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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055639
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/427 20060101AFI20240411BHJP
   B60N 2/20 20060101ALI20240411BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B60N2/427
B60N2/20
B60N2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162733
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】永谷 優樹
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD01
3B087CD03
(57)【要約】
【課題】衝突時にリクライナに加わるトルクを低減できる乗物用シートを提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、クッションフレームに固定されたロアアームと、バックフレームをロアアームに対して揺動させるリクライナとを備える乗物用シートである。ロアアームは、リクライナプレートを有する。リクライナプレートは、リクライナよりも下方に配置された衝撃吸収孔と、衝撃吸収孔からシート後方に延伸すると共にリクライナプレートの厚み方向に突出するように湾曲した第1ビードと、衝撃吸収孔からシート前方に延伸すると共に、リクライナプレートの厚み方向に突出するように湾曲した第2ビードとを有する。第2ビードの突出方向は、第1ビードの突出方向に対し反対方向である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
前記シートクッションに対してシート前後方向に揺動可能なシートバックと、
前記シートクッションを支持するクッションフレームと、
前記シートバックを支持するバックフレームと、
前記クッションフレームに固定されたロアアームと、
前記バックフレームと前記ロアアームとに連結されると共に、前記バックフレームを前記ロアアームに対してシート前後方向に揺動させるように構成されたリクライナと、
を備え、
前記ロアアームは、前記リクライナが固定されると共に、前記クッションフレームに固定された板状のリクライナプレートを有し、
前記リクライナプレートは、
前記リクライナの回転中心軸よりも下方に配置された衝撃吸収孔と、
前記衝撃吸収孔からシート後方に延伸すると共に、前記リクライナプレートの厚み方向に突出するように湾曲した第1ビードと、
前記衝撃吸収孔からシート前方に延伸すると共に、前記リクライナプレートの厚み方向に突出するように湾曲した第2ビードと、
を有し、
前記第2ビードの突出方向は、前記第1ビードの突出方向に対し反対方向である、乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記第1ビードは、シート幅方向において前記バックフレームに近づく方向に突出する、乗物用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の乗物用シートであって、
前記リクライナの前記回転中心軸と平行な方向から視て、前記第1ビードの長手方向は、前記第2ビードの長手方向と交差する、乗物用シート。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の乗物用シートであって、
前記第2ビードのシート前方の端部は、前記リクライナと前記リクライナプレートとの接合部よりもシート前方に位置する、乗物用シート。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の乗物用シートであって、
前記リクライナプレートは、前記クッションフレームに固定された複数の固定部を有し、
前記衝撃吸収孔は、前記リクライナの前記回転中心軸と平行な方向から視て、前記リクライナの前記回転中心軸と、前記複数の固定部のうち最も下方に位置する固定部とに挟まれる位置に配置される、乗物用シート。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の乗物用シートであって、
前記リクライナは、前記バックフレームにシート幅方向外側から重ね合わされ、
前記クッションフレームは、前記リクライナと上下方向に対向すると共に、シート幅方向内側に向かって高さが小さくなるように傾斜した上面を有する傾斜部を有する、乗物用シート。
【請求項7】
請求項6に記載の乗物用シートであって、
前記クッションフレームは、
前記ロアアームが固定されたサイドフレームと、
前記サイドフレームに対しシート幅方向に重ね合わされた補強プレートと、
を有し、
前記傾斜部は、前記補強プレートに設けられる、乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に配置される乗物用シートにおいて、シートバックをシートクッションに対して揺動可能とするために、バックフレームと、クッションフレームに連結されたロアアームとの間にリクライナが設けられた構造が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10752138号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロアアームにリクライナが取り付けられた乗物用シートでは、乗物の衝突時に発生するバックフレームへの荷重が、リクライナにトルクとして伝達される。このトルクがリクライナに入力され続けると、リクライナの破損、リクライナとバックフレームとの接合部分の破損等が発生する。この結果、バックフレームが傾倒するおそれがある。
【0005】
本開示の一局面は、衝突時にリクライナに加わるトルクを低減できる乗物用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、シートクッション(2)と、シートクッション(2)に対してシート前後方向に揺動可能なシートバック(3)と、シートクッション(2)を支持するクッションフレーム(4)と、シートバック(3)を支持するバックフレーム(5)と、クッションフレーム(4)に固定されたロアアーム(6)と、バックフレーム(5)とロアアーム(6)とに連結されると共に、バックフレーム(5)をロアアーム(6)に対してシート前後方向に揺動させるように構成されたリクライナ(7)と、を備える乗物用シート(1)である。
【0007】
ロアアーム(6)は、リクライナ(7)が固定されると共に、クッションフレーム(4)に固定された板状のリクライナプレート(61)を有する。リクライナプレート(61)は、リクライナ(7)の回転中心軸よりも下方に配置された衝撃吸収孔(617)と、衝撃吸収孔(617)からシート後方に延伸すると共に、リクライナプレート(61)の厚み方向に突出するように湾曲した第1ビード(618)と、衝撃吸収孔(617)からシート前方に延伸すると共に、リクライナプレート(61)の厚み方向に突出するように湾曲した第2ビード(619)と、を有する。第2ビード(619)の突出方向は、第1ビード(618)の突出方向に対し反対方向である。
【0008】
このような構成によれば、トルクが入力されたリクライナ(7)からクッションフレーム(4)へ伝達される荷重によって、互いに反対方向に突出した第1ビード(618)及び第2ビード(619)がそれぞれシート幅方向に変形する歪が誘発される。
【0009】
その結果、リクライナ(7)の破損が抑制されると共に、クッションフレーム(4)の変形が抑制される。さらに、リクライナ(7)とバックフレーム(5)との接合時に生じていた歪が衝撃吸収孔(617)によって吸収される。そのため、リクライナ(7)へのトルク入力発生時のリクライナ(7)とバックフレーム(5)との接合部分における破損が抑制される。
【0010】
本開示の一態様では、第1ビード(618)は、シート幅方向においてバックフレーム(5)に近づく方向に突出してもよい。このような構成によれば、第1ビード(618)よりもシート前方に配置された第2ビード(619)がバックフレーム(5)から離れる方向に突出するため、リクライナプレート(61)とバックフレーム(5)との干渉が避けやすくなる。
【0011】
本開示の一態様では、リクライナ(7)の回転中心軸と平行な方向から視て、第1ビード(618)の長手方向は、第2ビード(619)の長手方向と交差してもよい。このような構成によれば、第1ビード(618)及び第2ビード(619)における変形速度が小さくなる。そのため、リクライナプレート(61)における衝撃吸収効果が向上する。
【0012】
本開示の一態様では、第2ビード(619)のシート前方の端部は、リクライナ(7)とリクライナプレート(61)との接合部(71A,71B,71C)よりもシート前方に位置してもよい。このような構成によれば、リクライナ(7)へのトルク入力発生時における接合部(71A,71B,71C)への歪の伝搬を抑制できる。そのため、接合部(71A,71B,71C)における損傷を抑制できる。
【0013】
本開示の一態様では、リクライナプレート(61)は、クッションフレーム(4)に固定された複数の固定部(611,612)を有してもよい。衝撃吸収孔(617)は、リクライナ(7)の回転中心軸と平行な方向から視て、リクライナ(7)の回転中心軸と、複数の固定部(611,612)のうち最も下方に位置する固定部(611)とに挟まれる位置に配置されてもよい。このような構成によれば、リクライナ(7)からクッションフレーム(4)への荷重伝達経路上に衝撃吸収孔(617)が配置されるため、リクライナプレート(61)における衝撃吸収効果が向上する。
【0014】
本開示の一態様では、リクライナ(7)は、バックフレーム(5)にシート幅方向外側から重ね合わされてもよい。クッションフレーム(4)は、リクライナ(7)と上下方向に対向すると共に、シート幅方向内側に向かって高さが小さくなるように傾斜した上面を有する傾斜部(441)を有してもよい。このような構成によれば、リクライナプレート(61)の変形によって沈んだバックフレーム(5)がリクライナ(7)と共に傾斜部(441)に沿って滑ることで、バックフレーム(5)をシート幅方向内側に落とし込むことができる。その結果、バックフレーム(5)とクッションフレーム(4)との干渉を抑制することができる。
【0015】
本開示の一態様では、クッションフレーム(4)は、ロアアーム(6)が固定されたサイドフレーム(41)と、サイドフレーム(41)に対しシート幅方向に重ね合わされた補強プレート(44)と、を有してもよい。傾斜部(441)は、補強プレート(44)に設けられてもよい。このような構成によれば、サイドフレーム(41)の設計自由度を高めることができる。
【0016】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態の乗物用シートを示す模式的な斜視図である。
図2図2は、図1の乗物用シートにおけるクッションフレーム、バックフレーム、ロアアーム及びリクライナの連結部分の模式的な斜視図である。
図3図3Aは、図2のロアアームの模式的な斜視図であり、図3Bは、図3Aのロアアームの模式的な背面図である。
図4図4は、図2のロアアーム及びリクライナの模式的な右側面図である。
図5図5Aは、図2の連結部分の模式的な斜視図であり、図5Bは、図5Aのクッションフレームの模式的な斜視図である。
図6図6Aは、図2とは異なる実施形態における連結部分の模式的な斜視図であり、図6Bは、図6Aのクッションフレームの模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用シート1は、シートクッション2と、シートバック3と、クッションフレーム4と、バックフレーム5と、ロアアーム6と、リクライナ7とを備える。
【0019】
乗物用シート1は、乗用車の座席シートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、乗物用シート1を乗物(つまり乗用車)に組み付けた状態における方向を意味する。本実施形態では、シート幅方向は、乗物の左右方向に一致し、シート前方は、乗物の前方に一致する。
【0020】
シートクッション2は、着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック3は、着席者の背部を支持するための部位である。シートバック3は、シートクッション2に対してシート前後方向に揺動可能である。
【0021】
<クッションフレーム>
クッションフレーム4は、シートクッション2を支持している。クッションフレーム4は、第1サイドフレーム41と、第2サイドフレーム42と、フロントパネル43とを有する。
【0022】
第1サイドフレーム41及び第2サイドフレーム42は、それぞれ、シート前後方向に延伸すると共に、シート幅方向に互いに離れて配置されたパネル状の部材である。第1サイドフレーム41は、第2サイドフレーム42の左側に配置されている。
【0023】
第1サイドフレーム41及び第2サイドフレーム42の厚み方向は、シート幅方向と平行である。フロントパネル43は、第1サイドフレーム41の前端部と第2サイドフレーム42の前端部とに跨るように配置されている。
【0024】
<バックフレーム>
バックフレーム5は、シートバック3を支持すると共に、シートバック3と共にシート前後方向に揺動可能である。バックフレーム5は、第3サイドフレーム51と、第4サイドフレーム52と、アッパパネル53と、ロアパネル54とを有する。
【0025】
第3サイドフレーム51及び第4サイドフレーム52は、上下方向に延伸すると共に、シート幅方向に互いに離間して配置されている。第3サイドフレーム51は、第4サイドフレーム52に対し左側に配置されている。第3サイドフレーム51及び第4サイドフレーム52の厚み方向は、シート幅方向と平行である。
【0026】
アッパパネル53は、第3サイドフレーム51の上端部と第4サイドフレーム52の上端部とをシート幅方向に連結している。ロアパネル54は、アッパパネル53よりも下方において、第3サイドフレーム51と第4サイドフレーム52とをシート幅方向に連結している。
【0027】
<ロアアーム>
ロアアーム6は、クッションフレーム4の第1サイドフレーム41に固定されたプレート状のフレームである。
【0028】
また、ロアアーム6は、リクライナ7を介して、バックフレーム5の第3サイドフレーム51の下端部に連結されている。つまり、第3サイドフレーム51は、ロアアーム6によってクッションフレーム4に連結されている。ロアアーム6は、第1サイドフレーム41及び第3サイドフレーム51よりもシート幅方向外側に配置されている。ロアアーム6の特徴については後述する。
【0029】
<リクライナ>
リクライナ7は、バックフレーム5の第3サイドフレーム51と、ロアアーム6とに連結されている。リクライナ7は、第3サイドフレーム51にシート幅方向外側から重ね合わされている。
【0030】
リクライナ7は、バックフレーム5を、ロアアーム6及びクッションフレーム4に対してシート前後方向に揺動させるように構成された公知の装置である。リクライナ7は、シート幅方向と平行な回転中心軸周りにバックフレーム5を揺動させる。図2に示すように、リクライナ7は、リクライナ本体71と、操作ピン72と、復帰バネ73とを有する。
【0031】
リクライナ本体71は、第1接合部71A、第2接合部71B及び第3接合部71Cを有する。第1接合部71A、第2接合部71B及び第3接合部71Cはそれぞれ、シート幅方向外側に突出した凸部であり、ロアアーム6に設けられた第1開口614、第2開口615及び第3開口616のいずれかに挿入されている。第1接合部71A、第2接合部71B及び第3接合部71Cは、それぞれ溶接によってロアアーム6に接合されている。
【0032】
リクライナ本体71は、第3サイドフレーム51の揺動に対する規制(つまりロック)の有無を切り替えるロック機構を有する。リクライナ本体71のロックの切り替え制御は、操作ピン72の回転によって行われる。操作ピン72は、例えば、操作ピン72に連結された操作レバー(図示省略)からの入力によって軸回転する。
【0033】
操作ピン72には、復帰バネ73が取り付けられている。復帰バネ73の一方の端部は、操作ピン72に固定されている。復帰バネ73の他方の端部は、ロアアーム6の係止部62に固定されている。
【0034】
復帰バネ73は、操作ピン72をリクライナ本体71のロックを行う方向に付勢している。したがって、操作ピン72への入力が解除されると、操作ピン72は、リクライナ本体71をロックする方向に回転する。
【0035】
本実施形態では、図1に示すクッションフレーム4の第2サイドフレーム42と、バックフレーム5の第4サイドフレーム52との間にも、ロアアーム6及びリクライナ7に相当する部材が設けられている。
【0036】
<ロアアームの特徴>
図3A及び図3Bに示すように、ロアアーム6は、リクライナプレート61と、係止部62とを有する。
【0037】
(リクライナプレート)
リクライナプレート61は、リクライナ7が固定された平板状の部位である。リクライナプレート61は、リクライナ本体71にシート幅方向外側から重なるように配置されている。リクライナプレート61の厚み方向は、シート幅方向と平行である。
【0038】
リクライナプレート61は、第1固定部611と、第2固定部612と、挿通孔613と、第1開口614と、第2開口615と、第3開口616と、衝撃吸収孔617と、第1ビード618と、第2ビード619とを有する。
【0039】
(固定部)
第1固定部611及び第2固定部612は、それぞれ、第1ボルト81及び第2ボルト82(図2参照)が挿通される孔である。第1ボルト81及び第2ボルト82は、それぞれ、リクライナプレート61と第1サイドフレーム41とを締結している。つまり、リクライナプレート61は、第1固定部611及び第2固定部612においてクッションフレーム4に固定されている。
【0040】
第1固定部611は、第2固定部612よりも下方かつシート後方に位置する。また、第1固定部611は、衝撃吸収孔617、第1ビード618及び第2ビード619よりも下方に位置する。
【0041】
(挿通孔及び開口)
挿通孔613は、第1開口614、第2開口615及び第3開口616に囲まれる位置に配置されている。挿通孔613は、リクライナ7とシート幅方向に重なっている。挿通孔613には、操作ピン72が挿通されている。
【0042】
第1開口614には、リクライナ本体71の第1接合部71Aが挿入及び接合されている。第2開口615には、リクライナ本体71の第2接合部71Bが挿入及び接合されている。第3開口616には、リクライナ本体71の第3接合部71Cが挿入及び接合されている。
【0043】
第1開口614は、挿通孔613のシート前方に位置し、3つの開口614,615,616の中で最もシート前方に位置する。第2開口615は、挿通孔613の下方に位置する。第3開口616は、挿通孔613のシート後方に位置し、3つの開口614,615,616の中で最もシート後方に位置する。
【0044】
(衝撃吸収孔)
衝撃吸収孔617は、リクライナプレート61のうち、挿通孔613及び第2開口615よりも下方、かつ、第1固定部611よりも上方の領域に設けられた開口である。
【0045】
図4に示すように、衝撃吸収孔617は、リクライナ7の回転中心軸Oよりも下方に配置されている。具体的には、衝撃吸収孔617は、リクライナ7の回転中心軸Oと平行な方向(つまりシート幅方向)から視て、リクライナ7の回転中心軸Oと、複数の固定部611,612のうち最も下方に位置する第1固定部611とに挟まれる位置に配置されている。
【0046】
リクライナ7の回転中心軸O、リクライナ本体71の第2接合部71B、衝撃吸収孔617、及び第1ボルト81(つまり第1固定部611)は、上方から下方に向かってこの順で配置されている。
【0047】
衝撃吸収孔617は、第1縁617Aと、第2縁617Bと、上方突出部617Cと、下方突出部617Dとを有する。第1縁617Aには、第1ビード618が接続されている。第1縁617Aは、衝撃吸収孔617の後縁の一部を構成している。第2縁617Bには、第2ビード619が接続されている。第2縁617Bは、衝撃吸収孔617の前縁の一部を構成している。
【0048】
上方突出部617Cは、第1縁617A及び第2縁617Bよりも上方に位置する空間である。上方突出部617Cは、第2開口615と上下方向に対向している。下方突出部617Dは、第1縁617A及び第2縁617Bよりも下方に位置する空間である。下方突出部617Dは、第1固定部611と上下方向に対向している。
【0049】
衝撃吸収孔617は、下方に向かってシート前後方向における幅が小さくなる形状を有している。つまり、シート前後方向における第1縁617Aと第2縁617Bとの間の距離は、下方に向かって小さくなっている。
【0050】
(第1ビード)
第1ビード618は、衝撃吸収孔617からシート後方かつ上方に向かって直線的に延伸している凸状部である。具体的には、第1ビード618は、衝撃吸収孔617の第1縁617Aから、リクライナプレート61の後端まで延伸している。
【0051】
第1ビード618は、第1固定部611よりも上方、かつ、挿通孔613、第1開口614及び第3開口616よりも下方に位置する。第1ビード618のシート後方の端部の一部は、衝撃吸収孔617よりも上方に位置すると共に、シート前後方向において第2開口615と重なっている。
【0052】
図3A及び図3Bに示すように、第1ビード618は、リクライナプレート61の厚み方向に突出している。具体的には、第1ビード618は、シート幅方向内側(つまり右側)に突出し、上下方向に圧縮変形可能なように湾曲している。つまり、第1ビード618は、シート幅方向においてバックフレーム5の第3サイドフレーム51に近づく方向に突出している。
【0053】
図4に示すように、第1ビード618の長手方向(つまり中心線L1に沿った方向)は、上下方向と交差し、衝撃吸収孔617とリクライナプレート61の後端とを結ぶように延伸している。
【0054】
(第2ビード)
第2ビード619は、衝撃吸収孔617からシート前方かつ上方に向かって直線的に延伸している凸条部である。具体的には、第2ビード619は、衝撃吸収孔617の第2縁617Bから、第1固定部611と第2固定部612との間の位置まで延伸している。
【0055】
第2ビード619は、第1固定部611よりも上方、かつ、挿通孔613、第1開口614、第2開口615及び第3開口616よりも下方に位置する。第2ビード619のシート前方の端部は、第1接合部71A、第2接合部71B及び第3接合部71C(つまり、第1開口614、第2開口615及び第3開口616)よりもシート前方に位置する。また、第2ビード619のシート前方の端部は、リクライナプレート61の端面から離れている。
【0056】
図3A及び図3Bに示すように、第2ビード619は、リクライナプレート61の厚み方向に突出している。第2ビード619の突出方向は、シート幅方向外側(つまり左側)であり、第1ビード618の突出方向に対し反対方向である。第2ビード619は、第1ビード618と同様に、上下方向に圧縮変形可能なように湾曲している。
【0057】
図4に示すように、第2ビード619の長手方向(つまり中心線L2に沿った方向)は、上下方向と交差している。また、リクライナ7の回転中心軸Oと平行な方向から視て、第1ビード618の長手方向は、第2ビード619の長手方向と交差する(つまり平行ではない)。また、第2ビード619の中心線L2に沿った長さは、第1ビード618の中心線L1に沿った長さよりも大きい。
【0058】
図3Bに示すように、リクライナプレート61のうち、第1ビード618及び第2ビード619よりも下方の領域(つまり第1固定部611を含む領域)は、第1ビード618及び第2ビード619よりも上方の領域(つまり、挿通孔613、第1開口614、第2開口615及び第3開口616を含む領域)に対し、シート幅方向内側にオフセットしている。
【0059】
(係止部)
係止部62は、リクライナプレート61の上端部からシート幅方向外側に突出している。係止部62には、復帰バネ73が取り付けられる。
【0060】
<補強プレート>
図5A及び図5Bに示すように、クッションフレーム4は、第1サイドフレーム41に対しシート幅方向に重ね合わされた補強プレート44を有する。なお、図5Bでは、第3サイドフレーム51、ロアアーム6及びリクライナ7の図示を省略している。
【0061】
補強プレート44は、第1サイドフレーム41の後端部にシート幅方向内側から重ね合わされ、例えば溶接によって第1サイドフレーム41に固定されている。補強プレート44には、リクライナプレート61を第1サイドフレーム41に固定する第1ボルト81及び第2ボルト82が挿通されている。
【0062】
補強プレート44は、傾斜部441を有する。傾斜部441は、補強プレート44の上端部に設けられており、リクライナ7と上下方向に対向している。具体的には、傾斜部441は、リクライナ7の直下に配置されている。
【0063】
傾斜部441は、シート幅方向内側に向かって高さが小さくなるように傾斜した上面を有する。つまり、傾斜部441の上面は、傾斜部441に上方から衝突する部材(つまりリクライナ7)をシート幅方向内側にガイドするように傾斜している。
【0064】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)トルクが入力されたリクライナ7からクッションフレーム4へ伝達される荷重によって、互いに反対方向に突出した第1ビード618及び第2ビード619がそれぞれシート幅方向に変形する歪が誘発される。
【0065】
その結果、リクライナ7の破損が抑制されると共に、クッションフレーム4の変形が抑制される。さらに、リクライナ7とバックフレーム5との接合時に生じていた歪が衝撃吸収孔617によって吸収される。そのため、リクライナ7へのトルク入力発生時のリクライナ7とバックフレーム5との接合部分における破損が抑制される。
【0066】
(1b)第1ビード618がシート幅方向においてバックフレーム5に近づく方向に突出することで、第1ビード618よりもシート前方に配置された第2ビード619がバックフレーム5から離れる方向に突出する。そのため、リクライナプレート61とバックフレーム5との干渉が避けやすくなる。
【0067】
(1c)第1ビード618の長手方向が第2ビード619の長手方向と交差することで、第1ビード618及び第2ビード619における変形速度が小さくなる。そのため、リクライナプレート61における衝撃吸収効果が向上する。
【0068】
(1d)第2ビード619のシート前方の端部が接合部71A,71B,71Cよりもシート前方に位置することで、リクライナ7へのトルク入力発生時における接合部71A,71B,71Cへの歪の伝搬を抑制できる。そのため、接合部71A,71B,71Cにおける損傷を抑制できる。
【0069】
(1e)衝撃吸収孔617がリクライナ7の回転中心軸と第1固定部611とに挟まれる位置に配置されることで、リクライナ7からクッションフレーム4への荷重伝達経路上に衝撃吸収孔617が配置される。そのため、リクライナプレート61における衝撃吸収効果が向上する。
【0070】
(1f)リクライナプレート61の変形によって沈んだバックフレーム5がリクライナ7と共に傾斜部441に沿って滑ることで、バックフレーム5をシート幅方向内側に落とし込むことができる。その結果、バックフレーム5とクッションフレーム4との干渉を抑制することができる。
【0071】
(1g)傾斜部441が補強プレート44に設けられることで、第1サイドフレーム41の設計自由度を高めることができる。
【0072】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0073】
(2a)上記実施形態の乗物用シートにおいて、第1ビードがシート幅方向外側に突出し、第2ビードがシート幅方向内側に突出してもよい。また、第1ビードの長手方向と第2ビードの長手方向とが平行であってもよい。
【0074】
(2b)上記実施形態の乗物用シートにおいて、傾斜部は、必ずしも補強プレートに設けられなくてもよい。例えば、図6A及び図6Bに示すように、傾斜部441は第1サイドフレーム41に設けられてもよい。また、クッションフレームは、必ずしも傾斜部を有しなくてもよい。
【0075】
(2c)上記実施形態の乗物用シートは、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば、鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用できる。
【0076】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0077】
1…乗物用シート、2…シートクッション、3…シートバック、
4…クッションフレーム、5…バックフレーム、6…ロアアーム、7…リクライナ、
41…第1サイドフレーム、42…第2サイドフレーム、44…補強プレート、
51…第3サイドフレーム、52…第4サイドフレーム、61…リクライナプレート、
62…係止部、71…リクライナ本体、71A,71B,71C…接合部、
72…操作ピン、73…復帰バネ、81…第1ボルト、82…第2ボルト、
441…傾斜部、611…第1固定部、612…第2固定部、613…挿通孔、
614…第1開口、615…第2開口、616…第3開口、617…衝撃吸収孔、
617A…第1縁、617B…第2縁、617C…上方突出部、
617D…下方突出部、618…第1ビード、619…第2ビード。
図1
図2
図3
図4
図5
図6