(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055613
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】カッププレート積層型熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/12 20060101AFI20240411BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20240411BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20240411BHJP
F28D 9/02 20060101ALI20240411BHJP
F01M 5/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
F28F3/12 D
F28F3/08 301A
F28F9/02 301J
F28D9/02
F01M5/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162682
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(72)【発明者】
【氏名】岩本 紳吾
【テーマコード(参考)】
3G313
3L103
【Fターム(参考)】
3G313AB01
3G313DA14
3G313FA03
3L103AA01
3L103BB39
3L103CC02
3L103CC08
3L103CC17
3L103CC18
3L103DD12
3L103DD53
(57)【要約】
【課題】 カッププレート積層型熱交換器において、内部に配置されるインナフィンとカッププレートとの位置決めを確実に行うこと。
【解決手段】 カッププレートの周壁に近接するインナフィン4の外周縁4aに、その外周縁4aから前記周壁側に向けて突出する突起部5を有し、インナフィン4の突起部5がカッププレートの周壁の内面に接する、または前記インナフィン4の突起部5がカッププレートの周壁と平面との境界部の内面に接すること。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、平面(1b、2b)とその外周に周壁(1a、2a)を有し、平面(1b、2b)と周壁(1a、2a)との境に境界部(1c、2c)を有するカップ状の第1カッププレート(1)および第2カッププレート(2)と、
各カッププレート(1、2)が交互に積層され、それらの周壁(1a、2a)で互いに重なるコア(3)と、
第1カッププレート(1)または第2カッププレート(2)の少なくとも一方のカッププレートのカップ内に配置されるインナフィン(4)と、
を具備し、
インナフィン(4)の外周縁(4a)の一部または全部が、インナフィン(4)が配置されたカッププレートの周壁に近接するカッププレート積層型熱交換器において、
前記カッププレートの周壁に近接するインナフィン(4)の外周縁(4a)に、その外周縁(4a)から前記周壁側に向けて突出する突起部(5)を有し、
インナフィン(4)の突起部(5)が、前記カッププレートの周壁の内面に接する、または前記カッププレートの境界部の内面に接することを特徴とするカッププレート積層型熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載のカッププレート積層型熱交換器において、
前記インナフィン(4)は、波形に曲折した板材からなり、その波形の稜線(4b)に直交する方向に存在する外周縁(4a)に前記突起部(5)が形成されたカッププレート積層型熱交換器。
【請求項3】
請求項1のカッププレート積層型熱交換器において、
前記インナフィン(4)は、波形に曲折した板材からなり、その波形の稜線(4b)の方向に存在する外周縁(4a)に突起部(5)が形成されたカッププレート積層型熱交換器。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載のカッププレート積層型熱交換器において、
突起部(5)の板厚が0.3mm以下であり、突起部(5)の突出方向と直交する突起部(5)の幅(W)が10mm以下であるカッププレート積層型熱交換器。
【請求項5】
請求項2に記載のカッププレート積層型熱交換器において、
前記インナフィン(4)は、波形に曲折した板材からなり、
突起部(5)が形成される外周縁(4a)には、突起部(5)を形成する第1領域(5a)と、第1領域(5a)の近傍に位置し突起部(5)を形成しない第2領域(4aa)とを有し、
インナフィン(4)を波形の稜線(4b)に直交する方向に展開したときに、前記第1領域(5a)の先端の位置が、前記第2領域(4aa)の先端の位置に並ぶ、または、前記第1領域(5a)の先端の位置が、前記第2領域(4aa)の先端の位置より内側にあるカッププレート積層型熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にインナフィンが設けられたカッププレート積層型熱交換器に関し、特にそのインナフィンの片寄りを防止する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカッププレート積層型熱交換器として、平面とその外周に周壁を有するカップ状の第1カッププレート及び第2カッププレートが交互に周壁どうしが積層され、それらの周壁で互いに重ねられてコアが形成され、第1カッププレートまたは第2カッププレートのカップ内の少なくとも一方のカッププレートの平面にインナフィンが配置されたものが知られている。
インナフィンを配置することで、熱交換性能の向上と耐圧性の向上を図っている。インナフィンは、板材を波形に曲折して形成されている。
カッププレート積層型熱交換器の組立の際には、各カッププレートとインナフィンを積層した後に、積層方向から荷重を加え、圧縮する工程がある。
カッププレートは、インナフィンの外形の寸法が公差上限となっても配置できるように、インナフィンに対し大きく設計される。ろう付前のカッププレート積層型熱交換器は、インナフィンがカッププレート内で移動してしまうため、インナフィンの片寄りが発生し、その状態でろう付されるとカッププレートの周壁とインナフィンの外周縁との間に隙間が発生、又はその隙間が増大し性能が低下することが問題となっていた。
その問題を解決するため、下記特許文献1に記載のカッププレート積層型熱交換器が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の構造は、皿状のカッププレート間にインナフィンが配置され、そのインナフィンの外周縁とカッププレートの周壁の隙間を一定にするため、カッププレートの周壁とインナフィンとの間に複数の凸部を形成し、凸部とインナフィンが接することで、インナフィンを位置決めするものである。この凸部は、カッププレートのカップ内に、当該カッププレートと一体的に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の凸部構造で、インナフィンが周壁に片寄る対策をすると、周壁とインナフィンの間の平面に凸部を形成する必要があるので、周壁とインナフィンとの間には凸部による隙間が生じ、耐圧性が低下する。また、周壁に凸部を近づけるとカッププレートの周壁と平面との境界部、及びカッププレートの周壁の成形性が悪くなり、カッププレート同士のろう付不良や内部に流れる流体の洩れの原因となるおそれがあった。
それと共に、カッププレートに設けた凸部によってインナフィンの位置決めをする場合、精度よく、カッププレートに凸部を設けても、インナフィンの外形は寸法ばらつきが大きく(特に波の波長の方向の寸法において顕著である。)、インナフィンの成形精度に依存してしまうため、位置決め精度を高めることができず、インナフィンの片寄りが生じ、隙間が大きくなりやすい。
【0006】
また、インナフィンの形状または、凸部の大きさによっては、インナフィンの波の頂部で凸部を跨いでしまい、カッププレートに形成された凸部では位置決めとして機能しない。
さらに、積層した後の圧縮工程の時に、インナフィンがカッププレートの周壁の内面に乗り上げた場合、適正荷重(カッププレートのカップ平面上内にあるインナフィンがつぶれない、カッププレートの周壁が開かない荷重)では圧縮しきれない。圧縮荷重を過剰に高めるとインナフィン全体が座屈し、カッププレート間の高さが低くなり、熱交換性能が悪化することや、周壁が外側に開き、コア内部に流れる流体が洩れることにつながる。
【0007】
そこで本発明は、カッププレート自体に位置決め用の凸部を設けることなく、正確に位置決めできるものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、それぞれ、平面1b、2bとその外周に周壁1a、2aを有し、平面1b、2bと周壁1a、2aとの境に境界部1c、2cを有するカップ状の第1カッププレート1及び第2カッププレート2と、
各カッププレート1、2が交互に積層され、それらの周壁1a、2aで互いに重なるコア3と、
第1カッププレート1または第2カッププレート2の少なくとも一方のカッププレートのカップ内に配置されるインナフィン4と、
を具備し、
インナフィン4の外周縁4aの一部または全部が、インナフィン4が配置されたカッププレートの周壁に近接するカッププレート積層型熱交換器において、
前記カッププレートの周壁に近接するインナフィン4の外周縁4aに、その外周縁4aから前記周壁側に向けて突出する突起部5を有し、
インナフィン4の突起部5が、前記カッププレートの周壁の内面に接する、または前記カッププレートの境界部の内面に接することを特徴とするカッププレート積層型熱交換器である。
【0009】
第2の発明は、請求項1に記載のカッププレート積層型熱交換器において、
前記インナフィン4は、波形に曲折した板材からなり、その波形の稜線4bに直交する方向に存在する外周縁4aに前記突起部5が形成されたカッププレート積層型熱交換器である。
【0010】
第3の発明は、請求項1のカッププレート積層型熱交換器において、
前記インナフィン4は、波形に曲折した板材からなり、その波形の稜線4bの方向に存在する外周縁4aに突起部5が形成されたカッププレート積層型熱交換器である。
【0011】
第4の発明は、請求項1~請求項3のいずれかに記載のカッププレート積層型熱交換器において、
突起部5の板厚が0.3mm以下であり、突起部5の突出方向と直交する突起部5の幅Wが10mm以下であるカッププレート積層型熱交換器である。
【0012】
第5の発明は、請求項2に記載のカッププレート積層型熱交換器において、
前記インナフィン4は、波形に曲折した板材からなり、
突起部5が形成される外周縁4aには、突起部5を形成する第1領域5aと、第1領域5aの近傍に位置し突起部5を形成しない第2領域4aaとを有し、
インナフィン4を波形の稜線4bに直交する方向に展開したときに、前記第1領域5aの先端の位置が、前記第2領域4aaの先端の位置に並ぶ、または、前記第1領域5aの先端の位置が、前記第2領域4aaの先端の位置より内側にあるカッププレート積層型熱交換器である。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明のカッププレート積層型熱交換器は、インナフィン4が配置されたカッププレートの周壁に近接するインナフィン4の外周縁4aに、その外周縁4aから前記周壁側に向けて突出する突起部5を有し、インナフィン4の突起部5が前記カッププレートの周壁の内面に接する、または前記カッププレートの境界部の内面に接することを特徴とする。
この特徴により、インナフィン4は、前記カッププレートに対して、突起部5の突出方向に位置決めされるため、インナフィン4の片寄りが発生しない。
これにより、突起部5が形成されている部分以外の外周縁4aと、前記カッププレートの周壁との間に生じる隙間の量を特定できる。その特定により、組立て精度を向上させることができる。
また、インナフィン4が配置されたカッププレートに凸部を設ける必要がないので、カッププレートの成形性が悪化しない。
これにより、カッププレート1、2の周壁どうし1a、2a、及びインナフィン4が配置されたカッププレートとインナフィン4とのろう付を良好に行える。
背景技術のようにカッププレートの平面に突起を形成した場合は、インナフィンの形状により、カッププレートの突起にインナフィンが乗り上げることが考えられるが、本発明は、 インナフィン4が配置されたカッププレートの平面に突起を形成していないので、そのおそれがない。
【0014】
第2の発明のカッププレート積層型熱交換器は、上記第1の発明において、インナフィン4は、波形に曲折した板材からなり、その波形の稜線4bに直交する方向に存在する外周縁4aに前記突起部5が形成されたことを特徴とする。
波形の稜線4bに直交する方向は、板材からインナフィン4を成形する際、インナフィン4の外形の寸法のばらつきが大きい方向(波長の方向)である。
背景技術のようにカッププレートの平面に凸部を形成した場合は、インナフィン寸法のばらつきが大きくなると、インナフィンが凸部に乗り上げて、位置決めとし作用しないことが考えられる。しかし、第2の発明では、インナフィン4が配置されたカッププレートに凸部を形成していないので、乗り上げのおそれはない。
また、背景技術のようにカッププレートの平面に凸部を形成した場合は、ばらつきが大きくなったインナフィンの片寄りを防止することは難しい。
その理由は、インナフィン外形の寸法が公差上限で成形されたとしても突起に乗り上げないように、インナフィンに対し広い位置に凸部を設ける必要があり、インナフィンの外形の寸法が公差下限でできたときに、凸部とインナフィンの間に隙間が生まれ、インナフィンが動いてしまうためである。本発明では、突起部5が、インナフィン4が配置されたカッププレートの周壁の内面、または境界部の内面に接すれば位置決めの効果があり、その周壁から境界部までの範囲でインナフィン4の寸法ばらつきを吸収できる。このため、背景技術の平面に凸部を形成した場合に対し、インナフィンの寸法許容範囲が広くなる。
【0015】
第3の発明のカッププレート積層型熱交換器は、第1の発明において、インナフィン4は、波形に曲折した板材からなり、その波形の稜線4bの方向に存在する外周縁4aに突起部5が形成されたことを特徴とする。
波形の稜線4bの方向は、インナフィン4の寸法精度の高い方向であり、そこに突起部5を設けたので、突起部5の位置の精度が高くなり、より高精度に、インナフィン4と、そのインナフィンが配置されたカッププレートの周壁の内面または境界部の内面との隙間を特定できる。
また、背景技術のようにカッププレートの平面に突起を形成した場合は、インナフィン4が波形であるとき、カッププレートの突起にインナフィン4が乗り上げることが考えられるが、本発明は、インナフィン4が配置されたカッププレートの平面に突起を形成していないので、そのおそれがない。
【0016】
第4の発明のカッププレート積層型熱交換器は、第2または第3のいずれかの発明において、突起部5の板厚が0.3mm以下であり、突起部5の突出方向と直交する突起部5の幅Wが10mm以下であることを特徴とする。
この構成により、突起部5が、インナフィン4が配置されたカッププレートの周壁、または境界部に乗り上げてしまった場合でも、圧縮工程で適正荷重をかけたときに、容易に突起部5における一部分または全部をつぶすことができる。そのため、コア3の組立時にカッププレート1、2、及びインナフィン4が浮き上がることなくなり、それらのカッププレートとインナフィン4とのろう付が悪化しない。
また、適正荷重で十分に突起部5をつぶすことが容易であるので、周壁1a、2aが外側に開くおそれがない。
【0017】
第5の発明のカッププレート積層型熱交換器は、第2の発明において、インナフィン4は、波形に曲折した板材からなり、突起部5が形成される外周縁4aには、突起部5を形成する第1領域5aと、第1領域5aの近傍に位置し突起部5を形成しない第2領域4aaとを有し、インナフィン4を波形の稜線4bに直交する方向に展開したときに、前記第1領域5aの先端の位置が、前記第2領域4aaの先端の位置に並ぶように形成されている。
これにより、突起部5の材幅が外周縁4aの材幅からはみ出ないので、インナフィン4の成形の歩留りをよくすることができる。
この発明は、インナフィン4を波形の稜線4bに直交する方向に展開したときに、前記第1領域5aの先端の位置が、前記第2領域4aaの先端の位置より内側にある状態(前記第2領域4aaの先端の位置が、前記第1領域5aの先端の位置より出ている状態)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のカッププレート積層型熱交換器の第1の実施例の分解斜視図。
【
図2】同カッププレート積層型熱交換器のインナフィン4が配置されたカッププレートの平面図。
【
図4A】本発明に用いるインナフィン4の要部展開図。
【
図5A】本発明におけるインナフィン4とカッププレートとの関係を示す第1の実施形態。
【
図5C】本発明におけるカッププレートの周壁にインナフィン4の突起部5の先端が乗り上げた状態を示す図。
【
図5D】本発明におけるコア3の圧縮時に、突起部5の先端がつぶれる様子を示す図。
【
図6】本発明のカッププレート積層型熱交換器の第2の実施例に用いるインナフィン4の平面図。
【
図7】本発明における突起部5を一方向に複数持つインナフィン4の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1に示す如く、このカッププレート積層型熱交換器は、平面1bとその外周に周壁1aを有し、平面1bと周壁1aとの境に境界部1cを有するカップ状の第1カッププレート1と、第1カッププレート1と同様に、平面2bとその外周に周壁2aと境界部2cを有するカップ状の第2カッププレート2を有する。
それらの各カッププレート1、2が交互に積層され、それらのカッププレート1、2の周壁1a、2aで互いに重なりコア3が形成されている。
各カッププレート1、2は、
図2に示す如く、平面1b、2bの周縁の形状が方形(角に丸みを帯びる形状を含む)に形成されている。ただし、平面1b、2bの周縁の形状は方形だけに限られるものではなく、多角形、円形の形状であってもよい。
各カッププレート1、2の境界部1c、2cは、通常、丸みを帯びたRで形成されるが、Rで形成されなくてもよい。例えば、R等を有しない角状、徐変R、面取りであってもよい。
【0020】
第1カッププレート1の平面1bにおいて、方形の4隅のうち一方の対角位置に第1連通孔6が形成され、他方の対角位置に第2連通孔7が形成されている。
第1カッププレート1の第2連通孔7の孔縁に、トッププレート15側に向けて環状部11が突出されている。
また、第2カッププレート2には、第1カッププレート1と同様に第1連通孔6及び第2連通孔7が形成されている。そして、第2カッププレート2の第1連通孔6の孔縁に、トッププレート15側に向けて環状部11が突出されている。
第2カッププレート2の第1連通孔6の環状部11が、隣接する第1カッププレート1の第1連通孔6に接続される。また、第1カッププレート1の第2連通孔7の環状部11が、隣接するカッププレート1の第2連通孔7に接続される。
図1の実施例では、一対の第1連通孔6及び一対の第2連通孔7は各カッププレート1、2の対角位置に形成されているが、この形成位置に限られるものではない。
例えば、一対の第1連通孔6が各カッププレート1、2の周壁1a、2aのうち、対向する辺の一方側に形成され、一対の第2連通孔7が他方の側に形成されていてもよい。
【0021】
この例では、第1カッププレート1の平面1bにはディンプルがなく、第2カッププレート2の平面2bに、トッププレート15側に向けて多数のディンプル10が形成されている。そのため、各カッププレート1、2は、形状が異なる。
しかしながら、第2カッププレート2にディンプル10を形成しなくてもよい。つまり、第1カッププレート1と同一形状であってもよい。この場合、両カッププレート1、2をカッププレート1,2の中心位置を軸に1枚おきに回転させながら積層することもできる。
積層させるカッププレートは、二種類又は一種類に限るものではない。
三種以上のカッププレートを、積層したコア3であってもよい。例えば、一対の第1連通孔6に環状部11を設けた第3のカッププレートを、各カッププレート1、2の積層方向の中間位置に配置してもよい。
【0022】
この例では、第1カッププレート1のカップ内にインナフィン4が配置されている。そして、そのインナフィン4の外周縁4aが、第1カッププレート1の周壁1aの内面に近接している。
しかし、インナフィン4は、第1カッププレート1または第2カッププレート2のカップ内の少なくとも一方に配置されていればよい。例えば、両カッププレート1、2にディンプル10がないものを積層する場合、第2カッププレート2の平面2bに、第1カッププレート1と同様に、インナフィン4を配置することもできる。
インナフィン4は、例えば、オフセットフィン、コルゲートフィン、またはその他の波型のインナフィンを用いることができる。この実施例のインナフィン4は、
図1、
図2、
図3に示すように、オフセットフィンであり、その波形の稜線4bが、その波形の稜線4bの中心線Lの方向に沿って、中心線Lの両側に千鳥状に切り起こされている。
なお、インナフィン4は、板材が連続して曲折された方向(波長の方向)に対して直交する方向(波形の稜線4bの方向)からインナフィン4を見ると波形となっている。
以降の各実施例では、オフセット型のインナフィン4を基に述べるが、これに限られない。
この例のインナフィン4は、
図2に示す如く、各連通孔6、7を避ける切欠きが形成され、インナフィン4をカッププレート1、2の積層方向から見ると十字架のような形状をしている。ただし、連通孔6、7を避けるインナフィン4の形状は、図示の切欠きに限らず、孔であってもよい。この場合、平面1bと同様な形状になる。
また、この例では、カッププレート1、2の積層方向から見ると、第1カッププレート1の周壁1aの内面に対し、インナフィン4の波形の稜線4bの方向が、平行、垂直となるように、インナフィン4が第1カッププレート1のカップ内に配置されている。これに限らず、他の例として、カッププレート1、2の積層方向から見て、第1カッププレート1の周壁1aの内面に対し、インナフィン4の波形の稜線4bの方向が、斜めであってもよい。
【0023】
各プレート1、2の積層方向の上部には、第2流体9の出入口14が形成されている。また、図示しない積層方向の下部には、第1流体8の出入口が形成される。
この例では、第1カッププレート1のカップ内に第1流体8が流通し、第2カッププレート2のカップ内に第2流体9が流通する。
一例として、第1流体8をオイルとし、第2流体9を冷却水や冷媒を用いることができる。コア3内では、第1流体8と第2流体9との間で、熱交換が行われる。
【0024】
本発明のカッププレート積層型熱交換器は、次の特徴を有する。
インナフィン4の外周縁4aには、その外周縁4aより第1カッププレート1の周壁1a側に向けて突出する突起部5を有する。(以降、第1カッププレート1に配置されたインナフィン4について説明する。)
この突起部5は、第1カッププレート1の周壁1aの内面、または第1カッププレート1の境界部1cの内面に接する。
具体的には、外周縁4aは配置された第1カッププレート1の周壁1aには接することはなく、突起部5が第1カッププレート1の周壁1aの内面(または第1カッププレート1の境界部1cの内面)に接する。
この特徴により、インナフィン4は第1カッププレート1に対して、突起部5の突出方向に位置決めされる。つまり、突起部5が形成されている部分の外周縁4aと、第1カッププレート1の周壁1aとの間に生じる隙間の量を特定でき、組立て精度を向上させることができる。また、積層するカッププレート1、2には凸部等を設ける必要は無く、構造を単純化できる。そのため、各カッププレート1、2の周壁1a、2aどうしのろう付及び、各カッププレート1、2とインナフィン4とのろう付を良好に行える。
【実施例0025】
第1の実施例では、
図2に示すように、波形の稜線4bの中心線Lに直交する方向(同図において上下方向)に存在する外周縁4a、及び波形の稜線4bの中心線Lの方向(同図において左右方向)に存在する外周縁4aに、突起部5が形成されている。
この実施例では、突起部5は各外周縁4aの中央の位置に形成されている。
図2、
図3に示すように、各突起部5が2方向に突出し、各突起部5が第1カッププレート1の周壁1aに接している。2つの方向に突起部5が形成されていることにより、インナフィン4を、片寄りなく第1カッププレート1の中央の位置に保持することができる。
図2、
図3に示す突起部5は、1つの突出方向に対し、片側1つであるが、この限りでなく、
図7のように複数あってもよい。
図2、
図3に示す突起部5は、突出方向に延びる第1カッププレート1の周壁1aのインナフィン4の中心線4c上にあるが、この限りでなく、中心線4cから外れていてもよい。
【0026】
カッププレート積層型熱交換器を製造する際、通常、人力ではなくロボットアーム等の自動組立ての装置により、インナフィン4を掴んで第1カッププレート1のカップ内に配置する。前記中心線4c上には、突起部5が無いことにより、インナフィン4を容易に掴むことができ、また、掴まれた時のインナフィン4の姿勢が安定化し、部品の積層工程を円滑に行うことができる
また、インナフィン4は第1カッププレート1に配置する際、インナフィン4の両端を掴んで、第1カッププレート1の平面1bに向けて、第1カッププレート1の上から落とす。突起部5を設けることにより、落とした際に、突起部5が第1カッププレート1の周壁1aの内面、または境界部1cの内面に接することで、第1カッププレート1の中央へ導かれるので、第1カッププレート1から跳ね返りインナフィン4が飛び出ることを低減できる。
【0027】
図4A~
図4Cは、インナフィン4の突起部5の形成手段を示している。
インナフィン4の突起部5が形成される外周縁4aは、突起部5を形成する第1領域5aと、第1領域5aの近傍の外周縁4aを形成する第2領域4aaとに区別される。
図4Aは、インナフィン4を波形の稜線4bの中心線Lに直交する方向に展開した状態の外周縁4aを示している。この状態では、第1領域5aの先端の位置は、第2領域4aaの先端の位置に並んでいる。
上記構成により、突起部5の材幅が外周縁4aの材幅からはみ出ないので、インナフィン4の歩留まりが向上する。
これに限らず、前記第2領域4aaの先端の位置が、前記第1領域5aの先端の位置より出ている状態であっても、突起部5の材幅が外周縁4aの材幅からはみ出ないので、その効果を得られる。
【0028】
第1領域5aと第2領域4aaを形成する時には、それらの境にスリット13を形成しておくことができる。スリット13を形成することにより、第1領域5aと第2領域4aaの波の波長寸法となる成形ピッチを変えることができる。
図4B、
図4Cに示す如く、第1領域5aの成形ピッチを、第2領域4aaの成形ピッチよりも粗くする(大きくする)ことにより、インナフィン4の展開状態で第1領域5aの先端と、第2領域4aaの先端とが並んでいたとしても、成形後に外周縁4aから突出する突出部5を形成することができる。
【0029】
図5A及び
図5Bは、各カッププレート1、2の周壁1a、2aまたは境界部1c、2cとインナフィン4の突出部5の先端との関係を示す。
図5Aでは、インナフィン4の突起部5の先端が第2カッププレート2の平面2b側に位置し、第1カッププレート1の周壁1aの上部に接している。
図5Bでは、インナフィン4の突起部5の先端が第1カッププレート1の平面1b側で、その境界部1cの近傍に位置する。
第1カッププレート1内に配置されるインナフィン4は、その突起部5の先端が第2カッププレート2の平面2b側に位置していても、第1カッププレート1の平面1b側に位置していてもよい。つまり、インナフィン4の表裏を管理せずに第1カッププレート1内に配置することができる。
また、インナフィン4の表裏を管理し、
図5Bのように、突起部5の先端の位置を第1カッププレート1の平面1b側の位置に統一すると、突起部5が接触する周壁1aをより内側にすることできる、または、周壁1aでなく、その内側にある境界部1cに接触させることができる。そのため、外周縁4aから突起部5の先端までの長さを短くできる。
【0030】
上記
図5A及び
図5Bの例は、インナフィン4の突起部5の先端がカッププレート1、2の周壁1a、2aに乗り上げない場合について述べた。しかしながら、コア3を組む工程で、
図5Cに記載の如く、インナフィン4の突起部5の先端がカッププレート1、2の周壁1a、2a、または境界部1c、2c、に乗り上げ、カッププレート1、2の平面1b、2bから浮き上がることが起こりうる。
インナフィン4がカッププレート1、2内に配置され、前記カッププレート1,2が積層されたコア3が圧縮荷重16をかける工程後の状態においては、
図5Dに記載の如く、インナフィン4の突起部5の先端はつぶされ、変形部12となる。
この時、突起部5の先端のカッププレートの積層方向への寸法(突起部5の先端のつぶされた高さの寸法)をh1とし、突起部5以外の外周縁4aのカッププレートの積層方向への寸法(突起部5以外の外周縁4aの高さの寸法)をh2とすると、高さh1は高さh2より短くなる。
なお、上記は、突起部5の一部がつぶれた時を述べたが、これは突起部5の一部が周壁1a、2aに乗り上げてた場合であり、突起部5の全体が周壁1a、2aに乗り上げてしまった場合、突起部5全体をつぶすことになる。
一方で、カッププレート1、2の平面1b、2b上にある突起部5の先端以外の部分はつぶれず、その突起部5のつぶれていない部分と外周縁4aは、第2カッププレート2の平面2bに押されて、第1カッププレート1の平面1bに接触する。
そのため、圧縮工程において突起部5の一部をつぶすことができるので、カッププレート1、2の組立、及びそれらのカッププレート1、2とインナフィン4とのろう付が悪化しない。
【0031】
ここで、従来のインナフィン4の板厚は、0.3mm以下であり、同板厚以下のインナフィン4を有する本発明のカッププレート積層型熱交換器において、圧縮工程にて、カッププレート1、2の平面1b、2b上内のインナフィン4がつぶれない適正荷重で突起部5をつぶすには、
図2、
図3、
図4Bに示す突起部5の幅Wを10mm以下にすればよい。
前記適正荷重の圧縮であれば、突起部5よりも剛性の高いカッププレートが外側に開くことはない。
突起部5の幅Wは、突起部5を複数有する場合、全ての突起部5が同一の幅Wであっても、それぞれの突起部5の幅Wが異なっていてもよい。また、突起部5の幅Wは、根本から先端まで一定であっても、一定でなくともよい。例えば、先端が先細りする形状であってもよい。