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特開2024-55687エポキシ樹脂接着剤組成物およびその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055687
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂接着剤組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20240411BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240411BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/04
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162808
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(72)【発明者】
【氏名】浅井邦康
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EC061
4J040HA146
4J040HC01
4J040HD32
4J040JA02
4J040JA13
4J040JB02
4J040KA16
4J040MA02
4J040MB05
4J040MB09
(57)【要約】
【課題】
本発明は、85℃×85%RHという高温高湿環境試験後の接着力が優れるエポキシ樹脂接着剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
下記の(A)~(D)成分を含むエポキシ樹脂接着剤組成物。
(A)成分:エポキシ樹脂
(B)成分:エポキシ樹脂と反応する硬化剤
(C)成分:アルカリ金属水酸化物
(D)成分:水
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(D)成分を含むエポキシ樹脂接着剤組成物。
(A)成分:エポキシ樹脂
(B)成分:エポキシ樹脂と反応する硬化剤
(C)成分:アルカリ金属水酸化物
(D)成分:水
【請求項2】
前記(C)成分が水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである、請求項1に記載のエポキシ樹脂接着剤組成物。
【請求項3】
更に、(E)成分としてシランカップリング剤を含む、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂接着剤組成物。
【請求項4】
前記(B)成分100質量部に対して、前記(C)成分が0.001~40質量部である、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂接着剤組成物。
【請求項5】
前記(A)成分がビスフェノール型エポキシ樹脂を含む、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂接着剤組成物。
【請求項6】
前記(B)成分が、アミン価が200~700KOHmg/gであるポリアミン化合物を含む、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂接着剤組成物。
【請求項7】
両性金属からなる被着体に用いられる、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂接着剤組成物。
【請求項8】
両性金属がアルミニウムまたは亜鉛である、請求項7に記載のエポキシ樹脂接着剤組成物。
【請求項9】
下記のA剤、B剤を含む2液エポキシ樹脂接着剤組成物。
A剤:(A)エポキシ樹脂を含む組成物
B剤:下記(B)~(D)成分を含む組成物
(B)成分:エポキシ樹脂と反応する硬化剤
(C)成分:アルカリ金属水酸化物
(D)成分:水
【請求項10】
更に、A剤またはB剤に(E)成分としてシランカップリング剤を含む、請求項9に記載の2液エポキシ樹脂接着剤組成物。
【請求項11】
請求項1の記載のエポキシ樹脂接着剤組成物または請求項9に記載の2液エポキシ樹脂接着剤組成物のいずれかを硬化させて得られる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂接着剤組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エポキシ樹脂接着剤組成物は、接着力、高強度、耐熱性、電気特性、耐薬品性に優れることから、電気部品等の組み立てなどにおいて多用されてきた。しかし、一般的にエポキシ樹脂接着剤組成物は、分子内にエーテル結合等を有することから耐湿性が劣ることが知られている。耐湿性を向上させる方法として、引用文献1には、エポキシ系樹脂と、四フッ化エチレン重合体の粉末と、カップリング剤とを含むエポキシ樹脂接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01-275686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のエポキシ樹脂接着剤組成物は、85℃×85%RHという高温高湿環境試験後の接着力が劣り、信頼性が不十分であった。
【0005】
本発明は、上記の状況に鑑みてされたものであり、85℃×85%RHという高温高湿環境試験後の接着力が優れるエポキシ樹脂接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨を次に説明する。
[1]下記の(A)~(D)成分を含むエポキシ樹脂接着剤組成物。
(A)成分:エポキシ樹脂
(B)成分:エポキシ樹脂と反応する硬化剤
(C)成分:アルカリ金属水酸化物
(D)成分:水
[2]前記(C)成分が水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである、[1]に記載のエポキシ樹脂接着剤組成物。
[3]更に、(E)成分としてシランカップリング剤を含む、[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂接着剤組成物。
[4]前記(B)成分100質量部に対して、前記(C)成分が0.2~20質量部である、[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂接着剤組成物。
[5]前記(A)成分がビスフェノール型エポキシ樹脂を含む、[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂接着剤組成物。
[6]前記(B)成分が、アミン価が200~700KOHmg/gであるポリアミン化合物を含む、[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂接着剤組成物。
[7]両性金属からなる被着体に用いられる、[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂接着剤組成物。
[8]下記のA剤、B剤を含む2液エポキシ樹脂接着剤組成物。
A剤:(A)エポキシ樹脂を含む組成物
B剤:下記(B)~(D)成分を含む組成物
(B)成分:エポキシ樹脂と反応する硬化剤
(C)成分:アルカリ金属水酸化物
(D)成分:水
[9][1]の記載のエポキシ樹脂接着剤組成物または[8]に記載の2液エポキシ樹脂接着剤組成物のいずれかを硬化させて得られる硬化物。
[8]両性金属がアルミニウムまたは亜鉛である、[7]に記載のエポキシ樹脂接着剤組成物。
[9]下記のA剤、B剤を含む2液エポキシ樹脂接着剤組成物。
A剤:(A)エポキシ樹脂を含む組成物
B剤:下記(B)~(D)成分を含む組成物
(B)成分:エポキシ樹脂と反応する硬化剤
(C)成分:アルカリ金属水酸化物
(D)成分:水
[10] 更に、A剤またはB剤に(E)成分としてシランカップリング剤を含む、[9]に記載の2液エポキシ樹脂接着剤組成物。
[11] [1]の記載のエポキシ樹脂接着剤組成物または[9]に記載の2液エポキシ樹脂接着剤組成物のいずれかを硬化させて得られる硬化物。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、85℃×85%RHという高温高湿環境試験後の接着力が優れるエポキシ樹脂接着剤組成物を提供するものである。また、本発明は、両性金属に対する接着力、貯蔵安定性が優れるエポキシ樹脂接着剤組成物を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に発明の詳細を説明する。なお、本明細書において、「X~Y」は、その前後に記載される数値(XおよびY)を下限値および上限値として含む意味で使用し、「X以上Y以下」を意味する。本明細書において両性金属とは、アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛を意味し、両性金属の酸化物は意図していないものとする。
<(A)成分>
本発明に用いられる(A)成分はエポキシ樹脂であれば特に制限されない。(A)成分としては、エポキシ基を2以上有する多官能エポキシ樹脂、エポキシ基を1つのみ有する単官能エポキシ化合物等があげられ、中でも、多官能エポキシ樹脂が好ましい。また、前記(A)成分は、液状、固体でもよいが、作業性の観点では液状が好ましい、接着力の観点では液状が好ましい。
【0009】
前記多官能エポキシ樹脂としては、特に制限されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、1,2-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,3-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、2,3-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどのアルキレングリコール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン等のグリシジルアミン化合物;グリシジル基を4つ有するナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、両性金属に対する接着力が優れるという観点からビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。また、これらは単独あるいは混合で使用してもよい。
【0010】
前記多官能エポキシ樹脂の市販品としては、特に限定されないが、例えばjER828、1001、801、806、807、152、604、630、871、YX8000、YX8034、YX4000(三菱ケミカル株式会社製);エピクロン830、850、830LVP、850CRP、835LV、HP4032D、703、720、726、820(DIC株式会社製);EP4100、EP4000、EP4080,EP4085、EP4088、EPU6、EPU7N、EPR4023、EPR1309、EP4920(株式会社ADEKA製)、TEPIC(日産化学工業株式会社製);KF-101、KF-1001、KF-105、X-22-163B、X-22-9002(信越化学工業株式会社製);デナコールEX411、314、201、212、252(ナガセケムテックス株式会社製);DER-331、332、334、431、542(ダウケミカル社製);YH-434、YH-434L(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
前記単官能エポキシ化合物としては、特に制限されないが、例えばn-ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールグリシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。
【0012】
前記単官能エポキシ化合物の市販品としては、特に限定されないが、例えばED-502、ED-502S、ED-509E、ED-509S、ED-529(株式会社ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。
【0013】
<(B)成分>
この発明に用いられる(B)のエポキシ樹脂と反応する硬化剤は、公知の硬化剤が使用でき、例えばポリアミン化合物、ポリメルカプタン化合物、ポリアミド化合物等が挙げられ、中でも、より一層、高温高湿環境試験後の接着力が優れることからポリアミン化合物が好ましい。なお、本明細書においてポリアミン化合物をアミン系硬化剤と標記することもある。アミン系硬化剤の市販品としては、三菱ケミカル株式会社製ST12などがあげられる。
【0014】
前記(B)成分は、潜在性硬化剤など固体であってもよいが、好ましくは25℃で液状である。前記(B)成分の粘度(25℃)は、特に制限されないが300~10000mPa・sであり、好ましくは500~7000mPa・sであり、特に好ましくは、1000~4000mPa・sである。前記(B)成分がポリアミン化合物である場合のアミン価は、特に制限されないが、200~700KOHmg/gであり、更に好ましくは250~550KOHmg/gであり、特に好ましくは300~450KOHmg/gである。粘度またはアミン価が上記の範囲内であることで、より一層、高温高湿環境試験後の接着力が優れる。なお、アミン価とは、試料1g中に含まれている全塩基性窒素を中和するのに要する過塩素酸と当量の水酸化カリウムのmg数を表す。本発明において、アミン価は、JIS K7237に準拠して測定された値をいう。
【0015】
前記ポリアミン化合物としては、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドアミンなどがあげられ、中でも、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミンが好ましい。また、2種以上の混合物であっても良い。
【0016】
前記脂肪族ポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン等があげられる。また、脂環式ポリアミンとしては、メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ノルボルナンジアミン等が挙げられる。また、芳香族ポリアミンとしては、キシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。
【0017】
前記ポリメルカプタンとしては、特に制限されないが、3,3’-ジチオジプロピオン酸、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、エチレングリコールジチオグリコレート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(TEMPIC)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(TMMP)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PEMP)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(DPMP)、1,4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,10-デカンジチオール等のアルキルポリチオール;末端チオール基含有ポリチオエーテルなどがあげられる。
【0018】
前記ポリアミド化合物としては、ポリアミンとジカルボン酸との反応により得られる化合物などがあげられる。
【0019】
前記(B)成分の添加量は、特に制限されないが、前記(A)成分100質量部に対して、1~200質量部であり、好ましくは2~100質量部であり、特に好ましくは、3~75質量部である。上記の範囲内であることで両性金属に対する接着力が優れることから好ましい。
【0020】
<(C)成分>
本発明に用いられる(C)成分はアルカリ金属水酸化物であれば特に制限されない。前記(C)成分は、本発明のその他成分と組み合わせることにより、両性金属に対する接着力、高温高湿環境試験後の接着力、貯蔵安定性が優れるという顕著な効果をもたらすことができる。前記(C)成分は特に制限されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウムなどがあげられ、中でも、両性金属に対する接着力が優れることから水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。
【0021】
前記(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.001~20質量部であり、好ましくは、0.01~10質量部であり、特に好ましくは、0.05~5質量部である。また、前記(C)成分の配合量は、(B)成分100質量部に対して、0.001~40質量部であり、好ましくは、0.005~20質量部であり、特に好ましくは、0.01~10質量部である。上記の範囲内であることで、より一層、両性金属に対する接着力、高温高湿環境試験後の接着力、貯蔵安定性が優れる。
【0022】
<(D)成分>
本発明の(D)成分は、水であれば特に制限されないが、例えば蒸留水、イオン交換水などが挙げられる。本発明の(D)成分はその他成分と組み合わせることにより、両性金属に対する接着力、高温高湿環境試験後の接着力、貯蔵安定性が優れるという顕著な効果をもたらすことができる。(D)成分は前記(C)成分を溶解する溶媒として作用することができる。
【0023】
前記(D)成分の添加量は、特に制限されないが、前記(A)成分100質量部に対して、0.01~10質量部であり、好ましくは0.05~5質量部であり、特に好ましくは、0.1~3質量部である。また、前記(D)成分の添加量は、前記(B)成分100質量部に対して、0.01~20質量部であり、好ましくは0.02~10質量部であり、特に好ましくは、0.03~6質量部の範囲である。また、前記(D)成分の添加量は、前記(C)成分1質量部に対して、0.1~300質量部であり、好ましくは0.5~200質量部であり、特に好ましくは、1~150質量部の範囲である。上記の範囲内であることで、より一層、両性金属に対する接着力、高温高湿環境試験後の接着力、貯蔵安定性が優れる。
【0024】
<(E)成分>
更に、本発明のエポキシ樹脂接着剤組成物に(E)成分としてシランカップリング剤を含めることができる。本発明の(E)成分は、本発明のその他成分と組み合わせることで、より一層、高温高湿環境試験後の接着力が優れるという効果を有する。
【0025】
前記シランカップリング剤としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基含有シランカップリング剤、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、その他γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、スチリルシラン、ウレイドシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン等が挙げられる。中でも、グリシジル基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤が好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
前記(E)成分の添加量は、特に制限されないが、前記(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部であり、好ましくは0.2~15質量部であり、特に好ましくは、0.3~10質量部の範囲である。または、前記(B)成分100質量部に対して、前記(E)成分の添加量は、0.1~20質量部であり、好ましくは0.2~15質量部であり、特に好ましくは、0.3~10質量部の範囲である。上記の範囲内であることで、より一層、高温高湿環境試験後の接着力が優れるという効果が得られる。
【0027】
<任意成分>
本発明に対し、本発明の目的を損なわない範囲で、硬化促進剤、充填剤、スチレン系共重合体等の各種エラストマー、保存安定剤、酸化防止剤、難燃性付与剤、光安定剤、重金属不活性剤、可塑剤、消泡剤、顔料、防錆剤、レベリング剤、分散剤、レオロジー調整剤、難燃剤、及び界面活性剤等の添加剤を使用することができる。前記充填剤としては、シリカ、ガラス、セラミックス、炭酸カルシウム、カーボン粉、カオリンクレー等が挙げられる。
【0028】
<2液エポキシ樹脂接着剤組成物>
本発明の一態様である2液エポキシ樹脂接着剤組成物は、A剤及びB剤を含有するものであり、A剤は、前記(A)成分を含む組成物であり、B剤は、前記(B)~(D)成分を含有する組成物である。このように成分を別々の液に分けることにより貯蔵中に無駄な反応を抑えることができ、貯蔵安定性を高めることができる。このような2液エポキシ樹脂接着剤組成物においても、それぞれの液は周知の方法により混合して製造することができる。そして、使用の際に二つの液を混合し使用される。なお、A剤100質量部に対して、B剤は5~300質量部の範囲であり、より好ましくは、10~200質量部であり、特に好ましくは、20~150質量部の範囲である。前記A剤、B剤は使用前に両者を混合撹拌することで硬化物を得ることができる。
【0029】
<硬化物>
本発明のエポキシ樹脂接着剤組成物を硬化させることで得られる硬化物も発明の一態様である。またエポキシ樹脂接着剤組成物における硬化条件は、特に限定されないが、0℃以上150℃未満の温度が好ましく、より好ましくは、10℃以上130℃未満である。硬化時間は特に限定されないが、例えば10分~30日などである。
【0030】
また、本発明の2液エポキシ樹脂接着剤組成物を硬化させることで得られる硬化物も発明の一態様である。二液混合による硬化とは、使用の際に二つの液を混合することで硬化させることができることを意味する。また、2液エポキシ樹脂接着剤組成物における硬化条件は、特に限定されないが、二液を混合後において、0℃以上150℃未満の温度が好ましく、より好ましくは、10℃以上130℃未満である。硬化時間は特に限定されないが、例えば10分~30日などである。
【0031】
<用途>
本発明のエポキシ樹脂接着剤組成物の具体的な用途としては、本発明は、85℃×85%RHという高温高湿環境試験後の接着力が優れるエポキシ樹脂接着剤組成物であることから、自動車・輸送機分野では、自動車用のスイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク等の接着剤に使用が可能である。また、フラットパネルディスプレイでは、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、発光ダイオード表示装置、フィールドエミッションディスプレイの接着剤に使用が可能である。携帯電話、多機能携帯電話等の電子モバイル機器分野の接着剤に使用が可能である。記録分野では、ビデオディスク、CD、DVD、MD、ピックアップレンズ、ハードディスク周辺(スピンドルモータ用部材、磁気ヘッドアクチュエータ用部材など)、ブルーレイディスク等の接着剤に使用が可能である。電子材料分野では、電子部品、電気回路、電気接点あるいは半導体素子等の封止材料、ダイボンド剤、導電性接着剤、異方性導電性接着剤、ビルドアップ基板を含む多層基板の層間接着剤、ソルダーレジスト等を挙げることができる。電池分野では、Li電池、マンガン電池、アルカリ電池、ニッケル系電池、燃料電池、シリコン系太陽電池、色素増感型太陽電池、有機太陽電池等の接着剤に使用が可能である。光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺、光コネクタ周辺の光ファイバー材料、光受動部品、光回路部品、光電子集積回路周辺の等の接着剤に使用が可能である。光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部、撮影レンズ、プロジェクションテレビの投射レンズ等の接着剤に使用が可能である。インフラ分野では、野外の通信機器、信号機などの長期間野外環境に放置される部品、モジュールの接着剤に使用が可能である。
【実施例0032】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細の説明をするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
<2液エポキシ樹脂接着剤組成物の調製>
各成分を表1に示す質量部で採取し、常温にてミキサーで60分混合し、2液エポキシ樹脂接着剤組成物に該当するA剤、B剤をそれぞれ調製した。尚、詳細な調製量は表1に従い、数値は全て質量部で表記する。なお、実施例1~5は(C)成分を予め(D)成分で溶解させて水溶液にしてから配合した。
【0034】
<(A)成分>
a1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製jER828)
<(B)成分>
b1:25℃の粘度が1700mPa・sであり、アミン価が365KOHmg/gであるアミン系硬化剤(三菱ケミカル株式会社製ST12)
<(C)成分>
c1:水酸化ナトリウム(試薬)
c2:水酸化カリウム(試薬)
<(D)成分>
d1:イオン交換水
<(E)成分>
e1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製KBM-403)
【0035】
表1の実施例、比較例において使用した試験方法は下記の通りである。
【0036】
<(1)AL/AL引張せん断接着強さ試験(初期)>
表1に記載のA剤、B剤を準備して、A剤100質量部に対して、B剤50質量部を混合して得られた混合樹脂組成物を準備した。次に、幅25mm×長さ100mm×厚さ1.0mmのアルミニウム製テストピースに、前記混合樹脂組成物を塗布する。その後、別の幅25mm×長さ100mm×厚さ1.0mmのアルミニウム製テストピースをオ-バーラップ面が25mm×10mmになるように貼り合わせてクリップで固定した。そして、120℃に設定した熱風乾燥炉にて30分硬化させ試験片を得た。その後、試験片を用いて25℃にて万能引張試験機(引っ張り速度10mm/min.)にてせん断接着強さ(単位はMPa)をJIS K 6850に従い最大値を測定した。結果を表1に示す。なお、本発明において10MPa以上が好ましく、さらに好ましくは、12MPa以上である。なお、表中の「評価不可能」とは、(C)成分が組成物全体に溶解しなかったので評価できなかったものを意味する。
【0037】
<(2)85℃×85%RH高温高湿環境試験後のAL/AL引張せん断接着強さ試験>
表1に記載のA剤、B剤を準備して、A剤100質量部に対して、B剤50質量部を混合して得られた混合樹脂組成物を準備した。次に、幅25mm×長さ100mm×厚さ1.0mmのアルミニウム製テストピースに、前記混合樹脂組成物を塗布する。その後、別の幅25mm×長さ100mm×厚さ1.0mmのアルミニウム製テストピースをオ-バーラップ面が25mm×10mmになるように貼り合わせてクリップで固定した。そして、120℃に設定した熱風乾燥炉にて30分硬化させ試験片を得た。その後、各試験片を85℃×85%RHに設定した高温高湿槽に240時間入れた後、高温高湿槽から取り出し、室温で1時間放置して、その後、試験片を用いて25℃にて万能引張試験機(引っ張り速度10mm/min.)にてせん断接着強さ(単位はMPa)をJIS K 6850に従い最大値を測定した。結果を表1に示す。
なお、本発明において信頼性の観点から16MPa以上が好ましく、さらに好ましくは、18MPa以上であり、特に好ましくは19MPa以上である。なお、表中の「評価不可能」とは、(C)成分が組成物全体に溶解しなかったので評価できなかったものを意味する。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の実施例1~5によれば、本発明は、85℃×85%RHという高温高湿環境試験後の接着力が優れるエポキシ樹脂接着剤組成物を提供できることがわかる。
【0040】
また、表1の比較例1は、本発明の(C)成分、(D)成分を含まない組成物であるが、高温高湿環境試験後の接着力が劣る結果であった。また、比較例2は(C)成分を含まない組成物であるため、(C)成分が組成物全体に溶解しなかったので評価不可能であった。
【0041】
更に、(3)85℃×85%RH高温高湿環境試験後のZn/Zn引張せん断接着強さ試験と(4)貯蔵安定性確認試験を行った。
【0042】
<(3)85℃×85%RH高温高湿環境試験後のZn/Zn引張せん断接着強さ試験>
表1の実施例1、4、比較例1のA剤、B剤を準備して、A剤100質量部に対して、B剤50質量部を混合して得られた混合樹脂組成物を準備した。次に、幅25mm×長さ100mm×厚さ1.0mmの亜鉛製テストピースに、前記混合樹脂組成物を塗布する。その後、別の幅25mm×長さ100mm×厚さ1.0mmの亜鉛製テストピースをオ-バーラップ面が25mm×10mmになるように貼り合わせてクリップで固定した。そして、120℃に設定した熱風乾燥炉にて30分硬化させ試験片を得た。その後、各試験片を85℃×85%RHに設定した高温高湿槽に240時間入れた後、高温高湿槽から取り出し、室温で1時間放置して、その後、試験片を用いて25℃にて万能引張試験機(引っ張り速度10mm/min.)にてせん断接着強さ(単位はMPa)をJIS K 6850に従い最大値を測定した。なお、本発明において信頼性の観点から3MPa以上が好ましく、さらに好ましくは、4MPa以上であり、特に好ましくは5MPa以上である。結果は、実施例1は4.8MPa、実施例4が5.5MPa、比較例1が2.7MPaであった。この結果より、本発明に係るエポキシ樹脂接着剤組成物は、アルミニウムだけでなく亜鉛に対しても高温高湿環境下での優れた接着力を有することが確認できたので、両性金属全般に対して効果を有することがわかった。
【0043】
<(4)貯蔵安定性確認試験>
表1の実施例1のA剤、B剤を25℃で2ヶ月保存した後に、前記(1)85℃×85%RH高温高湿環境試験後のAL/AL引張せん断接着強さ試験と同様の試験を行った。本発明において信頼性の観点から16MPa以上が好ましく、さらに好ましくは、18MPa以上であり、特に好ましくは19MPa以上である。実施例1の結果は、19.8MPaであり、初期から変化していなかった。そのため、本発明は貯蔵安定性が優れることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、85℃×85%RHという高温高湿環境試験後の接着力が優れるエポキシ樹脂接着剤組成物なので、各種接着剤用途に使用することが可能である。特に、長期間野外環境に放置されるインフラ部品用接着剤として有効であることから産業上有用である。