(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055762
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F02D 9/10 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
F02D9/10 G
F02D9/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125692
(22)【出願日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2022161432
(32)【優先日】2022-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】實方 雄平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓悟
(72)【発明者】
【氏名】多賀谷 太樹
【テーマコード(参考)】
3G065
【Fターム(参考)】
3G065CA23
3G065CA24
3G065CA33
3G065CA35
3G065HA12
3G065KA14
(57)【要約】
【課題】部品の共通化を図りつつ、仕様の異なるバルブ装置を製造コストを抑えて提供可能にする。
【解決手段】バルブ装置の駆動ギヤ15を一方向に回転付勢して電動モータの非作動時に弁体の回転位置を規定するねじりコイルばね16を備え、ねじりコイルばね16の一端部16aは駆動ギヤ15に設けられた2個の係止部55、56のいずれか一方に係止され、他端部16bはバルブシャフト10を回転可能に支持するケーシングに係止され、駆動ギヤ15は2個の係止部55、56を含み線対称に形成されている板状部材であって、係止部55、56は、駆動ギヤ15の内側面60から離間する方向に延びる延長部65と、延長部65の先端から内側面60に沿って突出する先端部66と、を有する鈎型状に形成され、駆動ギヤ15には軸線方向視で先端部66と重なる位置に開口部67が備えられた。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体を駆動するシャフトにギヤを備え、アクチュエータによって前記ギヤを介して前記シャフトを回転駆動して、前記弁体を駆動させるバルブ装置であって、
前記ギヤを一方向に回転付勢して前記アクチュエータの非作動時に前記弁体の回転位置を規定するねじりコイルばねを備え、
前記ねじりコイルばねの一端部は前記ギヤに設けられた係止部に係止され、他端部は前記シャフトを回転可能に支持する筐体に係止され、
前記係止部は、前記ギヤに周方向に間隔をおいて2か所設けられ、
前記ギヤは、2個の前記係止部を含み前記シャフトの軸線を垂直に通過する線を対称軸として線対称に形成された板状部材であって、
前記係止部は、前記ギヤの一側面から離間する方向に延びる延長部と、前記延長部の先端から前記一側面に沿って突出する先端部と、を有する鈎型状に形成され、
前記ギヤには、前記軸線方向視で前記先端部と重なる位置に開口部が備えられた
ことを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
前記ギヤは、一側面において少なくとも一部が露出した状態でインサート成形加工によって一体化された金属製の支持部材を有し、
前記ギヤにおける前記支持部材の露出部と、前記シャフトの端部と、を溶接してシャフトユニットが構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記ギヤは、前記支持部材の前記露出部の裏側の他側面側を露出させる露出穴を有し、
前記支持部材の前記露出部と前記シャフトの端部とを当接させて、前記ギヤの他側面側から前記露出穴を通過させて前記支持部材の前記シャフトとの当接部分の裏側にレーザ光を照射して、前記支持部材と前記シャフトとを溶接する
ことを特徴とする請求項2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記ギヤには、前記シャフトの端部が軸線回りの任意の相対回転位置で挿入可能な挿入穴が備えられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記バルブ装置は、内燃機関の吸気量を制御するスロットルバルブである
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記バルブ装置は、内燃機関の吸気量を制御するスロットルバルブである
ことを特徴とする請求項4に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置の駆動系の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スロットルバルブ等のバルブの多くは、筐体に流路が形成され、流路を開閉する弁体がバルブシャフトに固定されており、当該バルブシャフトを電動モータ等の回転アクチユエータによって駆動する構成になっている。回転アクチュエータとバルブシャフトとの間には、減速機が備えられ、減速機の一部としてバルブシャフトに駆動用ギヤが備えられている。
【0003】
更に、スロットルバルブには、回転アクチュエータの非作動時にバルブの回転角(回転位置)を規定するためのリターンスプリングが備えられている。
【0004】
例えば特許文献1に記載されたバルブ装置では、リターンスプリングとデフォルトスプリングの2個のねじりコイルばねによって、バルブシャフトに固定された駆動用ギヤを回転付勢して、回転アクチュエータの非作動時に弁体を所定のデフォルト位置に回転移動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のようにリターンスプリングを備えたバルブ装置については、仕様の違いにより、流路の断面積や弁体の形状が同一であっても、デフォルト位置として弁体が開状態または閉状態となるもの、即ちリターンスプリングの付勢方向が異なる2種類のバルブ装置がある。
【0007】
これまでは、リターンスプリングの付勢方向が異なるだけで、夫々異なる形状の駆動用ギヤを用意しており、部品の種類が増加して、部品コストや、部品の管理コストの増加を招くといった問題点があった。
【0008】
また、リターンスプリングはバルブシャフトの周囲を巻きまわすように配置され、一端部が駆動用ギヤに設けられた鈎型状の係止部に係止され、他端部がスロットルバルブのバルブボディに係止される構造が多い。更に、駆動用ギヤは、製造コストを抑制するために、例えば向い合わせた1組の金型の間の空間に樹脂等を注入して成形する場合が多い。
【0009】
しかしながら、鈎型状の係止部を有する駆動用ギヤを1組の金型で成形することは困難であり、複数個同時に成形することも困難であって、駆動用ギヤの製造コストを抑制することが要求されていた。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、部品の共通化を図りつつ、仕様の異なるバルブ装置を、製造コストを抑えて提供可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のバルブ装置は、弁体を駆動するシャフトにギヤを備え、アクチュエータによって前記ギヤを介して前記シャフトを回転駆動して、前記弁体を駆動させるバルブ装置であって、前記ギヤを一方向に回転付勢して前記アクチュエータの非作動時に前記弁体の回転位置を規定するねじりコイルばねを備え、前記ねじりコイルばねの一端部は前記ギヤに設けられた係止部に係止される一方、他端部は前記シャフトを回転可能に支持する筐体に係止され、前記係止部は、前記ギヤに周方向に間隔をおいて2か所設けられ、前記ギヤは、2個の前記係止部を含み前記シャフトの軸線を垂直に通過する線を対称軸として線対称に形成された板状部材であって、前記係止部は、前記ギヤの一側面から離間する方向に延びる延長部と、前記延長部の先端から前記一側面に沿って突出する先端部と、を有する鈎型状に形成され、前記ギヤには、前記軸線方向視で前記先端部と重なる位置に開口部が備えられていることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記ギヤは、一側面において少なくとも一部が露出した状態でインサート成形加工によって一体化された金属製の支持部材を有し、前記ギヤにおける前記支持部材の露出部と、前記シャフトの端部と、を溶接してシャフトユニットが構成されているとよい。
【0013】
好ましくは、前記ギヤは、前記支持部材の前記露出部の裏側の他側面側を露出させる露出穴を有し、前記支持部材の前記露出部と前記シャフトの端部とを当接させて、前記ギヤの他側面側から前記露出穴を通過させて前記支持部材の前記シャフトとの当接部分の裏側にレーザ光を照射して、前記支持部材と前記シャフトとを溶接するとよい。
【0014】
好ましくは、前記ギヤには、前記シャフトの端部が任意の相対角度で挿入可能な挿入穴が備えられているとよい。
【0015】
好ましくは、前記バルブ装置は、内燃機関の吸気量を制御するスロットルバルブであるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバルブ装置によれば、ギヤに設けられた2個の係止部のうちの一方の係止部には例えば左巻きのねじりコイルばねを係止することができる一方、他方の係止部には右巻きのねじりコイルばねを係止することが可能である。
【0017】
したがって、ギヤを共通化しつつ、ねじりコイルばねによりシャフトを右回転に付勢するバルブ装置と、ねじりコイルばねによりシャフトを左回転に付勢するバルブ装置を提供することができ、部品コスト及び部品管理コストの低減を図ることができる。
【0018】
また、ギヤに設けられた係止部は鈎型の形状になっているものの、ギヤに軸線方向視で先端部と重なる位置に開口部が備えられているので、1組の金型によって係止部を含むギヤを成形して、成形後に容易に金型を抜くことができる。これにより、ギヤの生産性を向上させて製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態の回転角検出構造を採用したバルブ装置の斜視図である。
【
図4】バルブシャフトユニットにおける駆動ギヤの部品を示す図である。
【
図5】バルブシャフトユニットにおける駆動ギヤの斜視図である。
【
図6】バルブシャフトユニットにおける駆動ギヤとバルブシャフトの斜視図である。
【
図7】駆動ギヤとバルブシャフトの固定方法を示す説明図である。
【
図10】駆動ギヤの成形加工時における、駆動ギヤ及び金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態の回転角検出構造を採用したバルブ装置1の斜視図である。
図2は、本実施形態のバルブ装置1の縦断面図である。なお、
図2は
図1中に記載したA-A部の断面図である。
【0022】
本発明の一実施形態の回転角検出構造を採用したバルブ装置1は、例えばスロットルバルブであって、内燃機関の吸気通路に介装されて吸気量を制御する。
【0023】
図1、2に示すように、バルブ装置1は、吸気通路の一部となる流体通路2が形成されたケーシング3(筐体)に、電動モータ4(アクチュエータ)と減速機5が備えられている。また、バルブ装置1には、流体通路2を開閉する弁体6と、ケーシング3に回転可能に支持され流体通路2を横断するように配置されたバルブシャフト10(シャフト)が備えられている。バルブシャフト10には弁体6が固定されている。
【0024】
減速機5は、電動モータ4の出力軸に固定されたモータギヤ11と、ケーシング3に回転可能に支持された中間ギヤ12と、バルブシャフト10の一端部に固定された駆動ギヤ15(ギヤ)とによって構成され、電動モータ4からモータギヤ11、中間ギヤ12、駆動ギヤ15の順番に動力が伝達し、バルブシャフト10を回転駆動する。
【0025】
バルブシャフト10の一端部近傍には、駆動ギヤ15に隣接してリターンスプリング16が備えられている。リターンスプリング16はバルブシャフト10の周囲を巻き回したねじりコイルばねであり、その一端部(16a)が駆動ギヤ15に係止され、他端部(16b)がケーシング3に係止されている。リターンスプリング16は、バルブシャフト10を一方の回転方向に付勢する。
【0026】
ケーシング3には、駆動ギヤ15に当接する図示しない2個のストッパが備えられている。ストッパによってバルブシャフト10の回転角は、所定角度(例えば90度)の範囲内に制限される。
【0027】
電動モータ4への非通電時には、バルブシャフト10はリターンスプリング16の付勢力によって回転して、弁体6により流体通路2が全閉(または全開)になる。電動モータ4へ通電することで、バルブシャフト10はリターンスプリング16の付勢力に抗して回転し、弁体6が回転することによって流体通路2を流れる吸気量を調整する。
【0028】
バルブシャフト10の駆動ギヤ15側の一端部には、バルブシャフト10の回転角(回転位置)を検出するインダクティブセンサ20(非接触センサ)が備えられている。
【0029】
インダクティブセンサ20は、駆動ギヤ15に備えられた金属製の被検出体21と、ケーシング3に固定され被検出体21に近接して向かいあうように配置されたセンサ本体部22を備えている。
【0030】
インダクティブセンサ20のセンサ本体部22は、例えばセンサコイルを備え、当該センサコイルに電流を流して高周波磁界を生成し、当該磁界中を被検出体が移動することによって変化するセンサコイルのインダクタンスを検出して、バルブシャフト10の回転角を検出する。
【0031】
図3は、バルブシャフトユニット30の斜視図である。
図4は、バルブシャフトユニット30における駆動ギヤ15の部品を示す図である。
図5は、バルブシャフトユニット30における駆動ギヤ15の斜視図である。
図6は、バルブシャフトユニット30における駆動ギヤ15とバルブシャフト10の斜視図である。
図7は、駆動ギヤ15とバルブシャフト10との固定方法を示す説明図である。なお、
図7は、駆動ギヤ15とバルブシャフト10との固定部分の縦断面図である。
【0032】
図3、4に示すように、バルブシャフトユニット30は、金属製であるバルブシャフト10と駆動ギヤ15とにより構成されている。また、駆動ギヤ15は、樹脂製のギヤ部31と、インダクティブセンサ20の被検出体21と、金属製のレバー部材33(支持部材)によって構成されている。
【0033】
ギヤ部31は、樹脂で形成された略円板状の部品あって、外周端の略半分(略180度)に亘って歯車35(例えば平歯車)が形成されている。歯車35が形成された外周部の周方向両端には、ケーシング3に備えられた図示しないストッパに当接して回転を規制するストッパ当接面36が夫々備えられている。ギヤ部31の内側面60(センサ本体部22と対向する面の反対側の面:本発明における一側面)の中心には、バルブシャフト10が挿入される シャフト取付穴37(挿入穴)が備えられている(
図2、6~9参照)。なお、シャフト取付穴37は、バルブシャフト10の外径よりも若干大径である。シャフト取付穴37の内部には、レバー部材33の中心部が露出している(
図7、9に示す露出部38)。
【0034】
ギヤ部31の他方向側(センサ本体部22と対向する面)の中心には、シャフト取付穴37よりも小径の外穴39(露出穴)が備えられている。外穴39及びシャフト取付穴37によってギヤ部31の中心が貫通されている。
【0035】
被検出体21は、中央部を刳り貫いた薄板の略円板の形状であって、径方向に延びる6個の径方向部材40と、周方向に延びて径方向部材40の中心側の端部を連結する3本の内側周方向部材41と、周方向に延びて径方向部材40の外側の端部を連結する3本の外側周方向部材42と、を有している。径方向部材40、内側周方向部材41及び外側周方向部材42は、いずれも幅及び厚さが数mm程度である。径方向部材40は、周方向に等間隔で配置されており、1個おきに内側周方向部材41によって中心側の端部が連結されるとともに、内側周方向部材41とは周方向にずらして1個おきに外側周方向部材42によって外側の端部が連結されている。なお、被検出体21の内側周方向部材41には、被検出体の位置決め用の爪部が備えられている。爪部は、夫々の内側周方向部材41の外周側端部の周方向中間位置に設けられており、1~2mm程度の幅及び突出長さであって、内側周方向部材41に対して垂直に屈曲している。
【0036】
被検出体21は、ギヤ部31の外穴39側(外側)の面に、ギヤ部31の中心と同軸に配置されている。また、被検出体21の内側周方向部材41の径方向外側の面と、ギヤ部31の外穴39の縁部とは、径方向位置が略同一になっている。
【0037】
ギヤ部31の外側の面には、外側周方向部材42及び径方向部材40を収納する溝45が形成されている。
【0038】
レバー部材33は、金属製の平板形状であって、ギヤ部31の内部に埋没されている。レバー部材33は、中心にバルブシャフト10の外径よりも小さい円形の中心穴50が開いている。なお、バルブシャフト10の一端には、軸方向に突出する円柱状の凸部51が備えられており、この凸部51がレバー部材33の中心穴50に挿入される。レバー部材33の中心穴50は、被検出体21の内側周方向部材41の径方向内側端面よりも小径である。
【0039】
また、レバー部材33には、中心穴50の周囲に円弧状に延びる円弧穴52が3個開いている。3個の円弧穴52は、被検出体21の内側周方向部材41と略同一の形状及び大きさであり、内側周方向部材41と略同一の径方向及び周方向位置に位置するように配置されている。
【0040】
図5に示すように、ギヤ部31、レバー部材33及び被検出体21はインサート成形加工によって一体化されて1個の部品である駆動ギヤ15になっている。金属製のレバー部材33及び被検出体21をインサート品として、樹脂によってギヤ部31が形成されている。即ち、ギヤ部31の成形加工が完了した時点でレバー部材33及び被検出体21が組み合わされている。
【0041】
図6に示すように、レバー部材33及び被検出体21を含む駆動ギヤ15に対し、バルブシャフト10を固定して、バルブシャフトユニット30が製造される。
【0042】
詳しくは、
図7に示すように、駆動ギヤ15のギヤ部31のシャフト取付穴37にバルブシャフト10の端部を挿入し、シャフト取付穴37から露出するレバー部材33の露出部38にバルブシャフト10の端部を当接させるとともに、レバー部材33の中心穴50にバルブシャフト10の凸部51を挿入する。
【0043】
そして、
図7中の矢印に示すように、駆動ギヤ15の外側面61(本発明における他側面)側から外穴39内に露出するレバー部材33にレーザ光を照射して、レバー部材33とバルブシャフト10とを溶接する。なお、このレーザ光による溶接箇所は、バルブシャフト10の端部とレバー部材33との当接面の裏側であり、このレーザ溶接によって凸部51の周囲を全周に亘って溶接してもよいし、円弧穴の内側の3か所を溶接してもよい。
【0044】
これにより、レバー部材33及び被検出体21を含む駆動ギヤ15とバルブシャフト10とを有するバルブシャフトユニット30が製造される。
【0045】
図8は、バルブシャフトユニット30の斜視図である。
図8は、バルブシャフトユニット30を
図3の反対側、即ちバルブシャフト10の他端部側から視た図である。
図9は、駆動ギヤ15の背面図であり、
図5の反対側から視た図である。
【0046】
図8に示すように、駆動ギヤ15に備えられたリターンスプリング16の一端部16aを係止する係止部55(56)は、駆動ギヤ15の内側面60(バルブシャフト10の他端部側の側面)に2個備えられている。
【0047】
2個の係止部55、56は、互いに駆動ギヤ15において径方向位置が同一であって、周方向に間隔をおいて配置されている。また、駆動ギヤ15は、第1係止部55及び第2係止部56、歯車35を含みバルブシャフト10の軸線を垂直に通過する線CLを対称軸として線対称に形成されている。
【0048】
なお、本実施形態のリターンスプリング16は、駆動ギヤ15の2個の係止部55、56のうちの第1係止部55に係止され、駆動ギヤ15の被検出体21とは反対側である他端部側から視て駆動ギヤ15を右方向に回転付勢する。
【0049】
次に、
図5、8~10を用いて駆動ギヤ15における係止部55、56及びその付近の形状と、駆動ギヤ15の製造方法について説明する。
【0050】
図10は、駆動ギヤ15の成形加工時における、駆動ギヤ15及び金型70、71の断面図である。
図10は、
図9に記載したB-B部における駆動ギヤ15と金型70、71を含む断面図である。
【0051】
駆動ギヤ15は、リターンスプリング16の一端部を支持する係止部55、56と、樹脂等によって一体的に構成されている。
【0052】
図5、8に示すように、係止部55、56は、駆動ギヤ15におけるリターンスプリング16の取付側の面である内側面60(一側面)からリターンスプリング16側に垂直に延びる延長部65と、延長部65の先端から内側面60と数mm間隔をおいて平行に延びる先端部66と、を有する鈎型の形状をしている。
【0053】
駆動ギヤ15には、先端部66に面して開口部67が設けられており、内側面60と外側面61を繋いでいる。
図9に示すように、駆動ギヤ15の平面視(軸線方向視)において、開口部67は先端部66の全て、詳しくは延長部65から内側面60と平行に突出する部位の全てを含む大きさに形成されている。なお、本実施形態では、開口部67は先端部66よりも若干大きめに形成されている。
【0054】
図10に示すように、インサート成形加工により駆動ギヤ15を成形する際に、2個の金型(第1金型70、第2金型71)が使用される。互いに合わせた第1金型70と第2金型71との間の空間に樹脂が充填されて駆動ギヤ15が形成される。
【0055】
第1金型70は、駆動ギヤ15の内側面60側を形成する。第2金型71は、駆動ギヤ15の外側面61側を形成する。
【0056】
第2金型71は、断面が矩形状であって第1金型に70に向かって突出する突出部72を備えている。第1金型70と第2金型71とを合わせた際に、突出部72の先端は、第1金型70における駆動ギヤ15の内側面60を形成する面よりも第1金型70側に突出している。これにより、内側面60と外側面61を繋ぐ開口部67が形成される。
【0057】
突出部72の先端に面して突出方向先方側には空間が形成されており、この先方側の空間内に充填された樹脂によって先端部66が形成される。突出部72の一側方側にも空間が形成され、この側方側の空間は突出部72の先方側の空間と他の第1金型70と第2金型71との間の空間と連通しており、この一側方側の空間内に充填された樹脂によって延長部65が形成される。
【0058】
このように突出部72を有する第2金型71と第1金型70を使用して駆動ギヤ15を製造することで、駆動ギヤ15の係止部55、56の先端部66に面して開口部67が夫々形成される。
【0059】
第1金型70と第2金型71との間の空間に樹脂を充填して冷却した後に、第1金型70と第2金型71を駆動ギヤ15の軸線方向に互いに遠ざかる方向に移動させることで、第1金型70及び第2金型71から駆動ギヤ15を容易に取り外すことができる。
【0060】
これに対し、第2金型71に突出部72を有していない場合、すなわち駆動ギヤ15において係止部55、56に面して開口部67が形成されていない形状にした場合では、駆動ギヤ15に鈎型の係止部55、56、特に先端部66を形成することが困難である。
【0061】
このように開口部67を有しない駆動ギヤを製造しようとすると、第1金型70と第2金型71の他に、先端部66と内側面60との間の空間を埋める第3金型を使用しなければならず、樹脂の冷却後に第3金型を延長部65から遠ざかる方向に移動させて先端部66を回避した後に、第1金型70と第2金型71を互いに遠ざかる方向に移動させて駆動ギヤ15を取り外さなければならない。したがって本実施形態と比較して、金型の数が増加し、金型の移動が複雑化する。
【0062】
以上のように、本実施形態のバルブ装置1は、弁体6が固定されたバルブシャフト10の端部に電動モータ4から動力を伝達するために駆動ギヤ15が固定されている。
【0063】
また、バルブ装置1には、駆動ギヤ15を一方向に回転付勢するリターンスプリング16を備えている。リターンスプリング16は、一端部16aが駆動ギヤ15の第1係止部55に係止され、他端部16bがケーシング3に係止されており、駆動ギヤ15を回転付勢することで、電動モータ4の非作動時に弁体を開状態に規定する。
【0064】
上記のように、本実施形態では、リターンスプリング16の係止部55、56は、駆動ギヤ15のギヤ部31に周方向に間隔をおいて2か所設けられている。また、駆動ギヤ15は、第1係止部55及び第2係止部56を含みバルブシャフト10の軸線を垂直に通過する線CLを対称軸として線対称に形成されている。
【0065】
したがって、駆動ギヤ15の2個の係止部55、56のうちの第1係止部55には、上記のように左巻きのリターンスプリング16を係止することができる一方、第2係止部56には右巻きのリターンスプリングを係止することが可能である。
【0066】
これにより、ねじり方向の異なる2種類のリターンスプリング(16等)を部品としてあらかじめ用意しておいて、リターンスプリング(16等)及び係止部55、56を選択して使用することで、リターンスプリング(16等)によりバルブシャフト10を右回転に付勢するバルブシャフトユニット30と、バルブシャフト10を左回転に付勢するバルブシャフトユニットの2種類のバルブシャフトユニット(30等)を提供することができる。
【0067】
したがって、駆動ギヤ15を共通化しつつ、電動モータ4の非作動時に閉弁するバルブ装置1と、電動モータ4の非作動時に開弁するバルブ装置といった、2種類のバルブ装置及びこれに使用する2種類のバルブシャフトユニットを提供することが可能になる。これにより、部品コスト及び部品管理コストを低減することができる。
【0068】
また、本実施形態の駆動ギヤ15は、バルブシャフト10が挿入されるシャフト取付穴37がバルブシャフト10よりも大きい円形であって、駆動ギヤ15に対してバルブシャフト10の端部が任意の角度(回転位置)でシャフト取付穴37に挿入可能である。したがって、バルブシャフト10に対する弁体6の取り付け角度に対して、任意の角度で駆動ギヤ15をレーザ溶接によって固定することができる。これにより、駆動ギヤ15やバルブシャフト10を共通化しつつ、駆動ギヤ15の取付角度の異なるバルブシャフトユニット、及びバルブ装置を提供することができる。
【0069】
また、駆動ギヤ15に設けられた係止部55、56は鈎型の形状になっているものの、駆動ギヤ15に軸線方向視で係止部55、56の先端部66と重なる位置に開口部67が備えられているので、1組の金型70、71によって係止部55、56を含む駆動ギヤ15を成形し、成形後に容易に金型70、71を抜くことができる。これにより、成形加工時における金型の使用個数を抑えるとともに金型70、71の移動を簡単にすることができる。
【0070】
更には、第1金型70及び第2金型71に樹脂充填用の空間を並べて複数個備えることができ、1組の金型70、71によって複数個の駆動ギヤ15を同時に製造することができる。これにより、駆動ギヤ15の生産性を大幅に向上させることができる。
【0071】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、駆動ギヤ15のギヤ部31の形状等、各種部品の詳細な形状は適宜変更してもよい。
【0072】
また上記実施形態では、スロットルバルブに本発明を適用したが、スロットルバルブ以外の各種バルブ装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 バルブ装置
6 弁体
10 バルブシャフト(シャフト)
15 駆動ギヤ(ギヤ)
4 電動モータ(アクチュエータ)
16 リターンスプリング(ねじりコイルばね)
20 インダクティブセンサ(非接触センサ)
21 被検出体
30 バルブシャフトユニット
33 レバー部材(支持部材)
37 シャフト取付穴(挿入穴)
38 露出部
39 外穴(露出穴)
55 第1係止部(係止部)
56 第2係止部(係止部)
60 内側面(一側面)
65 延長部
66 先端部
67 開口部