(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055702
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】温度測定装置
(51)【国際特許分類】
G01J 5/02 20220101AFI20240411BHJP
G01J 5/04 20060101ALI20240411BHJP
G01J 5/07 20220101ALI20240411BHJP
G01J 5/0806 20220101ALI20240411BHJP
【FI】
G01J5/02 J
G01J5/04
G01J5/07
G01J5/0806
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162832
(22)【出願日】2022-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】594142311
【氏名又は名称】株式会社ティアンドデイ
(74)【代理人】
【識別番号】100127661
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 一彦
(72)【発明者】
【氏名】両角 佑太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友太
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066BA57
2G066CA14
2G066CA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来の温度測定装置に比べ、組立効率が高いものでありながら高精度な温度測定を行う温度測定装置を提供する。
【解決手段】温度測定装置1は、距離センサ40と、距離センサ40が受ける光を導く第1導波管10と、温度センサ50と、温度センサ50が受ける光を導く第2導波管20と、第1導波管10及び第2導波管と一体になって本体ケース70に取り付けられる板状取付部材30とを備える。第1導波管10における軸方向の深さは、第2導波管20における軸方向の深さよりも小さく設定されている。板状取付部材30において、第1中空部13及び第2中空部23が板状取付部材30を貫通するようにして第1導波管10及び第2導波管20が板状取付部材30と一体に形成されており、且つ、板状取付部材30の表面31及び裏面32の位置が第2前端開口部21に近い位置となるように配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物までの間の距離を計測する距離センサと前記測定対象物から放射された赤外線を検出する温度センサとを用いながら前記測定対象物の温度を非接触で測定する温度測定装置であって、
略円筒形状をなし、外部に開口する第1前端開口部及び前記第1前端開口部の反対側であって当該温度測定装置の内部に開口する第1基端開口部を有し、前記第1前端開口部から前記第1基端開口部にかけて形成された第1中空部を構成する第1内壁によって前記距離センサが受ける光を導く第1導波管と、
略円筒形状をなし、外部に開口する第2前端開口部及び前記第2前端開口部の反対側であって当該温度測定装置の内部に開口する第2基端開口部を有し、前記第2前端開口部から前記第2基端開口部にかけて形成された第2中空部を構成する第2内壁によって前記温度センサが受ける光を導く第2導波管と、
発光素子及び受光素子を有し、前記発光素子の発光面及び前記受光素子の受光面が外部を向くような位置関係で前記第1基端開口部に対向して配置された前記距離センサと、
赤外線検出素子を有し、前記赤外線検出素子の受光面が外部を向くような位置関係で前記第2基端開口部に対向して配置された前記温度センサと、
略板状をなしており、表面又は裏面の少なくとも一部が本体ケースに当接するようにして該本体ケースに取り付けられた板状取付部材と、を備え、
前記第1導波管における前記第1前端開口部から前記第1基端開口部までの軸方向の深さは、前記第2導波管における前記第2前端開口部から前記第2基端開口部までの軸方向の深さよりも小さく設定されており、
前記板状取付部材において、前記第1導波管の前記第1中空部が前記表面と前記裏面との間を貫通すると共に、前記第2導波管の前記第2中空部が前記表面と前記裏面との間を貫通するようにして、前記第1導波管及び前記第2導波管が当該板状取付部材と一体に形成されており、且つ、前記表面及び前記裏面の位置が前記第2基端開口部よりも前記第2前端開口部に近い位置となるようにして当該板状取付部材が前記第2導波管に対し配置されている、
ことを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温度測定装置において、
前記第1導波管、前記第2導波管及び板状取付部は樹脂によって一体に形成されたものであり、
前記第1導波管の前記第1内壁は鏡面仕上げがなされており、
前記第2導波管の前記第2内壁の最表層は金属によるメッキ層となっている、
ことを特徴とする温度測定装置。
【請求項3】
前記金属によるメッキ層は、金によるメッキ層であることを特徴とする請求項2に記載の温度測定装置。
【請求項4】
一体化された前記第1導波管、前記第2導波管及び板状取付部の全表面において金属によるメッキ層が形成されている、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の温度測定装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の温度測定装置において、
前記第2導波管の前記第2内壁は、光軸に沿って前記第2基端開口部から前記第2前端開口部に向かうにつれ内径が大きくなるように構成されている、ことを特徴とする温度測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の温度測定装置において、
前記第2導波管の前記第2内壁は略放物面となっており、
前記温度センサの赤外線検出素子の受光面が当該放物面の焦点近傍の位置に配置されている、ことを特徴とする温度測定装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の温度測定装置において、
前記第1導波管の前記第1前端開口部の縁と前記第2導波管の前記第2前端開口部の縁とが略同一の仮想面上に配置されるようにして、前記第1導波管及び前記第2導波管が一体化されている、ことを特徴とする温度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の温度を非接触で測定する温度測定装置として、測定対象物から放射された赤外線を検出する温度センサ(赤外線検出素子を含む)を設けると共に、温度測定をより正確に高精度に行うため、距離センサ(発光素子及び受光素子を含む)を更に設け、当該距離センサで測定対象物と当該温度測定装置との間の距離を計測し、所定の範囲内の適切な距離で温度測定を行わせる構成のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、温度測定装置に導波管を導入し、略パラボラ状の内壁面で外部から入射した赤外線を収束させ、当該導波管の基端開口部付近(奥の方の開口付近)に配置した温度センサに対し温度測定のための赤外線を導くという構成も知られている(例えば特許文献2参照)。かかる構成により、測定対象物から放射された赤外線を効率的に温度センサへ導くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-99646号
【特許文献2】特開2017-176560号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の温度測定装置においては温度センサ、距離センサ、導波管等の構成部品が個別に扱われていることから、温度測定装置全体としても複雑な構造となり、当該装置を製造する際の組立作業においても多くの工程が必要となっていた。また、温度センサがセンシングする光軸の方向と距離センサがセンシングする光軸の方向を合致させるために、上記構成部品同士の相対的な位置合わせを行う工程も必要となっていた。
【0006】
また、上記した個別の構成部品の組合せが必然的に伴うため、温度センサと距離センサとの間の相対的な位置関係のバラツキについては、どんなに注意深く組み立てたとしても潜在的に残留するものであった。このような位置関係のバラツキの問題は測定精度向上を妨げる原因の1つにもなっていた。
【0007】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、従来の温度測定装置に比べ、組立効率が高いものでありながら高精度な温度測定を行うことができる温度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、測定対象物までの間の距離を計測する距離センサと測定対象物から放射された赤外線を検出する温度センサとを用いながら測定対象物の温度を非接触で測定する温度測定装置が提供される。
【0009】
温度測定装置は、略円筒形状をなし、外部に開口する第1前端開口部、及び第1前端開口部の反対側であって当該温度測定装置の内部に開口する第1基端開口部を有し、第1前端開口部から第1基端開口部にかけて形成された第1中空部を構成する第1内壁によって距離センサが受ける光を導く第1導波管を備える。また、略円筒形状をなし、外部に開口する第2前端開口部、及び第2前端開口部の反対側であって当該温度測定装置の内部に開口する第2基端開口部を有し、第2前端開口部から第2基端開口部にかけて形成された第2中空部を構成する第2内壁によって温度センサが受ける光を導く第2導波管を備える。また、発光素子及び受光素子を有し、発光素子の発光面及び受光素子の受光面が外部を向くような位置関係で第1基端開口部に対向して配置された距離センサを備える。また、赤外線検出素子を有し、赤外線検出素子の受光面が外部を向くような位置関係で第2基端開口部に対向して配置された温度センサを備える。さらに、略板状をなしており、表面又は裏面の少なくとも一部が本体ケースに当接するようにして該本体ケースに取り付けられた板状取付部材を備える。
【0010】
このとき、第1導波管における第1前端開口部から第1基端開口部までの軸方向の深さは、第2導波管における第2前端開口部から第2基端開口部までの軸方向の深さよりも小さく設定されている。
【0011】
また、板状取付部材において、第1導波管の第1中空部が表面と裏面との間を貫通すると共に、第2導波管の前記第2中空部が前記表面と前記裏面との間を貫通するようにして、第1導波管及び第2導波管が板状取付部材と一体に形成されており、且つ、表面及び裏面の位置が前記第2基端開口部よりも第2前端開口部に近い位置となるようにして当該板状取付部材が第2導波管に対し配置されている。
【0012】
本発明の温度測定装置によれば、従来の温度測定装置に比べ、組立効率が高いものでありながら高精度な温度測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る温度測定装置1の外観を説明するために示す斜視図である。
【
図2】実施形態のセンサ導入ユニット100を説明するために示す斜視図である。
【
図3】実施形態のセンサ導入ユニット100を説明するために示す断面図である。
【
図4】実施形態のセンサ導入ユニット100に、プリント配線基板75に実装された距離センサ40、温度センサ50、本体ケース70等を取り付けたときの様子を示す断面図である。
【
図5】実施形態のセンサ導入ユニット100を説明するために示す断面図である。
【
図6】変形例のセンサ導入ユニット100’の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る温度測定装置について図を参照しながら説明する。なお、各図に共通する符号については、当該符号について既に説明した内容を他の図の説明においても援用できることから、他の図における説明を省略する。なお、本明細書における「外部」というのは温度測定装置1からみての外部(本体ケース70の外面よりも外側)を指し、「内部」というのは本体ケース70の内面よりも内側を指すものとする。
【0015】
[実施形態]
1.実施形態に係る温度測定装置1の構成
(1)温度測定装置1の概要
実施形態に係る温度測定装置1は、測定対象物までの間の距離を計測する距離センサ40と測定対象物から放射された赤外線を検出する温度センサ50とを用いながら測定対象物の温度を非接触で測定する温度測定装置である。
【0016】
図1は、実施形態に係る温度測定装置1の外観を説明するために示す斜視図である。
図1(a)は温度測定装置1の正面側を示す斜視図であり、
図1(b)は背面側を示す斜視図である。なお、板状取付部材30は本体ケース70に隠れて外部から見えないため仮想線(2点鎖線)で示している。
【0017】
図1に示すように、温度測定装置1は距離センサ40、温度センサ50、第1導波管10、第2導波管20及び板状取付部材30(詳細は
図2等参照)を備えている。
第1導波管10及び第2導波管20は距離センサ40及び温度センサ50にそれぞれ対応して準備されたものであり、これら第1導波管10及び第2導波管20は本体ケース70への取り付けがなされる板状取付部材30(
図4も併せて参照)と併せて一体に形成されている(詳細は後述)。
【0018】
図1に示す温度測定装置1は、操作スイッチ88、ディスプレイ89等が実装されたヒューマンI/F(Interface)面81と、ヒューマンI/F面81の反対側の面であるセンシング光入力面82と、温度測定装置1の操作者が把持する把持部83とを有している。
温度測定装置1は本体ケース70によってケーシングされている。本体ケース70は、センシング光入力面82において、少なくとも第1前端開口部及び第2前端開口部(後述)が外部に開放されるように第1前端開口部の形状及び第2前端開口部の形状に対応した切り欠き穴を有している。しかるに、センシング光入力面82においては、第1導波管10及び第2導波管20の一部(後述する第1内壁14及び第2内壁24)、並びに、それらに対応して内部に配置された距離センサ40及び温度センサ50の一部が外部に向けて露出している。
【0019】
なお、符号AX1及びAX2は第1導波管10及び第2導波管の光軸をそれぞれ示している。また、
図1に示す温度測定装置1の外観・部品配置等の構成はあくまでも一例であり、本実施形態は
図1に示す構成に限定されるものではない。
【0020】
(2)センサ導入ユニット100
「センサ導入ユニット100」は、第1導波管10、第2導波管20及び板状取付部材30からなる。
図2は、実施形態のセンサ導入ユニット100を説明するために示す斜視図である。なお、
図2は点線A(
図1参照)で囲んだ領域のセンサ導入ユニット100を拡大した斜視図であり、理解を促進するため距離センサ40及び温度センサ50も仮想線を用いて併せて示している。
図3は、実施形態のセンサ導入ユニット100を説明するために示す断面図である。なお、
図3は、光軸AX1及び光軸AX2を含む仮想平面B(
図2参照)でセンサ導入ユニット100を切断して矢印Cの方向から視たときの断面図である。
【0021】
(3)第1導波管10
第1導波管10は、距離センサ40が受ける光を導く導波管である。
第1導波管10は、略円筒形状をなしている。なお、本明細書において「略円筒形状」というのは、真円を基調とした厳密な円筒形状に限らず、本実施形態の作用効果を奏するものであれば若干歪んだ形状であったり外周面に若干の凹凸等を有するような形状であっても構わない。
第1導波管10は、外部に開口する(外部を臨むようにして開口する)第1前端開口部11及び第1前端開口部11の反対側であって当該温度測定装置1の内部に開口する第1基端開口部12を有する。
第1基端開口部12付近は、距離センサ40が配置されるべき距離センサ配置部19となる。第1導波管10は、第1前端開口部11から第1基端開口部12にかけて形成された第1中空部13を構成する第1内壁14によって距離センサ40が受ける光を導く。
【0022】
図に示す例のように、第1導波管10の第1中空部13は、第1基端開口部12から第1前端開口部11にかけて第1内壁14の内径がほぼ同一な円筒状の空間として構成されていてもよい。
【0023】
なお、第1導波管10の第1内壁14は鏡面仕上げがなされていることが好ましい。
【0024】
(4)第2導波管20
第2導波管20は、温度センサ50が受ける光を導く導波管である。
第2導波管20は、略円筒形状をなしている。
第2導波管20は、外部に開口する(外部を臨むようにして開口する)第2前端開口部21及び第2前端開口部21の反対側であって当該温度測定装置1の内部に開口する第2基端開口部22を有する。
第2基端開口部22付近は、温度センサ50が配置されるべき温度センサ配置部29となる。第2導波管20は、第2前端開口部21から第2基端開口部22にかけて形成された第2中空部23を構成する第2内壁24によって温度センサ50が受ける光を導く。
【0025】
図に示す例のように、第2導波管20の第2内壁24は、光軸AX2に沿って第2基端開口部22から第2前端開口部21に向かうにつれ内径が大きくなるように構成されていてもよい。さらには、第2導波管20の第2内壁24が略放物面になるように構成されていてもよい。
【0026】
第1導波管10における第1前端開口部11から第1基端開口部12までの軸方向の深さ(光軸AX1方向の深さ)D1は、第2導波管20における第2前端開口部21から第2基端開口部22までの軸方向の深さ(光軸AX2方向の深さ)D2よりも小さく設定されている(
図3参照)。
【0027】
第2導波管20の第2内壁24の最表層は金属によるメッキ層となっていることが好ましい。さらには、前記した金属によるメッキ層は、金によるメッキ層であることがより好ましい。
【0028】
(5)距離センサ40及び温度センサ50
図4は、実施形態のセンサ導入ユニット100に、プリント配線基板75に実装された距離センサ40、温度センサ50、本体ケース70等を取り付けたときの様子を示す断面図である。
図5は、実施形態のセンサ導入ユニット100を説明するために示す断面図である。なお、
図5は、センサ導入ユニット100を矢印Dの方向(
図2~
図4参照)から視たときの光軸AX1付近の断面図である。
【0029】
(5-1)距離センサ40は、測定対象物と本温度測定装置1との間の距離を測定するためのセンサである。測定対象物の温度を測定する際に、測定対象物と温度センサ50との間の距離が不適切な場合に適正に温度測定できないことがある。このため、距離センサ40で距離測定を行いながら適正に測定対象物の温度測定を実施できるようにするものである。
【0030】
図4及び
図5に示すように、距離センサ40は、発光素子41及び受光素子42を有する。発光素子41は、距離計測のための計測光を出力する。受光素子42は、測定対象物で計測光が反射することで生じた反射光を入力する受光素子を有する。距離センサ40は、受光素子42に入力した反射光を測定することによって測定対象物との間の距離を計測する。
【0031】
距離センサ40は、発光素子41の発光面41a及び受光素子42の受光面42aが外部を向くような位置関係で、何等かの実装方法により、第1導波管10の第1基端開口部12に対向して配置されている(
図2も併せて参照)。つまり、距離センサ40は第1基端開口部12を窓としたときに当該窓の近傍で発光素子41の発光面41a及び受光素子42の受光面42aが配置されており、第1導波管10を外部からみると、発光素子41の発光面41a及び受光素子42の受光面42aが当該窓の位置から外部を臨むように配置されている。
【0032】
図に示す例では、距離センサ40がプリント配線基板75に実装され、かかるプリント配線基板75が後述する板状取付部材30に固定される形で、距離センサ40が第1基端開口部12付近の距離センサ配置部19に配置されている。なお、距離センサ40は、第1内壁14に囲まれた第1中空部13の中に配置されていてもよいし(図参照)、わずかに外に配置されていてもよい。
【0033】
(5-2)温度センサ50は、測定対象物から放射された赤外線を赤外線検出素子51で検出して測定対象物の温度を測定するセンサである。
温度センサ50は、赤外線検出素子51を有し、赤外線検出素子51の受光面51aが外部を向くような位置関係で、何等かの実装方法により(例えば、図示しないプリント配線基板に当該温度センサ50のリード端子58が固定される形で)、第2導波管20の第2基端開口部22に対向して配置されている(
図2も併せて参照)。
図に示す例では、温度センサ50は、第2内壁24が略放物面となっている第2導波管20の温度センサ配置部29に配置され、温度センサ50の赤外線検出素子51の受光面51aが当該放物面の焦点FC近傍の位置に配置されている。
【0034】
(6)板状取付部材30、第1導波管10及び第2導波管20の一体化
(6-1)板状取付部材30は、第1導波管10及び第2導波管20を構造的に結合させつつ、本体ケース70に取り付けが行われる部材である。板状取付部材30は、略板状をなしており、表面31又は裏面32の少なくとも一部が本体ケース70に当接するようにして該本体ケース70に取り付けられている(
図4参照)。
図に示す例では、板状取付部材30には固定用ねじ穴33を有し、ねじ78が当該固定用ねじ穴33を挿通するようにして、板状取付部材30が本体ケース70に固定されている(
図4参照)。
【0035】
板状取付部材30の厚さ(表面の位置P1~裏面の位置P2の寸法。
図3参照)は、第2導波管20における第2前端開口部21から第2基端開口部22までの軸方向の深さD2よりも小さくなるように設定されている。
板状取付部材30において、第1導波管10の第1中空部13が板状取付部材30の表面31と裏面32との間を貫通すると共に、第2導波管20の第2中空部23が板状取付部材30の表面31と裏面32との間を貫通するようにして、第1導波管10及び第2導波管20が当該板状取付部材30と一体に形成されている。つまり、センサ導入ユニット100を平面視すると第1中空部13及び第2中空部23の部分で貫通しており、板状取付部材30の表面31と裏面32との間で空間的に通じるようにしながら、第1導波管10及び第2導波管20は板状取付部材30と一体化されている。
【0036】
このとき、板状取付部材30の表面31の位置P1及び裏面32の位置P2が、第2基端開口部22よりも第2前端開口部21に近い位置となるようにして、当該板状取付部材30が第2導波管20に対し配置されている。つまり、第2導波管20の第2前端開口部21が本体ケース70の外面側に位置するように配置されている(
図3参照)。
【0037】
また、第1導波管10の第1前端開口部11の縁11aと第2導波管20の第2前端開口部21の縁21aとが略同一の仮想面VS上に配置されるようにして、第1導波管10及び第2導波管20が板状取付部材30と共に一体化されていることが好ましい(
図3参照)。仮想面VSは、図において平面であるが、これに限られず曲面であってもよい。
【0038】
(6-2)また、図に示す例では、板状取付部材30はプリント配線基板75を配置させるための厚み方向の切欠き35を有している。このような切欠き35を活用することにより、
図4及び
図5に示すように、距離センサ40が実装されたプリント配線基板75が、第1導波管10の第1基端開口部12の位置と、板状取付部材30の裏面32の位置P2(
図3)との間に配置されることとなり、組立性が向上すると共に省スペースとなる。
【0039】
(6-3)第1導波管10、第2導波管20及び板状取付部材30を一体化する方法は、如何なる方法であってもよい。例えば、第1導波管10、第2導波管20及び板状取付部材30は樹脂によって一体に形成されたものであってもよい。
【0040】
具体的には、第1導波管10、第2導波管20及び板状取付部材30は、例えばいわゆるABS樹脂で一体形成された後、必要に応じてクロムメッキなどの下地メッキを施し、更に最表層には金メッキなどの反射率の高いメッキを施して金によるメッキ層を構成してもよい。最表層の金属メッキについては、反射率が高ければ銀メッキやアルミ、ニッケル-クロム、ロジウムなどの金以外のメッキであってもよい。メッキを施す箇所は第1導波管10の第1内壁14及び第2導波管20の第2内壁24にのみ部分メッキを施してもよい。
【0041】
あるいは、一体化された第1導波管10、第2導波管20及び板状取付部材30の全表面において金属によるメッキ層を形成した構成にしてもよい。
【0042】
2.実施形態に係る温度測定装置1の効果
(1)実施形態1に係る温度測定装置1は、板状取付部材30において、第1導波管10の第1中空部13が表面31と裏面32との間を貫通すると共に、第2導波管20の第2中空部23が表面31と裏面32との間を貫通するようにして、第1導波管10及び第2導波管20が当該板状取付部材30と一体に形成されている。
【0043】
このため、板状取付部材30を媒介に第1導波管10及び第2導波管20を一体物として扱うことができ、第1導波管10及び第2導波管20(ひいては距離センサ40及び温度センサ50)を本体ケース70に取り付ける際の作業性が飛躍的に向上する。
【0044】
また、光学的な位置合わせについても、第1導波管10と第2導波管20との間の位置関係や距離が既に固定化されているので、距離センサ40及び温度センサ50の取付位置のみ管理すればよく、組立効率の向上が図れる。更には、組立精度も上がるため結果として高精度な温度測定の実現に寄与することができる。
【0045】
また、温度測定装置1は、第1導波管10、第2導波管20及び板状取付部材30が一体となっており、これら全体としても比較的大きな熱容量を持たせることができる。このため、赤外線が相当程度収束している温度センサ配置部29付近(第2基端開口部22付近)が仮に発熱したとしても、温度センサ配置部29付近のみ熱が籠ることを防止することができる。
【0046】
さらには、第1前端開口部11及びそれに続く第1内壁14、第2前端開口部21及びそれに続く第2内壁24、板状取付部材30の外部に面している部分などが外界の空気に接触しているため、上記した赤外線の収束による熱を比較的大きな表面積で以て放熱することが可能となる。
そうすると、仮に温度センサ配置部29付近(第2基端開口部22付近)が発熱したとしても、かかる構成を以て放熱させることで、速やかに温度センサ50及び第2導波管20の温度を外気温に近づけることができ、また、外気温の変化があった場合にも、素早く放熱または吸熱し速やかに外気温に合わせる(近づける)ことができる。これにより誤差が小さく高精度な温度測定の実現に寄与することができる。
【0047】
実施形態1に係る温度測定装置1は、第1導波管10における第1前端開口部11から第1基端開口部12までの軸方向の深さD1が、第2導波管20における第2前端開口部21から第2基端開口部22までの軸方向の深さD2よりも小さく設定されている。別観点で言うと、第1導波管10の第1内壁14の軸方向の長さは比較的小さく設定されており、距離センサが本体ケースの外面近くに配置されている。しかるに、第1導波管10は比較的短い管であり第1内壁14の長さも短いため、第1内壁14による乱反射が起きる確率を下げることができる。したがって、距離センサ40の発光素子41から発した計測光が内壁で乱反射して一部が受光素子42に戻ってくる確率を下げることができ、結果として距離測定の精度を高めることができる。ひいては高精度な温度測定の実現に寄与することができる。
【0048】
以上のことから、実施形態1に係る温度測定装置1は、従来の温度測定装置に比べ、組立効率が高いものでありながら高精度な温度測定を行うことができる。
【0049】
(2)温度測定装置1において、第1導波管10、第2導波管20及び板状取付部材30は樹脂によって一体に形成されたものであり、第1導波管10の第1内壁14は鏡面仕上げがなされており、第2導波管20の第2内壁24の最表層は金属によるメッキ層となっている。
【0050】
第1導波管10の第1内壁14は鏡面仕上げとすることで、距離センサ40の受発光時における乱反射(光の散乱)を抑制することが可能となる。また、第2導波管20の第2内壁24の最表層は金属によるメッキ層とすることで、赤外線を効率的に温度センサ配置部29付近に集めることができる。樹脂に比べて熱伝導率が高い金属が最表層に配置され、かかる最表層が外界の空気と接触する構成となっているため、温度センサ配置部29付近(第2基端開口部22付近)に生じた熱を、かかる金属によるメッキ層を介して効率的に外界に放熱することが可能となる。
【0051】
(3)金属によるメッキ層を、「金」によるメッキ層とすることで、高い光反射率と高い熱伝導率による高放熱効率が提供可能となると共に、空気による腐食・浸食にも強い堅牢な温度測定装置とすることができる。
【0052】
(4)一体化された第1導波管10、第2導波管20及び板状取付部材30の全表面において金属によるメッキ層を形成する構成とすることにより、第1導波管10の鏡面仕上げを行うための処理と第2導波管の反射率を高めるための処理を、複雑な部分メッキを施さずとも共通の一つのメッキ工程で行うことが可能となり、製造効率(組立効率)を更に高めることができる。
【0053】
(5)第2導波管20の第2内壁24を、光軸AX2に沿って第2基端開口部22から第2前端開口部21に向かうにつれ内径が大きくなるように構成することにより、効率的に赤外線を温度センサ配置部29付近に集光させることができる。さらには、第2導波管20の第2内壁24が略放物面になるように構成することにより、より効率的に赤外線を温度センサ配置部29付近に集光させることができる。
【0054】
(6)温度測定装置1において、第1導波管10の第1前端開口部11の縁11aと第2導波管20の第2前端開口部21の縁21aとが、略同一の仮想面上に配置されるようにして、第1導波管10及び第2導波管20が板状取付部材30と共に一体化されている。
このように構成することにより、第1前端開口部11の縁11aと第2前端開口部21の縁21aとが同一仮想面上に揃うため、組立性が向上すると共に、温度測定装置1を組み上げたときには滑らかな外形デザインを構成することができる。
【0055】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0056】
(1)実施形態の説明では、略円筒状の第2導波管20については、実質的な導波管を構成する第2中空部23に加えて、温度センサ50の赤外線検出素子51付近をも囲うような内部空間を有し、赤外線検出素子51付近もかかる内部空間に収容される構成を例に挙げた(
図4参照)。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図6に示すように第2基端開口部22の外側に温度センサ50(赤外線検出素子51)が配置されるような態様で温度測定装置を構成してもよい。
なお、
図6は変形例のセンサ導入ユニット100’の断面図である。
図6は
図3に対応する断面図であるが、理解を促進するために温度センサ50を併せて示している。
【0057】
(2)
図2~5においては、距離センサ40を発光素子41と受光素子42とが一体となったユニット部品であることを前提とした様子を描いた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。発光素子41と受光素子42とを互いに独立した部品で準備してもよい。
【0058】
(3)第1導波管10の第1内壁14を鏡面仕上げにする構成として、例えば、内周面にメッキの施されたパイプ(図示を省略)を板状取付部材30に装着することで当該構成を実現してもよい。また例えば、第1導波管10の内径に対応した外径を有する光ファイバーを、第1導波管10と同軸に第1中空部13に埋め込み、当該光ファイバーの内面で計測光を反射させる構成によって、第1内壁14を鏡面仕上げにする機能を実質的に達成してもよい。
【0059】
(4)
図1に示す温度測定装置1は、携帯型の温度測定装置を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、固定的な設置型の温度測定装置等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…温度測定装置、10…第1導波管、11…第1前端開口部、11a…第1前端開口部の縁、12…第1基端開口部、13…第1中空部、14…第1内壁、19…距離センサ配置部、20…第2導波管、21…第2前端開口部、21a…第2前端開口部の縁、22…第2基端開口部、23…第2中空部、24…第2内壁、29…温度センサ配置部、30…板状取付部材、31…板状取付部材の表面、32…板状取付部材の裏面、33…固定用ねじ穴、35…厚み方向の切欠き、40…距離センサ、41…発光素子、41a…発光面、42…受光素子、42a…受光素子の受光面、50…温度センサ、51…赤外線検出素子、51a…赤外線検出素子の受光面、58…温度センサのリード端子、70…本体ケース、75…プリント配線基板、78…ねじ、81…ヒューマンI/F面、82…センシング光入力面、83…把持部、88…操作スイッチ、89…ディスプレイ、100,100’…センサ導入ユニット、