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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055723
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】タッチセンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240411BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240411BHJP
   H05K 3/00 20060101ALN20240411BHJP
【FI】
G06F3/041 430
G06F3/044 122
G06F3/041 660
G06F3/041 400
G06F3/044 124
H05K3/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205998
(22)【出願日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】202211229925.4
(32)【優先日】2022-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519308156
【氏名又は名称】ティーピーケイ アドバンスド ソリューションズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TPK ADVANCED SOLUTIONS INC
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】リン チアジュイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ シャオジエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジアン
(72)【発明者】
【氏名】シュウ シーチャン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ジュンフア
(72)【発明者】
【氏名】バイ メイフェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ソンシン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ロンユン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ボー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】全体の光学効果に影響を与えず、柔軟性と狭ベゼル設計の要求を満たすタッチセンサ及びタッチセンサの製造方法を提供する。
【解決手段】可視領域VAと周辺領域PAを有するタッチセンサは、基板110、金属ナノワイヤ層120及び銀層130を含む。金属ナノワイヤ層は、基板の主表面上に配置され、可視領域に相当する複数の電極部Eと周辺領域PAに相当する複数の配線部Tを画定する。電極部は間隔をあけて配置され、配線部は電極部Eにそれぞれ接続され、間隔をあけて配置される。2つの隣り合う電極部は、第1のスペーサ領域S1によって間隔をあけて配置される。2つの隣り合う配線部Tは、第2のスペーサ領域S2によって間隔をあけて配置される。銀層130は、配線部Tに配置され、配線部Tと接触している。第1のスペーサ領域S1に相当する基板110の厚さT1は、第2のスペーサ領域S2に相当する基板110の厚さT2よりも薄い。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視領域と、前記可視領域の少なくとも一方の側に隣り合う周辺領域とを有するタッチセンサであって、
前記タッチセンサは、
基板と、
前記基板の主表面に配置された金属ナノワイヤ層であって、前記金属ナノワイヤ層は、前記可視領域に相当する複数の電極部を画定すると共に、前記周辺領域に相当する複数の配線部を画定し、前記電極部は間隔をあけて配置され、前記配線部は前記電極部にそれぞれ接続され、間隔を置いて配置され、前記電極部の2つの隣り合う電極部は、第1のスペーサ領域によって間隔をあけて配置され、前記配線部の2つの隣り合う配線部は、第2のスペーサ領域によって間隔をあけて配置されている、前記金属ナノワイヤ層と、
前記配線部上に配置され、前記配線部と接触している銀層と、を備え、
前記第1のスペーサ領域に相当する前記基板の厚さは、前記第2のスペーサ領域に相当する前記基板の厚さよりも薄い、
タッチセンサ。
【請求項2】
前記基板は、前記第1のスペーサ領域に相当する第1の表面凹部と、前記第2のスペーサ領域に相当する第2の表面凹部を有し、前記第1の表面凹部の深さが30nm以上200nm以下である、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項3】
前記基板は、前記第1のスペーサ領域に相当する第1の表面凹部を有し、前記第1の表面凹部の深さが30nm以上200nm以下であり、前記周辺領域に相当する前記基板の前記主表面は実質的に平坦である、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項4】
前記基板は、ベース層と、前記ベース層上に配置された機能的コーティング層とを含み、前記第1の表面凹部の底部境界を画定するための底面が前記ベース層の表面である、請求項2又は3に記載のタッチセンサ。
【請求項5】
前記基板は、ベース層と、前記ベース層上に配置された機能的コーティング層とを含み、前記第1の表面凹部の底部境界を画定するための底面が前記機能的コーティング層の表面である、請求項2又は3に記載のタッチセンサ。
【請求項6】
前記銀層は前記配線部の上面と接触して、前記タッチセンサの複数の周辺トレースを形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載のタッチセンサ。
【請求項7】
前記金属ナノワイヤ層は、マトリックスと、前記マトリックス内に分布する複数の金属ナノワイヤと、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のタッチセンサ。
【請求項8】
可視領域と、前記可視領域の少なくとも一方の側に隣り合う周辺領域とを有するタッチセンサの製造方法であって、
基板の主表面上に前記可視領域および前記周辺領域に相当する金属ナノワイヤ材料層を形成することと、
前記金属ナノワイヤ材料層上に前記周辺領域に相当する銀材料層をスクリーン印刷することと、
前記金属ナノワイヤ材料層と前記銀材料層を覆うフォトレジスト層を形成することと、
前記フォトレジスト層をパターン化するための露光工程および現像工程を行うことと、
ここで、パターン化された前記フォトレジスト層は前記可視領域に相当する電極パターンを画定し、前記周辺領域に相当する配線パターンを画定するものであり、
前記配線パターンを介して前記銀材料層をパターン化するための第1のエッチング工程を行うことと、
前記配線パターンを介して前記周辺領域に相当する残留樹脂を除去するアルゴンプラズマ処理工程を行うことと、
ここで、前記残留樹脂は、前記第1のエッチング工程を経た前記銀材料層によって残されたものであり、
前記基板上に第1の表面凹部が形成されるように、前記金属ナノワイヤ材料層の少なくとも一部と、前記電極パターンを介して前記可視領域に相当する前記基板の一部とを除去するアルゴンプラズマ処理工程を行うことと、
前記配線パターン及び前記電極パターンを介して前記金属ナノワイヤ材料層をパターン化するための第2のエッチング工程を行うことと、
前記フォトレジスト層を除去することと、を含む、
タッチセンサの製造方法。
【請求項9】
前記第1のエッチング工程の後、アルゴンプラズマ処理工程の前に化学洗浄工程を行い、ここで、前記化学洗浄工程は、前記配線パターンを介して前記周辺領域に相当する前記残留樹脂の一部を除去し、前記第1のエッチング工程を経た前記銀材料層による前記残留樹脂は残すことをさらに含む、請求項8に記載のタッチセンサの製造方法。
【請求項10】
前記金属ナノワイヤ材料層は、マトリックスと、前記マトリックス内に分布する複数の金属ナノワイヤとを含む、請求項8又は9に記載のタッチセンサの製造方法。
【請求項11】
前記アルゴンプラズマ処理工程は、前記金属ナノワイヤ材料層の前記マトリックスを除去する、請求項10に記載のタッチセンサの製造方法。
【請求項12】
前記アルゴンプラズマ処理工程は、前記配線パターンを介して前記周辺領域に相当する前記金属ナノワイヤ材料層の前記マトリックスの少なくとも一部を除去することをさらに含む、請求項10に記載のタッチセンサの製造方法。
【請求項13】
前記アルゴンプラズマ処理工程は、前記基板上に第2の表面凹部が形成されるように、前記配線パターンを介して前記周辺領域に相当する前記基板の一部を除去することをさらに含む、請求項12に記載のタッチセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タッチセンサ及びタッチセンサの製造方法に関する。
【0002】
<関連技術の説明>
近年、携帯電話、ノートパソコン、衛星ナビゲーションシステム、デジタルオーディオビジュアルプレーヤーなどの携帯電子製品において、ユーザーと電子機器との間の情報伝達経路として、タッチセンサが広く使われている。
【0003】
ナローベゼルの電子製品の需要が徐々に高まる中、業界では電子製品の曲げやすさを向上させ、電子製品のベゼルを小さくすることで、ユーザーのニーズに応えていこうとしている。一般的に、タッチセンサには、可視領域に配置されたタッチ電極と、周辺領域に配置された周辺回路を含んでおり、タッチパネルの曲げ要求から、現在、周辺回路の材料として銀ペーストが好んで使用されている。銀ペースト材料は、印刷工程を行うことで銀ペースト材料から銀層を形成し、その銀層をパターニングすることで周辺領域に周辺回路を形成することが一般的である。また、周辺領域に設計された周辺回路は、ナローベゼル製品へのタッチパネルの適用に影響を与える。そのため、周辺回路の材料に銀ペーストを使用することをベースに、全体の光学効果に影響を与えず、柔軟性と狭ベゼル設計の要求を満たすタッチセンサをどのように提供するかは、現在、検討に値する。
【0004】
<概要>
本開示のいくつかの実施形態によると、可視領域と、可視領域の少なくとも一方の側に隣り合う周辺領域を有するタッチセンサは、基板、金属ナノワイヤ層、及び銀層を含む。金属ナノワイヤ層は基板の主表面に配置される。金属ナノワイヤ層は、可視領域に相当する複数の電極部と、周辺領域に相当する複数の配線部を画定する。電極部は間隔をあけて配置され、配線部は電極部にそれぞれ接続され間隔をあけて配置される。電極部の2つの隣り合う電極部は第1のスペーサ領域によって間隔をあけて配置され、配線部の2つの隣り合う配線部は第2のスペーサ領域によって間隔をあけて配置される。銀層は配線部に配置され、配線部と接触している。第1のスペーサ領域に相当する基板の厚さは、第2のスペーサ領域に相当する基板の厚さよりも薄い。
【0005】
本開示のいくつかの実施形態において、基板は、第1のスペーサ領域に相当する第1の表面凹部と、第2のスペーサ領域に相当する第2の表面凹部を有し、第1の表面凹部の深さが30nm以上200nm以下である。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態において、基板は第1のスペーサ領域に相当する第1の表面凹部を有し、第1の表面凹部の深さが30nm以上200nm以下であり、周辺領域に相当する基板の主表面は実質的に平坦である。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態において、基板は、ベース層と、ベース層上に配置された機能的コーティング層とを含み、第1の表面凹部の底部境界を画定するための底面がベース層の表面である。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態において、基板は、ベース層と、ベース層上に配置された機能的コーティング層とを含み、第1の表面凹部の底部境界を画定するための底面が機能的コーティング層の表面である。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態において、銀層は配線部の上面と接触して、タッチセンサの複数の周辺トレースを形成する。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態において、周辺トレースの各線幅は6μm以上10μm以下であり、周辺トレースの隣り合う2つの周辺トレースの線間隔は6μm以上10μm以下である。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ層は、マトリックスと、マトリックス内に分布する複数の金属ナノワイヤとを含む。
【0012】
本開示の他のいくつかの実施形態によれば、可視領域と、可視領域の少なくとも一方の側に隣り合う周辺領域を有するタッチセンサの製造方法は、基板の主表面上に可視領域および周辺領域に相当する金属ナノワイヤ材料層を形成することと;金属ナノワイヤ材料層に周辺領域に相当する銀材料層をスクリーン印刷することと;金属ナノワイヤ材料層と銀材料層を覆うフォトレジスト層を形成することと;フォトレジスト層をパターン化するための露光工程および現像工程を行うことと、ここで、パターン化されたフォトレジスト層は可視領域に相当する電極パターンを画定し、周辺領域に相当する配線パターンを画定するものであり;配線パターンを介して銀材料層をパターン化するための第1のエッチング工程を行うことと;配線パターンを介して周辺領域に相当する残留樹脂を除去するアルゴンプラズマ処理工程を行うことと、ここで、残留樹脂は第1のエッチング工程を経た銀材料層によって残されたものであり、基板上に第1の表面凹部が形成されるように、金属ナノワイヤ材料層の少なくとも一部と、電極パターンを介して可視領域に相当する基板の一部を除去するアルゴンプラズマ処理工程を行うことと;配線パターン及び電極パターンを介して金属ナノワイヤ材料層をパターン化するための第2のエッチング工程を行うことと;フォトレジスト層を除去することと、を含む。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態において、タッチセンサの製造方法は、第1のエッチング工程の後、アルゴンプラズマ処理工程の前に化学洗浄工程を行い、化学洗浄工程は配線パターンを介して周辺領域に相当する残留樹脂の一部を除去し、第1のエッチング工程を経た銀材料層による残留樹脂は残すことをさらに含む。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ材料層は、マトリックスと、マトリックス内に分布する複数の金属ナノワイヤとを含む。
【0015】
本開示のいくつかの実施形態において、アルゴンプラズマ処理工程は、金属ナノワイヤ材料層のマトリックスを除去する。
【0016】
本開示のいくつかの実施形態において、アルゴンプラズマ処理工程は、配線パターンを介して周辺領域に相当する金属ナノワイヤ材料層のマトリックスの少なくとも一部を除去することをさらに含む。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態において、アルゴンプラズマ処理工程は、基板上に第2の表面凹部が形成されるように、配線パターンを介して周辺領域に相当する基板の一部を除去することをさらに含む。
【0018】
本開示の前述の実施形態によれば、本開示のタッチセンサの設計は、タッチセンサの光学的効果を低下させることなく、小さな線幅と線間隔で周辺トレースを形成するのに役立つ。また、電極部と配線部を一体的に形成して、タッチ電極と周辺トレースとの電気的接続を直接形成することで、タッチセンサ用の追加の重複構造を設計する必要がない。これにより、周辺領域に相当する重複構造が占める領域を節約でき、重複公差が発生しないため、タッチセンサの狭ベゼル設計を実現する上で有益である。さらに、本開示のタッチセンサの積層構造設計に基づき、タッチセンサの製造工程において、1回の露光・現像工程でタッチ電極と周辺トレースを一度に形成することができ(すなわち、単一のマスク(フォトレジスト)のみを使用)、エッチング工程後に銀材料層に残る残留樹脂を除去するアルゴンプラズマ処理工程を併用するため、製造工程のステップとコストを削減でき、エッチング精度も向上し、線幅と線間隔の小さい周辺トレースを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示は、以下の添付図面を参照して、以下の実施形態の詳細な説明を読むことによって、より完全に理解することができる。
図1A】本開示のいくつかの実施形態によるタッチセンサを示す模式部分平面図である。
図1B図1AのタッチセンサをA-A′線に沿って切断した模式断面図である。
図2】本開示のいくつかの実施形態による可視領域に相当するタッチセンサの集束イオンビーム走査電子顕微鏡(FIB-SEM)画像である。
図3】本開示のいくつかの実施形態によるタッチセンサの製造方法を示すフローチャートである。
図4A図1Bのタッチセンサの製造方法を段階別に示す模式断面図である。
図4B図1Bのタッチセンサの製造方法を段階別に示す模式断面図である。
図4C図1Bのタッチセンサの製造方法を段階別に示す模式断面図である。
図4D図1Bのタッチセンサの製造方法を段階別に示す模式断面図である。
図4E図1Bのタッチセンサの製造方法を段階別に示す模式断面図である。
図4F図1Bのタッチセンサの製造方法を段階別に示す模式断面図である。
図4G図1Bのタッチセンサの製造方法を段階別に示す模式断面図である。
図4H図1Bのタッチセンサの製造方法を段階別に示す模式断面図である。
図5A】いくつかの比較例の銀材料層をパターン化して形成された周辺トレース内の銀層の光学顕微鏡(OM)画像である。
図5B】いくつかの比較例の銀材料層をパターン化して形成された周辺トレース内の銀層の光学顕微鏡(OM)画像である。
図6】本開示のいくつかの実施形態による銀材料層にアルゴンプラズマ処理工程を施した後のエッチング領域の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図7】本開示の他のいくつかの実施形態によるタッチセンサの模式断面図であり、図7の断面位置は、図1に示すA-A′線に沿って切断した位置に相当する。
図8】本開示のいくつかの実施形態による第1及び第2の表面凹部の深さの測定を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、本開示の実施形態について詳細に説明し、その例を添付の図面に示す。しかし、これらの詳細は、本開示を制限することを意図するものではないことを理解されたい。また、読み手の便宜を図るため、図面中の各要素の大きさは実際の縮尺に合わせて図示していない。本明細書では、図に示すように、ある要素と別の要素との関係を表すために、「下(lower)」や「底(bottom)」、「上(upper)」や「上(top)」などの相対的な用語を使用できることを理解されたい。相対的な用語は、図に示されているもの以外のデバイスの異なる方向を含むことを意図していることを理解する必要がある。
【0021】
図1Aおよび図1Bを参照すると、図1Aは、本開示のいくつかの実施形態によるタッチセンサ100を示す模式部分平面図であり、図1Bは、図1AのタッチセンサをA-A′線に沿って切断して図示する模式断面図である。タッチセンサ100は、基板110、金属ナノワイヤ層120及び銀層130を含む。いくつかの実施形態では、タッチセンサ100は可視領域VAと周辺領域PAを有し、周辺領域PAは可視領域VAの側面に配置される。例えば、周辺領域PAは、可視領域VAの周囲に配置された枠状の領域(すなわち、右側、左側、上側、下側を含む)であってもよい。基板110は、金属ナノワイヤ層120と銀層130を搭載するように構成された主表面111を有する。いくつかの実施形態では、基板110は、可撓性透明ベース層などの単一の基板(ベース層とも呼ばれる)であってもよく、基板110の材料は、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、無色ポリイミド又はこれらの組み合わせ等の透明材料を含み得るが、これらに限定されるものではない。他のいくつかの実施形態では、基板110は、上述の単一基板(ベース層)と、ベース層上に配置された少なくとも1つの機能的コーティング層(例えば、ハードコート層)を含んでもよい。換言すると、基板110の主表面111は、ベース層の上面であっても、機能的コーティング層の上面であってもよい。
【0022】
金属ナノワイヤ層120は、基板110の主表面111上に配置され、可視領域VA及び周辺領域PAに相当する。いくつかの実施形態では、金属ナノワイヤ層120は、マトリックスと、マトリックス内に分布する複数の金属ナノワイヤ(図示せず)を含み、マトリックスは、ポリ(メタクリル酸メチル)などのアクリル材料を含んでもよく、金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ、銅ナノワイヤ、ニッケルナノワイヤ、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。金属ナノワイヤ層120は、可視領域VAに相当する電極部Eを画定する。すなわち、電極部Eは、少なくともタッチセンサ100のタッチ電極ETを構成することができる。図1Aに示す実施形態では、電極部Eは基板110の片面(側面)に配置された単層電極構造の一例であり、複数の電極部Eがノンインターレース状に配置されている。例えば、電極部Eは、第1の方向D1に沿って延在し、第2の方向D2に沿って間隔をあけて配置された帯状の電極であり、第1の方向D1は第2の方向D2に対して実質的に垂直である。いくつかの実施形態では、各電極部Eは、並列に配置され接続された複数の電極線Lを含んでもよい。例えば、図1Aに示す実施形態では、各電極部Eは、並列に配置され接続された3本の電極線Lを含む。一方、隣り合う2つの電極部Eは第1のスペーサ領域S1によって間隔をあけて配置されており、隣り合う2つの電極線Lも第1のスペーサ領域S1によって間隔をあけて配置されている。
【0023】
金属ナノワイヤ層120は、周辺領域PAに相当する複数の配線部Tを画定しており、配線部Tはそれぞれ対応する電極部Eを接続し、隣り合う2つの配線部Tは第2のスペーサ領域S2によって間隔をあけて配置されている。銀層130は、基板110の主表面111上に配置され、配線部Tに接して積層されている。いくつかの実施形態では、銀層130は、配線部Tの上面TS上に接触して積層され、タッチセンサ100の複数の周辺トレースPTを形成している。換言すると、本開示の周辺トレースPTは、金属ナノワイヤ層120が基板110の比較的近くに配置され、銀層130が金属ナノワイヤ層120の基板110とは反対側の面に積層された二層構造を有する。いくつかの実施形態では、銀層130は配線部Tに完全に重なってもよい。すなわち、基板110上の銀層130の垂直投影が、基板110上の配線部Tの垂直投影と完全に重なってもよい。
【0024】
上記の金属ナノワイヤ層120と銀層130の構成に基づき、電極部Eと配線部Tを一体的に形成することで、タッチ電極ETと周辺トレースPTとの電気的接続を直接的に形成することができる。したがって、タッチ電極ETと周辺トレースPTとの電気的接触を実現するための追加の重複構造の設計を必要とせず、周辺領域PAに相当する重複構造が占める領域を節約でき、重複公差が発生しないため、タッチセンサ100の狭ベゼル要件を満たすのに有益である。補足すると、周辺トレースPTは互いに絶縁され、間隔をあけて配置されるように設計されているため、本開示の銀層130は配線部Tの上面TSにのみ配線部Tと重なるように配置され、これにより銀層130の側壁133と配線部Tの側壁125とが互いに一列に並ぶように設計されている。換言すると、配線部T上に銀層130を積層した場合、配線部Tの側壁125を銀層130が覆わないため、周辺トレースPTの線幅が大きくなることを防ぐことができる。他の視点(例えば上から又は横から)から見た場合、銀層130と配線部Tは実質的に同じパターンを有する。
【0025】
本開示のタッチセンサ100の製造方法は、1回のマスクエッチング工程を含む。すなわち、周辺領域PAと可視領域VAは同じフォトレジスト層(マスク)を介して加工(パターン化)される。周辺領域PAに相当する基板110の主表面111上の構造について、配線部Tは、金属ナノワイヤ層120上に銀層130が積層された二層構造であり、可視領域VAに相当する基板110の主表面111の構造については、電極部Eは金属ナノワイヤ層120によって形成された単層構造である。したがって、エッチング工程を経た二層構造において、銀材料層(銀層130を準備するための材料)が残した残留樹脂を除去するためにアルゴンプラズマ処理工程を行う際に(詳細は後述する)、可視領域VAに相当する金属ナノワイヤ層120が直接アルゴンプラズマ処理工程を受けるため、結果として、全工程の検討および制御後、本開示のタッチセンサ100の基板110は構造的特徴を有することになる。具体的には、隣り合う2つの電極部E(または電極線L)は第1のスペーサ領域S1によって間隔をあけて配置され、隣り合う2つの配線部Tは第2のスペーサ領域S2によって間隔をあけて配置され、第1のスペーサ領域S1に相当する基板110の厚さT1は、第2のスペーサ領域S2に相当する基板110の厚さT2よりも薄い。換言すると、基板110は、第1のスペーサ領域S1に相当する第1の表面凹部R1と、第2のスペーサ領域S2に相当する第2の表面凹部(図1Bでは図示せず)とを有していてもよく、第1の表面凹部R1の深さd1は、第2の表面凹部の深さ(図1Bでは図示せず)よりも大きい。本実施形態では、第2の表面凹部の深さを0nmに制御しているため、第2の表面凹部の外観は特に図には示されていない。
【0026】
図1Bに示す第1の表面凹部R1は、規則的な形状と平坦な輪郭(例えば、平坦な側壁や底面)を有するように図示されているが、本開示で言及する「凹部」は、実際には、層の表面に対して凹んだ部分を有するという概念を指すことに注意されたい。したがって、凹部の側壁または底面は、実際には様々な考えられる形状や輪郭を有することができ、例えば凹凸や起伏を有することも可能である。本開示のいくつかの実施形態による可視領域VAに相当するタッチセンサ100の集束イオンビーム走査電子顕微鏡(FIB-SEM)画像である図2を参照する。図2に示された破線の枠から分かるように、基板110は可視領域VAに相当する表面凹部(すなわち、第1の表面凹部R1)を有し、凹部の底面は凹凸があり起伏を有する非平坦面である。
【0027】
本開示のタッチセンサ100の基板110上の構造的特徴は、製造工程の説明を通して、以下にさらに説明される。
【0028】
本開示のいくつかの実施形態によるタッチセンサ100の製造方法を示すフローチャートを示す図3を参照する。以下の説明では、図4A図4Hに示すステップを例にタッチセンサ100の製造方法を説明するが、図4A図4H図1Bのタッチセンサ100の製造方法を異なるステップで図示した模式断面図である。タッチセンサ100の製造方法は、ステップS10からステップS17までを含み、ステップS10からステップS17までを順次行ってもよい。
【0029】
まず、図4Aを参照する。ステップS10では、基板110の主表面111上に金属ナノワイヤ材料層220を形成するが、この金属ナノワイヤ材料層220は、可視領域VAと周辺領域PAに相当する。具体的には、スクリーン印刷、ノズルコーティング、ローラーコーティングなどの工程によって、少なくとも金属ナノワイヤとマトリックスを含む分散液またはスラリーを基板110の主表面111上に形成することができ、その後、分散液またはスラリーを硬化または乾燥させて、基板110の主表面111に配置された金属ナノワイヤ材料層220を形成する。いくつかの実施形態では、基板110の主表面111にコーティングされた分散液またはスラリーが連続的に供給されるように、ロールツーロールプロセスが行われてもよい。いくつかの実施形態では、金属ナノワイヤ材料層220を形成する前に、基板110の主表面111上に前処理を行ってもよい。例えば、基板110の主表面111に表面改質工程(例えば、表面硬化改質工程)を行ったり、機能的コーティング層(例:ハードコート層、接着層、樹脂層)を追加コーティングしたりすることで、基板110と他の層との密着性を高める。いくつかの実施形態では、表面抵抗の要件が30Ω/□のタッチセンサ100の場合、金属ナノワイヤ材料層220の厚さH1は40nm以上50nm以下に設計することができる。具体的には、金属ナノワイヤ材料層220の厚さH1が50nmよりも厚い場合、例えば60nmの厚さの場合、金属ナノワイヤ材料層220の光学特性(例えば、黄色度、Lab色空間のb*値も指す)が要件を満たすことが困難になる可能性があり、100nmの厚さを採用した場合、金属ナノワイヤ材料層220とその後にその上に配置される銀材料層230(図4Bを参照)との接触抵抗が高くなる可能性がより高くなる。金属ナノワイヤ材料層220の厚さH1が40nm未満の場合、タッチセンサ100の紫外線対策機能が不十分となるおそれがある。
【0030】
次に、図4Bを参照する。ステップS11ではスクリーン印刷工程を行い、金属ナノワイヤ材料層220上に銀材料層230を形成する。この銀材料層230は周辺領域PAに相当する。具体的には、周辺領域PAに相当する銀材料層230が周辺領域PAに相当する金属ナノワイヤ材料層220を覆うようにスクリーン印刷工程によって基板110上に銀ペースト材料を形成し、その後、銀ペースト材料を硬化または乾燥させて銀材料層230を形成することができる。いくつかの実施形態では、銀材料層230の厚さH2を400nm以上600nm以下の範囲で制御することができる。そのため、厚さH2が過度に薄くなることにより全工程後に銀材料層230が剥がれる可能性を低減できる。また、銀材料層230の厚さH2が過度に厚いため、その後のエッチング工程後に残留樹脂が多く保持され、残留樹脂の完全除去につながらないことを防止することができる。このため、銀材料層230の厚さH2が過度に厚い場合は、金属ナノワイヤ材料層220がその後エッチングされるとき、金属ナノワイヤ材料層220のエッチング精度が低くなり、周辺トレースPTの線幅W1および線間隔Dを小さくすることができず、タッチセンサ100の狭ベゼル要件を実現することが困難となる。厚さH2が過度に薄いために銀材料層230が剥がれる問題については、図5A及び図5Bを参照して具体的に説明する。図5A及び図5Bは、いくつかの比較例の銀材料層230をパターン化して形成された周辺トレースPT内の銀層130の光学顕微鏡(OM)画像である。図5A及び図5Bの比較例は、厚さH2が約300nmの銀材料層230を形成しようとする例である。図5A及び図5Bから分かるように、周辺トレースPTは、オーバーエッチング、剥離、又はエッチング不良等により、良好かつ均一に形成されておらず、隣り合う2つの周辺トレースPT間で開回路または短絡が発生する可能性がある。
【0031】
スクリーン印刷によって形成される銀材料層230の厚さH2に影響を与える要因には、例えば、スクリーンメッシュ数、スクリーンとスキージの間の距離、スクリーン印刷のスキージ圧、スクリーン印刷のスキージ速度、スクリーンと被印刷面との距離、銀ペースト材料のレベリング性(銀ペースト材料のレベリング性は銀ペースト材料の粘度によって影響を受ける可能性がある)等のパラメータを含み得ることを当業者は理解することができる。いくつかの実施形態では、スクリーンメッシュ数は640メッシュ、スクリーンとスキージの間の距離は3mm、スクリーン印刷のスキージ速度は50m/分、スクリーンと被印刷面との距離は2.5mm、銀ペースト材料の粘度は1000cP以上5000cP以下である。この点について、本開示のスクリーン印刷によって形成される銀材料層230の厚さH2は、400nm以上600nm以下の範囲内で制御することができる。
【0032】
次に、図4Cを参照する。ステップS12では、基板110の主表面111上に金属ナノワイヤ材料層220と銀材料層230を完全に覆うフォトレジスト層240を形成する。続いて図4Dを参照する。ステップS13では、フォトレジスト層240をパターン化するための露光工程および現像工程を行う。具体的には、金属ナノワイヤ材料層220及び銀材料層230上に形成する所望のパターンを、1回の露光工程および現像工程によって単一のフォトレジスト層240に一度に形成することで、製造工程のステップとコストを削減する。いくつかの実施形態では、フォトレジスト層240は、可視領域VAに相当する電極パターンEPを画定し、周辺領域PAに相当する配線パターンTPを画定する。パターン化されたフォトレジスト層240の電極パターンEPと配線パターンTPは、その後のエッチング工程で金属ナノワイヤ材料層220及び銀材料層230に転写されて、電極部E及び配線部Tを含む金属ナノワイヤ層120と、その後のフォトレジスト層240の除去後に配線部Tに積層されて接触する銀層130を形成することができる(具体的な構成については、図1Bを参照)。
【0033】
次に、図4Eを参照する。ステップS14では、周辺領域PAに相当する銀材料層230に所望のパターンがパターン化されるように、第1のエッチング工程が行われる。具体的には、配線パターンTPを介して銀材料層230をパターン化し、配線パターンTPのパターンと合致するパターンを設けることができる。いくつかの実施形態では、銀材料層230をエッチングするためのエッチング液の主成分は、例えば硝酸第二鉄を含んでもよい。
【0034】
図4Eに示すように、銀材料層230がエッチングされた後、エッチング領域Sには通常、樹脂などの残留物250が残っており、残留物250の厚さH3は銀材料層230の初期厚さH2と関係している(図4Bを参照)。通常、残留物250の厚さH3は銀材料層230の初期厚さH2の約20%である。したがって、上述したように、銀材料層230の厚さH2が600nm以下に制御されることにより、銀材料層230の過度に厚い厚さH2によって、その後のエッチング工程後に残留樹脂が多く残り、残留樹脂の完全除去につながらないことを防止する。したがって、金属ナノワイヤ材料層220のエッチング精度は影響を受けない。
【0035】
次に、金属ナノワイヤ材料層220のエッチングに影響を与えないように残留物250を除去するために、いくつかの実施形態では、ステップS15について図4Fを参照する。ステップS15ではアルゴンプラズマ処理工程を行い、配線パターンTPを介してパターン化された銀材料層230をさらに加工する。具体的には、第1のエッチング工程を経た銀材料層230が残した残留物250を完全に除去するように、周辺領域PAのエッチング領域Sの残留物250(図4E参照)に対して、アルゴンプラズマ処理工程を行う。アルゴンプラズマ処理工程は非選択的であるため、処理環境にさらされたすべての表面が物理的に除去される。これにより、残留物250を完全に除去することができる。いくつかの実施形態では、アルゴンプラズマ処理工程は銀材料層230に対して約4.5分間行われ、当該アルゴンプラズマ処理工程は、最小真空度が約20mTorr、作業中の真空度が約200mTorr、電力が約8kW、アルゴン流量が1000sccm(標準立方センチメートル毎分)、酸素流量が2000sccm、テトラフルオロメタン流量が900sccmのプラズマによって行われる。
【0036】
ステップS15では、アルゴンプラズマ処理工程を全面に行うため、周辺領域PAに相当する残留物250の除去に加えて、電極パターンEPを介して可視領域VAに相当する金属ナノワイヤ材料層220の一部も除去し、第1のスペーサ領域S1によって間隔をあけて配置された電極部Eを金属ナノワイヤ材料層220から形成する。また、残留物250の厚さH3(例えば約80nm~約120nm)は金属ナノワイヤ材料層220の厚さH1(例えば約40nm~約50nm程度)より厚いため、周辺領域PAに相当する残留物250を完全に除去することを前提として、可視領域VAに相当する基板110の一部をさらに除去し、第1のスペーサ領域S1に相当する基板110の厚さT1を薄くする。すなわち、アルゴンプラズマ処理工程により、第1のスペーサ領域S1(すなわち、本開示の基板110上の構造的特徴)に相当する第1の表面凹部R1が形成される。例えば、残留物250の厚さH3が最も薄い厚さ(約80nm)であり、金属ナノワイヤ材料層220の厚さH1が最も厚い厚さ(約50nm)である場合、残留物250を完全に除去することを前提として、基板110上に深さd1が少なくとも30nmの第1の表面凹部R1が形成される。さらに、図4Fに示すように、いくつかの実施形態では、ステップS15で銀材料層230によって残された残留物250を完全に除去するために、通常、アルゴンプラズマ処理工程を制御して過臨界処理を行い、その結果、周辺領域PAに相当する金属ナノワイヤ材料層220の一部のマトリックスが除去される。さらに、周辺領域PAのエッチング領域Sに金属ナノワイヤ材料層220のマトリックスが残ることを抑制するために、過臨界処理によってさらにアルゴンプラズマ処理工程を制御して、周辺領域PAに相当する金属ナノワイヤ材料層220のマトリックスを完全に除去することができる(図4G及び図4Hがそのような態様の一例である)。しかしながら、本開示では、過度に深い凹部による可視性の問題を回避するために、過臨界処理を制御する際には、可視領域VAに形成される第1の表面凹部R1の深さd1を考慮する必要がある。補足すると、アルゴンプラズマ処理工程によって除去されるのは、金属ナノワイヤ材料層220のマトリックスのみである。したがって、アルゴンプラズマ処理工程の後、金属ナノワイヤ材料層220中の金属ナノワイヤ222が可視領域VAと周辺領域PAに露出していることがわかる。
【0037】
より具体的には、本開示のいくつかの実施形態による銀材料層230にアルゴンプラズマ処理工程を施した後のエッチング領域Sの走査電子顕微鏡(SEM)画像である図6を参照する。図6から、アルゴンプラズマ処理工程後に、エッチング領域Sから金属ナノワイヤ222が露出していることがわかる。
【0038】
補足すると、上記ステップS15で述べたアルゴンプラズマ処理工程は、実際の製造工程におけるエッチング精度の要求に応じて選択的に調整することができる。例えば、1回のアルゴンプラズマ処理工程により、厚さH3が約100nmの残留物250を除去することができる。したがって、厚さH3が100nmを超える残留物250を完全に除去するためには、少なくとも2回のアルゴンプラズマ処理工程を必要とする場合がある。さらに、いくつかの実施形態では、残留物250の一部を予め除去するために、アルゴンプラズマ処理工程の前に化学洗浄工程を行うことができる。しかし、化学洗浄工程では化学反応によって残留物250を除去するため、化学平衡に達した後は残留物250を除去することはできない。そのため、化学洗浄工程の目的は、残留物250の厚さH3を約100nmまで薄くし、1回のアルゴンプラズマ処理工程を行うだけで残留物250を完全に除去できるようにすることである。いくつかの実施形態では、化学洗浄工程において、樹脂を除去できる化学洗浄剤を使用して、約0.2MPaのシャワーヘッド圧力で約45℃の周囲温度で約40秒間、銀材料層230上に表面処理を行う。
【0039】
次に、図4Gを参照する。ステップS16では、周辺領域PAと可視領域VAに相当する金属ナノワイヤ材料層220がパターン化されるように第2のエッチング工程が行われる。より具体的には、金属ナノワイヤ材料層220内の金属ナノワイヤ222が第2のエッチング工程によって除去され、第2のエッチング工程によって期待されるパターンが形成される。また、第2のエッチング工程で使用するフォトレジストと第1のエッチング工程で使用するフォトレジストは同一のフォトレジスト層240であるため、第2のエッチング工程によって周辺領域PAに相当する金属ナノワイヤ材料層220上に形成されるパターンは、周辺領域PAに相当するパターン化された銀材料層230上のパターンと同一となり、その他の期待されるパターン(例えば、電極パターンEP)は、第2のエッチング工程によって可視領域VAに相当する金属ナノワイヤ材料層220上に形成される。全体として、フォトレジスト層240の電極パターンEP及び配線パターンTPは、第2のエッチング工程中に金属ナノワイヤ材料層220に転写されてもよく、金属ナノワイヤ材料層220には、可視領域VAに相当する電極部E及び周辺領域PAに相当する配線部Tが設けられるようにパターン化される。いくつかの実施形態では、金属ナノワイヤ材料層220をエッチングするためのエッチング液の主成分は、例えば硝酸第二鉄を含んでもよい。なお、金属ナノワイヤ材料層220(銀ナノワイヤ材料層)をエッチングするためのエッチング液の主成分と、前述の銀材料層230をエッチングするためのエッチング液の主成分は、いずれも硝酸第二鉄である。しかし、実際の工程に合わせて微量成分を調整することで、金属ナノワイヤ材料層220と銀材料層230のエッチング条件を差別化できるよう制御することができる。
【0040】
図4Hを参照する。ステップS17でフォトレジスト層240を除去する。可視領域VAについては、フォトレジスト層240を除去した後、パターン化された金属ナノワイヤ材料層220(すなわち、金属ナノワイヤ層120)によって形成された複数の電極部Eのうち、隣り合う2つの電極部Eが、第1のスペーサ領域S1によって間隔をあけて配置されていることが分かる。周辺領域PAについては、図4Hの実施形態において、フォトレジスト層240を除去した後、パターン化された金属ナノワイヤ材料層220(すなわち、金属ナノワイヤ層120)によって形成された複数の配線部Tと、パターン化された銀材料層230によって形成され、配線部Tの上に積層された銀層130が形成され、隣り合う2つの配線部Tが第2のスペーサ領域S2によって間隔をあけて配置されていることがわかる。上述の1回のマスクエッチング工程とアルゴンプラズマ処理工程を組み合わせて、周辺領域PAに相当する銀材料層230が残した残留物250を除去することにより、第1のスペーサ領域S1に相当する基板110の厚さT1は、第2のスペーサ領域S2に相当する基板110の厚さT2よりも薄くなる。換言すると、基板110は、第1のスペーサ領域S1に相当する第1の表面凹部R1と、第2のスペーサ領域S2に相当する第2の表面凹部とを有していてもよく、第1の表面凹部R1の深さd1は第2の表面凹部の深さよりも大きい。ただし、本実施形態では第2の表面凹部の深さを0nmに制御している。すなわち、周辺領域PAに相当する基板110は、平坦で凹みのない主表面111を有しており、その結果、周辺領域PAに相当する基板110はそのまま残っている。
【0041】
上記のステップS13~S17をまとめると、本開示では、2つのエッチング工程(第1のエッチング工程と第2のエッチング工程)の間にアルゴンプラズマ処理工程を行い、エッチング精度を向上させるとともに、化学洗浄工程を選択的に組み込むこともできる。全体の工程は、「現像(development)」、「(銀材料層230の)第1のエッチング(first etching)」、「化学洗浄(chemical cleaning)」、「プラズマ処理(plasma treatment)」、「(金属ナノワイヤ材料層220の)第2のエッチング(second etching)」、「剥離(stripping)」と呼ばれ、これはさらに「DECEPS工程」と略される。
【0042】
図1A図1Bに戻り説明する。いくつかの実施形態では、第1の表面凹部R1の深さd1は30nm以上200nm以下であってもよい。上述のように、本開示のタッチセンサ100の製造方法は、タッチセンサ100の狭ベゼル要件を満たすために、エッチング工程を経た銀材料層230が残した残留物250(例えば樹脂)を完全に除去し、その後のエッチング工程におけるエッチング精度を向上させるアルゴンプラズマ処理工程と組み合わせた1回のマスクエッチング工程を含むため、可視領域VAの基板110上に、第1のスペーサ領域S1に相当する第1の表面凹部R1が形成される。また、いくつかの実施形態では、周辺領域PAに相当する銀材料層230が残した樹脂を完全に除去するために、第1の表面凹部R1の深さd1は少なくとも30nmである。また、第1の表面凹部R1の深さd1を200nm以下に制御することで、第1のスペーサ領域S1の深さが大きすぎることによる可視領域VAの光学的均一性に影響を与える可能性を低減できる(例えば、第1の表面凹部R1の深さd1を200nm以下に制御することで、電極部Eの可視性を低下させることができる)。
【0043】
第1の表面凹部R1の深さd1が可視領域VAの光学的均一性に及ぼす影響を、各実施形態のタッチセンサ100の半製品を参照して、以下により詳細に検証する。可視領域VAに相当する基板110が深さd1の異なる第1の表面凹部R1有する場合のタッチセンサ100の半製品の可視領域VAの光学試験結果を表1に示す。表1において、各タッチセンサ100の半製品の積層構造は、基板110(ポリエチレンテレフタレート(PET)基板とPET基板上に配置されたハードコート層を含む)と、基板110上に配置された金属ナノワイヤ層120とを含み、金属ナノワイヤ層120は、間隔をあけて配置された複数の電極部Eを含み、金属ナノワイヤ層120の厚さHは40nmである。また、表1に示す光学試験結果には、タッチセンサ100の半製品の可視領域VAのヘイズと、タッチセンサ100の半製品の可視領域VAにおける電極部Eの可視性が含まれており、電極部Eの可視性は特定の検出条件で、肉眼で観察され(すなわち、タッチセンサ100の半製品に1000ルクス~1200ルクスの照度の光を照射、観察距離30cm、観察時間15秒とする)、規格品に基づいて採点されている。
【0044】
【表1】
注:0点→見える、1点→適度に見える、2点→中程度、3点→適度に目立たない、4点→わずかに見える程度、5点→かすかに見える(ほとんど見えない)。可視性試験の合格基準は3点である。
【0045】
表1の光学試験結果からわかるように、基板110上の第1の表面凹部R1の深さd1が200nm以下の場合、可視領域VAにおける電極部Eの可視性にほとんど影響を与えない。すなわち、電極部Eは可視性の問題が少なく、可視領域VAのヘイズは比較的小さい。
【0046】
いくつかの実施形態では、可視領域VAについて、第1のスペーサ領域S1の側面の境界を画定するための側壁は、金属ナノワイヤ層120の電極部E(電極線L)の側壁123であり、第1の表面凹部R1の側面の境界を画定するための側壁は、基板110の側壁113であって、側壁123と側壁113が連続的に延在し、好ましくは、一列に並んだ状態である。周辺領域PAについては、第2のスペーサ領域S2の側面の境界を画定する側壁は、金属ナノワイヤ層120の配線部Tの側壁125であり、当該側壁125と、銀層130の側壁133とが一列に並んでいる。注目すべきは、本開示では、周辺領域PAについて、まず、周辺領域PAの全面に相当する金属ナノワイヤ層120を形成するための材料層を形成し、次に、周辺領域PAの全面に相当する銀層130を形成するための材料層を形成した後、1回のマスクエッチング工程を行って、上記の材料層をパターン化し、さらに周辺トレースPTを形成する。したがって、周辺領域PAに相当する銀層130と金属ナノワイヤ層120との重複構造のための重複公差を確保する必要がなく、各周辺トレースPT内の銀層130と金属ナノワイヤ層120を正確に揃えることができ、タッチセンサ100の狭ベゼル要件を満たすのに有益である。
【0047】
一方、上述したように、本開示の基板110は、単一の基板(ベース層)と、ベース層上に配置された少なくとも1つの機能的コーティング層を含んでもよい。この点について、いくつかの実施形態では、基板110がベース層と、ベース層上に配置された機能的コーティング層を含む場合、第1の表面凹部R1の底部境界を画定するための底面は、ベース層の表面であってもよい。すなわち、第1の表面凹部R1の深さd1は比較的大きく、第1の表面凹部R1はベース層に凹んでいる。他のいくつかの実施形態では、第1の表面凹部R1の底部境界を画定するための底面は、機能的コーティング層の表面であってもよい。つまり、第1の表面凹部R1の深さd1は比較的小さく、第1の表面凹部R1は機能的コーティング層にのみ凹んでいる。
【0048】
また、アルゴンプラズマ処理工程と組み合わせた1回のマスクエッチング工程により、エッチング工程を経た銀材料層230が残した樹脂が完全に除去されるため、エッチング処理のエッチング精度を向上させることができ、周辺領域PAに相当する、並列に配置された各周辺トレースPTの線幅W1を6μm以上10μm以下に制御し、隣り合う2つの周辺トレースPTの線間隔Dを6μm以上10μm以下に制御することができる。周辺トレースPTの線幅W1と線間隔Dは、タッチセンサ100の周辺領域PAのサイズ(例えば、周辺領域PAの幅W)に一定の影響を与え、周辺領域PAのサイズは、さらに端末製品のベゼルサイズに影響するため、本開示のタッチセンサ100は、狭ベゼル製品の要求を満たすとともに、電気的仕様の要件を満たすことができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、タッチセンサ100は、基板110の主表面111上に配置され、金属ナノワイヤ層120と銀層130を完全に覆う保護層140をさらに含んでもよい。保護層140は、絶縁性樹脂、有機材料、または無機材料を含んでもよい。例えば、保護層140は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリスチレンスルホン酸、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、セラミック、又はこれらの組み合わせなどの材料を含んでもよい。
【0050】
本開示の他のいくつかの実施形態によるタッチセンサ100aの模式断面図である図7を参照する。図7の断面位置は図1に示されたA-A′線に沿って切断した位置に相当する。図7に示すタッチセンサ100aと図1Bに示すタッチセンサ100の少なくとも1つの相違点は、図7のタッチセンサ100aにおいて、周辺領域PAに相当する基板110は、第2のスペーサ領域S2に相当する第2の表面凹部R2を有することである。第2の表面凹部R2の形成は、上述した図4Fの説明から理解することができる。いくつかの実施形態では、過臨界処理が周辺領域PAに相当する金属ナノワイヤ材料層220のマトリックスを完全に除去するようにアルゴンプラズマ処理工程を制御する場合、1回のアルゴンプラズマ処理工程で処理される深さは一定であるため、周辺領域PAの第2のスペーサ領域S2に相当する基板110をさらに薄くして、その上に第2の表面凹部R2が形成してもよい。しかし、これは本開示の構造的特徴には影響を与えない。銀材料層230が残した残留物250が周辺領域PAのエッチング領域Sで基板110を覆い、残留物250は可視領域VAで基板110を覆わないため、同じ時間または回数のアルゴンプラズマ処理工程の下では、周辺領域PAに相当するエッチング領域Sでの基板110の薄化は、可視領域VAに相当するエッチング領域Sでの基板110の薄化よりも顕著ではない。換言すると、第2の表面凹部R2の薄肉化の程度は、第1の表面凹部R1の薄肉化の程度よりも小さい。すなわち、第2の表面凹部R2の深さd2は、第1の表面凹部R1の深さd1よりも小さい。換言すると、第2のスペーサ領域S2に相当する基板110の厚さT2は、第1のスペーサ領域S1に相当する基板110の厚さT1よりも厚い。
【0051】
基板110上の第1の表面凹部R1の深さd1の測定方法についてさらに補足する。図7及び図8を参照すると、図8は、本開示のいくつかの実施形態による第1の表面凹部R1の深さd1と、第2の表面凹部R2の深さd2の測定を示す模式図である。図8には、矩形のタッチセンサ100が例として示されており、図8のタッチセンサ100の電極部Eは、第1の方向D1に沿って延在し、第2の方向D2に沿って間隔をあけて配置された帯状の電極である。第1の表面凹部R1の深さd1は、可視領域VAに相当する基板110上で特定の測定を行うことで求めることができ、その測定方法には以下のようなステップを含んでもよい。
ステップS1:第2の方向D2に沿ったタッチセンサ100aの可視領域VAに相当する基板110の延在長さL1を、4つの点O1~点O4で長さが等しい5つのセクションに分割する。
ステップS2:点O1をFIB-SEMの観察部の中心点(軸)として、表面凹部の底面107と基板110の主表面111との垂直距離X1を測定し(明確な理解のために、図7を参照)、観察部の表面凹部の深さを求める。
ステップS3:点O2~点O4を同じFIB-SEMの観察部の中心点(軸)とし、ステップS2を繰り返して観察部の表面凹部の深さをそれぞれ求める。
ステップS4:上述のステップで求めた観察部(合計4個)の表面凹部の深さの平均値を求め、その平均値を第1の表面凹部R1の深さd1とする。
ステップS1~S4を行うと、第1の表面凹部R1の深さd1を求めることができる。図7では、表面凹部の底面107と基板110の主表面111との垂直距離X1を、第1の表面凹部R1の深さd1として直接表記しているが、第1の表面凹部R1の深さd1は、実際には観察部で得られた表面凹部の深さの平均値であることを理解されたい。
【0052】
一方、基板110上の第2の表面凹部R2の深さd2の測定方法については、タッチセンサ100aの一辺の周辺領域PAの4点で、上記と同じ測定方法を適用してもよいし(すなわち、タッチセンサ100aの第2の方向D2に沿った片側の周辺領域PAに相当する基板110の延在長さL2を、4点で長さが等しい5つのセクションに分割する)、又は、タッチセンサ100aの二辺の周辺領域PA(例えば、左側と右側)の4点(すなわち、図8に示す点O1′~点O2′として、左側2点と、右側2点)で、上記と同じ測定方法を適用してもよい。これにより、表面凹部の底面109と基板110の主表面111との垂直距離X2(明確な理解のために、図7を参照)を求めることができ、複数の垂直距離X2の平均値を算出することができる。
【0053】
本開示の前述の実施形態によれば、本開示のタッチセンサの設計は、タッチセンサの光学的効果を低下させることなく、小さな線幅と線間隔で周辺トレースを形成するのに役立つ。また、電極部と配線部を一体的に形成して、タッチ電極と周辺トレースとの電気的接続を直接形成することで、タッチセンサ用の追加の重複構造を設計する必要がない。これにより、周辺領域に相当する重複構造が占める領域を節約でき、重複公差が発生しないため、タッチセンサの狭ベゼル設計を実現する上で有益である。さらに、本開示のタッチセンサの積層構造設計に基づき、タッチセンサの製造工程において、1回の露光・現像工程でタッチ電極と周辺トレースを一度に形成することができ(すなわち、単一のマスク(フォトレジスト)のみを使用)、エッチング工程後に銀材料層に残る残留樹脂を除去するアルゴンプラズマ処理工程を併用するため、製造工程のステップとコストを削減でき、エッチング精度も向上し、線幅と線間隔の小さい周辺トレースを形成することができる。
【0054】
本開示は、その特定の実施形態を参照してかなり詳細に説明されているが、他の実施形態も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および範囲は、ここに含まれる実施形態の説明に限定されるべきではない。
【0055】
本開示の範囲または精神から逸脱することなく、本開示の構造に様々な修正および変更を加えることができることは、当業者にとって明らかであろう。上記を考慮して、本開示は、以下の特許請求の範囲内であれば、本開示の修正及び変形を範囲として含むことが意図される。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5A
図5B
図6
図7
図8