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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055704
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】システム、装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/02 20060101AFI20240411BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01M6/02 Z
H01M4/06 B
H01M4/06 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162835
(22)【出願日】2022-10-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年10月8日~10月9日に中川聰により、ミライノデンキ公開実験にて公開。 令和3年12月12日に株式会社ビーエスフジにより、放送番組(ミライへの扉)にて公開。 令和3年12月12日にトライポッド・デザイン株式会社により、YouTubeへの投稿にて公開(https://www.youtube.com/watch?v=y3231YtTbsA)。 令和3年12月22日にトライポッド・デザイン株式会社により、国際シンポジウム OFF THE GRIDでの展示にて公開。 令和4年4月12日~4月25日にトライポッド・デザイン株式会社により、メール送信にて公開。 令和4年3月29日、令和4年4月16日、及び令和4年4月24日にトライポッド・デザイン株式会社により、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://futurebrainlab.com/return-to-nature/ 他)。 令和4年4月17日、令和4年4月23日、及び令和4年4月24日にトライポッド・デザイン株式会社により、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://www.facebook.com/tripoddesign/posts/pfbid02XfJgahkh6gbtAbVe5cH6hhRr8prBuoCg2BY6d3zykHfPcWenZmAtJZhcCqBw9YEPl 他)。 令和4年4月17日にトライポッド・デザイン株式会社により、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://mobile.twitter.com/FutureBrainLab/status/1515557435695845383)。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年4月21日、及び令和4年4月24日にトライポッド・デザイン株式会社により、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=pfbid02WeLDsGCPnKyXnYScbLwADbGZx9wCwiyFj73XeQS4vh2KJqQfG865KLgdK96MaMtZl&id=100057334793398&eav=AfZvyytIZYyPpBSRXS4dA7unGc_hfkNjTBeVf3nt7tMeAsVXIWvNfX8PsDqNByYqId0&m_entstream_source=timeline&paipv=0 他)。 令和4年4月26日にトライポッド・デザイン株式会社により、国際シンポジウム RETURN TO NATUREでの展示にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】399131116
【氏名又は名称】トライポッド・デザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 聰
【テーマコード(参考)】
5H024
5H050
【Fターム(参考)】
5H024AA01
5H024DD01
5H024DD11
5H024EE05
5H024FF01
5H024HH00
5H024HH13
5H050BA02
5H050CA01
5H050CB01
5H050HA04
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】
自立した電源を供給するシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】
第一導電部及び第二導電部と、媒体と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部が媒体と接触し、第二導電部が媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、第一導電部及び第二導電部の形状はシート状であり、第一導電部、第二導電部、及び媒体が、板状の外形を有する容器の中に配置される、システム。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導電部及び第二導電部と、
媒体と、
機能部と
を備え、
第一導電部及び機能部は接続されており、
第二導電部及び機能部は接続されており、
第一導電部が媒体と接触し、
第二導電部が媒体と接触し、
第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部の形状はシート状であり、
第一導電部、第二導電部、及び媒体が、板状の外形を有する容器の中に配置される、システム。
【請求項2】
第一導電部及び第二導電部が、シート状の平面部分が対向するように略平行に配置され、
媒体が、第一導電部及び第二導電部の間に配置される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
媒体が、水、水分を含む砂もしくは土、コンクリート、モルタル、又は木材である、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
第一導電部及び第二導電部が、互いに標準電極電位が異なる素材から構成される、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
板状の容器の厚さが、0.5~3cmである、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項6】
板状の容器の平面部分の面積に対する板状の容器の厚さの比(容器の厚さ/容器の平面部分の面積)が、0.5/100~3/900(cm/cm)である、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項7】
第一導電部及び第二導電部の間の距離が、0.1~20mmである、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも一方のシート状の導電部の平面部分の面積に対する第一導電部及び第二導電部の間の距離の比(距離/導電部の平面部分の面積)が、0.1/900~20/900(mm/cm)である、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項9】
容器が、絶縁性の素材からなる、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項10】
第一導電部と第二導電部の接触を防ぐための隔離材と、
第一導電部及び第二導電部を支持するための支持体と
を備え、
隔離材が、第一導電部と第二導電部の間に配置され、
支持体が、第一導電部、隔離材、及び第二導電部を挟持する、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項11】
第一導電部及び第二導電部と、
媒体と
を備え、
第一導電部が媒体と接触し、
第二導電部が媒体と接触し、
第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部の形状はシート状であり、
第一導電部、第二導電部、及び媒体が、板状の外形を有する容器の中に配置される、装置。
【請求項12】
第一導電部及び第二導電部を機能部と接続することにより発電し、機能部を機能させる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
第一導電部及び第二導電部と、
媒体と
を備え、
第一導電部が媒体と接触し、
第二導電部が媒体と接触し、
第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部の形状はシート状であり、
第一導電部、第二導電部、及び媒体が、板状の外形を有する容器の中に配置される装置において、
第一導電部及び第二導電部を機能部と接続することにより発電させ、機能部を機能させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立した電源を供給するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボルタ電池やダニエル電池のように、異なる二種類の金属を電極とし、電解液に浸すことで、それぞれの電極において、酸化反応又は還元反応を生じさせ、電子の流れる経路を作り出す装置(つまり、電池)がある。
【0003】
電池の電解液として使用される液体は、化学やけどのおそれ、火災又は爆発のおそれ、或いは有毒なガスの発生等、人体や環境に悪影響を与える可能性があり、電解液の取り扱いは非常に難しいものであった。加えて、製品化をする際において、液漏れを起こさないようにしなければならず、コストが増大するという課題があった。
【0004】
ところで、近年は、可視光、熱、電波、或いは微生物による有機物の分解処理等の微小なエネルギーを電力に変換するエネルギーハーヴェスティング技術が注目されており、エネルギーハーヴェスティング技術を利用して、自立電源を実用化する研究がなされている。
【0005】
また、土や水など、身近に存在するものを媒体として発電するシステムも知られている(特許文献1参照)。このシステムによれば、導電部を、土や水などの媒体と接触させることで、電力を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2021/045236号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、自立した電源を供給するシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記目的は、
[1]第一導電部及び第二導電部と、媒体と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部が媒体と接触し、第二導電部が媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、第一導電部及び第二導電部の形状はシート状であり、第一導電部、第二導電部、及び媒体が、板状の外形を有する容器の中に配置される、システム;
[2]第一導電部及び第二導電部が、シート状の平面部分が対向するように略平行に配置され、媒体が、第一導電部及び第二導電部の間に配置される、前記[1]に記載のシステム;
[3]媒体が、水、水分を含む砂もしくは土、コンクリート、モルタル、又は木材である、前記[1]又は[2]に記載のシステム;
[4]第一導電部及び第二導電部が、互いに標準電極電位が異なる素材から構成される、前記[1]~[3]のいずれかに記載のシステム;
[5]板状の容器の厚さが、0.5~3cmである、前記[1]~[4]のいずれかに記載のシステム;
[6]板状の容器の平面部分の面積に対する板状の容器の厚さの比(容器の厚さ/容器の平面部分の面積)が、0.5/100~3/900(cm/cm)である、前記[1]~[5]のいずれかに記載のシステム;
[7]第一導電部及び第二導電部の間の距離が、0.1~20mmである、前記[1]~[6]のいずれかに記載のシステム;
[8]少なくとも一方のシート状の導電部の平面部分の面積に対する第一導電部及び第二導電部の間の距離の比(距離/導電部の平面部分の面積)が、0.1/900~20/900(mm/cm)である、前記[1]~[7]のいずれかに記載のシステム;
[9]容器が、絶縁性の素材からなる、前記[1]~[8]のいずれかに記載のシステム;
[10]第一導電部と第二導電部の接触を防ぐための隔離材と、第一導電部及び第二導電部を支持するための支持体とを備え、隔離材が、第一導電部と第二導電部の間に配置され、支持体が、第一導電部、隔離材、及び第二導電部を挟持する、前記[1]~[9]のいずれかに記載のシステム;
[11]第一導電部及び第二導電部と、媒体とを備え、第一導電部が媒体と接触し、第二導電部が媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、第一導電部及び第二導電部の形状はシート状であり、第一導電部、第二導電部、及び媒体が、板状の外形を有する容器の中に配置される、装置;
[12]第一導電部及び第二導電部を機能部と接続することにより発電し、機能部を機能させる、前記[11]に記載の装置;
[13]第一導電部及び第二導電部と、媒体とを備え、第一導電部が媒体と接触し、第二導電部が媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、第一導電部及び第二導電部の形状はシート状であり、第一導電部、第二導電部、及び媒体が、板状の外形を有する容器の中に配置される装置において、第一導電部及び第二導電部を機能部と接続することにより発電させ、機能部を機能させる、方法;
により達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自立した電源を供給するシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係るシステムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る装置の外観を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係るシステムの構成を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係る比較例及び実施例の装置の電圧の変化を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係る実施例の装置の電圧の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下、効果に関する記載は、本発明の実施の形態の効果の一側面であり、ここに記載するものに限定されない。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係るシステムの構成を示す図である。図1(A)に図示するように、本発明の実施の形態に係るシステムは、第一導電部1と、第二導電部2と、機能部3と、媒体4と、容器5から構成される。第一導電部1及び機能部3、並びに、機能部3及び第二導電部2は、それぞれ電気的に接続されている。「電気的に接続」とは、例えば、導電性を有する導線等により通電可能に接続されることをいう。
【0013】
第一導電部1の一部又は全部が、媒体4と接触している。また、第二導電部2の一部又は全部が、媒体4と接触している。第一導電部1及び第二導電部2は、互いに非接触である。「非接触」とは、例えば、第一導電部1と第二導電部2とが直接接触していない状態をいう。
【0014】
図1(A)においては、媒体4は、同一の素材が物理的に連続することで、一体として構成されている。つまり、図1(A)においては、第一導電部1と接触している媒体4と、第二導電部2と接触している媒体4とは、同一の素材であり、かつ、媒体4は、物理的に連続し、一体として構成されている。
【0015】
本発明の実施の形態にかかるシステムは、第一導電部1が媒体4と接触し、かつ、第二導電部2が媒体4と接触することで、第一導電部1及び第二導電部2から発電する。また、本発明の実施の形態にかかるシステムは、第一導電部1及び第二導電部2から発電した電力を使用して、機能部3が機能する。つまり、第一導電部1及び第二導電部2の電位の差を利用して得られた電力は、装置が備える機能部11に供給されてもよい。さらに、機能部11は、該電力を利用して、所定の機能を実行してもよい。
【0016】
第一導電部1と、第二導電部2と、媒体4は、板状の外形を有する容器5の中に配置されている。図1(A)においては、容器5の上部は閉じられずに開いており、第一導電部1と第二導電部2の上部が容器5からわずかに飛び出している。容器5は、図1(A)のように上部、側面部、及び/又は下部の一部又は全部が閉じられずに開いていてもよく、上部、側面部、及び下部の全部が閉じられていてもよい。また、第一導電部1と第二導電部2は、図1(A)のように容器5から一部が飛び出していてもよく、容器5の中に全部が収まっていてもよい。
【0017】
さらに、図1(A)においては、機能部3は容器5の外に配置されているが、機能部3は、容器5の中に配置されていてもよい。
【0018】
第一導電部及び第二導電部の形状は、シート状である。シート状とは、薄い形状のことをいう。第一導電部及び第二導電部の形状がシート状であるとは、例えば、第一導電部1及び第二導電部2の厚さが所定の範囲内の値であることとしてもよい。
【0019】
第一導電部1及び第二導電部2の厚さは、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。また、第一導電部1及び第二導電部2の厚さは、0.1mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることがさらに好ましい。
【0020】
第一導電部1の厚さと第二導電部2の厚さは、同一であっても、異なっていてもよい。
【0021】
第一導電部1及び第二導電部2の厚さが上記範囲内にあることで、省スペースで発電することが可能となる。
【0022】
第一導電部1及び第二導電部2のシート状の平面部分の面積は、適宜設計が可能である。また、第一導電部1のシート状の平面部分の面積と第二導電部2のシート状の平面部分の面積は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0023】
第一導電部1及び第二導電部2のシート状の平面部分の面積に対する厚さの比(導電部の厚さ/導電部の平面部分の面積)は、20/900以下であることが好ましく、1/400以下であることがより好ましく、0.1/100以下であることがさらに好ましい。また、第一導電部1及び第二導電部2のシート状の平面部分の面積に対する厚さの比(導電部の厚さ/導電部の平面部分の面積)は、0.1/900以上であることが好ましく、0.1/600以上であることがより好ましく、0.1/300以上であることがさらに好ましい。なお、ここでは、第一導電部1及び第二導電部2のシート状の平面部分の面積に対する厚さの比(導電部の厚さ/導電部の平面部分の面積)の単位は、mm/cmとする。
【0024】
第一導電部1のシート状の平面部分の面積に対する厚さの比(導電部の厚さ/導電部の平面部分の面積)と第二導電部2のシート状の平面部分の面積に対する厚さの比(導電部の厚さ/導電部の平面部分の面積)は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0025】
第一導電部1及び第二導電部2のシート状の平面部分の面積に対する厚さの比(導電部の厚さ/導電部の平面部分の面積)が上記範囲内にあることで、省スペースで発電することが可能となる。
【0026】
第一導電部1及び第二導電部2の表面積は、適宜設計が可能である。また、第一導電部1の表面積と第二導電部2の表面積は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0027】
図1(A)に示すような一対の導電部を備えるシステムにより、実用化できる程度、例えば、0.1mW程度の電力を得るためには、第一導電部1及び第二導電部2の表面積は、例えば、2.4cm以上であることが好ましく、72cm以上であることがより好ましい。また、例えば、昇圧回路を用い、間欠的に3mW程度の電力を得るためには、第一導電部1及び第二導電部2の表面積は、例えば、1.2cm以上であることが好ましく、2.4cm以上であることがより好ましい。なお、第一導電部1の表面積と第二導電部2の表面積が異なる場合には、少なくとも一方の導電部の表面積が上記範囲内にあればよい。
【0028】
また、第一導電部1及び第二導電部2と、媒体4との接触面積は、適宜設計が可能である。第一導電部1と媒体4との接触面積と、第二導電部2と媒体4との接触面積は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0029】
図1(A)に示すような一対の導電部を備えるシステムにより、実用化できる程度、例えば、0.1mW程度の電力を得るためには、第一導電部1及び第二導電部2と、媒体4との接触面積は、例えば、2.4cm以上であることが好ましく、72cm以上であることがより好ましい。また、例えば、昇圧回路を用い、間欠的に3mW程度の電力を得るためには、第一導電部1及び第二導電部2と、媒体4との接触面積は、例えば、1.2cm以上であることが好ましく、2.4cm以上であることがより好ましい。なお、第一導電部1と媒体4との接触面積と、第二導電部2と媒体4との接触面積が異なる場合には、少なくとも一方の導電部と媒体4との接触面積が上記範囲内にあればよい。
【0030】
第一導電部1及び第二導電部2の体積に対する表面積の比(導電部の表面積/導電部の体積)である比表面積は、40以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、2000以上であることがさらに好ましい。なお、ここでは、比表面積の単位は、cm/cmとする。
【0031】
第一導電部1の比表面積と第二導電部2の比表面積は、同一であっても、異なっていてもよい。なお、第一導電部1の比表面積と第二導電部2の比表面積が異なる場合には、少なくとも一方の導電部の比表面積が上記範囲内にあればよい。
【0032】
第一導電部1及び第二導電部2の比表面積が上記範囲内にあることで、省スペースで発電することが可能となる。これは、システムの体積あたりの、第一導電部1及び第二導電部2と媒体4の界面の面積、つまり、第一導電部1及び第二導電部2と媒体4の接触面積を増加させることが容易となるからである。
【0033】
また、第一導電部1及び第二導電部2の配置の態様は、適宜設計が可能である。第一導電部1及び第二導電部2は、シート状の平面部分が対向していてもよく、対向していなくともよい。また、第一導電部1及び第二導電部2のシート状の平面部分が対向している場合、第一導電部1及び第二導電部2のシート状の平面部分は、略平行に配置されていてもよく、略平行に配置されていなくてもよい。
【0034】
省スペースで発電するという観点からは、第一導電部1及び第二導電部2は、シート状の平面部分が対向するように、略平行に配置されることが好ましい。そして、媒体4は、第一導電部1及び第二導電部2の間に配置されることが好ましい。
【0035】
第一導電部1及び第二導電部2の間の距離は、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。また、第一導電部1及び第二導電部2の間の距離は、0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。
【0036】
また、シート状の導電部の平面部分の面積に対する第一導電部1及び第二導電部2の間の距離の比(導電部の間の距離/導電部の平面部分の面積)は、20/900以下であることが好ましく、1/100以下であることがより好ましい。さらに、シート状の導電部の平面部分の面積に対する第一導電部1及び第二導電部2の間の距離の比(導電部の間の距離/導電部の平面部分の面積)は、0.1/100以上であることが好ましく、1/400以上であることがより好ましい。なお、ここでは、シート状の導電部の平面部分の面積に対する第一導電部1及び第二導電部2の間の距離の比(導電部の間の距離/導電部の平面部分の面積)の単位は、mm/cmとする。
【0037】
第一導電部1のシート状の平面部分の面積と第二導電部2のシート状の平面部分の面積が異なる場合には、少なくとも一方のシート状の導電部の平面部分の面積に対する第一導電部1及び第二導電部2の間の距離の比(導電部の間の距離/導電部の平面部分の面積)が、上記範囲内にあればよい。
【0038】
第一導電部1及び第二導電部2を配置する際には、第一導電部1と第二導電部2の間に、第一導電部1と第二導電部2の接触を防ぐための隔離材を配置してもよい。隔離材は、第一導電部1及び/又は第二導電部2と接触してもよく、第一導電部1及び/又は第二導電部2と接触しなくともよい。隔離材が第一導電部1及び/又は第二導電部2と接触する場合には、第一導電部1と隔離材が接触し、該隔離材と第二導電部2が接触するように配置されてもよく、第一導電部1と隔離材が接触し、該隔離材とは異なる他の隔離材と第二導電部2が接触するように配置されてもよい。
【0039】
隔離材は、第一導電部1と第二導電部2の間のイオンの伝導を妨げずに、第一導電部1と第二導電部2の接触を防ぐことができれば特に限定されない。例えば、隔離材として、和紙、不織布、合成樹脂などを用いることができる。合成樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどを用いてもよい。
【0040】
隔離材として合成樹脂を用いる場合には、例えば、複数の孔を有する合成樹脂製の膜、複数の孔を有する合成樹脂製の板などを用いることができる。また、和紙や不織布は、多孔性の素材である。隔離材として多孔性のものを用いることで、第一導電部1及び第二導電部2と媒体4が隔離材の有する孔を通して接触することができる。
【0041】
第一導電部1と第二導電部2の間に隔離材を配置することで、第一導電部1と第二導電部2の間の距離が近い場合であっても、第一導電部1及び第二導電部2が接触することを防ぐことができる。また、第一導電部1と第二導電部2の間に隔離材を配置することで、第一導電部1と第二導電部2の間の距離が近い場合であっても、第一導電部1及び第二導電部2を、シート状の平面部分が対向するように略平行に配置することが容易となる。
【0042】
また、第一導電部1及び第二導電部2を配置する際には、第一導電部1及び/又は第二導電部2を支持するための支持体を用いてもよい。
【0043】
支持体は、第一導電部1及び/又は第二導電部2を支持することができれば特に限定されない。例えば、支持体として、合成樹脂、木材などを用いることができる。合成樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどを用いてもよい。
【0044】
支持体として合成樹脂を用いる場合には、例えば、複数の孔を有する合成樹脂製の板を用いることができる。支持体として多孔性のものを用いることで、第一導電部1及び第二導電部2と媒体4が支持体の有する孔を通して接触することができる。
【0045】
支持体により第一導電部1及び/又は第二導電部2を支持する態様は特に限定されない。例えば、板状の支持体の間に第一導電部1及び/又は第二導電部2を挟持してもよい。
【0046】
支持体を用いることで、第一導電部1及び/又は第二導電部2が薄く、柔らかい素材である場合であっても、第一導電部1及び第二導電部2のシート状の平面部分が対向するように、略平行に配置することが容易となる。
【0047】
また、第一導電部1及び第二導電部2を配置する際には、隔離材と支持体を併用してもよい。例えば、第一導電部1と第二導電部2の間に隔離材を挟み、第一導電部1と第二導電部2を、隔離材を挟んだ状態で、支持体により挟持してもよい。
【0048】
システムが、第一導電部1と第二導電部2の接触を防ぐための隔離材と、第一導電部1及び第二導電部2を支持するための支持体とを備え、隔離材が、第一導電部1と第二導電部2の間に配置され、支持体が、第一導電部1、隔離材、及び第二導電部2を挟持することにより、導電部を配置する際に、導電部同士の接触を防ぎつつ、容易に取り扱うことが可能となる。
【0049】
第一導電部1及び第二導電部2は、いずれも導電性を有することが好ましい。ここで、第一導電部1及び第二導電部2の素材として、例えば、金属、導電性ポリマー、カーボン等があげられる。
【0050】
第一導電部1及び第二導電部2に用いられる金属としては、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、白金、スズ、チタン、ステンレス、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、又は、その他上述の金属夫々の酸化物などから適宜選択して用いることができる。また、所定の金属に、所定の金属とは異なる他の金属や、他の導電性を有する材料が被膜されていてもよい。
【0051】
第一導電部1及び第二導電部2の少なくとも1の導電部を構成する材料として、カーボン構造体を用いることができる。第一導電部1及び第二導電部2の両方において、カーボン構造体を用いることもできる。カーボン構造体としては、特に限定されないが、カーボンナノ構造体があげられる。また、カーボンナノ構造体としては、特に限定されないが、カーボンナノチューブがあげられる。第一導電部1及び第二導電部2の少なくともいずれかの導電部において、カーボンナノチューブを用いることで、導電部の表面積が大きくなり、電流を発生させるためのより多くの化学反応が、導電部の界面において発生する。その結果、システムの発電の出力特性が優れたものとなる。
【0052】
カーボンナノチューブを含む導電部を作製する方法は特に限定されないが、例えば、カーボンナノチューブと溶媒とを混合して分散液を調製し、分散液から濾過等により溶媒を除去してシート状の導電部を形成する方法や、カーボンナノチューブと溶媒とを混合して分散液を調製し、分散液を基板上に塗布をし、乾燥させてカーボンナノチューブの塗膜状の導電部を形成する方法などがあげられる。分散液の塗布方法としては、特に限定されないが、スプレー、印刷、ディスペンサーなどの方法が用いられる。
【0053】
第一導電部1と第二導電部2の素材は、異なる種類のものを用いてもよく、同じ種類のものを用いてもよい。第一導電部1と第二導電部2が互いに異なる素材からなるものである場合には、第一導電部及び第二導電部は、互いに標準電極電位が異なる素材から構成されることが好ましい。第一導電部1と第二導電部2が同一の素材からなるものである場合には、第一導電部1と接触する媒体4(以下、媒体4aともいう)と第二導電部2と接触する媒体4(以下、媒体4bともいう)は、互いに異なる素材であってもよい。
【0054】
交流インピーダンス法を用いて、第一導電部1及び第二導電部2の少なくとも一方に対して分極抵抗を測定した場合に、測定値が100Ω以上であることが好ましい。
【0055】
ここで、例えば、電流の起点となる導電部を第一導電部1として定義し、終点となる導電部を第二導電部2として定義することができる。いずれの導電部が第一導電部1として機能するかは、導電部の材質、又は、導電部を取り巻く環境(例えば、温度、湿度、気圧、pHなど)により決定される。第一導電部1又は第二導電部2と媒体4の界面で、化学反応が行われ、導電部に自由電子が発生する。
【0056】
例えば、第一導電部1と第二導電部2において異なる金属を用いた場合には、標準電極電位が大きな値の金属を用いた方が第一導電部1に、標準電極電位が小さな値の金属を用いた方が第二導電部2になる。この場合、第二導電部2から機能部3へ向かって電子が移動し、機能部3から第一導電部1へ向かって電子が移動する。すなわち、第一導電部1側から機能部3を介して第二導電部2側へ電流が流れる。例えば、第二導電部2では、導電部を構成する金属が媒体4中に陽イオンとして溶出して、自由電子が発生する。また、例えば、第二導電部2では、媒体4に含まれる陰イオンもしくは水の分子が酸化されて、自由電子が発生する。また、例えば、第一導電部1では、媒体4の中にある陽イオン又は水分子が自由電子と反応し、電気的に中和又は還元される。
【0057】
標準電極電位の高低は、物質同士の標準電極電位の相対的な値(相対値)を比較して定められるものであって、標準電極電位の絶対値を用いて比較するものではない。例えば、標準電極電位が-5Vの物質Aと+2Vの物質Bとを比較した場合に、物質Aの標準電極電位は低く、物質Bの標準電極電位は高い。
【0058】
一方、導電部に同一の金属を用いた場合でも、例えば、温度、湿度、気圧、pH、媒体4の種類、媒体4が導電部と接触している面積など、導電部の周辺環境の条件が、2つの導電部の相互で異なれば、いずれかの導電部が第一導電部1として、他方の導電部が第二導電部2として機能し、電流が流れる。例えば、一方の導電部が接触している媒体4と、他方の導電部が接触している媒体4とが同一の場合であっても、媒体4と導電部が接触している面積が相互に異なれば、一方の導電部が第一導電部1として、他方の導電部が第二導電部2として機能する。よって、2つの導電部の周囲の温度、湿度、気圧、pH、媒体4の種類、媒体4が導電部と接触している面積などの条件が変われば、第一導電部1として機能していたものが第二導電部2として機能し、第二導電部2として機能していたものが第一導電部1として機能することもあり得る。
【0059】
第一導電部1と第二導電部2が異なる素材を用いる場合に、標準電極電位の低い方の導電部に用いられる素材としては、例えば、亜鉛、鉛、カドミウム、マグネシウム、炭素系材料、導電性高分子(ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、PEDOT等)、金属(リチウム、スズ、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等)及びこれらの合金、金属酸化物(酸化チタン、リチウム―チタン酸化物、ケイ素酸化物等)等があげられる。標準電極電位の低い方の導電部に用いられる素材の標準電極電位は、-200mV以下であることが好ましく、-500mV以下であることがより好ましく、-700mV以下であることがさらに好ましい。また、標準電極電位の低い方の導電部に用いられる素材の標準電極電位は、-3.5V以上であることが好ましく、-2.5V以上であることがより好ましく、-1.5V以上であることがさらに好ましい。
【0060】
第一導電部1と第二導電部2が異なる素材を用いる場合に、標準電極電位の高い方の導電部に用いられる素材としては、例えば、酸化マンガン、酸化銀、酸素、オゾン、酸化鉛、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、酸化銅、酸化クロム、酸化鉄、アルカリ金属又はアルカリ土類金属とそれ以外の金属(コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、マグネシウム、アルミニウムなど)、炭素系材料などがあげられる。標準電極電位の高い方の導電部に用いられる素材の標準電極電位は、-300mV以上であることが好ましく、0mV以上であることがより好ましく、+500mV以上であることがさらに好ましい。また、標準電極電位の高い方の導電部に用いられる素材の標準電極電位は、3.5V以下であることが好ましく、2.5V以下であることが好ましく、1.5V以下であることがさらに好ましい。
【0061】
第一導電部1と第二導電部2が同一の素材を用いる場合、上述した、標準電極電位の低い方の導電部に用いられる素材、及び、標準電極電位の高い方の導電部に用いられる素材として例示したものを、導電部に用いることができる。
【0062】
図1(A)に示すような一対の導電部を備えるシステムにより、実用化できる程度、例えば、0.1mW程度の出力電圧を得るためには、第一導電部1及び第二導電部2の素材の組み合わせとしては、例えば、炭素素材とマグネシウム、マグネシウムとステンレス、炭素素材とアルミニウム、金とアルミニウム、亜鉛とステンレスなどが好ましい。
【0063】
導電部間の標準電極電位の差は、200mV以上であることが好ましく、500mV以上であることがより好ましく、700mV以上であることがさらに好ましい。
【0064】
図1(A)に示すような一対の導電部を備えるシステムにより、実用化できる程度、例えば、昇圧回路を用いて、3V程度の出力電圧を得るためには、第一導電部1及び第二導電部2の標準電極電位の差は、例えば、300mV以上であることが好ましく、400mV以上であることがより好ましい。
【0065】
第一導電部1及び第二導電部2の間で生じる起電力は、1.8V以下であることが好ましく、0.9V以下であることがより好ましく、0.35V以下であることがさらに好ましく、0.25V以下であることがとりわけ好ましい。また、第一導電部1及び第二導電部2の間で生じる起電力は、5mV以上であることが好ましい。
【0066】
機能部3は、例えば、通電することで所定の機能を実行するものをいう。機能部3は、電力を消費して所定の機能を発揮する電力消費部、導電部にて発生した電気を蓄電する蓄電部、昇圧回路や降圧回路のように出力する電圧を変換する出力電圧変換部等、回路を制御するマイコン等の制御部、他の装置と無線により通信が可能な通信部等を含むことができる。電力消費部としては、例えば、白熱電球や発光ダイオードなどの光源、熱を発する発熱体、音を発する発音体、又は、信号を発する発信体等のいずれかを採用することができる。蓄電部は、昇圧回路又は降圧回路に含まれていてもよい。マイコン等の制御部は、回路を制御して、蓄電部に蓄電した電気を所定の条件で放出させることができる。放出された電気は、電力消費部にて消費される。また、マイコン等の制御部においても、わずかではあるが電力が消費されるため、制御部を起動させるのに必要な電力を確保しつつ、蓄電した電気を放出するように制御することができる。
【0067】
機能部3は、電力消費部、蓄電部、出力電圧変換部及び制御部のいずれか1つを備えていればよく、電力消費部、蓄電部、出力電圧変換部及び制御部のいずれか2つ以上を組み合わせて構成したものを機能部3としてもよい。また、機能部3は、電力消費部、蓄電部、出力電圧変換部及び制御部のいずれか2つ以上を一体に構成したものであってもよく、電力消費部、蓄電部、出力電圧変換部及び制御部のいずれかを、電気的に接続しつつ、それぞれ別々に構成したものであってもよい。
【0068】
機能部3における入力インピーダンスは、0.001kΩ以上であってもよく、0.01kΩ以上であってもよく、0.1kΩ以上であってもよい。
【0069】
機能部3における入力インピーダンスの値に特に制限はないが、入力インピーダンスが1kΩ以上である場合には、機能部3における入力インピーダンスは、非線形な電流-電圧特性(I-V特性)を有していてもよい。非線形な電流-電圧特性とは、抵抗に電圧をかけた場合に、電圧の値と電流の値が比例しないような特性をいう。例えば、電圧が大きくなるにしたがって、インピーダンスが大きくなり、電流の値が大きくなる度合いが小さくなるような場合をいう。
【0070】
一般的に、電気回路において、電池にて発生した電力は、電池の内部抵抗と、外部抵抗とにおいて消費される。電池にて発生した電力は、内部抵抗により電圧降下するため、外部抵抗に印加される電圧は、電池の起電力に比べて低下する。内部抵抗が小さいほど、外部抵抗に印加される電圧は増大する。
【0071】
本発明のシステムにおいては、第一導電部及び第二導電部の間で生じる起電力が電池の起電力、媒体の第一導電部と第二導電部間の抵抗値が内部抵抗に相当し、機能部における入力インピーダンスが外部抵抗に相当すると考えることができる。媒体の第一導電部と第二導電部間の抵抗値が、機能部の入力インピーダンスよりも十分に大きい場合、線形な電流-電圧特性を有する機能部を利用すると、出力される出力電圧は低くなる傾向にある。しかし、非線形な電流-電圧特性を有する機能部を利用する場合、機能部に印加される電圧値が高くなるにしたがって電流値が大きくなる度合いが小さくなり、機能部の入力インピーダンスが高くなる。そのため、非線形な電流-電圧特性を有する機能部を利用する場合、線形な電流電圧特性を有する機能部を利用する場合と比べ、機能部に印加される電圧を高くすることができ、機能部の消費電力も大きくなる。
【0072】
本発明のシステムは、媒体の種類や、第一導電部と第二導電部間の距離によって、媒体の第一導電部と第二導電部間の抵抗値にはばらつきが生じる。媒体の第一導電部と第二導電部間の抵抗値が経時的に変化し、機能部の入力インピーダンスが、非線形な電流-電圧特性を有することで、電力の伝達効率を改善することができる。そのため、本発明のシステムでは、起電力が小さくとも、機能することが可能である。
【0073】
一方、機能部3における入力インピーダンスが1kΩ未満である場合には、機能部3における入力インピーダンスは、線形な電流-電圧特性(I-V特性)を有していてもよい。線形な電流-電圧特性とは、例えば、機能部3に電流を流した際の電圧変化において、電流値が大きくなるに従って電圧値が高くなり、電圧が電流に比例関係にあるような場合をいう。
【0074】
機能部3は、出力インピーダンスを変換する機能を有することが好ましい。これにより、機能部3の入力信号に与える影響を制御することができる。また、機能部3は、蓄電部を有し、第一導電部1及び/又は第二導電部2から供給される電荷を蓄積する。制御部は、電荷を蓄積するのに要した時間よりも短い時間で、蓄積した電荷を放出するように制御する。
【0075】
機能部3の動作電圧の下限値は、0.9V以下で動作することが好ましい。0.35V以下で動作することがより好ましく、20mV以下で動作することがさらに好ましい。
【0076】
媒体4は、液体、固体のうちいずれの形態であってもよい。媒体4は、ゾル又はゲル状のものであってもよい。媒体4は、第一導電部1又は第二導電部2との界面で、化学反応を起こし得るものであれば、特に限定されない。媒体4としては、導電性を有しないものを用いることが好ましい。また、媒体4は、水分を含むことが好ましい。媒体4は、媒体を介して第一導電部1と第二導電部2との間で、陽イオン、陰イオン、及び/又は電子の移動が可能なものであることが好ましい。
【0077】
媒体4として用いられる液体は、本システムを構成する際に液体であれば特に限定されないが、例えば、水だけでなく、極性の高い有機溶剤や極性の低い有機溶剤、或いは、非極性の有機溶剤を用いることができる。また、媒体4として用いられる液体は、水と極性の高い有機溶剤との混合物や、異なる2種以上の有機溶剤の混合物や、エマルションなども用いることができる。水は純水だけでなく、電解質を含むものを用いることができる。
【0078】
媒体4として水を用いる場合、水の電解質濃度は、1mol/L以下であってもよく、0.6mol/L以下であってもよく、0.1mol/L以下であってもよく、0.01mol/L以下であってもよく、0.001mol/L以下であってもよく、さらには、0.0001mol/L以下であってもよい。また、水に含まれる電解質のうち、陽イオンの濃度は、0.00001mol/L以下であってもよく、0.000001mol/L以下であってもよく、0.0000001mol/L以下であってもよく、0.00000001mol/L以下であってもよく、さらには、0mol/Lであってもよい。
【0079】
極性の高い有機溶剤としては、例えば、メタノールやエタノールなどの低級アルコール、蟻酸や酢酸などの低級カルボン酸、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドなどを用いることができる。また、極性の低い有機溶剤としては、ヘキサノールやオクタノールなどの高級アルコール、ヘキサン酸やオクタン酸などの高級カルボン酸などを用いることができる。非極性の有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、オクタン、ノナンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物があげられる。媒体4として液体を用いる場合は、単一の種類の液体のみを用いてもよいが、これらの液体の複数種類を混合したものを用いてもよい。
【0080】
媒体4として用いられる固体も、本システムを構成する際に固体であれば特に限定されないが、例えば、木材、導電性プラスチック、金属、セラミックス、コンクリート、モルタルなどであってもよい。なお、媒体4として用いられる固体としては、これらの他、例えば、砂、土、石灰、苦土石灰などの粉体状又は粒状の固体を用いることができ、さらに、複数の石や岩を重ねたものを用いることもできる。砂、土、石灰、苦土石灰、石や岩を重ねたものを媒体4として用いた場合、媒体4中に微細な空隙が発生するが、このような空隙があったとしても、媒体4が物理的に接触していればよい。
【0081】
媒体4として砂、土、石灰、苦土石灰などの粉体状又は粒状の固体を用いる場合には、粉体状又は粒状の固体が一定の形状を保つように固まった状態で用いてもよい。一定の形状は、特に限定されず、例えば、板状の形状としてもよい。
【0082】
粉体状又は粒状の固体が一定の形状を保つように固まった状態で用いることで、第一導電部1及び第二導電部2の間に媒体4を配置することが容易となる。
【0083】
また、粉体状又は粒状の固体が板状の形状を保つように固まった状態で用いることで、例えば、第一導電部1及び/又は第二導電部2が薄く、柔らかい素材である場合であっても、第一導電部1及び第二導電部2のシート状の平面部分が対向するように、略平行に配置することが容易となる。
【0084】
粉体状又は粒状の固体が一定の形状を保つように固まった状態で用いるための態様は、特に限定されない。例えば、団粒を形成して自然に固まった状態となっている土などを用いてもよく、人為的に粉体状又は粒状の固体を固めて用いてもよい。すなわち、媒体4が固まった状態で用いても、媒体4として機能するような態様であればよい。つまり、固まった状態の媒体4を第一導電部1及び第二導電部2に接触させることで第一導電部1及び第二導電部2から発電ができ、機能部3が機能するような態様であればよい。
【0085】
媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値は、0.001kΩ以上が好ましく、0.01kΩ以上がより好ましく、0.1kΩ以上がさらに好ましく、1kΩ以上であることがより一層好ましく、10kΩ以上であることが特に好ましい。本発明の実施の形態にかかるシステムは、一般的な電解液を用いた電池とは異なり、媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値が大きくとも、機能することが可能である。
【0086】
媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値が1kΩ以上である場合には、機能部3における入力インピーダンスを1kΩ以上としてもよい。
【0087】
媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値と機能部3における入力インピーダンスの比(媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値/機能部3における入力インピーダンス)は、1/100以上であることが好ましく、1/10以上であることがより好ましく、1/1以上であることがさらに好ましい。
【0088】
媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値は、電力を出力する側の出力インピーダンスとみなすことができ、機能部3における入力インピーダンスは、電力を受け入れる側の負荷インピーダンスとみなすことができる。出力インピーダンスと負荷インピーダンスを同程度にする、すなわち、インピーダンス整合を行うことで、第一導電部1と第二導電部2との間で生じた微小な電力を、より効率的に機能部へ伝達することができる。
【0089】
土や砂などの媒体4は、水分を含むことが好ましい。土や砂などの媒体4の含水率は、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることがより一層好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また、土や砂などの媒体4の含水率は、100質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。ここで、含水率とは、土に含まれる水分の質量を、水分と土や砂などの固形分との質量の和で除したものをいい、例えば、水を含んだ土の質量を測定し、100℃以上で3分間以上乾燥し、乾燥後の質量を測定することで、土に含まれる水分の質量を求め、これを乾燥前の水を含んだ土の質量で除することで含水率を算出することができる。
【0090】
容器5は、外形として板状の形状を有し、内部に空洞を有するものである。空洞は、第一導電部1、第二導電部2、及び媒体4を内部に配置することができるものであれば特に限定されない。空洞は、容器5の有する板状の外形に沿った、板状の形状であってもよい。
【0091】
板状とは、板のような形状のことをいい、例えば、容器5の外形における厚さが所定の範囲内の値であることとしてもよい。
【0092】
板状の容器5の外形における厚さは、3cm以下であることが好ましく、2.5cm以下であることがより好ましく、2cm以下であることがさらに好ましい。また、板状の容器5の外形における厚さは、0.5cm以上であることが好ましく、0.7cm以上であることがより好ましく、1cm以上であることがさらに好ましい。
【0093】
板状の容器5の外形における厚さが上記範囲内にあることで、省スペースで発電することが可能となる。
【0094】
板状の容器5の外形における平面部分の縦の長さは、30cm以下であることが好ましく、20cm以下であることがより好ましく、10cm以下であることがさらに好ましい。
【0095】
板状の容器5の外形における平面部分の横の長さは、30cm以下であることが好ましい。
【0096】
板状の容器5の外形における平面部分の縦の長さと横の長さは、同じであっても、異なっていてもよい。板状の容器5の外形における縦の長さ、及び横の長さが上記範囲内にあることで、システムの取り扱いが容易となる。
【0097】
板状の容器5の外形における平面部分の縦の長さに対する、板状の容器5の外形における平面部分の横の長さの比(横の長さ/縦の長さ)は、1000以下であることが好ましい。
【0098】
板状の容器5の外形における平面部分の面積は、900cm以下であることが好ましく、400cm以下であることがより好ましく、100cm以下であることがさらに好ましい。また、板状の容器5の外形における平面部分の面積は、1cm以上であることが好ましく、30cm以上であることがより好ましく、50cm以上であることがさらに好ましい。
【0099】
板状の容器5の外形における平面部分の面積に対する、板状の容器5の外形における厚さの比(容器5の厚さ/容器5の平面部分の面積)は、3/900以下であることが好ましい。また、板状の容器5の外形における平面部分の面積に対する、板状の容器5の外形における厚さの比(容器5の厚さ/容器5の平面部分の面積)は、0.5/100以上であることが好ましい。なお、ここでは、板状の容器5の外形における平面部分の面積に対する、板状の容器5の外形における厚さの比(容器5の厚さ/容器5の平面部分の面積)の単位は、cm/cmとする。
【0100】
板状の容器5の外形における平面部分の面積に対する、板状の容器5の外形における厚さの比(容器5の厚さ/容器5の平面部分の面積)が上記範囲内にあることで、省スペースで発電することが可能となる。
【0101】
板状の容器5の外形における体積に対する、第一導電部1及び第二導電部2の合計の表面積の比(導電部の表面積/容器5の体積)が上記範囲内にあることで、省スペースで発電することが可能となる。これは、システムの体積あたりの、第一導電部1及び第二導電部2と媒体4の界面の面積が大きくなるためである。
【0102】
容器5は、絶縁性の素材からなることが好ましい。絶縁性の素材としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどの合成樹脂、土器、せっ器、陶器、磁器などの陶磁器、ガラスなどを用いることができる。
【0103】
また、本発明の実施の形態にかかるシステムは、図1(B)に示すように、第一導電部1が接触する媒体4aと、第二導電部2が接触する媒体4bが、接触していてもよい。この場合、第一導電部1が接触する媒体4aと第二導電部2が接触する媒体4bは、互いに異なる素材である。
【0104】
第一導電部1が接触する媒体4aと第二導電部2が接触する媒体4bが互いに異なる素材である場合には、第一導電部1と第二導電部2が同一の素材からなるものであってもよい。
【0105】
あるいは、本発明の実施の形態にかかるシステムが備える媒体4は、図示しないが、3以上の互いに異なる素材から構成されてもよい。その場合、第一導電部1が接触する媒体4aと、第二導電部2が接触する媒体4bとは、媒体4aと媒体4b以外の、他の素材からなる媒体を介して物理的に接続していることが好ましい。
【0106】
あるいは、本発明の実施の形態にかかるシステムが備える媒体4は、図示しないが、第一導電部1と接触している媒体4と第二導電部2と接触している媒体4とが同じ素材であって、第一導電部1と接触している媒体4と、第二導電部2と接触している媒体4とが、他の素材からなる媒体を介して物理的に接続していてもよい。
【0107】
つまり、本発明の実施の形態に係るシステムにおいて、媒体4は、媒体を介して第一導電部1と第二導電部2との間で陽イオン、陰イオン、及び/又は電子の移動が可能であるように構成されていればよい。
【0108】
また、図1においては、1個の容器5の中に第一導電部1及び第二導電部2が各1個、配置された例を示したが、1個の容器5の中に第一導電部1及び第二導電部2が複数個、配置されてもよい。さらに、1個の容器5の中に配置される第一導電部1と第二導電部2の数は、同じでも、異なっていてもよい。また、1個の容器5の中に配置された複数の第一導電部1及び第二導電部2は、直列に、及び/又は並列に接続されていてもよい。
【0109】
本発明の実施の形態にかかるシステムは、例えば、第一導電部1及び第二導電部2と、媒体4とを備え、第一導電部1が媒体4と接触し、第二導電部2が媒体4と接触し、第一導電部1及び第二導電部2は互いに非接触であり、第一導電部1及び第二導電部2の形状はシート状であり、第一導電部1、第二導電部2、及び媒体4が、板状の外形を有する容器5の中に配置される装置において、第一導電部1及び第二導電部2を機能部3と接続することで構築することができる。
【0110】
本発明の実施の形態にかかるシステムは、上記のような装置の第一導電部1及び第二導電部2を機能部3と接続することで発電し、機能部3を機能させることができる。機能部3は、第一導電部1及び第二導電部2から発電した電力を使用して、所定の機能を発揮する。
【0111】
図2は、本発明の実施の形態に係る装置の外観を示す図である。図2(A)及び(B)に示すように、本発明の実施の形態に係る装置は、第一導電部1と、第二導電部2と、媒体4と、容器5から構成される。
【0112】
第一導電部1の一部又は全部が、媒体4と接触している。また、第二導電部2の一部又は全部が、媒体4と接触している。第一導電部1及び第二導電部2は、互いに非接触である。
【0113】
第一導電部1及び第二導電部2の形状はシート状である。また、第一導電部1と、第二導電部2と、媒体4は、板状の外形を有する容器5の中に配置されている。
【0114】
図2(A)では、媒体4は水であり、第一導電部1及び第二導電部2の8割程度が、水に浸かっている。また、図2(B)では、媒体4は土であり、第一導電部1及び第二導電部2の間に、板状に固まった状態の土が配置されている。
【0115】
また、図2(A)及び(B)においては、第一導電部1には、第一導電部1と機能部3とを接続することを容易にするための、タグ6aが備えられている。同様に、図2(A)及び(B)においては、第二導電部2には、第二導電部2と機能部3とを接続することを容易にするための、タグ6bが備えられている。
【0116】
タグ6の素材は、導電性を有するものであれば、特に限定されない。タグ6の素材としては、例えば、金属、導電性ポリマー、カーボン等があげられる。また、タグ6の形状は、第一導電部1及び/又は第二導電部2と機能部3との接続を容易にすることができれば、特に限定されない。
【0117】
図2に示すような装置において、第一導電部1及び第二導電部2を機能部3と接続することで、第一導電部1及び第二導電部2から発電させることができる。また、機能部3は、第一導電部1及び第二導電部2から発電した電力を使用して、所定の機能を発揮する。
【0118】
本発明の実施の形態に係るシステムは、第一導電部1と第二導電部2の対(以下、「導電部の対」ともいう)を一対備える装置を、直列に、及び/又は、並列に接続することで構成とすることもできる。
【0119】
図3は、本発明の実施の形態に係るシステムの構成を示す図である。図3(A)においては、導電部の対を一対備える装置が、複数個、直列に接続されている。
【0120】
図3(A)では、システムは、n個の第一導電部1(1、1、・・・、1)と、n個の第二導電部2(2、2、・・・、2)と、1個の機能部3と、n個の媒体4(4、4、・・・、4)と、n個の容器5(5、5、・・・、5)とから構成されている。ここで、nは2以上の任意の整数を表す。
【0121】
また、第一導電部1(1、1、・・・、1)及び第二導電部2(2、2、・・・、2)の形状はシート状であり、容器5(5、5、・・・、5)は板状の外形を有している。
【0122】
図3(A)では、隣接する導電部の対のうち、第二導電部2と第一導電部1k+1とが電気的に接続されることで、隣接する導電部の対が直列に接続されている。以下、直列に接続された導電部の対を、「直列接続された導電部の対」ともいう。また、kは1以上、n未満の整数を表す。
【0123】
図3(A)では、直列接続された導電部の対の端部にあたる、第一導電部1と機能部3、及び第二導電部2と機能部3が、それぞれ電気的に接続されている。
【0124】
直列接続された導電部の対の数が多いほど、機能部3に印加される電圧も高くなる。
【0125】
また、図3(A)では、それぞれの導電部の対の、第一導電部1(1、1、・・・、1)の一部又は全部が、媒体4(4、4、・・・、4)と接触している。さらに、それぞれの導電部の対の、第二導電部2(2、2、・・・、2)の一部又は全部が、媒体4(4、4、・・・、4)と接触している。そして、それぞれの導電部の対の、第一導電部1及び第二導電部2は、互いに非接触である。「非接触」とは、例えば、第一導電部1と第二導電部2とが直接接触していない状態をいう。
【0126】
図3(A)では、それぞれの導電部の対の、第一導電部1及び第二導電部2は、同じ媒体4と接触している。そして、それぞれの導電部の対の第一導電部1及び第二導電部2が接触している媒体4は、分離している。つまり、第一導電部1と第二導電部2が媒体4と接触しており、第一導電部1と第二導電部2が媒体4と接触しており、第一導電部1k+1と第二導電部2k+1が媒体4k+1と接触しており、第一導電部1と第二導電部2が媒体4と接触している。
【0127】
また、図3(A)では、第一導電部1と第二導電部2と媒体4が容器5に収容されており、第一導電部1と第二導電部2と媒体4が容器5に収容されており、第一導電部1k+1と第二導電部2k+1と媒体4k+1が容器5k+1に収容されており、第一導電部1と第二導電部2と媒体4が容器5に収容されている。そのため、媒体4、媒体4、媒体4k+1、媒体4は、それぞれ異なる容器5、容器5、容器5k+1、容器5に収容されており、非接触の状態である。
【0128】
図示しないが、導電部の対を直列に接続する場合においても、それぞれの導電部の対の第一導電部1及び第二導電部2が接触している媒体4は、図1(B)に示すように、それぞれの導電部の対の、第一導電部1が接触する媒体4aと第二導電部2が接触する媒体4bが互いに異なる素材であって、それぞれの導電部の対の、第一導電部1が接触する媒体4aと第二導電部2が接触する媒体4bが接触していてもよい。
【0129】
あるいは、図示しないが、それぞれの導電部の対の、対になっている第一導電部1及び第二導電部2が接触している媒体4は、3以上の互いに異なる素材から構成されてもよい。その場合、対になっている導電部の、第一導電部1が接触する媒体4aと第二導電部2が接触する媒体4bとは、媒体4aと媒体4b以外の、他の素材からなる媒体を介して物理的に接続していることが好ましい。
【0130】
あるいは、図示しないが、それぞれの導電部の対の、対になっている第一導電部1及び第二導電部2が接触している媒体4は、第一導電部1と接触している媒体4と第二導電部2と接触している媒体4とが同じ素材であって、第一導電部1と接触している媒体4と第二導電部2と接触している媒体4とが、他の素材からなる媒体を介して物理的に接続していてもよい。
【0131】
つまり、本発明の実施の形態に係るシステムにおいて、媒体4は、媒体を介して、対になっている第一導電部1と第二導電部2との間で陽イオン、陰イオン、及び/又は電子の移動が可能であるように構成されていればよい。
【0132】
図3(B)においては、導電部の対を一対備える装置が、複数個、並列に接続されている。
【0133】
図3(B)では、システムは、m個の第一導電部1(1、1、・・・、1)と、m個の第二導電部2(2、2、・・・、2)と、1個の機能部3と、m個の媒体4(4、4、・・・、4)と、m個の容器5(5、5、・・・、5)とから構成されている。ここで、mは2以上の任意の整数を表す。
【0134】
また、第一導電部1(1、1、・・・、1)及び第二導電部2(2、2、・・・、2)の形状はシート状であり、容器5(5、5、・・・、5)は板状の外形を有している。
【0135】
図3(B)では、隣接する導電部の対のうち、第一導電部1と第一導電部1j+1とが電気的に接続され、第二導電部2と第二導電部2j+1とが電気的に接続されることで、隣接する導電部の対が並列に接続されている。以下、並列に接続された導電部の対を、「並列接続された導電部の対」という。ここで、jは1以上、m未満の整数を表す。
【0136】
図3(B)では、並列接続された導電部の対の端部にあたる、第一導電部1と機能部3、及び第二導電部2と機能部3が、それぞれ機能部3と電気的に接続されている。
【0137】
並列接続された導電部の対の数が多いほど、機能部3に供給される電流も大きくなる。つまり、導電部が媒体4に接触する面積が大きいほど、機能部3に供給される電流も大きくなる。
【0138】
また、図3(B)では、それぞれの導電部の対の、第一導電部1(1、1、・・・、1)の一部又は全部が、媒体4(4、4、・・・、4)と接触している。さらに、それぞれの導電部の対の、第二導電部2(2、2、・・・、2)の一部又は全部が、媒体4(4、4、・・・、4)と接触している。そして、それぞれの導電部の対の、第一導電部1及び第二導電部2は、互いに非接触である。「非接触」とは、例えば、第一導電部1と第二導電部2とが直接接触していない状態をいう。
【0139】
図3(B)では、それぞれの導電部の対の、第一導電部1及び第二導電部2は、同じ媒体4と接触している。そして、それぞれの導電部の対の第一導電部1及び第二導電部2が接触している媒体4は、分離している。つまり、第一導電部1と第二導電部2が媒体4と接触しており、第一導電部1と第二導電部2が媒体4と接触しており、第一導電部1j+1と第二導電部2j+1が媒体4j+1と接触しており、第一導電部1と第二導電部2が媒体4と接触している。そして、媒体4、媒体4、媒体4j+1、媒体4は、それぞれ異なる容器5、容器5、容器5j+1、容器5に収容されており、非接触の状態である。
【0140】
また、図3(B)では、第一導電部1と第二導電部2と媒体4が容器5に収容されており、第一導電部1と第二導電部2と媒体4が容器5に収容されており、第一導電部1j+1と第二導電部2j+1と媒体4j+1が容器5j+1に収容されており、第一導電部1と第二導電部2と媒体4が容器5に収容されている。
【0141】
図示しないが、導電部の対を並列に接続する場合においても、それぞれの導電部の対の第一導電部1及び第二導電部2が接触している媒体4は、図1(B)に示すように、それぞれの導電部の対の、第一導電部1が接触する媒体4aと第二導電部2が接触する媒体4bが互いに異なる素材であって、それぞれの導電部の対の、第一導電部1が接触する媒体4aと第二導電部2が接触する媒体4bが接触していてもよい。
【0142】
あるいは、図示しないが、それぞれの導電部の対の、対になっている第一導電部1及び第二導電部2が接触している媒体4は、3以上の互いに異なる素材から構成されてもよい。その場合、対になっている導電部の、第一導電部1が接触する媒体4aと第二導電部2が接触する媒体4bとは、媒体4aと媒体4b以外の、他の素材からなる媒体を介して物理的に接続していることが好ましい。
【0143】
あるいは、図示しないが、それぞれの導電部の対の、対になっている第一導電部1及び第二導電部2が接触している媒体4は、第一導電部1と接触している媒体4と第二導電部2と接触している媒体4とが同じ素材であって、第一導電部1と接触している媒体4と第二導電部2と接触している媒体4とが、他の素材からなる媒体を介して物理的に接続していてもよい。
【0144】
つまり、本発明の実施の形態に係るシステムにおいて、媒体4は、媒体を介して、対になっている第一導電部1と第二導電部2との間で陽イオン、陰イオン、及び/又は電子の移動が可能であるように構成されていればよい。
【0145】
また、本発明の実施の形態にかかるシステムは、本発明の装置を並列に接続したものを、複数個、直列に接続してもよい。本発明の装置を並列に接続したものを直列に接続する態様については、図3(A)及び(B)の説明の記載を必要な範囲で採用できる。
【0146】
本発明の装置を複数個、直列に、及び/又は、並列に接続する際の、本発明の装置の数は、特に限定されず、適宜設計可能である。例えば、本発明の装置の数は、2個でも、6個でも、8個でも、20個でも、100個でもよい。
【0147】
システムの媒体4が水である場合であって、図3(A)に示すような一対の導電部を備える装置を直列に接続したシステムにより、実用化できる程度、例えば、昇圧回路を用いずに3.3V程度の出力電圧を得るためには、直列に接続する装置の個数は、例えば、2個以上であることが好ましく、6個以上であることがより好ましい。
【0148】
システムの媒体4が土又は砂である場合であって、図3(A)に示すような一対の導電部を備える装置を直列に接続したシステムにより、実用化できる程度、例えば、昇圧回路を用いずに3.3V程度の出力電圧を得るためには、直列に接続する装置の個数は、例えば、2個以上であることが好ましく、6個以上であることがより好ましい。
【0149】
なお、本発明のシステムは、第一導電部1及び/又は第二導電部2と媒体4との接触面積や、第一導電部1、第二導電部2、及び媒体4の素材によって、発電できる電力の量に差が出る。また、機能部3に昇圧回路を備えること、システムを直列、及び/又は並列に接続することによって、発電できる電力の量は増加する。そのため、第一導電部1及び/又は第二導電部2と媒体4との接触面積、第一導電部1、第二導電部2、及び媒体4の素材、昇圧回路の有無、直列、及び/又は並列接続の態様を変更することにより、本発明のシステムにより、所望の電力を得ることができる。
【0150】
本発明の実施の形態にかかるシステムは、第一導電部及び第二導電部の形状はシート状であり、第一導電部、第二導電部、及び媒体が、板状の外形を有する容器の中に配置されているため、複数個、直列に、及び/又は、並列に接続する際にも、省スペースに配置し、発電することが可能である。
【0151】
このように、システムが第一導電部及び第二導電部と、媒体と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部が媒体と接触し、第二導電部が媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、第一導電部及び第二導電部の形状はシート状であり、第一導電部、第二導電部、及び媒体が、板状の外形を有する容器の中に配置されることにより、自立した電源を供給するシステムを提供することができる。また、省スペースで発電することが可能となる。
【実施例0152】
以下、実施例及び参考例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び参考例により何ら限定されるものではない。
【0153】
(実施例1)
試験は、常温、常圧で行った。
【0154】
図1(A)に示すような、第一導電部1、第二導電部2、機能部3、媒体4、及び容器5を備えるシステムを構成するため、第一導電部1として、アルミニウム製のシート状部材(0.5mm厚、17.9cm×17.9cm)を用い、第二導電部2として、カーボンナノチューブのシート状部材(0.1mm厚、17.9cm×17.9cm)を用いた。
【0155】
機能部3は、電力消費部、出力電圧変換部及び制御部を備えるものを用いた。また、その入力インピーダンスは1kΩ以上であり、非線形な電流-電圧特性を有するものを用いた。電力消費部には、3V以上の電圧がかかると点灯するLEDを用いた。出力電圧変換部には、昇圧回路を用いた。制御部には、電荷を蓄積するのに要した時間よりも短い時間で、蓄積した電荷を放出するように制御するものを用いた。また、媒体4としては、水道水を用いた。
【0156】
容器5は、アクリル製のものを用いた。容器5は板状の角型で、上部(上面)が閉じられずに開いていた。また、容器5の側面、及び底面を構成するアクリル製の板の厚さは、3mmであった。つまり、容器5の内径は、厚さ1.2cm、縦(深さ)21.4cm、横21.4cmであった。以下、アクリル製の容器を「アクリルケース」ともいう。
【0157】
第一導電部1及び第二導電部2を、シート状の平面部分が対向するように略平行に配置するため、支持体としてアクリル製の板(3mm厚、18cm×18cm)を2枚用いた。支持体として用いたアクリル製の板は、全面に直径5mmの孔を有していた。孔は、10mm間隔で正方格子状に配置されていた。以下、支持体として用いたアクリル製の板を「アクリル板」ともいう。
【0158】
また、第一導電部1と第二導電部2が接触しないようにするため、隔離材として和紙を1枚用いた。
【0159】
さらに、第一導電部1と機能部3、及び第二導電部2と機能部3を接続することを容易にするためのタグとして、ステンレス製の板状部材(0.2mm厚、1cm×2cm)を2枚用いた。
【0160】
アクリル板の上に、タグ、第一導電部1、和紙、第二導電部2、タグの順に重ねて置き、その上にアクリル板を重ねた。タグは、図2のように、いずれかの導電部に接触し、かつ、アクリル板の上部から飛び出すように配置した。その際、第一導電部1と接触したタグは第一導電部1の左上から飛び出すように、第二導電部2と接触したタグは第二導電部2の右上から飛び出すように配置した。和紙は、第一導電部1と第二導電部2が接触しないように配置した。
【0161】
2枚のアクリル板の間に第一導電部1、隔離材、及び第二導電部2を封入した。第一導電部1及び第二導電部2の距離は1mmであり、第一導電部1及び第二導電部2は、シート状の平面部分が対向するように略平行に配置されていた。
【0162】
アクリル板に封入された第一導電部1、隔離材、及び第二導電部2を、アクリルケースの内部に立てて入れ、アクリルケースの内部に水道水を高さ15cmまで入れた。以下、アクリルケースの内部に第一導電部1、第二導電部2、及び媒体4を配置した装置を、「アクリルユニット」ともいう。
【0163】
実施例1のアクリルユニットにおいて、第一導電部1と媒体4が接触している面積の合計は320cmであり、第一導電部2と媒体4が接触している面積の合計は320cmであった。
【0164】
第一導電部1を、第一導電部1と接触したタグを利用して出力電圧変換部の昇圧回路の入力端子A1に接続し、また、昇圧回路の出力端子B1をLED電球に接続した。さらに、第二導電部2を、第二導電部2と接触したタグを利用して昇圧回路の入力端子A2に接続し、また、昇圧回路の出力端子B2を、LED電球の出力端子B1と接続されている端子とは反対側の端子で接続することで、システムを構成した。第一導電部1、第二導電部2及び機能部3の接続には、銅製の導線を用いた。
【0165】
構成したシステムにおいて、LED電球は2~3秒おきに点滅を繰り返した。すなわち、第一導電部1及び/又は第二導電部2から、発電していることを確認できた。
【0166】
構成したシステムにおいて、LED電球の代わりに34401Aマルチメーター(Agilent Technologies社製)を接続し、第一導電部1と第二導電部2の間の電圧を測定したところ、1.6Vであった。
【0167】
(実施例2)
試験は、常温、常圧で行った。
【0168】
図3(A)に示すような、第一導電部1、第二導電部2、媒体4、及び容器5を備える装置を直列に接続したシステムを構成するため、実施例1と同様にして、アクリルユニットを10個作製した。以下、10個のアクリルユニットのそれぞれを、第一アクリルユニット、第二アクリルユニット、・・・、第十アクリルユニットともいう。
【0169】
機能部3は、電力消費部を備えるものを用いた。また、その入力インピーダンスは1~100kΩであり、非線形な電流-電圧特性を有するものを用いた。電力消費部には、3V以上の電圧がかかると点灯するLED電球を用いた。
【0170】
10個のアクリルユニットを、銅製の導線を用いて直列に接続した。すなわち、第一アクリルユニットの第二導電部2と第二アクリルユニットの第一導電部1、第二アクリルユニットの第二導電部2と第三アクリルユニットの第一導電部1、第三アクリルユニットの第二導電部2と第四アクリルユニットの第一導電部1、第四アクリルユニットの第二導電部2と第五アクリルユニットの第一導電部1、第五アクリルユニットの第二導電部2と第六アクリルユニットの第一導電部1、及び第六アクリルユニットの第二導電部2と第七アクリルユニットの第一導電部1、第七アクリルユニットの第二導電部2と第八アクリルユニットの第一導電部1、第八アクリルユニットの第二導電部2と第九アクリルユニットの第一導電部1、第九アクリルユニットの第二導電部2と第十アクリルユニットの第一導電部1を、それぞれ、各導電部と接触したタグを利用して、銅製の導線で接続した。
【0171】
第一アクリルユニットの第一導電部1を、第一導電部1と接触したタグを利用してLED電球に接続した。さらに、第十アクリルユニットの第二導電部2を、第二導電部2と接触したタグを利用してLED電球に接続することで、システムを構成した。
【0172】
構成したシステムにおいて、LED電球は少なくとも24時間以上、継続して点灯した。すなわち、第一導電部1及び/又は第二導電部2から、発電していることを確認できた。
【0173】
構成したシステムにおいて、LED電球の代わりに34401Aマルチメーター(Agilent Technologies社製)を接続し、第一アクリルユニットの第一導電部1と第十アクリルユニットの第二導電部2の間の電圧を測定したところ、8.31Vであった。
【0174】
(比較例1)
試験は、常温、常圧で行った。
【0175】
棒状の導電部を備え、正方形柱状の形状の容器5の中に第一導電部1、第二導電部2、及び媒体4が配置された装置を作製するため、第一導電部1として、マグネシウム製の棒状部材(径8mm、長さ30cm)を4本用い、第二導電部2として、炭素製の棒状部材(径8mm、長さ30cm)を4本用いた。また、媒体4としては、水道水を用いた。
【0176】
容器5は、アクリル製のものを用いた。容器5は正方形柱状で、上部(上面)が閉じられずに開いていた。容器5の外形は縦10cm、横10cmで、深さ20cmであった。また、容器5の側面、及び底面を構成するアクリル製の板の厚さは、6mmであった。つまり、容器5の内径は、縦9.4cm、横9.4cmで、深さ19.4cmであった。以下、正方形柱状のアクリル製の容器を「正方形柱状アクリルケース」ともいう。
【0177】
容器5の四隅のそれぞれに、第一導電部1と第二導電部2が対になるように、8本の導電部を固定した。導電部を固定する際には、対になる第一導電部1と第二導電部2を、1個の固定用部材(3Dプリンタにより製造)を用いた。固定用部材には、固定用部材を容器5の上端の縁にかけて固定することが可能な溝と、導電部を長さ方向に互いに平行に配置することが可能な約8mm径の2つの孔が設けられていた。固定用部材を容器5の隅の上端の縁にかけて固定し、固定用部材の2つの孔のうちの1つに第一導電部1を挿入し、固定用部材の2つの孔のうちのもう1つに第二導電部2を挿入することで、容器5の側面と導電部の長さ方向が平行となるように固定した。対になっている第一導電部1と第二導電部2の距離は20mmであり、第一導電部1及び第二導電部2は、容器5内で、長さ方向が互いに平行で、且つ、水平面に垂直となるように配置された。導電部の対同士の最短距離は80mmであった。
【0178】
以下、上記のように配置した4対の導電部の対のそれぞれを、第一導電部対、第二導電部対、第三導電部対、第四導電部対ともいう。
【0179】
4対の導電部の対のそれぞれを、銅製の導線を用いて直列に接続した。すなわち、第一導電部対の第二導電部2と、それと隣接する第二導電部対の第一導電部1を銅製の導線で接続し、第二導電部対の第二導電部2と、それと隣接する第三導電部対の第一導電部1を銅製の導線で接続し、第三導電部対の第二導電部2と、それと隣接する第四導電部対の第一導電部1を銅製の導線で接続した。
【0180】
8本の導電部を四隅に固定した容器5の内部に、高さ15cmまで水道水を入れた。以下、正方形柱状アクリルケースの内部に棒状の第一導電部1、棒状の第二導電部2、及び媒体4を配置した装置を、「棒状電極の正方形柱状アクリルユニット」ともいう。
【0181】
棒状電極の正方形柱状アクリルユニットにおいて、第一導電部1と媒体4が接触している面積の合計は150cmであり、第一導電部2と媒体4が接触している面積の合計は150cmであった。
【0182】
棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから所定の電流を引いたとき(所定の電流を負荷したとき)の電圧の変化を調べるため、第一導電部対の第一導電部1と第四導電部対の第二導電部2に電子負荷装置(Bio-Logic Science Instruments社製、EC-LAB)を接続した。
【0183】
図4は、本発明の実施の形態に係る比較例及び実施例の装置の電圧の変化を示す図である。図4において、横軸は時間(秒)、左側の縦軸は電圧(V)、右側の縦軸は電流(mA)を表す。電圧の測定は、第一導電部対の第一導電部1と第四導電部対の第二導電部2に接続した34401Aマルチメーター(Agilent Technologies社製)により行った。また、測定された電圧を、データロガー装置を用いて記録した。
【0184】
図4(A)は、比較例1の棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから所定の電流を引いたときの電圧の変化を示している。
【0185】
まず、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから0.01mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。次に、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから0.05mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。また、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから0.1mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。さらに、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから0.2mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。また、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから0.5mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。さらに、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した。
【0186】
測定された電圧は、電流を引かれている間は低下し、電流を引かれなくなると、約1.55V前後まで戻るという変化を示した。図4(A)において両矢印で示した、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから0.5mAの電流を引いたときの電圧の低下Vaは、約0.20Vであった。つまり、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットから0.5mAの電流を引いたときの、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットの内部抵抗の値は、約400Ωであった。
【0187】
また、比較例1においては、深さ20cmの容器5を使用したが、容器5の中に入れた媒体4の高さは15cmであったため、実際には、容器5のサイズが外径縦10cm×横10cm×高さ15.6cmであっても、上記と同じ実験結果が得られると考えられる。つまり、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットは、1560cmの体積で、上記と同じ実験結果が得られると考えられる。
【0188】
(実施例3)
試験は、常温、常圧で行った。
【0189】
第一導電部1として、マグネシウム製のシート状部材(0.5mm厚、17.9cm×17.9cm)を用い、第二導電部2として、カーボンナノチューブのシート状部材(0.1mm厚、17.9cm×17.9cm)を用い、水道水を入れる高さを8.4cmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、アクリルユニットを1個作製した。以下、板状のアクリルケースの内部にシート状の第一導電部1、シート状の第二導電部2、及び媒体4を配置した装置を、「シート状電極の板状アクリルユニット」ともいう。
【0190】
シート状電極の板状アクリルユニットにおいて、第一導電部1と媒体4が接触している面積は320cmであり、第一導電部2と媒体4が接触している面積は320cmであった。つまり、実施例3と比較例1において、導電部と媒体4が接触している面積は同一であった。
【0191】
シート状電極の板状アクリルユニットから所定の電流を引いたとき(所定の電流を負荷したとき)の電圧の変化を調べるため、第一導電部1と第二導電部2に電子負荷装置(Bio-Logic Science Instruments社製、EC-LAB)を接続した。
【0192】
図4(B)は、実施例3のシート状電極の板状アクリルユニットから所定の電流を引いたときの電圧の変化を示している。
【0193】
まず、シート状電極の板状アクリルユニットから電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、シート状電極の板状アクリルユニットから0.01mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。次に、シート状電極の板状アクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、シート状電極の板状アクリルユニットから0.05mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。また、シート状電極の板状アクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、シート状電極の板状アクリルユニットから0.1mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。さらに、シート状電極の板状アクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、シート状電極の板状アクリルユニットから0.2mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。また、シート状電極の板状アクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、シート状電極の板状アクリルユニットから0.5mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。さらに、シート状電極の板状アクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した。
【0194】
測定された電圧は、電流を引かれている間は低下し、電流を引かれなくなると、約1.57V前後まで戻るという変化を示した。図4(B)において両矢印で示した、シート状電極の板状アクリルユニットから0.5mAの電流を引いたときのシート状電極の板状アクリルユニットの電圧の低下Vbは、約0.17Vであった。つまり、シート状電極の板状アクリルユニットから0.5mAの電流を引いたときの、シート状電極の板状アクリルユニットの内部抵抗の値は、約340Ωであった。
【0195】
電子負荷装置により定電流を負荷する実験において、装置から同じ大きさの電流を引いたときの、装置の抵抗の値が小さいほど、装置の発電する能力が高いと言える。比較例1と実施例3を比較すると、導電部と媒体4が接触している面積が同一である状態において、棒状電極を備える装置よりも、シート状電極を備える装置の方が、発電する能力が高いことが分かる。
【0196】
また、実施例3においては、縦(深さ)20cmの容器5を使用したが、容器5の中に入れた媒体4の高さは8.4cmであったため、実際には、容器5のサイズが厚さ1cm、縦(深さ)10cm、横18cmであっても、上記と同じ実験結果が得られると考えられる。つまり、シート状電極の板状アクリルユニットは、180cmの体積で、上記と同じ実験結果が得られると考えられる。
【0197】
比較例1においては、1560cmの体積で、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットの内部抵抗の値は、約400Ωとなると考えられた。一方、実施例3においては、180cmの体積で、シート状電極の板状アクリルユニットの内部抵抗の値は、約340Ωとなると考えられた。そのため、比較例1と実施例3を比較すると、シート状電極の板状アクリルユニットは、棒状電極の正方形柱状アクリルユニットよりも、省スペースで、より高い発電能力を発揮することができると言える。
【0198】
(実施例4)
試験は、常温、常圧で行った。
【0199】
図1(A)に示すような、第一導電部1、第二導電部2、機能部3、媒体4、及び容器5を備えるシステムを構成するため、第一導電部1として、カーボンナノチューブのシート状部材(0.1mm厚、18cm×18cm)を用い、第二導電部2として、マグネシウム製のシート状部材(0.5mm厚、18cm×18cm)を用いた。
【0200】
機能部3は、電力消費部、出力電圧変換部及び制御部を備えるものを用いた。また、その入力インピーダンスは1kΩ以上であり、非線形な電流-電圧特性を有するものを用いた。電力消費部には、3V以上の電圧がかかると点灯するLEDを用いた。出力電圧変換部には、昇圧回路を用いた。制御部には、電荷を蓄積するのに要した時間よりも短い時間で、蓄積した電荷を放出するように制御するものを用いた。また、媒体4としては、茨城県にて産出された黒土を用いた。
【0201】
容器5としては、実施例1と同様のアクリルケースを用いた。
【0202】
まず、第一導電部1を、アクリルケースの内部の平面部分(面積が広い方の側面)に接触するように配置した。また、第二導電部2を、第一導電部1と対向するアクリルケースの内部の平面部分(面積が広い方の側面)に接触するように配置した。第一導電部1及び第二導電部2の距離は12mmであり、第一導電部1及び第二導電部2は、シート状の平面部分が対向するように略平行に配置されていた。
【0203】
次に、第一導電部1と第二導電部2の間に土が配置されるように、アクリルケースの内部に土を高さ13cmまで入れることで、実施例4のアクリルユニットを作成した。
【0204】
第一導電部1を出力電圧変換部の昇圧回路の入力端子A1に接続し、また、昇圧回路の出力端子B1をLED電球に接続した。さらに、第二導電部2を昇圧回路の入力端子A2に接続し、また、昇圧回路の出力端子B2を、LED電球の出力端子B1と接続されている端子とは反対側の端子で接続することで、システムを構成した。第一導電部1、第二導電部2及び機能部3の接続には、銅製の導線を用いた。
【0205】
構成したシステムにおいて、LED電球は約5秒間点灯した後、1秒間に約10回の間隔で点滅を繰り返した。すなわち、第一導電部1及び/又は第二導電部2から、発電していることを確認できた。
【0206】
実施例4のアクリルユニットから所定の電流を引いたとき(所定の電流を負荷したとき)の電圧の変化を調べるため、第一導電部1と第二導電部2に電子負荷装置(Bio-Logic Science Instruments社製、EC-LAB)を接続した。
【0207】
図5は、本発明の実施の形態に係る実施例の装置の電圧の変化を示す図である。図5において、横軸は時間(秒)、左側の縦軸は電圧(V)、右側の縦軸は電流(mA)を表す。電圧の測定は、第一導電部1と第二導電部2に接続した34401Aマルチメーター(Agilent Technologies社製)により行った。また、測定された電圧を、データロガー装置を用いて記録した。
【0208】
図5(A)は、実施例4のアクリルユニットから所定の電流を引いたときの電圧の変化を示している。
【0209】
まず、実施例4のアクリルユニットから電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例4のアクリルユニットから0.01mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。次に、実施例4のアクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例4のアクリルユニットから0.05mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。また、実施例4のアクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例4のアクリルユニットから0.1mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。さらに、実施例4のアクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例4のアクリルユニットから0.2mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。また、実施例4のアクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例4のアクリルユニットから0.5mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。さらに、実施例4のアクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した。
【0210】
測定された電圧は、電流を引かれている間は低下し、電流を引かれなくなると、約1.62V前後まで戻るという変化を示した。図5(A)において両矢印で示した、実施例4のアクリルユニットから0.5mAの電流を引いたときの電圧の低下Vcは、約0.19Vであった。つまり、実施例4のアクリルユニットから0.5mAの電流を引いたときの、実施例4のアクリルユニットの内部抵抗の値は、約380Ωであった。
【0211】
(実施例5)
試験は、常温、常圧で行った。
【0212】
第一導電部1として、ステンレス製のシート状部材(20cm×20cm)を用い、第二導電部2として、亜鉛製のシート状部材(20cm×20cm)を用い、土を入れる高さを15cmとしたこと以外は、実施例4と同様にして、アクリルユニットを1個作製した。
【0213】
実施例5のアクリルユニットから所定の電流を引いたとき(所定の電流を負荷したとき)の電圧の変化を調べるため、第一導電部1と第二導電部2に電子負荷装置(Bio-Logic Science Instruments社製、EC-LAB)を接続した。
【0214】
図5(B)は、実施例5のアクリルユニットから所定の電流を引いたときの電圧の変化を示している。
【0215】
まず、実施例5のアクリルユニットから電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例5のアクリルユニットから0.05mAの電流を引いた状態で30分間電圧を測定した。また、実施例5のアクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で30分間電圧を測定した後、実施例5のアクリルユニットから0.1mAの電流を引いた状態で30分間電圧を測定した。さらに、実施例5のアクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で30分間電圧を測定した後、実施例5のアクリルユニットから0.2mAの電流を引いた状態で30分間電圧を測定した。また、実施例5のアクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で30分間電圧を測定した後、実施例5のアクリルユニットから0.5mAの電流を引いた状態で30分間電圧を測定した。さらに、実施例5のアクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で30分間電圧を測定した。
【0216】
測定された電圧は、電流を引かれている間は低下し、電流を引かれなくなると、約0.9~1.0V前後まで戻るという変化を示した。図5(B)において両矢印で示した、実施例5のアクリルユニットから0.5mAの電流を引いたときの電圧の低下Vdは、約0.54Vであった。つまり、実施例5のアクリルユニットから0.5mAの電流を引いたときの、実施例5のアクリルユニットの内部抵抗の値は、約1080Ωであった。
【0217】
(実施例6)
試験は、常温、常圧で行った。
【0218】
第一導電部1として、マグネシウム製のシート状部材(0.5mm厚、17.9cm×17.9cm)を用い、第二導電部2として、カーボンナノチューブのシート状部材(0.1mm厚、17.9cm×17.9cm)を用い、媒体4として土と水の混合物を用い、媒体4を入れる高さを15cmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、アクリルユニットを1個作製した。
【0219】
媒体4として用いた土と水の混合物は、土と水を、8:2の質量比(土の質量:水の質量)で混合したものであった。
【0220】
実施例6のアクリルユニットから所定の電流を引いたとき(所定の電流を負荷したとき)の電圧の変化を調べるため、第一導電部1と第二導電部2に電子負荷装置(Bio-Logic Science Instruments社製、EC-LAB)を接続した。
【0221】
図5(C)は、実施例6のアクリルユニットから所定の電流を引いたときの電圧の変化を示している。
【0222】
まず、実施例6のアクリルユニットから電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例6のアクリルユニットから0.01mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。次に、実施例6のアクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例6のアクリルユニットから0.05mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。また、実施例6のアクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例6のアクリルユニットから0.1mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。さらに、実施例6のアクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例6のアクリルユニットから0.2mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。また、実施例6のアクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例6のアクリルユニットから0.5mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。さらに、実施例6のアクリルユニットから電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した。
【0223】
測定された電圧は、電流を引かれている間は低下し、電流を引かれなくなると、約1.41V前後まで戻るという変化を示した。図5(C)において両矢印で示した、シート状電極の板状アクリルユニットから0.5mAの電流を引いたときの実施例6のアクリルユニットの電圧の低下Veは、約0.65Vであった。つまり、実施例6のアクリルユニットから0.5mAの電流を引いたときの、実施例6のアクリルユニットの内部抵抗の値は、約1300Ωであった。
【符号の説明】
【0224】
1 第一導電部、2 第二導電部、3 機能部、4 媒体、5 容器、6 タグ
図1
図2
図3
図4
図5