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  • 特開-ねじ締め機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055595
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ねじ締め機
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20240411BHJP
   B25B 23/12 20060101ALI20240411BHJP
   B25B 23/10 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B23P19/06 C
B25B23/12
B25B23/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162658
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安積 慶一
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA03
3C038BB01
3C038BB02
3C038BC04
3C038EA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、負圧発生手段が停止してもねじの脱落を防止可能なねじ締め機を提供する。
【解決手段】
締結部品Sの頭部を吸引保持するボックスビット40を回転駆動させる回転駆動源を有するドライバユニット30と、前記ドライバユニット30を移動させる位置制御機構20とを備え、前記ボックスビット40は、前記締結部品Sと嵌合する嵌合穴43と、前記嵌合穴43と負圧発生手段を連通させる連通穴481と、前記嵌合穴43に嵌合した締結部品Sを吸着する磁石とを備えていることを特徴とするねじ締め機10による。このように負圧発生手段および磁石46の両方で締結部品Sを吸着保持することで、締結部品Sがボックスビット40から脱落することを防止できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結部品の頭部を吸引保持するボックスビットを回転駆動させる回転駆動源を有するドライバユニットと、
前記ドライバユニットを移動させる位置制御機構とを備え、
前記ボックスビットは、前記締結部品と嵌合する嵌合穴と、前記嵌合穴と負圧発生手段を連通させる連通穴と、前記嵌合穴に嵌合した締結部品を吸着する磁石とを備えていることを特徴とするねじ締め機。
【請求項2】
前記ボックスビットには、前記磁石を収容する収容穴が形成され、
前記収容穴と前記嵌合穴との間が遮断されていることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め機。
【請求項3】
前記ボックスビットは、前記嵌合穴および前記嵌合穴と連続する前記収容穴が形成された本体と、前記収容穴に収容される環状磁石と、前記環状磁石を保持する蓋部材と、前記蓋部材を前記本体に固定する吊下ねじから構成され、
前記蓋部材には嵌合穴と磁石との間を遮断する円板部が設けられているとともに、前記吊下ねじには前記連通穴が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のねじ締め機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじをワークに締結するねじ締め機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、ねじの頭部と嵌合する嵌合穴が形成されたボックスビットを備えたねじ締め機が知られている。このねじ締め機のボックスビットは、回転駆動源が連結されており、当該回転駆動源の駆動を受けて所定のトルクで回転可能に構成されていた。また、前記ボックスビットには、外部の負圧発生手段まで連続する通気穴が貫通しており、その負圧発生手段の駆動により、嵌合穴の内部にねじの頭部を吸着保持可能であった。このため、従来のねじ締め機は、ねじを嵌合穴に吸着保持した状態で移動することが可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58-160773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のねじ締め機には、負圧発生手段が停止すると、ねじを脱落させてしまうという問題があった。
【0005】
そのため、本発明は、負圧発生手段が停止してもねじの脱落を防止可能なねじ締め機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて創生されたものであり、締結部品の頭部を吸引保持するボックスビットを回転駆動させる回転駆動源を有するドライバユニットと、前記ドライバユニットを移動させる位置制御機構とを備え、前記ボックスビットは、前記締結部品と嵌合する嵌合穴と、前記嵌合穴と負圧発生手段を連通させる連通穴と、前記嵌合穴に嵌合した締結部品を吸着する磁石とを備えていることを特徴とする。なお、前記ボックスビットには、前記磁石を収容する収容穴が形成され、前記収容穴と前記嵌合穴との間が遮断されていることが好ましい。また、前記ボックスビットは、前記嵌合穴および前記嵌合穴と連続する前記収容穴が形成された本体と、前記収容穴に収容される環状磁石と、前記環状磁石を保持する蓋部材と、前記蓋部材を前記本体に固定する吊下ねじから構成され、前記前記蓋部材には嵌合穴と磁石との間を遮断する円板部が設けられているとともに、前記吊下ねじには前記連通穴が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のねじ締め機によれば、負圧発生手段と磁石の両方に吸着保持されるため、常時締結部品の有無確認をすることが可能であるとともに、万一負圧発生手段が停止しても締結部品が脱落することがない等の利点がある。なお、前記磁石を収容する収容穴と前記嵌合穴との間が遮断されていることにより、締結部品が磁石に衝突することがなく、磁石の破損が防止される等の利点がある。また、ボックスビットが前記嵌合穴および収容穴を有する本体と、前記収容穴に収容される環状磁石と、前記環状磁石を保持する蓋部材と、前記蓋部材を固定する吊下ねじから構成されていることにより、比較的強い磁力を有する環状磁石にて締結部品を吸着できる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るねじ締め機の構造を示す一部断面側面図である。
図2】本発明に係るねじ締め機の要部の構造を示す要部拡大一部切欠き断面側面図である。
図3】本発明に係るねじ締め機の要部の構造を示す要部拡大底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1ないし図3において10は、ワークに締結部品の一例であるねじSを締結するねじ締め機である。このねじ締め機10は、多関節ロボット(図示せず)の駆動を受けて水平方向に移動可能な位置制御機構20と、この位置制御機構20に支持されるドライバユニット30と、これら位置制御機構20およびドライバユニット30の駆動を制御する制御部とを有している。
【0010】
前記ねじSは、六角柱形状の頭部と、頭部と一体に形成された脚部と有する磁性材料から構成された六角ボルトであり、脚部の外周には、おねじが形成されている。
【0011】
前記位置制御機構20は、鉛直方向に延びるフレーム21を備えており、このフレーム21の上下端部には、水平方向に延びる上板22および下板23が一体に固定されている。この上板22および下板23の間には、フレーム21と平行に延びるガイドロッド24が設けられており、このガイドロッド24には、摺動自在に構成されたドライバ台25が昇降自在に装着されている。また、前記上板22には、昇降駆動源の一例である昇降用ACサーボモータ26(以下、昇降モータ26という)が載置されており、この昇降モータ26の出力軸には、ボールねじ27が一体に回転可能に連結されている。このボールねじ27は、前記上板22および下板23の間に設けられており、このボールねじ27には、その回転によって昇降する駆動ナット(図示せず)を介して前記ドライバ台25が連結されている。これら構造により、前記ドライバ台25は、前記昇降モータ26の回転駆動を受けて、ガイドロッド24に沿って昇降可能となる。
【0012】
前記ドライバユニット30は、図1に示すように前記位置制御機構20のドライバ台25に連結される中空筒状のハウジング31を備えており、このハウジング31上には、回転駆動源の一例である締結用ACサーボモータ32(以下、締結モータ32という)がその出力軸をハウジング31内に挿入するよう固定されている。この締結モータ32の出力軸には、一体に回転可能な軸継手33が連結されており、この軸継手33の下端には、挿入穴331が形成されている。この挿入穴331には、軸方向に延びる長穴332が交差しており、この長穴332には、これに沿って昇降自在に構成された連結ピン34が挿通されている。この連結ピン34には、前記軸継手33と一体に回転可能なビット軸35が吊下されており、当該ビット軸35の下端には、前記ねじSと嵌合可能なボックスビット40が装着されている。また、前記挿入穴331には、前記ビット軸35を常時下方に付勢するクッションばね36が封入されている。このクッションばね36の付勢により、ビット軸35は、前記連結ピン34が長穴332の下端に常時当接するように押し出されてる一方、ビット軸35が上方向に押圧されるとクッションばね36が撓み、ビット軸35および連結ピン34が前記軸継手33および締結モータ32に対して相対移動可能となる。
【0013】
また、前記ハウジング31には、コンプレッサー等、外部の負圧発生手段(図示せず)まで連続する吸気ホース(図示せず)が接続されるホース継手37が装着されているとともに前記ビット軸35には、その軸方向に貫通する通気穴351およびこの通気穴351と直交し、通気穴351とハウジング31とを連続させる交差穴352が形成されている。このため、負圧発生手段が駆動すると前記ハウジング31に連通するビット軸35およびボックスビット40の内部が負圧となる。なお、前記ハウジング31内には、前記ホース継手37およびビット軸35の交差穴352以外から空気が出入りしないよう各種部品の間に配されたパッキン等のシール部材によって気密性が保持されている。また、前記負圧発生手段には、気圧を測定する圧力センサ(図示せず)が設けられており、当該圧力センサにより、前記ハウジング31や、ビット軸35およびボックスビット40の内圧を常時測定可能に構成されている。
【0014】
前記ボックスビット40は、図2に示すようにその上面にビット軸35の下端に連結される本体41を有する。この本体41は、その上端部に前記ビット軸35と嵌合する接続部42が形成されている一方、下面には、前記ねじSの頭部と嵌合可能な嵌合穴43が形成されている。前記嵌合穴43は、図3に示すように当該ボックスビット40の軸芯を中心とする円弧形状の嵌合凹部431と、この嵌合凹部431に連続し、径方向内側に突き出す嵌合凸部432とが6個ずつ周方向交互に形成された略花弁形状に構成されている。この嵌合穴43は、その嵌合凹部431が前記ねじSの頭部の外接円より若干大きい径に設定されている一方、前記嵌合凸部432が前記ねじSの頭部の内接円より若干外側となる位置に尖端部433が位置するように設定されている。また、ボックスビット40の一端には、呼び込み面434が形成されている。この呼び込み面434は、嵌合穴43の開口縁部から奥方へ向かうに連れて縮径する傾斜面であり、その最大径部が前記嵌合凹部431の円弧形状と同径に設定されている。
【0015】
また、図2に示すように前記嵌合穴43の奥方には、円柱形状の収容穴44と、この収容穴44より小径で前記接続部42まで貫通するねじ通過穴45が形成されている。前記収容穴44には、磁石46および非磁性体からなる蓋部材47が収容されており、磁石46は、その外径が収容穴44の内径と同じ寸法かつその穴径が前記ねじ通過穴45より大きい円環形状に構成されている。一方、蓋部材47は、磁石46を貫通する筒部471および磁石46の下面と当接する円板部472とが一体形成されたフランジ形状に構成されており、前記筒部471の長さおよび円板部472の外径がそれぞれ前記収容穴44の深さおよび穴径とほぼ同寸に構成されている。これにより、前記磁石46は、その上面および外周面は収容穴44に、その下面および内周面は蓋部材47に覆われることとなる。また、前記蓋部材47の筒部471は、その内周にめねじが形成されており、当該めねじには、前記ねじ通過穴45に挿通される固定ねじ48が螺合している。この固定ねじ48は、前記接続部42の上面に係止する頭部と、前記蓋部材47のめねじと螺合する脚部とが一体形成されている。さらに、固定ねじ48は、その軸方向に前記ビット軸35の通気穴351と前記本体41の嵌合穴43とを連通させる連通穴481が貫通している。
【0016】
前記制御部には、前記多関節ロボットや、前記位置制御機構20の昇降モータ26および前記ドライバユニット30の締結モータ32、外部の負圧発生手段および部品供給装置(図示せず)等が接続されており、これらの駆動を制御可能に構成されている。なお、前記部品供給装置は、前記ねじSを所定のねじ供給位置まで供給するように構成されており、前記多関節ロボットは、前記ボックスビット40を当該ねじ供給位置の上方および所定の締結位置の上方の間で往復移動させるように構成されている。
【0017】
次に上記のように構成されたねじ締め機10の作用を説明する。
駆動信号が入力されると、制御部は、前記部品供給装置および多関節ロボットを駆動させて前記ねじSを所定のねじ供給位置まで供給するとともに前記ホース継手37が当該ねじ供給位置の上方に位置するようねじ締め機10を移動させる。ねじSがねじ供給位置に供給されるとともにホース継手37がねじSの延長線上に到達すると、制御部は、前記位置制御機構20を駆動させてドライバユニット30をねじSに向けて下降させる。ホース継手37が下降し始めると制御部は、前記締結モータ32を駆動させて、ホース継手37を回転させる。このように回転しながら移動するボックスビット40の下端がねじSの頭部端面に達した際、前記嵌合穴43の嵌合凹部431がねじSの頭部の頂点に重なれば、ボックスビット40は、その端面にねじSの頭部端面を当接させることなく嵌合穴43内に収容する。この時、前述の様に嵌合凹部431が円弧状に構成されているため、ボックスビット40と多少位相が異なっていても嵌合凹部431をねじSの頭部の頂点に重ねることができ、比較的円滑にねじSと嵌合することができる。一方、前記嵌合穴43の嵌合凸部432がねじSの頭部の頂点に重なれば、前記呼び込み面434がねじSの頭部端面に当接する。この時、呼び込み面434が径方向内側に向かうにつれて徐々に嵌合穴43の奥方に向かうように傾斜しているため、呼び込み面434は、ねじSの頭部の頂点あるいはその付近のみと当接可能となる。これにより、呼び込み面434とねじSとの接触面積が比較的小さく、これらの間に生じる摩擦抵抗が小さくなるため、ねじSがボックスビット40との間に生じる摩擦によって供回りし始めるより前に、呼び込み面434がねじSの頭部から外れて嵌合凹部431に収容される。
【0018】
また、前記ボックスビット40の下降途中にて制御部は、前記負圧発生手段を作動させる。このため、ボックスビット40と嵌合したねじSは、負圧発生手段の駆動を受けて吸着保持される。この時、ねじSの頭部によって前記連通穴481と嵌合穴43との境界部分が封鎖され、ビット軸35およびハウジング31内の気圧が低下する。このように気圧が低下すると、前記圧力センサがこれを検出して制御部にねじSの吸着保持完了を通知する。また、嵌合穴43と嵌合したねじSは、前記磁石46の磁力によっても保持されることとなる。この時、円板部472によって嵌合穴43と収容穴44とが区切られているため、ねじSが磁石46に衝突することがなく、磁石46の破損が防止される。
【0019】
前記圧力センサからの信号を受信した制御部は、前記位置制御機構20を駆動させてドライバユニット30を引き上げる。その後、制御部は、多関節ロボットを駆動させてねじ締め機10を前記締結位置の上方に移動させる。この時、ねじSが負圧発生手段により吸気保持されており、前記圧力センサがねじSの有無を常時確認しているため、万一ねじSが搬送経路上で何らかの部材と接触して脱落しても即座に検出することができる。一方、前記磁石46もねじSを吸着保持しているため、万一搬送途中で前記負圧発生手段が停止してもねじSが脱落することがない。このように負圧発生手段と磁石46の両方でねじSを吸着保持することでねじSを確実に締結箇所まで搬送することができる。その後、ホース継手37がワークに形成されためねじの延長線上に到達すると、制御部は、前記位置制御機構20を再度駆動させてドライバユニット30を下降させるとともに前記締結モータ32を駆動させてホース継手37およびねじSを回転させる。これにより、ねじSがワークに所定の所定の締付トルクにて締結されると、制御部は、締結モータ32および負圧発生手段を停止させる。その後、制御部は、前記位置制御機構20および多関節ロボットを駆動させてねじ締め機10を当初待機位置まで復帰させる。
【0020】
上述のように構成されたねじ締め機10は、前述のように固定ねじ48によって固定される蓋部材47によって磁石46を収容する構造であるため、磁石46を接着材等で固定する必要なく容易に取り外しや交換が可能であるとともに、接着剤の劣化により磁石46が脱落すること恐れもない。また、万一磁石46が破損した場合であっても破損した磁石46の欠片が嵌合穴43から脱落することもない。このため、電子基板等、脱落した磁石46が悪影響を及ぼすワークであっても安全に利用することが可能となる。
【0021】
なお、本発明に係るボックスビット40は、前述したものに限定するものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、嵌合穴43の形状は、略花弁形状に限らずねじSの頭部形状に合わせて適宜変更可能である。また、前記ボックスビット40の円板部472は、ねじSが衝突した際に破損せず、なおかつ嵌合穴43と嵌合したねじSを保持するのに十分な強さの磁力を発揮することができるように0.2mm以上かつ、1mm以下に設定されており、特に0.5mm以下に設定されていれば、ボックスビット37が万一大きく揺れた場合であってもねじSの脱落を防止できる。
【符号の説明】
【0022】
10 … ねじ締め機
20 … 位置制御機構
30 … ドライバユニット
40 … ボックスビット
41 … 本体
42 … 接続部
43 … 嵌合穴
431… 嵌合凹部
432… 嵌合凸部
433… 尖端部
434… 逃がし面
44 … 収容穴
45 … ねじ通過穴
46 … 磁石
47 … 蓋部材
471… 筒部
472… 円板部
48 … 固定ねじ
481… 連通穴
S … ねじ

図1
図2
図3