(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055617
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】対象物移動装置
(51)【国際特許分類】
E05F 11/48 20060101AFI20240411BHJP
E05F 15/689 20150101ALI20240411BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
E05F11/48 C
E05F15/689
B60J1/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162695
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】梅村 泰司
【テーマコード(参考)】
2E052
3D127
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA14
2E052EB01
2E052EC01
3D127AA17
3D127CB05
3D127CC05
3D127DF03
3D127DF09
3D127DF15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】移動体の昇降方向への移動量を従来よりも大きくしつつ、対象物移動装置の小型化を図ることが可能な対象物移動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置2と、移動対象物が取り付けられる移動部材3と、駆動装置2によって巻き取りと繰り出しされることで移動部材3を移動させるインナーケーブル6と、移動部材3の移動方向に沿って延伸する本体部5を有し、本体部5の対向面51において移動部材3と対向するガイドレール4と、ガイドレール4の移動部材3の移動方向の少なくとも一方側の端部に設けられ、インナーケーブル6を方向転換するプーリ8とを備える。プーリ8は、本体部5の対向面51とは反対側である非対向面52に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と、
移動対象物が取り付けられる移動部材と、
前記駆動部によって巻き取りと繰り出しされることで前記移動部材を移動させるケーブルと、
前記移動部材の移動方向に沿って延伸する本体部の一方の面において前記移動部材と対向する対向面を有し、前記移動部材と摺動自在に係合するガイドレールと、
前記ガイドレールの前記移動部材の移動方向の少なくとも一方側の端部に設けられ、前記ケーブルを方向転換する方向転換部材と、
を備え、
前記方向転換部材は、前記ケーブルを案内する溝部を有し、
前記溝部は、前記本体部の前記対向面とは反対側である他方の面の側に設けられる、
対象物移動装置。
【請求項2】
前記方向転換部材は、
前記移動部材が前記ガイドレールの前記一方側の端部まで移動した状態において、前記方向転換部材を、前記方向転換部材と前記ガイドレールとの対向面に対し垂直な方向に見たとき、前記方向転換部材の少なくとも一部と前記移動部材の少なくとも一部とが重なり合う位置に設けられる、
請求項1に記載の対象物移動装置。
【請求項3】
前記ガイドレールは、前記本体部の前記対向面において前記移動部材の移動方向と直交する幅方向の端部から立ち上がるよう形成され、前記移動部材を前記移動部材の移動方向に沿って摺動可能に案内する側壁部を有し、
前記移動部材は、前記側壁部の一方の面と対向するガイド部を有し、
前記ガイド部には、前記ガイド部の前記移動部材の移動方向の一方側の端部に前記移動部材の移動方向に延びる延伸部が設けられ、
前記延伸部は、前記移動部材が前記ガイドレールに対して傾くことを規制し、前記移動部材が前記ガイドレールの前記一方側の端部に移動した状態において、前記方向転換部材の回転軸方向に見たときに当該方向転換部材の少なくとも一部と重なり合う位置に位置する、
請求項1または2に記載の対象物移動装置。
【請求項4】
前記方向転換部材は、プーリであり、
前記プーリは、
前記移動部材が前記ガイドレールの前記一方側の端部まで移動した状態において、前記プーリの回転軸方向に見たとき、前記プーリの少なくとも一部と前記移動部材の少なくとも一部とが重なり合う位置に設けられる、
請求項1に記載の対象物移動装置。
【請求項5】
前記ガイドレールは、前記本体部の前記対向面において前記移動部材の移動方向と直交する幅方向の端部から立ち上がるよう形成され、前記移動部材を前記移動部材の移動方向に沿って摺動可能に案内する側壁部を有し、
前記移動部材は、前記側壁部の一方の面と対向するガイド部を有し、
前記ガイド部には、前記ガイド部の前記移動部材の移動方向の一方側の端部に前記移動部材の移動方向に延びる延伸部が設けられ、
前記延伸部は、前記移動部材が前記ガイドレールに対して傾くことを規制し、前記移動部材が前記ガイドレールの前記一方側の端部に移動した状態において、前記プーリの回転軸方向に見たときに当該プーリの少なくとも一部と重なり合う位置に位置する、
請求項4に記載の対象物移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動対象物が取り付けられた移動部材を昇降させる対象物移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、移動部材を昇降させる対象物移動装置として、例えば車両の窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータが知られている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されたウインドレギュレータは、窓ガラスが取り付けられる移動部材と、移動部材を案内する長手状のガイド部材と、移動部材を移動させるケーブルと、ケーブルを方向転換するプーリと、を備える。移動部材は、ガイド部材の一方の面に取り付けられており、ガイド部材の長手方向に沿って移動する。プーリは、ガイド部材の一方の面に設けられたプーリブラケットに支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
ところで、近年、車両の多様なドアデザインまたは車内空間を広げる等の要望等により、ウインドレギュレータ全体の小型化が望まれている。
【0006】
本発明は、移動部材の昇降方向への移動量を従来よりも大きくしつつ、小型化を図ることが可能な対象物移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る対象物移動装置は、
駆動部と、
移動対象物が取り付けられる移動部材と、
前記駆動部によって巻き取りと繰り出しされることで前記移動部材を移動させるケーブルと、
前記移動部材の移動方向に沿って延伸する本体部の一方の面において前記移動部材と対向する対向面を有し、前記移動部材と摺動自在に係合するガイドレールと、
前記ガイドレールの前記移動部材の移動方向の少なくとも一方側の端部に設けられ、前記ケーブルを方向転換する方向転換部材と、
を備え、
前記方向転換部材は、前記ケーブルを案内する溝部を有し、
前記溝部は、前記本体部の前記対向面とは反対側である他方の面の側に設けられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、移動部材の昇降方向への移動量を従来よりも大きくしつつ、小型化を図ることが可能な対象物移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る対象物移動装置の斜視図の一例である。
【
図2】第1実施形態に係る対象物移動装置の上方部分の斜視図の一例である。
【
図3】(A)従来の対象物移動装置の上方部分の分解斜視図、(B)第1実施形態に係る対象物移動装置の上方部分の分解斜視図の一例である。
【
図4】従来の対象物移動装置及び第1実施形態に係る対象物移動装置において、移動部材がガイドレールの上方側の端部に移動したときの対象物移動装置の上方部分の正面図の比較例である。
【
図5】第2実施形態に係る対象物移動装置の上方部分の分解斜視図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る対象物移動装置として、第1実施形態及び第2実施形態について説明する。第1実施形態に係る対象物移動装置及び第2実施形態に係る対象物移動装置は、いずれも、例えば、車両のドア等に設けられ、移動対象物(例えば、車両の窓ガラス)の開閉を行うウインドレギュレータ等として用いられるものである。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る対象物移動装置1の斜視図の一例である。この明細書において、上方向、下方向、左方向、右方向、前方向、及び後方向を、それぞれ、
図1に示されるように定義する。これらの方向は、後述の
図2~
図4においても同様である。なお、上方向は移動部材3が上昇する方向、下方向は移動部材3が下降する方向である。
【0012】
図1に示されるように、対象物移動装置1は、駆動装置2と、移動対象物が取り付けられる移動部材3と、駆動装置2によって移動部材3を上下に移動させるインナーケーブル6と、移動部材3の移動方向に沿って延伸する板状の本体部5を有するガイドレール4と、インナーケーブル6を方向転換させることができる方向転換部材であるプーリ8と、を備える。
【0013】
なお、
図1において、実線で示される移動部材3は下降したときの位置であり、二点鎖線で示される移動部材3は上昇したときの位置である。移動部材3は、実線で示される位置と二点鎖線で示される位置との間において、上下に移動することができる。
【0014】
駆動装置2は、ガイドレール4の下端に取り付けられ、移動部材3の下限位置よりも下側に位置するように配置されている。この駆動装置2は、例えば、インナーケーブル6を巻き取り、及び繰り出すドラム(不図示)と、このドラムを駆動するモータ22と、モータ22に連結されるウォームギア減速機等の減速機(不図示)を収容するためのハウジング(不図示)とを有する。なお、第1実施形態では、駆動装置2はガイドレール4の下端に取り付けられているが、駆動装置2の位置はこれに限定されるものではなく、他の箇所に駆動装置2が設けられていてもよい。
【0015】
移動部材3は、ガイドレール4が有する板状の本体部5の表裏面のうち、一方の面と対向するように配置されている。この明細書において、本体部5の表裏面のうち、移動部材3と対向する側の面を「対向面51」と称し、この対向面51と反対側の面を「非対向面52」と称する。
【0016】
移動部材3は、上下方向に延びるガイドレール4に沿って上下方向に摺動自在に係合している。移動部材3の上下方向の移動は、ガイドレール4によって案内される。詳しくは図示しないが、移動部材3には、インナーケーブル6の端部を取り付けるためのケーブル端連結部が設けられている。また、移動部材3には、移動対象物をねじ等によって固定するための固定孔31が形成されている。
【0017】
移動部材3は、例えば、合成樹脂等によって一体的に形成することができるが、別体として熱融着等によって互いに固着させることにより形成してもよい。なお、移動部材3の素材は、特に合成樹脂に限定されるものではなく、金属や金属と合成樹脂を組み合わせたもの等でもよい。
【0018】
インナーケーブル6は、駆動装置2によって巻き取り、及び繰り出されることで移動部材3を上下に移動させるものであり、一方の端部がドラム(不図示)に巻き取られ、他方の端部が移動部材3に連結されている。インナーケーブル6は、ケーブルガイド7によって規制されていない状態においては、ガイドレール4の上端部に設けられるプーリ8と、ガイドレール4の下端に設けられる上述のドラム(不図示)との間において、最短距離を通るように直線状に配索される。なお、「インナーケーブル6」は、本発明の「ケーブル」に相当する。
【0019】
ガイドレール4は、例えば、亜鉛メッキ鋼板等の金属薄板で構成されている。ガイドレール4は、移動部材3が昇降したときに、移動部材3に固定された移動対象物(例えば窓ガラス)が湾曲した軌跡で上下に昇降するように、上下に弓なりに湾曲している。ガイドレール4には、インナーケーブル6の配索経路をガイドレール4に沿わせるように規制するケーブルガイド7が取り付けられる。
【0020】
図1及び
図2(特に
図2)に示されるように、ガイドレール4が有する本体部5は、幅方向の両端を後方に向けて略直角に折り曲げて、後方に向けて立ち上がるように立設された側壁が形成されている。なお、
図2は、第1実施形態に係る対象物移動装置1の上方部分の斜視図の一例である。この
図2では、便宜上、インナーケーブル6の図示を省略している。
【0021】
左右の側壁のうち一方の側壁55は、さらに左方に向けて立ち上がるようにL字状に折り曲げられて、レール部56(
図2参照)が形成されている。このレール部56は、移動部材3に形成されるガイド溝32に嵌入される。このようにして、移動部材3は、ガイドレール4に対して上下方向に摺動自在に取り付けられ、側壁55及びレール部56に案内されつつ、レール部56に沿って上下方向に移動することが可能となる。上記の「側壁55及びレール部56」は、本発明の「側壁部」に相当する。
【0022】
プーリ8は、軸部83を中心として回転可能であり、インナーケーブル6(
図1参照)の配索方向を変えるための方向転換部材として機能する。この方向転換部材は、プーリ8に限定されるものではなく、インナーケーブル6を巻き掛けて回転することが可能な部材、インナーケーブル6の配索方向を変えるようにインナーケーブル6をガイドする部材等、インナーケーブル6の配索方向を変えることができればよい。なお、「プーリ8」は、本発明の「方向転換部材」に相当する。
【0023】
プーリ8は、ガイドレール4の上端部において、ガイドレール4が有する本体部5の対向面51と非対向面52とのうち、非対向面52の側に設けられている。すなわち、従来のように、プーリ8をガイドレール4よりも上方に配置するのではなく、移動部材3が配置される側とは反対側である本体部5の非対向面52の側にプーリ8を配置している。プーリ8は、本体部5に直接取り付けられてもよいし、ブラケット等の他の部材を介して本体部5に取り付けられてもよい。
【0024】
このように、移動部材3が対向する対向面51とは反対側の非対向面52にプーリ8を取り付けることで、従来の対象物移動装置1A(後述の
図3参照)と比べて、プーリ8との距離がより近い位置まで、移動部材3を上方向に移動させることができる。よって、移動部材3の移動量が小さくならないようにしつつ、対象物移動装置1の小型化を図ることができる。また、第1実施形態の対象物移動装置1では、従来の対象物移動装置1A(後述の
図3参照)であればプーリ8と移動部材3とが干渉する位置まで移動部材3を上方向に移動させることもできるため、対象物移動装置1を大型化することなく、従来よりも移動部材3の移動量を大きくすることもできる。ひいては、移動部材3の移動量を従来よりも大きくしつつ、対象物移動装置1の小型化を図ることも可能となる。
【0025】
また、移動部材3が取り付けられる移動対象物が例えば車両の窓ガラスである場合、窓ガラスの開閉を行なった際、ガラス部分が他の部材(例えば車両のドアに設けられたベルトラインモール)と擦れ合う等して静電気が帯電することがある。窓ガラスが帯電した場合、従来の対象物移動装置1A(後述の
図3参照)における移動部材3A(後述の
図3参照)とプーリ8A(後述の
図3参照)との離間距離では、プーリ8Aと軸部83Aとの間に塗布されたグリース、プーリ8Aの溝部やフランジ部等に塗布されたグリースが、窓ガラスに帯電した静電気によって引き寄せられ、窓ガラスにグリースが付着するおそれがある。しかし、ガイドレール4の移動部材3が対向する対向面51とは反対側の非対向面52にプーリ8を取り付けることで、前後方向において移動部材3とプーリ8との間に位置するガイドレール4が遮蔽壁の役割を果たし、また、プーリ8と窓ガラスとの距離を従来よりも長くすることができることから、プーリ8に塗布されたグリースが窓ガラスに付着してしまうことを抑制できる。
【0026】
また、第1実施形態に係る対象物移動装置1は、他の部材(例えば車両のドア)に対象物移動装置1を固定するためのブラケット9を備えている。
【0027】
図2に示されるように、ブラケット9は、本体部5の非対向面52に取り付けられている。ブラケット9は取付孔91を有しており、この取付孔91は、例えば車両のドアに固定される固定部として機能する。このようにして、対象物移動装置1が例えば車両のドアに取り付けられる。
【0028】
また、プーリ8を本体部5の非対向面52に配置することで、プーリ8の回転中心である軸部83と、ブラケット9の取付孔91との距離を短くすることができる。これについて、
図3を参照して説明する。
図3は、(A)従来の対象物移動装置1Aの上方部分の分解斜視図、(B)第1実施形態に係る対象物移動装置1の上方部分の分解斜視図の一例である。
【0029】
図3(A)に示されるように、従来の対象物移動装置1Aは、本体部5Aの表裏面のうち、移動部材3Aが取り付けられる側の面である対向面51Aとは反対側の面である非対向面52Aに、ブラケット9Aが取り付けられている。ブラケット9Aは、ブラケット9Aから上方に向けて長手状に延在する板状部92Aを有する。この板状部92Aは、ブラケット9Aがガイドレール4Aの非対向面52Aに取り付けられた状態で、ガイドレール4の上端41Aを超えて上方に突出している。板状部92Aの上方側の端部近傍には、プーリ8Aを取り付けるためのプーリ取付孔93Aが形成されている。したがって、プーリ8Aの回転中心である軸部83Aは、ガイドレール4Aの上端41Aよりも上方となる。
【0030】
これに対し、第1実施形態に係る対象物移動装置1は、
図3(B)に示されるように、本体部5の表裏面のうち、移動部材3が取り付けられる側の面である対向面51とは反対側の面である非対向面52に、プーリ8が取り付けられている。すなわち、プーリ8の回転中心である軸部83は、ガイドレール4の上端41よりも下方となる。そのため、第1実施形態に係る対象物移動装置1では、従来の対象物移動装置1A(
図3(A)参照)と比べて、プーリ8の回転中心である軸部83と、ブラケット9の取付孔91との距離を短くすることができる。このように、プーリ8と取付孔91との距離、すなわちインナーケーブル6(
図1参照)の張力によってプーリ8に加わる荷重の位置と取付孔91との距離を従来よりも短くすることができるため、取付孔91に生じる負荷を小さくすることができる。その結果、対象物移動装置1を他の部材に取り付けた際に、他の部材への対象物移動装置1の取り付け状態を、安定させることができる。また、プーリ8の回転中心である軸部83と、ブラケット9の取付孔91との距離を短くすることができることから、ブラケット9についても小型化することができる。
【0031】
次に、第1実施形態のプーリ8が本体部5に取り付けられた場合の具体的な上下方向における位置について、
図4を参照して説明する。
図4は、従来の対象物移動装置1A及び第1実施形態に係る対象物移動装置において、移動部材がガイドレールの上方側の端部に移動したとき(すなわち、移動部材3が上方に向けた移動限界位置まで移動したとき)の対象物移動装置の上方部分の正面図の比較例である。なお、
図4において、実線で示されるプーリ8は、第1実施形態の対象物移動装置1におけるプーリ8の配置位置であり、二点鎖線で示されるプーリ8Aは、従来の対象物移動装置1Aにおけるプーリ8Aの配置位置である。
【0032】
第1実施形態では、移動部材3がガイドレール4の上方側の端部に移動した状態(すなわち、移動部材3が上方に向けた移動限界位置まで移動した状態)において、プーリ8の回転軸方向(すなわち軸部83に沿った方向)に見た場合、プーリ8は、移動部材3の上下方向における長さの範囲内に収まる位置で、本体部5に取り付けられている。これに対し、従来のプーリ8Aは、少なくとも移動部材3が有するガイド溝32の上方側の端部41よりも上方に配置されている。これは、従来の対象物移動装置1Aでは、プーリ8Aと移動部材3とが干渉しない範囲でしか移動部材3を上昇させることができないためである。このように、第1実施形態に係る対象物移動装置1によれば、移動部材3を、従来の対象物移動装置1Aと比べてプーリ8に対してより近い位置まで上昇させることが可能となる。その結果、移動部材3の上下への移動量を大きくすることができる。また、対象物移動装置1を、上下方向における従来のプーリ8Aの回転中心と第1実施形態のプーリ8の回転中心との長さL分だけ短くすることができ、対象物移動装置1の小型化を図ることが可能となる。
【0033】
なお、第1実施形態では、プーリ8は、移動部材3がガイドレール4の上方側の端部に移動した状態(すなわち、移動部材3が上方に向けた移動限界位置まで移動した状態)において、前後方向にプーリ8及び移動部材3を見た場合に、移動部材3の上下方向における長さの範囲内に収まる位置に取り付けられているが、これに限られない。例えば、移動部材3がガイドレール4の上方側の端部に移動した状態において、プーリ8の回転軸方向(すなわち軸部83に沿った前後方向)に見たときに、プーリ8の少なくとも一部と移動部材3が有するガイド溝32の上方側の端部とが重なり合う位置に、プーリ8を取り付けてもよい。このようにした場合であっても、移動部材3を、従来の対象物移動装置1Aと比べてプーリ8に対してより近い位置まで上昇させることが可能となり、対象物移動装置1の小型化を図ることができる。
【0034】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る対象物移動装置1Bについて説明する。この第2実施形態では、第1実施形態に係る対象物移動装置1と異なる点についてのみ言及し、とくに言及しない点については、作用効果も含めて第1実施形態に係る対象物移動装置1と同じである。また、第2実施形態では、対象物移動装置1B及び移動部材3Bについては第1実施形態と異なる符号を付して説明するが、その他の部材については、第1実施形態と同様の符号を付して説明する。
【0035】
図5は、第2実施形態に係る対象物移動装置1Bの上方部分の分解斜視図の一例である。
図5に示されるように、第2実施形態に係る対象物移動装置1Bは、第1実施形態に係る対象物移動装置1と同様に、ガイドレール4が有する本体部5の幅方向の両端に、後方に向けて立ち上がるように立設された側壁が形成されている。さらに、左右の側壁のうち一方の側壁55には、ガイド溝32に嵌入されるレール部56(
図2も参照)が形成されている。なお、「ガイド溝32」は、本発明の「ガイド部」に相当する。
【0036】
第2実施形態に係る対象物移動装置1Bでは、移動部材3Bに形成されたガイド溝32の上方側の端部に延伸部33が設けられる。第2実施形態においては、移動部材3Bに形成されたガイド溝32の上方側の端部には、例えば直方体の延伸部33が上下方向に伸びるように設けられている。すなわち、この延伸部33は、ガイド溝32の移動部材3Bの移動方向である上下方向のうち上方側の端部に、移動部材3の移動方向である上下方向に沿って設けられている。
【0037】
延伸部33は、移動部材3Bをガイドレール4に対して上方向に移動させる際に生じるケーブル引き角によって、移動部材3Bがガイドレール4に対して右下方向に傾きが生じたとき、ガイド溝32の側壁55に対向する側の面が側壁55に対して接触する前に、側壁55に接触する。そのため、延伸部33は、移動部材3Bがガイドレール4に対して傾くことを規制することができる。この延伸部33は、移動部材3Bがガイドレール4の上方側の端部に移動した状態において、プーリ8の回転軸方向(すなわち軸部83に沿った前後方向)に見たときに、このプーリ8の少なくとも一部と重なり合う位置に位置している。このようにすることで、ガイドレール4に対して移動部材3Bの支持を安定させた状態で、移動部材3Bを上下方向に移動させることができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限られるものではなく、例えばブラケット9に代わって軸部83によって他の部材(例えば車両のドア)に取り付けることで対象物移動装置1を固定することができる等特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。なお、上記した実施形態は、以下の構成を有する発明を主に説明するものである。
【0039】
(1)駆動部と、
移動対象物が取り付けられる移動部材と、
前記駆動部によって巻き取りと繰り出しされることで前記移動部材を移動させるケーブルと、
前記移動部材の移動方向に沿って延伸する本体部の一方の面において前記移動部材と対向する対向面を有し、前記移動部材と摺動自在に係合するガイドレールと、
前記ガイドレールの前記移動部材の移動方向の少なくとも一方側の端部に設けられ、前記ケーブルを方向転換する方向転換部材と、
を備え、
前記方向転換部材は、前記ケーブルを案内する溝部を有し、
前記溝部は、前記本体部の前記対向面とは反対側である他方の面の側に設けられる、
対象物移動装置。
【0040】
(2)前記方向転換部材は、
前記移動部材が前記ガイドレールの前記一方側の端部まで移動した状態において、前記方向転換部材を、前記方向転換部材と前記ガイドレールとの対向面に対し垂直な方向に見たとき、前記方向転換部材の少なくとも一部と前記移動部材の少なくとも一部とが重なり合う位置に設けられる、
(1)に記載の対象物移動装置。
【0041】
(3)前記ガイドレールは、前記本体部の前記対向面において前記移動部材の移動方向と直交する幅方向の端部から立ち上がるよう形成され、前記移動部材を前記移動部材の移動方向に沿って摺動可能に案内する側壁部を有し、
前記移動部材は、前記側壁部の一方の面と対向するガイド部を有し、
前記ガイド部には、前記ガイド部の前記移動部材の移動方向の一方側の端部に前記移動部材の移動方向に延びる延伸部が設けられ、
前記延伸部は、前記移動部材が前記ガイドレールに対して傾くことを規制し、前記移動部材が前記ガイドレールの前記一方側の端部に移動した状態において、前記方向転換部材の回転軸方向に見たときに当該方向転換部材の少なくとも一部と重なり合う位置に位置する、
(1)または(2)に記載の対象物移動装置。
【0042】
(4)前記方向転換部材は、プーリであり、
前記プーリは、
前記移動部材が前記ガイドレールの前記一方側の端部まで移動した状態において、前記プーリの回転軸方向に見たとき、前記プーリの少なくとも一部と前記移動部材の少なくとも一部とが重なり合う位置に設けられる、
(1)に記載の対象物移動装置。
【0043】
(5)前記ガイドレールは、前記本体部の前記対向面において前記移動部材の移動方向と直交する幅方向の端部から立ち上がるよう形成され、前記移動部材を前記移動部材の移動方向に沿って摺動可能に案内する側壁部を有し、
前記移動部材は、前記側壁部の一方の面と対向するガイド部を有し、
前記ガイド部には、前記ガイド部の前記移動部材の移動方向の一方側の端部に前記移動部材の移動方向に延びる延伸部が設けられ、
前記延伸部は、前記移動部材が前記ガイドレールに対して傾くことを規制し、前記移動部材が前記ガイドレールの前記一方側の端部に移動した状態において、前記プーリの回転軸方向に見たときに当該プーリの少なくとも一部と重なり合う位置に位置する、
(4)に記載の対象物移動装置。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本実施の形態では、対象物移動装置1が採用される適用例として、車両のドア等に設けられ、車両の窓ガラスの開閉を行うウインドレギュレータを例示したが、ウインドレギュレータに限定されず、様々な装置に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 対象物移動装置
2 駆動装置
3 移動部材
4 ガイドレール
5 本体部
6 インナーケーブル
7 ケーブルガイド
8 プーリ
32 ガイド溝
33 延伸部
51 対向面
52 非対向面
55 側壁