(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055724
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
C08L27/06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206357
(22)【出願日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】111138157
(32)【優先日】2022-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】廖 テ超
(72)【発明者】
【氏名】許 漢卿
(72)【発明者】
【氏名】陳 春來
(72)【発明者】
【氏名】ウー 文義
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD04W
4J002BD18X
4J002DE187
4J002EW046
4J002FD136
4J002FD207
4J002GL00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】従来技術の不足に対して高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の組成物は、ポリビニルクロリド樹脂材料、難燃添加剤、及び炭素形成剤を含む。ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量は、10重量部(PHR)から90重量部の間にある。難燃添加剤の使用量は、0.5重量部から2.0重量部の間にある。難燃添加剤は、変性剤で修飾されたリン含有難燃剤である。炭素形成剤の使用量は、0.2重量部から1.0重量部の間にある。炭素形成剤は、塩化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシスズ酸亜鉛、無水スズ酸亜鉛、リン酸亜鉛、及びリン酸ジルコニウムからなる材料群から選択される少なくとも1つである。難燃添加剤及び炭素形成剤高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の組成物での総添加量は3重量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用量が10重量部(PHR)から90重量部の間にあるポリビニルクロリド樹脂材料と、
使用量が0.5重量部から2.0重量部の間にあり、変性剤で修飾されたリン含有難燃剤である難燃添加剤と、
使用量が0.2重量部から1.0重量部の間にあり、塩化亜鉛(zinc chloride)、ステアリン酸亜鉛(zinc stearate)、ステアリン酸カルシウム(calcium stearate)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(hydroxide zinc stannate)、無水スズ酸亜鉛(anhydrous zinc stannate)、リン酸亜鉛(zinc phosphate)、及びリン酸ジルコニウム(zirconium phosphate)、からなる材料群から選択される少なくとも1つである炭素形成剤と、を含む高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の組成物であって
前記難燃添加剤及び前記炭素形成剤の、前記高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の組成物での総添加量は3重量部以下であることを特徴とする、高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項2】
前記変性剤は、無機変性剤又は有機変性剤であり、
前記無機変性剤は、酸化亜鉛(zinc oxide)、次亜リン酸亜鉛(zinc hypophosphite)、及び水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)、からなる材料群から選択される少なくとも1つであり、
前記有機変性剤は、アルキルリン酸(alkyl phosphoric acid)である、請求項1に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項3】
前記変性剤は、共有結合によって前記リン含有難燃剤に修飾される、請求項2に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項4】
前記難燃添加剤は、前記変性剤で修飾されたメラミンリン酸塩系難燃剤(melamine phosphate flame retardant)である、請求項2に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項5】
前記難燃添加剤の使用量は、前記炭素形成剤の使用量の10倍から0.5倍の間にある、請求項1に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項6】
塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料を更に含み、前記ポリビニルクロリド樹脂材料の第1の数平均重合度(DPn)は、1,000から1,800の間にあり、
前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料の第2の数平均重合度は、800から1,350の間にある、請求項1に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項7】
前記ポリビニルクロリド樹脂材料は、高い塩素含有量を有するポリビニルクロリド樹脂であり、前記ポリビニルクロリド樹脂材料は、55%以上の塩素含有量を有し、前記ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量は、前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量の9倍から1/9倍の間にある、請求項6に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項8】
熱安定剤、強靭化剤、滑剤、及び酸化防止剤を更に含む、請求項1に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項9】
前記熱安定剤の使用量の範囲は、1重量部から5重量部の間にあり、前記強靭化剤の使用量の範囲は、1重量部から10重量部の間にあり、前記滑剤の使用量の範囲は、1重量部から3重量部の間にあり、前記酸化防止剤の使用量の範囲は、0.1重量部から2重量部の間にある、請求項8に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物を加熱攪拌ミキサーに加え、100℃から120℃の加熱温度で高速攪拌して混合させることにより、第1の混合物を形成することと、
前記第1の混合物の温度を35℃から50℃の冷却温度に低下させて冷却することにより、第2の混合物を形成することと、
前記第2の混合物を押出成型機により、170℃から200℃の溶融温度で溶融してから、押し出し、成型、冷却を経てポリビニルクロリド押し出し管を得ることと、
を含む高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管材の組成物に関し、特に高難燃低発煙量ポリビニルクロリド押し出し管の組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルクロリド(Polyvinyl Chloride、PVC)樹脂材料は、優れた電気絶縁性及び機械的強度を備えるとともに、低価という利点も有するので、建築分野や電気分野、例えば、水管材、電線管路、キッチンファニチャー、電線ケーブル…などの用途に広く応用されている。純粋なポリビニルクロリドは、高い塩素含有量(一般的には、55%以上)を有するので、その限界酸素指数の範囲が45以上に達成することができる。そのため、純粋なポリビニルクロリドは難燃という特性を有し、難燃材料として用いられる。
【0003】
しかし、ポリビニルクロリドは、燃焼時に大量の黒煙が発生するので、避難する際に視線が阻害されるだけでなく、黒煙には塩酸及びポリフェニル構造を有する化合物が含まれるため、避難する際に生存する確率が低下する。
【0004】
米国特許番号US4670494A(出願人GARY CHEMICAL CORP.)には、ホウ酸亜鉛、リン酸エステル、及び臭化酸エステルなどの難燃添加剤を、ポリビニルクロリド樹脂材料にドープすることにより、樹脂材料の燃焼時における発煙量を低下させることが提案されている。Cartyは、スズ酸塩、塩基性酸化鉄、及びモリブデン酸アンモニウムなどの難燃添加剤を、ポリビニルクロリド樹脂材料にドープすることにより、樹脂材料の燃焼時における発煙量を有効的に抑制することを提案している(Flame-retardancy and Smoke-suppression Studies on Ferrocene Derivatives in PVC,Applied Organometallic Chemistry,Volume 10,Issue 2,March 1996,P.101-111)。
【0005】
米国特許番号US20140336321A1(出願人:日本積水化学工業株式会社)には、リン化合物及び膨張黒鉛をポリビニルクロリド樹脂材料の難燃添加剤とすることが提案されている。米国特許番号US5891571A(出願人ALCAN INTERNATIONAL LIMITED)には、オクタモリブデン酸アンモニウム、スズ酸亜鉛、及び三酸化アンチモンなどの難燃添加剤を、ポリビニルクロリド樹脂材料にドープすることにより、樹脂材料の燃焼時における発煙量を低下させることが提案されている。
【0006】
台湾特許番号TWI651352(出願人南亜プラスチック工業株式会社)には、ポリ[ビス(フェノキシ)ホスファゼン]、ステアリン酸亜鉛、及びステアリン酸カルシウムなどの難燃添加剤を、ポリビニルクロリド樹脂材料にドープすることにより、高難燃及び低発煙量という特性を有する難燃板材を得ることが提案されている。
【0007】
しかし、上述した従来技術で提案される難燃配合はいずれも、難燃添加剤の添加量が高いこと、及び高価などの欠陥を有するので、ポリビニルクロリド樹脂材料の低コストという利点を維持することが困難となる。なお、難燃添加剤の添加量が高いため、管材のような成型品には、引張強度が劣ることや、耐衝撃強度の低下などの問題がある。
【0008】
従って、本発明者は、上記の欠陥を改善できると感じ、研究に専念し、科学的原理の適用と組み合わせて鋭意研究したところ、最終的にデザインが合理的で上記の欠陥を改善した本発明を完成することに至った。
【発明の概要】
【0009】
本発明が解決しようとする技術的問題は、従来技術の不足に対して高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の組成物及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
上述した技術的問題を解決するために、本発明で採用されるその一つの技術的方案は、使用量が10重量部(PHR)から90重量部の間にあるポリビニルクロリド樹脂材料と、使用量が0.5重量部から2.0重量部の間にあり、変性剤で修飾されたリン含有難燃剤である難燃添加剤と、使用量が0.2重量部から1.0重量部の間にあり、塩化亜鉛(zinc chloride)、ステアリン酸亜鉛(zinc stearate)、ステアリン酸カルシウム(calcium stearate)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(hydroxide zinc stannate)、無水スズ酸亜鉛(anhydrous zinc stannate)、リン酸亜鉛(zinc phosphate)、及びリン酸ジルコニウム(zirconium phosphate)、からなる材料群から選択される少なくとも1つである炭素形成剤とを含み、前記難燃添加剤及び前記炭素形成剤の、前記組成物での総添加量は3重量部以下である、高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の組成物を提供する。
【0011】
好ましくは、前記変性剤は、無機変性剤又は有機変性剤であり、前記無機変性剤は、酸化亜鉛(zinc oxide)、次亜リン酸亜鉛(zinc hypophosphite)、及び水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)、からなる材料群から選択される少なくとも1つであり、前記有機変性剤は、アルキルリン酸(alkyl phosphoric acid)である有機変性剤である。
【0012】
好ましくは、前記変性剤は、共有結合によって前記リン含有難燃剤に修飾される。
【0013】
好ましくは、前記難燃添加剤は、前記変性剤で修飾されたメラミンリン酸塩系難燃剤(melamine phosphate flame retardant)である。
【0014】
好ましくは、前記難燃添加剤の使用量は、前記炭素形成剤の使用量の10倍から0.5倍の間にある。
【0015】
好ましくは、前記組成物はさらに、塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料を含み、前記ポリビニルクロリド樹脂材料の第1の数平均重合度(DPn)は、1,000から1,800の間にあり、前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料の第2の数平均重合度は、800から1,350の間にある。
【0016】
好ましくは、前記ポリビニルクロリド樹脂材料は、高い塩素含有量を有するポリビニルクロリド樹脂であり、前記ポリビニルクロリド樹脂材料は、55%以上の塩素含有量を有し、前記ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量は、前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量の9倍から1/9倍の間にある。
【0017】
好ましくは、前記組成物は、熱安定剤、強靭化剤、滑剤、及び酸化防止剤を更に含む。
【0018】
好ましくは、前記熱安定剤の使用量の範囲は、1重量部から5重量部の間にあり、前記強靭化剤の使用量の範囲は、1重量部から10重量部の間にあり、前記滑剤の使用量の範囲は、1重量部から3重量部の間にあり、前記酸化防止剤の使用量の範囲は、0.1重量部から2重量部の間にある。
【0019】
上述した技術的問題を解決するために、本発明で採用されるその他の技術的方案としては、前記ポリビニルクロリド押し出し管の組成物を加熱攪拌ミキサーに加え、100℃から120℃の加熱温度で高速攪拌して混合させることにより、第1の混合物を形成することと、前記第1の混合物の温度を35℃から50℃の冷却温度に低下させて冷却することにより、第2の混合物を形成することと、前記第2の混合物を押出成型機により、170℃から200℃の溶融温度で溶融してから、押し出し、成型、冷却を経てポリビニルクロリド押し出し管を得ることと、を含むポリビニルクロリド押し出し管の製造方法を提供する。
【0020】
本発明の有益な効果としては、本発明で提供される高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の組成物及びその製造方法は、「使用量が0.5重量部から2.0重量部の間にあり、変性剤で修飾されたリン含有難燃剤である難燃添加剤と、使用量が0.2重量部から1.0重量部の間にあり、塩化亜鉛(zinc chloride)、ステアリン酸亜鉛(zinc stearate)、ステアリン酸カルシウム(calcium stearate)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(hydroxide zinc stannate)、無水スズ酸亜鉛(anhydrous zinc stannate)、リン酸亜鉛(zinc phosphate)、及びリン酸ジルコニウム(zirconium phosphate)、からなる材料群から選択される少なくとも1つである炭素形成剤とを含み、前記難燃添加剤及び前記炭素形成剤の、前記高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の組成物での総添加量は3重量部以下である」という技術的方案により、前記ポリビニルクロリド押し出し管が低い難燃剤添加量、高い難燃能力、及び低い発煙量を有するようにできる。なお、前記ポリビニルクロリド押し出し管は、低コスト及び優れた機械的性質などの利点を有する。
【0021】
さらに本発明の特徴及び技術的内容を理解するためには、以下の本発明に関する詳細な説明を参照するが、以下で提供する詳細な説明はただ、参考及び説明を提供するためのものであり、本発明を制限するためのものではない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、特定の具体的な実施例により、本発明に記載される実施形態を説明し、当業者であれば本明細書に記載の内容により本発明の利点及び効果を理解できる。本発明は、異なる他の具体的な実施例により実施又は応用されてもよく、本明細書の様々な詳細は、異なる観点及び用途に基づき、本発明の思想を逸脱することなく修正及び変更することもできる。
【0023】
「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、本明細書では様々な要素又は信号を説明するために使用される場合があるが、これらの要素又は信号はこれらの用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は主に、ある要素を別の要素から、又はある信号を別の信号から区別するために使用される。また、本明細書で使用される「又は」という用語は、場合に応じて関連する列挙項目のいずれか一つ又は複数項目の組合せを含むべきである。
【0024】
[ポリビニルクロリド押し出し管の組成物]
【0025】
本発明は、ポリビニルクロリド樹脂材料(polyvinyl chloride resin material、PVC resin material)、難燃添加剤(flame retardant additive)、及び炭素形成剤(carbon forming additive)を少なくとも含むポリビニルクロリド押し出し管の組成物(composition of extruded polyvinyl chloride pipe)を提供する。
【0026】
前記ポリビニルクロリド押し出し管の組成物は、まず加熱攪拌ミキサー及び/又は冷却攪拌ミキサーにより均一に混合した後、押し出しプロセスを経てポリビニルクロリド押し出し管を形成することができ、前記押し出し管は、低い難燃剤添加量、高い難燃能力、及び低い発煙量を有するので、上述した従来技術における問題を有効的に解決することができる。
【0027】
本発明の実施例の主な技術的特徴としては、前記難燃添加剤及び炭素形成剤の材料種類の選択により、相乗作用を生じ、そして、前記難燃添加剤は低い添加量という条件下で、前記ポリビニルクロリド樹脂材料の燃焼中において炭素を迅速に形成することができ、高い難燃能力及び低い発煙量という技術効果を実現できる。
【0028】
材料の選択については、前記難燃添加剤は、変性剤(modifier)で修飾されたリン含有難燃剤(phosphorus-containing flame retardant)である。より具体的には、前記難燃添加剤は、前記変性剤で修飾されたメラミンリン酸塩系難燃剤(melamine phosphate flame retardant)である。その中、前記変性剤は、無機変性剤又は有機変性剤である。前記無機変性剤は、酸化亜鉛(zinc oxide)、次亜リン酸亜鉛(zinc hypophosphite)、及び水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)、からなる材料群から選択される少なくとも一つである。前記有機変性剤は、例えばアルキルリン酸(alkyl phosphoric acid)であってもよい。なお、前記変性剤は、共有結合により前記リン含有難燃剤に修飾されることが好ましいが、本発明はこれに限らない。前記変性剤は、例えばドーピングにより前記リン含有難燃剤に修飾されてもよい。
【0029】
前記リン含有難燃剤は、リン系難燃剤とも呼ばれる。本実施例においては、前記リン含有難燃剤については、メラミンリン酸塩系難燃剤を例として説明するが、本発明はこれに限らない。前記リン含有難燃剤は、例えばヘキサクロロシクロトリホスファゼン、ポリ(ビス(フェノキシ)ホスファゼン、リン酸アンモニウムマグネシウム、及びポリリン酸アンモニウム、からなる材料群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0030】
前記炭素形成剤は、塩化亜鉛(zinc chloride)、ステアリン酸亜鉛(zinc stearate)、ステアリン酸カルシウム(calcium stearate)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(hydroxide zinc stannate)、無水スズ酸亜鉛(anhydrous zinc stannate)、リン酸亜鉛(zinc phosphate)、及びリン酸ジルコニウム(zirconium phosphate)、からなる材料群から選択される少なくとも一つである。
【0031】
使用量の範囲については、前記ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量の範囲は、通常90重量部(PHR)から10重量部であり、80重量部から20重量部であることが好ましく、70重量部から30重量部であることが特に好ましい。即ち、前記ポリビニルクロリド押し出し管の組成物においては、前記ポリビニルクロリド樹脂材料は主なマトリックス成分である。
【0032】
前記難燃添加剤の使用量の範囲は、通常0.5重量部から2.0重量部の間、好ましくは0.7重量部から1.5重量部の間、特に好ましくは0.8重量部から1.2重量部の間にある。なお、前記炭素形成剤の使用量の範囲は、通常0.2重量部から1.0重量部の間、好ましくは0.3重量部から0.9重量部の間、特に好ましくは0.4重量部から0.8重量部の間にあるが、本発明はこれに限らない。
【0033】
さらには、前記難燃添加剤及び前記炭素形成剤の総添加量は通常、3重量部以下であり、2.5重量部から1重量部であることが好ましく、2重量部から1.2重量部であることが特に好ましい。即ち、前記難燃添加剤及び炭素形成剤は添加量が低い。
【0034】
割合の範囲については、前記難燃添加剤と炭素形成剤との割合(難燃添加剤/炭素形成剤)の範囲は、通常10/1から1/2であり、8/1から1/1であることが好ましく、7/1から2/1であることが特に好ましい。即ち、前記難燃添加剤の使用量は、通常炭素形成剤の使用量の10倍から0.5倍であり、8倍から1倍であることが好ましく、7倍から2倍であることが特に好ましい。
【0035】
上述した配置によれば、前記変性剤は高温下で炭素を迅速に形成できる成分(例えば、酸化亜鉛)であるため、前記難燃添加剤そのものは難燃という効果を有するだけではなく、変性剤による修飾で炭素を迅速に形成するという効果を果たせる。これにより、前記難燃添加剤及び炭素形成剤は全体としてポリビニルクロリド樹脂材料における添加量が有効に低減される。
【0036】
さらには、本実施例において、前記ポリビニルクロリド押し出し管の組成物はさらに、塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料(chlorinated polyvinyl chloride resin material、CPVC resin material)、熱安定剤(thermal stabilizer additive)、強靭化剤(toughening additive)、滑剤(slip agent)、及び酸化防止剤(antioxidant additive)を含む。
【0037】
本発明の実施例の別の主な技術的特徴としては、高い剛性を有するポリビニルクロリド樹脂材料(PVC)及び塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料(CPVC)を選択し、二種類の樹脂材料間の重合度差異を制御し、熱安定剤、強靭化剤、滑剤、及び酸化防止剤をドープしてから、組成物に対して押出成型機により押し出しプロセスを行い、そしてポリビニルクロリド押し出し管を得る。上述した材料配合によれば、本発明の実施例で得られたポリビニルクロリド押し出し管は、低コストと機械的性質に優れた特性を兼ね備える。
【0038】
本発明の一実施例においては、前記ポリビニルクロリド樹脂材料(PVC)の第1の数平均重合度(DPn)は通常、1,000から1,800であり、1,100から1,700であることが好ましく、1,200から1,500であることが特に好ましい。なお、前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料(CPVC)の第2の数平均重合度(DPn)は通常、800から1,350であり、900から1,300であることが好ましく、1,000から1,200であることが特に好ましい。前記第1の数平均重合度は、通常第2の数平均重合度の2倍から1倍であり、1.3倍から1.1倍であることが好ましいが、本発明はこれに限らない。
【0039】
使用量の範囲については、前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料(CPVC)の使用量の範囲は、通常10重量部(PHR)から90重量部の間、好ましくは20重量部から80重量部の間、特に好ましくは30重量部から70重量部の間にある。
【0040】
本発明の一実施例においては、前記ポリビニルクロリド樹脂材料(PVC)は、高い塩素含有量を有するポリビニルクロリド樹脂であり、前記ポリビニルクロリド樹脂材料は、55%以上の塩素含有量を有する。なお、前記ポリビニルクロリド樹脂材料(PVC)及び塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料(CPVC)の総使用量を100重量部として、前記ポリビニルクロリド樹脂材料(PVC)の使用量は、通常塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料(CPVC)の使用量の9倍から1/9倍であり、6倍から1/5倍であることが好ましく、4倍から1/2倍であることが特に好ましいが、本発明はこれに限らない。
【0041】
前記熱安定剤の使用量の範囲は、通常1重量部(PHR)から5重量部であり、2重量部から4.5重量部であることが好ましく、2.5重量部から4重量部であることが特に好ましい。
【0042】
前記熱安定剤は、樹脂材料の熱安定性を向上するためのものである。前記熱安定剤の材料種類は、チオエステル系有機スズ(thioester organotin)、カルシウム亜鉛安定剤(calcium zinc stabilizer)、及びヒドロタルサイト系安定剤(hydrotalcite stabilizer)、からなる材料群から選択される少なくとも一つである。
【0043】
前記強靭化剤の使用量の範囲は、通常1重量部(PHR)から10重量部であり、2重量部から8重量部であることが好ましく、3重量部から7重量部であることが特に好ましい。
【0044】
前記強靭化剤は、樹脂材料の靭性を高めるためのものである。前記強靭化剤の材料種類は、塩素化ポリエチレン(chlorinated polyethylene、CPE)、アクリルエラストマー(acrylic elastomer、ACR)、ポリエチレン-酢酸ビニルエラストマー(polyethylene-vinyl acetate elastomer、EVA)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレンエラストマー(methyl methacrylate-butadiene-styrene elastomer、MBS)、アクリレート-ブタジエン-スチレンエラストマー(acrylate-butadiene-styrene elastomer、ABS)、スチレン-ブタジエン-スチレンエラストマー(styrene-butadiene-styrene elastomer、SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンエラストマー(styrene-isoprene- styrene elastomer、SIS)、スチレン-エチレン/ブテン-スチレンエラストマー(styrene-ethylene/butene-styrene elastomer、SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンエラストマー(styrene-ethylene/propylene-styrene elastomer、SEPS)、アクリレート-ブタジエンゴム(acrylate-butadiene rubber、NBR)、ポリメチルメタクリレート(poly-methyl-methacrylate、PMMA)、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(ethylene propylene diene monomer、EPDM)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(thermoplastic polyurea elastomer、TPU)、ポリエンエラストマー(polyene elastomer、TPO)、及び熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer、TPE)、からなる材料群から選択される少なくとも一つである。
【0045】
前記滑剤の使用量の範囲は、通常1重量部(PHR)から3重量部であり、1.2重量部から2.5重量部であることが好ましく、1.6重量部から2.4重量部であることが特に好ましい。
【0046】
前記滑剤は、樹脂材料の相溶性を高めるためのものである。前記滑剤の材料種類は、ポリエチレンワックス(polyethylene wax)、酸化ポリエチレンワックス(oxidized polyethylene wax)、脂肪酸系滑剤(fatty acid slip agent)、脂肪酸アミド系滑剤(fatty acid amide slip agent)、金属石鹸系滑剤(metal soap slip agent)、及び有機シリコーン系滑剤(organic silicon slip agent)、からなる材料群から選択される少なくとも一つである。
【0047】
前記酸化防止剤の使用量の範囲は、通常0.1重量部(PHR)から2重量部であり、0.3重量部から1.8重量部であることが好ましく、0.5重量部から1.5重量部であることが特に好ましい。
【0048】
前記酸化防止剤は、樹脂材料の酸化防止性を高めるためのものである。前記酸化防止剤の材料種類は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(hindered phenolic antioxidant)及び亜リン酸エステル系酸化防止剤(phosphite-based antioxidant)、からなる材料群から選択される少なくとも一つである。
【0049】
[ポリビニルクロリド押し出し管の製造方法]
【0050】
以上、本発明の実施例に係るポリビニルクロリド押し出し管の組成物について説明したが、以下、本発明の実施例をもとに、ポリビニルクロリド押し出し管の製造方法について説明する。
【0051】
本発明の実施形態において、工程S110から工程S130を含むポリビニルクロリド押し出し管の製造方法も提供する。本実施形態に記載の各工程の順番及び実際の操作方法は必要に応じて調整することができ、本実施例の記載に限らないことをまず説明しておく。
【0052】
前記工程S110は、上述したポリビニルクロリド押し出し管の組成物を加熱攪拌ミキサーに加え、100℃から120℃の加熱温度で500RPM~1500RPMで高速攪拌して混合し、第1の混合物を形成することを含む。
【0053】
前記工程S120は、前記第1の混合物を冷却攪拌ミキサーに加えて攪拌を続き、35℃から50℃の冷却温度まで降温させて冷却し、第2の混合物を形成することを含む。
【0054】
前記工程S130は、前記第2の混合物を、押出成型機により、170℃から200℃の溶融温度で溶融し、次に前記第2の混合物を、押し出し、成型、及び冷却のプロセスを行い、ポリビニルクロリド押し出し管を得ることを含む。前記ポリビニルクロリド押し出し管は、低い難燃剤添加量、高い難燃能力、及び低い発煙量を有する。なお、前記ポリビニルクロリド押し出し管は、低コスト及び優れた機械的性質などの利点を有する。
【0055】
[実験データ測定]
【0056】
以下、実施例1から4、及び比較例1から2を参照して本発明の内容を詳細に説明する。しかし、以下の実施例はただ、本発明を理解するためのものであり、本発明の範囲は、これらの例示に限らない。ただし、以下の各成分でいう「部」とは「重量部」のことであり、実際には単位のグラム(g)を用いたが、本発明はこれに限らない。
【0057】
実施例1:ポリビニルクロリド押し出し管の組成物は、PVC樹脂90部、CPVC樹脂10部、熱安定剤2.5部、ACR強靭化剤5部、変性メラミンリン酸塩系難燃剤5部、酸化ポリエチレンワックス1.5部及び酸化防止剤(I-1010)0.5部を含んだ。上述した各成分を質量部で配合した後、高速加熱ミキサーに入れて分散させ、攪拌し、攪拌温度を110℃に設定した。その後、冷却ミキサーに排出して攪拌冷却を行い、温度を40℃まで低下させた後、ホッパーに排出し、二軸押し出し機で、押し出し、成型、及び冷却のプロセスを行い、ポリビニルクロリド押し出し管が得た。そのうち、二軸押し出し機のバレルの温度は、それぞれ185℃、170℃に設定され、モールド成形温度は、それぞれ175℃、190℃に設定された。
【0058】
実施例2:ポリビニルクロリド押し出し管の組成物は、PVC樹脂90部、CPVC樹脂10部、熱安定剤2.5部、ACR強靭化剤5部、無水スズ酸亜鉛1部(炭素形成剤)、酸化ポリエチレンワックス1.5部及び酸化防止剤(I-1010)0.5部を含んだ。上述した各成分を質量部で配合した後、高速加熱ミキサーに入れて分散させ、攪拌し、攪拌温度を110℃に設定した。その後、冷却ミキサーに排出して攪拌冷却を行い、温度を40℃まで低下させた後、ホッパーに排出し、二軸押し出し機で、押し出し、成型、及び冷却のプロセスを行い、ポリビニルクロリド押し出し管が得た。そのうち、二軸押し出し機のバレルの温度は、それぞれ185℃、170℃に設定され、モールド成形温度は、それぞれ175℃、190℃に設定された。
【0059】
実施例3:ポリビニルクロリド押し出し管の組成物は、PVC樹脂70部、CPVC樹脂30部、熱安定剤2.5部、ACR強靭化剤5部、変性メラミンリン酸塩系難燃剤1部、無水スズ酸亜鉛(炭素形成剤)2部、酸化ポリエチレンワックス1.5部及び酸化防止剤(I-1010)0.5部を含んだ。上述した各成分を質量部で配合した後、高速加熱ミキサーに入れて分散させ、攪拌し、攪拌温度を110℃に設定した。その後、冷却ミキサーに排出して攪拌冷却を行い、温度を40℃まで低下させた後、ホッパーに排出し、二軸押し出し機で、押し出し、成型、及び冷却のプロセスを行い、ポリビニルクロリド押し出し管が得られた。そのうち、二軸押し出し機のバレルの温度は、それぞれ185℃、170℃に設定され、モールド成形温度は、それぞれ175℃、190℃に設定された。
【0060】
実施例4:ポリビニルクロリド押し出し管の組成物は、PVC樹脂70部、CPVC樹脂30部、熱安定剤2.5部、ACR強靭化剤5部、変性メラミンリン酸塩系難燃剤1部、無水スズ酸亜鉛(炭素形成剤)0.5部、酸化ポリエチレンワックス1.5部及び酸化防止剤(I-1010)0.5部を含んだ。上述した各成分を質量部で配合した後、高速加熱ミキサーに入れて分散させ、攪拌し、攪拌温度を110℃に設定した。その後、冷却ミキサーに排出して攪拌冷却を行い、温度を40℃まで低下させた後、ホッパーに排出し、二軸押し出し機で、押し出し、成型、及び冷却のプロセスを行い、ポリビニルクロリド押し出し管が得た。そのうち、二軸押し出し機のバレルの温度は、それぞれ185℃、170℃に設定され、モールド成形温度は、それぞれ175℃、190℃に設定された。(実施例4は、本発明の最適な実施例である。)
【0061】
比較例1:ポリビニルクロリド押し出し管の組成物は、PVC樹脂100部、熱安定剤2.5部、酸化ポリエチレンワックス1.5部及び酸化防止剤(I-1010)0.5部を含んだ。上述した各成分を質量部で配合した後、高速加熱ミキサーに入れて分散させ、攪拌し、攪拌温度を110℃に設定した。その後、冷却ミキサーに排出して攪拌冷却を行い、温度を40℃まで低下させた後、ホッパーに排出し、二軸押し出し機で、押し出し、成型、及び冷却のプロセスを行い、ポリビニルクロリド押し出し管が得られた。そのうち、二軸押し出し機のバレルの温度は、それぞれ185℃、170℃に設定され、モールド成形温度は、それぞれ175℃、190℃に設定された。
【0062】
比較例2:ポリビニルクロリド押し出し管の組成物は、PVC樹脂70部、熱安定剤2.5部、ACR強靭化剤5部、酸化ポリエチレンワックス1.5部及び酸化防止剤(I-1010)0.5部を含んだ。上述した各成分を質量部で配合した後、高速加熱ミキサーに入れて分散させ、攪拌し、攪拌温度を110℃に設定した。その後、冷却ミキサーに排出して攪拌冷却を行い、温度を40℃まで低下させた後、ホッパーに排出し、二軸押し出し機で、押し出し、成型、及び冷却のプロセスを行い、ポリビニルクロリド押し出し管が得られた。そのうち、二軸押し出し機のバレルの温度は、それぞれ185℃、170℃に設定され、モールド成形温度は、それぞれ175℃、190℃に設定された。
【0063】
そのうち、各成分のプロセスパラメータ条件を以下の表1にまとめた。
【0064】
次に、実施例1から4、及び比較例1から2で得たポリビニルクロリド押し出し管について、物理的化学的特性の測定を行い、例えば、難燃レベル、火炎伝播指数、発煙係数、引張強度、耐衝撃度などのような、これらポリビニルクロリド押し出し管の物理的化学的特性を測定した。それぞれの測定方法は以下のように説明し、それぞれの測定結果を表1にまとめた。
【0065】
難燃レベル:米国防火試験規格ASTM E84建築材料の表面燃焼特性の標準試験方法に従って測定を行い、防火クラスA、クラスB及びクラスCの規格に分けた。
【0066】
火炎伝播速度、発煙係数:火炎伝播とは、材料表面における火炎の発展と言い、火災の時に可燃物に近づいて火が広がる影響に関連する。火炎伝播性能は通常、トンネル法や放射パネル法で測定した。この方法は、建築材料の火炎伝播速度の測定(同時に煙霧の濃度の測定)に用いられ、材料の火炎伝播指数FSI値が小さければ小さいほど、火災危険性が小さくなる。高層建築物や廊下には、FSI<25の材料が採用されるべきであり、25<FSI<100の材料は、防火要求がそんなに厳しくない場所にしか採用され、FSI>100の材料は、難燃の要求を満たしていない。
【0067】
引張強度:ASTM D638規格に従ってプラスチック材料の引張り試験を行い、プラスチックの引張強度が得た。
【0068】
耐衝撃度:ASTM D256に従って行われたIzodノッチ曲げ衝撃測定では、厚みに関するエネルギー値として衝撃強度及び高歪率におけるノッチ感受性の特徴値を生成した。測定は通常23°/50%という相対湿度である正常な雰囲気で行い、プラスチックの衝撃強度及びノッチ衝撃強度の測定に用いた。
【0069】
【0070】
[測定結果検討]
【0071】
実施例においては、実施例1~4、比較例2と比較例1とを比べると、比較例1では強靭化剤を添加せずにその耐衝撃強度が著しく低かったのに対して、実施例1では難燃剤の添加量が5部と高かったためやや低下しており、実施例2~4では衝撃強度が変化していなかった。実施例1では変性メラミンリン酸塩系難燃剤のみ添加した場合に防火クラスがクラスCだけであった。実施例2では炭素形成剤のみ添加した場合に難燃効果が劣った。実施例3では変性メラミンリン酸塩系難燃剤及び炭素形成剤を同時に添加したが、炭素形成剤が過剰となったため、変性メラミンリン酸塩系難燃剤を促進する炭素形成性が劣り、防火クラスがクラスBだけであった。実施例4では変性メラミンリン酸塩系難燃剤と炭素形成剤との割合が好適であるため、変性メラミンリン酸塩系難燃剤を促進する炭素形成効果が良好であり、その防火クラスがクラスAに達しており、実施例4が本発明の最適な実施例であった。
【0072】
[実施例の有益な効果]
【0073】
本発明の有益な効果としては、本発明で提供されるポリビニルクロリド押し出し管の組成物及びポリビニルクロリド押し出し管の製造方法は、「使用量が0.5重量部から2.0重量部の間にあり、変性剤で修飾されたリン含有難燃剤である難燃添加剤と、使用量が0.2重量部から1.0重量部の間にあり、塩化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシスズ酸亜鉛、無水スズ酸亜鉛、リン酸亜鉛、及びリン酸ジルコニウム、からなる材料群から選択される少なくとも1つである炭素形成剤とを含み、前記難燃添加剤及び前記炭素形成剤は、前記組成物における総添加量として3重量部以下である」という技術的方案により、前記ポリビニルクロリド押し出し管が低い難燃剤添加量、高い難燃能力、及び低い発煙量を有するようにできる。なお、前記ポリビニルクロリド押し出し管は、低コスト及び優れた機械的性質などの利点を有する。
【0074】
以上に開示された内容は、本発明の実施可能な好ましい実施例に過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の明細書を用いてなされた均等な技術的変更は全て本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用量が10重量部(PHR)から90重量部の間にあり、第1の数平均重合度(DPn)が1,100から1,800の間にあるポリビニルクロリド樹脂材料と、
第2の数平均重合度(DPn)が900から1,350の間にある塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料と、
使用量が0.5重量部から2.0重量部の間にあり、酸化亜鉛(zinc oxide)からなる変性剤で修飾されたメラミンリン酸塩系難燃剤(melamine phosphate flame retardant)である難燃添加剤と、
使用量が0.2重量部から1.0重量部の間にあり、塩化亜鉛(zinc chloride)、ステアリン酸亜鉛(zinc stearate)、ステアリン酸カルシウム(calcium stearate)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(hydroxide zinc stannate)、無水スズ酸亜鉛(anhydrous zinc stannate)、リン酸亜鉛(zinc phosphate)、及びリン酸ジルコニウム(zirconium phosphate)、からなる材料群から選択される少なくとも1つである炭素形成剤と、を含む高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の組成物であって、
前記難燃添加剤及び前記炭素形成剤の、前記高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の組成物での総添加量は3重量部以下であり、
前記ポリビニルクロリド樹脂材料及び塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料の総使用量を100重量部であることを特徴とする、高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項2】
前記難燃添加剤の使用量は、前記炭素形成剤の使用量の10倍から0.5倍の間にある、請求項1に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項3】
前記ポリビニルクロリド樹脂材料は、高い塩素含有量を有するポリビニルクロリド樹脂であり、前記ポリビニルクロリド樹脂材料は、55%以上の塩素含有量を有し、前記ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量は、前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量の9倍から1/9倍の間にある、請求項1に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項4】
熱安定剤、強靭化剤、滑剤、及び酸化防止剤を更に含む、請求項1に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項5】
前記熱安定剤の使用量の範囲は、1重量部から5重量部の間にあり、前記強靭化剤の使用量の範囲は、1重量部から10重量部の間にあり、前記滑剤の使用量の範囲は、1重量部から3重量部の間にあり、前記酸化防止剤の使用量の範囲は、0.1重量部から2重量部の間にある、請求項4に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項6】
前記塩素化ポリビニルクロリド樹脂材料の使用量が、10重量部(PHR)から90重量部の間である、請求項1に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のポリビニルクロリド押し出し管の組成物を加熱攪拌ミキサーに加え、100℃から120℃の加熱温度で高速攪拌して混合させることにより、第1の混合物を形成することと、
前記第1の混合物の温度を35℃から50℃の冷却温度に低下させて冷却することにより、第2の混合物を形成することと、
前記第2の混合物を押出成型機により、170℃から200℃の溶融温度で溶融してから、押し出し、成型、冷却を経てポリビニルクロリド押し出し管を得ることと、
を含む高難燃低発煙ポリビニルクロリド押し出し管の製造方法。