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特開2024-55679グラップルバケット装置及び木の切断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055679
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】グラップルバケット装置及び木の切断方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/40 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
E02F3/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162786
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000103655
【氏名又は名称】オカダアイヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】岡田 祐司
【テーマコード(参考)】
2D012
【Fターム(参考)】
2D012GA02
(57)【要約】
【課題】木等を切断する方法が複数あり、切断対象の木の大きさや、枝の状態によって切断方法を選択することができるグラップルバケット装置を提供することを課題とする。
【解決手段】作業車両のアームの先端部に取り付けられ、バケット11と、当該バケット11の開口18側に向かって揺動して前記バケット11との間で物を保持するグラップル部材20と、前記バケット11の開口18側に向かって揺動して物を切断する切断刃50を有するグラップルバケット装置1において、前記切断刃50は、両刃であって、バケット11側の辺とその反対側の辺の双方に切れ刃61、70があることを特徴とするグラップルバケット装置1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両のアームの先端部に取り付けられ、バケットと、当該バケットの開口側に向かって揺動して前記バケットとの間で物を保持するグラップル部材と、前記バケットの開口側に向かって揺動して物を切断する切断刃を有するグラップルバケット装置において、
前記切断刃は、両刃であって、バケット側の辺とその反対側の辺の双方に切れ刃があることを特徴とするグラップルバケット装置。
【請求項2】
前記反対側の辺の切れ刃は、その稜線が凹状であることを特徴とする請求項1に記載のグラップルバケット装置。
【請求項3】
前記反対側の辺の切れ刃は、中間部の稜線が円弧状であり、先端側の稜線が直線状であることを特徴とする請求項1に記載のグラップルバケット装置。
【請求項4】
前記バケット側の辺の切れ刃は、基端部から中間部までの間の切れ刃の稜線が、直線状又は切断の際の揺動方向に対して凹状であり、中間部から先の部分は、切れ刃の稜線が切断の際の揺動方向に対して反対側にのびていることを特徴とする請求項1に記載のグラップルバケット装置。
【請求項5】
バケットの側壁部に、切断刃が没入可能な受け枠が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のグラップルバケット装置。
【請求項6】
請求項5に記載のグラップルバケット装置を使用し、前記切断刃を前記受け枠に収容した状態で前記バケットとグラップル部材の間で木を保持し、その後に前記切断刃を揺動して前記受け枠から脱出させ、前記反対側の辺の切れ刃で木を切断することを特徴とする木の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木機械や、建設機械等の作業車両のアームの先端部に取り付けられるアタッチメントであって、地面を掘削する掘削機能と、木等を保持するグラップル機能と、保持した木等を切断する切断機能を備えたグラップルバケット装置に関するものである。
また本発明は、グラップルバケット装置を使用して木を切断する際の方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設機械等の作業車両のアームの先端部に取り付けられるアタッチメントの一つとして、グラップルバケット装置が知られている。グラップルバケット装置は、地面を掘削するバケットと、木等を保持するグラップル装置を備えている。
また特許文献1には、切断装置101を備えたグラップルバケット装置100が開示されている。
特許文献1に開示されたグラップルバケット装置100は、図13の様に、バケット102と、グラップル装置103を有し、さらに切断装置101を備えている。
グラップル装置103は、グラップル部材105を有している。グラップル部材105は、シリンダーによってバケット102の開口に対して近接・離反方向に揺動する。
【0003】
切断装置101は、切断刃106と、切断刃106を収容する受け枠107によって構成されている。
切断刃106も、シリンダーによって揺動し、自由端側がバケット102の開口から離れた姿勢から、受け枠107に入る方向に揺動する。
特許文献1に開示されたグラップルバケット装置100は、グラップル部材105とバケット102の開口縁との間で木材を挟む。即ちグラップル部材105と切断刃106の双方を開いた状態で、バケット102の開口縁とグラップル部材105間に木を入れて、グラップル部材105を閉じて木を挟む。そしてその後、切断刃106をバケット102の開口から離れた姿勢から受け枠107内に入る方向に揺動させ、木を切断する。
【0004】
特許文献1に開示されたグラップルバケット装置100は、切断刃106が青龍刀の様な形状であって片刃である。即ち特許文献1に開示された切断刃106は、バケット102側の辺にのみ切れ刃があり、棟側には切れ刃はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5911250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたグラップルバケット装置100は、木材等を運ぶだけではなく、適当な長さに切断することができる。
しかしながら、特許文献1に開示されたグラップルバケット装置100においては、木の切断方法が一つしかない。即ち、特許文献1に開示されたグラップルバケット装置100においては、前記した様に、グラップル部材105と切断刃106の双方を開いた状態でバケット102の開口縁とグラップル部材105間に木を入れ、グラップル部材105を閉じて木を挟み、その状態で、切断刃106をバケット102側に揺動させて木を切断するしか切断の方法がない。
そのため切断対象の木の大きさや、枝の状態によっては切断しにくい場合がある。
【0007】
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、木を切断する方法が複数あり、切断対象の木の大きさや、枝の状態によって切断方法を選択することができるグラップルバケット装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための態様は、作業車両のアームの先端部に取り付けられ、バケットと、当該バケットの開口側に向かって揺動して前記バケットとの間で物を保持するグラップル部材と、前記バケットの開口側に向かって揺動して物を切断する切断刃を有するグラップルバケット装置において、前記切断刃は、両刃であって、バケット側の辺とその反対側の辺の双方に切れ刃があることを特徴とするグラップルバケット装置である。
【0009】
本態様のグラップルバケット装置で採用する切断刃は、両刃であって、バケット側の辺とその反対側の辺(以下、棟側と称する場合がある)の双方に切れ刃がある。そのため多様な方法で木を切ることができる。
【0010】
上記した態様において、前記反対側の辺の切れ刃は、その稜線が凹状であることが望ましい。
【0011】
本態様のグラップルバケット装置は、棟側刃の稜線が凹状である。そのため木の周囲を囲むことができ、切断の際に木が逃げにくい。
【0012】
上記した態様において、前記反対側の辺の切れ刃は、中間部の稜線が円弧状であり、先端側の稜線が直線状であることが望ましい。
【0013】
上記した態様において、前記バケット側の辺の切れ刃は、基端部から中間部までの間の切れ刃の稜線が、直線状又は切断の際の揺動方向に対して凹状であり、中間部から先の部分は、切れ刃の稜線が切断の際の揺動方向に対して反対側にのびていることが望ましい。
【0014】
本態様のグラップルバケット装置で採用するバケット側の辺の切れ刃(以下、正面刃と称する場合がある)は、基端部から中間部までの間の稜線が、直線状又は切断の際の揺動方向に対して凹状であり、中間部から先の部分は、切れ刃の稜線が切断の際の揺動方向に対して反対側にのびている。そのため、直線状の領域又は凹状の領域と、揺動方向に対して反対側にのびている領域との境界部分は、切断の際における揺動方向に突出している。
そのため、木材を切断する際に、正面刃の突出部分が木材に当たる。また突出部分は比較的小さい領域であるから、木材等に対する単位面積当たりの力が強く、容易に木材等に食い込む。
そのため、切断の際に木材等が逃げにくい。
また基端側に凹状の領域がある場合は、基端側で切れ端や落ち葉等を圧縮しない。
【0015】
上記した態様において、バケットの側壁部に、切断刃が没入可能な受け枠が設けられていることが望ましい。
【0016】
本態様によると、木材等を円滑に切断することができる。
【0017】
木の切断方法に関する態様は、上記したグラップルバケット装置を使用し、前記切断刃を前記受け枠に収容した状態で前記バケットとグラップル部材の間で木を保持し、その後に前記切断刃を揺動して前記受け枠から脱出させ、前記反対側の辺の切れ刃で木を切断することを特徴とする。
【0018】
本態様の木の切断方法は、上記したグラップルバケット装置を使用する切断方法の一つである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のグラップルバケット装置は、切断刃が両刃であるから多様な切断方法を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態のグラップルバケット装置を装着した土木・建設機械(作業車両)の正面図である。
図2】本発明の実施形態のグラップルバケット装置の斜視図である。
図3図2に示すグラップルバケット装置の側面図であり、グラップル部材及び切断刃がいずれも開いている状態を示す。
図4図2に示すグラップルバケット装置の側面図であり、グラップル部材に関連する部材を抜き出して示すものである。
図5図2に示すグラップルバケット装置の側面図であり、切断刃が開いた状態であって、切断刃に関連する部材を抜き出して示すものである。
図6図2に示すグラップルバケット装置の側面図であり、切断刃が閉じた状態であって、切断刃に関連する部材を抜き出して示すものである。
図7】切断刃の輪郭線を表示した正面図である。
図8】(a)乃至(e)は、正面刃によって木材を切断する場合の様子を段階的に示す説明図である。
図9】(a)乃至(c)は、棟側刃によって木材を切断する場合の様子を段階的に示す説明図である。
図10】切断刃と受け枠の関係を説明する説明図であり、(a)は、切断刃が開いた状態を示し、(b)は、切断刃が閉じて受け枠の中に収容された状態を示す。
図11】(a)乃至(e)は、本発明の他の実施形態における切断刃の正面図である。
図12】(a)乃至(c)は、本発明の他の実施形態における切断刃の正面図である。
図13】従来技術のグラップルバケット装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のグラップルバケット装置1は、図1の様に、土木・建築機械(作業車両)2に取り付けられるアタッチメントである。
図1に示す土木・建築機械2は、公知のパワーショベル等の自走式作業車両の本体部分であり、走行車両3に、ブーム5が取り付けられ、さらにアーム6が設けられている。公知の通り、ブーム5及びアーム6は、シリンダー7、8によって揺動する。
【0022】
グラップルバケット装置1は、図1の様にアーム6の先端に取り付けられる。
グラップルバケット装置1は、ブラケット部10と、バケット部11を有している。
ブラケット部10は、バケット部11を支持し、バケット部11を土木・建築機械2のアーム6に接続するものである。
ブラケット部10には回動部材38が設けられており、バケット部11は、回動部材38に取り付けられている。回動部材38は、図示しない油圧モータによって回動するものである。バケット部11は、回動部材38を駆動することにより、アーム6の延長方向の軸心を中心にして回転する。
【0023】
回動部材38の内部にはボールベアリングがある。
公知の様に、ボールベアリングには、グリスが内蔵されており、通常はグリスニップルが設けられており、グリスガンを使用して給脂される。本実施形態では、これに加えて、ボールベアリングに自動給脂装置41が取り付けられている。自動給脂装置41は、ガス圧その他によってグリスを強制的に押し出して給脂するものである。
本実施形態では、自動給脂装置41が装着されているので、使用者が仮に給脂を失念していても、ベアリングの耐久性が確保される。
【0024】
バケット部11は、地面を掘る機能を有するものであり、土等をすくうことができるものである。
本実施形態で採用するバケット部11は、図3乃至図6の様に、固定側部材12と、バケット本体17を有している。またバケット部11には、グラップル部材20及び切断刃50がある。
バケット本体17は、対向する側壁15、16を有し、当該対向する側壁15、16の間に略「L」字状の底壁33が設けられたものである。バケット本体17は、対向する側壁15、16と、両者を繋ぐ底壁33によって土等を貯める空間13が構成されている。
バケット本体17の一面は開放されている。バケット本体17の開放された一面が、バケット部11の開口部18となっている。
バケット本体17は、軸40を介して固定側部材12に揺動可能に支持されている。
またバケット本体17は、土木・建築機械2のアーム6に設けられたシリンダー42が接続されており、バケット本体17は、当該シリンダー42によって揺動する。即ちバケット本体17は、アーム6に対してうなずく様に揺動する。
【0025】
本実施形態では、図2の様に、バケット部11の一方の側壁16の外側に、受け枠37が設けられている。受け枠37は、バケット部11の一方の側壁16と、当該側壁16の外側へ所定の間隔をあけて設けた枠壁21によって構成されている。受け枠37は、切断刃50が収容される部位であり、図5、6に示す様に底壁35がある。
【0026】
グラップル部材20は、図2の様に対向するアーム片22を有し、当該アーム片22の先端同士が接続片23で接続されたものである。アーム片22の間隔は、バケット部11の開口幅よりも狭い。
グラップル部材20は、基端側がバケット部11の固定側部材12に軸43を介して軸支されている。
グラップル部材20は、グラップル用シリンダー26によって揺動する。
グラップル用シリンダー26は、図4の様に、ヘッド側がピン30を介してバケット本体17の、固定側部材12に取り付けられている。そしてグラップル用シリンダー26のロッド27がグラップル部材20側にピン63を介して軸支されている。
グラップル部材20は、グラップル用シリンダー26を伸縮することによって、軸43を中心として揺動する。グラップル部材20は、グラップル用シリンダー26を伸長することにより、バケット部11の開口部18側に向かって揺動し、バケット本体17の開口縁45との間に木材等の物を挟んで保持することができる。
【0027】
切断刃50は、図5に示す様に、基端側がバケット部11の固定側部材12にピン46介して軸支されている。ピン46は、受け枠37の近傍にある。
切断刃50は、切断刃用シリンダー51によって揺動する。
切断刃用シリンダー51は、ヘッド側がピン30を介してバケット本体17の、固定側部材12に取り付けられている。即ちグラップル用シリンダー26のヘッド側を軸支するピン30と同じピン30によって切断刃用シリンダー51が取り付けられている。
そして切断刃用シリンダー51のロッド52が切断刃50側にピン47を介して軸支されている。
切断刃50は、切断刃用シリンダー51を伸縮することによって、ピン46を中心として揺動する。
切断刃50は、切断刃用シリンダー51が収縮した状態においては、図5の様に開いた姿勢となる。
切断刃50は、切断刃用シリンダー51を伸長することにより、バケット部11の開口部18側に向かって揺動する。即ち切断刃用シリンダー51を伸長することにより、切断刃50が前進する。
【0028】
本実施形態では、バケット本体17の側面に、受け枠37がある。切断刃50の揺動中心は、受け枠37の近傍にあるから、切断刃用シリンダー51を伸ばしきると、図6の様に、切断刃50が受け枠37の中に収容される。
一方、切断刃50が受け枠37の中に収容された状態から、切断刃用シリンダー51を収縮させると、切断刃50が後退して受け枠37から脱し、開き姿勢となる。
本実施形態では、受け枠37と切断刃50の間で木等を挟み、木等をせん断することができる。
実際には、グラップル部材20とバケット部11の開口縁45との間で木等の被切断物を挟んで保持し、この状態で切断刃50をバケット部11の開口縁45側に揺動させて切断刃50の正面刃を木材等に押し当て、木材等を切断することとなる。
【0029】
また後記する様に、本実施形態で採用する切断刃50は両刃であり、グラップル部材20とバケット部11の開口縁45との間で木等の被切断物を挟んで保持し、この状態で切断刃50を受け枠37から脱出する方向に揺動し、切断刃50の棟側刃を木等に押し当てて、木等を切断することもできる。
【0030】
本実施形態のグラップルバケット装置1では、特徴的な刃型の切断刃50を採用している。
本実施形態の切断刃50は、図7の様に、円形の揺動中心部53と刃体部55によって構成される。切断刃50は、揺動中心部53が前記したピン46介してバケット部11の固定側部材12に軸支され、揺動中心部53を中心として揺動するものである
刃体部55の概形は、ブーメラン状に折れ曲がった板状である。即ち刃体部55のバケット部11側の辺は、輪郭の概形が凸状であり、その反対側の辺は輪郭の概形が凹状である。
【0031】
本実施形態の刃体部55は、両刃であって、バケット部11側の辺とその反対側の辺の双方に切れ刃がある。
即ち本実施形態の切断刃50は、バケット部11側の辺に正面刃(切れ刃)61があり、その反対側(棟側)に棟側刃(切れ刃)70がある。
正面刃61は、二つの直線を基調とする切れ刃であり、輪郭形状は、図5の様な開いた姿勢を基準としてバケット部11側に凸状である。以下、図5の様な開いた姿勢を基準としてバケット部11側の方向を前方方向といい、その反対を後方という場合がある。
即ち正面刃61の稜線62は、基端部から中間部までの間がバケット部11側(前方)に向かって突出する方向に延びる直線である。これに対して、中間部から先の部分は、正面刃61の稜線62が切断の際の揺動方向(図7の矢印)に対して反対側(後方)に直線的にのびている。
したがって、刃体部55は、中間部が、切断の際の揺動方向(前方)に向かって最も突出している。
本実施形態では、刃体部55の刃渡りをWとして、Wの基端部から5分の1から3分の2の位置、好ましくは、Wの基端部から3分の1から2分の1の位置に稜線62の変曲点60がある。即ち、刃体部55の正面刃61は、刃の根本から先にバケット部11側に向かって傾斜する前方傾斜部56があり、その先に突端部57があり、さらにその先が、後方に後退する後方傾斜部58がある。
本実施形態では、突端部57は、三角形に近く、とがっている。
【0032】
棟側刃70の稜線71は、曲線と直線が繋がったものである。即ち棟側刃70は、基端部から中間部までの間の稜線71が凹形の円弧状領域75である。これに対して、中間部から先の部分は、棟側刃70の稜線71が切断の際の揺動方向(図7の矢印)に対して反対側に直線的にのびる直線領域76である。
したがって、棟側刃70の稜線71の輪郭は、全体的に凹形である。
【0033】
次に、本実施形態のグラップルバケット装置1を使用して木材を切断する際の様子について説明する。図8は、正面刃61によって木材を切断する場合の様子を段階的に示す説明図である。
【0034】
最初に、正面刃61によって木材を切断する場合の手順について説明する。図8は、正面刃61によって木材を切断する場合の様子を段階的に示す説明図である。
正面刃61を使用して切断する際の準備段階として、グラップル部材20とバケット部11の開口縁45との間で木等の被切断物を挟んで保持する。このとき、図8(a)、図10(a)の様に、刃体部55は、バケット部11の開口縁45から離れた状態で待機している。即ち刃体部55は、開いている。
そして、切断刃50をバケット部11の開口縁45に向かって揺動させ、図8(b)の様に、木材に刃体部55の正面刃61を押し当てる。ここで切断刃50は、中間部に突端部57があり、当該突端部57が、切断刃50の揺動方向に対して最も先頭の位置にある。そのため、刃体部55が揺動する際に、突端部57が最初に木材と接触する。
【0035】
ここで、突端部57はとがっており、押し当てられた際における単位面積当たりの力が強いので、容易に木材に突き刺さる。そのため木材が逃げにくい。また突端部57よりも基端側の領域は、凹状であるから、仮に木材が逃げようとしてころがる場合、基端側に向かって転がるように誘導される。
そのため、木材は刃体部55に捕捉され、揺動が進むにしたがって、切込みが進む。そしてついには切断される。
【0036】
切断刃50の揺動が進むと、図8(d)、図10(b)の様に、切断刃50は最終的に受け枠37内に収容される。
【0037】
次に、棟側刃70によって木材を切断する場合の手順について説明する。図9は、棟側刃70によって木材を切断する場合の様子を段階的に示す説明図である。
棟側刃70を使用して切断する際の準備段階として、グラップル部材20とバケット部11の開口縁45との間で木材等の被切断物を挟んで保持する。このとき、図9(a)、図10(b)の様に、切断刃50は受け枠37内に収容されている。
そして、切断刃50を受け枠37から脱出する方向に揺動させ、図9(b)の様に、木材に刃体部55の棟側刃70を押し当てる。ここで棟側刃70は、輪郭が凹状であるから、木材を包み込む。そのため木材が逃げにくい。
そのため、木材は刃体部55に捕捉され、揺動が進むにしたがって、切込みが進む。そしてついには切断される。
【0038】
以上説明した実施形態では、正面刃61の前方傾斜部56と後方傾斜部58との境界部分がとがっているが、図11(a)に示す切断刃80の様に、短い範囲の直線部があってもよい。
また図11(b)に示す切断刃81の様に、後方傾斜部58は、湾曲していてもよい。
【0039】
以上説明した実施形態では、正面刃61の基端部から中間部までの間の稜線62が直線であるが、図11(c)の様に、当該部分が曲線であってもよい。
図11(c)に示す切断刃82は、正面刃61の刃の根本から先に曲線領域83があり、その先に突端部57があり、さらにその先が、後方に後退する後方傾斜部58となっている。
切断刃82は、切断の際に揺動するので、中間部が、切断の際の揺動方向に向かって最も突出することとなる。
本実施形態においても、突端部57は、三角形に近く、とがっている。
【0040】
本実施形態においても、切断刃82をバケット部11の開口縁45に向かって揺動させ、木材に刃体部55の正面刃61を押し当てる。切断刃82は、中間部に突端部57があり、当該突端部57が、切断刃82の揺動方向に対して最も先頭の位置にある。
突端部57はとがっており、押し当てられた際における単位面積当たりの力が強いので、容易に木材に突き刺さる。そのため木材が逃げにくい。
木材は刃体部55に捕捉され、揺動が進むにしたがって、切込みが進む。そしてついには切断される。
【0041】
また受け枠37の中には木材の切れ端や落ち葉がたまっていることがあり、これらは切断刃50の揺動中心たるピン46の周辺に集まる。
ここで切断刃82は、基端部が凹状であるから、受け枠37の底壁35と切断刃82の基端部の刃先の間には隙間がある。本実施形態では切断刃82の曲線領域83が、逃げ領域となり、切れ端や落ち葉があっても切断刃82は無理なく受け枠37内に入る。
そのため、切断刃82の揺動力が切れ端等の圧縮に消費される力が少なく、揺動力の大半が木材の切断に寄与する。
【0042】
以上説明した実施形態では、棟側刃70、85、86、87は、いずれも稜線の輪郭が凹状であるが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、図11(d)に示す切断刃90の棟側刃91の様な直線状であってもよい。
また図11(e)に示す切断刃92の棟側刃93の様な凸状であってもよい。
【0043】
以上説明した実施形態では、正面刃61の中間部に尖った部位があるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
図12(a)に示す切断刃95は、正面刃77と、棟側刃78の稜線がいずれも直線状である。
図12(b)に示す切断刃96は、正面刃97と、棟側刃88の稜線がいずれも曲線状であり、後方に反っている。
図12(c)に示す切断刃98は、正面刃65が曲線状であって前方に向かって反っており、棟側刃66の稜線は直線状である。
【0044】
切断刃の輪郭は任意であり、上記した各形状のほか、正面刃(切れ刃)61、65、77、97と棟側刃(切れ刃)66、70、78、85、86、87、88、91、93を任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 グラップルバケット装置
11 バケット部
12 固定側部材
17 バケット本体
18 開口部
20 グラップル部材
37 受け枠
50、80、81、82、90、92、95、96、98 切断刃
55 刃体部
61、65、77、97 正面刃(切れ刃)
66、70、78、85、86、87、88、91、93 棟側刃(切れ刃)
62、71 稜線
75 円弧状領域
76 直線領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13