(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055727
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物、押出シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 27/24 20060101AFI20240411BHJP
C08L 51/08 20060101ALI20240411BHJP
C08L 51/06 20060101ALI20240411BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20240411BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20240411BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240411BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20240411BHJP
C08K 5/524 20060101ALI20240411BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20240411BHJP
B29C 48/285 20190101ALI20240411BHJP
B29C 48/79 20190101ALI20240411BHJP
B29C 48/80 20190101ALI20240411BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20240411BHJP
B29C 48/25 20190101ALI20240411BHJP
B29C 48/305 20190101ALI20240411BHJP
【FI】
C08L27/24
C08L51/08
C08L51/06
C08L25/12
C08L91/06
C08L63/00
C08K5/13
C08K5/524
B29C48/08
B29C48/285
B29C48/79
B29C48/80
B29C48/88
B29C48/25
B29C48/305
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210468
(22)【出願日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】111138131
(32)【優先日】2022-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】許 漢▲卿▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 春來
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 文義
【テーマコード(参考)】
4F207
4J002
【Fターム(参考)】
4F207AA15
4F207AG01
4F207AR06
4F207AR09
4F207KA01
4F207KA17
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4F207KW23
4J002AE035
4J002BC064
4J002BD181
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4J002BN163
4J002BN172
4J002CD205
4J002EJ026
4J002EW066
4J002FD076
4J002FD097
4J002GB00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明は、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂及び可塑化加工助剤を含む塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物を開示する。
【解決手段】塩素化ポリ塩化ビニル樹脂は、使用量が80重量部~120重量部であり、重合度が500~1100であり、塩素の含有量が60%~75%である。可塑化加工助剤は、塩化エチレングラフトコポリマーとアクリレート系化合物とを含む。塩化エチレングラフトコポリマーがグラフトする官能基は、ポリエステル系及びエチレン-酢酸ビニル系の少なくとも一つである。塩化エチレングラフトコポリマーの使用量をA重量部とし、アクリレート系化合物の使用量をB重量部とすると、可塑化加工助剤の使用量は、(i)A+Bが5重量部以下であり、(ii)A/(A+B)が80%以上であり、及び(iii)B/(A+B)が20%以下であるという条件を満たす。本発明は、さらに押出シート及びその製造方法を開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用量が80重量部~120重量部であり、重合度が400~1100であり、塩素の含有量が60%~75%である塩素化ポリ塩化ビニル樹脂と
グラフトする官能基がポリエステル系及びエチレン-酢酸ビニル系からなる材料群から選ばれた少なくとも一つである塩化エチレングラフトコポリマーと、アクリレート系化合物とを含む可塑化加工助剤と、
を含み、
ここで、前記塩化エチレングラフトコポリマーの使用量をA重量部とし、前記アクリレート系化合物の使用量をB重量部とすると、前記可塑化加工助剤の使用量は、(i)A+Bが5重量部以下であり、(ii)A/(A+B)が80%以上であり、及び(iii)B/(A+B)が20%以下であるという条件を満たし、
前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、170℃~200℃の温度で50秒間から100秒間の間の可塑化速率を有する
塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、メタクリル酸メチル-ブタンジエン-スチレンエラストマーである透明強化剤0.5重量部~20重量部を含む
請求項1に記載の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、115℃から130℃の間の熱たわみ温度を有するα-メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体である耐熱性向上剤0.5重量部~30重量部を含む、
請求項1に記載の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、有機スズチオエステル、カルシウム亜鉛安定剤、及びタルク系安定剤からなる材料群から選ばれた少なくとも一つである熱安定剤0.5重量部~10重量部を含む、
請求項1に記載の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、エポキシ化大豆油である補助熱安定剤0.1重量部~3重量部を含む
請求項1に記載の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、亜炭ワックス、複合エステルワックス、ポリエチレンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスからなる材料群から選ばれた少なくとも一つである潤滑油0.1重量部~1重量部を含む
請求項1に記載の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤及び亜リン酸エステル系の酸化防止剤からなる材料群から選ばれた少なくとも一つである酸化防止剤0.1重量部~3重量部を含む
請求項1に記載の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、群青色顔料及び紫色顔料からなる材料群から選ばれた少なくとも一つである顔料0.0001重量部~0.05重量部を含む
請求項1に記載の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成された押出シート。
【請求項10】
押出シートの製造方法であって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物を加熱撹拌混合機に入れること、
前記塩化エチレン樹脂組成物を300RPMから1800RPMの間の撹拌回転数及び100℃から120℃の間の加熱温度で混合すること、
混合した前記塩化エチレン樹脂組成物を冷却撹拌混合機に入り、35℃から50℃の間の冷却温度まで冷却すること、及び
冷却した前記塩化エチレン樹脂組成物を押出機に入り、170℃から200℃の間の溶融温度で混合溶融し、押出、成形、冷却、切断を順次行って押出シートを得ること
を含む押出シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関し、特に塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩素化ポリ塩化ビニル(chlorinated polyvinyl chloride、CPVC)は、ポリ塩化ビニル樹脂を塩素化して製造された熱可塑性プラスチックである。塩素化ポリ塩化ビニルは、通常なポリ塩化ビニルよりも耐熱性、耐食性、及び難燃性に優れている。なお、塩素化ポリ塩化ビニルは、高い機械的強度、柔軟性、及び絶縁性を有し、汚染がなく、老化しにくく、軽量で、建設が便利であるなどの利点がある。
【0003】
ポリ塩化ビニル樹脂で作製される透明製品は、電気分野、自動車分野、医療分野、及び半導体分野で広く使用されている。しかしながら、市販されている塩素化ポリ塩化ビニルの押出シートの多くは、透明性がないか、透明性が低いため、透明性を必要とする機器には使用できないなどの適用上の制約が多くある。
【0004】
中国特許公開CN101421347Bは、耐熱性及び光透過性を有する塩素化ポリ塩化ビニル樹脂及びその製造方法が開示されている。該特許では、主な材料としてポリフェニルサルフォン(polyphenyl sulfone、PPSU)及びポリエチレンテレフタラート(polyethylene terephthalate、PET)を使用し、カップリング剤及び促進剤を添加することにより、ポリフェニルサルフォン(PPSU)とポリエチレンテレフタラート(PET)が互いに架橋されることで、調製された樹脂組成物は、より優れた機械的強度及び透明度を実現することができる。
【0005】
中国特許公開CN105295271Bは、耐熱性及び光透過性を有する塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物が開示されている。該特許では、複数種の助剤を塩素化ポリ塩化ビニル樹脂に配合し、特に過塩素酸塩の透明性改質剤によって塩素化ポリ塩化ビニルの鎖内での錯体形成及び電子雲の分布が変更されるため、調製された塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、80%以上の光透過率及び110℃以上のビカット軟化温度を有することができる。
【0006】
国際特許公開WO2007121046A1は、耐熱性及び光透過性を有する塩素化ポリ塩化ビニル樹脂及びその製造方法が開示されている。該特許では、異なる生産元からのCPVC粉末を比較した。その中で、Sekisui America Corporation (SAC)のCPVC粉末(HA-17F)を使用することにより、57.2%の透明度及び12.7%のヘイズを有することができる。
【0007】
前記特許技術は、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂に耐熱性及び光透過性をもたせることができるが、これらの特許技術は、いずれもプロセスが複雑で、処方の安定性が低く、透明度が不十分であるなどの問題がある。
【0008】
従って、本発明者は、前記欠陥を改善するために、科学的原理の研究と応用に専念し、最終的に合理的な設計で前記欠陥を効果的に改善する本発明を提出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許公開CN101421347B号公報
【特許文献2】中国特許公開CN105295271B号公報
【特許文献3】国際特許公開WO2007121046A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする技術的課題は、先行技術の欠点を考慮して塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物、押出シート及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記技術的問題を解決するために、本発明で使用されている技術的方案は、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物を提供することである。前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、使用量が80重量部~120重量部であり、重合度が400~1100であり、塩素の含有量が60%~75%である塩素化ポリ塩化ビニル樹脂と、塩化エチレングラフトコポリマー及びアクリレート系化合物とを含む可塑化加工助剤を含み、前記塩化エチレングラフトコポリマーがグラフトする官能基は、ポリエステル系及びエチレン-酢酸ビニル系からなる材料群から選ばれた少なくとも一つであり、前記塩化エチレングラフトコポリマーの使用量をA重量部とし、前記アクリレート系化合物の使用量をB重量部とすると、前記可塑化加工助剤の使用量は、(i)A+Bが5重量部以下であり、(ii)A/(A+B)が80%以上であり、及び(iii)B/(A+B)が20%以下であるという条件を満たし、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、170℃~200℃の温度で50秒間から100秒間の間の可塑化速率を有する。
【0012】
前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、さらにメタクリル酸メチル-ブタンジエン-スチレンエラストマーである透明強化剤0.5重量部~20重量部を含むことが好ましい。
【0013】
前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、さらに115℃から130℃の間の熱たわみ温度を有するα-メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体である耐熱性向上剤0.5重量部~30重量部を含むことが好ましい。
【0014】
前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、さらに有機スズチオエステル、カルシウム亜鉛安定剤、及びタルク系安定剤からなる材料群から選ばれた少なくとも一つである熱安定剤0.5重量部~10重量部を含むことが好ましい。
【0015】
前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、さらにエポキシ化大豆油である補助熱安定剤0.1重量部~3重量部を含むことが好ましい。
【0016】
前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、さらに亜炭ワックス、複合エステルワックス、ポリエチレンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスからなる材料群から選ばれた少なくとも一つである潤滑油0.1重量部~1重量部を含むことが好ましい。
【0017】
前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、さらにヒンダードフェノール系の酸化防止剤及び亜リン酸エステル系の酸化防止剤からなる材料群から選ばれた少なくとも一つである酸化防止剤0.1重量部~3重量部を含むことが好ましい。
【0018】
前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、さらに群青色顔料及び紫色顔料からなる材料群から選ばれた少なくとも一つである顔料0.0001重量部~0.05重量部を含むことが好ましい。
【0019】
前記技術的問題を解決するために、本発明で使用されるもう一つの技術的方案は、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物で形成された押出シートを提供する。
【0020】
前記技術的問題を解決するために、本発明で使用されるもう一つの技術的方案は、押出シートの製造方法を提供することである。前記押出シートの製造方法は、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物を加熱撹拌混合機に入ること、前記塩化エチレン樹脂組成物を300RPMから1800RPMの間の撹拌回転数及び100℃から120℃の間の加熱温度で混合すること、混合した前記塩化エチレン樹脂組成物を冷却撹拌混合機に入り、35℃から50℃の間の冷却温度まで冷却すること、及び冷却した前記塩化エチレン樹脂組成物を押出機に入り、170℃~200℃の間の溶融温度で混合溶融し、押出、成形、冷却、切断を順次行って押出シートを得ることを含むものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有益な効果の一つについて、本発明で提供される塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物、押出シート及びその製造方法は、「使用量が80重量部~120重量部であり、重合度が400~1100であり、塩素の含有量が60%~75%である塩素化ポリ塩化ビニル樹脂」、「塩化エチレングラフトコポリマーとアクリレート系化合物とを含み、前記塩化エチレングラフトコポリマーがグラフトする官能基は、ポリエステル系及びエチレン-酢酸ビニル系からなる材料群から選ばれた少なくとも一つである可塑化加工助剤」、及び「前記塩化エチレングラフトコポリマーの使用量をA重量部とし、前記アクリレート系化合物の使用量をB重量部とすると、前記可塑化加工助剤の使用量は、(i)A+Bが5重量部以下であり、(ii)A/(A+B)が80%以上であり、及び(iii)B/(A+B)が20%以下であるという条件を満たし、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、170℃~200℃の温度で50秒間から100秒間の間の可塑化速率を有する」という技術的方案によって、CPVC押出シートは、高い耐熱性、高い靭性、高い透明性、低いヘイズ、及び優れた加工成形性を有することができる。なお、前記CPVC押出シートは、プロセスが簡単で、処方の安定性が良いという利点を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施例による押出シートの製造方法の概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の特徴と技術的内容をさらに理解するために、以下の本発明の詳細な説明と図面を参照するが、提供された図面は参照と説明のみを目的としており、本発明を限定するものではない。
【0024】
以下は、本発明で開示された実施形態を説明するための具体的な実施例であり、当業者は、本明細書で開示された内容から本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる特定の実施例を通じて実施または適用することができ、本明細書の様々な詳細は、本発明の概念から逸脱することなく、異なる観点および用途に基づいて修正および変更することもできる。また、本発明の図面は、模式的なもので、実際の大きさで描かれていないことが予め記載される。以下の実施例は、本発明の関連する技術的内容をさらに詳細に説明するが、開示された内容は、本発明の保護範囲を限定することを意図するものではない。
【0025】
本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」などの用語を使用してさまざまな素子又は信号を説明することがあるが、これらの素子又は信号はこれらの用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、主にある素子を別の素子から、または信号を別の信号から区別するために使用される。さらに、本明細書で使用される「又は」という用語は、場合に応じて、関連する列挙項目のいずれかまたは複数項目の組み合わせを含むべきである。
【0026】
[塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物]
【0027】
本発明の実施例は、押出プロセスによる押出シートの成形に適すると共に、高い透明性と耐熱性を有する塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物(chlorinated polyvinyl chloride resin composition)を提供する。
【0028】
前記目的を達成するために、本発明の実施例の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、少なくとも塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(chlorinated polyvinyl chloride resin、CPVC resin)と可塑化加工助剤(plasticizing processing aids)とを含む。
【0029】
前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂の使用量は、80重量部~120重量部であり、好ましくは90重量部~110重量部である。前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂の重合度(degree of polymerization、DP)は、400から1100の間であり、好ましくは500から1000の間である。前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂の塩素(chlorine content)の含有量は、60%から75%の間であり、好ましくは65%から70%の間である。なお、本出願で言及される「重合度」は、重合物の分子の大きさの尺度である。繰り返し単位の数、すなわち重合物高分子鎖に含まれる平均繰り返し単位数に基づいて、平均重合度とも呼ばれる。また、本出願で言及される「塩素の含有量」は、その単位が重量%であり、JIS K 7229に記載の方法により測定することができる。
【0030】
前記可塑化加工助剤は、塩化エチレングラフトコポリマー(vinyl chloride graft copolymer)と任意に添加されるアクリレート系化合物(acrylics、ACR)とを含む。
【0031】
ここで、前記塩化エチレングラフトコポリマーがグラフトする官能基は、ポリエステル系(polyol ester)及びエチレン-酢酸ビニル系(ethylene vinyl acetate)からなる材料群から選ばれる少なくとも一つである。ここで、前記塩化エチレングラフトコポリマーの使用量をA重量部とし、前記アクリレート系化合物の使用量をB重量部とする。
【0032】
本実施例において、前記可塑化加工助剤の使用量は、以下の条件を満たす。
【0033】
(i)A+Bは、5重量部以下であり、好ましくは0.5重量部から5重量部の間であり、特に好ましくは0.5重量部から4.5重量部の間である。
【0034】
(ii)A/(A+B)は、80%以上であり、好ましくは85%以上である。
【0035】
(iii)B/(A+B)は、20%以下であり、好ましくは15%以下である。
【0036】
なお、本発明の実施例の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、170℃~200℃の温度条件下で50秒間から100秒間の間の可塑化速率を有し、好ましくは60秒間から80秒の間である。
【0037】
なお、組成物に関する特許は、「重量部」と「重量百分率(wt%)」という2つの用語で表現されることがある。組成物の「部数表示法」は、成分間の比例関係を反映するため、「部数表示法」には、「百分率表示法」で満たさなければならない2つの「上限と下限の要件の式」と「実施例の百分率の合計が100である」という2つの制限がない。前記2つの「上限と下限の要件の式」は、単一成分の含有量の上限と他の組分の含有量の下限を足したものが<=100%であり、単一成分の含有量の下限と他の組分の含有量の上限を足したものが>=100%である必要がある。重量部を百分率に換算すると、百分率基準、つまり合計基準があることを意味し、上限と下限のルールに従う必要がある。換算法として、例えば、50重量部のAと20重量部のBを含む組成物を換算すると、50/(50+20)重量%のAと20/(50+20)重量%のBを含む組成となる。
【0038】
前記構成によれば、本発明の実施例の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、塩化エチレングラフトコポリマーを主要な可塑化加工助剤として使用し、前記塩化エチレングラフトコポリマーと塩素化ポリ塩化ビニル樹脂は、良好な適合性を有し、良好な低温での可塑化能を提供することができる。前記塩化エチレングラフトコポリマーは、従来の可塑化加工助剤(ACR)を置き換えるか、その使用量を効果的に減らすことができる。なお、本発明の実施例の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、可塑剤を添加することなく、低温で迅速な可塑化を達成することができ、高温での塩素化ポリ塩化ビニル樹脂の分解黄変という問題を解決することができるため、材料の透明度を高め、材料の色相を改善し、材料のヘイズを低下する。
【0039】
より具体的には、前記塩化エチレングラフトコポリマーは、その塩化エチレン化学構造と塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPCV)との良好な適合性、グラフトの官能基(例えば、ポリエステル系またはエチレン-酢酸ビニル系)により、良好な低温での可塑化能を提供する。可塑化能の観点から、良好な低温での可塑化能を提供するには、グラフトされる官能基がポリエステル系又はエチレン-酢酸ビニル系でなければならない。他の種類の官能基がグラフトされると、塩化エチレングラフトコポリマーは、良好な低温での可塑化能を提供できない可能性があり、さらに透明度の改善などの本願の技術的目的を達成することができない。つまり、本発明の実施例における塩化エチレングラフトコポリマーがグラフトする官能基は、特別に考慮されたものである。
【0040】
さらに、本発明の実施例の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、塩化エチレングラフトコポリマーにより外部潤滑油の効果を生じさせることができるため、外部潤滑油の使用量が低下するとともに、透明度の向上、ヘイズの低下、及び優れた加工成形性を達成する。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態において、前記塩化エチレングラフトコポリマーと塩素化ポリ塩化ビニル樹脂との適合性を向上させ、良好な低温での可塑化速率を提供するために、前記塩化エチレングラフトコポリマーの塩化エチレンは、含有量が65~85wt%であり、ビニル官能基のグラフト率が10~15wt%であり、ポリエステル官能基のグラフト率が5~15wt%であるが、本発明はこれに限定されない。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態において、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、さらに透明強化剤(transparent toughening agent)を含み得る。
【0043】
前記透明強化剤の使用量は、0.5重量部から20重量部の間であり、好ましくは1重量部から10重量部の間である。
【0044】
前記透明強化剤としては、例えば、メタクリル酸メチル-ブタンジエン-スチレンエラストマー(Methyl methacrylate-Butadiene-Styrene、MBS)が挙げられ、本発明はこれに限定されない。
【0045】
本発明の実施例は、塩化エチレングラフトコポリマーと塩素化ポリ塩化ビニル樹脂及び透明強化剤との良い適合性により、良好な相乗的耐衝撃性を提供し、耐衝撃剤の添加量を効果的に低減することができ、耐衝撃性を維持し、熱たわみ温度を上げることができ、コストを低減することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態において、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、さらに耐熱性向上剤(heat resistant enhancer)を含み得る。
【0047】
前記耐熱性向上剤の使用量は、0.5重量部から30重量部の間であり、好ましくは1重量部から20重量部の間である。
【0048】
前記耐熱性向上剤としては、例えば、α-メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体(alpha-methyl styrene acrylonitrile copolymer)が挙げられ、本発明はこれに限定されない。
【0049】
本発明の実施例で使用されるα-メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体は、熱たわみ温度が115℃から130℃の間であり、好ましくは120℃から125℃の間である。なお、前記α-メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体と塩素化ポリ塩化ビニル樹脂との良い適合性のため、押出されたシートは、高い透明度と高い熱たわみ温度を有することができる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態において、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、さらに熱安定剤(heat stabilizer)を含み得る。
【0051】
前記熱安定剤の使用量は、0.5重量部から10重量部の間であり、好ましくは1重量部から5重量部の間である。
【0052】
前記熱安定剤は、有機スズチオエステル(organotin thioesters)、カルシウム亜鉛安定剤(calcium/zinc stabilizer)、及びタルク系安定剤(talc stabilizer)からなる材料群から選ばれた少なくとも一つである。ここで、前記チオールエステル系の有機スズとしては、例えば、メチルスズメルカプチドが挙げられ、本発明はこれに限定されない。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態において、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、さらに補助熱安定剤(auxiliary heat stabilizer)を含み得る。
【0054】
前記補助熱安定剤の使用量は、0.1重量部から3重量部の間であり、好ましくは0.1重量部から1重量部の間である。
【0055】
前記補助熱安定剤としては、例えば、エポキシ化大豆油(epoxidized soybean oil、ESO)が挙げられ、本発明はこれに限定されない。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態において、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、さらに潤滑油(lubricant)を含み得る。
【0057】
前記潤滑油の使用量は、0.1重量部から1重量部の間であり、好ましくは0.1重量部から0.5重量部の間である。
【0058】
前記潤滑油は、亜炭ワックス(モンタンワックス(montan max)とも知られ)、複合エステルワックス(complex ester wax)、ポリエチレンワックス(polyethylene wax)、及び酸化ポリエチレンワックス(oxidized polyethylene wax、OPEワックス)からなる材料群から選ばれた少なくとも一つであり、本発明はこれに限定されない。
【0059】
前記潤滑油は、いずれも有機ワックス類に属し、潤滑性を提供し、透明性を維持することができることに注意すべきである。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態において、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、さらに酸化防止剤(antioxidant)を含み得る。
【0061】
前記酸化防止剤の使用量は、0.1重量部から3重量部の間であり、好ましくは0.1重量部から1重量部の間である。
【0062】
前記酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤(hindered phenolic antioxidant)及び亜リン酸エステル系の酸化防止剤(phosphite antioxidant)からなる材料群から選ばれた少なくとも一つであり、本発明はこれに限定されない。本発明の具体的な実施例では、I-1010ヒンダードフェノール系の酸化防止剤が用いられる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態において、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、さらに顔料(pigment)を含み得る。
【0064】
前記顔料の使用量は、0.0001重量部から0.05重量部の間であり、好ましくは0.0001重量部から0.01重量部の間である。
【0065】
前記顔料は、群青色顔料(ultramarine pigment)及び紫色顔料(purple pigment)からなる材料群から選ばれた少なくとも一つである。
【0066】
[押出シートの製造方法]
【0067】
前記実施例は、塩化エチレン樹脂組成物の材料特性の説明であり、以下では、本発明の実施例の押出シートの製造方法について説明する。
【0068】
本発明の実施例は、押出シートの製造方法を提供する。前記押出シートの製造方法は、工程S110、工程S120、工程S130、及び工程S140を含む。
【0069】
前記工程S110は、前記実施例の塩化エチレン樹脂組成物を比率に従って加熱撹拌混合機に添加することを含む。
【0070】
前記工程S120は、前記混合機中の塩化エチレン樹脂組成物を300RPMから1800RPMの間の撹拌回転数及び100℃から120℃の間の加熱温度で混合することを含む。
【0071】
前記工程S130は、混合した前記塩化エチレン樹脂組成物を冷却撹拌混合機に入り、35℃から50℃の間の冷却温度まで冷却することを含む。
【0072】
前記工程S140は、冷却した前記塩化エチレン樹脂組成物を押出機に入り、170℃から200℃の間の溶融温度で混合溶融し、押出、成形、冷却、切断を順次行ってCPVC押出シートを得ることを含む。
【0073】
前記構成によれば、前記CPVC押出シートは、高い耐熱性、高い靭性、高い透明性、低いヘイズ、及び優れた加工成形性を有することができる。なお、前記CPVC押出シートは、プロセスが簡単で、処方の安定性が良いという利点がある。
【実施例0074】
[実験データと試験結果]
【0075】
以下、実施例1~4及び比較例1~2を参照して本発明の内容を詳細に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を明白にさせるためにのみ提供されるものであり、本発明の範囲は以下の実施例に制限されない。
【0076】
実施例1:実施例1の配合に従って、低速撹拌状態で、塩素化ポリ塩化ビニル、熱安定剤、及び補助熱安定剤を添加し、加熱温度110℃で混合し、撹拌回転数を上げる状態で、エチレン/酢酸ビニル、MBS、α耐熱性向上剤、酸化防止剤、顔料を順次添加して均一に撹拌し、冷却撹拌混合機に排出し、35℃から50℃の間に冷却し、実施例1の塩化エチレン樹脂組成物を押出機に入り、170℃から200℃の間の溶融温度で混合溶融し、押出、成形、冷却、切断を順次行ってCPVC押出シートを得た。
【0077】
実施例2:実施例2の配合に従って、低速撹拌状態で、塩素化ポリ塩化ビニル、熱安定剤、及び補助熱安定剤を添加し、加熱温度110℃で混合し、撹拌回転数を上げる状態でエチレン/酢酸ビニル、MBS、α耐熱性向上剤、潤滑油、酸化防止剤、顔料を順次添加して均一に撹拌し、冷却撹拌混合機に排出し、40℃に冷却し、実施例2の塩化エチレン樹脂組成物を押出機に入り、170℃から200℃の間の溶融温度で混合溶融し、押出、成形、冷却、切断を順次行ってCPVC押出シートを得た。
【0078】
実施例3:実施例3の配合に従って、低速撹拌状態で、塩素化ポリ塩化ビニル、熱安定剤、及び補助熱安定剤を添加し、加熱温度110℃で混合し、撹拌回転数を上げる状態で塩化ビニリデン/ビニルバーサテート、MBS、α耐熱性向上剤、酸化防止剤、顔料を順次添加して均一に撹拌し、冷却撹拌混合機に排出し、35℃から50℃の間に冷却し、実施例3の塩化エチレン樹脂組成物を押出機に入り、170℃から200℃の間の溶融温度で混合溶融し、押出、成形、冷却、切断を順次行ってCPVC押出シートを得た。
【0079】
実施例4:実施例4の配合に従って、低速撹拌状態で塩素化ポリ塩化ビニル、熱安定剤、及び補助熱安定剤を添加し、加熱温度110℃で混合し、撹拌回転数を上げる状態で塩化ビニリデン/ビニルバーサテート、MBS、α耐熱性向上剤、潤滑油、酸化防止剤、顔料を順次添加して均一に撹拌し、冷却撹拌混合機に排出し、35℃から50℃の間に冷却し、実施例4の塩化エチレン樹脂組成物を押出機に入り、170℃から200℃の間の溶融温度で混合溶融し、押出、成形、冷却、切断を順次行ってCPVC押出シートを得た。
【0080】
比較例1:比較例1の配合に従って、低速撹拌状態で塩素化ポリ塩化ビニル、熱安定剤、及び補助熱安定剤を添加し、加熱温度110℃で混合し、撹拌回転数を上げる状態でMBS、潤滑油、酸化防止剤、顔料を順次添加して均一に撹拌し、冷却撹拌混合機に排出し、35℃から50℃の間に冷却し、比較例1の塩化エチレン樹脂組成物を押出機に入り、170℃から200℃の間の溶融温度で混合溶融し、押出、成形、冷却、切断を順次行ってCPVC押出シートを得た。
【0081】
比較例2:比較例2の配合に従って、低速撹拌状態で塩素化ポリ塩化ビニル、熱安定剤、及び補助熱安定剤を添加し、加熱温度110℃で混合し、撹拌回転数を上げる状態でアクリレート加工助剤、MBS、α耐熱性向上剤、潤滑油、酸化防止剤、顔料を順次添加して均一に撹拌し、冷却撹拌混合機に排出し、35℃から50℃の間に冷却し、比較例2の塩化エチレン樹脂組成物を押出機に入り、170℃から200℃の間の溶融温度で混合溶融し、押出、成形、冷却、切断を順次行ってCPVC押出シートを得た。
【0082】
ここで、各成分のプロセスパラメーター条件は、下記の表1にまとめた。
【0083】
次に、実施例1~4及び比較例1~2で製造された塩素化ポリ塩化ビニル押出シートの物理的及び化学的特性を試験し、耐熱性温度(℃)、靭性(Kgf-cm/cm2)、透明度(%)、ヘイズ(%)、可塑化速率などのこれらのポリ塩化ビニル押出管材の物理的及び化学的特性を得た。関わる試験方法は次の通りであり、関わる試験の結果は表1にまとめた。
【0084】
耐熱性温度:実施例1~4と比較例1とを比較すると、耐熱性向上剤を添加した処方では、ビカット温度を109℃まで効果的に上昇させることができる。耐熱性温度の試験方法は、熱たわみビカット温度試験機により試験することであり、GB/T1633「熱可塑性プラスチック軟化温度(VST)の測定」、GB8802「硬質ポリ塩化ビニル(PVC-U)管材及び継ぎ手のビカット軟化温度の測定方法」、及びASTM 1525規格に準拠し、ビカット温度(VST)を測定した。
【0085】
靭性:実施例1~4と比較例2とを比較すると、塩化エチレングラフトコポリマーがアクリレート系加工助剤を部分的に置き換える場合、靭性は、3.3Kgf-cm/cm2までわずかに増加することができる。靭性の試験方法は、ASTM D256規格に準拠し、ノッチ付き試験片のアイゾット衝撃強さ(IZOD)を耐衝撃試験機で試験することにより得ることである。
【0086】
透明度:実施例1、3と比較例1とを比較すると、潤滑油を過剰に添加する場合、透明度は低下する。実施例1、3と比較例2とを比較すると、ポリエチレングラフトコポリマーを添加することで、透明度を効果的に上昇させることができる。透明度の試験方法系は、全光線透過率(T.T)をASTM D1003及びISO 13468規格に準拠するヘイズ試験機で試験することであり、シートの全光線透過率(T.T)を透明度とする。
【0087】
ヘイズ:実施例1、3と比較例1とを比較すると、潤滑油を過剰に添加する場合、ヘイズは著しく増加する。ヘイズの試験方法は、ヘイズ値HAZE(拡散透過率と全光線透過率(T.T)との比)をASTM D1003及びISO 14782規格に準拠するヘイズ試験機)で試験することである。
【0088】
可塑化速率:実施例1、3と比較例2とを比較すると、ポリエチレングラフトコポリマー添加とアクリレート系加工剤無添加では、可塑化速率が同程度で、実施例1、3と比較例1とを比較すると、ポリエチレングラフトコポリマー添加とアクリレート系加工剤無添加では、可塑化速率が増加し、透明度の向上と生産速度の向上に寄与する。可塑化速率の試験方法は、トルクレオメータ(HAAKE PolyLab OS)により特定の温度(170℃~200℃)及び特定の回転数(45RPM~60RPM)でレオロジー試験を行い、処方の生産性を評価するための根拠として処方の可塑化時間と平衡トルクを検出する。
【0089】
【0090】
[試験結果の考察]
【0091】
実施例1~4では、従来のアクリレート系加工助剤に代えて塩化エチレングラフトコポリマーを添加することにより、可塑化速率の維持に加えて、強靭化、透明性の向上、ヘイズの低減、加工トルクの低減による設備負荷の低減、及び生産加工性の改善などの効果も有する。耐熱性向上剤を添加することにより、高い透明性を維持し、シートのビカット温度を大幅に向上させることができる。
【0092】
なお、実施例1~4では、いくつかの補助添加剤(例えば、強化剤、耐熱性向上剤、熱安定剤、補助熱安定剤、潤滑油、酸化防止剤、顔料)について、1種類の材料及び使用量を例示したが、実施例1~4は、主に「従来のアクリレート系加工助剤に代えて塩化エチレングラフトコポリマーを添加する」の技術的効果を確認するためのものであり、これも明確に確認されている。表1の実験データは、補助添加剤の材料種類や使用量に焦点を当てていない。従って、実施例1~4では、補助添加剤の材料の種類や使用量は単なる例示に過ぎず、本発明を理解するために、本発明の保護範囲は、前記実施例に含まれる内容に限定されるべきではない。
【0093】
[実施例の有益な効果]
【0094】
本発明の有益な効果の一つは、本発明で提供される塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物、押出シート及びその製造方法は、「使用量が80重量部~120重量部であり、重合度が400~1100であり、塩素の含有量が60%~75%である塩素化ポリ塩化ビニル樹脂」、「塩化エチレングラフトコポリマーとアクリレート系化合物とを含み、前記塩化エチレングラフトコポリマーがグラフトする官能基は、ポリエステル系及びエチレン-酢酸ビニル系からなる材料群から選ばれた少なくとも一つである可塑化加工助剤」、及び「前記塩化エチレングラフトコポリマーの使用量をA重量部とし、前記アクリレート系化合物の使用量をB重量部とすると、前記可塑化加工助剤の使用量は、(i)A+Bが5重量部以下であり、(ii)A/(A+B)が80%以上であり、及び(iii)B/(A+B)が20%以下であるという条件を満たし、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、170℃~200℃の温度で50秒間から100秒間の間の可塑化速率を有する」の技術的方案により、CPVC押出シートは、高い耐熱性、高い靭性、高い透明性、低いヘイズ、及び優れた加工成形性を有することができる。なお、前記CPVC押出シートは、プロセスが簡単で、処方の安定性が良いという利点がある。
【0095】
以上に開示された内容は、本発明の実施可能な好ましい実施例に過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の説明及び図面の内容を用いてなされた均等な技術的変更はすべて本発明の特許請求の範囲内に含まれる。
さらに、有機スズチオエステル、カルシウム亜鉛安定剤、及びタルク系安定剤からなる材料群から選ばれた少なくとも一つである熱安定剤0.5重量部~10重量部を含む、
請求項1に記載の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物。
さらに、亜炭ワックス、複合エステルワックス、ポリエチレンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスからなる材料群から選ばれた少なくとも一つである潤滑油0.1重量部~1重量部を含む
請求項1に記載の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物。
さらに、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤及び亜リン酸エステル系の酸化防止剤からなる材料群から選ばれた少なくとも一つである酸化防止剤0.1重量部~3重量部を含む
請求項1に記載の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物。