(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055688
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】生成装置及び生成方法
(51)【国際特許分類】
B01J 8/02 20060101AFI20240411BHJP
C07C 1/12 20060101ALN20240411BHJP
C07C 9/04 20060101ALN20240411BHJP
【FI】
B01J8/02 E
C07C1/12
C07C9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162809
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八巻 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】大野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】森山 忠浩
(72)【発明者】
【氏名】越後 拓海
(72)【発明者】
【氏名】嶋▲崎▼ 伸吾
【テーマコード(参考)】
4G070
4H006
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB07
4G070BB05
4G070CA06
4G070CA11
4G070CA25
4G070CB17
4G070CC03
4G070CC06
4G070DA23
4H006AA04
4H006BD81
(57)【要約】
【課題】反応塔内の触媒の加熱に要する時間を短縮する技術を提供する。
【解決手段】生成装置は、触媒における原料ガスの発熱反応によって製品ガスを生成する反応塔と、原料ガスを加熱して反応塔へ供給する原料ガス供給部と、を備え、反応塔は、触媒が充填され、原料ガスが流入する反応槽と、反応槽の外周の一部を覆い、熱媒体が流れるジャケット部分と、反応槽の外周の他の一部を覆う断熱部材とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒における原料ガスの発熱反応によって製品ガスを生成する反応塔と、
前記原料ガスを加熱して前記反応塔へ供給する原料ガス供給部と、
を備え、
前記反応塔は、前記触媒が充填され、前記原料ガスが流入する反応槽と、前記反応槽の外周の一部を覆い、熱媒体が流れるジャケット部分と、前記反応槽の外周の他の一部を覆う断熱部材とを有する、
生成装置。
【請求項2】
前記断熱部材は、前記反応槽における前記原料ガスが流入する部分から中央部分に向かって所定部分までの外周を覆っている、
請求項1に記載の生成装置。
【請求項3】
前記反応塔に前記熱媒体を送る送出ポンプを備え、
前記反応塔への前記原料ガスの供給が開始された後に、前記送出ポンプを起動して前記反応塔に前記熱媒体が送られる、
請求項1に記載の生成装置。
【請求項4】
前記原料ガス供給部は、前記反応塔内の温度に基づいて、前記原料ガスの前記反応塔への供給流量を決定する、
請求項1に記載の生成装置。
【請求項5】
前記原料ガス供給部は、前記反応槽における前記断熱部材によって覆われた部分の前記触媒の温度が所定温度以上である場合、前記原料ガスの前記反応塔への供給流量を徐々に増加する、
請求項1に記載の生成装置。
【請求項6】
前記反応塔から送出される未反応の前記原料ガスを燃焼する燃焼部を備え、
前記反応塔へ供給される前記原料ガス及び前記ジャケット部分に流入する前記熱媒体の少なくとも一方が、未反応の前記原料ガスの燃焼熱により加熱される、
請求項1に記載の生成装置。
【請求項7】
第2触媒における前記原料ガスの発熱反応によって前記製品ガスを生成する第2反応塔と、
前記熱媒体が流れる循環経路に設けられた循環ポンプと、
を備え、
前記反応塔から送出される前記製品ガスおよび未反応の前記原料ガスの少なくとも一方が前記第2反応塔内に供給され、
前記反応塔内の温度が所定温度以上である場合、前記循環ポンプを起動して前記熱媒体を前記反応塔と前記第2反応塔との間で循環させ、
前記反応塔内の容量は、前記第2反応塔内の容量よりも小さい、
請求項1から6の何れか一項に記載の生成装置。
【請求項8】
前記原料ガス供給部による前記原料ガスの供給先を前記反応塔と前記第2反応塔との間で切り替える切り替え部を備え、
前記切り替え部は、前記原料ガス供給部による前記原料ガスの前記供給先を前記反応塔から前記第2反応塔に切り替える、
請求項7に記載の生成装置。
【請求項9】
第1触媒における原料ガスの発熱反応によって製品ガスを生成する反応塔と、
第2触媒における前記原料ガスの発熱反応によって前記製品ガスを生成するブースト用反応塔と、
前記原料ガスを加熱して前記ブースト用反応塔へ供給する原料ガス供給部と、
熱媒体が流れる循環経路に設けられた循環ポンプと、
を備え、
前記ブースト用反応塔は、前記第2触媒が充填され、前記原料ガスが流入する反応槽と、前記反応槽の外周の一部を覆い、前記熱媒体が流れるジャケット部分と、前記反応槽の外周の他の一部を覆う断熱部材とを有し、
前記ブースト用反応塔から送出される前記製品ガスおよび未反応の前記原料ガスの少なくとも一方が前記反応塔内に供給され、
前記ブースト用反応塔内の温度が所定温度以上である場合、前記循環ポンプを起動して前記熱媒体を前記反応塔と前記ブースト用反応塔との間で循環させ、
前記ブースト用反応塔内の容量は、前記反応塔内の容量よりも小さい、
生成装置。
【請求項10】
触媒における原料ガスの発熱反応によって製品ガスを生成する反応塔を備える生成装置における製品ガスの生成方法であって、
前記原料ガスを加熱して前記反応塔へ供給する工程を含み、
前記反応塔は、前記触媒が充填され、前記原料ガスが流入する反応槽と、前記反応槽の外周の一部を覆い、熱媒体が流れるジャケット部分と、前記反応槽の外周の他の一部を覆う断熱部材とを有する、
生成方法。
【請求項11】
第1触媒における原料ガスの発熱反応によって製品ガスを生成する反応塔と、
第2触媒における前記原料ガスの発熱反応によって前記製品ガスを生成するブースト用反応塔と、
熱媒体が流れる循環経路に設けられた循環ポンプと、を備える生成装置における製品ガスの生成方法であって、
前記原料ガスを加熱して前記ブースト用反応塔へ供給する工程と、
前記ブースト用反応塔から送出される前記製品ガスおよび未反応の前記原料ガスの少なくとも一方を前記反応塔内に供給する工程と、
前記ブースト用反応塔内の温度が所定温度以上である場合、前記循環ポンプを起動して前記熱媒体を前記反応塔と前記ブースト用反応塔との間で循環させる工程と、
を含み
前記ブースト用反応塔は、前記第2触媒が充填され、前記原料ガスが流入する反応槽と、前記反応槽の外周の一部を覆い、前記熱媒体が流れるジャケット部分と、前記反応槽の外周の他の一部を覆う断熱部材とを有し、
前記ブースト用反応塔内の容量は、前記反応塔内の容量よりも小さい、
生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成装置及び生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、気体状態の反応物の発熱反応によって、製品ガスを生成させる生成装置及び生成方法に関する技術が開示されている。例えば、特許文献2には、メタネーション反応器に供給される原料ガスを予熱するシステムに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6984098号公報
【特許文献2】特許第6299347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製品ガスの生成に用いる反応塔内には触媒が充填されている。ヒーターで熱媒体を加熱して反応塔内を循環させることで、反応塔内の触媒の温度を製品ガスの生成開始に必要な温度に昇温している。熱媒体により反応塔内の触媒全体を昇温するには大規模なヒーターが必要になると共に、熱媒体の加熱に時間を要している。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、反応塔内の触媒の加熱に要する時間を短縮することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明は、触媒における原料ガスの発熱反応によって製品ガスを生成する反応塔と、前記原料ガスを加熱して前記反応塔へ供給する原料ガス供給部と、を備え、前記反応塔は、前記触媒が充填され、前記原料ガスが流入する反応槽と、前記反応槽の外周の一部を覆い、熱媒体が流れるジャケット部分と、前記反応槽の外周の他の一部を覆う断熱部材とを有する、生成装置である。
【0007】
上記生成装置によれば、原料ガスを加熱し、加熱した原料ガスにより反応塔内の触媒を昇温するため、加熱された原料ガスと触媒との直接的な接触により、触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間が短くなる。したがって、反応塔内の触媒の加熱に要する時間を短縮することができる。また、触媒が充填されている反応槽の外周の一部を断熱部材が覆うことで、反応槽の外周が断熱されている。これにより、反応塔に対する加熱した原料ガスの供給時において、反応塔内の触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間が短くなり、反応塔内の触媒の加熱に要する時間を短縮することができる。
【0008】
前記断熱部材は、前記反応槽における前記原料ガスが流入する部分から中央部分に向かって所定部分までの外周を覆ってもよい。これにより、反応槽における原料ガスが流入する部分の近傍の外周が断熱される。反応槽における原料ガスが流入する部分の近傍にヒートスポットが発生している場合、ヒートスポットを覆うように断熱することで、反応塔内の触媒の昇温を効率的に行うことが可能となる。
【0009】
上記生成装置は、前記反応塔に前記熱媒体を送る送出ポンプを備え、前記反応塔への前記原料ガスの供給が開始された後に、前記送出ポンプを起動して前記反応塔に前記熱媒体
が送られてもよい。これにより、反応塔への原料ガスの供給の開始後に、反応塔に熱媒体を送ることが可能となる。例えば、十分に加熱されていない熱媒体が反応塔のジャケット部分に流入しても、反応槽における断熱部材によって覆われた部分により触媒の温度が維持されるため、反応塔内の発熱反応を維持することが可能である。
【0010】
前記原料ガス供給部は、前記反応塔内の温度に基づいて、前記原料ガスの前記反応塔への供給流量を決定してもよい。これにより、適切な供給流量で反応塔に原料ガスを供給することができる。
【0011】
前記原料ガス供給部は、前記反応槽における前記断熱部材によって覆われた部分の前記触媒の温度が所定温度以上である場合、前記原料ガスの前記反応塔への供給流量を徐々に増加してもよい。これにより、原料ガスの発熱反応が促進され、製品ガスの生成量が増加する。
【0012】
上記生成装置は、前記反応塔から送出される未反応の前記原料ガスを燃焼する燃焼部を備え、前記反応塔へ供給される前記原料ガス及び前記ジャケット部分に流入する前記熱媒体の少なくとも一方が、未反応の前記原料ガスの燃焼熱により加熱されてもよい。これにより、未反応の原料ガスの燃焼熱を利用して、反応塔へ供給される原料ガス及びジャケット部分に流入する熱媒体の少なくとも一方を加熱することが可能であり、未反応の原料ガスを有効利用することができる。
【0013】
上記生成装置は、触媒における前記原料ガスの発熱反応によって前記製品ガスを生成する第2反応塔と、前記熱媒体が流れる循環経路に設けられた循環ポンプと、を備え、前記反応塔から送出される前記製品ガスおよび未反応の前記原料ガスの少なくとも一方が前記第2反応塔内に供給され、前記反応塔内の温度が所定温度以上である場合、前記循環ポンプを起動して前記熱媒体を前記反応塔と前記第2反応塔との間で循環させ、前記反応塔内の容量は、前記第2反応塔内の容量よりも小さくてもよい。反応塔内の容量は、第2反応塔内の容量よりも小さいため、反応塔内の触媒の加熱に要する時間を短縮することができる。熱媒体を反応塔と第2反応塔との間で循環させることで、反応塔内の触媒の発熱反応で加熱された熱媒体を第2反応塔に送ることができる。
【0014】
上記生成装置は、前記原料ガス供給部による前記原料ガスの供給先を前記反応塔と前記第2反応塔との間で切り替える切り替え部を備え、前記切り替え部は、前記原料ガス供給部による前記原料ガスの前記供給先を前記反応塔から前記第2反応塔に切り替えてもよい。これにより、第2反応塔に原料ガスが供給され、第2反応塔で製品ガスが生成される。
【0015】
また、本発明は、第1触媒における原料ガスの発熱反応によって製品ガスを生成する反応塔と、第2触媒における前記原料ガスの発熱反応によって前記製品ガスを生成するブースト用反応塔と、前記原料ガスを加熱して前記ブースト用反応塔へ供給する原料ガス供給部と、熱媒体が流れる循環経路に設けられた循環ポンプと、を備え、前記ブースト用反応塔は、前記第2触媒が充填され、前記原料ガスが流入する反応槽と、前記反応槽の外周の一部を覆い、前記熱媒体が流れるジャケット部と、前記反応槽の外周の他の一部を覆う断熱部材とを有し、前記ブースト用反応塔から送出される前記製品ガスおよび未反応の前記原料ガスの少なくとも一方が前記反応塔内に供給され、前記ブースト用反応塔内の温度が所定温度以上である場合、前記循環ポンプを起動して前記熱媒体を前記反応塔と前記ブースト用反応塔との間で循環させ、前記ブースト用反応塔内の容量は、前記反応塔内の容量よりも小さい、生成装置であってもよい。
【0016】
上記生成装置によれば、原料ガスを加熱し、加熱した原料ガスによりブースト用反応塔内の第2触媒を昇温するため、第2触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間が短く
なる。したがって、ブースト用反応塔内の第2触媒の加熱に要する時間を短縮することができる。また、断熱部材が反応槽の外周の一部を覆うことで、反応槽の外周が断熱されている。これにより、ブースト用反応塔内に対する加熱した原料ガスの供給時において、ブースト用反応塔内の第2触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間が短くなり、ブースト用反応塔内の第2触媒の加熱に要する時間を短縮することができる。ブースト用反応塔内の容量は、第2反応塔内の容量よりも小さいため、ブースト用反応塔内の第2触媒の加熱に要する時間を短縮することができる。
【0017】
また、本発明は、方法の側面から捉えることもできる。すなわち、本発明は、触媒における原料ガスの発熱反応によって製品ガスを生成する反応塔を備える生成装置における製品ガスの生成方法であって、前記原料ガスを加熱して前記反応塔へ供給する工程を含み、前記反応塔は、前記触媒が充填され、前記原料ガスが流入する反応槽と、前記反応槽の外周の一部を覆い、熱媒体が流れるジャケット部分と、前記反応槽の外周の他の一部を覆う断熱部材とを有する、生成方法であってもよい。
【0018】
上記生成方法によれば、原料ガスを加熱し、加熱した原料ガスにより反応塔内の触媒を昇温するため、触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間が短くなる。したがって、反応塔内の触媒の加熱に要する時間を短縮することができる。また、断熱部材が反応槽の外周の一部を覆うことで、反応槽の外周が断熱されている。これにより、反応塔に対する加熱した原料ガスの供給時において、反応塔内の触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間が短くなり、反応塔内の触媒の加熱に要する時間を短縮することができる。
【0019】
また、本発明は、第1触媒における原料ガスの発熱反応によって製品ガスを生成する反応塔と、第2触媒における前記原料ガスの発熱反応によって前記製品ガスを生成するブースト用反応塔と、熱媒体が流れる循環経路に設けられた循環ポンプと、を備える生成装置における製品ガスの生成方法であって、前記原料ガスを加熱して前記ブースト用反応塔へ供給する工程と、前記ブースト用反応塔から送出される前記製品ガスおよび未反応の前記原料ガスの少なくとも一方を前記反応塔内に供給する工程と、前記ブースト用反応塔内の温度が所定温度以上である場合、前記循環ポンプを起動して前記熱媒体を前記反応塔と前記ブースト用反応塔との間で循環させる工程と、を含み、前記ブースト用反応塔は、前記第2触媒が充填され、前記原料ガスが流入する反応槽と、前記反応槽の外周の一部を覆い、前記熱媒体が流れるジャケット部分と、前記反応槽の外周の他の一部を覆う断熱部材とを有し、前記ブースト用反応塔内の容量は、前記反応塔内の容量よりも小さい、生成方法であってもよい。
【0020】
上記生成方法によれば、原料ガスを加熱し、加熱した原料ガスによりブースト用反応塔内の第2触媒を昇温するため、第2触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間が短くなる。したがって、ブースト用反応塔内の第2触媒の加熱に要する時間を短縮することができる。また、断熱部材が反応槽の外周の一部を覆うことで、反応槽の外周が断熱されている。これにより、ブースト用反応塔内に対する加熱した原料ガスの供給時において、ブースト用反応塔内の第2触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間が短くなり、ブースト用反応塔内の第2触媒の加熱に要する時間を短縮することができる。ブースト用反応塔内の容量は、第2反応塔内の容量よりも小さいため、ブースト用反応塔内の第2触媒の加熱に要する時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0021】
反応塔内の触媒の加熱に要する時間を短縮することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る生成装置の構成図である。
【
図2】
図2(A)及び
図2(B)は、反応塔の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る生成装置の運転手順の流れを示すフロー図である。
【
図4】
図4は、運転開始後の反応塔内の温度分布の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る生成装置の構成図である。
【
図6】
図6(A)は、ブースト用反応塔の構成の一例を示す図である。
図6(B)は、反応塔の構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る生成装置の構成図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る生成装置の運転手順の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0024】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る生成装置の構成図である。
図1に示す生成装置100は、例えば、原料ガス(反応ガス)である気体状態の水素と二酸化炭素の発熱反応によって、製品ガスであるメタンガスと、水とを生成させる。また、上記の化学反応は可逆反応でもある。上記の発熱反応を化学反応式で表すと下記の通りである。
【0025】
4H2+CO2⇔CH4+2H2O (1)
生成装置100は、一段目の反応塔(反応器)1と、一段目のガス冷却用熱交換器2と、二段目の反応塔(反応器)3と、二段目のガス冷却用熱交換器4と、熱媒体用熱交換器5と、気液分離器6、7と、原料ガス供給部8とを備える。
【0026】
反応塔1は、触媒における原料ガスの発熱反応によって製品ガスを生成する。原料ガスは、例えば、水素(H2)及び二酸化炭素(CO2)を含む。製品ガスは、例えば、メタンガスである。反応塔1と原料ガス供給部8とが配管によって接続され、原料ガスが原料ガス供給部8から反応塔1内に供給される。また、反応塔1は、触媒における原料ガスの発熱反応によって生成水を生成する。反応塔1とガス冷却用熱交換器2とが接続されている。反応塔1とガス冷却用熱交換器2とを接続する経路には、配管やバルブなどが設けられている。
【0027】
ガス冷却用熱交換器2は、反応塔1において生成された生成水(水蒸気)を凝縮する。ガス冷却用熱交換器2と気液分離器6とが接続されている。ガス冷却用熱交換器2と気液分離器6とを接続する経路には、配管やバルブなどが設けられている。気液分離器6は、製品ガス及び未反応の原料ガスから生成水(液体)を分離する。
【0028】
反応塔3と気液分離器6とが接続されている。反応塔3と気液分離器6とを接続する経路には、配管やバルブなどが設けられている。反応塔1で生成された製品ガス及び未反応の原料ガスは、ガス冷却用熱交換器2及び気液分離器6などを経由して反応塔3へ送られる。反応塔3は、触媒における原料ガスの発熱反応によって製品ガス及び生成水を生成する。反応塔3において未反応の原料ガスから製品ガスが生成されることで、生成装置100は、高濃度の製品ガスを生成することが可能となる。
【0029】
反応塔3とガス冷却用熱交換器4とが接続されている。反応塔3とガス冷却用熱交換器4とを接続する経路には、配管やバルブなどが設けられている。ガス冷却用熱交換器4は、反応塔3において生成された生成水(水蒸気)を凝縮する。ガス冷却用熱交換器4と気
液分離器7とが接続されている。ガス冷却用熱交換器4と気液分離器7とを接続する経路には、配管やバルブなどが設けられている。気液分離器7は、製品ガス及び未反応の原料ガスから生成水(液体)を分離する。
【0030】
生成装置100は貯留タンク9を備える。気液分離器7から貯留タンク9に製品ガスが送られる。貯留タンク9は、製品ガスを貯留する。気液分離器6及び7には、生成水を排出するための水抜き弁10が設けられている。水抜き弁10は、ドレントラップのような浮き具の浮力を用いて弁を開閉させるものでもよいし、あるいは電気的に水位を探知して電磁弁を開閉するものでもよい。
【0031】
反応塔1及び3には、予め触媒が充填されている。触媒は、反応式(1)を促進する触媒ではあれば何でもよく、例えば、安定化元素が固溶し、正方晶系、及び、又は、立方晶系の結晶構造を有する安定化ジルコニア担体と、安定化ジルコニア担体に担持されるNiと、を備え、安定化元素は、Mn、FeおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種の遷移元素からなる触媒が挙げられる。
【0032】
また、反応塔1及び3はジャケット構造になっており、ジャケット部分(シェル)には発熱反応が生じる反応塔内の発熱部分と熱交換する熱媒体が流出入可能となっている。反応塔1及び3のジャケット部分に熱媒体が流入することで、反応塔1及び3内を熱媒体が循環する。熱媒体には、例えば熱媒油を用いる。反応塔1のジャケット部分と反応塔3のジャケット部分とが、熱媒体が流れる配管によって接続されている。熱媒体が流れる配管には、バルブなどが設けられている。
【0033】
反応塔1のジャケット部分と熱媒体用熱交換器5とが、熱媒体が流れる配管によって接続されている。反応塔3のジャケット部分と熱媒体用熱交換器5とが、熱媒体が流れる配管によって接続されている。熱媒体用熱交換器5は、反応塔1及び3を通った熱媒体を冷却する。反応塔1のジャケット部分と熱媒体用熱交換器5とを接続する配管には、反応塔1に熱媒体を送る送出ポンプ11が設けられている。また、熱媒体が流れる配管には調整弁12及び13が設けられている。調整弁12及び13を開閉することにより、反応塔1及び3を通った熱媒体を、熱媒体用熱交換器5を経由して反応塔1に送ったり、熱媒体用熱交換器5を経由せずに反応塔1に送ったりすることができる。
【0034】
生成装置100は、チラー14を備える。チラー14は、ガス冷却用熱交換器2及び4において生成水を凝縮させるための冷却水(冷媒)を冷却する。ガス冷却用熱交換器2、4及びチラー14は、冷却水が流れる配管によって相互に接続されている。チラー14によって冷却された冷却水は、ガス冷却用熱交換器2及び4を経由してチラー14に戻る。
【0035】
生成装置100は、冷却塔15及び冷却水循環ポンプ16を備える。冷却塔15は、熱媒体用熱交換器5において熱媒体と熱交換する冷却水を冷却する。例えば、系外から冷却塔15に供給される水道水を冷却水として用いてもよい。冷却水循環ポンプ16は、冷却塔15内に供給された冷却水を、熱媒体用熱交換器5と冷却塔15との間で循環させる。
【0036】
生成装置100は、制御部17と、反応塔1内の温度を測定する測定センサ18と、反応塔3内の温度を測定する測定センサ19とを備える。測定センサ18によって測定された測定データ及び測定センサ19によって測定された測定データは、原料ガス供給部8及び制御部17に送られる。これにより、原料ガス供給部8及び制御部17は、反応塔1内の温度及び反応塔3内の温度を取得する。
【0037】
制御部17は、生成装置100の動作全体を制御するコントローラである。制御部17は、専用の機器により構成してもよいし、汎用のコンピュータにより構成してもよい。制
御部17は、プロセッサ(CPU)、メモリ、ストレージ、通信I/Fなどのハードウェア資源を備えている。メモリは、RAMであってもよい。ストレージは、不揮発性の記憶装置(例えばROM、フラッシュメモリなど)であってもよい。制御部17の機能は、ストレージに格納されたプログラムをメモリに展開しプロセッサによって実行することにより実現される。なお、制御部17の構成はこれらに限られない。例えば、機能の全部又は一部をASICやFPGAなどの回路で構成してもよいし、あるいは、機能の全部又は一部をクラウドサーバや他の装置で実行してもよい。
【0038】
制御部17は、調整弁12及び13を制御する。調整弁12が開かれ、調整弁13が閉じられることで、熱媒体が熱媒体用熱交換器5を経由して反応塔1に送られることで、熱媒体に対する冷却が行われる。したがって、冷却後の熱媒体が反応塔1に送られる。調整弁12が閉じられ、調整弁13が開かれることで、熱媒体が熱媒体用熱交換器5を経由せずに反応塔1に送られることで、熱媒体に対する冷却の停止が行われる。
【0039】
原料ガス供給部8は、原料ガスを加熱して反応塔1へ供給する。制御部17は、原料ガス供給部8を制御する。原料ガス供給部8の動作が制御されることで、原料ガス供給部8は、反応塔1への原料ガスの供給を開始する。また、原料ガス供給部8は、制御部17と独立して動作してもよい。
【0040】
原料ガス供給部8は、ガス貯留部21と、ガス加熱部22と、ガスミキサ23とを有する。ガス貯留部21は、原料ガスを貯留する。ガス加熱部22は、原料ガス供給部8から反応塔1に供給される原料ガスを加熱する。ガス加熱部22は、例えば、ヒーター、ヒートポンプ、断熱圧縮機等であるが、これらに限定されない。ガス加熱部22は、ガス貯留部21に貯留された原料ガスを加熱してもよいし、外部から原料ガス供給部8に入ってくる原料ガスを加熱してもよい。また、ガス加熱部22は、原料ガスに含まれる水素を加熱してもよい。ガス加熱部22の動作が制御されることで、ガス加熱部22は、原料ガスに対する加熱を行い、又は、原料ガスに対する加熱を停止する。このように、ガス加熱部22を用いて原料ガスに対する加熱や加熱の停止が行われる。ガスミキサ23は、反応塔1に供給される原料ガスを均一に混ぜる。
【0041】
生成装置100は、調整弁24、25と、エコノマイザー26、27と、を備える。原料ガス供給部8から反応塔1に供給される原料ガスの供給経路に、調整弁24、25及びエコノマイザー26が設けられている。制御部17は、調整弁24及び25を制御する。調整弁24が閉じられ、調整弁25が開かれることで、原料ガスがエコノマイザー26を経由して反応塔1に供給される。調整弁24が開かれ、調整弁25が閉じられることで、原料ガスがエコノマイザー26を経由せずに反応塔1に供給される。
【0042】
エコノマイザー26において、反応塔1へ供給する原料ガスと、反応塔1から送出される送出ガスとの間で熱交換が行われる。送出ガスは、製品ガス、未反応の原料ガス、又は、製品ガスと未反応の原料ガスとの混合ガスである。したがって、送出ガスは、製品ガス及び未反応の原料ガスのうちの少なくとも一方を含む。反応塔1への原料ガスの供給を開始した時点では、反応塔1から送出ガスが送出されていない。そのため、反応塔1への原料ガスの供給開始直後では、原料ガスをエコノマイザー26に通さずに反応塔1に供給し、反応塔1から送出ガスが送出され始めた時点又は反応塔1から送出ガスが送出されてから一定時間経過後に、原料ガスをエコノマイザー26に通して反応塔1に供給してもよい。反応塔3と気液分離器6との間にエコノマイザー27が設けられている。エコノマイザー27において、反応塔3へ送られる送出ガスと、反応塔3から送出される送出ガスとの間で熱交換が行われる。
【0043】
図2(A)は、反応塔1の構成の一例を示す図である。
図2(A)には、反応塔1の断
面が示されている。反応塔1は、触媒が充填された反応槽31と、反応槽31の下部を囲むようにして設けられたジャケット部分32と、反応槽31の上部を囲むようにして設けられた断熱部材33とを備える。反応槽31は、触媒が充填された複数の反応管が立設した構造を有している。反応槽31の一方の端部から反応槽31の他方の端部に向かって複数の反応管が延びている。反応槽31の入口端部から加熱された原料ガスが反応槽31に流入し、反応槽31の出口端部から送出ガスが流出する。送出ポンプ11が停止しており、熱媒体が反応塔1と反応塔3との間で循環していない場合、熱媒体はジャケット部分32内で滞留している。送出ポンプ11が起動し、熱媒体が反応塔1と反応塔3との間で循環している場合、熱媒体はジャケット部分32内を流れる。
【0044】
断熱部材33の材料は、断熱効果を有する材料であれば特に限定されない。また、断熱部材33として、マントルヒーターを使用してもよい。マントルヒーターは、断熱効果を有すると共に、反応槽31の触媒を加熱する。断熱部材33は、反応槽31の上部を囲むようにして設けられている。例えば、反応槽31の入口端部の近傍における反応槽31の外周の一部を断熱部材33が覆っている。このため、反応槽31における原料ガスが流入する部分(入口端部)から中央部分に向かって所定部分までの外周を断熱部材33が覆っている。上記の例に限定されず、断熱部材33は、反応槽31のヒートスポットの近傍の少なくとも一部を覆っていてもよい。また、断熱部材33は、反応槽31のヒートスポットの上流側の少なくとも一部を覆っていてもよい。反応槽31の外周における断熱部材33で覆われていない箇所にはジャケット部分32が配置されている。このように、ジャケット部分32が反応槽31の外周の一部を覆い、断熱部材33が反応槽31の外周の他の一部を覆っている。反応槽31の発熱部分とジャケット部分32内の熱媒体との間で熱交換が行われる。すなわち、反応槽31で発生した反応熱がジャケット部分32内の熱媒体に伝わり、熱媒体が加熱される。
【0045】
図2(B)は、反応塔3の構成の一例を示す図である。
図2(B)には、反応塔3の断面が示されている。反応塔3は、触媒が充填された反応槽34と、反応槽34を囲むようにして設けられたジャケット部分35とを備える。反応槽34は、触媒が充填された複数の反応管が立設した構造を有している。反応槽34の一方の端部から反応槽34の他方の端部に向かって複数の反応管が延びている。反応槽34の入口端部から送出ガスが反応槽34に流入し、反応槽34の出口端部から送出ガスが流出する。
【0046】
送出ポンプ11が停止しており、熱媒体が反応塔1と反応塔3との間で循環していない場合、熱媒体はジャケット部分35内で滞留している。送出ポンプ11が起動し、熱媒体が反応塔1と反応塔3との間で循環している場合、熱媒体はジャケット部分35内を流れる。反応槽34の発熱部分とジャケット部分35内の熱媒体との間で熱交換が行われる。すなわち、反応槽34で発生した反応熱がジャケット部分35内の熱媒体に伝わり、熱媒体が加熱される。
【0047】
測定センサ18は、反応塔1から送出される送出ガスの温度及びジャケット部分32内の熱媒体の温度の少なくとも一方を、反応塔1内の温度として測定してもよい。測定センサ19は、反応塔3から送出される送出ガスの温度及びジャケット部分35内の熱媒体の温度の少なくとも一方を、反応塔3内の温度として測定してもよい。
【0048】
<運転手順>
第1実施形態に係る生成装置100の運転手順を説明する。
図3は、第1実施形態に係る生成装置100の運転手順の流れを示すフロー図である。まず、ステップS101において、原料ガス供給部8が起動され、原料ガス供給部8は反応塔1への原料ガスの供給を開始する。次に、ステップS102において、原料ガス供給部8が原料ガスを加熱して反応塔1に供給する。加熱された原料ガスが反応塔1に供給されることにより、反応槽31
の入口端部から加熱された原料ガスが流入する。加熱された原料ガスが反応槽31に流入し、反応槽31における断熱部材33によって覆われた部分(断熱部分)における触媒の温度が、加熱された原料ガスにより上昇する。触媒の温度が反応開始温度に達し、反応槽31に流入した原料ガスの発熱反応によって製品ガス及び生成水が生成される。また、加熱された原料ガスにより反応塔1内の熱媒体が加熱される。
【0049】
原料ガスの供給開始から触媒の温度が反応開始温度に達するまでは、触媒によって原料ガスの発熱反応が起こり易くなるように、原料ガスの供給流量を少なくすることが好ましい。したがって、原料ガスの供給開始から触媒の温度が反応開始温度に達するまでにおける原料ガスの供給流量(第1供給流量)は、製品ガスを生成する際の原料ガスの定格供給流量(第2供給流量)よりも少ない流量である。原料ガス供給部8又は制御部17は、反応塔1内の温度に基づいて、反応塔1への原料ガスの供給流量を決定してもよい。また、原料ガス供給部8又は制御部17は、反応槽31における断熱部材33によって覆われた部分の触媒の温度に基づいて、反応塔1への原料ガスの供給流量を決定してもよい。第1供給流量は、反応槽31における断熱部材33によって覆われた部分における触媒が原料ガスの発熱反応を顕著に促進するような流量であってもよい。このように、反応塔1内の温度に基づいて、反応塔1への原料ガスの供給流量を決定することで、適切な供給流量で反応塔1に原料ガスを供給することができる。
【0050】
S103において、原料ガス供給部8は、反応槽31における断熱部材33によって覆われた部分の触媒の温度が所定温度(T1)以上である場合、原料ガスの供給流量を徐々に増加し、かつ、原料ガスの加熱を停止する。原料ガス供給部8は、原料ガスの供給流量を徐々に増加する制御を行った後に、原料ガスの加熱を停止してもよい。また、原料ガス供給部8は、原料ガスの加熱を停止した後に、原料ガスの供給流量を徐々に増加する制御を行ってもよい。所定温度(T1)は、例えば、180℃であるが、この温度に限定されず、実験結果、シミュレーション結果等に基づいて求めてもよい。
【0051】
反応槽31における断熱部材33によって覆われた部分の触媒の温度が所定温度(T1)に達することで、原料ガスの発熱反応が起こりやすくなり、反応塔1内における自立的な発熱反応が開始される。したがって、反応槽31における断熱部材33によって覆われた部分の触媒の温度が所定温度(T1)に達した後は、原料ガスの供給流量を徐々に増加することで、原料ガスの発熱反応が促進され、製品ガスの生成量が増加する。また、反応槽31における断熱部材33によって覆われた部分の触媒の温度が所定温度(T1)以上である場合に、反応塔1に加熱した原料ガスを供給すると、反応槽31の触媒が必要以上に昇温する可能性がある。原料ガスの加熱を停止することにより、反応槽31の触媒が必要以上に昇温することが抑止される。原料ガスの加熱を停止しても、反応槽31における断熱部材33によって覆われた部分の触媒の温度は所定温度(T1)を維持するため、反応塔1内の発熱反応が継続される。原料ガスの加熱を停止した後は、反応塔1内の発熱反応のみで熱媒体が加熱される。
【0052】
ステップS104において、原料ガス供給部8は、原料ガスの供給流量が第2供給流量(定格供給流量)に達するまで、原料ガスの供給流量を増加し、原料ガスの供給流量を一定に保持する。原料ガスの供給流量が定格供給流量に保持されることで、反応塔1から製品ガスが安定的に送出される。
【0053】
制御部17は、
図3におけるフローチャートのステップS101~S104の間の所定のタイミングで、送出ポンプ11を起動して熱媒体を反応塔1と反応塔3との間で循環させる。熱媒体が反応塔1のジャケット部分32を流れることで反応塔1を通る。反応塔1を通った熱媒体は、反応塔3のジャケット部分35へ送られ、反応塔3を通る。反応塔3を通る熱媒体は反応塔1によって加熱されている。加熱された熱媒体が反応塔3を通るこ
とで、反応塔3内の温度が上昇する。例えば、十分に加熱されていない熱媒体が反応塔1のジャケット部分32に流入しても、反応槽31における断熱部材33によって覆われた部分により触媒の温度が維持されるため、反応塔1内の発熱反応を維持できる。
【0054】
制御部17は、反応塔1から送出される送出ガスの温度及びジャケット部分32内の熱媒体の温度の少なくとも一方と閾値温度とを比較し、比較結果に基づいて、送出ポンプ11を起動するタイミングを決定してもよい。
【0055】
生成装置100は、燃焼部28と、調整弁29、30と、を備える。燃焼部28は、反応塔1から送出される未反応の原料ガスを燃焼する。反応塔1へ供給される原料ガス及びジャケット部分32に流入する熱媒体の少なくとも一方が、未反応の原料ガスの燃焼熱により加熱される。未反応の原料ガスの燃焼熱を利用して、反応塔1へ供給される原料ガス及びジャケット部分32に流入する熱媒体の少なくとも一方を加熱することが可能であり、未反応の原料ガスを有効利用することができる。制御部17は、調整弁29及び30を制御する。調整弁29が開かれ、調整弁30が閉じられることで、反応塔1から送出される未反応の原料ガスが燃焼部28に流入する。調整弁29が閉じられ、調整弁30が開かれることで、反応塔1から送出される送出ガスがガス冷却用熱交換器2に流入する。
【0056】
反応塔1への原料ガスの供給が開始されてから所定タイミングまでは、反応塔1内の触媒の温度が反応開始温度に達しておらず、反応塔1から未反応の原料ガスが送出される。したがって、反応塔1への原料ガスの供給が開始されてから所定タイミングまでの間、反応塔1から送出される未反応の原料ガスを燃焼部28に流入させてもよい。また、生成装置100は、熱媒体を貯留するための熱媒体タンクを備えてもよい。
【0057】
第1実施形態に係る生成装置100では、原料ガスを加熱し、加熱された原料ガスにより反応塔1の触媒を昇温する。原料ガスの比熱は小さいため、熱媒体を加熱する場合と比較して、原料ガスの加熱は容易である。第1実施形態に係る生成装置100では、断熱部材33が反応槽31の外周の所定部分を覆うことで、反応槽31の入口端部の近傍の外周が断熱されている。これにより、反応塔1に対する加熱した原料ガスの供給時において、反応塔1内の触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間が短くなり、反応塔1内の触媒の加熱に要する時間を短縮することができる。例えば、熱媒体として熱媒油を用いる場合、低温の熱媒油は粘性が高く、流動性が悪いため、反応塔内を循環するのに時間を要する。このため、ヒーターにより熱媒体を加熱し、加熱された熱媒体を反応塔に通して触媒を昇温する場合、触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間は長くなる。
【0058】
第1実施形態に係る生成装置100によれば、原料ガスを加熱し、加熱した原料ガスにより反応塔1内の触媒を昇温するため、触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間が短くなる。したがって、反応塔1内の触媒の加熱に要する時間を短縮することができ、反応塔1への原料ガスの供給を開始してから反応塔1によって製品ガスを生成するまでの時間を短縮することができる。このように、第1実施形態に係る生成装置100によれば、熱媒体を加熱するヒーターを用いずに反応塔1内の触媒を温めることが可能となると共に、反応塔1の運転を開始するまでの時間を短縮することができる。また、第1実施形態に係る生成装置100によれば、熱媒体を加熱するヒーターを用いずに反応塔3内の触媒を温めることが可能となると共に、反応塔3の運転を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0059】
図4は、運転開始後の反応塔内の温度分布の一例を示す図である。
図4に示す参考例に係る反応塔では、触媒が充填された反応槽の外周全体をジャケット部分が覆っており、断熱部材を設けていない。
図4の縦軸は、参考例に係る反応塔内の温度(℃)を表し、
図4の横軸は、参考例に係る反応槽における原料ガスを供給する端部(入口端部)からの距離
(cm)を表している。
図4に示すように、参考例に係る反応槽の入口端部の近傍にヒートスポットが発生しており、参考例に係る反応槽の入口端部の近傍にピーク温度が存在している。
【0060】
図4に示すように、参考例に係る反応槽の入口端部の近傍における温度が、反応槽の出口端部に向かって下降している。これは、参考例に係る反応槽の入口端部の近傍で原料ガスが概ね反応してしまい、反応槽の出口端部に向かって触媒と反応する原料ガスが減少するためである。反応槽31の入口端部の近傍にヒートスポットが発生するため、反応槽31の入口端部から中央部分に向かって所定部分までの外周を断熱部材33が覆うことが好ましい。これにより、反応塔1内の触媒の昇温を効率的に行うことが可能となると共に、反応塔1内の発熱反応で発生した熱を熱媒体に効率的に伝えることが可能となる。また、反応塔1において、反応槽31における入口端部からヒートスポットが発生する部分までの範囲の外周を断熱部材33で覆うようにしてもよい。反応塔1において、反応槽31におけるヒートスポットが発生する部分の少なくとも一部の外周を断熱部材33で覆うようにしてもよい。反応塔1において、反応槽31におけるヒートスポットが発生する部分の近傍の少なくとも一部の外周を断熱部材33で覆うようにしてもよい。反応塔1において、反応槽31におけるヒートスポットが発生する部分の上流側の少なくとも一部の外周を断熱部材33で覆うようにしてもよい。ジャケット部分32が反応槽31の外周の一部を覆い、断熱部材33が反応槽31の外周の他の一部を覆うことで、反応塔1のスタートアップ時間を短縮することが可能となると共に、反応塔1内の温度が必要以上に高くなることを抑止しつつ反応塔1内の発熱反応を継続することが可能となる。反応塔1のスタートアップ時間は、反応塔1への原料ガスの供給を開始してから反応塔1によって製品ガスを生成するまでの時間である。
【0061】
例えば、反応槽31の外周の全体を断熱部材33が覆ったり、反応槽31の外周を断熱部材33が必要以上に覆ったりする場合、反応槽31で発生するヒートスポットの下流側の極度の温度上昇により触媒や反応管がダメージを受ける懸念がある。反応槽31における入口端部からヒートスポットが発生する部分までの範囲の外周を断熱部材33で覆うようにすることで、反応槽31で発生するヒートスポットの下流側における極度の温度上昇を抑制することができる。反応槽31の入口端部の近傍にヒートスポットが発生することにより、反応槽31の入口端部の近傍の触媒が他の箇所の触媒よりもダメージを受ける場合がある。反応槽31の入口端部の近傍にヒートスポットが発生する場合、反応槽31の入口端部の近傍の触媒の交換頻度を高くしてもよい。また、反応槽31の入口端部の近傍の触媒のみを交換することで、反応槽31の触媒全体を交換する場合と比較して、触媒交換費用を削減することができる。
【0062】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素については、第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。第1,第2実施形態に係る生成装置100を適宜組み合わせてもよい。
【0063】
図5は、第2実施形態に係る生成装置100の構成図である。
図5では、生成装置100の一部を示している。第1実施形態に係る生成装置100と比較して、第2実施形態に係る生成装置100は、反応塔1に替えて反応塔1Aを備える。また、第1実施形態に係る生成装置100と比較して、第2実施形態に係る生成装置100は、ブースト用反応塔41と、切り替え部42と、ガス冷却用熱交換器43と、気液分離器44と、測定センサ45と、循環ポンプ46とを更に備える。
【0064】
ブースト用反応塔41は、触媒における原料ガスの発熱反応によって製品ガスを生成する。原料ガス供給部8とブースト用反応塔41とが配管によって接続され、原料ガス供給
部8とブースト用反応塔41とを接続する配管の途中に切り替え部42が設けられている。切り替え部42は、例えば、三方弁である。切り替え部42は、原料ガス供給部8による原料ガスの供給先を反応塔1Aとブースト用反応塔41との間で切り替える。制御部17が、切り替え部42の切り替え制御を行ってもよい。原料ガス供給部8による原料ガスの供給先がブースト用反応塔41から反応塔1Aに切り替えられた場合、原料ガスが原料ガス供給部8から反応塔1A内に供給される。原料ガス供給部8による原料ガスの供給先が反応塔1Aからブースト用反応塔41に切り替えられた場合、原料ガスが原料ガス供給部8からブースト用反応塔41内に供給される。
【0065】
ブースト用反応塔41は、触媒における原料ガスの発熱反応によって製品ガス及び生成水を生成する。ブースト用反応塔41から送出される送出ガスが、ガス冷却用熱交換器43及び気液分離器44を経由して反応塔1Aへ送られ、反応塔1A内に供給される。反応塔1Aは、触媒における原料ガスの発熱反応によって製品ガス及び生成水を生成する。
【0066】
図6(A)は、ブースト用反応塔41の構成の一例を示す図である。
図6(A)には、ブースト用反応塔41の断面が示されている。ブースト用反応塔41は、触媒が充填された反応槽51と、反応槽51の下部を囲むようにして設けられたジャケット部分52と、反応槽51の上部を囲むようにして設けられた断熱部材53とを備える。反応槽51の入口端部から加熱された原料ガスが反応槽51に流入し、反応槽51の出口端部から送出ガスが流出する。循環ポンプ46が停止しており、熱媒体がブースト用反応塔41と反応塔1Aとの間で循環していない場合、熱媒体はジャケット部分52内で滞留している。循環ポンプ46が起動し、熱媒体がブースト用反応塔41と反応塔1Aとの間で循環している場合、熱媒体はジャケット部分52内を流れる。
【0067】
反応槽51の発熱部分とジャケット部分52内の熱媒体との間で熱交換が行われる。すなわち、反応槽51で発生した反応熱がジャケット部分52内の熱媒体に伝わり、熱媒体が加熱される。ブースト用反応塔41の構成は、第1実施形態に係る反応塔1と同様の構成であるが、ブースト用反応塔41内の容量は、反応塔1内の容量よりも小さい。また、ブースト用反応塔41内の容量は、反応塔1A内の容量よりも小さく、かつ、反応塔3内の容量よりも小さい。
【0068】
図6(B)は、反応塔1Aの構成の一例を示す図である。
図6(B)には、反応塔1Aの断面が示されている。反応塔1Aは、触媒が充填された反応槽54と、反応槽54を囲むようにして設けられたジャケット部分55とを備える。反応槽54の入口端部から送出ガスが反応槽54に流入し、反応槽54の出口端部から送出ガスが流出する。
【0069】
送出ポンプ11及び循環ポンプ46が停止し、熱媒体がブースト用反応塔41と反応塔1Aとの間で循環しておらず、かつ、熱媒体が反応塔1Aと反応塔3との間で循環していない場合、熱媒体はジャケット部分55内で滞留している。循環ポンプ46が起動し、熱媒体がブースト用反応塔41と反応塔1Aとの間で循環している場合、熱媒体はジャケット部分55内を流れる。或いは、送出ポンプ11が起動し、熱媒体が反応塔1Aと反応塔3との間で循環している場合、熱媒体はジャケット部分55内を流れる。反応槽54の発熱部分とジャケット部分55内の熱媒体との間で熱交換が行われる。すなわち、反応槽54で発生した反応熱がジャケット部分55内の熱媒体に伝わり、熱媒体が加熱される。
【0070】
ブースト用反応塔41の反応槽51、ジャケット部分52及び断熱部材53の各構成は、第1実施形態に係る反応塔1の反応槽31、ジャケット部分32及び断熱部材33の各構成と同様である。反応塔1Aの反応槽54及びジャケット部分55の各構成は、第1実施形態に係る反応塔3の反応槽34及びジャケット部分35の各構成と同様である。ただし、ブースト用反応塔41のジャケット部分52と反応塔1Aのジャケット部分55とが
接続されており、ブースト用反応塔41と反応塔1Aとの間で熱媒体が循環可能となっている。また、反応塔1Aのジャケット部分55と反応塔3のジャケット部分35とが接続されており、反応塔1Aと反応塔3との間で熱媒体が循環可能となっている。
【0071】
図7は、第2実施形態に係る生成装置100の構成図である。
図7では、生成装置100の一部を示している。
図7には、ブースト用反応塔41と、反応塔1A及び反応塔3を有する主回路反応群60とが示されている。主回路反応群60では、熱媒体が流れる循環経路に設けられた送出ポンプ11が動作することにより、熱媒体が反応塔1Aと反応塔3との間を循環する。循環ポンプ46は、ブースト用反応塔41と反応塔1Aとの間に配置され、熱媒体が流れる循環経路に設けられている。循環ポンプ46が動作することにより、熱媒体がブースト用反応塔41と反応塔1Aとの間を循環する。
【0072】
測定センサ18は、反応塔1A内の温度を測定し、測定センサ45は、ブースト用反応塔41内の温度を測定する。測定センサ18によって測定された測定データ及び測定センサ45によって測定された測定データは、原料ガス供給部8及び制御部17に送られる。これにより、原料ガス供給部8及び制御部17は、反応塔1A内の温度及びブースト用反応塔41内の温度を取得する。
【0073】
測定センサ18は、反応塔1Aから送出される送出ガスの温度及びジャケット部分55内の熱媒体の少なくとも一方を、反応塔1A内の温度として測定してもよい。測定センサ45は、ブースト用反応塔41から送出される送出ガスの温度及びジャケット部分52内の熱媒体の温度の少なくとも一方を、ブースト用反応塔41内の温度として測定してもよい。
【0074】
<運転手順>
第2実施形態に係る生成装置100の運転手順を説明する。
図8は、第2実施形態に係る生成装置100の運転手順の流れを示すフロー図である。まず、ステップS201において、原料ガス供給部8が起動され、原料ガス供給部8はブースト用反応塔41への原料ガスの供給を開始する。次に、ステップS202において、原料ガス供給部8が原料ガスを加熱してブースト用反応塔41に供給する。加熱された原料ガスがブースト用反応塔41に供給されることにより、反応槽51の入口端部から加熱された原料ガスが流入する。加熱された原料ガスが反応槽51に流入し、反応槽51における断熱部材53によって覆われた部分における触媒の温度が、加熱された原料ガスにより上昇する。触媒の温度が反応開始温度に達し、反応槽51に流入した原料ガスの発熱反応によって製品ガス及び生成水が生成される。
【0075】
原料ガスの供給開始から触媒の温度が反応開始温度に達するまでにおける原料ガスの供給流量(第1供給流量)は、製品ガスを生成する際の原料ガスの定格供給流量(第2供給流量)よりも少ない流量である。原料ガス供給部8又は制御部17は、ブースト用反応塔41内の温度に基づいて、ブースト用反応塔41への原料ガスの供給流量を決定してもよい。また、原料ガス供給部8又は制御部17は、反応槽51における断熱部材53によって覆われた部分の触媒の温度に基づいて、ブースト用反応塔41への原料ガスの供給流量を決定してもよい。第1供給流量は、反応槽51における断熱部材53によって覆われた部分における触媒が原料ガスの発熱反応を顕著に促進するような流量であることが好ましい。
【0076】
ステップS203において、原料ガス供給部8は、反応槽51における断熱部材53によって覆われた部分の触媒の温度が所定温度(T2)以上である場合、原料ガスの供給流量を徐々に増加し、かつ、原料ガスの加熱を停止する。原料ガス供給部8は、原料ガスの供給流量を徐々に増加する制御を行った後に、原料ガスの加熱を停止してもよい。また、
原料ガス供給部8は、原料ガスの加熱を停止した後に、原料ガスの供給流量を徐々に増加する制御を行ってもよい。所定温度(T2)は、例えば、180℃であるが、この温度に限定されず、実験結果、シミュレーション結果等に基づいて求めてもよい。
【0077】
反応槽51における断熱部材53によって覆われた部分の触媒の温度が所定温度(T2)に達することで、ブースト用反応塔41内における自立的な発熱反応が開始される。したがって、反応槽51における断熱部材53によって覆われた部分の触媒の温度が所定温度(T2)に達した後は、原料ガスの供給流量を徐々に増加することで、製品ガスの生成量が増加する。また、反応槽51における断熱部材53によって覆われた部分の触媒の温度が所定温度(T2)以上である場合に、ブースト用反応塔41に加熱した原料ガスを供給すると、反応槽51の触媒が必要以上に昇温する可能性がある。原料ガスの加熱を停止することにより、反応槽51の触媒が必要以上に昇温することが抑止される。
【0078】
ステップS204において、ブースト用反応塔41から送出される送出ガスの温度が所定温度(T3)以上である場合、制御部17は、循環ポンプ46を起動して熱媒体をブースト用反応塔41と反応塔1Aとの間で循環させる。熱媒体がブースト用反応塔41のジャケット部分52を流れることでブースト用反応塔41を通る。ブースト用反応塔41を通った熱媒体は、反応塔1Aのジャケット部分55へ送られ、反応塔1Aを通る。反応塔1Aを通る熱媒体はブースト用反応塔41によって加熱されている。加熱された熱媒体が反応塔1Aを通ることで、反応塔1A内の温度が上昇する。所定温度(T3)は、例えば、180℃であるが、この温度に限定されず、実験結果、シミュレーション結果等に基づいて求めてもよい。
【0079】
ステップS204において、ジャケット部分52内の熱媒体の温度が所定温度(T4)以上である場合、制御部17は、循環ポンプ46を起動して熱媒体をブースト用反応塔41と反応塔1Aとの間で循環させてもよい。所定温度(T4)は、例えば、180℃であるが、この温度に限定されず、実験結果、シミュレーション結果等に基づいて求めてもよい。
【0080】
ステップS205において、制御部17は、循環ポンプ46を起動して熱媒体を反応塔1Aと反応塔3との間で循環させる。反応塔1Aを通った熱媒体は、反応塔3のジャケット部分35へ送られ、反応塔3を通る。反応塔3を通る熱媒体は反応塔1Aによって加熱されている。加熱された熱媒体が反応塔3を通ることで、反応塔3内の温度が上昇する。
【0081】
ステップS206において、切り替え部42は、原料ガス供給部8による原料ガスの供給先をブースト用反応塔41から反応塔1Aに切り替える。これにより、原料ガスが原料ガス供給部8から反応塔1Aに供給される。反応塔1A内の温度が上昇しているため、触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間が短くなる。したがって、反応塔1A内の触媒の加熱に要する時間を短縮することができ、反応塔1Aへの原料ガスの供給を開始してから反応塔1Aによって製品ガスを生成するまでの時間を短縮することができる。
【0082】
図8におけるフローチャートにおいて、ステップS204の処理が行われるタイミングと、ステップS205の処理が行われるタイミングと、が同じであってもよいし、異なってもよい。
図8におけるフローチャートにおいて、ステップS206の処理が行われた後、ステップS204及びS205の処理が行われてもよい。ステップS206において、ブースト用反応塔41から送出される送出ガスの温度が所定温度(T3)以上である場合、原料ガス供給部8による原料ガスの供給先をブースト用反応塔41から反応塔1Aに切り替えてもよい。また、ステップS206において、ジャケット部分52内の熱媒体の温度が所定温度(T4)以上である場合、原料ガス供給部8による原料ガスの供給先をブースト用反応塔41から反応塔1Aに切り替えてもよい。
【0083】
第2実施形態に係る生成装置100では、原料ガスを加熱し、加熱された原料ガスによりブースト用反応塔41の触媒を昇温する。原料ガスの比熱は小さいため、熱媒体を加熱する場合と比較して、原料ガスの加熱は容易である。第2実施形態に係る生成装置100では、断熱部材53が反応槽51の外周の所定部分を覆うことで、反応槽51の入口端部の近傍の外周が断熱されている。これにより、ブースト用反応塔41に対する加熱した原料ガスの供給時において、ブースト用反応塔41内の触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間が短くなり、ブースト用反応塔41内の触媒の加熱に要する時間を短縮することができる。例えば、熱媒体として熱媒油を用いる場合、低温の熱媒油は粘性が高く、流動性が悪いため、反応塔内を循環するのに時間を要する。このため、ヒーターにより熱媒体を加熱し、加熱された熱媒体を反応塔に通して触媒を昇温する場合、触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間は長くなる。
【0084】
第2実施形態に係る生成装置100によれば、原料ガスを加熱し、加熱した原料ガスによりブースト用反応塔41内の触媒を昇温するため、触媒の温度が反応開始温度に達するまでの時間が短くなる。したがって、ブースト用反応塔41内の触媒の加熱に要する時間を短縮することができ、ブースト用反応塔41への原料ガスの供給を開始してからブースト用反応塔41によって製品ガスを生成するまでの時間を短縮することができる。このように、第2実施形態に係る生成装置100によれば、熱媒体を加熱するヒーターを用いずにブースト用反応塔41内の触媒を温めることが可能となると共に、ブースト用反応塔41の運転を開始するまでの時間を短縮することができる。また、第2実施形態に係る生成装置100によれば、熱媒体を加熱するヒーターを用いずに反応塔1A内の触媒及び反応塔3内の触媒を温めることが可能となると共に、反応塔1A及び反応塔3の運転を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0085】
ブースト用反応塔41内の容量は、反応塔1A内の容量よりも小さいため、ブースト用反応塔41内の触媒の加熱に要する時間を短縮することができる。熱媒体をブースト用反応塔41と反応塔1Aとの間で循環させることで、ブースト用反応塔41内の触媒の発熱反応で加熱された熱媒体を反応塔1Aに送ることができる。
【0086】
生成装置100の運転開始時にブースト用反応塔41に加熱した燃料ガスを供給し、所定のタイミングで燃料ガスの加熱を停止する。また、所定のタイミングで燃料ガスの供給先をブースト用反応塔41から反応塔1Aに切り替える。これにより、触媒被毒が抑止され、触媒の交換頻度を減らすことができる。
【0087】
反応槽51の入口端部の近傍にヒートスポットが発生することにより、反応槽51の入口端部の近傍の触媒が他の箇所の触媒よりもダメージを受ける場合がある。反応槽51の入口端部の近傍にヒートスポットが発生する場合、反応槽51の入口端部の近傍の触媒の交換頻度を高くしてもよい。また、反応槽51の入口端部の近傍の触媒のみを交換することで、反応槽51の触媒全体を交換する場合と比較して、触媒交換費用を削減することができる。
【0088】
また、上記で説明した各処理は、生成装置100における製品ガスの生成方法或いは生成装置100の運転方法などとして捉えてもよい。上記で説明した各処理ないし機能の少なくとも一部を有する生成システムや運転システムとして捉えてもよい。なお、上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【符号の説明】
【0089】
1,1A,3・・反応塔;2,4・・ガス冷却用熱交換器;5・・熱媒体用熱交換器;6,7・・気液分離器;8・・原料ガス供給部;11・・送出ポンプ;17・・制御部;1
8,19,45・・測定センサ;28・・燃焼部;31,34,51,54・・反応槽;32,35,52,55・・ジャケット部分;33,53・・断熱部材;41・・ブースト用反応塔;42・・切り替え部;46・・循環ポンプ;100・・生成装置