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特開2024-5570補正装置、システム、方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005570
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】補正装置、システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20240110BHJP
   G06T 5/70 20240101ALI20240110BHJP
【FI】
G01N23/046
G06T5/00 705
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105801
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】田口 翔大
(72)【発明者】
【氏名】太田 卓見
【テーマコード(参考)】
2G001
5B057
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001FA08
2G001HA14
2G001JA08
5B057AA09
5B057BA03
5B057CA13
5B057CB13
5B057CC01
5B057CD03
5B057CE02
5B057DA07
5B057DB03
(57)【要約】
【課題】CT画像の再構成におけるモーションによるアーチファクトを補正するためのコストを低減できる補正装置、システム、方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】撮影データ取得部と、前処理部と、相対モーション補正値算出部と、相対モーション補正関数を作成する補正関数作成部と、仮基準中心位置補正関数を設定し、仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび基準中心位置補正関数を決定する基準中心位置決定部と、モーション補正部と、を備え、基準中心位置決定部は、仮補正された投影像を取得し、仮補正された投影像およびそれと対向する撮影角度の投影像の一致度を計算することで仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび基準中心位置補正関数を決定し、モーション補正部は、基準中心位置補正関数および相対モーション補正関数を用いて本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像を補正する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CT画像測定中のモーションによるアーチファクトを補正する補正装置であって、
360°スキャンした本撮影データおよびリファレンス撮影データを取得する撮影データ取得部と、
前記本撮影データおよび前記リファレンス撮影データを投影像に変換する前処理部と、
前記リファレンス撮影データに基づく前記投影像および前記リファレンス撮影データの撮影角度に対応する前記本撮影データに基づく前記投影像をアラインメントし、前記撮影角度毎に相対モーション補正値を算出する相対モーション補正値算出部と、
前記相対モーション補正値に基づいて全ての前記本撮影データまたは前記本撮影データに基づく前記投影像の相対モーションを補正する相対モーション補正関数を作成する補正関数作成部と、
仮基準中心位置補正関数を設定し、前記仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび基準中心位置補正関数を決定する基準中心位置決定部と、
前記仮基準中心位置補正関数および前記相対モーション補正関数で前記本撮影データに基づく前記投影像を仮補正するモーション補正部と、を備え、
前記基準中心位置決定部は、前記仮補正された前記投影像を取得し、前記仮補正された前記投影像およびそれと対向する撮影角度の前記投影像の一致度を計算することで前記仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび前記基準中心位置補正関数を決定し、
前記モーション補正部は、前記基準中心位置補正関数および前記相対モーション補正関数を用いて前記本撮影データまたは前記本撮影データに基づく前記投影像を補正することを特徴とする補正装置。
【請求項2】
前記前処理部は、前記本撮影データまたは前記リファレンス撮影データのX線強度を規格化し、規格化された前記本撮影データまたは前記リファレンス撮影データに基づく投影像から特徴を抽出した特徴抽出投影像を作成し、
前記相対モーション補正値算出部は、前記リファレンス撮影データの前記特徴抽出投影像およびそれに対応する前記本撮影データの前記特徴抽出投影像に基づいて前記相対モーション補正値を算出することを特徴とする請求項1記載の補正装置。
【請求項3】
前記前処理部は、特徴の抽出前にノイズ除去を行なうことを特徴とする請求項2記載の補正装置。
【請求項4】
前記モーション補正部は、前記本撮影データに基づく前記特徴抽出投影像を前記仮補正し、
前記基準中心位置決定部は、前記仮補正された前記特徴抽出投影像を取得し、前記仮補正された前記特徴抽出投影像およびそれと対向する撮影角度の前記特徴抽出投影像の一致度を計算することで前記仮基準中心位置補正関数のパラメータを決定することを特徴とする請求項2記載の補正装置。
【請求項5】
前記相対モーション補正関数は、前記リファレンス撮影データの枚数に基づいて決定される次数の多項式であることを特徴とする請求項1記載の補正装置。
【請求項6】
前記相対モーション補正関数の次数は、前記リファレンス撮影データの枚数の1/2以下であることを特徴とする請求項5記載の補正装置。
【請求項7】
前記本撮影データおよびリファレンス撮影データは、ファンビームまたはコーンビームにより得られたデータであり、
前記基準中心位置決定部は、前記仮補正された前記投影像をファンパラ変換して得られた変換データを取得し、前記変換データおよびそれと対向する角度の前記変換データの一致度を計算することで前記仮基準中心位置補正関数のパラメータを決定することを特徴とする請求項1記載の補正装置。
【請求項8】
前記相対モーション補正値の算出または前記仮基準中心位置補正関数のパラメータの決定は、前記投影像または前記仮補正された前記投影像の一部の領域に基づいて行なわれることを特徴とする請求項1記載の補正装置。
【請求項9】
前記モーション補正部により補正された前記本撮影データまたは前記本撮影データに基づく投影像に基づいて再構成を行ない、CT画像を生成する再構成部と、
前記CT画像を表示装置に表示させる表示部と、を備えることを特徴とする請求項1記載の補正装置。
【請求項10】
X線を発生させるX線源と、X線を検出する検出器と、前記X線源および前記検出器、または試料の回転を制御する回転制御ユニットと、を備えるCT装置と、
請求項1から請求項9のいずれかに記載の補正装置と、を備えることを特徴とするシステム。
【請求項11】
CT画像測定中のモーションによるアーチファクトを補正する方法であって、
360°スキャンした本撮影データおよびリファレンス撮影データを取得するステップと、
前記本撮影データおよび前記リファレンス撮影データを投影像に変換するステップと、
前記リファレンス撮影データに基づく前記投影像および前記リファレンス撮影データの撮影角度に対応する前記本撮影データに基づく前記投影像をアラインメントし、前記撮影角度毎に相対モーション補正値を算出するステップと、
算出した前記相対モーション補正値に基づいて全ての前記本撮影データまたは前記本撮影データに基づく前記投影像の相対モーションを補正する相対モーション補正関数を作成するステップと、
仮基準中心位置補正関数を設定するステップと、
前記仮基準中心位置補正関数および前記相対モーション補正関数で前記本撮影データに基づく前記投影像を仮補正するステップと、
前記仮補正された前記投影像を取得し、前記仮補正された前記投影像およびそれと対向する撮影角度の前記投影像の一致度を計算することで前記仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび基準中心位置補正関数を決定するステップと、
前記基準中心位置補正関数および前記相対モーション補正関数を用いて前記本撮影データまたは前記本撮影データに基づく前記投影像を補正するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
CT画像測定中のモーションによるアーチファクトを補正するプログラムであって、
360°スキャンした本撮影データおよびリファレンス撮影データを取得する処理と、
前記本撮影データおよび前記リファレンス撮影データを投影像に変換する処理と、
前記リファレンス撮影データに基づく前記投影像および前記リファレンス撮影データの撮影角度に対応する前記本撮影データに基づく前記投影像をアラインメントし、前記撮影角度毎に相対モーション補正値を算出する処理と、
算出した前記相対モーション補正値に基づいて全ての前記本撮影データまたは前記本撮影データに基づく前記投影像の相対モーションを補正する相対モーション補正関数を作成する処理と、
仮基準中心位置補正関数を設定する処理と、
前記仮基準中心位置補正関数および前記相対モーション補正関数で前記本撮影データに基づく前記投影像を仮補正する処理と、
前記仮補正された前記投影像を取得し、前記仮補正された前記投影像およびそれと対向する撮影角度の前記投影像の一致度を計算することで前記仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび基準中心位置補正関数を決定する処理と、
前記基準中心位置補正関数および前記相対モーション補正関数を用いて前記本撮影データまたは前記本撮影データに基づく前記投影像を補正する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーチファクトを補正する補正装置、システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CT装置は、試料またはガントリを回転させながら取得された複数の撮影データからCT画像を再構成する。CT装置では測定中に試料または光学系が動いてしまうことをモーションとよぶ。モーションが生じた撮影データを補正しないまま再構成をすると、再構成したCT画像にブレやストリーク状のアーチファクトが生じる。そのため再構成画像が試料の形状を正確に反映していないため、定量性が失われる。
【0003】
このようなモーションによるアーチファクトを低減するため、従来、CT装置以外の装置を導入しての撮影、撮影方法の工夫、またはソフトウェアによる補正が行われてきた。
【0004】
特許文献1は、サンプルに放射線を照射し、透過放射線を含む放射線画像を撮影する撮影機構の位置ずれによって生じる撮影画像のずれを補正する撮影画像のずれ補正装置であって、撮影機構の位置ずれが発生し得る状態で複数の方向からサンプルを撮影した複数の放射線画像を取得し、当該放射線画像を所定の座標系の座標軸方向に補正し、補正後の放射線画像に基づいて再構成演算を実行し、得られた再構成情報の品質を評価する評価処理を、評価が最良になるまで繰り返すことによって予め生成された放射線画像を、撮影機構の位置ずれが発生していない状態におけるサンプルの放射線画像を示す複数の基準画像として取得する基準画像取得手段と、撮影機構の位置ずれが発生し得る状態でサンプルを撮影した複数の放射線画像を補正対象画像として取得する補正対象画像取得手段と、補正対象画像と基準画像との対応する画像同士の一致度が最大となるように補正対象画像を所定の座標系の座標軸方向に補正する補正手段と、を備える撮影画像のずれ補正装置の技術が開示されている。
【0005】
特許文献2は、X線検出器により収集した各投影方向へのX線投影データを用いた再構成演算によって得られた断層像を、投影方向と同じ方向に順投影し、その順投影データと収集した投影データとのずれを求め、そのずれに基づいて収集した投影データを補正して新たに再構成演算を行うことにより、X線発生装置とX線検出器の対と対象物との相対回転の不正確さに係わらず、その影響の少ない鮮明な断層像の修得を可能とするX線断層像撮影装置の技術が開示されている。
【0006】
非特許文献1は、一回目は通常のスキャン、二回目は粗く素早くスキャンし、二回目の素早いスキャンの間はモーションがないと考え、その投影像を基準に、一回目の測定で得られた投影像を補正する技術が開示されている。また、非特許文献1は、投影と逆投影の反復の中で、モーションを徐々に精密に推定していく技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6383707号公報
【特許文献2】特開2010-181153号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Developments in X-Ray Tomography VI, edited by Stuart R. Stock, Proc. of SPIE Vol. 7078, 70781C, (2008) ・ 0277-786X/08/$18 ・ doi: 10.1117/12.793212 “Compensation of mechanical inaccuracies in micro-CT and nano-CT”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1および特許文献2記載の技術は、いずれも再構成画像を使用して補正を行っているため、計算コストがかかる。また、非特許文献1記載の技術のうち二回測定する技術は、素早く測定したとしても依然として残るモーションがあり、例えば、回転軸由来の公差誤差に基づいたモーション等は補正できない。非特許文献1記載の技術のうち逐次的にモーションを推定する技術は、投影計算と逆投影計算を繰り返す必要があるため、計算コストがかかる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、CT画像の再構成におけるモーションによるアーチファクトを補正するためのコストを低減できる補正装置、システム、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の補正装置は、CT画像測定中のモーションによるアーチファクトを補正する補正装置であって、360°スキャンした本撮影データおよびリファレンス撮影データを取得する撮影データ取得部と、前記本撮影データおよび前記リファレンス撮影データを投影像に変換する前処理部と、前記リファレンス撮影データに基づく前記投影像および前記リファレンス撮影データの撮影角度に対応する前記本撮影データに基づく前記投影像をアラインメントし、前記撮影角度毎に相対モーション補正値を算出する相対モーション補正値算出部と、前記相対モーション補正値に基づいて全ての前記本撮影データまたは前記本撮影データに基づく前記投影像の相対モーションを補正する相対モーション補正関数を作成する補正関数作成部と、仮基準中心位置補正関数を設定し、前記仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび基準中心位置補正関数を決定する基準中心位置決定部と、前記仮基準中心位置補正関数および前記相対モーション補正関数で前記本撮影データに基づく前記投影像を仮補正するモーション補正部と、を備え、前記基準中心位置決定部は、前記仮補正された前記投影像を取得し、前記仮補正された前記投影像およびそれと対向する撮影角度の前記投影像の一致度を計算することで前記仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび前記基準中心位置補正関数を決定し、前記モーション補正部は、前記基準中心位置補正関数および前記相対モーション補正関数を用いて前記本撮影データまたは前記本撮影データに基づく前記投影像を補正することを特徴としている。
【0012】
(2)また、上記(1)記載の補正装置において、前記前処理部は、前記本撮影データまたは前記リファレンス撮影データのX線強度を規格化し、規格化された前記本撮影データまたは前記リファレンス撮影データに基づく投影像から特徴を抽出した特徴抽出投影像を作成し、前記相対モーション補正値算出部は、前記リファレンス撮影データの前記特徴抽出投影像およびそれに対応する前記本撮影データの前記特徴抽出投影像に基づいて前記相対モーション補正値を算出することを特徴としている。
【0013】
(3)また、上記(1)または(2)記載の補正装置において、前記前処理部は、特徴の抽出前にノイズ除去を行なうことを特徴としている。
【0014】
(4)また、上記(1)~(3)のいずれかに記載の補正装置において、前記モーション補正部は、前記本撮影データに基づく前記特徴抽出投影像を前記仮補正し、前記基準中心位置決定部は、前記仮補正された前記特徴抽出投影像を取得し、前記仮補正された前記特徴抽出投影像およびそれと対向する撮影角度の前記特徴抽出投影像の一致度を計算することで前記仮基準中心位置補正関数のパラメータを決定することを特徴としている。
【0015】
(5)また、上記(1)~(4)のいずれかに記載の補正装置において、前記相対モーション補正関数は、前記リファレンス撮影データの枚数に基づいて決定される次数の多項式であることを特徴としている。
【0016】
(6)また、上記(1)~(5)のいずれかに記載の補正装置において、前記相対モーション補正関数の次数は、前記リファレンス撮影データの枚数の1/2以下であることを特徴としている。
【0017】
(7)また、上記(1)~(6)のいずれかに記載の補正装置において、前記本撮影データおよびリファレンス撮影データは、ファンビームまたはコーンビームにより得られたデータであり、前記基準中心位置決定部は、前記仮補正された前記投影像をファンパラ変換して得られた変換データを取得し、前記変換データおよびそれと対向する角度の前記変換データの一致度を計算することで前記仮基準中心位置補正関数のパラメータを決定することを特徴としている。
【0018】
(8)また、上記(1)~(7)のいずれかに記載の補正装置において、前記相対モーション補正値の算出または前記仮基準中心位置補正関数のパラメータの決定は、前記投影像または前記仮補正された前記投影像の一部の領域に基づいて行なわれることを特徴としている。
【0019】
(9)また、上記(1)~(8)のいずれかに記載の補正装置は、前記モーション補正部により補正された前記本撮影データまたは前記本撮影データに基づく投影像に基づいて再構成を行ない、CT画像を生成する再構成部と、前記CT画像を表示装置に表示させる表示部と、を備えることを特徴としている。
【0020】
(10)また、本発明のシステムは、X線を発生させるX線源と、X線を検出する検出器と、前記X線源および前記検出器、または試料の回転を制御する回転制御ユニットと、を備えるCT装置と、上記(1)から(9)のいずれかに記載の補正装置と、を備えることを特徴としている。
【0021】
(11)また、本発明の方法は、CT画像測定中のモーションによるアーチファクトを補正する方法であって、360°スキャンした本撮影データおよびリファレンス撮影データを取得するステップと、前記本撮影データおよび前記リファレンス撮影データを投影像に変換するステップと、前記リファレンス撮影データに基づく前記投影像および前記リファレンス撮影データの撮影角度に対応する前記本撮影データに基づく前記投影像をアラインメントし、前記撮影角度毎に相対モーション補正値を算出するステップと、算出した前記相対モーション補正値に基づいて全ての前記本撮影データまたは前記本撮影データに基づく前記投影像の相対モーションを補正する相対モーション補正関数を作成するステップと、仮基準中心位置補正関数を設定するステップと、前記仮基準中心位置補正関数および前記相対モーション補正関数で前記本撮影データに基づく前記投影像を仮補正するステップと、前記仮補正された前記投影像を取得し、前記仮補正された前記投影像およびそれと対向する撮影角度の前記投影像の一致度を計算することで前記仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび基準中心位置補正関数を決定するステップと、前記基準中心位置補正関数および前記相対モーション補正関数を用いて前記本撮影データまたは前記本撮影データに基づく前記投影像を補正するステップと、を含むことを特徴としている。
【0022】
(12)また、本発明のプログラムは、CT画像測定中のモーションによるアーチファクトを補正するプログラムであって、360°スキャンした本撮影データおよびリファレンス撮影データを取得する処理と、前記本撮影データおよび前記リファレンス撮影データを投影像に変換する処理と、前記リファレンス撮影データに基づく前記投影像および前記リファレンス撮影データの撮影角度に対応する前記本撮影データに基づく前記投影像をアラインメントし、前記撮影角度毎に相対モーション補正値を算出する処理と、算出した前記相対モーション補正値に基づいて全ての前記本撮影データまたは前記本撮影データに基づく前記投影像の相対モーションを補正する相対モーション補正関数を作成する処理と、仮基準中心位置補正関数を設定する処理と、前記仮基準中心位置補正関数および前記相対モーション補正関数で前記本撮影データに基づく前記投影像を仮補正する処理と、前記仮補正された前記投影像を取得し、前記仮補正された前記投影像およびそれと対向する撮影角度の前記投影像の一致度を計算することで前記仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび基準中心位置補正関数を決定する処理と、前記基準中心位置補正関数および前記相対モーション補正関数を用いて前記本撮影データまたは前記本撮影データに基づく前記投影像を補正する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)、(b)、それぞれある撮影角度におけるリファレンス撮影データに基づく投影像および対応する本撮影データに基づく投影像を示す模式図である。
図2】(a)、(b)、それぞれある撮影角度における本撮影データに基づく投影像および対向する撮影角度の本撮影データに基づく投影像を示す模式図である。
図3】(a)、(b)、それぞれ実測した投影像のサイノグラムと仮補正およびファンパラ変換後のサイノグラムを示す模式図である。
図4】全体のシステムの構成の一例を示す概略図である。
図5】全体のシステムの構成の変形例を示す概略図である。
図6】処理装置および補正装置の構成の一例を示すブロック図である。
図7】処理装置および補正装置の構成の変形例を示すブロック図である。
図8】処理装置および補正装置の構成の変形例を示すブロック図である。
図9】(a)は、ユーザが種々の設定をする場合のUIの一例を示した概念図であり、(b)は、多項式補間の結果の一例を示すグラフである。
図10】補正装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図11】補正装置の動作の変形例を示すフローチャートである。
図12】システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図13】(a)、(b)、それぞれ試料1の相対モーション補正関数、および基準中心位置の決定の結果を示すグラフである。
図14】(a)~(c)、それぞれ補正を行った本撮影データを用いて再構成した試料1のCT画像のある断面である。(d)~(f)、それぞれ補正を行っていない本撮影データを用いて再構成した試料1のCT画像の同じ断面である。
図15】(a)、(b)、それぞれ試料2の相対モーション補正関数、および基準中心位置の決定の結果を示すグラフである。
図16】(a)~(c)、それぞれ補正を行った本撮影データを用いて再構成した試料2のCT画像のある断面である。(d)~(f)、それぞれ補正を行っていない本撮影データを用いて再構成した試料2のCT画像の同じ断面である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
[原理]
CT装置は、あらゆる角度から平行ビーム、ファンビーム、またはコーンビームのX線を試料に照射し、検出器によりX線の吸収係数の分布、すなわち撮影データを取得する。あらゆる角度からX線を照射するために、CT装置は、固定されたX線源および検出器に対して、試料台を回転させるか、X線源と検出器が一体となったガントリを回転させるように構成されている。
【0026】
このようにして様々な角度から投影を行い得られた試料の撮影データを投影像に変換し、投影像の濃淡で試料の線吸収係数の分布を推測できる。そして、2次元的な投影像から3次元的な線吸収係数分布を求めることを再構成という。再構成は、基本的には投影像の逆投影を行う。
【0027】
撮影データの測定中に試料または光学系が動くことをモーションという。モーションの原因としては、熱的なドリフト、焦点移動、公差誤差、試料の固定不良などが挙げられる。モーションが生じた撮影データに基づく投影像を補正しないまま再構成をすると、再構成したCT画像にブレやストリーク状のアーチファクトが生じる。このようなアーチファクトをモーションによるアーチファクトという。モーションによるアーチファクトが生じた場合、再構成画像が、試料の形状を正確に反映していないため、定量性が失われる。その影響は、特にμmオーダーの分解能のCT撮影で問題になる。
【0028】
従来、モーションによるアーチファクトを抑制するために、CT装置以外の装置を導入しての撮影、撮影方法の工夫、またはソフトウェアによる補正が行われてきた。例えば、CT装置にレーザやセンサー等の特別な装置を導入して計測した三次元位置情報を用いて補正する方法がある。この場合、導入コストがかかる。
【0029】
また、ソフトウェアによる補正では、画像処理を行って補正する。例えば、位置ずれが発生し得る状態で複数の方向から撮影した複数の放射線画像を所定の座標系の座標軸方向に補正し、補正後の放射線画像に基づいて再構成演算を実行し、位置ずれが発生していない複数の基準画像と比較し再構成画像の再構成情報の品質を評価することで補正をする方法がある。また、X線投影データを用いた再構成演算によって得られた断層像を、投影方向と同じ方向に順投影し、その順投影データと収集した投影データとのずれを求め、そのずれに基づいて収集した投影データを補正して新たに再構成演算を行う方法がある。しかしながら、いずれも再構成を行う必要があり、必然的に計算コストがかかってしまい、実用上の問題が生じる。
【0030】
また、撮影方法の工夫とソフトウェアによる補正を組み合わせた方法として、一回目に精密に測定して、二回目は素早く測定し、二回目に測定した投影像を基準として一回目に測定した投影像を補正する方法がある(リファレンススキャン測定)。しかしながら、回転軸は測定時間に関わらず動く可能性があるため、このような方法を使用する場合、回転軸由来の公差誤差に起因するモーションは補正できない。また、再構成画像を使用せずに投影像について補正をする方法は、モーションの計算精度が試料の構造やコントラストに依存するため、高コントラストおよび低コントラストの構造が存在する試料では補正の精度が十分ではなかった。
【0031】
本発明は、以下のような手順で本撮影データの補正を行う。まず、360°スキャンした本撮影データおよびリファレンス撮影データを取得し、投影像に変換する。次に、リファレンス撮影データに基づく投影像およびリファレンス撮影データの撮影角度に対応する本撮影データに基づく投影像をアラインメントし、撮影角度毎に相対モーション補正値を算出する。次に、算出した相対モーション補正値に基づいて相対モーションを補正する相対モーション補正関数を作成する。次に、仮基準中心位置補正関数を設定し、仮基準中心位置補正関数および相対モーション補正関数で本撮影データに基づく投影像を仮補正する。次に、仮補正された本撮影データに基づく投影像を取得し、仮補正されたある撮影角度の投影像と対向する撮影角度の投影像の一致度を計算することで仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび基準中心位置補正関数を決定する。そして、基準中心位置補正関数および相対モーション補正関数を用いて本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像を補正する。
【0032】
図1は、ある撮影角度におけるリファレンス撮影データに基づく投影像および本撮影データに基づく投影像を示す模式図である。試料回転軸の位置は実際には表示されないが、説明のために記載する。これらを比較することで、ある撮影角度における相対モーション補正値を算出することができる。ある撮影角度における相対モーション補正値とは、当該撮影角度におけるリファレンス撮影データに基づく投影像とそれに対応する本撮影データに基づく投影像の一致度が最も大きくなる本撮影データのCU方向(x軸方向)、CV方向(y軸方向)の移動量である。換言すると、相対モーション補正値とは、ある撮影角度におけるリファレンス撮影データに対する本撮影データのずれである。本明細書において、相対モーションとは、相対モーション補正値から推定されるリファレンス撮影データに対する本撮影データのずれである。このように、相対モーション補正値を算出することで、相対モーションを補正するための情報を得ることができる。
【0033】
本明細書において、相対モーション補正関数とは、複数の相対モーション補正値に基づいて算出した関数であり、全ての本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像の相対モーションを補正する関数である。相対モーション補正関数は、相対モーションを適切に補正できれば、どのような関数を使用してもよい。
【0034】
試料回転軸と検出器面内の中心軸が一致している場合、相対モーション補正関数を作成し、これを用いて本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像を補正することで、CT画像のモーションによるアーチファクトを補正することができる。しかし、試料回転軸と検出器面内の中心軸が一致していない場合、相対モーション補正関数を用いた補正だけではCT画像のモーションによるアーチファクトを補正することができない。また、本撮影データとリファレンス撮影データを比較して作成した相対モーション補正関数では、試料回転軸のずれを求めることはできない。μmオーダーの分解能のCT撮影では、数pixelのずれであっても問題になる場合がある。このような場合、例えば、スライス再構成の逐次計算から試料回転軸のずれを求めることはできるが、再構成をする必要があり、計算に時間を要する。
【0035】
図2は、ある撮影角度における本撮影データに基づく投影像および対向する撮影角度の本撮影データに基づく投影像を示す模式図である。これらを仮基準中心位置補正関数および相対モーション補正関数で補正(仮補正)した後に比較することで、仮基準中心位置補正関数のパラメータを決定することができる。これを基準中心位置補正関数とする。本明細書において、基準中心位置補正関数とは、検出器面内の中心軸に対する試料回転軸のずれを表す関数である。仮基準中心位置補正関数および基準中心位置補正関数は、定数であってもよい。本発明の補正方法は、相対モーション補正関数による補正後の投影像とその対向する角度の投影像の一致度が大きくなるように基準中心位置補正関数を決定することで、再構成をする必要がなくなるため、計算時間を十分に低減できる。本明細書において、絶対モーションとは、基準中心位置補正関数と相対モーション補正関数の合計である。
【0036】
このような補正方法により、レーザやセンサー等の特別な装置を導入する必要がなくなるため、導入コストを低減することができる。また、撮影データまたは投影像に対して補正を行うため、再構成を繰り返す必要がなくなり、計算コストを低減することができる。また、相対モーションを補正する相対モーション補正関数の作成に使用するデータがリファレンス撮影データと本撮影データであるのに対し、基準中心位置補正関数の決定に使用するデータが相対モーションが補正された本撮影データと対向する本撮影データであるため、相対モーションだけでなく回転軸由来のモーションがあっても、これを補正できる。
【0037】
本発明で行う補正は、CT撮影中の試料の熱的ドリフトや固定不良、焦点移動に由来する撮影画像の並進移動的なモーションを対象とする。本発明の補正方法は、再構成不要で計算コストを抑えつつ、試料の構造やコントラストによる計算精度への影響を受けずに高精度な絶対モーションの補正を行うことができる。
【0038】
[実施形態]
以下で、本発明の補正方法を詳細に説明する。まず、360°スキャンした本撮影データおよびリファレンス撮影データを取得する。本撮影データは、0.15°から0.6°の間隔で600枚以上2400枚以下撮影したものであることが好ましい。リファレンス撮影データは、本撮影データの撮影の前または後に10°から45°の間隔で8枚以上36枚以下撮影したものであることが好ましい。リファレンス撮影データの撮影枚数は、本撮影データの撮影枚数の約数である。
【0039】
次に、本撮影データおよびリファレンス撮影データを投影像に変換する。本撮影データおよびリファレンス撮影データは、対数変換することで投影像に変換できる。本撮影データまたはリファレンス撮影データを投影像に変換する前に、本撮影データまたはリファレンス撮影データのX線強度を規格化し、規格化された本撮影データおよびリファレンス撮影データに基づく投影像から特徴を抽出した特徴抽出投影像を作成することが好ましい。
【0040】
X線強度の規格化は、本撮影データまたはリファレンス撮影データのX線強度の最大値および最小値を用いてX線強度を再スケールすることが好ましい。X線強度の最小値と最大値の両方を用いた規格化を行うことで、特徴抽出投影像の低コントラストと高コントラストの強度差が小さくなる。そのため、一致度計算で低コントラストの構造が反映されやすくなる。X線強度の規格化は、例えば、以下の数式(1)を用いてすることができる。以下の数式(1)において、I(x,y,θ)は、撮影角度θにおけるあるピクセルのX線強度を表す。以下の数式(1)は、撮影角度θにおける全てのピクセルのX線強度をそれぞれ右辺の式の値に変換することを示している。Imax(θ)およびImin(θ)は、それぞれ当該撮影角度θ毎に求めたX線強度のヒストグラムの最大値および最小値を表す。Imax(θ)およびImin(θ)は、それぞれ本撮影データまたはリファレンス撮影データ全体のX線強度のヒストグラムの最大値および最小値であってもよい。X線強度の規格化は、数式(1)に限られない。
【0041】
【数1】
【0042】
投影像の特徴抽出は、投影像のエッジ検出を行うことが好ましい。エッジ検出は、例えば、Sobelフィルタを用いて行うことができる。また、投影像の特徴抽出の前に投影像のノイズ除去を行うことが好ましい。ノイズ除去は、例えば、メディアンフィルタやガウシアンフィルタを用いて行うことができる。投影像に対し、例えば、メディアンフィルタ、ガウシアンフィルタ、およびSobelフィルタを順にかけることでノイズ除去およびエッジ検出を行うことができる。投影像の特徴抽出およびノイズ除去は、メディアンフィルタ、ガウシアンフィルタ、またはSobelフィルタに限られない。
【0043】
これらの処理により、相対モーション補正値の算出や基準中心位置の決定において計算精度が向上する。特に、高コントラストおよび低コントラストの構造が存在する試料に有効である。したがって、試料回転軸の公差誤差がないまたは非常に小さい場合には、本発明の一態様として、X線強度の規格化、投影像の特徴抽出、相対モーション補正関数の作成、および相対モーション補正関数による撮影データ補正という工程を含むものであってもよい。この場合、X線強度の規格化や投影像の特徴抽出を行わずに相対モーションを補正する従来の技術より優れた結果が得られる。
【0044】
次に、リファレンス撮影データに基づく投影像およびリファレンス撮影データの撮影角度に対応する本撮影データに基づく投影像をアラインメントし、撮影角度毎に相対モーション補正値を算出する。なお、上記のように、X線強度の規格化や投影像のノイズ除去、特徴抽出を行っている場合、以下の工程における投影像は、X線強度の規格化や投影像のノイズ除去、特徴抽出を行った投影像(特徴抽出投影像)であることが好ましい。
【0045】
リファレンス撮影データに基づく投影像およびリファレンス撮影データの撮影角度に対応する本撮影データに基づく投影像のアラインメントは、例えば、以下の数式(2)を用いて行うことができる。以下の数式(2)で、minは最小値を、argはその値を与える引数を表す。数式(2)のPmain、Prefは、それぞれ撮影角度θにおける本撮影データに基づく投影像およびリファレンス撮影データに基づく投影像を表し、以下の数式(3)および数式(4)で定義される。すなわち、各撮影角度θにおけるリファレンス撮影データに基づく投影像と本撮影データに基づく投影像に対してMSE(Mean Squared Error)を計算し、MSEが最小になる本撮影データに基づく投影像のx軸方向およびy軸方向のシフト量(xshift,yshift)を求め、相対モーション補正値とする。数式(2)の右辺のシグマ計算において、(x,y)は、投影像上の全ての点であってもよいし、投影像に設定された枠内の点に限定してもよい。アラインメントに使用する関数はMSEに限られず、例えば、相互情報量、相関関数等を使用してもよい。
【0046】
【数2】
【0047】
【数3】
【0048】
【数4】
【0049】
次に、算出した複数の相対モーション補正値に基づいて全ての本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像の相対モーションを補正する相対モーション補正関数を作成する。相対モーション補正関数の作成は、算出した相対モーション補正値に基づいて、x軸方向およびy軸方向それぞれに対して行うことが好ましい。相対モーション補正関数は、相対モーションを適切に補正できれば、どのような関数を使用してもよく、例えば、試料回転軸の回転角度θを変数とする有限次の多項式、フーリエ級数、スプライン関数等を用いることができる。相対モーション補正関数は、多項式を用いることが簡便である。多項式を用いる場合、相対モーション補正値に基づいて多項式補間をすることで相対モーション補正関数を求めることができる。以下では、試料回転軸の回転角度θを変数とするx軸方向およびy軸方向の相対モーション補正関数をそれぞれxshift(θ)、yshift(θ)とする。
【0050】
相対モーション補正関数は、リファレンス撮影データの枚数に基づいて決定される次数の多項式であることが好ましい。また、相対モーション補正関数が多項式である場合、相対モーション補正関数の次数は、リファレンス撮影データの枚数の1/2以下であることが好ましい。これにより、相対モーション補正関数の次数を適切な範囲で小さくすることができ、処理に要するコストを低減できる。
【0051】
次に、仮基準中心位置補正関数を設定し、仮基準中心位置補正関数および相対モーション補正関数で本撮影データに基づく投影像を補正する。仮基準中心位置補正関数および相対モーション補正関数で本撮影データに基づく投影像を補正することを仮補正ということにする。仮基準中心位置補正関数center(θ)は、定数であってもよいし、角度依存性を持っていてもよい。例えば、検出器上に投影された回転軸が正弦波のように動くと期待できる場合は、振幅や位相をパラメータとしてもつようなモデルを考えることができる。このような仮基準中心位置補正関数center(θ)は、例えば、以下の数式(5)のように表される。a、δ、bはパラメータである。仮基準中心位置補正関数および相対モーション補正関数で仮補正された本撮影データに基づく投影像をPとする。Pは、以下の数式(6)のように表される。
【0052】
【数5】
【0053】
【数6】
【0054】
次に、仮補正された本撮影データに基づく投影像を取得し、仮補正されたある投影像およびそれと対向する撮影角度の投影像の一致度を計算することで仮基準中心位置補正関数のパラメータを決定する。仮補正された、Pと対向する撮影角度の本撮影データに基づく投影像を仮基準中心位置に関してx方向に反転させた投影像をPとする。Pは、以下の数式(7)のように表される。x座標のマイナスは、反転したことを表している。
【0055】
【数7】
【0056】
仮補正されたある投影像およびそれと対向する撮影角度の投影像の一致度の計算に基づく仮基準中心位置補正関数および基準中心位置補正関数の決定は、例えば、以下の数式(8)を用いて行うことができる。数式(8)のP、Pは、それぞれ上記のP、Pである。すなわち、設定した仮基準中心位置補正関数center(θ)において、仮補正された本撮影データに基づく投影像および対向する撮影角度の投影像に対してMSEを計算する。そして、MSEが最小になる仮基準中心位置補正関数center(θ)のパラメータを求め、それを基準中心位置補正関数とする。
【0057】
【数8】
【0058】
数式(8)の右辺のシグマ計算において、仮基準中心位置補正関数のパラメータの決定に使用する(x,y)は、投影像上の全ての点であってもよいし、投影像に設定された枠内の点に限定してもよい。また、仮基準中心位置補正関数のパラメータの決定に使用する投影像(すなわちθの値)は、全ての本撮影データに基づく投影像ではなく、本撮影データに基づく投影像の一部とその対向する投影像から算出してもよい。これらにより、基準中心位置補正関数の決定にかかる計算コストを低減できる。一致度の計算に使用する関数はMSEに限られず、例えば、相互情報量、相関関数等を使用してもよい。
【0059】
そして、決定した基準中心位置補正関数および相対モーション補正関数を用いて本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像を補正する。このようにして、再構成をせずに本撮影データの絶対モーションを補正できる。
【0060】
上記の説明は、撮影データが平行ビームで撮影された場合の方法であるが、撮影データがファンビームまたはコーンビームで撮影された場合は、そのままでは基準中心位置補正関数の決定ができない。そのため、以下では、撮影データがファンビームで撮影された場合の修正点を説明する。
【0061】
CT装置の光学系がファンビーム光学系である場合に撮影した投影データの投影像は、拡大率のために、対向する撮影角度の投影像が厳密に対応する投影像になっていない。そこで、ファンビーム法で得られた投影像を平行ビーム法の投影像に変換するファンパラ変換を行う。また、モーションがある投影像に対するファンパラ変換は、モーションを補正した後に行う必要がある。そのため、ファンパラ変換を以下のタイミングで行う。
【0062】
相対モーション補正関数を作成し、仮基準中心位置補正関数を設定する工程までは上記と同様に行うことができる。これは、相対モーション補正関数の作成は、同一の撮影角度のリファレンス撮影データに基づく投影像と本撮影データに基づく投影像の比較により行っているためである。なお、撮影データがファンビームまたはコーンビームで撮影されたデータであって、X線強度の規格化を行う場合、最大値および最小値は、本撮影データまたはリファレンス撮影データ全体のX線強度のヒストグラムの最大値および最小値であることが好ましい。
【0063】
次に、仮基準中心位置補正関数および相対モーション補正関数で仮補正された本撮影データに基づく投影像を取得し、仮補正された投影像をファンパラ変換する。図3(a)、(b)は、それぞれ実測した投影像のサイノグラムと仮補正およびファンパラ変換後のサイノグラムを示す模式図である。図3(a)は、ファンパラ変換をする前のCU-θ平面で見たサイノグラムであり、図3(b)は、仮補正およびファンパラ変換をした後のCU-θ平面で見たサイノグラムを示す。図3(b)において、ファンパラ変換後の座標は、仮想的な検出面の座標に置き換わる。図3(a)の角度θにおける投影像の各ピクセルは、図3(b)のサイノグラムの角度θ付近の直線で表される断面上にあるピクセルに対応する。ファンパラ変換後の投影像の各ピクセルの対向位置は、図3(b)の角度θ+π付近の点線で表される断面上にある。
【0064】
このように座標が置き換わることから、仮基準中心位置補正関数center(θ)および相対モーション補正関数xshift(θ)、yshift(θ)で仮補正された本撮影データに基づく投影像Pmainをファンパラ変換して得られた変換データをP(x,y,θ;center(θ))とする。P(x,y,θ;center(θ))は、以下の数式(9)のように表される。FanParaはファンパラ変換をする関数を示し、(x,y,θ)は、それぞれファンパラ変換後の仮想的な検出面での座標を示している。
【0065】
【数9】
【0066】
ファンパラ変換後のある変換データおよびそれと対向する角度の変換データの一致度の計算に基づく仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび基準中心位置補正関数の決定は、例えば、以下の数式(10)を用いて行うことができる。数式(10)の右辺のPは、数式(9)のPである。右辺の2番目の項のx座標xのマイナスは、ファンパラ変換後の仮想的な検出面の中心に関して反転したことを表している。すなわち、設定した仮基準中心位置補正関数center(θ)において、仮補正された本撮影データに基づく投影像をファンパラ変換し、ファンパラ変換後のある変換データと対向する角度の変換データに対してMSEを計算する。そして、MSEが最小になる仮基準中心位置補正関数center(θ)のパラメータを求め、それを基準中心位置補正関数とする。
【0067】
【数10】
【0068】
このように、仮基準中心位置補正関数および相対モーション補正関数で仮補正された後にファンパラ変換された投影像を用いることで、撮影データがファンビームにより得られたデータである場合も、基準中心位置補正関数が決定できる。よって、回転軸由来のモーションがある場合もモーションによるアーチファクトを補正することができる。すなわち、本発明は、X線がファンビームである場合にも適用できる。なお、X線がコーンビームである場合も、投影像のCV方向の中央断面付近に枠を設定することで、コーンビームをファンビームとみなすことができるので、本発明を適用できる。
【0069】
[全体のシステム]
図4は、CT装置200とこれに接続された処理装置300、補正装置400、入力装置510および表示装置520を含む全体のシステム100の構成を示す概略図である。ここで、図4に示すCT装置200は、X線源260および検出器270に対し試料を回転させる構成であるが、これに限定されることはなく、X線源と検出器が一体となったガントリを回転させる構成でもよい。また、CT装置200は、平行ビーム、ファンビーム、またはコーンビームのいずれを使用する装置であっても使用できる。ただし、いずれのビームであっても、基準中心位置補正関数の決定をする場合は、360°スキャンする必要がある。
【0070】
処理装置300は、CT装置200に接続され、CT装置200の制御および取得されたデータの処理を行う。補正装置400は、撮影データまたは投影像の補正を行う。処理装置300および補正装置400は、PC端末であってもよいし、クラウド上のサーバであってもよい。入力装置510は、例えばキーボード、マウスであり、処理装置300や補正装置400への入力を行う。表示装置520は、例えばディスプレイであり、撮影データや投影像などを表示する。
【0071】
なお、図4では、補正装置400の補正機能を強調するために、処理装置300と補正装置400を別の構成要素として表示しているが、図5のように、補正装置400は処理装置300に含まれる一部の機能として構成されてもよいし、補正装置400と処理装置300は一体的なものとして構成されてもよい。図5は、全体のシステムの構成の変形例を示す概略図である。このようなシステムを使用することにより、CT画像の再構成におけるモーションによるアーチファクトを補正するためのコストを低減することができる。
【0072】
[CT装置]
図4に示すように、CT装置200は、回転制御ユニット210、試料台250、X線源260、検出器270および駆動部280を備えている。X線源260と検出器270の間に設置された、試料台250を回転させてX線CT撮影を行う。なお、X線源260および検出器270は、ガントリ(図示しない)に設置し、試料台250に固定された試料に対しガントリを回転させてもよい。
【0073】
CT装置200は、処理装置300により指示されたタイミングで試料台250を駆動し、試料の撮影データを取得する。撮影データは、処理装置300に送信される。CT装置200は、半導体デバイス等の精密な工業製品に用いることに適しているが、産業用装置のみならず動物用装置にも適用できる。
【0074】
X線源260は、X線を検出器270に向けて照射する。検出器270は、X線を受ける受光面を有し、多数のピクセルにより試料を透過したX線の強度分布を測定できる。回転制御ユニット210は、駆動部280によりCT撮影時に設定された速度で試料台250を回転させる。
【0075】
[処理装置]
図6は、処理装置300および補正装置400の構成を示すブロック図である。処理装置300は、CPU(Central Processing Unit/中央演算処理装置)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、メモリをバスに接続してなるコンピュータによって構成されている。処理装置300は、CT装置200に接続され情報を受け取る。
【0076】
処理装置300は、撮影データ記憶部310、装置情報記憶部320、再構成部330、および表示部340を備える。各部は、制御バスLにより情報を送受できる。入力装置510および表示装置520は適宜のインターフェースを介してCPUに接続されている。
【0077】
撮影データ記憶部310は、CT装置200から取得した撮影データを記憶する。撮影データには、本撮影データおよびリファレンス撮影データが含まれる。本撮影データおよびリファレンス撮影データは、回転角度情報と当該回転角度時の検出器の各ピクセルで検出されたX線強度が含まれる。装置情報記憶部320は、CT装置200から取得した装置情報を記憶する。装置情報には、装置名、ビーム形状、測定時のジオメトリ、スキャン方式等が含まれる。
【0078】
再構成部330は、対象となる撮影データからCT画像を再構成する。表示部340は、再構成したCT画像、補正前後の撮影データや投影像、または特徴抽出投影像を表示装置520に表示させる。これにより、補正された撮影データに基づいたCT画像、補正前後の撮影データや投影像、または特徴抽出投影像をユーザが確認することができる。また、ユーザがCT画像、補正前後の撮影データや投影像、または特徴抽出投影像に基づいて処理装置300、補正装置400等に指示、指定をすることができる。
【0079】
[補正装置]
補正装置400は、CPU、ROM、RAM、メモリをバスに接続してなるコンピュータによって構成されている。補正装置400は、CT装置200に直接接続されてもよいし、処理装置300を介してCT装置200に接続されてもよい。また、補正装置400は、CT装置200から情報を受け取ってもよいし、処理装置300から情報を受け取ってもよい。なお、図7のように、補正装置400が処理装置300に含まれる一部の機能として構成されてもよいし、図8のように、補正装置400と処理装置300は一体的なものとして構成されてもよい。また、補正装置400は、処理装置300の機能の一部を備えていてもよい。
【0080】
補正装置400は、撮影データ取得部410、前処理部420、相対モーション補正値算出部430、補正関数作成部440、基準中心位置決定部450、およびモーション補正部460を備える。各部は、制御バスLにより情報を送受できる。補正装置400と処理装置300が別の構成である場合、入力装置510および表示装置520は適宜のインターフェースを介して補正装置400のCPUにも接続されている。この場合、入力装置510および表示装置520は、処理装置300に接続されるものとは異なっていてもよい。
【0081】
撮影データ取得部410は、CT装置200または処理装置300から本撮影データおよびリファレンス撮影データを取得する。本撮影データおよびリファレンス撮影データは、平行ビーム、ファンビーム、およびコーンビームのいずれで得られたデータであってもよい。
【0082】
前処理部420は、本撮影データおよびリファレンス撮影データを投影像に変換する。
【0083】
前処理部420は、本撮影データまたはリファレンス撮影データのX線強度を規格化し、規格化された本撮影データまたはリファレンス撮影データに基づく投影像から特徴を抽出した特徴抽出投影像を作成することが好ましい。また、このとき、前処理部420は、特徴の抽出前にノイズ除去を行うことが好ましい。
【0084】
相対モーション補正値算出部430は、リファレンス撮影データに基づく投影像およびリファレンス撮影データの撮影角度に対応する本撮影データに基づく投影像をアラインメントし、撮影角度毎に相対モーション補正値を算出する。
【0085】
前処理部420が特徴抽出投影像を作成する場合、相対モーション補正値算出部430は、リファレンス撮影データの特徴抽出投影像およびそれに対応する本撮影データの特徴抽出投影像に基づいて相対モーション補正値を算出することが好ましい。
【0086】
補正関数作成部440は、相対モーション補正値算出部430により算出された相対モーション補正値に基づいて全ての本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像の相対モーションを補正する相対モーション補正関数を作成する。
【0087】
相対モーション補正関数は、リファレンス撮影データの枚数に基づいて決定される次数の多項式であることが好ましい。また、相対モーション補正関数が多項式である場合、相対モーション補正関数の次数は、リファレンス撮影データの枚数の1/2以下であることが好ましい。相対モーション補正関数の関数形や次数の設定は、ユーザが行う構成としてもよい。また、リファレンス撮影データの枚数に基づいて、コンピュータが自動的に設定する構成としてもよい。また、予め定められていてもよい。
【0088】
基準中心位置決定部450は、仮基準中心位置補正関数を設定する。また、基準中心位置決定部450は、仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび基準中心位置補正関数を決定する。基準中心位置決定部450は、仮補正された投影像を取得し、仮補正された投影像およびそれと対向する撮影角度の投影像の一致度を計算することで仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび基準中心位置補正関数を決定する。
【0089】
本撮影データおよびリファレンス撮影データは、コーンビームまたはファンビームにより得られたデータであってもよい。この場合、前処理部420または補正装置400のその他の構成要素がファンパラ変換を行う機能を有していてもよい。また、ファンパラ変換部が別に設けられていてもよい。基準中心位置決定部450は、仮補正された投影像をファンパラ変換して得られた変換データを取得し、変換データおよびそれと対向する角度の変換データの一致度を計算することで仮基準中心位置補正関数のパラメータを決定することが好ましい。
【0090】
モーション補正部460は、仮基準中心位置補正関数および相対モーション補正関数で本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像を仮補正する。また、モーション補正部460は、基準中心位置補正関数および相対モーション補正関数を用いて本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像を補正する。これにより、基準中心位置補正関数および相対モーション補正関数を用いて絶対モーションの補正をすることができる。補正された本撮影データまたは投影像は、最終的に再構成部330に出力されて、CT画像に変換される。
【0091】
前処理部420が特徴抽出投影像を作成する場合、モーション補正部460は、本撮影データに基づく特徴抽出投影像を仮基準中心位置補正関数および相対モーション補正関数で仮補正することが好ましい。また、このとき、基準中心位置決定部450は、仮補正された特徴抽出投影像を取得し、仮補正された特徴抽出投影像およびそれと対向する撮影角度の特徴抽出投影像の一致度を計算することで仮基準中心位置補正関数のパラメータを決定することが好ましい。
【0092】
相対モーション補正値の算出は、投影像の一部の領域に基づいて行われることが好ましい。また、仮基準中心位置補正関数のパラメータの決定は、仮補正された投影像の一部の領域に基づいて行われることが好ましい。これにより、計算コストを低減できる。投影像の一部の領域の設定は、ユーザが行う構成としてもよい。例えば、x軸方向、y軸方向の幅と枠の中心位置を指定することで領域が設定できる。また、特徴的な構造に基づいて、コンピュータが自動的に設定する構成としてもよい。また、予め定められていてもよい。
【0093】
上記の設定がユーザにより指定される場合、例えば、マウス操作やキーボード操作で種々の設定をできるUI機能を用いることが好ましい。図9(a)は、ユーザが種々の設定をする場合のUIの一例を示した概念図である。図9(b)は、多項式補間の結果の一例を示すグラフである。図9(a)では、例えば、画面の右側に表示されたあるリファレン撮影データまたは投影像の表示画面上で対応する本撮影データまたは投影像の画像との一致度を計算するための枠を設定することができる。また、画面の右側に表示されたある撮影データまたは投影像の表示画面上で対向する撮影データまたは投影像の画像との一致度を計算するための枠を設定することができる。
【0094】
図9の例において、(x,y)計算使用範囲は、相対モーション補正値の算出または基準中心位置の決定に使用する画像範囲を設定できる。(x,y)計算使用範囲は、画像Viewの枠に対応する。(x,y)探索範囲は、撮影データまたは投影像を上下左右に最大どれだけ動かすかを設定できる。次数は、相対モーション補正関数の多項式補間の次数を設定できる。基準中心位置の探索範囲は、対向する角度のデータのx方向アラインメントの探索範囲を設定できる。UI機能は、計算結果の表示機能を有していてもよい。計算結果の表示機能は、アラインメント計算または多項式補間の結果を、例えば、図9(b)のように視覚的に表示させるように設定できる。なお、図9(a)に表示される設定事項は一例であり、これらをユーザが設定する場合でも、これらのうち一部のみが設定できるようにしてもよいし、全部が設定できるようにしてもよい。また、図9には表示されていない設定事項があってもよい。
【0095】
[測定方法]
CT装置200に試料を設置し、所定の条件で回転軸の移動とX線の投影を繰り返すことで、X線を試料に照射しつつ本撮影データまたはリファレンス撮影データを取得する。CT装置200は、スキャン方式のような装置情報および取得された本撮影データまたはリファレンス撮影データを撮影データとして処理装置300または補正装置400に送信する。
【0096】
[補正方法]
(平行ビームの場合のフローの説明)
図10は、補正装置400の動作の一例を示すフローチャートである。まず、補正装置400は、撮影データを取得する(ステップS1)。次に、前処理をする(ステップS2)。次に、相対モーション補正値を算出する(ステップS3)。リファレンス撮影データの各撮影角度において、リファレンス撮影データに基づく投影像と同一の撮影角度の本撮影データに基づく投影像との一致度が最大となるx軸方向、y軸方向それぞれの移動量を相対モーション補正値とする。投影像に枠を設定している場合、枠内の領域だけで一致度の計算を行う。次に、相対モーション補正関数の作成をする(ステップS4)。相対モーション補正関数は、リファレンスデータの枚数の1/2以下として設定することが好ましい。
【0097】
次に、仮基準中心位置補正関数の設定をする(ステップS5)。次に、本撮影データに基づく投影像を相対モーション補正関数と仮基準中心位置補正関数で仮補正する(ステップS6)。次に、仮補正されたある投影像と対向する角度の投影像との一致度を計算する(ステップS7)。
【0098】
そして、設定した条件を満たさない場合(ステップS8-NO)、ステップS5に戻り、別の仮基準中心位置補正関数を設定し、ステップS7までの処理を再び行う。一方、設定した条件を満たす場合(ステップS8-YES)、次に、仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび基準中心位置補正関数を決定する(ステップS9)。そして、相対モーション補正関数および決定された基準中心位置補正関数を用いて本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像を補正する(ステップS10)。このようにして、本撮影データまたは投影像を補正することができる。なお、ステップS8の条件は、仮基準中心位置補正関数のパラメータが設定した範囲内の全てを網羅したか、ある仮基準中心位置について計算した一致度の合計値が所定の閾値を満たすか、ある仮基準中心位置について計算した一致度の合計値が極値になっているか、などを条件とすることができる。また、相対モーション補正関数は、例えば、次数を複数設定し、ステップ4からステップ9までを実行し、ステップS8での一致度が最もよくなる次数を採用することができる。これにより、絶対モーションのより高度な推定ができる。
【0099】
(ファンビームまたはコーンビームの場合のフローの説明)
図11は、補正装置400の動作の変形例を示すフローチャートである。図11は、ファンビームまたはコーンビームにより得られた撮影データを補正する場合の動作の一例である。まず、補正装置400は、撮影データを取得する(ステップT1)。次に、前処理をする(ステップT2)。次に、相対モーション補正値を算出する(ステップT3)。次に、相対モーション補正関数の作成をする(ステップT4)。
【0100】
次に、仮基準中心位置補正関数の設定をする(ステップT5)。次に、本撮影データに基づく投影像を相対モーション補正関数と仮基準中心位置補正関数で仮補正する(ステップT6)。次に、仮補正後の投影像をファンパラ変換する(ステップT7)。次に、ファンパラ変換後のある変換データと対向する角度の変換データとの一致度を計算する(ステップT8)。
【0101】
そして、設定した条件を満たさない場合(ステップT9-NO)、ステップT5に戻り、別の仮基準中心位置補正関数を設定し、ステップT7までの処理を再び行う。一方、設定した条件を満たす場合(ステップT9-YES)、次に、仮基準中心位置補正関数のパラメータおよび基準中心位置補正関数を決定する(ステップT10)。そして、相対モーション補正関数および決定された基準中心位置補正関数を用いて本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像を補正する(ステップT11)。このようにして、本撮影データまたは投影像を補正することができる。なお、ステップT9の条件は、仮基準中心位置補正関数のパラメータが設定した範囲内の全てを網羅したか、ある仮基準中心位置について計算した一致度の合計値が所定の閾値を満たすか、ある仮基準中心位置について計算した一致度の合計値が極値になっているか、などを条件とすることができる。
【0102】
[補正および再構成方法]
図10および図11のフローチャートは、補正装置400のみの動作を示している。本撮影データまたは投影像の補正としてはこれで十分であるが、従来技術との違いを明確にするため、本撮影データの撮影および再構成を含む動作も説明しておく。
【0103】
図12は、システム100の動作の一例を示すフローチャートである。まず、CT装置200は、CT撮影をする(ステップU1)。CT撮影は、回転軸の移動とX線の投影の繰り返しを含む。次に、本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像を補正する。(ステップU2)。本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像を補正するフローは、取得した投影像の光学系の種類に応じて、例えば、図10または図11のフローの片方を採用してもよい。また、装置情報から光学系を判別して、適したフローを選択できるようにしてもよい。そして、処理装置300または補正装置400は、補正された本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像を用いて、CT画像を再構成する(ステップU3)。このようにして、補正した本撮影データまたは本撮影データに基づく投影像を用いて再構成したCT画像を得ることができる。
【0104】
従来技術では、CT画像の再構成とアーチファクト低減のための補正を繰り返していた。これに対し、本発明では、再構成する前の投影像に対してアーチファクト低減のための補正をしている。このようにすることで、補正のためのコストを低減することができる。また、相対モーションだけでなく回転軸由来のモーションがあっても、これを補正できる。
【0105】
[実施例1]
上記のように構成されたシステム100を用いて、不織布(試料1)を観察した。CT装置200には、リガク製nanо3DX(疑似平行ビーム光学系)を用いて測定した。図13(a)、(b)は、それぞれ本発明の方法により求めた試料1の相対モーション補正関数、および基準中心位置の決定の結果を示すグラフである。図13(a)は、x,y方向の相対モーション補正値および相対モーション補正関数を示している。図13(b)は、設定した仮基準中心位置とそのときのMSEの値を示しており、MSEの値が最も小さくなった位置が決定した基準中心位置である。図14(a)から(f)は、それぞれ補正を行った本撮影データを用いて再構成した試料1のCT画像のある断面および補正を行っていない本撮影データを用いて再構成した試料1のCT画像の同じ断面である。図14(a)から(c)は、補正を行っており、図14(d)から(f)は補正を行っていない。再構成は、FDK法を用いた。
【0106】
本発明の方法で決定した基準中心位置は-16pixelとなり、参考値(スライス再構成の逐次計算から求めた中心位置)と同じ値を算出できた。すなわち、本発明の方法は、再構成を用いなくても、基準中心位置を精度よく短時間で求めることができることが確かめられた。また、図14(a)から(c)と(d)から(f)をそれぞれ比較することで、本発明の方法の補正により、アーチファクトが低減していることが分かった。
【0107】
[実施例2]
次に、キャパシタ(試料2)を観察した。CT装置200には、リガク製のコーンビーム光学系のCT装置を用いて測定した。図15(a)、(b)は、それぞれ本発明の方法により求めた試料2の相対モーション補正関数、および基準中心位置の決定の結果を示すグラフである。図15(a)は、x,y方向の相対モーション補正値および相対モーション補正関数を示している。図15(b)は、設定した仮基準中心位置とそのときのMSEの値を示しており、MSEの値が最も小さくなった位置が決定した基準中心位置である。図16(a)から(f)は、それぞれ補正を行った本撮影データを用いて再構成した試料2のCT画像のある断面および補正を行っていない本撮影データを用いて再構成した試料2のCT画像の同じ断面である。図16(a)から(c)は、補正を行っており、図16(d)から(f)は補正を行っていない。再構成は、試料1と同様にFDK法を用いた。
【0108】
本発明の方法で決定した基準中心位置は-6pixelとなり、参考値(スライス再構成の逐次計算から求めた中心位置)と同じ値を算出できた。すなわち、本発明の方法は、コーンビームで得られた撮影データであっても、再構成を用いなくても、基準中心位置を精度よく短時間で求めることができることが確かめられた。また、図16(a)から(c)と(d)から(f)をそれぞれ比較することで、本発明の方法の補正により、アーチファクトが低減していることが分かった。本発明の補正方法は、コーンビームまたはファンビームで測定した撮影データにも適用できることが確認できた。
【0109】
以上の結果により、本発明の補正装置、システム、方法およびプログラムは、CT画像の再構成におけるモーションによるアーチファクトを効果的に補正でき、計算コストを低減できることが確認された。
【符号の説明】
【0110】
100 システム
200 CT装置
210 回転制御ユニット
250 試料台
260 X線源
270 検出器
280 駆動部
300 処理装置
310 撮影データ記憶部
320 装置情報記憶部
330 再構成部
340 表示部
400 補正装置
410 撮影データ取得部
420 前処理部
430 相対モーション補正値算出部
440 補正関数作成部
450 基準中心位置決定部
460 モーション補正部
510 入力装置
520 表示装置
図1
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