(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055697
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ユーカリ抽出物の畜産動物への給餌方法
(51)【国際特許分類】
A23K 10/30 20160101AFI20240411BHJP
A23K 20/163 20160101ALI20240411BHJP
【FI】
A23K10/30
A23K20/163
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162825
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】510336200
【氏名又は名称】日本ニュートリション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100213207
【弁理士】
【氏名又は名称】西嶋 大作
(72)【発明者】
【氏名】伊吹 昌久
(72)【発明者】
【氏名】上島 優子
(72)【発明者】
【氏名】森腰 俊亨
【テーマコード(参考)】
2B150
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AB10
2B150BC06
2B150CE30
2B150DC13
(57)【要約】
【課題】有効性の高いユーカリ抽出物は、水に容易に分散しないため、飼料と混合して経口で投与せざるを得ず、体調悪化のために、食餌量が落ちてしまっている畜産動物に給餌することは困難であり、畜産農家にとってはかなりの重労働となっていた。
【解決手段】ユーカリ抽出物とエステル化デンプンおよび多孔質化デンプンを混合し、畜産動物の飲水に分散させる給餌方法をとることにより、簡便に畜産動物に投与することが可能となった。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーカリ抽出物とエステル化デンプンおよび多孔質化デンプンを混合し、畜産動物の飲水に分散させることを特徴とする、ユーカリ抽出物の畜産動物への給餌方法。
【請求項2】
エステル化デンプンが、オクテニルコハク酸デンプンである請求項1記載のユーカリ抽出物の畜産動物への給餌方法。
【請求項3】
多孔質化デンプンが、デキストリンを含むデンプンの酸分解物を乾燥して多孔質化したものである請求項1記載のユーカリ抽出物の畜産動物への給餌方法。
【請求項4】
ユーカリ抽出物と多孔質化デンプンの重量比が、3:1.5から3:4である請求項1記載のユーカリ抽出物の畜産動物への給餌方法。
【請求項5】
ユーカリ抽出物と多孔質化デンプンの混合物とエステル化デンプンの重量比が、2:0.2から2:1である請求項1記載のユーカリ抽出物の畜産動物への給餌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜産動物に対して、油性成分を均一に給餌することができる方法である。油性成分は、飲水に分散することなく、表面に浮遊するために、均一に給餌することができないが本発明を使用することにより均一に畜産動物に給餌することができる。また、この油性成分は、ユーカリ抽出物であり、畜産動物の呼吸器系疾患に効果があるとされているもので、本発明を用いれば、当該疾患が、発生した畜産動物に対して、手間をかけずに当該疾患を治癒することができる。
【0002】
畜産動物に対して、有用成分を飲水投与することは、最も簡便な方法である。一頭ずつ、個別に経口投与するには、かなりの労力を必要として、飲水に混合して、均一に給餌できることが好ましく、特に畜産動物のみならず、生き物は体調が悪くても飲水だけ生命維持のために試みようとして、食餌量が低下しても、飲水は継続されるので、有用成分を飲水投与することは、畜産農家にとって簡便でもっとも効率的な方法である。代表例としてビタミン、ミネラル等を飲水投与しているのが一般的である。
【0003】
ユーカリ抽出物は、精油と呼ばれており、その1,8シネオールといわれるテルペン化合物を主成分として、特に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に効果があるとされている(非特許文献1)。特に、シネオールは揮発性成分であり、人が利用する場合は、カップにお湯を入れてユーカリ抽出物を二三滴たらして、その蒸気を吸引することにより、咳等の緩和がなされるという報告もある(非特許文献2)。また、ユーカリ抽出物は、自然免疫を賦活し、病原菌の侵入を防御するという報告もあり、その有効性は高いものである(非特許文献3)。
【0004】
しかしながら、このユーカリ抽出物は、先述したように精油であり、そのままでは水には分散しない。分散しないまま、畜産動物に給餌しても、均一に投与されているのか分からず、効果の判定が困難になる。現状、これらユーカリ抽出物を粉体化し、飼料と混合して経口で投与しているのが現状である。しかしながら、前述したように体調悪化のために、食餌量が落ちてしまっている畜産動物に給餌することは困難であり、一頭ずつ直接経口投与するといった方法もなされており、畜産農家にとってはかなりの重労働となっている。また、これらに対する解決策は提案されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Adv Ther 2020 37:1737-1753
【非特許文献2】Altern Med Rev 2010 Apr;15(1):33-47.
【非特許文献3】BMC Immunology 2008, 9:17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような現状をもとになされたものであり、有効性の高い油性であるユーカリ抽出物を均一に、飲水に添加することにより、労力少なく畜産動物に給餌できるものを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ユーカリ抽出物に乳化性をもつエステル化デンプンおよび吸油性をもつ多孔質化デンプンを組み合わせることにより、その混合物が水または温水に均一に分散することを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は以下の発明を骨子とする。
(1)ユーカリ抽出物とエステル化デンプンおよび多孔質化デンプンを混合し、畜産動物の飲水に分散させることを特徴とする、ユーカリ抽出物の畜産動物への給餌方法。
(2)エステル化デンプンが、オクテニルコハク酸デンプンである請求項1記載のユーカリ抽出物の畜産動物への給餌方法。
(3)多孔質化デンプンが、デキストリンを含むデンプンの酸分解物を乾燥して多孔質化したものである請求項1記載のユーカリ抽出物の畜産動物への給餌方法。
(4)ユーカリ抽出物と多孔質化デンプンの重量比が、3:1.5から3:4である請求項1記載のユーカリ抽出物の畜産動物への給餌方法。
(5)ユーカリ抽出物と多孔質化デンプンの混合物とエステル化デンプンの重量比が、2:0.2から2:1である請求項1記載のユーカリ抽出物の畜産動物への給餌方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、当該農家は、疾病所見が畜産動物に見られた際に、簡便に飲水に投与することにより、当該疾病を改善もしくは治癒することができる。特に、ユーカリ抽出物で効果証明されている、呼吸器系疾患および病原菌による疾患に対して効果を生む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明について詳細に説明する。なお、本発明において特別な記載がない場合、比は重量比を示す。
【0011】
本発明のユーカリ抽出物は、ユーカリ樹から抽出されたものである。ユーカリ樹はオーストラリア原産の常緑高木で,現在 では世界各地で広く栽培されている.Eucalyptus globulus は代表的なユーカリ種で,従来より,その葉や精油成分は医 薬品,健康茶,食品素材および香料として利用されている。本発明におけるユーカリ抽出物は、ユーカリ樹の種に限定されることはない。 ユーカリ抽出物の成分としては,ユーカリ油の主成分で あるシネオールがよく知られており、前述したように様々な効能が示されている。
【0012】
本発明のエステル化デンプンおよび多孔質化デンプンは、加工澱粉といわれるものである。加工澱粉は、でん粉に各種加工(酵素的、物理的、化学的)を施して、特性の改質・改善や機能性の付与・増強したものである。この加工澱粉の中には種々種類があり、大きくは、化学処理を施した誘導化型、酸や熱処理等による分解型、またアルファ型などがあり、これらの加工処理後もしくは加工せずに、乾燥、加熱、造粒、多孔質化したものなど多種に渡っている。
【0013】
本発明においては、この多種存在する中で、エステル化デンプンを使用することが好ましく、より好ましくはオクテニルコハク酸を付加したオクテニルコハク酸デンプンを使用することが好ましい。またこのオクテニルコハク酸のデンプンへの付加部位、付加数については限定されることはない。このデンプンに付加されたオクテニルコハク酸が、油性分を取り囲んで、ユーカリ抽出物を粉末化するのに役立っている。
【0014】
本発明における多孔質化デンプンはデキストリン、シクロデキストリン、難消化デキストリンを含む澱粉分解物のいずれか一種以上を酵素又は酸により分解し、その分解物を乾燥させて多孔質化されたデンプンを示す。この多孔質化されたデンプンは、油性分を吸着し、ユーカリ抽出物を水に均一分散することを助けている。
【0015】
本発明の、ユーカリ抽出物と多孔質化デンプンの混合比は、水への分散性の観点からは、重量比でユーカリ抽出物:多孔質化デンプンが3:2から3:9であることが好ましく、より好ましくは、3:5から3:7である。多孔質化デンプンがユーカリ抽出物3に対し、1.5未満になると水に分散したときにダマになりやすく、また9を超えると水への均一分散性は維持されるが、効果が頭打ちであるとともに、ユーカリ抽出物の濃度が低くなり、給与量が増えてしまう。実際に商品化する場合は、ユーカリ濃度や原料コストなども加味して、ユーカリ抽出物:多孔質化デンプンの値を設定するとよく、例えば、好ましくは、3:1.5~3:4、より好ましくは、3:2~3:3である。
【0016】
前述した、ユーカリ抽出物と多孔質化デンプンを混合したものを混合粉体として、混合粉体:オクテニルコハク酸デンプンの比が2:0.1から2:2が好ましく、より好ましくは、2:0.7から2:1.5である。混合粉体2に対しオクテニルコハク酸デンプンの重量が0.1未満であると全体の性状がノリ状になり扱いにくくなりやすい。また2を超えても使用する性状は好ましい状態になるが、効果が頭打ちであるとともに、ユーカリ抽出物の濃度が低くなり給与量が増えてしまう。従って、実際に商品化する場合は、ユーカリ濃度や原料コストなども加味すると、混合粉体:オクテニルコハク酸デンプンの値は、例えば、好ましくは、2:0.2~2:1.0、より好ましくは、2:0.4~2:0.6である。
【0017】
本発明において、前述した、ユーカリ抽出物と加工澱粉の混合物に、他の成分を混合しても構わず、とくに制限されるものではない。特に水への分散性を向上するために、乳化剤、動植物性たんぱく質を使用することもあるが、とくに制限はされない。
【0018】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例0019】
ユーカリ抽出物(商品名:ユーカリ抽出精油SHAANXI M.R NATURAL PRODUCT CO.,LTD)に対して多孔質化デンプン(商品名:オイルQ 日澱化學株式会社)を、以下の配合で混合して200mlに対する水分散性を確認した。
【表1】
多孔質化デンプンは、添加量が多い程、水分散性に効果を発揮することが分かった。ユーカリ抽出物:多孔質化デンプンの比が3:1では効果に乏しく、3:1.5以上の多孔質化デンプンの添加で水分散性が良好になった。なお、本発明における多孔質化デンプンはデキストリン、シクロデキストリン、難消化デキストリンを含む澱粉分解物のいずれか一種以上を酵素又は酸により分解し多孔質化されたデンプンを示す。この多孔質の中に、油性分が吸着されるので、多孔質化されたデンプンなら、いずれの多孔質化されたデンプンも使用できる。