(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055587
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】感震センサ
(51)【国際特許分類】
G01H 1/00 20060101AFI20240411BHJP
H01H 35/14 20060101ALI20240411BHJP
G01V 1/01 20240101ALI20240411BHJP
【FI】
G01H1/00 D
H01H35/14 D
G01V1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162644
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】吉川 亜緒依
(72)【発明者】
【氏名】神戸 健吾
【テーマコード(参考)】
2G064
2G105
5G056
【Fターム(参考)】
2G064AB02
2G064AB19
2G064BA02
2G064BD02
2G105AA03
2G105BB01
2G105EE01
2G105MM02
2G105NN02
5G056BE08
5G056BE20
5G056BE33
5G056BF01
(57)【要約】
【課題】 鋼球を使用する構成より長寿命化が可能な機械式の感震センサを提供する。
【解決手段】 非導電性の容器10に不揮発性の電解液3が収容され、容器10の内底部に第1電極5a、電解液の液面より高い位置の容器10の内側面に第2電極5bが配置された検知部2と、第1電極5aと第2電極5bとが電解液3を介して導通したら地震発生信号を出力する判定回路4とを有し、第2電極5bは液面から一定の距離で容器10の内側面に沿って連続形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性の容器に導電性を有する流体が収容され、容器内の底部或いは底部近傍の側部に第1電極、前記流体の液面より高い位置の前記容器内の側面或いは側面近傍の内部に第2電極が配置された検知部と、
前記第1電極と前記第2電極とが前記流体を介して導通したら地震発生信号を出力する判定回路とを有することを特徴とする感震センサ。
【請求項2】
前記導電性を有する流体は、不揮発性の電解液であることを特徴とする請求項1記載の感震センサ。
【請求項3】
前記第2電極は、前記液面から一定の距離で、前記容器の内側面に沿って連続形成されて成ることを特徴とする請求項1記載の感震センサ。
【請求項4】
前記容器は円錐形状を成し、底部の径に対して上部の径が小さいことを特徴とする請求項1記載の感震センサ。
【請求項5】
前記第2電極の位置は上下移動が可能で、前記判定回路の検知感度を変更できることをを特徴とする請求項1記載の感震センサ。
【請求項6】
前記検知部を構成する容器に加えて、下部が前記検知部の容器と連通した液面調整のための調整容器とを有し、
前記流体に浸漬可能な錘、及び前記錘の高さを変えて浸漬量を調整する調整手段を前記調整容器に配置し、
前記錘の前記流体への浸漬量を変更することで、前記検知部の流体の液面と前記第2電極との距離が変化し、前記判定回路の検知感度を変更できることを特徴とする請求項1記載の感震センサ。
【請求項7】
非導電性の容器に導電性を有する粉体或いは粒体が収容されると共に、前記容器の内底部に第1電極、前記導電性を有する粉体或いは粒体の表面より高い位置の前記容器の内側面或いは内側面近傍に第2電極が配置された検知部と、
前記第1電極と前記第2電極とが前記粉体或いは粒体を介して導通したら、地震発生信号を出力する判定回路とを有することを特徴とする感震センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震を検知する感震センサに関し、特に機械式の感震センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より機械式の感震センサがある。例えば特許文献1では、ケース内に鋼球を収容して、揺れにより鋼球が移動することでケースの底面に配置した接点がオン/オフ動作するよう構成し、接点のオン/オフ動作から地震を検知させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記鋼球の移動により地震を検知する構成は、加速度センサを使用する電子式の構成に比べて安価に構成できるし待機電力が不要であるが、鋼球の滑りによるチャタリングによる誤動作や、鋼球の転がりによる摩耗等の発生により寿命が比較的短い問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、鋼球を使用する構成より長寿命化が可能な機械式の感震センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、本発明に係る感震センサの第1の発明は、非導電性の容器に導電性を有する流体が収容され、容器内の底部或いは底部近傍の側部に第1電極、流体の液面より高い位置の容器内の側面或いは側面近傍の内部に第2電極が配置された検知部と、第1電極と第2電極とが流体を介して導通したら地震発生信号を出力する判定回路とを有することを特徴とする。
この構成によれば、地震の揺れにより導電性を有する流体に波が発生し、第1電極と第2電極とが波により導通状態になると、判定回路がそれを検知して地震発生信号を出力するため、誤動作が発生し難い。また、揺れに応じた大きさの波が発生し易く、地震を検知し易い。
【0007】
本発明の別の態様は、上記構成において、導電性を有する流体は、不揮発性の電解液であることを特徴とする。
この構成によれば、簡易な構成で地震を検知できるし、摩耗する部位が無いため長寿命化が可能である。
【0008】
本発明の別の態様は、上記構成において、第2電極は、液面から一定の距離で、容器の内側面に沿って連続形成されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、第2電極は途切れること無くリング状に配設されているため、流体の波の方向が何れの方向であっても第2電極に達する高さであったら確実に検知して地震発生信号を出力する。
【0009】
本発明の別の態様は、上記構成において、容器は円錐形状を成し、底部の径に対して上部の径が小さいことを特徴とする。
この構成によれば、地震の揺れから安定した縦波を発生でき、感震精度を上げることができる。
【0010】
本発明の別の態様は、上記構成において、第2電極の位置は上下移動が可能で、判定回路の検知感度を変更できることをを特徴とする。
この構成によれば、検知する地震の大きさを変更できる。よって、設置場所の環境に応じて、或いは利用者の希望に応じて感度を変更でき利便性が良い。
【0011】
本発明の別の態様は、上記構成において、検知部を構成する容器に加えて、下部が検知部の容器と連通した液面調整のための調整容器とを有し、流体に浸漬可能な錘、及び錘の高さを変えて浸漬量を調整する調整手段を調整容器に配置し、錘の流体への浸漬量を変更することで、検知部の流体の液面と第2電極との距離が変化し、判定回路の検知感度を変更できることを特徴とする。
この構成によれば、錘の位置を変更することで感度を変更でき、利便性が良い。
【0012】
本発明に係る感震センサの第2の発明は、非導電性の容器に導電性を有する粉体或いは粒体が収容されると共に、容器の内底部に第1電極、導電性を有する粉体或いは粒体の表面より高い位置の容器の内側面或いは内側面近傍に第2電極が配置された検知部と、第1電極と第2電極とが粉体或いは粒体を介して導通したら、地震発生信号を出力する判定回路とを有することを特徴とする。
この構成によれば、地震の揺れにより粉体或いは粒体が移動することで、第1電極と第2電極とが導通する場合が発生する。この状態を判定回路が検知することで地震発生信号が出力される。よって、簡易な構成で地震を検知できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地震の揺れにより導電性を有する流体に波が発生し、第1電極と第2電極とが波により導通状態になると、判定回路がそれを検知して地震発生信号を出力する。よって、簡易な構成で地震を検知できるし、摩耗する部位が無いため長寿命化が可能である。
また、地震の揺れにより粉体或いは粒体が移動することで、第1電極と第2電極とが導通状態になると、判定回路がそれを検知して地震発生信号を出力する。よって、簡易な講構成で地震を検知できるし、粉体や粒体は摩耗しても地震検知機能が劣化する事が無いため、長寿命化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る感震センサの一例を示す説明図である。
【
図2】
図1の感震センサの動作説明図であり、容器は縦断面で示している。
【
図3】容器の好ましい形状の説明図であり、側面図を示している。
【
図4】地震の検知感度を変更する機能を備えた説明図である。
【
図5】地震の検知感度を変更する機能の他の形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る感震センサの一例を示す説明図である。感震センサ1は、合成樹脂製等の導電性のない容器10に不揮発性の電解液3(以下、単に「電解液」とする。)が入れられた検知部2と、所定の地震検知動作したら地震発生信号を出力する判定回路4とを備えて構成されている。
容器10の内底部及び内側面の所定の位置の2ヶ所に電極5が配置され、両者の間が導通状態になったらそれを判定回路4が検知する。
【0016】
容器10は円筒状に形成され、2つの電極5のうち第1電極5aは円盤状に形成され、底部中央に固定配置されている。第2電極5bは同一高さの側面に連続形成され、内側面に沿ってリング状に配置されている。この第2電極5bは、容器10に密着させても良いが、密着させず上下方向に移動可能に配置しても良い。
入れられる電解液3は、例えば、イミダゾリウム塩溶液、ピリジニウム塩溶液が使用できるし、更にはエチレンカーボネートの電解液を使用しても良い。
【0017】
判定回路4は、第1電極5a及び第2電極5bとリード線L1,L2を介して接続され、信号出力部4aを有している。
尚、
図1では、判定回路4と電極5とは、リード線L1,L2を容器10の壁面を貫通させて接続されているが、実際には容器10の上部から挿入して電極5に接続される。また、電解液3の液面と第2電極5bとの間の間隔Dは、一定の大きさ以上の揺れを検知するように、実験により特定の値に設定されている。
【0018】
図2は、容器10を縦断面で示した説明図であり、地震発生を受けた動作状態を示している。地震が発生すると、その揺れにより電解液3の液面に波Wが発生し、その波Wが大きくなると第2電極5bに達する。第2電極5bに達すると、電解液は導電性を有するため、第1電極5aと第2電極5bとが導通状態となり、判定回路4がそれを検知する。
こうして地震を検知した判定回路4は、地震発生信号を外部に出力する。尚判定回路4の電源は外部から供給されている。
【0019】
このように、地震の揺れにより導電性を有する流体である電解液3に波Wが発生し、第1電極5aと第2電極5bとが波Wにより導通状態になると、判定回路4がそれを検知して地震発生信号を出力する。よって、誤動作が発生し難く簡易な構成で地震を検知できる。また、摩耗する部位が無いため長寿命化が可能である。
更に、電解液3で波を発生させることで、揺れに応じた大きさの波が発生し易いし、導電性を有するため、第2電極5b間に接触すれば確実に地震発生を検知できる。
また、第2電極5bは途切れること無くリング状に配設されているため、電解液3の波の方向が何れの方向であっても第2電極5bに達する高さであったら確実に検知して地震発生信号を出力する。
【0020】
図3は、好ましい容器10の形状を示す説明図であり、側面図を示している。電解液3を収容する容器10は、
図3に示すように上部を狭くした円錐形状が望ましい。円錐形状にすることで、電解液3の分子の縦向きの力が反映し易く、細かな縦揺れを検出し易くなる。
図3に示す丸印Cは電解液3の分子を示し、地震を受けて容器10の底部では矢印E1に示すように横揺れが発生するが、上部に行くに従い矢印E2に示す縦揺れが大きくなる。結果、液面は電解液3の上部の縦揺れの作用で、細かな縦揺れ(矢印E3に示す)が発生し、液面が底部に比べて狭いことで、この縦揺れが顕著に表れる。
こうして、地震の大きさに比例した縦揺れを発生させ易く、震度に応じた波を発生させ易い。
このように、容器10を円錐形にすることで、地震の揺れから安定した縦波を発生でき、感震精度を上げることができる。
【0021】
図4は、検知感度を調整する調整手段を備えた構成を示している。円筒形状の容器10に配置した第2電極5bは、容器10の内側面に密着させず沿うように近傍に配置し、容器10の蓋10aから螺入したネジ7の先端に取り付けた支持部材8に連結している。ネジ7の上下移動操作で第2電極5bは連動して上下動して間隔Dが変化し、検知感度が変更される。
【0022】
電解液3の量を変更すれば、検知する地震の大きさを変更できるが、このように第2電極5bを支持する支持部材8とネジ7となら成る調整手段を有することで、電解液3の量を調整する事無く検知する地震の大きさを変更できる。よって、設置場所の環境に応じて、或いは利用者の希望に応じて感度を容易に変更でき利便性が良い。
【0023】
図5は、検知感度を調整する他の機構を示している。地震を検知する電極5(5a,5b)を配置した検知部2に対して検知感度を調整する調整容器11を別途設けて、下部同士が連通部20で連結されている。但し、ここでは検知部2の容器10を円錐形状としている。
そのため、一方から入れられた電解液3は双方の空間に入り込み、常に同一の高さとなる。尚、連通部20には、電解液3が地震の揺れにより、検知部2と調整容器11との間で大きく移動する事が無いように孔13を設けた壁Pが配置されている。
【0024】
調整容器11には、蓋11aに上方から螺入したネジ7aが設けられ、ネジ7aの先端には錘12が取り付けられている。ネジ7aと錘12は一体化されている。
この構成により、ネジ7aを回転して、前進/後退操作することで、錘12の電解液への浸漬量が変化し、電解液3の液面位置が変化する。結果、間隔Dが変化して判定回路4の検知感度が変化する。
【0025】
このように、錘12の位置を変更することで地震を検知する感度を変更でき、利便性が良い。特に、第2電極5bの位置を変更する操作を必要としないため、検知部2の形状を円筒形状に限定する必要が無くなり、円錐形等にできる。
【0026】
尚、上記実施形態では、検知部2としての容器10に不揮発性の電解液を入れたが、導電性流体である水銀を使用しても良い。
また容器10に入れる物質は流体で無くとも良く、導電性を有して地震の揺れにより砂のように移動する粉体或いは粒体を使用しても良い。例えば、フレーク状、ボールパウダー状の金属を使用することができる。
金属製の粉体或いは粒体を使用した場合でも、地震を受けて第1電極5aと第2電極5bとが導通する場合が発生する。この状態を判定回路4が検知することで地震発生信号が出力され、地震を検知できる。
【0027】
また上記実施形態では、第1電極5aを円盤状としたが、この形状は任意である。特に第1電極5aを容器10の側面に設ける場合は、第2電極5bと同様にリング形状としても良い。加えて、第2電極5bをリング状としたが、リング状でなくとも良く、同一の高さの内側面に複数の電極を配置して第2電極5bとしても良い。
【符号の説明】
【0028】
1・・感震センサ、2・・検知部、3・・電解液、4・・判定回路、5・・電極、5a・・第1電極、5b・・第2電極、7・・ネジ(調整手段)、8・・支持部材(調整手段)、10・・容器、11・・調整容器、12・・錘。