でもよく、70%以上でもよく、また、99%以下でもよく、98%以下でもよい。
【0099】
上記接着層としての押出樹脂層の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。このような押出樹脂層を備える積層体およびその包装袋は、例えば、接着性およびリサイクル性に優れる。
【0100】
押出樹脂層は、例えば、ポリエチレンまたはその樹脂組成物を溶融させ、延伸ポリエチレン基材上に押し出すことにより形成できる。このときの溶融温度は、好ましくは280℃以上、より好ましくは290℃以上であり、好ましくは340℃以下、より好ましくは335℃以下である。
【0101】
本開示では、基材としての延伸ポリエチレン基材とシーラント層としてのシーラントフィルムとを貼り合わせる方法として、例えば、ポリエチレンを主成分として含有する溶融樹脂を用いた溶融押出ラミネート法、特にサンドラミネート法を用いることができる。これにより、積層体のポリエチレン含有割合を高くすることができる。また、例えばドライラミネーションによりこれらを積層する場合に比べて、乾燥工程およびエージング工程にかかる時間を低減でき、したがって積層体の生産効率を向上できる。
【0102】
本開示の積層体は、一実施形態において、延伸ポリエチレン基材とシーラント層との間に、接着剤により構成される接着剤層を備える。これにより、例えば、上記両者の密着強度を向上できる。
【0103】
接着剤は、1液硬化型の接着剤、2液硬化型の接着剤、および非硬化型の接着剤のいずれでもよい。接着剤は、溶剤型の接着剤でもよく、無溶剤型の接着剤でもよい。溶剤型の接着剤としては、例えば、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、オレフィン系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤およびウレタン系接着剤が挙げられる。無溶剤型の接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤およびウレタン系接着剤が挙げられる。これらの中でも、ウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のウレタン系接着剤がより好ましい。
【0104】
接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法およびトランスファーロールコート法が挙げられる。
【0105】
上記接着剤により構成される接着剤層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下である。
【0106】
本開示の積層体は、基材としての延伸ポリエチレン基材とシーラント層としてのシーラントフィルムとを、上記接着剤を用いたラミネート法により貼り合わせて製造できる。本開示の積層体は、例えば、溶剤型の接着剤を用いたドライラミネート法により貼り合わせて製造してもよく、無溶剤型の接着剤を用いたノンソルベントラミネート法により貼り合わせて製造してもよい。上記接着剤を用いる場合は、延伸ポリエチレン基材とシーラントフィルムとの貼合せの際の接着剤の漏れを抑制するという観点から、積層体に対してミシン目加工を施することにより積層体に切り込み線を形成することが好ましい。
【0107】
<接着補助層>
本開示の積層体は、接着層として押出樹脂層を備える場合に、延伸ポリエチレン基材と押出樹脂層との間に、接着補助層をさらに備えてもよい。このような積層体は、例えば、層間密着性に優れる。接着補助層は、例えば、アンカーコート剤により形成される。この実施形態では、押出樹脂層は、接着補助層に接している。
【0108】
アンカーコート剤としては、例えば、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリエチレンイミン系またはエポキシ樹脂系のアンカーコート剤が挙げられる。アンカーコート剤は、一実施形態において、2液硬化型樹脂であり、例えば、主剤のポリオールと硬化剤のポリイソシアネートとからなる。
【0109】
ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよび(メタ)アクリルポリオールが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ならびにヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。接着補助層は、一実施形態において、ポリオールとポリイソシアネートとの反応によって得られるポリウレタンからなる。ポリウレタンとしては、具体的には、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタンおよびポリ(メタ)アクリルポリウレタンが挙げられる。
【0110】
接着補助層は、例えば、延伸ポリエチレン基材にアンカーコート剤を塗布することにより形成できる。アンカーコート剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法およびキスコート法等のコート法、または印刷法によって塗布できる。
【0111】
接着補助層の厚さは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0112】
<他の層>
本開示の積層体は、延伸ポリエチレン基材上に蒸着膜を備えてもよい。本開示の積層体は、シーラント層における延伸ポリエチレン基材に向かう面上に蒸着膜を備えてもよい。このような積層体は、例えば、酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れる。蒸着膜としては、アルミニウム蒸着膜、酸化アルミニウム(アルミナ)蒸着膜、酸化ケイ素(シリカ)蒸着膜、および炭素含有酸化珪素蒸着膜が好ましい。
【0113】
蒸着膜の厚さは、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上であり、好ましくは150nm以下、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは40nm以下である。
【0114】
本開示の積層体は、蒸着膜の表面にバリアコート層を備えてもよい。例えば蒸着膜が酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素などの無機酸化物から構成される場合は、蒸着膜の表面にバリアコート層を設けてもよい。このような積層体は、例えば、ガスバリア性に優れ、また、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に抑制できる。
【0115】
本開示の積層体は、延伸ポリエチレン基材上に、印刷層などの意匠層を更に備えてもよい。意匠層は、画像を有する。画像としては、例えば、文字、図形、模様、記号およびこれらの組合せが挙げられる。画像は、商品名、包装袋中の物品の名称、製造者および原材料名等の文字情報を含んでもよい。画像は、単色無地(いわゆるベタ画像)でもよい。
【0116】
[用途]
本開示の積層体は、包装袋を構成する包装材料として好適に使用できる。上記積層体におけるシーラント層が、包装袋の内表面(包装袋内の内容物(物品)が接触する面)を構成する。
【0117】
本開示の包装袋は、本開示の積層体を備える。
本開示の包装袋は、例えば、
物品を収容する収容部と、
積層体のシーラント層同士が接合されているシール部と、
を有する。
【0118】
シール部は、収容部を画成する内縁を含む。ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シールおよび超音波シールが挙げられる。
【0119】
包装袋としては、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型およびガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。
【0120】
包装袋は、上述した切り込み線を有する。
切り込み線は、包装袋の平面視において収容部を横切る。
包装袋は、包装袋の引き裂きの起点となるノッチ部を有してもよい。
【0121】
一実施形態において、本開示の積層体を、延伸ポリエチレン基材が外側、シーラント層が内側に位置するように二つ折にして重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装袋を作製できる。他の実施形態において、複数の本開示の積層体をシーラント層同士が対向するように重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装袋を作製できる。包装袋の全部が上記積層体で構成されてもよく、包装袋の一部が上記積層体で構成されてもよい。
【0122】
包装袋中に収容される物品としては、例えば、液体、固体、粉体およびゲル体が挙げられる。物品は、飲食品でもよく、化学品、化粧品、医薬品、金属部品および電子部品等の非飲食品でもよい。物品としては、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、ハンドソープ、ボディソープ、芳香剤、消臭剤、脱臭剤、防虫剤、柔軟剤、洗剤;ソース、醤油、ドレッシング、食用油、マヨネーズ、ケチャップ、シロップ、料理用酒類、他の液体または粘稠体の調味料;果汁類;香辛料;液体飲料、ゼリー状飲料、液体スープ、粉末スープ、インスタント食品、他の飲食品;クリーム;金属部品および電子部品が挙げられる。本開示の包装袋は、一実施形態において優れた帯電防止性を有することから、例えば、粉末食品(例えば、ふりかけ、唐揚げ粉)、粉薬、粉末飲料(例えば、コーヒー、紅茶)等の粉体が好適である。包装袋中に物品を収容した後、包装袋の開口部をヒートシールすることにより、包装袋を密封できる。
【0123】
上記物品としては、例えば、集積回路(IC)、コンデンサおよび半導体素子等の電子部品や、精密機械部品でもよい。すなわち包装袋は、電子部品収容容器や精密機械部品収容容器でもよい。近年、電子部品の小型化および高機能化が進み、電子部品の保管中や輸送中でのわずかな静電気に起因する電子部品の破壊が問題となっている。本開示の積層体は、一実施形態において、上述したように優れた帯電防止性(静電気防止性)を有することから、電子部品収容容器を構成する包装材料として好適である。電子部品収容容器は、例えば、真空圧空成形法、真空成形法、圧空成形法、およびプラグアシスト成形等の種々の成形方法により、製造できる。
【0124】
以下、本開示の包装袋の実施形態の例を、図面に基づき説明する。
図6は、本開示の包装袋の一実施形態を示す正面図である。
図6の包装袋50は、物品を収容する収容部50aを備える。包装袋50は、上部51、下部52および側部53,53を含み、正面図において略矩形状の輪郭を有する。なお、「上部」、「下部」および「側部」等の名称、ならびに、「上方」および「下方」等の用語は、包装袋50やその構成要素の位置や方向を相対的に表したものに過ぎない。包装袋50の輸送時や使用時の姿勢等は、本明細書における名称や用語によっては限定されない。
【0125】
図6に示すように、包装袋50は、表面を構成する表面シート54および裏面を構成する裏面シート55を備える。
図6に示す包装袋50において、表面シート54および裏面シート55は、それぞれ、1枚の積層体により形成されている。図示はしないが、包装袋50において、表面シート54および裏面シート55は、一体となっていてもよく、1枚の積層体により形成されていてもよい。このとき、積層体は、シーラント層が包装袋50の内表面を構成するように下部52で折り返されている。この場合、包装袋50は、包装袋50の3辺に沿って延びるシール部を有する。
【0126】
表面シート54および裏面シート55は、内面同士がシール部によって接合されている。
図6に示す包装袋50の正面図においては、シール部にハッチングが施されている。シール部は、積層体のシーラント層同士が接合されている部分である。
【0127】
図6に示すように、包装袋50は、包装袋50の4辺に沿って延びるヒートシール部を有する。シール部は、上部51に沿って延びる上部シール部51aと、一対の側部53,53に沿って延びる一対の側部シール部53a,53aと、下部52に沿って延びる下部シール部52aと、を含む。物品が収容される前の状態(物品が収容されていない状態)の包装袋50においては、包装袋50の上部51には開口部(図示せず)が形成されている。そして、包装袋50中に物品を収容した後、表面シート54の内面と裏面シート55の内面とを上部51において接合することにより、上部シール部51aが形成されて包装袋50が封止される。
【0128】
上部シール部51a、側部シール部53a,53aおよび下部シール部52aは、表面シート54の内面と裏面シート55の内面とを接合することによって構成されるシール部である。
【0129】
対向するシート54,55同士を接合して包装袋50を封止することができる限りにおいて、シール部を形成するための方法が特に限られることはない。例えば、加熱等によってシートの内面を溶融させ、内面同士を融着させることによって、すなわちヒートシールによって、シール部を形成する。
【0130】
包装袋を構成する積層体は、上述した切り込み線を有する。包装袋を切り込み線に沿って手で容易に引き裂き、開封することができる。切り込み線が形成される位置は、特に限定されない。切り込み線は、包装袋の表面シートおよび裏面シートのいずれかに形成されていればよいが、開封性の観点から、表面シートおよび裏面シートのいずれにも形成されていることが好ましい。
図6に示すとおり、切り込み線60は、一実施形態において、表面シート54および裏面シート55の上部51において、該シートの一方の側部53の外縁から他方の側部53の外縁に延びている。
【0131】
包装袋は、自立可能に構成されたスタンディングパウチでもよい。
【0132】
包装袋は、注出口部を備えてもよい。注出口部は、包装袋から内容物(物品)を取り出す際に内容物が通る部分である。注出口部の幅は、収容部のその他の部分の幅よりも狭い。このため、使用者は、注出口部を通って包装袋から注出される内容物の注出方向を精度良く定めることができる。切り込み線は、例えば、平面視において注出口部を横切る。使用者は、包装袋の注出口部において切り込み線に沿って包装袋を開封できる。
【0133】
包装袋は、ピローパウチでもよい。包装袋は、表面シートおよび裏面シートを構成する積層体の端部を重ねることにより構成される合掌部を含む。合掌部は、積層体のシーラント層同士が接合された合掌部シール部を含む。
【0134】
本開示は、例えば以下の[1]~[6]に関する。
[1]延伸ポリエチレン基材とシーラント層とを少なくとも備える積層体であって、前記延伸ポリエチレン基材は、ポリエチレンを主成分として含有し、前記シーラント層は、ポリエチレンを主成分として含有し、前記積層体は、前記積層体の表面において第1の方向を有し、前記積層体は、前記第1の方向に延びる切り込み線を有し、前記切り込み線は、複数の切り込み部を前記第1の方向に沿って所定間隔を空けて有する、積層体。
[2]前記延伸ポリエチレン基材が、1軸延伸ポリエチレン基材または2軸延伸ポリエチレン基材である、前記[1]に記載の積層体。
[3]前記延伸ポリエチレン基材と前記シーラント層との間に、ポリエチレンを主成分として含有する押出樹脂層、または接着剤により構成される接着剤層を備える、前記[1]または[2]に記載の積層体。
[4]前記延伸ポリエチレン基材および前記シーラント層の少なくとも一つが、バイオマス由来のポリエチレンを含有する、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の積層体。
[5]ポリエチレンの含有割合が、前記積層体100質量%中、80質量%以上である、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の積層体。
[6]前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の積層体を備える包装袋。
【実施例0135】
本開示の積層体について実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本開示の積層体は実施例によって何ら限定されない。
【0136】
以下の記載において、ポリエチレンフィルムを「PEフィルム」、アンカーコート剤を「AC」、ポリエチレンの押出樹脂層を「EC-PE」とも記載する。
【0137】
以下の実施例で用いた各成分を記載する。
・高密度ポリエチレン(HDPE)
ExxonMobil社製、商品名:HTA108、
密度:0.961g/cm3、融点:135℃、MFR:0.7g/10分
・高密度ポリエチレン(HDPE)
Braskem社製、商品名:SGE7252、
密度:0.952g/cm3、MFR:2.0g/10分、バイオマス度:96%
・中密度ポリエチレン(MDPE)
Dowchemical社製、商品名:Elite5538G、
密度:0.941g/cm3、融点:129℃、MFR:1.3g/10分
・低密度ポリエチレン(LDPE)
住友化学製、商品名:スミカセン CE4009、
密度:0.920g/cm3、MFR:7.0g/10分、融点:106℃
・帯電防止剤含有低密度ポリエチレン(帯電防止剤含有LDPE)
住友化学製、商品名:スミカセン CE4043、
密度:0.919g/cm3、MFR:10.0g/10分、融点:106℃
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
日本ポリエチレン製、商品名:カーネル KC577T、
密度:0.910g/cm3、MFR:15.0g/10分、融点:102℃
【0138】
[延伸ポリエチレン基材の作製]
<MDOPE(A)の作製>
MDPE(Elite5538G)をインフレーション成形法により製膜して、厚さ125μmのフィルムを得た。このフィルムを流れ方向(MD)に5倍の延伸倍率で延伸して、厚さ25μmの1軸延伸フィルムを得た。この1軸延伸フィルムの片面にコロナ処理を施し、濡れ指数が52dynとなるように調整した。1軸延伸フィルムのヘイズ値をJIS K7136:2000に準拠して測定したところ、6.5%であった。この1軸延伸フィルムを以下「MDOPE(A)」ともいう。
【0139】
<MDOPE(B)の作製>
HDPE(HTA108)およびMDPE(Elite5538G)をインフレーション成形法により共押出製膜して、HDPE層、MDPE層およびHDPE層をこの順に備える、厚さ125μmのフィルムを得た。HDPE層の厚さはそれぞれ25μmであり、MDPE層の厚さは75μmであった。このフィルムを流れ方向(MD)に5倍の延伸倍率で延伸して、厚さ25μmの1軸延伸フィルムを得た。この1軸延伸フィルムの片面にコロナ処理を施し、濡れ指数が52dynとなるように調整した。1軸延伸フィルムのヘイズ値は8.9%であった。この1軸延伸フィルムを以下「MDOPE(B)」ともいう。
【0140】
<MDOPE(C)の作製>
HDPE(SGE7252)およびMDPE(Elite5538G)をインフレーション成形法により共押出製膜して、HDPE層、MDPE層およびHDPE層をこの順に備える、厚さ125μmのフィルムを得た。HDPE層の厚さはそれぞれ25μmであり、MDPE層の厚さは75μmであった。このフィルムを流れ方向(MD)に5倍の延伸倍率で延伸して、厚さ25μmの1軸延伸フィルムを得た。この1軸延伸フィルムの片面にコロナ処理を施し、濡れ指数が52dynとなるように調整した。1軸延伸フィルムのヘイズ値は10.9%であり、バイオマス度は38%であった。この1軸延伸フィルムを以下「MDOPE(C)」ともいう。
【0141】
[実施例1]
MDOPE(A)のコロナ処理面にポリエチレンイミン系アンカーコート剤(東ソー製、商品名:トヨバイン210K)をコートして、MDOPE(A)上に厚さ0.3μmの接着補助層が形成されたフィルム1を得た。次いで、該フィルム1をミシン目ロールに通すことにより、MDOPE(A)の流れ方向(MD)または幅方向(TD)にミシン目穴あき加工が施されたフィルム2を得た。ミシン目の形状は、
図5B2に示すタイプのものである(個々の切り込み部の長さL:約1.1mm、個々の切り込み部同士の間隔D1:約1.3mm、切り込み部の列同士の間隔D2:約0.5mm)。次いで、該フィルム2の接着補助層面にLDPE(スミカセン CE4009)を320℃で溶融押出コートして厚さ20μmの押出樹脂層を形成し、該押出樹脂層面に帯電防止剤含有LDPE(スミカセン CE4043、静防PE)を290℃で溶融押出コートして厚さ20μmのシーラント層を形成した。このようにして、積層体を得た。
【0142】
[実施例2]
帯電防止剤含有LDPE(スミカセン CE4043)をLLDPE(カーネル KC577T)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0143】
[実施例3]
MDOPE(A)のコロナ処理面にポリエチレンイミン系アンカーコート剤(東ソー製、商品名:トヨバイン210K)をコートして厚さ0.3μmの接着補助層を形成し、接着補助層面にLDPE(スミカセン CE4009)を320℃で溶融押出コートして厚さ20μmの押出樹脂層を形成し、該押出樹脂層面にLLDPE(カーネル KC577T)を290℃で溶融押出コートして厚さ20μmのシーラント層を形成して、積層体を得た。得られた積層体をミシン目ロールに通して該積層体を貫通させることで、MDOPE(A)の流れ方向(MD)または幅方向(TD)にミシン目穴あき加工が施された積層体を得た。ミシン目の形状は、
図5B2に示すタイプのものである。
【0144】
[実施例4]
MDOPE(A)をMDOPE(B)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0145】
[実施例5]
MDOPE(A)をMDOPE(B)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、積層体を得た。
【0146】
[実施例6]
MDOPE(A)をMDOPE(C)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0147】
[実施例7]
MDOPE(A)をMDOPE(C)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、積層体を得た。
【0148】
[実施例8]
MDOPE(A)を厚さ25μmの2軸延伸ポリエチレンフィルム(JINDAL社製、商品名:25HD-200)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0149】
[実施例9]
MDOPE(A)を厚さ25μmの2軸延伸ポリエチレンフィルム(JINDAL社製、商品名:25HD-200)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、積層体を得た。
【0150】
[実施例10]
MDOPE(A)とLLDPEフィルム(タマポリ社製、商品名:UB-106T、厚さ100μm、片面コロナ処理品)とを準備した。MDOPE(A)のコロナ処理面とLLDPEフィルムのコロナ処理面とを2液硬化型ウレタン接着剤(ロックペイント社製、商品名:RU-77T/H-7)を介して貼り合わせ、積層体を得た。得られた積層体をミシン目ロールに通して該積層体を貫通させることで、MDOPE(A)の流れ方向または幅方向にミシン目穴あき加工が施された積層体を得た。ミシン目の形状は、
図5B2に示すタイプのものである。
【0151】
[実施例11]
MDOPE(A)をMDOPE(B)に変更したこと以外は実施例10と同様にして、積層体を得た。
【0152】
[実施例12]
MDOPE(A)をMDOPE(C)に変更したこと以外は実施例10と同様にして、積層体を得た。
【0153】
[実施例13]
MDOPE(A)を厚さ25μmの2軸延伸ポリエチレンフィルム(JINDAL社製、商品名:25HD-200)に変更したこと以外は実施例10と同様にして、積層体を得た。
【0154】
[比較例1]
フィルム1をミシン目ロールに通さなかったこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0155】
[比較例2]
フィルム1をミシン目ロールに通さなかったこと以外は実施例2と同様にして、積層体を得た。
【0156】
[比較例3]
フィルム1をミシン目ロールに通さなかったこと以外は実施例4と同様にして、積層体を得た。
【0157】
[比較例4]
フィルム1をミシン目ロールに通さなかったこと以外は実施例6と同様にして、積層体を得た。
【0158】
[比較例5]
フィルム1をミシン目ロールに通さなかったこと以外は実施例8と同様にして、積層体を得た。
【0159】
[比較例6]
積層体をミシン目ロールに通さなかったこと以外は実施例10と同様にして、積層体を得た。
【0160】
[物性評価]
延伸ポリエチレン基材および積層体の物性評価方法を以下に記載する。
【0161】
<ヘイズ>
延伸ポリエチレン基材をカットして、21mm角の試験片を作製した。試験片のヘイズを、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、商品名:ヘイズメーター HM-150N、D65光源)を用いて測定した。
【0162】
<シール強度>
実施例および比較例で作製した各積層体を2枚準備した。2枚の積層体のシーラント層同士を重ね合わせ、温度140℃、圧力1kgf/cm2および圧着時間1秒の条件でヒートシールして、シール部を形成した。続いて、シール部を含む部分を切り出して、シール強度を測定するための、幅15mm、長さ100mmの試験片を作製した。シール部の長さは、15mmであった。JIS Z1707:2019に準拠して、試験速度300mm/min、T形剥離の条件で、シール強度を測定した。測定器として、引張試験機(オリエンテック社製、商品名:SA-1150)を使用した。シール強度の測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%RHとした。
【0163】
<表面固有抵抗率>
積層体を温度40℃、相対湿度65%RH環境下に24時間静置した。その後、JIS K6911:1995に準拠して、積層体の表面固有抵抗率を測定した。具体的には、高抵抗率計(商品名:ハイレスターUX MCP-HT800、三井化学アナリテック製)を用いて、印加電圧1000Vの条件にて、積層体の裏面(シーラント層面)についての表面固有抵抗率(Ω/□)を測定した。表面固有抵抗率の測定時の環境は、温度20℃、相対湿度65%RHとした。
【0164】
<引裂き強度>
JIS K7128-1:1998に準拠して、トラウザー引裂法にて試験速度:200mm/min、引裂き距離:75mmの条件にて積層体を流れ方向(MD)または幅方向(TD)に引き裂き、引裂き強度を測定した。ミシン目加工が施された積層体については、ミシン目部分にスリットを入れ、ミシン目部分で引裂き強度を測定できるように調整した。例えば実施例1では、MDOPE(A)の流れ方向または幅方向にミシン目穴あき加工が施されている。流れ方向にミシン目穴あき加工が施されている積層体については流れ方向の引裂き強度を記載し、幅方向にミシン目穴あき加工が施されている積層体については幅方向の引裂き強度を記載した。
【0165】
<直進カット性>
JIS K7128-1:1998に準拠して、トラウザー引裂法にて試験速度:200mm/min、引裂き距離:75mmの条件にて積層体を流れ方向(MD)または幅方向(TD)に引き裂き、75mm進んだ際に、直進方向に切れているかを確認した。スリット部よりのずれが3mm未満であるものは、直進カット性「有り」と判断し、スリット部より3mm以上ずれているものは、直進カット性「無し」と判断した。
【0166】
【0167】
【0168】