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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055721
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】携帯型心電図測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/332 20210101AFI20240411BHJP
   A61B 5/352 20210101ALI20240411BHJP
   A61B 5/304 20210101ALI20240411BHJP
   A61B 5/308 20210101ALI20240411BHJP
【FI】
A61B5/332
A61B5/352
A61B5/304
A61B5/308
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174880
(22)【出願日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】10-2022-0128444
(32)【優先日】2022-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522426814
【氏名又は名称】スリーユース カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】3youth CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】(Hyoja-dong, Kangwon University) 901-ho, Bodeumgwan, 1 Kangwondaehak-gil, Chuncheon-si, Gangwon-do 24341 Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ペク ジュンホ
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB03
4C127CC01
4C127CC02
4C127EE03
4C127GG02
(57)【要約】
【課題】 ノイズと判明される信号は心電図グラフから除いてユーザーが不要なノイズによって驚くことがないようにし、電極信号(electorde signal)から無効な信号を区別してユーザーに正確な心電図信号とグラフを与える携帯型心電図測定装置を提供すること。
【解決手段】 ユーザーの指と接触する電極にて心電図を検出するセンサー部と、心電図情報を表示するディスプレイ装置と、前記センサー部を介して電極信号を取得し、前記電極信号から複数のR信号を検出し、前記R信号の周期を一定に並べ替えたノーマライズ信号を生成し、前記ノーマライズ信号を構成する各単位信号の積分値に基づいて、正常の範ちゅうに属する信号群を取り出した後、これに基づいて心電図グラフを構成して前記ディスプレイ装置に表示する制御部と、を備えることを特徴とする携帯型心電図測定装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの指と接触する電極にて心電図を検出するセンサー部と、
心電図情報を表示するディスプレイ装置と、
前記センサー部を介して電極信号を取得し、前記電極信号から複数のR信号を検出し、前記R信号の周期を一定に並べ替えたノーマライズ信号を生成し、
前記ノーマライズ信号を構成する各単位信号の積分値に基づいて、正常の範ちゅうに属する信号群を取り出した後、これに基づいて心電図グラフを構成して前記ディスプレイ装置に表示する制御部と、
を備えることを特徴とする携帯型心電図測定装置。
【請求項2】
前記ノーマライズ信号は、
前記センサー部において前記電極信号を測定するとき、測定開始時点から複数の電極信号が有するR区間の平均値に基づいて前記電極信号を並べ替えた信号であることを特徴とする請求項1に記載の携帯型心電図測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記複数のR区間を含む前記電極信号のうちのいずれか一つのR区間を含む電極信号の積分値が他の電極信号のR区間の平均値と差別化されるとき、差別化されるR区間が含まれる電極信号を前記R区間の平均値に合わせてノーマライズ処理を施すことを特徴とする請求項2に記載の携帯型心電図測定装置。
【請求項4】
ジャイロセンサーをさらに備え、
前記制御部は、前記ジャイロセンサーの3軸(AXIS)ごとの測定値が予め設定された基準値から逸脱するときに前記電極信号の測定を遮断することを特徴とする請求項1に記載の携帯型心電図測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記ジャイロセンサーの3軸ごとの測定値のうちのいずれか一つが前記基準値以内であるときに前記電極信号を受信し、これに基づいて前記心電図グラフを生成することを特徴とする請求項4に記載の携帯型心電図測定装置。
【請求項6】
前記制御部は、
予め設定された基準時間の間に前記基準値以内であるときに前記心電図グラフを生成することを特徴とする請求項4に記載の携帯型心電図測定装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記ノーマライズ信号を用いて前記正常の範ちゅうに属する信号群を取り出した後、
前記信号群に対してデノーマライズ(de-normalizing)を行って前記電極信号の元の形態に戻した後に、前記心電図グラフを構成することを特徴とする請求項1に記載の携帯型心電図測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型心電図測定装置に係り、さらに詳しくは、携帯型心電図測定装置において生じる振動とノイズを極力抑え、これにより、精度よい心電図信号とグラフを生成可能な携帯型心電図測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心電図(electrocardiogram)は、心臓の収縮に伴う活動電流及び活動電位差を曲線の形状に表わしたものであって、心臓の状態を診断する上で非常に重要である。心電図は、通常、病院において高価な心電図測定装置を用いて測定しており、患者が毎日の様態を診断するために持ち運び可能な携帯型心電図測定装置もまた多用されている。
【0003】
心電図測定装置は、心臓の収縮に伴う活動電流を測定するため、測定される周波数帯域は数十ヘルツ以下の低周波に相当する。この程度の低周波は、人体が動くときに生じる低周波、及び呼吸をするときに生じる低周波、並びに人体の他の筋肉が動くときに生じる低周波と略同一の周波数帯域に相当する。
【0004】
したがって、心電図測定装置にて心電図を測定する際に、測定の対象者は、最大限に安定した環境下で測定しなければならず、体を最大限に動かないようにして人体が引き起こす低周波ノイズが生じないように心掛けなければならない。
【0005】
しかしながら、持ち運び可能な携帯型心電図測定装置を用いて心電図を測定するとき、
1)携帯型心電図測定装置を手に取って動作させるとき、
2)測定の最中に咳をしたり、体が一時的に動いたりするとき、
3)周りに低周波ノイズを引き起こす電子装置があるとき、
には心電図グラフが正しく測定されない。
【0006】
項目1)と項目2)は、携帯型心電図測定装置を手に取って動作させる過程において誰にでも起こり得る状況であって、看護師や第三者が助力しない限り、容易に統制されるわけではなく、項目3)は、ユーザーが手軽に認知できないものであって、携帯型心電図測定装置においてフィルターリングする方案が最も効率的である。
【0007】
項目3)は、携帯型心電図測定装置においてフィルターリングして抑えることができる。しかしながら、項目1)と項目2)は、フィルターリングを行うことが決して容易ではないため、心電図グラフに反映されており、ユーザーの心電図の測定に不要なノイズとして働いて、ユーザーを驚かしたり、余計な誤解を生じたりする原因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2021-0080866号公報(低電力長距離通信網を用いた心電図測定装置及び読み取りアルゴリズム)
【特許文献2】大韓民国登録特許第10-1555569号公報(心電図信号の検出方法、心電図信号のディスプレイ方法及び心電図信号の検出装置)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、手に取って心電図を測定するときに生じるノイズを極力抑える携帯型心電図測定装置を提供するところにある。
【0010】
本発明の別の目的は、心電図を測定するときに、電極信号から生じる非構造化信号(非定形信号)を取り除き、構造化信号(定形信号)のみから再構成された正しい心電図信号をユーザーに与えることのできる携帯型心電図測定装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、本発明により、ユーザーの指と接触する電極にて心電図を検出するセンサー部と、心電図情報を表示するディスプレイ装置と、前記センサー部を介して電極信号を取得し、前記電極信号から複数のR信号を検出し、前記R信号の周期を一定に並べ替えたノーマライズ信号を生成し、前記ノーマライズ信号を構成する各単位信号の積分値に基づいて、正常の範ちゅうに属する信号群を取り出した後、これに基づいて心電図グラフを構成して前記ディスプレイ装置に表示する制御部と、を備えることを特徴とする携帯型心電図測定装置によって成し遂げられる。
【0012】
ここで、前記ノーマライズ信号は、前記センサー部において前記電極信号を測定するとき、測定開始時点から複数の電極信号が有するR区間の平均値に基づいて前記電極信号を並べ替えた信号であってもよい。
【0013】
ここで、前記制御部は、前記複数のR区間を含む前記電極信号のうちのいずれか一つのR区間を含む電極信号の積分値が他の電極信号のR区間の平均値と差別化されるとき、差別化されるR区間が含まれる電極信号を前記R区間の平均値に合わせてノーマライズ処理を施すことが好ましい。
【0014】
好ましくは、ジャイロセンサーをさらに備え、前記制御部は、前記ジャイロセンサーの3軸(AXIS)ごとの測定値が予め設定された基準値から逸脱するときに、前記電極信号の測定を遮断してもよい。
【0015】
このとき、前記制御部は、前記ジャイロセンサーの3軸ごとの測定値のうちのいずれか一つが前記基準値以内であるときに、前記電極信号を受信し、これに基づいて前記心電図グラフを生成してもよい。
【0016】
ここで、前記制御部は、予め設定された基準時間の間に前記基準値以内であるときに、前記心電図グラフを生成することが好ましい。
【0017】
ここで、前記制御部は、前記ノーマライズ信号を用いて前記正常の範ちゅうに属する信号群を取り出した後、前記信号群に対してデノーマライズ(de-normalizing)を行って前記電極信号の元の形態に戻した後に、前記心電図グラフを構成してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、携帯型心電図測定装置を手に取って測定するときに生じるノイズを極力抑え、ノイズと判明される信号は心電図グラフから除いてユーザーが不要なノイズによって驚くことがないようにし、電極信号(electorde signal)から無効な信号を区別してユーザーに正確な心電図信号とグラフを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】心電図信号の波形についての参照図面を示す。
図2】本発明の一実施形態に係る携帯型心電図測定装置のブロック概念図を示す。
図3】ノーマライズ(正規化)を行う方法についての参照図面を示す。
図4】電極信号の間隔を調節する方法についての概念図を示す。
図5】本発明の一実施形態に係る携帯型心電図測定装置の製品イメージを示す。
図6】本発明の一実施形態に係る携帯型心電図測定装置のメニュー画面を示す。
図7】ユーザーがメニュー画面から選んだグラフメニューに対応してユーザーの心電図グラフを表示した一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の心電図信号において触れているPQRST波とは、心臓が1回収縮する間に起こる電気的な活動をグラフにて示した波形のことをいう。
【0021】
図1中、P波は、心房(atrium)が収縮するときに始まる波形であって、0.05秒~0.1秒の時間の間に生じる波形を意味する。
【0022】
図1中、QRS波は、心室(ventricle)が収縮する時間の間に生じる波形であって、心電図信号において最大のピークを示し、最大のピークが続くときの区間を「R区間」と称する。
【0023】
図1中、R波形の左右の両側において、平均値においてマイナス(-)の値を示す個所をそれぞれQとSと称する。
【0024】
図1中、心室が1回の収縮を行い終えた後、心室の休止期に生じる電気的な信号はT波と称する。
【0025】
図1中、心室の1回の収縮が始まってから終わるときの区間はQT間隔と称する。
【0026】
本発明において記載する非構造化信号は、外部のノイズによって生じる信号を指し示すことがある。ユーザーが心電図の測定の最中に動いたり、本発明に係る携帯型心電図測定装置を揺らしたりして生じる信号に相当することがある。
【0027】
本発明において記載する構造化信号は、ユーザーに対して測定された正しい心電図信号を指し示すことがある。
【0028】
以下、添付図面に基づいて、本発明について詳しく説明する。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態に係る携帯型心電図測定装置のブロック概念図である。
【0030】
本発明の一実施形態に係る携帯型心電図測定装置100は、センサー部110と、制御部120と、メモリー130と、入力部140と、通信部150と、ディスプレイ部180及びジャイロセンサー190を備えていてもよい。
【0031】
センサー部110は、ユーザーの指の3個所に接触する3つの電極112、114、116から構成され、電極信号(electorde signal)を検出する。
【0032】
ここで、3つの電極信号によって形成される信号は、心電図信号に相当する。したがって、本発明において触れている電極信号は、しばしば心電図信号という用語とその言い回しや意味が混用されることがある。
【0033】
センサー部110は、備えられたそれぞれの電極112、114、116を介して心臓の神経伝達経路に沿って現れる活動電位(action potential)に対応する電極信号を検出し、これを制御部120に引き渡す。
【0034】
ここで、センサー部110は、携帯型心電図測定装置100の外周縁の一方の面には左腕の2つの指がそれぞれ接触できるようにする電極112、114を備え、携帯型心電図測定装置100の他方の外周縁には、右腕の一つの指が接触できるようにする電極116を備えていてもよい。
【0035】
それぞれの電極112、114、116は、電気伝導度(Conductivity)が高い素材から作製されることが好ましい。
【0036】
また、電極112、114、116は、ドライ電極(dry electrode)から構成されてもよい。電極112、114、116をドライ電極により実現するとき、ユーザーの心電図を測定するに際して、別途のゲル(gel)を用いなくても、本実施形態に係る携帯型心電図測定装置100を用いて心電図の測定を行うことができる。
【0037】
制御部120は、センサー部110において検出される信号をローパスフィルターリング(Low pass filtering)して外部の電磁気のノイズを極力抑え、アナログ-デジタル変換を行って心電図(ECG:EleCtrocardioGram)信号を構成する。
【0038】
制御部120は、センサー部110において測定される電極信号をノーマライズ(normalizing)処理した後、デノーマライズ(非正規化、de-normaling)して非構造化信号を取り除き、構造化信号群を取り出して心電図グラフを再生成してもよい。これについては、図3図4に基づいて説明する。
【0039】
図3は、ノーマライズを行う方法についての参照図である。
【0040】
図3と結び付けて述べると、図3の(a)は、電極信号に含まれるR区間に対して、t0、t1、t2、t3、t4を基準線として電極信号の間隔を示した一例を示している。なお、図3の(b)は、図3の(a)と同一のユーザーが連続して測定した電極信号を示す。
【0041】
図3の(a)と図3の(b)を参照すると、同一のユーザーが実施形態に係る携帯型心電図測定装置100を用いて心電図の測定を行うとき、電極信号が均一な間隔を有さないということが分かる。
【0042】
図3の(a)中、心電図信号は、R区間のピーク値を基準としてP1~P9にて表示されており、図3の(b)中、R区間のピーク値を基準としてN1~N9にて表示されている。
【0043】
一人のユーザーが一台の携帯型心電図測定装置100を用いて連続して測定した電極信号の間隔は、図3に示すように、等しくない。
【0044】
P1~P9の位置とN1~N9の位置とを比較するために、基準線として示したt1~t4について調べてみると、たとえP1とN1の開始点は同一であるとしても、P9とN9の位置は同一ではなく、N9は基準線t4よりも遅く示されるということが分かる。
【0045】
制御部120は、2つ~5つのR区間の距離を参照してR区間の間の平均値を算出し、算出されたR区間の平均値に基づいて以降の電極信号の間隔を均一化させる。本発明において触れているノーマライズは、これに相当する。
【0046】
制御部120は、R区間の平均値に基づいて以降に入力される電極信号の信号幅を同一の時間間隔に合わせて広げたり縮めたりしてR区間の平均値に合わせ、R区間の平均値によってノーマライズされた電極信号に対して一つの周期信号ごとに積分値を算出してもよい。
【0047】
次いで、ノーマライズ処理の施された電極信号は、制御部120において各電極信号の一つの周期ごとに積分処理されて、構造化信号と非構造化信号とを区別する上で用いられる。
【0048】
また、制御部120は、非構造化信号を取り除いた後、構造化信号のみから電極信号を再構成し、構造化信号から電極信号を再構成した後、デノーマライズ(de-normalizing)処理を施す。
【0049】
制御部120は、デノーマライズ処理を施すことで、ノーマライズ処理の施された電極信号を元の時間間隔に戻す。デノーマライズ処理が施されれば、各電極信号のR区間が均一な時間間隔を有さず、元のセンサー部110において、各電極112、114、116において測定された元の形態の信号に戻る。
【0050】
次いで、制御部120は、デノーマライズ処理によって非構造化信号が取り除かれた電極信号をディスプレイ部180に出力してもよい。
【0051】
制御部120は、電極信号を以下の各号に掲げる順番に従って処理(processing)してもよい。
【0052】
1)電極信号から複数のR区間を検出し、
2)検出されたR区間のピーク値を基準として一定の間隔になるようにノーマライズ(normalizing)処理を施してノーマライズ信号(normalizing signal)を生成し、
3)ノーマライズされた信号のそれぞれを一つの周期単位にて積分して積分値が他の積分値の平均値に比べて30%~70%以上大きいかあるいは小さい非構造化信号を判断し、
4)非構造化信号を除いた残りのノーマライズ済みの信号群を取り出し、
5)取り出された信号群にて心電図グラフを作成する。
【0053】
ここで、非構造化信号を取り除き、構造化信号のみから心電図信号電極信号を再構成する方法については、図4と結び付けて説明する。
【0054】
図4は、電極信号の間隔を調節する方法についての概念図である。
【0055】
図4を参照すると、図4の(a)中、S1区間とS2区間は、比較的均一な間隔にてR区間が並べられることが分かるが、S2区間の積分値acc2は、S1区間の平均積分値acc1に比べて信号の積分値がさらに高く得られる非構造化区間に相当する。
【0056】
S2区間の積分値acc2がS1区間の平均積分値acc1に比べて30%~70%さらに大きく得られることは、S2区間において携帯型心電図測定装置100に振動が生じたことや、ユーザーの身体筋肉が動いたことに起因している。
【0057】
たとえユーザーが実施形態に係る携帯型心電図測定装置100を正しく手に取って携帯型心電図測定装置100に振動を加えなかったとしても、ユーザーの他の身体筋肉が動くときに生じる電流によってS2区間に示した非構造化信号が生じることがある。
【0058】
非構造化信号は、実施形態に係る携帯型心電図測定装置100の心電図の状態を正しく表わすものではないため、制御部120において心電図グラフを生成するときに取り除かれることが好ましい。
【0059】
このとき、制御部120は、図4の(a)に示すように、
-電極信号中のR区間のピーク値の間の領域を積分したり(R1)、
-電極信号中の隣り合うQ波形の間の領域を積分したり(R2)、
-電極信号中のP波形の間の領域を積分して(R3)のそれぞれの電極信号に対する積分値を電極信号(心電図信号)の一つの周期単位にて算出したりしてもよい。
【0060】
算出される積分値は、累積積分されながら平均値を算出していくことができる。
【0061】
例えば、S1区間に示された電極信号のうちの最初の電極信号、2番目の電極信号、3番目の電極信号及び4番目の電極信号の積分値がそれぞれA、B、C、Dであると想定すれば、制御部120は、2番目の電極信号が測定されるときには(A+B)/2にて平均値を算出する。
【0062】
3番目の電極信号が制御部120に入力されれば、制御部120は、(A+B+C)/3にて平均値を算出することになる。
【0063】
4番目の電極信号が制御部120に入力されれば、制御部120は、(A+B+C+D)/4にて平均値を算出することになる。
【0064】
すなわち、制御部120は、入力される電極信号を順番に積分し、以前の電極信号に対する積分値を累積して加算した後、入力される電極信号の数で割って電極信号に対する平均積分値を算出することになる。
【0065】
このような累積積分値の算出は、制御部120に新たに電極信号が入力される度に算出されるため、制御部120に演算過負荷(Overload)をかけない。
【0066】
制御部120は、累積されて算出される平均積分値を用いて、新たに入力される電極信号の積分値が平均積分値に比べて30%~70%以上大きいかあるいは小さい場合、入力される電極信号を非構造化信号と判断し、非構造化信号を取り除いた後、心電図グラフを生成する。
【0067】
例えば、図4の(a)中、S2領域は非構造化信号に相当するため、制御部120は、S2領域を取り除き、以降に入力される電極信号を取り除かれたS2領域に継ぎ当てて図3の(b)に示す形状に心電図グラフを生成してもよい。
【0068】
制御部120は、入力部140を介してユーザーにより入力されるボタンの入力を感知し、これに対応するメニューをディスプレイ部180に表示してもよい。
【0069】
これについては、図5から図7と結び付けて説明する。
【0070】
まず、図5は、本発明の一実施形態に係る携帯型心電図測定装置の製品のイメージを示している。
【0071】
図5に示す携帯型心電図測定装置は、ハウジング10と、ディスプレイ部180と、第1の電極112と、第2の電極114及び第3の電極116がハウジング10に露設され、ディスプレイ部180と隣り合う個所に入力部140が形成される。
【0072】
第1の電極112と第2の電極114は、片手にて把持可能なように隣り合うように配置され、第3の電極116は、反対側の手にて把持可能なように離れて配置される。
【0073】
図5の右側に示される入力部140は、ユーザーが希望するメニューを呼び出し、呼び出されたメニューを操作するために設けられる。入力部140は、真ん中の確認ボタン140aと、確認ボタン140aと隣り合うように配列される方向キーボタン140bと、から構成され、方向キーボタン140bは、左、右、上、下のボタンに相当する。
【0074】
次いで、図6は、本発明の一実施形態に係る携帯型心電図測定装置のメニュー画面を示している。
【0075】
図6に示すメニュー画面は、実施形態に係る携帯型心電図測定装置100をターンオン(turn-on)させたとき、ディスプレイ部180に表示されるメニュー画面であって、心電図の測定を行い始めるための測定メニュー180aと、心電図グラフを表示するグラフメニュー180bと、外部格納媒体(例えば、USB)に心電図信号を送信するための外部格納メニュー180c及び環境設定メニュー180dを示す。
【0076】
ディスプレイ部180は、タッチ入力に反応するタッチスクリーンから構成される。図6に示すメニュー画面からユーザーが希望するメニューをタッチすれば、制御部120がこれに応答して、ユーザーが希望するメニューに対応する機能を行う。
【0077】
もし、図6に示すメニュー画面からユーザーがグラフメニュー180bを選んだならば、図7に示すような心電図グラフがディスプレイ部180に表示されることができる。
【0078】
図7には、ユーザーがメニュー画面から選んだグラフメニュー180bに対応してユーザーの心電図グラフを示した一例が示されている。図7に示されている心電図グラフは、非構造化信号を除いた構造化信号から再構成されたものを示す。
【0079】
図7に示す心電図グラフは、ユーザーが実施形態に係る携帯型心電図測定装置100を把持するときに生じる揺らぎや、心臓を除いた他の筋肉の収縮と弛緩によって生じる非構造化信号は取り除かれ、構造化信号のみにより示されるものを示す。
【0080】
メモリー130は、制御部120のアプリケーション及びオペレーティングシステムを搭載している。実施形態に係る携帯型心電図測定装置100が立ち上げられるときにオペレーティングシステムを起動し、制御部120がアプリケーションを起動するのに必要とされる一時格納空間を与えることができる。
【0081】
ここで、アプリケーションは、心電図信号を測定したり、心電図グラフを生成したりするアプリケーションを指し示すことがあり、この他に、環境設定のためのアプリケーション、及びディスプレイ部180に画像やテキストを表示するためのアプリケーションを指し示すこともある。
【0082】
通信部150は、マイクロ5ピンコネクター、cタイプコネクター、USBコネクターを介して外部のコンピューティング装置(Computing device)とデータ通信を行い、外部のコンピューティング装置に心電図信号や心電図グラフのデータを送信してもよい。
【0083】
外部のコンピューティング装置としては、デスクトップコンピューター、ノート型パソコン、スマートフォン、及びネットワークにより結ばれるサーバーのうちのいずれか一つが挙げられ、中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリー(RAM)、ソリッドステートドライブ(SSD)などのオペレーティングシステム及びアプリケーション格納装置と入出力装置を備えた多種多様な装置が挙げられる。
【0084】
通信部150は、スマートフォンとのデータ通信のためにブルーテゥースやWiFi通信機能を備えていてもよい。この場合、通信部150は、ユーザーを対象として測定した心電図信号や心電図グラフの情報を無線にて送信してもよい。
【0085】
ジャイロセンサー190は、実施形態に係る携帯型心電図測定装置100の3軸揺らぎを感知し、これを制御部120に通知する。
【0086】
ジャイロセンサー190は、X軸、Y軸、及びZ軸に対して揺らぎを感知してもよい。
【0087】
-ジャイロセンサー190は、センサー部110によって電極信号が測定される時点を初期値とし、測定時点後から携帯型心電図測定装置100の揺らぎを初期値に比べてどれくらい生じさせるかを測定する。
【0088】
-ジャイロセンサー190の初期値は、心電図の測定を行い始める時点のX軸、Y軸、Z軸の値に相当する。
【0089】
したがって、制御部120は、心電図信号を測定する時点のジャイロセンサー190のX軸、Y軸、Z軸の測定値を初期値として設定する。
【0090】
-初期値は、当初から定められた値ではなく、心電図信号を測定する時点のジャイロセンサー190のセンサー値を示す。
【0091】
制御部120は、ジャイロセンサー190において、初期値に比べて20%~30%を超える値(基準値)が測定されれば、非構造化信号が生じたとみなし、電極信号の入力を遮断し、電極信号の測定を中断する。
【0092】
制御部120は、ジャイロセンサー190の測定値が基準値以内である場合、電極信号の測定を行い続ける。
【0093】
この実施形態及びこの明細書に添付されている図面は、本発明に含まれる技術的思想の一部を明らかに示しているものに過ぎず、本発明の明細書及び図面に含まれている技術的思想の範囲内において当業者が容易に類推可能な様々な変形例と具体的な実施形態はいずれも本発明の権利範囲に含まれることが明らかであると言える。
【符号の説明】
【0094】
110 センサー部
120 制御部
130 メモリー
140 入力部
150 通信部
180 ディスプレイ部
190 ジャイロセンサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7