(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055722
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】高難燃低発煙ポリビニルクロリド射出成形管の組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20240411BHJP
C08K 3/10 20180101ALI20240411BHJP
C08L 27/24 20060101ALI20240411BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20240411BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20240411BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C08L27/06
C08K3/10
C08L27/24
C08K5/49
C08J3/20 Z CEV
B29C45/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204683
(22)【出願日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】111138148
(32)【優先日】2022-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】許 漢▲卿▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 春來
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 文義
【テーマコード(参考)】
4F070
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA22
4F070AB04
4F070AB11
4F070AB22
4F070AC55
4F070AC73
4F070AC76
4F070AC83
4F070AE03
4F070AE07
4F070AE09
4F070BA02
4F070BA03
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FB07
4F070FB09
4F206AA15
4F206AB05
4F206AG08
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4F206JQ81
4J002BD03W
4J002BD18X
4J002DD077
4J002DE187
4J002DH046
4J002DH056
4J002EG037
4J002EG047
4J002EW046
4J002EW156
4J002FD136
4J002FD207
4J002GC00
4J002GL00
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】本発明は、高難燃低発煙ポリビニルクロリド射出成形管の組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】高難燃低発煙ポリビニルクロリド射出成形管の組成物には、ポリビニルクロリド樹脂材料、塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料、難燃添加剤、及び炭素形成剤を含む。ポリビニルクロリド樹脂材料の第1の数平均重合度(DPn)が600から1,000の間にある。塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料の第2の数平均重合度が600から800の間にある。第1の数平均重合度と第2の数平均重合度との差が400以下である。難燃添加剤は、変性剤で修飾されたリン含有難燃剤である。難燃添加剤及び炭素形成剤の、高難燃低発煙ポリビニルクロリド射出成形管の組成物での総添加量は3重量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用量が10重量部(PHR)から90重量部の間にあり、第1の数平均重合度(DPn)が600から1,000の間にあるポリビニルクロリド樹脂材料と、
使用量が10重量部から90重量部の間にあり、第2の数平均重合度が600から800の間にある塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料と、
使用量が0.5重量部から2.0重量部の間にあり、変性剤で修飾されたリン含有難燃剤である難燃添加剤と、
使用量が0.2重量部から1.0重量部の間にあり、塩化亜鉛(zinc chloride)、ステアリン酸亜鉛(zinc stearate)、ステアリン酸カルシウム(calcium stearate)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(hydroxide zinc stannate)、無水スズ酸亜鉛(anhydrous zinc stannate)、リン酸亜鉛(zinc phosphate)、及びリン酸ジルコニウム(zirconium phosphate)、からなる材料群から選択される少なくとも1つである炭素形成剤とを含む、高難燃低発煙ポリビニルクロリド射出成形管の組成物であって、
前記第1の数平均重合度と前記第2の数平均重合度との差が400以下であり、
前記難燃添加剤及び前記炭素形成剤の、前記高難燃低発煙ポリビニルクロリド射出成形管の組成物での総添加量は3重量部以下であることを特徴とする、高難燃低発煙ポリビニルクロリド射出成形管の組成物。
【請求項2】
前記変性剤は、無機変性剤又は有機変性剤であり、
前記無機変性剤は、酸化亜鉛(zinc oxide)、次亜リン酸亜鉛(zinc hypophosphite)、及び水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)、からなる材料群から選択される少なくとも1つであり、
前記有機変性剤は、アルキルリン酸(alkyl phosphoric acid)である、請求項1に記載のポリビニルクロリド射出成形管の組成物。
【請求項3】
前記変性剤は、共有結合によって前記リン含有難燃剤に修飾される、請求項2に記載のポリビニルクロリド射出成形管の組成物。
【請求項4】
前記難燃添加剤は、前記変性剤で修飾されたメラミンリン酸塩系難燃剤(melamine phosphate flame retardant)である、請求項2に記載のポリビニルクロリド射出成形管の組成物。
【請求項5】
前記難燃添加剤の使用量は、前記炭素形成剤の使用量の10倍から0.5倍の間にある、請求項1に記載のポリビニルクロリド射出成形管の組成物。
【請求項6】
前記ポリビニルクロリド樹脂材料及び前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量の総合を100重量部として、前記ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量は、前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量の9倍から1/9倍の間にある、請求項1に記載のポリビニルクロリド射出成形管の組成物。
【請求項7】
前記ポリビニルクロリド樹脂材料は、高い塩素含有量を有するポリビニルクロリド樹脂であり、前記ポリビニルクロリド樹脂材料は、55%以上の塩素含有量を有する、請求項6に記載のポリビニルクロリド射出成形管の組成物。
【請求項8】
熱安定剤、強靭化剤、加工助剤、滑剤、及び酸化防止剤を更に含む、請求項1に記載のポリビニルクロリド射出成形管の組成物。
【請求項9】
前記熱安定剤の使用量の範囲は、1重量部から5重量部の間にあり、前記強靭化剤の使用量の範囲は、1重量部から10重量部の間にあり、前記滑剤の使用量の範囲は、1重量部から3重量部の間にあり、前記加工助剤の使用量の範囲は、0.5重量部から3重量部の間にあり、前記酸化防止剤の使用量の範囲は、0.1重量部から2重量部の間にある、請求項8に記載のポリビニルクロリド射出成形管の組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のポリビニルクロリド射出成形管の組成物を加熱攪拌ミキサーに加え、100℃から120℃の加熱温度で高速攪拌して混合させることにより、第1の混合物を形成することと、
前記第1の混合物の温度を35℃から50℃の冷却温度に低下させて冷却することにより、第2の混合物を形成することと、
前記第2の混合物を射出成型機により、160℃から190℃の溶融温度で射出成型を行い、次に射出成形・保圧、冷却成形、完成品取り出し、ゲートカットのプロセスを行い、ポリビニルクロリド射出成形管を得ることと、
を含む、ポリビニルクロリド射出成形管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管材の組成物に関し、特に高難燃低発煙ポリビニルクロリド射出成形管の組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルクロリド(Polyvinyl Chloride、PVC)樹脂材料は、優れた電気絶縁性及び機械的強度を備えるとともに、低価という利点も有するので、建築分野や電気分野、例えば、水管材、電線管路、キッチンファニチャー、電線ケーブルなどの用途に広く応用されている。純粋なポリビニルクロリドは、高い塩素含有量(一般的には、55%以上)を有するので、その限界酸素指数の範囲が45以上となる。そのため、純粋なポリビニルクロリドは難燃という特性を有し、難燃材料とすることができる。
【0003】
しかし、ポリビニルクロリドは、燃焼時に大量の黒煙が発生するので、逃げる視線が阻害されるだけでなく、黒煙には塩酸及びマルチベンゼン構造を有する化合物が含まれているため、逃げて生存する確率を低下させる。
【0004】
米国特許番号US4670494A(出願人GARY CHEMICAL CORP.)には、ホウ酸亜鉛、リン酸エステル、及び臭化酸エステルなどの難燃添加剤を、ポリビニルクロリド樹脂材料にドープすることにより、樹脂材料の燃焼時における発煙量を低下させることが提案されている。Cartyは、スズ酸塩、塩基性酸化鉄、及びモリブデン酸アンモニウムなどの難燃添加剤を、ポリビニルクロリド樹脂材料にドープすることにより、樹脂材料の燃焼時における発煙量を有効的に抑制することを提案している(Flame-retardancy and Smoke-suppression Studies on Ferrocene Derivatives in PVC,Applied Organometallic Chemistry,Volume 10,Issue 2,March 1996,P.101-111)。
【0005】
米国特許番号US20140336321A1(出願人日本積水化学社)には、リン化合物及び膨張黒鉛をポリビニルクロリド樹脂材料の難燃添加剤とすることが提案されている。米国特許番号US5891571A(出願人ALCAN INTERNATIONAL LIMITED)には、オクタモリブデン酸アンモニウム、スズ酸亜鉛、及び三酸化アンチモンなどの難燃添加剤を、ポリビニルクロリド樹脂材料にドープすることにより、樹脂材料の燃焼時における発煙量を低下させることが提案されている。
【0006】
台湾特許番号TWI651352(出願人南亜プラスチック工業株式会社)には、ポリ[ビス(フェノキシ)ホスファゼン]、ステアリン酸亜鉛、及びステアリン酸カルシウムなどの難燃添加剤を、ポリビニルクロリド樹脂材料にドープすることにより、高難燃及び低発煙量という特性を有する難燃板材を得ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許番号US4670494A
【特許文献2】米国特許番号US20140336321A1
【特許文献3】米国特許番号US5891571A
【特許文献4】台湾特許番号TWI651352
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Flame-retardancy and Smoke-suppression Studies on Ferrocene Derivatives in PVC,Applied Organometallic Chemistry,Volume 10,Issue 2,March 1996,P.101-111
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した従来技術で提案される難燃処方はいずれも、難燃添加剤の添加量が高いこと、及び高価などの欠陥を有するので、ポリビニルクロリド樹脂材料の低コストという利点を維持することが困難となる。なお、難燃添加剤の添加量が高いため、管材のような成型品は、射出成型する時の流動性が劣り、それにより成型品には、外観が劣ったり、引張強度が低下したり、耐衝撃強度が低下するなどの問題がある。
【0010】
従って、本発明者は、上記の欠陥を改善できると感じ、研究に専念し、科学的原理の適用と組み合わせ、最終的にデザインが合理的で上記の欠陥を効果的に改善した本発明を完成することに至った。
【0011】
本発明が解決しようとする技術的問題は、従来技術の不足に対して、高難燃低発煙ポリビニルクロリド射出成形管の組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した技術的問題を解決するために、本発明で採用されるその一つの技術的方案としては、使用量が10重量部(PHR)から90重量部の間にあり、第1の数平均重合度(DPn)が600から1,000の間にあるポリビニルクロリド樹脂材料と、使用量が10重量部から90重量部の間にあり、第2の数平均重合度が600から800の間にある塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料と、使用量が0.5重量部から2.0重量部の間にあり、変性剤で修飾されたリン含有難燃剤である難燃添加剤と、使用量が0.2重量部から1.0重量部の間にあり、塩化亜鉛(zinc chloride)、ステアリン酸亜鉛(zinc stearate)、ステアリン酸カルシウム(calcium stearate)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(hydroxide zinc stannate)、無水スズ酸亜鉛(anhydrous zinc stannate)、リン酸亜鉛(zinc phosphate)、及びリン酸ジルコニウム(zirconium phosphate)、からなる材料群から選択される少なくとも1つである炭素形成剤とを含み、前記第1の数平均重合度と前記第2の数平均重合度との差が400以下であり、前記難燃添加剤及び前記炭素形成剤の、ポリビニルクロリド射出成形管の組成物での総添加量は3重量部以下である、ポリビニルクロリド射出成形管の組成物を提供する。
【0013】
好ましくは、前記変性剤は、無機変性剤又は有機変性剤である。前記無機変性剤は、酸化亜鉛(zinc oxide)、次亜リン酸亜鉛(zinc hypophosphite)、及び水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)、からなる材料群から選択される少なくとも1つであり、前記有機変性剤は、アルキルリン酸(alkyl phosphoric acid)である。
【0014】
好ましくは、前記変性剤は、共有結合によって前記リン含有難燃剤に修飾される。
【0015】
好ましくは、前記難燃添加剤は、前記変性剤で修飾されたメラミンリン酸塩系難燃剤(melamine phosphate flame retardant)である。
【0016】
好ましくは、前記難燃添加剤の使用量は、前記炭素形成剤の使用量の10倍から0.5倍の間にある。
【0017】
好ましくは、前記ポリビニルクロリド樹脂材料及び前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量を100重量部として、前記ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量は、前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量の9倍から1/9倍の間にある。
【0018】
好ましくは、前記ポリビニルクロリド樹脂材料は、高い塩素含有量を有するポリビニルクロリド樹脂であり、前記ポリビニルクロリド樹脂材料は、55%以上の塩素含有量を有し、前記ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量は、前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量の9倍から1/9倍の間にある。
【0019】
好ましくは、前記組成物は、熱安定剤、強靭化剤、加工助剤、滑剤、及び酸化防止剤を更に含む。
【0020】
好ましくは、前記熱安定剤の使用量の範囲は、1重量部から5重量部の間にあり、前記強靭化剤の使用量の範囲は、1重量部から10重量部の間にあり、前記滑剤の使用量の範囲は、1重量部から3重量部の間にあり、前記加工助剤の使用量の範囲は、0.5重量部から3重量部の間にあり、前記酸化防止剤の使用量の範囲は、0.1重量部から2重量部の間にある。
【0021】
上述した技術的問題を解決するために、本発明で採用されるその他の技術的方案としては、前記ポリビニルクロリド射出成形管の組成物を加熱攪拌ミキサーに加え、100℃から120℃の加熱温度で高速攪拌して混合させることにより、第1の混合物を形成することと、前記第1の混合物の温度を35℃から50℃の冷却温度に低下させて冷却することにより、第2の混合物を形成することと、前記第2の混合物を射出成型機により、160℃から190℃の溶融温度で射出成型を行い、次に射出成形・保圧、冷却成形、完成品取り出し、ゲートカットのプロセスを行い、ポリビニルクロリド射出成形管を得ることと、を含むポリビニルクロリド射出成形管の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の有益な効果としては、本発明で提供される高難燃低発煙ポリビニルクロリド射出成形管の組成物及びその製造方法は、「使用量が10重量部(PHR)から90重量部の間にあり、第1の数平均重合度(DPn)が600から1,000の間にあるポリビニルクロリド樹脂材料と、使用量が10重量部から90重量部の間にあり、第2の数平均重合度が600から800の間にある塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料」、及び、「使用量が0.5重量部から2.0重量部の間にあり、変性剤で修飾されたリン含有難燃剤である難燃添加剤と、使用量が0.2重量部から1.0重量部の間にあり、塩化亜鉛(zinc chloride)、ステアリン酸亜鉛(zinc stearate)、ステアリン酸カルシウム(calcium stearate)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(hydroxide zinc stannate)、無水スズ酸亜鉛(anhydrous zinc stannate)、リン酸亜鉛(zinc phosphate)、及びリン酸ジルコニウム(zirconium phosphate)、からなる材料群から選択される少なくとも1つである炭素形成剤とを含み、前記第1の数平均重合度と前記第2の数平均重合度との差が400以下であり、前記難燃添加剤及び前記炭素形成剤の、組成物での総添加量は3重量部以下である」という技術的方案により、前記ポリビニルクロリド射出成形管は、低い難燃剤添加量、高い難燃能力、及び低い発煙量を有するようになる。なお、前記ポリビニルクロリド射出成形管は、良好な外観、低コスト、及び優れた機械的性質などの利点を有する。
【0023】
更に本発明の特徴及び技術的内容を理解するためには、以下の本発明に関する詳細な説明を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、特定の具体的な実施例により、本発明に記載される実施形態を説明し、当業者であれば本明細書に記載の内容により本発明の利点及び効果を理解できる。本発明は、異なる他の具体的な実施例により実施又は応用されてもよく、本明細書の様々な詳細は、異なる観点及び用途に基づき、本発明の思想を逸脱することなく修正及び変更することもできる。以下の実施形態は、本発明の関連する技術的内容を更に詳細に説明するが、開示された内容は、本発明の保護範囲を限定することを意図するものではない。
【0025】
「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、本明細書では様々な要素又は信号を説明するために使用される場合があるが、これらの要素又は信号はこれらの用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は主に、ある要素を別の要素から、又はある信号を別の信号から区別するために使用される。また、本明細書で使用される「又は」という用語は、場合に応じて関連する列挙項目のいずれか一つ又は複数項目の組合せを含むべきである。
【0026】
[ポリビニルクロリド射出成形管の組成物]
【0027】
本発明の実施例では、ポリビニルクロリド樹脂材料(polyvinyl chloride resin material、PVC resin material)、難燃添加剤(flame retardant additive)、及び炭素形成剤(carbon forming additive)を少なくとも含むポリビニルクロリド射出成形管の組成物(composition of injected polyvinyl chloride pipe)を提供する。
【0028】
前記ポリビニルクロリド射出成形管の組成物は、まず加熱攪拌ミキサー及び/又は冷却攪拌ミキサーにより均一に混合した後、射出成型プロセスを経てポリビニルクロリド射出成形管を形成し、かつ、前記射出成形管は、低い難燃剤添加量、高い難燃能力、及び低い発煙量を有するので、上述した従来技術における問題を有効的に解決することができる。
【0029】
本発明の実施例の主な技術的特徴としては、前記難燃添加剤及び炭素形成剤の材料種類の選択により、相乗作用を生じ、また、前記難燃添加剤は低い添加量という条件下で、前記ポリビニルクロリド樹脂材料の燃焼中において炭素を迅速に形成することができ、高い難燃能力及び低い発煙量という技術効果を実現できる。
【0030】
材料の選択については、前記難燃添加剤は、変性剤(modifier)で修飾されたリン含有難燃剤(phosphorus-containing flame retardant)である。より具体的には、前記難燃添加剤は、前記変性剤で修飾されたメラミンリン酸塩系難燃剤(melamine phosphate flame retardant)である。その中、前記変性剤は、無機変性剤又は有機変性剤である。前記無機変性剤は、酸化亜鉛(zinc oxide)、次亜リン酸亜鉛(zinc hypophosphite)、及び水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)、からなる材料群から選択される少なくとも一つである。前記有機変性剤は、例えばアルキルリン酸(alkyl phosphoric acid)であってもよい。なお、前記変性剤は、共有結合により前記リン含有難燃剤に修飾されることが好ましいが、本発明はこれに限らない。前記変性剤は、例えばドーピングにより前記リン含有難燃剤に修飾されてもよい。
【0031】
前記リン含有難燃剤は、リン系難燃剤とも呼ばれる。本実施例においては、前記リン含有難燃剤については、メラミンリン酸塩系難燃剤を例として説明するが、本発明はこれに限らない。前記リン含有難燃剤は、例えばヘキサクロロシクロトリホスファゼン、ポリ(ビス(フェノキシ)ホスファゼン)、リン酸アンモニウムマグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、からなる材料群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0032】
前記炭素形成剤は、塩化亜鉛(zinc chloride)、ステアリン酸亜鉛(zinc stearate)、ステアリン酸カルシウム(calcium stearate)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(hydroxide zinc stannate)、無水スズ酸亜鉛(anhydrous zinc stannate)、リン酸亜鉛(zinc phosphate)、及びリン酸ジルコニウム(zirconium phosphate)、からなる材料群から選択される少なくとも一つである。
【0033】
使用量の範囲については、前記ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量の範囲は、通常90重量部(PHR)から10重量部の間、好ましくは80重量部から20重量部の間、特に好ましくは70重量部から30重量部の間にある。つまり、前記ポリビニルクロリド射出成形管の組成物においては、前記ポリビニルクロリド樹脂材料は主なマトリックス成分である。
【0034】
前記難燃添加剤の使用量の範囲は、0.5重量部から2.0重量部の間、好ましくは0.7重量部から1.5重量部、特に好ましくは0.8重量部から1.2重量部の間にある。なお、前記炭素形成剤の使用量の範囲は、通常0.2重量部から1.0重量部の間、好ましくは0.3重量部から0.9重量部、特に好ましくは0.4重量部から0.8重量部の間にある。
【0035】
更には、前記難燃添加剤及び前記炭素形成剤は、総添加量として通常3重量部以下であり、好ましくは2.5重量部から1.5重量部の間、特に好ましくは2重量部から1.5重量部の間にある。つまり、前記難燃添加剤及び炭素形成剤は添加量が低い。
【0036】
割合の範囲については、前記難燃添加剤と炭素形成剤との割合の範囲は、通常10/1から1/2の間、好ましくは8/1から1/1の間、特に好ましくは7/1から2/1の間にある。つまり、前記難燃添加剤の使用量は、通常炭素形成剤の使用量の10倍から0.5倍の間、好ましくは8倍から1倍の間、特に好ましくは7倍から2倍の間にある。
【0037】
上述した配置によれば、前記変性剤は高温下で炭素を迅速に形成できる成分(例えば、酸化亜鉛)であるため、前記難燃添加剤そのものは難燃という効果を有するだけではなく、変性剤による修飾で炭素を迅速に形成するという効果を有することができる。これにより、前記難燃添加剤及び炭素形成剤は全体としてポリビニルクロリド樹脂材料における添加量が有効に低減される。
【0038】
更には、本実施例において、前記ポリビニルクロリド射出成形管の組成物は更に、塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料(chlorinated polyvinyl chloride resin material、CPVC resin material)、熱安定剤(thermal stabilizer additive)、強靭化剤(toughening additive)、加工助剤(processing aid)、滑剤(slip agent)、及び酸化防止剤(antioxidant additive)を含む。
【0039】
本発明の実施例の別の主な技術的特徴としては、高い流動性を有するポリビニルクロリド樹脂材料(PVC)及び塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料(CPVC)を選択し、二種類の樹脂材料間の重合度差異を制御し、熱安定剤、強靭化剤、加工助剤、滑剤、及び酸化防止剤をドープしてから、組成物に対して射出成型機により射出成型プロセスを行い、次にポリビニルクロリド射出成形管を得る。上述した材料処方によれば、本発明の実施例で得られたポリビニルクロリド射出成型レベルの管は、素敵な外観、低コスト及び機械的性質に優れた特性を兼ね備える。
【0040】
本発明の一実施例においては、前記ポリビニルクロリド樹脂材料(PVC)の第1の数平均重合度(DPn)は、通常600から1,000の間にあり、好ましくは650から900の間、特に好ましくは750から850の間にある。なお、前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料(CPVC)の第2の数平均重合度(DPn)は、通常600から800の間にあり、好ましくは600から750の間、特に好ましくは650から750の間にある。前記第1の数平均重合度は、通常第2の数平均重合度の1.3倍から1倍、好ましくは1.2倍から1.1倍である。また、前記第1の数平均重合度と前記第2の数平均重合度との差は、通常400以下であり、好ましくは300以下であり、特に好ましくは200以下であるが、本発明はこれに限らない。上述したような数平均重合度の設計に基づき、前記ポリビニルクロリド射出成形管の組成物は良好な流動性を有し、射出成型時に良好な加工性を有し、かつ、成型品が良好な外観を有する。
【0041】
使用量の範囲については、前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料(CPVC)の使用量の範囲は、通常10重量部(PHR)から90重量部の間、好ましくは20重量部から80重量部の間、特に好ましくは30重量部から70重量部の間にある。
【0042】
本発明の一実施例においては、前記ポリビニルクロリド樹脂材料(PVC)は、高い塩素含有量を有するポリビニルクロリド樹脂であり、前記ポリビニルクロリド樹脂材料は、55%以上の塩素含有量を有する。なお、前記ポリビニルクロリド樹脂材料(PVC)及び塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料(CPVC)の使用量を100重量部として、前記ポリビニルクロリド樹脂材料(PVC)の使用量は、通常塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料(CPVC)の使用量の9倍から1/9倍の間、好ましくは8倍から1/8倍の間、特に好ましくは3倍から1.5倍の間であるが、本発明はこれに限らない。
【0043】
前記熱安定剤の使用量の範囲は、通常1重量部(PHR)から5重量部の間、好ましくは2重量部から4重量部の間、特に好ましくは2.5重量部から3.5重量部の間にある。
【0044】
前記熱安定剤は、樹脂材料の熱安定性を向上するためのものである。前記熱安定剤の材料種類は、チオエステル系有機スズ(thioester organotin)、カルシウム亜鉛安定剤(calcium zinc stabilizer)、及びヒドロタルサイト系安定剤(hydrotalcite stabilizer)、からなる材料群から選択される少なくとも一つである。
【0045】
前記強靭化剤の使用量の範囲は、通常1重量部(PHR)から10重量部の間、好ましくは2重量部から8重量部の間、特に好ましくは4重量部から6重量部の間にある。
【0046】
前記強靭化剤は、樹脂材料の靭性を高めるためのものである。前記強靭化剤の材料種類は、塩素化ポリエチレン(chlorinated polyethylene、CPE)、アクリルエラストマー(acrylic elastomer、ACR)、ポリエチレン-酢酸ビニルエラストマー(polyethylene-vinyl acetate elastomer、EVA)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレンエラストマー(methyl methacrylate-butadiene-styrene elastomer、MBS)、アクリレート-ブタジエン-スチレンエラストマー(acrylate-butadiene-styrene elastomer、ABS)、スチレン-ブタジエン-スチレンエラストマー(styrene-butadiene-styrene elastomer、SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンエラストマー(styrene-isoprene-styrene elastomer、SIS)、スチレン-エチレン/ブテン-スチレンエラストマー(styrene-ethylene/butene-styrene elastomer、SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンエラストマー(styrene-ethylene/propylene-styrene elastomer、SEPS)、アクリレート-ブタジエンゴム(acrylate-butadiene rubber、NBR)、ポリメチルメタクリレート(poly-methyl-methacrylate、PMMA)、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(ethylene propylene diene monomer、EPDM)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(thermoplastic polyurea elastomer、TPU)、ポリエンエラストマー(polyene elastomer、TPO)、及び熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer、TPE)、からなる材料群から選択される少なくとも一つである。
【0047】
前記加工助剤の使用量の範囲は、通常0.5重量部(PHR)から3重量部の間、好ましくは1重量部から2.5重量部の間、特に好ましくは1.2重量部から2重量部の間にある。
【0048】
前記加工助剤は、樹脂材料の流動性及び射出成型プロセスの加工性を向上させるためのものである。前記加工助剤の材料種類は、例えばアクリレート系ポリマー(acrylic polymer、ACR)であってもよい。
【0049】
前記滑剤の使用量の範囲は、通常1重量部(PHR)から3重量部の間、好ましくは1.2重量部から2.5重量部の間、特に好ましくは1.6重量部から2.4重量部の間にある。
【0050】
前記滑剤は、樹脂材料の相溶性を高めるためのものである。前記滑剤の材料種類は、ポリエチレンワックス(polyethylene wax)、酸化ポリエチレンワックス(oxidized polyethylene wax)、脂肪酸系滑剤(fatty acid slip agent)、脂肪酸アミド系滑剤(fatty acid amide slip agent)、金属石鹸系滑剤(metal soap slip agent)、及び有機シリコーン系滑剤(organic silicon slip agent)、からなる材料群から選択される少なくとも一つである。
【0051】
前記酸化防止剤の使用量の範囲は、通常0.1重量部(PHR)から2重量部の間、好ましくは0.2重量部から1.8重量部の間、特に好ましくは0.5重量部から1.5重量部の間にある。
【0052】
前記酸化防止剤は、樹脂材料の酸化防止性を高めるためのものである。前記酸化防止剤の材料種類は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(hindered phenolic antioxidant)及び亜リン酸エステル系酸化防止剤(phosphite-based antioxidant)、からなる材料群から選択される少なくとも一つである。
【0053】
[ポリビニルクロリド射出成形管の製造方法]
【0054】
以上、本発明の実施例に係るポリビニルクロリド射出成形管組成物について説明したが、以下、本発明の実施例をもとに、ポリビニルクロリド射出成形管の製造方法について説明する。
【0055】
本発明の実施例では、工程S110から工程S130を含むポリビニルクロリド射出成形管の製造方法も提供する。本実施例に記載の各工程の順番及び実際の操作方法は必要に応じて調整することができ、本実施例の記載に限らないことをまず説明しておく。
【0056】
前記工程S110は、上述したポリビニルクロリド射出成形管の組成物を加熱攪拌ミキサーに加え、100℃から120℃の加熱温度で500RPM~1500RPMで高速攪拌して混合し、第1の混合物を形成することを含む。
【0057】
前記工程S120は、前記第1の混合物を冷却攪拌ミキサーに加えて攪拌を続き、35℃から50℃の冷却温度まで降温させて冷却し、第2の混合物を形成することを含む。
【0058】
前記工程S130は、前記第2の混合物を、射出成型機により、160℃から190℃の溶融温度で射出成型し、次に射出成形・保圧、冷却成形、完成品取り出し、ゲートカットのプロセスを行い、ポリビニルクロリド射出成形管を得ることを含む。前記ポリビニルクロリド射出成形管は、低い難燃剤添加量、高い難燃能力、及び低い発煙量を有する。なお、前記ポリビニルクロリド射出成形管は、良好な外観、低コスト、及び優れた機械的性質などの利点を有する。
【実施例0059】
[実験データ測定]
【0060】
以下、実施例1から4、及び比較例1から2を参照して本発明の内容を詳細に説明する。しかし、以下の実施例はただ、本発明を理解するためのものであり、本発明の範囲は、これらの例示に限らない。ただし、以下の各成分でいう「部」とは「重量部」のことであり、実際には単位のグラムを用いたが、本発明はこれに限らない。
【0061】
実施例1:ポリビニルクロリド射出成形管の組成物は、PVC樹脂90部、CPVC樹脂10部、熱安定剤2.5部、ACR加工助剤1.5部、MBS強靭化剤5部、変性メラミンリン酸塩系難燃剤5部(難燃添加剤)、酸化ポリエチレンワックス1.5部及び酸化防止剤(I-1010)0.5部であった。上述した各成分を質量部で配合した後、高速加熱ミキサーに入れて分散させ、攪拌し、攪拌温度を110℃に設定した。その後、冷却ミキサーに排出して攪拌冷却を行い、温度を40℃まで低下させた後、ホッパーに排出し、射出成型機により射出成型した。射出成形・保圧、冷却成形、完成品取り出し、ゲートカットのプロセスを経てから、ポリビニルクロリド射出成形管を得た。また、射出成型機のバレルの温度は、185℃、175℃とそれぞれ設定した。
【0062】
実施例2:ポリビニルクロリド射出成形管の組成物は、PVC樹脂90部、CPVC樹脂10部、熱安定剤2.5部、ACR加工助剤1.5部、MBS強靭化剤5部、無水スズ酸亜鉛1部(炭素形成剤)、酸化ポリエチレンワックス1.5部及び酸化防止剤(I-1010)0.5部であった。上述した各成分を質量部で配合した後、高速加熱ミキサーに入れて分散させ、攪拌し、攪拌温度を110℃に設定した。その後、冷却ミキサーに排出して攪拌冷却を行い、温度を40℃まで低下させた後、ホッパーに排出し、射出成型機により射出成型した。射出成形・保圧、冷却成形、完成品取り出し、ゲートカットのプロセスを経てから、ポリビニルクロリド射出成形管を得た。また、射出成型機のバレルの温度は、185℃、175℃とそれぞれ設定した。
【0063】
実施例3:ポリビニルクロリド射出成形管の組成物は、PVC樹脂70部、CPVC樹脂30部、熱安定剤2.5部、ACR加工助剤1.5部、MBS強靭化剤5部、変性メラミンリン酸塩系難燃剤1部(難燃添加剤)、無水スズ酸亜鉛2部(炭素形成剤)、酸化ポリエチレンワックス1.5部及び酸化防止剤(I-1010)0.5部であった。上述した各成分を質量部で配合した後、高速加熱ミキサーに入れて分散させ、攪拌し、攪拌温度を110℃に設定した。その後、冷却ミキサーに排出して攪拌冷却を行い、温度を40℃まで低下させた後、ホッパーに排出し、射出成型機により射出成型した。射出成形・保圧、冷却成形、完成品取り出し、ゲートカットのプロセスを経てから、ポリビニルクロリド射出成形管を得た。また、射出成型機のバレルの温度は、185℃、175℃とそれぞれ設定した。
【0064】
実施例4~5:ポリビニルクロリド射出成形管の組成物は、PVC樹脂70部、CPVC樹脂30部、熱安定剤2.5部、ACR加工助剤1.5部、MBS強靭化剤5部、変性メラミンリン酸塩系難燃剤1部(難燃添加剤)、無水スズ酸亜鉛0.5部(炭素形成剤)、酸化ポリエチレンワックス1.5部及び酸化防止剤(I-1010)0.5部であった。上述した各成分を質量部で配合した後、高速加熱ミキサーに入れて分散させ、攪拌し、攪拌温度を110℃に設定した。その後、冷却ミキサーに排出して攪拌冷却を行い、温度を40℃まで低下させた後、ホッパーに排出し、射出成型機により射出成型した。射出成形・保圧、冷却成形、完成品取り出し、ゲートカットのプロセスを経てから、ポリビニルクロリド射出成形管を得た。また、射出成型機のバレルの温度は、185℃、175℃とそれぞれ設定した。実施例4と実施例5とは、ポリビニルクロリドの重合度が異なる点で相違した。
【0065】
比較例1:ポリビニルクロリド射出成形管の組成物は、PVC樹脂100部、熱安定剤2.5部、ACR加工助剤1.5部、酸化ポリエチレンワックス1.5部及び酸化防止剤(I-1010)0.5部であった。上述した各成分を質量部で配合した後、高速加熱ミキサーに入れて分散させ、攪拌し、攪拌温度を110℃に設定した。その後、冷却ミキサーに排出して攪拌冷却を行い、温度を40℃まで低下させた後、ホッパーに排出し、射出成型機により射出成型した。射出成形・保圧、冷却成形、完成品取り出し、ゲートカットのプロセスを経てから、ポリビニルクロリド射出成形管を得た。また、射出成型機のバレルの温度は、185℃、175℃とそれぞれ設定した。
【0066】
比較例2:ポリビニルクロリド射出成形管の組成物は、PVC樹脂100部、熱安定剤2.5部、MBS強靭化剤5部、酸化ポリエチレンワックス1.5部及び酸化防止剤(I-1010)0.5部であった。上述した各成分を質量部で配合した後、高速加熱ミキサーに入れて分散させ、攪拌し、攪拌温度を110℃に設定した。その後、冷却ミキサーに排出して攪拌冷却を行い、温度を40℃まで低下させた後、ホッパーに排出し、射出成型機により射出成型した。射出成形・保圧、冷却成形、完成品取り出し、ゲートカットのプロセスを経てから、ポリビニルクロリド射出成形管を得た。また、射出成型機のバレルの温度は、185℃、175℃とそれぞれ設定した。
【0067】
そのうち、各成分のプロセスパラメータ条件を以下の表1にまとめた。
【0068】
次に、実施例1から5、及び比較例1から2で得られたポリビニルクロリド射出成形管について、物理的化学的特性の測定を行い、例えば、難燃レベル、火炎伝播指数、発煙係数、引張強度、耐衝撃度、外観などのような、これらポリビニルクロリド射出成形管材の物理的化学的特性が得られた。それぞれの測定方法は以下のように説明し、それぞれの測定結果を表1にまとめた。
【0069】
難燃レベル:米国防火試験規格ASTM E84建築材料の表面燃焼特性の標準試験方法に従って測定を行い、防火クラスA、クラスB及びクラスCの規格に分けられた。
【0070】
火炎伝播速度、発煙係数:火炎伝播とは、材料表面における火炎の発展をいい、火災の時に可燃物に近づいて火が広がる影響に関連し、火炎伝播性能は通常トンネル法や放射パネル法で測定した。この方法は、建築材料の火炎伝播速度の測定(同時に煙霧の濃度の測定)に用いられ、材料の火炎伝播指数FSI値が小さければ小さいほど、火災危険性が小さくなる。高層建築物や廊下には、FSI<25の材料が用いられ、25<FSI<100の材料は、防火要求がそんなに厳しくない場所にしか用いられず、FSI>100の材料は、難燃の要求を満たしていない。
【0071】
引張強度:ASTM D638規格に従ってプラスチック材料の引張り試験を行い、プラスチックの引張強度が得られた。
【0072】
耐衝撃度:ASTM D256に従って行われたIzodノッチ曲げ衝撃測定では、厚みに関するエネルギー値として衝撃強度及び高歪率におけるノッチ感受性の特徴値を生成した。測定は通常23°/50%という相対湿度である正常な雰囲気で行い、プラスチックの衝撃強度及びノッチ衝撃強度の測定に用いられた。
【0073】
外観:射出成形管は、内、外層がいずれも滑らかで、黄色や褐色の線状模様や放射状模様などの欠陥がないことを目視で認めた。
【0074】
【0075】
[測定結果検討]
【0076】
実施例では、実施例1~5、比較例2と比較例1とを比べると、比較例1では強靭化剤を添加せずにその耐衝撃強度が著しく低かった。比較例2では加工助剤を添加していなかったので、ゴムの流動性が劣り、外観に欠陥があった。実施例1では難燃剤の添加量が5部と高かったためやや低下していた。実施例2~5では衝撃強度が変化していなかった。実施例1では変性メラミンリン酸塩系難燃剤のみ添加した場合に防火クラスがクラスCだけであった。実施例2では炭素形成剤のみ添加した場合に難燃効果が劣った。実施例3では変性メラミンリン酸塩系難燃剤及び炭素形成剤をともに添加したが、炭素形成剤が過剰となったため、変性メラミンリン酸塩系難燃剤を促進する炭素形成性が劣り、防火クラスがクラスBだけであった。実施例4では変性メラミンリン酸塩系難燃剤と炭素形成剤との割合が好適であったため、変性メラミンリン酸塩系難燃剤を促進する炭素形成効果が最適であり、その防火クラスがクラスAに達した。実施例5ではその防火クラスがクラスAであったが、ポリビニルクロリドと塩素化ポリビニルクロリドとの平均重合度の差が450となったため、ゴム流動性が劣り、外観に光沢、放射模様及び管内粗さがないなどの欠陥が生じた。以上をまとめると、実施例4が本発明の最適な実施例であった。
【0077】
[実施例の有益な効果]
【0078】
本発明の有益な効果としては、本発明で提供される高難燃低発煙ポリビニルクロリド射出成形管の組成物及びその製造方法は、「使用量が10重量部(PHR)から90重量部の間にあり、第1の数平均重合度(DPn)が600から1,000の間にあるポリビニルクロリド樹脂材料と、使用量が10重量部から90重量部の間にあり、第2の数平均重合度が600から800の間にある塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料」、及び、「使用量が0.5重量部から2.0重量部の間にあり、変性剤で修飾されたリン含有難燃剤である難燃添加剤と、使用量が0.2重量部から1.0重量部の間にあり、塩化亜鉛(zinc chloride)、ステアリン酸亜鉛(zinc stearate)、ステアリン酸カルシウム(calcium stearate)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(hydroxide zinc stannate)、無水スズ酸亜鉛(anhydrous zinc stannate)、リン酸亜鉛(zinc phosphate)、及びリン酸ジルコニウム(zirconium phosphate)、からなる材料群から選択される少なくとも1つである炭素形成剤とを含み、前記第1の数平均重合度と前記第2の数平均重合度との差が400以下であり、前記難燃添加剤及び前記炭素形成剤の、前記組成物での総添加量は3重量部以下である」という技術的方案により、前記ポリビニルクロリド射出成形管は、低い難燃剤添加量、高い難燃能力、及び低い発煙量を有するようにできた。なお、前記ポリビニルクロリド射出成形管は、良好な外観、低いコスト、及び優れた機械的性質などの利点を有する。
【0079】
以上に開示された内容は、本発明の実施可能な好ましい実施例に過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の明細書を用いてなされた均等な技術的変更はすべて本発明の特許請求の範囲に含まれる。
前記ポリビニルクロリド樹脂材料は、高い塩素含有量を有するポリビニルクロリド樹脂であり、前記ポリビニルクロリド樹脂材料は、55%以上の塩素含有量を有する、請求項1に記載のポリビニルクロリド射出成形管の組成物。
前記熱安定剤の使用量の範囲は、1重量部から5重量部の間にあり、前記強靭化剤の使用量の範囲は、1重量部から10重量部の間にあり、前記滑剤の使用量の範囲は、1重量部から3重量部の間にあり、前記加工助剤の使用量の範囲は、0.5重量部から3重量部の間にあり、前記酸化防止剤の使用量の範囲は、0.1重量部から2重量部の間にある、請求項4に記載のポリビニルクロリド射出成形管の組成物。
実施例では、実施例1~5、比較例2と比較例1とを比べると、比較例1では強靭化剤を添加せずにその耐衝撃強度が著しく低かった。比較例2では加工助剤を添加していなかったので、ゴムの流動性が劣り、外観に欠陥があった。実施例1では難燃剤の添加量が5部と高かったためやや低下していた。実施例2~5では衝撃強度が変化していなかった。実施例1では変性メラミンリン酸塩系難燃剤のみ添加した場合に防火クラスがクラスCだけであった。実施例2では炭素形成剤のみ添加した場合に難燃効果が劣った。実施例3では変性メラミンリン酸塩系難燃剤及び炭素形成剤をともに添加したが、炭素形成剤が過剰となったため、変性メラミンリン酸塩系難燃剤を促進する炭素形成性が劣り、防火クラスがクラスBだけであった。実施例4では変性メラミンリン酸塩系難燃剤と炭素形成剤との割合が好適であったため、変性メラミンリン酸塩系難燃剤を促進する炭素形成効果が最適であり、その防火クラスがクラスAに達した。実施例5ではその防火クラスがクラスAであったが、ポリビニルクロリドと塩素化ポリビニルクロリドとの平均重合度の差が450となったため、ゴム流動性が劣り、外観に光沢がない、放射模様及び管内粗さなどの欠陥が生じた。以上をまとめると、実施例4が本発明の最適な実施例であった。