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特開2024-5566電極の製造方法、および全固体電池の製造方法
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  • 特開-電極の製造方法、および全固体電池の製造方法 図1
  • 特開-電極の製造方法、および全固体電池の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005566
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電極の製造方法、および全固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240110BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240110BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240110BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240110BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240110BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/36 A
H01M10/0562
H01M10/058
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105794
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾瀬 徳洋
(72)【発明者】
【氏名】村石 一生
(72)【発明者】
【氏名】矢部 裕城
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 出
(72)【発明者】
【氏名】上武 央季
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL18
5H029AM11
5H029BJ02
5H029BJ03
5H029BJ04
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029HJ12
5H050AA19
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB29
5H050DA09
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA15
5H050EA22
5H050EA23
5H050FA18
5H050GA10
5H050GA22
(57)【要約】
【課題】生産性の向上。
【解決手段】活物質と固体電解質と溶剤とが固練りされることにより、第1電極材料が準備される。第1電極材料に分散促進成分が添加されることにより、第2電極材料が準備される。第2電極材料を含むスラリーが準備される。スラリーが基材の表面に塗工されることにより、電極が製造される。固体電解質が活物質の表面に付着することにより、複合体が形成される。分散促進成分は、溶剤中における固体電解質の分散を促進する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)活物質と固体電解質と溶剤とを固練りすることにより、第1電極材料を準備すること、
(b)前記第1電極材料に分散促進成分を添加することにより、第2電極材料を準備すること、
(c)前記第2電極材料を含むスラリーを準備すること、および
(d)前記スラリーを基材の表面に塗工することにより、電極を製造すること
を含み、
前記(a)において、前記固体電解質が前記活物質の表面に付着することにより、複合体が形成され、
前記分散促進成分は、前記溶剤中における前記固体電解質の分散を促進する、
電極の製造方法。
【請求項2】
前記(b)は、前記第2電極材料を保管することを含む、
請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記固体電解質は、硫化物固体電解質を含み、かつ
前記分散促進成分は、スチレンブタジエンゴム系バインダを含む、
請求項1または請求項2に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記固体電解質は、硫化物固体電解質を含み、かつ
前記分散促進成分は、イミダゾリン系化合物を含む、
請求項1または請求項2に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
前記固体電解質は、硫化物固体電解質を含み、かつ
前記溶剤は、テトラリンを含む、
請求項1または請求項2に記載の電極の製造方法。
【請求項6】
(e)請求項1に記載の前記電極を含む全固体電池を製造すること
を含む、
全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極の製造方法、および全固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-053307号公報は、固練りした電極材料に溶剤を加えることにより、ペーストを作製することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-053307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バルク型全固体電池が検討されている。バルク型全固体電池は、粉体層が積層されることにより製造され得る。粉体層の形成方法としては、湿式プロセスが有望である。湿式プロセスにおいては、活物質、固体電解質等を含むスラリーが準備される。スラリーが基材の表面に塗工されることにより、粉体層(電極)が製造され得る。
【0005】
大量生産にあたり、電極の仕掛品を一時的に保管する必要が生じることがある。例えば、スラリーを保管することが考えられる。しかし、スラリーは多量の液体を含むため、ポットライフが短い傾向がある。すなわち比較的短時間で、固形分が沈降し得る。沈降した固形分が硬化すると、スラリーの再生が困難である。
【0006】
通常スラリーは、固練り、希釈を経て製造され得る。「固練り」は、固体のように硬い流体を練り混ぜる操作を示す。固練りにおいては、固形分が高い状態で材料が混合される。固練りにおいては、大きなせん断力が発生し、粉体の凝集が解かれ得る。粉体の凝集が解かれることにより、異種の粉体同士がよく分散し、混ざり合うことが期待される。
【0007】
以下、固練り後の仕掛品が「固練り材料」とも記される。固練り材料が溶剤(液体)で希釈され、攪拌されることにより、スラリーが形成され得る。例えば、固練り材料を保管することも考えられる。固練り材料は、スラリーに比して、長いポットライフを有する傾向がある。固練りは工数が多い操作である。固練り材料を大量に準備、保管しておき、必要に応じて、固練り材料を希釈してスラリーを生産することにより、生産性の向上が期待される。
【0008】
固練り材料においては、固体粒子同士の間に液体が保持されている。保管中、時間の経過と共に、液体が染み出し、固体粒子同士が強固に付着し得る。すなわち、固体と液体とが分離し得る。固体と液体とが分離すると、短時間で均質なスラリーを形成することが困難である。
【0009】
本開示の目的は、生産性の向上にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含む。作用メカニズムは本開示の技術的範囲を限定しない。
【0011】
1.電極の製造方法は、下記(a)~(d)を含む。
(a)活物質と固体電解質と溶剤とを固練りすることにより、第1電極材料を準備する。
(b)第1電極材料に分散促進成分を添加することにより、第2電極材料を準備する。
(c)第2電極材料を含むスラリーを準備する。
(d)スラリーを基材の表面に塗工することにより、電極を製造する。
上記(a)において、固体電解質が活物質の表面に付着することにより、複合体が形成される。分散促進成分は、溶剤中における固体電解質の分散を促進する。
【0012】
第1電極材料および第2電極材料は、固練り後の仕掛品である。すなわち第1電極材料および第2電極材料は、固練り材料である。
【0013】
本開示の新知見によると、固練り材料に特定成分が添加されていることにより、保管後のスラリー形成が容易になり得る。すなわち、固練り材料に分散促進成分が添加される。分散促進成分は、溶剤中における固体電解質の分散を促進し得る。固体電解質と活物質とは複合体を形成している。分散促進成分の作用により、複合体の分散が促進され、短時間で均質なスラリーが形成されることが期待される。
【0014】
2.上記「1」に記載の電極の製造方法において、上記(b)は、第2電極材料を保管することを含んでいてもよい。
【0015】
分散促進成分が添加された第2電極材料は、保管に適する。保管後においても、スラリー形成が容易であるためである。
【0016】
3.上記「1」または「2」に記載の電極の製造方法において、固体電解質は、例えば、硫化物固体電解質を含んでいてもよい。分散促進成分は、例えば、スチレンブタジエンゴム系バインダを含んでいてもよい。
【0017】
以下「固体電解質(Solid Electrolyte)」が「SE」と略記され得る。例えば、硫化物固体電解質は、「硫化物SE」と略記され得る。硫化物SEは、高いイオン伝導性と、優れた成形性とを併せ持つ。硫化物SEは、バルク型全固体電池に好適である。スチレンブタジエン(SBR)系バインダは、硫化物SEの分散を促進し得る。
【0018】
4.上記「1」~「3」のいずれか1項に記載の電極の製造方法において、固体電解質は、例えば、硫化物固体電解質を含んでいてもよい。分散促進成分は、例えば、イミダゾリン系化合物を含んでいてもよい。
【0019】
イミダゾリン系化合物は、スラリーの固形分に対して分散剤として作用し得る。イミダゾリン系化合物は、とりわけ硫化物SEに対して、良好な分散性を付与し得る。
【0020】
5.上記「1」~「4」のいずれか1項に記載の電極の製造方法において、固体電解質は、例えば、硫化物固体電解質を含んでいてもよい。溶剤は、例えば、テトラリンを含んでいてもよい。
【0021】
テトラリンは、テトラヒドロナフタレン(1,2,3,4-Tetrahydronaphthalene,THN)とも記される。THNは、硫化物SEを劣化させ難い傾向がある。さらにTHNは、高粘度を有し得る。溶剤がTHNを含むことにより、保管中、固体と液体とが分離し難い傾向がある。
【0022】
6.全固体電池の製造方法は、下記(e)を含む。
(e)上記「1」~「5」のいずれか1項に記載の電極を含む全固体電池を製造する。
【0023】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と略記され得る。)、および本開示の実施例(以下「本実施例」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態および本実施例は、本開示の技術的範囲を限定しない。本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、非制限的である。本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本実施形態における製造方法の概略フローチャートである。
図2図2は、本実施形態における全固体電池の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<用語およびその定義等>
「備える」、「含む」、「有する」、および、これらの変形(例えば「から構成される」等)の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる」との記載はクローズド形式である。ただしクローズド形式であっても、通常において付随する不純物であったり、本開示技術に無関係であったりする付加的な要素は排除されない。「実質的に…からなる」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式においては、本開示技術の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しない要素の付加が許容される。
【0026】
「AおよびBの少なくとも一方」は、「AまたはB」ならびに「AおよびB」を含む。「AおよびBの少なくとも一方」は、「Aおよび/またはB」とも記され得る。
【0027】
「してもよい」、「し得る」等の表現は、義務的な意味「しなければならないという意味」ではなく、許容的な意味「する可能性を有するという意味」で使用されている。
【0028】
各種方法に含まれる複数のステップ、動作および操作等は、特に断りのない限り、その実行順序が記載順序に限定されない。例えば、複数のステップが同時進行してもよい。例えば複数のステップが相前後してもよい。
【0029】
単数形で表現される要素は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も意味し得る。
【0030】
例えば「m~n%」等の数値範囲は、上限値および下限値を含む。すなわち「m~n%」は、「m%以上n%以下」の数値範囲を示す。また「m%以上n%以下」は「m%超n%未満」を含む。さらに数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値または下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分、表中、図中等に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0031】
全ての数値は用語「約」によって修飾されている。用語「約」は、例えば±5%、±3%、±1%等を意味し得る。全ての数値は、本開示技術の利用形態によって変化し得る近似値であり得る。全ての数値は有効数字で表示され得る。測定値は、複数回の測定における平均値であり得る。測定回数は、3回以上であってもよいし、5回以上であってもよいし、10回以上であってもよい。一般に測定回数が多い程、平均値の信頼性が向上することが期待される。測定値は有効数字の桁数に基づいて、四捨五入により端数処理され得る。測定値は、例えば測定装置の検出限界等に伴う誤差等を含み得る。
【0032】
化合物が化学量論的組成式(例えば「LiCoO2」等)によって表現されている場合、該化学量論的組成式は該化合物の代表例に過ぎない。化合物は、非化学量論的組成を有していてもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。さらに、微量元素によるドープ、置換等も許容され得る。
【0033】
「半金属」は、B、Si、Ge、As、Sb、およびTeを含む。「金属」は、周期表の第1族元素~第16元素のうち、「H、B、Si、Ge、As、Sb、Te、C、N、P、O、S、およびSe」以外の元素を示す。無機化合物が、半金属および金属の少なくとも一方と、Fとを含む時、半金属および金属は、正(+)の酸化数を有し得る。
【0034】
「電極」は、正極または負極の総称である。電極は、正極であってもよいし、負極であってもよい。
【0035】
「中空粒子」は、粒子の断面画像(例えば断面SEM画像等)において、中心部の空洞の面積が、粒子全体の断面積の30%以上である粒子を示す。「中実粒子」は、粒子の断面画像において、中心部の空洞の面積が、粒子全体の断面積の30%未満である粒子を示す。
【0036】
「D50」は、体積基準の粒度分布において、粒子径が小さい方からの頻度の累積が50%に達する粒子径を示す。D50は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定され得る。
【0037】
「平均フェレ径」は、粒子の二次元画像(例えばSEM画像等)において測定される。20個以上の粒子における最大フェレ径の算術平均が「平均フェレ径」である。
【0038】
「固形分濃度」は、混合物全体の質量に対する、溶剤以外の成分の合計質量の割合を示す。固形分濃度は、百分率で表示される。
【0039】
<製造方法>
図1は、本実施形態における製造方法の概略フローチャートである。
以下「本実施形態における製造方法」が「本製造方法」と略記され得る。本製造方法は、「電極の製造方法」および「全固体電池の製造方法」を含む。電極の製造方法は、「(a)固練り」、「(b)分散促進成分の添加」、「(c)スラリーの準備」、および「(d)電極の製造」を含む。全固体電池の製造方法は、(a)~(d)に加えて、「(e)全固体電池の製造」をさらに含む。
【0040】
《(a)固練り》
本製造方法は、活物質と固体電解質と溶剤との混合物を固練りすることにより、第1電極材料を準備することを含む。
【0041】
固練りは、任意の混合装置により実施され得る。例えば、自転公転式ミキサ、ニーダ等が使用されてもよい。これらの装置は、混練操作(捏和操作)に好適であり得る。例えば、ニーダ等においては、混合容器の内壁と、ブレードとの隙間で、内容物に圧縮力、およびせん断力が加わりつつ、内容物が練り混ぜられる。例えば、プラネタリミキサ等が使用されてもよい。
【0042】
例えば、所定の配合量で、活物質およびSEが混合装置に供給される。さらに、所定の固形分濃度になるように、溶剤が追加される。固練りにおける固形分濃度は、例えば、72%以上であってもよい。固形分濃度が72%以上であることにより、粉体の内部に溶剤が保持されやすく、固練りが実施しやすい傾向がある。固形分濃度は、例えば、74%以上、75.5%、76%以上、または78%以上であってもよい。固形分濃度が76%以上であることにより、混合中に固体と液体とが分離し難く、固練りが安定しやすい傾向がある。固練りにおける固形分濃度は、例えば、90%以下であってもよい。固形分濃度が90%以下であることにより、混合物が均一に湿潤しやすく、固練りが安定しやすい傾向がある。固形分濃度は、例えば、88%以下、85%以下、83%以下、または82%以下であってもよい。固形分濃度は、例えば、76~83%であってもよい。該範囲においては、分散が促進されやすい傾向がある。分散の促進により、例えば、出力の向上等が期待される。
【0043】
固練りは、活物質とSEとが均一に混ざり合うように実施され得る。固練りの処理時間は、例えば、0.5時間以上、1時間以上、2時間以上、または3時間以上であってもよい。固練りの処理時間は、例えば、8時間以下、または4時間以下であってもよい。固練りが安定しないと、例えば、処理中に、固体と液体とが分離してしまうため、十分な処理時間を確保できない場合がある。処理時間が十分でないと、均一な分散状態が実現できない場合がある。
【0044】
固練りにより、第1電極材料が形成される。第1電極材料は、湿潤状態である。第1電極材料は、例えば、顆粒状、粉体状、粘土状等であってもよい。第1電極材料は、複合体を含む。
【0045】
(複合体)
複合体は、SEが活物質の表面に付着することにより形成される。例えば、活物質がSEで被覆されていてもよい。SEは、例えば、活物質の表面の一部を被覆していてもよい。SEは、例えば、活物質の表面の全部を被覆していてもよい。
【0046】
(活物質)
活物質は、粒子状である。活物質は、例えば、二次粒子であってもよい。二次粒子は、一次粒子の集合体である。二次粒子のD50は、例えば1~30μm、3~20μm、または5~15μmであってもよい。一次粒子の平均フェレ径は、例えば、0.01~3μmであってもよい。
【0047】
活物質は、任意の形状を有し得る。活物質は、例えば、球状、楕円体状、フレーク状、または繊維状等であってもよい。活物質は、中実粒子であってもよいし、中空粒子であってもよい。
【0048】
活物質は、電極反応を生起し得る。活物質は、例えば正極活物質であってもよい。正極活物質は、任意の成分を含み得る。正極活物質は、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、Li(NiCoMnAl)O2、およびLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば「Li(NiCoMn)O2」における「(NiCoMn)」は、括弧内の組成比の合計が1であることを示す。合計が1である限り、個々の成分量は任意である。Li(NiCoMn)O2は、例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/32、LiNi0.4Co0.3Mn0.32、LiNi0.5Co0.2Mn0.32、LiNi0.5Co0.3Mn0.22、LiNi0.5Co0.4Mn0.12、LiNi0.5Co0.1Mn0.42、LiNi0.6Co0.2Mn0.22、LiNi0.6Co0.3Mn0.12、LiNi0.6Co0.1Mn0.32、LiNi0.7Co0.1Mn0.22、LiNi0.7Co0.2Mn0.12、LiNi0.8Co0.1Mn0.12、およびLiNi0.9Co0.05Mn0.052からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。Li(NiCoAl)O2は、例えばLiNi0.8Co0.15Al0.052等を含んでいてもよい。
【0049】
正極活物質は、例えば下記式(1)により表されてもよい。
Li1-yNix1-x2 …(1)
0.5≦x≦1
-0.5≦y≦0.5
上記式(1)中、Mは、例えば、Co、MnおよびAlからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。xは、例えば、0.6以上であってもよいし、0.7以上であってもよいし、0.8以上であってもよいし、0.9以上であってもよい。
【0050】
正極活物質は、例えば添加物を含んでいてもよい。添加物は、例えば、置換型固溶原子、または侵入型固溶原子であってもよい。添加物は、正極活物質(一次粒子)の表面に付着する付着物であってもよい。付着物は、例えば、単体、酸化物、炭化物、窒化物、ハロゲン化物等であってもよい。添加量は、例えば、0.01~0.1、0.02~0.08、または0.04~0.06であってもよい。添加量は、正極活物質の物質量[単位:mol]に対する、添加物の物質量の比を示す。添加物は、例えば、B、C、N、ハロゲン、Sc、Ti、V、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、W、およびランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0051】
活物質は、例えば負極活物質であってもよい。負極活物質は、任意の成分を含み得る。負極活物質は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、Si、SiOx(0<x<2)、Si基合金、Sn、SnOx(0<x<2)、Li、Li基合金、およびLi4Ti512からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。SiOx(0<x<2)は、例えばMg等がドープされていてもよい。合金系活物質(例えばSi等)が、炭素系活物質(例えば黒鉛等)に担持されることにより、複合材料が形成されてもよい。
【0052】
(バッファ層)
活物質の表面にバッファ層が形成されていてもよい。バッファ層は活物質の表面の少なくとも一部を被覆する。硫化物SEは、活物質と直接接触すると劣化する傾向がある。バッファ層は、活物質と硫化物SEとの直接接触を低減し得る。バッファ層は、例えば、5~500nmの厚さを有していてもよい。バッファ層は、例えば、メカノケミカル処理により形成されてもよい。メカノケミカル処理装置の一例として、例えば、ホソカワミクロン社製の「ノビルタNOB-MINI」等が挙げられる。
【0053】
(酸化物固体電解質)
バッファ層は、例えば、酸化物SEを含んでいてもよい。バッファ層は、例えば、LiNbO3、Li3PO4等を含んでいてもよい。
【0054】
(フッ化物固体電解質)
バッファ層は、例えば、フッ化物SEを含んでいてもよい。フッ化物SEは、酸化物SEに比して、耐久時に反応抵抗が増加し難い傾向がある。フッ化物SEは、Fを含む限り、任意の組成を有し得る。フッ化物SEは、例えば、LiとFとを含んでいてもよい。
【0055】
フッ化物SEは、例えば、下記式(2)により表されてもよい。
Li6-nxx6 …(2)
上記式(2)中、xは、0<x<2を満たす。Mは、半金属原子と、Liを除く金属原子とからなる群より選択される少なくとも1種である。nは、Mの酸化数を示す。
【0056】
上記式(2)中、Mは、単一の原子からなっていてもよいし、複数種の原子からなっていてもよい。Mが複数種の原子からなる場合、nは、各原子の酸化数の加重平均を示す。例えば、Mが、Ti(酸化数=+4)およびAl(酸化数=+3)を含み、TiとAlとのモル比が「Ti/Al=3/7」であり、かつx=1である時、算式「n=0.3×4+0.7×3」により、nは3.3となる。
【0057】
上記式(2)中、xは、例えば、0.1≦x≦1.9、0.2≦x≦1.8、0.3≦x≦1.7、0.4≦x≦1.6、0.5≦x≦1.5、0.6≦x≦1.4、0.7≦x≦1.3、0.8≦x≦1.2、または0.9≦x≦1.1を満たしていてもよい。
【0058】
Mは、例えば、+4の酸化数を有する原子を含んでいてもよい。Mは、例えば、+3の酸化数を有する原子を含んでいてもよい。Mは、例えば、+4の酸化数を有する原子と、+3の酸化数を有する原子とを含んでいてもよい。
【0059】
上記式(2)中、Mは、例えば、Ca、Mg、Al、Y、Ti、およびZrからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。Mは、例えば、Al、Y、およびTiからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。Mは、例えば、AlおよびTiからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0060】
フッ化物SEは、例えば、下記式(3)により表されてもよい。
Li3-xTixAl1-x6 …(3)
上記式(3)中、xは、例えば、0≦x≦1、0.1≦x≦0.9、0.2≦x≦0.8、0.3≦x≦0.7、または0.4≦x≦0.6を満たしていてもよい。
【0061】
(固体電解質)
SEは、粒子状である。SEは、活物質に比して小さいD50を有していてもよい。SEは、例えば、0.01~1μm、0.01~0.95μm、または0.1~0.9μmのD50を有していてもよい。SEの配合量は、任意である。100質量部の活物質に対して、SEは、例えば、1~10質量部であってもよい。SEは、例えば、硫化物SE、フッ化物SE、および酸化物SEからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0062】
(硫化物固体電解質)
硫化物SEは、高いイオン伝導性を示し得る。硫化物SEは、S(硫黄)を含む限り、任意の組成を有し得る。硫化物SEは、例えば、Li、P、およびSを含んでいてもよい。硫化物SEは、例えば、O、Ge、Si等をさらに含んでいてもよい。硫化物SEは、例えばハロゲン等をさらに含んでいてもよい。硫化物SEは、例えばI、Br等をさらに含んでいてもよい。硫化物SEは、例えばガラスセラミックス型であってもよいし、アルジロダイト型であってもよい。硫化物SEは、例えば、LiI-LiBr-Li3PS4、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P25、LiI-Li2O-Li2S-P25、LiI-Li2S-P25、LiI-Li3PO4-P25、Li2S-GeS2-P25、Li2S-P25、Li426、Li7311、およびLi3PS4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0063】
例えば、「LiI-LiBr-Li3PS4」は、LiIとLiBrとLi3PS4とが任意のモル比で混合されることにより生成された硫化物SEを示す。例えば、メカノケミカル法により硫化物SEが生成されてもよい。「Li2S-P25」はLi3PS4を含む。Li3PS4は、例えばLi2SとP25とが「Li2S/P25=75/25(モル比)」で混合されることにより生成され得る。LiI等の前に数字が付されることにより、モル比が特定されてもよい。例えば、「10LiI-15LiBr-75Li3PS4」は、「LiI/LiBr/Li3PS4=10/15/75(モル比)」で混合されていることを示す。
【0064】
(溶剤)
溶剤は、液体である。溶剤は、固練り時、活物質と硫化物SEとの付着を促進し得る。溶剤は、スラリーにおいて、分散媒として機能し得る。溶剤は、任意の成分を含み得る。溶剤は、例えば、芳香族炭化水素、エステル、アルコール、ケトン、およびラクタムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。溶剤は、例えば、THN、酪酸ブチル、ヘプタンおよびN-メチル-2-ピロリドン(NMP)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0065】
酪酸ブチルは、例えば、NMP等に比して、硫化物SEを劣化させ難いことが期待される。THNは、例えば、酪酸ブチルおよびNMP等に比して、硫化物SEを劣化させ難いことが期待される。溶剤がTHNを含むことにより、例えば、初期抵抗の低減が期待される。
【0066】
さらに、THNは、高粘度を有し得る。溶剤がTHNを含むことにより、保管時に固体と液体とが分離し難いことが期待される。
【0067】
《(b)分散促進成分の添加》
本製造方法は、第1電極材料に分散促進成分を添加することにより、第2電極材料を準備することを含む。
【0068】
第1電極材料に分散促進成分が添加されることにより、第2電極材料が形成される。第2電極材料の形成後、第2電極材料が軽く攪拌されてもよい。第2電極材料は、例えば、顆粒状、粉体状、粘土状、液状等であってもよい。第2電極材料の固形分濃度は、例えば、50~80%、60~80%、70~80%、72~78.5%、または75~78.5%であってもよい。
【0069】
(分散促進成分)
分散促進成分は、溶剤中において、SEの分散を促進し得る。SEの分散が促進され得る限り、分散促進成分は、任意の成分を含み得る。分散促進成分は、例えば、イミダゾリン系化合物、およびSBR系バインダからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0070】
(イミダゾリン系化合物)
分散促進成分は、例えばイミダゾリン系化合物を含んでいてもよい。イミダゾリン系化合物は、とりわけ硫化物SEに対して、良好な分散性を付与し得る。イミダゾリン系化合物は、イミダゾリン骨格を有する。イミダゾリン骨格は、含窒素複素環構造を含む。イミダゾリン骨格は、イミダゾールから誘導され得る。イミダゾリン系化合物は、例えば、下記式(4)により表されてもよい。
【0071】
【化1】
【0072】
上記式(4)中、R1は、例えば、アルキル基またはヒドロキシアルキル基であってもよい。R1は、例えば、1~22の炭素数を有していてもよい。ヒドロキシアルキル基において、例えばN(窒素原子)に結合している炭素原子とは反対側の末端の炭素原子にヒドロキシル基が結合していてもよい。
【0073】
上記式(4)中、R2は、例えば、アルキル基またはアルケニル基であってもよい。R2は、例えば、10~22の炭素数を有していてもよい。アルケニル基において、二重結合の位置および個数は任意である。
【0074】
イミダゾリン系化合物は、例えば、1-ヒドロキシエチル-2-アルケニルイミダゾリン等を含んでいてもよい。分散促進成分は、1種のイミダゾリン系化合物を単独で含んでいてもよいし、2種以上のイミダゾリン系化合物を含んでいてもよい。
【0075】
イミダゾリン系化合物の配合量は、任意である。例えば、100質量部の活物質に対して、イミダゾリン系化合物は、0.01~10質量部であってもよいし、0.05~5質量部であってもよいし、0.05~0.1質量部であってもよい。
【0076】
(SBR系バインダ)
分散促進成分は、SBR系バインダを含んでいてもよい。SBR系バインダは、硫化物SEに対して、分散性を付与し得る。「SBR系バインダ」は、SBR由来成分を含むバインダを示す。SBR系バインダは、SBRからなっていてもよい。SBR系バインダは、SBR由来成分とその他の成分との共重合体であってもよい。SBR系バインダは、SBR由来成分とその他の成分とのポリマーブレンドであってもよい。SBR系バインダは、SBR由来成分とその他の成分とのポリマーアロイであってもよい。SBR系バインダは、質量分率で、例えば10%以上のSBR由来成分を含んでいてもよいし、30%以上のSBR由来成分を含んでいてもよいし、50%以上のSBR由来成分を含んでいてもよいし、70%以上のSBR由来成分を含んでいてもよいし、90%以上のSBR由来成分を含んでいてもよい。
【0077】
SBR系バインダは、熱可塑性を有し得る。SBR系バインダは、熱間プレス加工に好適な軟化点を有し得る。SBR系バインダを含む電極に対して、熱間プレス加工が施されることにより、SBR系バインダが液状化し、その後再固化し得る。その結果、電極が緻密になることが期待される。電極が緻密になることにより、電池特性(例えば入出力特性等)の向上が期待される。
【0078】
各種材料間の親和性は、ハンセン空間における距離(Ra)により評価され得る。「ハンセン空間」は、ハンセン溶解度パラメータ(Hansen solubility parameter,HSP)によって表される3次元空間である。ハンセン空間において、2つの材料間の距離(Ra)が小さい程、2つの材料の親和性が高いと考えられる。硫化物SEとイミダゾリン系化合物との距離(Ra)は、硫化物SEとSBR系バインダとの距離(Ra)に比して小さい。分散促進成分が、イミダゾリン系化合物およびSBR系バインダの両方を含む時、SBR系バインダに比して、イミダゾリン系化合物が硫化物SEに優先的に吸着し得ることにより、イミダゾリン系化合物とSBR系バインダとが相乗的に作用し、分散効果が高まることが期待される。
【0079】
例えば、硫化物SEとフッ素系バインダ(PVDF等)との距離は、小さい傾向がある。イミダゾリン系化合物とフッ素系バインダとが共存する場合、フッ素系バインダが硫化物SEに優先的に吸着し得る。その結果、相乗的な分散効果が得られない可能性がある。ただし、分散促進成分の分散効果が得られる限り、任意のバインダが使用されてよい。以下に、ハンセン空間における距離の計算例が示される。
【0080】
硫化物SEとイミダゾリン系化合物との距離(Ra)=10.7MPa0.5
硫化物SEとSBR系バインダとの距離(Ra)=11.6MPa0.5
硫化物SEとフッ素系バインダとの距離(Ra)=3.8MPa0.5
【0081】
SBR系バインダの配合量は、任意である。例えば、100質量部の活物質に対して、SBR系バインダは、0.1~5質量部であってもよいし、1~3質量部であってもよい。
【0082】
(溶剤の追加)
第2電極材料に溶剤が追加されてもよい。追加の溶剤と、分散促進成分との相互作用により、後のスラリー形成が容易になることが期待される。例えば、第2電極材料にTHNが追加されてもよい。
【0083】
(保管)
本製造方法は、第2電極材料を保管することを含んでいてもよい。第2電極材料は、例えば、室内で保管されてもよい。保管温度は、例えば、25±10℃であってもよい。保管場所の相対湿度は、例えば、50%以下であってもよい。保管期間は、例えば、1日以上、3日以上、7日以上、14日以上、または21日以上であってもよい。保管期間は、例えば、28日以下、または21日以下であってもよい。保管期間の自由度が高いことにより、生産性の向上が期待される。
【0084】
第2電極材料は、容器内で保管されてもよい。容器内での保管により、保管環境(例えば周囲雰囲気)の管理が容易になることが期待される。保管容器は、第2電極材料との接触により、変質しない材料により形成されていてもよい。変質の例としては、例えば、溶解、膨潤、および分解等が考えられる。保管容器は、例えば、ガラス材料、金属材料(例えばアルミニウム、ステンレス鋼等)、樹脂材料、および炭素材料(例えば炭素繊維等)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0085】
保管容器は密閉されてもよい。第2電極材料は液体を含む。保管容器が密閉されることにより、液体の揮発による組成変化が低減され得る。
【0086】
保管容器内は、低露点雰囲気とされてもよい。第2電極材料は、硫化物SEを含み得る。保管容器内が低露点雰囲気であることにより、水分による硫化物SEの劣化が低減され得る。保管容器内の露点は、例えば、-30℃以下、-40℃以下、または-60℃以下であってもよい。露点が低い程、硫化物SEの劣化が小さくなることが期待される。
【0087】
《(c)スラリーの準備》
本製造方法は、第2電極材料を含むスラリーを準備することを含む。例えば、第2電極材料に分散処理が施されることにより、スラリーが形成され得る。本製造方法においては、任意の分散装置が使用され得る。例えば、超音波ホモジナイザ等が使用されてもよい。分散処理の際に、溶剤が追加されてもよい。スラリーの最終的な固形分濃度は、例えば、50~70%、50~60%、または60~70%であってもよい。分散処理の際に、電子伝導材、イオン伝導材が追加されてもよい。
【0088】
(電子伝導材)
電子伝導材は、電極内に電子伝導パスを形成し得る。電子伝導材の配合量は任意である。電子伝導材の配合量は、100質量部の活物質に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。電子伝導材は、任意の成分を含み得る。電子伝導材は、例えば、カーボンブラック(CB)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンフレーク(GF)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。CBは、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(登録商標)、およびファーネスブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0089】
(イオン伝導材)
イオン伝導材は、電極内にイオン伝導パスを形成し得る。イオン伝導材は、粒子状であってもよい。イオン伝導材は、例えば、0.01~1μm、0.01~0.95μm、または0.1~0.9μmのD50を有していてもよい。イオン伝導材の配合量は、任意である。イオン伝導材の配合量は、100体積部の活物質に対して、例えば、1~200体積部であってもよいし、50~150体積部であってもよいし、50~100体積部であってもよい。イオン伝導材は、例えば、硫化物SE、フッ化物SE等を含んでいてもよい。イオン伝導材に含まれる硫化物SEおよびフッ化物SEは、第2電極材料に含まれる硫化物SEおよびフッ化物SEと同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0090】
《(d)電極の製造》
本製造方法は、スラリーを基材の表面に塗工することにより、電極を製造することを含む。本製造方法においては、任意の塗工装置が使用され得る。例えば、ダイコータ、ロールコータ等が使用されてもよい。
【0091】
基材は、導電性を有していてもよい。基材は、集電体として機能してもよい。基材は、例えば、シート状であってもよいし、網状であってもよい。基材は、例えば、5~50μmの厚さを有していてもよい。基材は、例えば、金属箔、金属メッシュ、多孔質金属体等を含んでいてもよい。基材は、例えば、Al、Cu、Ni、Cr、Ti、およびFeからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。基材は、例えば、Al箔、Al合金箔、Ni箔、Cu箔、Cu合金箔、Ti箔、ステンレス鋼箔等を含んでいてもよい。金属箔の表面を炭素層が被覆していてもよい。炭素層は、例えば、導電性炭素材料(例えばAB等)を含んでいてもよい。
【0092】
基材の表面において、スラリーが乾燥することにより、活物質層が形成される。本製造方法においては、任意の乾燥装置が使用され得る。例えば、ホットプレート、熱風乾燥機、赤外線乾燥機等が使用されてもよい。
【0093】
スラリーの乾燥後、電極にプレス加工が施されてもよい。例えば、冷間プレス加工が実施されてもよいし、熱間プレス加工が実施されてもよい。本製造方法においては、任意のプレス装置が使用され得る。例えば、ロールプレス装置等が使用されてもよい。熱間プレス加工が実施される場合、例えば、バインダの種類等に応じて、プレス温度が調整され得る。プレス温度は、例えば、80~180℃であってもよい。プレス加工後、活物質層の厚さは、例えば、10~200μmであってもよい。プレス加工後、活物質層の密度は、例えば、2~4g/cm3であってもよい。
【0094】
《(e)全固体電池の製造》
本製造方法は、上記で得られた電極を含む全固体電池を製造することを含んでいてもよい。
【0095】
図2は、本実施形態における全固体電池の概念図である。
例えば、発電要素150が形成されてもよい。発電要素150は、正極110とセパレータ層130と負極120とが積層されることにより形成され得る。正極110および負極120の少なくとも一方は、上記で得られた電極である。セパレータ層130は、正極110と負極120との間に配置される。セパレータ層130は、例えば、イオン伝導材とバインダとを含む。セパレータ層130は、例えば、正極110および負極120の少なくとも一方の表面に、スラリーが塗工されることにより形成され得る。
【0096】
発電要素150の形成後、発電要素150に熱間プレス加工が施されてもよい。熱間プレス加工により、発電要素150が緻密になることが期待される。
【0097】
発電要素150に、例えばリードタブ、外部端子等が接続されてもよい。発電要素150が外装体(不図示)に収納される。外装体は密封されてもよい。発電要素150が外装体に収納されることにより、全固体電池200が完成し得る。
【0098】
外装体は、任意の形態を有し得る。外装体は、例えば、金属箔ラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。外装体は、例えば、金属製のケース等であってもよい。外装体は、例えば、Al等を含んでいてもよい。外装体は、1個の発電要素150を単独で収納していてもよいし、複数個の発電要素150を収納していてもよい。複数個の発電要素150は、直列回路を形成していてもよいし、並列回路を形成していてもよい。
【実施例0099】
<試料の作製>
以下のように、No.1~5に係る試料が準備された。
【0100】
《No.1》
下記材料が準備された。
活物質:LiNi0.8Co0.15Al0.052
フッ化物SE:Li2.7Ti0.3Al0.76
硫化物SE:Li3PS4
SBR系バインダ
イミダゾリン系化合物:1-ヒドロキシエチル-2-アルケニルイミダゾリン(ビックケミー社製「DISPERBYK(登録商標)-109」)
溶剤:THN
【0101】
ホソカワミクロン社製の「ノビルタNOB-MINI」が準備された。同装置において、48.7質量の活物質と、1.3質量部のフッ化物SEとが混合されることにより、活物質の表面にバッファ層が形成された。バッファ層はフッ化物SEを含む。混合条件は下記のとおりであった。
【0102】
電力:材料1gあたり12W
回転数:6000rpm
処理時間:30分
【0103】
超音波ホモジナイザにより、98.4質量部の硫化物SEと、229.6質量部の溶剤とに分散処理が施された。これにより分散液が準備された。
【0104】
グローブボックスが準備された。グローブボックス内の露点は、-70℃以下に制御されていた。プラネタリミキサがグローブボックス内に配置された。プラネタリミキサの混合容器に、1000質量部の活物質(バッファ層を有するもの)と、上記で得られた分散液とが投入された。次の手順で固練りが実施された。70の回転数で10分間、混合物が混練された。34質量部の溶剤が追加投入され、100の回転数で10分間、混合物が混練された。37質量部の溶剤が追加投入され、100の回転数で10分間、混合物が混練された。最後に、固形分濃度が78.5%になるように、溶剤が追加投入され、100の回転数で4時間、混合物が混練された。これにより固練り材料が形成された。
【0105】
密閉容器(ステンレス製)に固練り材料が移された。さらに、固形分濃度が75%になるように、固練り材料に溶剤が追加された。固練り材料が軽く攪拌されることにより、固練り材料が液状化した。さらに、固練り材料に、分散促進成分(SBR系バインダおよびイミダゾリン系化合物)が添加された。これにより試料が形成された。試料が30分間攪拌された。
【0106】
《No.2》
固練り材料にSBR系バインダが追加されないことを除いては、No.1と同様に試料が準備された。
【0107】
《No.3》
固練り材料にイミダゾリン系化合物が追加されないことを除いては、No.1と同様に試料が準備された。
【0108】
《No.4》
No.1の固練り材料がそのまま試料とされた。
【0109】
《No.5》
固練り材料にSBR系バインダおよびイミダゾリン系化合物が追加されないことを除いては、No.1と同様に試料が準備された。
【0110】
《評価》
15gの試料が14日間保管された。保管後、試料が攪拌された。試料の攪拌により、スラリーが形成されるまでの所要時間が測定された。スラリーが形成された後、分散状態が目視により確認された。下記表1中、「スラリー分散状態」の項目における「P(pass)」は、スラリーが均質であったことを示す。「F(fail)」は、スラリーが不均質であったことを示す。
【0111】
【表1】
【0112】
上記表1において、試料が分散促進成分を含むことにより、保管後、スラリー形成の所要時間が短縮され、かつスラリーの分散状態が改善する傾向が見られる。
【符号の説明】
【0113】
110 正極、120 負極、130 セパレータ層、150 発電要素、200 全固体電池。
図1
図2