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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055766
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】被還元性評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20240411BHJP
   G01N 33/24 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G01N23/046
G01N33/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130894
(22)【出願日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2022162500
(32)【優先日】2022-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】高山 透
(72)【発明者】
【氏名】矢部 英昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 悟司
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001HA07
2G001HA14
2G001KA12
2G001LA03
(57)【要約】
【課題】被還元性を有する多孔質材料の被還元性をより正確に評価すること。
【解決手段】本発明は、被還元性を有する多孔質材料の被還元性を評価する方法であり、前記多孔質材料の三次元形状及び構成組織を表す輝度値で構成された画像であるX線CT画像を取得するX線CT画像取得ステップと、取得した前記X線CT画像から、当該X線CT画像のグレースケール画像を取得するグレースケール画像取得ステップと、前記多孔質材料と、前記材料の還元反応に用いられる還元性物質との反応性を示す指標を算出する反応性指標算出ステップと、取得した前記グレースケール画像に基づき、前記多孔質材料に対応する部分を構成する画素の輝度値を用いて平均輝度値を算出する平均輝度値算出ステップと、前記反応性を示す指標と、前記平均輝度値と、の積に基づき、前記多孔質材料の被還元性を評価する被還元性評価ステップとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被還元性を有する多孔質材料の被還元性を評価する方法であって、
前記多孔質材料の三次元形状及び構成組織を表す輝度値で構成された画像であるX線CT画像を取得するX線CT画像取得ステップと、
取得した前記X線CT画像から、当該X線CT画像のグレースケール画像を取得するグレースケール画像取得ステップと、
前記多孔質材料と、前記材料の還元反応に用いられる還元性物質との反応性を示す指標を算出する反応性指標算出ステップと、
取得した前記グレースケール画像に基づき、前記多孔質材料に対応する部分を構成する画素の輝度値を用いて平均輝度値を算出する平均輝度値算出ステップと、
前記反応性を示す指標と、前記平均輝度値と、の積に基づき、前記多孔質材料の被還元性を評価する被還元性評価ステップと、
を含む、被還元性評価方法。
【請求項2】
前記平均輝度値算出ステップは、前記平均輝度値として、前記材料の表面から、所定深さの位置までの領域の平均輝度値を算出する、請求項1に記載の被還元性評価方法。
【請求項3】
前記平均輝度値算出ステップは、前記材料の表面から、深さ方向に100μm以上500μm以下の位置までの領域に着目して、前記平均輝度値を算出する、請求項2に記載の被還元性評価方法。
【請求項4】
前記多孔質材料は、鉄鉱石、鉄鉱石ペレット又は焼結鉱である、請求項1に記載の被還元性評価方法。
【請求項5】
前記反応性指標算出ステップは、取得した前記グレースケール画像に基づき、前記反応性を示す指標を算出する、請求項1~4の何れか1項に記載の被還元性評価方法。
【請求項6】
前記反応性指標算出ステップは、
前記多孔質材料を、JIS Z8830:2013に規定された比表面積測定BET法によって測定して、BET比表面積を求め、
求めた前記BET比表面積を、前記反応性を示す指標として用いる、請求項1~4の何れか1項に記載の被還元性評価方法。
【請求項7】
前記反応性指標算出ステップは、
前記グレースケール画像から、前記多孔質材料の全体積と、前記多孔質材料の外部と繋がっている気孔が存在する領域である開気孔領域と、を識別し、識別した前記開気孔領域の体積と、前記多孔質材料の全体積と、から、前記開気孔領域の体積分率である開気孔率を算出し、
前記反応性を示す指標として、前記開気孔率を用いる、請求項5に記載の被還元性評価方法。
【請求項8】
前記反応性指標算出ステップは、
前記グレースケール画像から、前記多孔質材料の全体積と、前記多孔質材料の表面積と、を特定して、前記多孔質材料の表面積を前記多孔質材料の全体積で除した値である比表面積を算出し、
前記反応性を示す指標として、前記比表面積を用いる、請求項5に記載の被還元性評価方法。
【請求項9】
前記反応性指標算出ステップは、
前記グレースケール画像から、前記多孔質材料の全体積と、前記多孔質材料の外部と繋がっている気孔が存在する領域である開気孔領域と、を識別し、識別した前記開気孔領域の体積と、前記多孔質材料の全体積と、から、前記開気孔領域の体積分率である開気孔率を算出するとともに、
前記グレースケール画像から、前記多孔質材料の全体積と、前記多孔質材料の表面積と、を特定して、前記多孔質材料の表面積を前記多孔質材料の全体積で除した値である比表面積を算出し、
前記反応性を示す指標として、前記開気孔率と前記比表面積との積を用いる、請求項5に記載の被還元性評価方法。
【請求項10】
前記反応性指標算出ステップは、
前記グレースケール画像に対してClosing処理を実施し、予め定めた最大気孔径以下の気孔径を有する部位を、前記多孔質材料の外部と繋がっている気孔が存在する領域である開気孔領域として識別し、
前記開気孔領域に関する識別結果を用いて、前記反応性を示す指標を算出する、請求項5に記載の被還元性評価方法。
【請求項11】
前記反応性指標算出ステップは、
前記グレースケール画像に対してAmbient Occlusion処理を実施し、予め定めた範囲内の画素値を有する部位を、前記多孔質材料の外部と繋がっている気孔が存在する領域である開気孔領域として識別し、
前記開気孔領域に関する識別結果を用いて、前記反応性を示す指標を算出する、請求項5に記載の被還元性評価方法。
【請求項12】
前記反応性指標算出ステップは、
対象画像に対してClosing処理を施した後に、前記対象画像から前記Closing処理を施した後の画像を差し引く処理であるトップハット処理を、前記グレースケール画像を構成する全ての画素に対して実施して、トップハット処理が施されたグレースケール画像である差分グレースケール画像を生成し、
前記差分グレースケール画像を構成する画素について、所定の輝度閾値に基づく閾値判定を行うことで前記多孔質材料のうち気孔に対応する部位を識別し、前記気孔に対応する部位を表す気孔識別画像を生成し、
前記気孔識別画像を用いて、前記反応性を示す指標を算出する、請求項10又は11に記載の被還元性評価方法。
【請求項13】
前記反応性指標算出ステップは、
前記トップハット処理の対象となる画素数を規定した条件である処理対象条件について、複数の前記処理対象条件が設定されており、
前記複数の処理対象条件のそれぞれのもとで、前記グレースケール画像に対して前記トップハット処理が実施されて、複数の前記差分グレースケール画像が生成され、
前記複数の差分グレースケール画像のそれぞれに対して前記閾値判定が実施されて、複数の気孔識別画像が生成され、
前記複数の気孔識別画像を合成することで、合成気孔識別画像が生成され、
前記合成気孔識別画像を用いて、前記反応性を示す指標を算出する、請求項12に記載の被還元性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被還元性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被還元性を有する多孔質材料について、その被還元性を適切に評価することは、多孔質材料を用いた様々な処理について検討を行ううえで重要である。鉄鋼業における製鉄原料の一つである焼結鉱は、上記のような被還元性を有する多孔質材料の一例であるが、焼結鉱が有する被還元性に応じて、高炉に装入される焼結鉱の量を制御する必要がある。そのため、鉄鋼材料の生産性を考慮するにあたって、従来、焼結鉱の被還元性を適切に評価するための様々な方法が、各種提案されている。
【0003】
例えば、以下の特許文献1では、焼結鉱の被還元性に及ぼす要因として、焼結鉱の気孔率と鉱物組成を挙げている。その上で、特許文献1では、焼結鉱の鉱物組成が被還元性に及ぼす影響は小さいと指摘し、焼結鉱の被還元性を、焼結鉱の気孔率に基づき予測・制御する方法を提案している。
【0004】
また、特許文献1で言及されている気孔率に関して、近年、材料を破壊することなく、材料の三次元形状を表す画像を取得可能なX線CT測定を利用して、多孔質材料の気孔率を測定する方法も提案されている(例えば、以下の特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-217534号公報
【特許文献2】特開2019-82388号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】山岡洋次郎ら、鉄と鋼、Vol 66(1980)、No.13、p1850-1859
【非特許文献2】細谷陽三ら、鉄と鋼、Vol 83(1997)、No.2、p97-102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、上記特許文献2で用いられているようなX線CT測定を利用して、焼結鉱をはじめとする被還元性を有する多孔質材料について、その被還元性を評価する方法の検討を行ってきた。その結果、本発明者は、X線CT測定を用い、得られたX線CT画像に対して適切な画像処理を施すことで、多孔質材料の気孔率をより正確に把握することが可能であるとの知見を得ることができた。これにより、着目する多孔質材料の被還元性をより正確に評価可能となることが、期待された。
【0008】
しかしながら、本発明者が、上記の着想に基づき更なる検討を行った結果、得られた気孔率と被還元性との間で良好な相関関係を見出すことができたが、かかる相関関係に若干のバラツキが存在していることを新たに知見した。このように、X線CT測定を用いて、被還元性を有する多孔質材料の被還元性を評価するにあたっては、未だ改良の余地があることが判明した。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、被還元性を有する多孔質材料の被還元性を、より正確に評価することが可能な、被還元性評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討を行った結果、X線CT測定に基づく被還元性の評価方法において、上記特許文献1において被還元性に及ぼす効果は小さいと言及されていた多孔質材料の組成に関する知見を、敢えて評価方法に取り込むことに想到した。
かかる知見に基づき本発明者が更なる検討を行った結果、完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
【0011】
(1)被還元性を有する多孔質材料の被還元性を評価する方法であって、前記多孔質材料の三次元形状及び構成組織を表す輝度値で構成された画像であるX線CT画像を取得するX線CT画像取得ステップと、取得した前記X線CT画像から、当該X線CT画像のグレースケール画像を取得するグレースケール画像取得ステップと、前記多孔質材料と、前記材料の還元反応に用いられる還元性物質との反応性を示す指標を算出する反応性指標算出ステップと、取得した前記グレースケール画像に基づき、前記多孔質材料に対応する部分を構成する画素の輝度値を用いて平均輝度値を算出する平均輝度値算出ステップと、前記反応性を示す指標と、前記平均輝度値と、の積に基づき、前記多孔質材料の被還元性を評価する被還元性評価ステップと、を含む、被還元性評価方法。
(2)前記平均輝度値算出ステップは、前記平均輝度値として、前記材料の表面から、所定深さの位置までの領域の平均輝度値を算出する、(1)に記載の被還元性評価方法。
(3)前記平均輝度値算出ステップは、前記材料の表面から、深さ方向に100μm以上500μm以下の位置までの領域に着目して、前記平均輝度値を算出する、(2)に記載の被還元性評価方法。
(4)前記多孔質材料は、鉄鉱石、鉄鉱石ペレット又は焼結鉱である、(1)に記載の被還元性評価方法。
(5)前記反応性指標算出ステップは、取得した前記グレースケール画像に基づき、前記反応性を示す指標を算出する、(1)~(4)の何れか1つに記載の被還元性評価方法。
(6)前記反応性指標算出ステップは、前記多孔質材料を、JIS Z8830:2013に規定された比表面積測定BET法によって測定して、BET比表面積を求め、求めた前記BET比表面積を、前記反応性を示す指標として用いる、(1)~(4)の何れか1つに記載の被還元性評価方法。
(7)前記反応性指標算出ステップは、前記グレースケール画像から、前記多孔質材料の全体積と、前記多孔質材料の外部と繋がっている気孔が存在する領域である開気孔領域と、を識別し、識別した前記開気孔領域の体積と、前記多孔質材料の全体積と、から、前記開気孔領域の体積分率である開気孔率を算出し、前記反応性を示す指標として、前記開気孔率を用いる、(5)に記載の被還元性評価方法。
(8)前記反応性指標算出ステップは、前記グレースケール画像から、前記多孔質材料の全体積と、前記多孔質材料の表面積と、を特定して、前記多孔質材料の表面積を前記多孔質材料の全体積で除した値である比表面積を算出し、前記反応性を示す指標として、前記比表面積を用いる、(5)に記載の被還元性評価方法。
(9)前記反応性指標算出ステップは、前記グレースケール画像から、前記多孔質材料の全体積と、前記多孔質材料の外部と繋がっている気孔が存在する領域である開気孔領域と、を識別し、識別した前記開気孔領域の体積と、前記多孔質材料の全体積と、から、前記開気孔領域の体積分率である開気孔率を算出するとともに、前記グレースケール画像から、前記多孔質材料の全体積と、前記多孔質材料の表面積と、を特定して、前記多孔質材料の表面積を前記多孔質材料の全体積で除した値である比表面積を算出し、前記反応性を示す指標として、前記開気孔率と前記比表面積との積を用いる、(5)に記載の被還元性評価方法。
(10)前記反応性指標算出ステップは、前記グレースケール画像に対してClosing処理を実施し、予め定めた最大気孔径以下の気孔径を有する部位を、前記多孔質材料の外部と繋がっている気孔が存在する領域である開気孔領域として識別し、前記開気孔領域に関する識別結果を用いて、前記反応性を示す指標を算出する、(5)に記載の被還元性評価方法。
(11)前記反応性指標算出ステップは、前記グレースケール画像に対してAmbient Occlusion処理を実施し、予め定めた範囲内の画素値を有する部位を、前記多孔質材料の外部と繋がっている気孔が存在する領域である開気孔領域として識別し、前記開気孔領域に関する識別結果を用いて、前記反応性を示す指標を算出する、(5)に記載の被還元性評価方法。
(12)前記反応性指標算出ステップは、対象画像に対してClosing処理を施した後に、前記対象画像から前記Closing処理を施した後の画像を差し引く処理であるトップハット処理を、前記グレースケール画像を構成する全ての画素に対して実施して、トップハット処理が施されたグレースケール画像である差分グレースケール画像を生成し、前記差分グレースケール画像を構成する画素について、所定の輝度閾値に基づく閾値判定を行うことで前記多孔質材料のうち気孔に対応する部位を識別し、前記気孔に対応する部位を表す気孔識別画像を生成し、前記気孔識別画像を用いて、前記反応性を示す指標を算出する、(10)又は(11)に記載の被還元性評価方法。
(13)前記反応性指標算出ステップは、前記トップハット処理の対象となる画素数を規定した条件である処理対象条件について、複数の前記処理対象条件が設定されており、前記複数の処理対象条件のそれぞれのもとで、前記グレースケール画像に対して前記トップハット処理が実施されて、複数の前記差分グレースケール画像が生成され、前記複数の差分グレースケール画像のそれぞれに対して前記閾値判定が実施されて、複数の気孔識別画像が生成され、前記複数の気孔識別画像を合成することで、合成気孔識別画像が生成され、前記合成気孔識別画像を用いて、前記反応性を示す指標を算出する、(12)に記載の被還元性評価方法。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、被還元性を有する多孔質材料の被還元性を、より正確に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る被還元性評価方法の流れの一例を示した流れ図である。
図2】X線CT画像のグレースケール画像に対して実施する閉気孔領域除外処理について説明するための説明図である。
図3】同実施形態に係る反応性指標算出ステップで実施されるClosing処理について説明するための説明図である。
図4】同実施形態に係る反応性指標算出ステップで実施されるAmbient Occlusion処理について説明するための説明図である。
図5】同実施形態に係る平均輝度値算出ステップで実施される表層グレースケール画像の生成処理について説明するための説明図である。
図6】同実施形態に係る平均輝度値算出ステップで実施される表層グレースケール画像の生成処理について説明するための説明図である。
図7】同実施形態に係る平均輝度値算出ステップで生成される表層グレースケール画像の一例を示した説明図である。
図8】被還元性を評価するための評価指標と還元率との相関性を模式的に示した説明図である。
図9A】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
図9B】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
図9C】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
図10A】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
図10B】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
図10C】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
図11】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
図12A】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
図12B】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
図13】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
図14A】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
図14B】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
図14C】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
図15】本発明の第2の実施形態に係る被還元性評価方法の流れの一例を示した流れ図である。
図16】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
図17】焼結鍋試験により得られたサンプルを用いた検証結果を示したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
≪第1の実施形態≫
(被還元性評価方法について)
以下では、図1図8を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る被還元性評価方法について、詳細に説明する。
【0016】
<対象となる材料について>
ここで、被還元性を有する多孔質材料(以下、単に「材料」と称することがある。)としては、特に限定されるものではなく、還元材として用いられる各種の多孔質材料に対して、本実施形態に係る被還元性評価方法を適用することが可能である。本実施形態に係る被還元性評価方法は、同様の状態の試料を複数得ることが困難な、不均一性の高い多孔質材料について着目する場合に、特に有用である。このような不均一性の高い多孔質材料として、例えば、製鉄プロセスで用いられる鉄鉱石、鉄鉱石ペレット、焼結鉱等を挙げることができる。
【0017】
ここで、鉄鉱石ペレットとは、微粉となった状態の鉄鉱石(微粉鉱石)に対し、水と副原料(石灰石、ドロマイトなど)、必要により更にバインダ(ベントナイトなど)を加えて、直径10~30mmの球状にし、焼き固めたものである。製鉄プロセスで使用される鉄源の大部分を占める焼結鉱は、その化学成分として、Fe、CaCO、AlOOH、SiO等を主成分とし、更に不純物を含有するものである。かかる焼結鉱は、各種の酸化物、カルシウムフェライト、シリケートスラグ等を含有しており、被還元性を有する素材である。また、着目する材料の大きさは、特に限定されるものではないが、例えば、直径10~20mm程度の大きさであることが好ましい。
【0018】
<被還元性評価方法の流れについて>
本実施形態に係る被還元性評価方法は、図1に示したように、X線CT画像取得ステップS11と、グレースケール画像取得ステップS13と、反応性指標算出ステップS15と、平均輝度値算出ステップS17と、被還元性評価ステップS19と、を有している。
【0019】
ここで、図1においては、反応性指標算出ステップS15と、平均輝度値算出ステップS17と、が並行して実施されるように記載しているが、その実施の順序は、図1に示した例に限定されるものではない。すなわち、反応性指標算出ステップS15は、平均輝度値算出ステップS17に先立って実施されてもよいし、平均輝度値算出ステップS17が、反応性指標算出ステップS15に先立って実施されてもよい。
以下、各ステップについて、詳細に説明する。
【0020】
[X線CT画像取得ステップS11]
X線CT画像取得ステップS11は、着目する材料の三次元形状を表すX線CT画像を取得するステップである。
【0021】
ここで、X線CT画像は、着目するサンプルを透過したX線の強度を検出することで得られる画像である。そのため、かかるX線CT画像は、サンプルの表面形状だけでなく、サンプルの内部の様子も含めた三次元構造を反映した画素値を有している。すなわち、仮に全く同一の外形を有するサンプルが2つ存在し、一方のサンプルは中実であり、他方のサンプルは内部に気泡を含むものであったとする。この場合に、2つのサンプルのX線CT画像を取得すると、中実のサンプルから得られるX線CT画像と、気泡を含むサンプルから得られるX線CT画像とは、サンプルの外形は同一なものとなっても、各画像を構成する画素値は、互いに異なる値を有することとなる。そのため、かかるX線CT画像に着目することで、サンプルの三次元構造(例えば、気孔がどの部位に存在するかに着目した構造等)についての知見を得ることができる。なお、本発明が測定対象とする気孔は、用いるX線CT装置の解像度等にも依存するが、概ね5μm~数mmの範囲の大きさであり、比較的粗大な気孔である。
【0022】
また、着目するサンプルを構成する構成組織に応じて、サンプルを透過するX線の透過状態は変化することから、X線CT画像を構成する画素値は、サンプルの三次元構造のみならず、サンプルを構成する構成組織(例えば、化学成分や結晶相等)の違いを反映したものとなる。そのため、X線CT画像を構成する各画素の画素値は、各画素に対応する位置を構成している構成組織に関する情報を内包しているといえる。そのため、X線CT画像を用いた評価を行うことで、はじめて、サンプルの三次元構造と、サンプルの構成組織の違いと、を考慮した評価を、簡便に実施可能になると言える。
【0023】
このようなX線CT画像を取得するための画像取得装置としては、例えば上記特許文献2に開示されているようなX線CT装置を用いることが可能である。
【0024】
[グレースケール画像取得ステップS13]
グレースケール画像取得ステップS13は、各種のコンピュータやサーバ等の情報処理装置を用いて、各種の画像解析アプリケーション(例えば、3D可視化・解析アプリケーションAvizo等)により実施されるステップである。
【0025】
グレースケール画像取得ステップS13は、X線CT装置等を用いて生成されたX線CT画像をグレースケール化して、グレースケール画像とするステップである。かかるグレースケール画像取得ステップS13は、各種のコンピュータやサーバ等の情報処理装置を用いて、各種の画像処理アプリケーションにより実施されるステップである。かかるグレースケール化処理については、特に限定されるものではなく、公知の各種の方法を採用すればよい。
【0026】
[反応性指標算出ステップS15]
反応性指標算出ステップS15は、各種のコンピュータやサーバ等の情報処理装置を用いて、各種の画像解析アプリケーション(例えば、3D可視化・解析アプリケーションAvizo等)により実施されるステップである。
【0027】
反応性指標算出ステップS15は、着目する多孔質材料と、多孔質材料の還元反応に用いられる還元性物質と、の反応性を示す指標を算出するステップである。
【0028】
本実施形態における以下の説明では、グレースケール画像取得ステップS13で取得したグレースケール画像に基づいて、多孔質材料と、多孔質材料の還元反応に用いられる還元性物質と、の反応性を示す指標を算出する場合に着目する。
【0029】
被還元性を有する多孔質材料の被還元性を評価するにあたって、被還元性に寄与する要因の一つとして、還元反応が進行するための原料(例えば、焼結鉱の場合、COガス)が外部から侵入しうる気孔の存在が考えられる。そこで、本実施形態に係る反応性指標算出ステップS15では、上記のような反応性を示す指標として、気孔率(より詳細には、以下で説明するような開気孔率)と、比表面積という、2つの物性値に着目する。以下、これらの物性値について、詳細に説明する。
【0030】
◇開気孔率について
還元性を有する材料の被還元性を評価するにあたって、被還元性に寄与するのは、還元反応が進行するための原料が外部から侵入しうる気孔のうち、材料の外部に繋がっている気孔であると考えられる。そのため、材料の内部だけで閉じている気孔は、外部と繋がっている気孔と比較して、還元反応に寄与する割合は低いと考えられる。従って、材料の被還元性を適切に評価するためには、材料に存在しうる2種類の気孔(すなわち、外部に繋がっている気孔と、内部だけで閉じている気孔)のうち、外部に繋がっている気孔のみを識別することが重要である。
【0031】
以下では、外部に繋がっている気孔を「開気孔」と称することとし、内部だけで閉じている気孔を「閉気孔」と称することとする。また、着目する材料において、「開気孔」が存在する領域を、「開気孔領域」と称することとし、「閉気孔」が存在する領域を、「閉気孔領域」と称することとする。
【0032】
本実施形態に係る反応性指標算出ステップS15において、開気孔率に着目する場合、上記のような開気孔領域のみを、X線CT画像のグレースケール画像に対して、特定の画像処理を施すことにより識別し、得られた識別結果に基づき、開気孔率を算出する。より詳細には、上記グレースケール画像から、多孔質材料の全体積と、開気孔領域と、を識別し、識別した開気孔領域の体積と、多孔質材料の全体積とから、開気孔領域の体積分率である開気孔率を算出する。
【0033】
以下では、図2図4を参照しながら、本実施形態に係る反応性指標算出ステップS15における開気孔率の算出処理について、詳細に説明する。
図2は、X線CT画像のグレースケール画像に対して実施する閉気孔領域除外処理について説明するための説明図である。図3は、本実施形態に係る反応性指標算出ステップで実施されるClosing処理について説明するための説明図である。図4は、本実施形態に係る反応性指標算出ステップで実施されるAmbient Occlusion処理について説明するための説明図である。
【0034】
本実施形態に係る反応性指標算出ステップS15において、開気孔率を算出する際には、以下の3種類の処理が実施される。
すなわち、X線CT画像のグレースケール画像から、閉気孔領域を除外する閉気孔領域除外ステップと、閉気孔領域を除外後のグレースケール画像にClosing処理又はAmbient Occlusion処理を施して、開気孔領域を識別する開気孔領域識別ステップと、開気孔領域の体積分率である開気孔率を算出して、気孔率とする開気孔率算出ステップである。
【0035】
以下、図2図4を参照しながら、具体的に説明する。図2図4では、材料の一例としての焼結鉱について、図示している。なお、図2図4では、図面作成上の都合から、便宜的に、X線CT画像のグレースケール画像の断面画像を示している。しかしながら、実際の処理は、三次元形状を表したX線CT画像のグレースケール画像に対して実施される。
【0036】
≪閉気孔領域除外ステップ≫
閉気孔領域除外ステップは、X線CT画像のグレースケール画像に対して各種の処理を施して、着目するX線CT画像のグレースケール画像から、閉気孔領域を除外するステップである。図2(a)に示したように、処理が施される前のX線CT画像のグレースケール画像には、開気孔又は閉気孔の候補となる凹部が存在している。図2(a)に示した例では、便宜的に断面画像を示しているため、このような開気孔又は閉気孔の候補となる凹部は、孔として存在している。閉気孔領域除外ステップでは、このような開気孔又は閉気孔の候補となる領域から、閉気孔領域に対応する部分を除外する。
【0037】
具体的には、まず、図2(b)に示したように、グレースケール画像を構成する各画素の画素値を閾値判断することで、着目する材料の外形に対応する縁部を特定する。これにより、グレースケール画像において材料が占める領域(以下、「基材領域」ともいう。)を特定することができる。
【0038】
続いて、図2(b)に示したような画像に対して、閉気孔領域を特定する処理を実施する。このような処理としては、特に限定されるものではなく、例えば、3D可視化・解析アプリケーションAvizoの「Fill Hole」機能を用いることで、閉気孔領域を除外(より詳細には、閉気孔領域に対応する部分を消去)することができる。
【0039】
また、上記のような方法以外にも、例えば、特開2021-131313号公報に開示されているようなトップハット処理を用いて閉気孔領域を特定して、グレースケール画像中から除外することも可能である。
【0040】
より詳細には、まず、「対象画像に対してClosing処理を施した後に、対象画像からClosing処理を施した後の画像を差し引く処理」であるトップハット処理を、グレースケール画像を構成する全ての画素(ピクセル、又は、ボクセル)に対して実施して、トップハット処理が施されたグレースケール画像である差分グレースケール画像を生成する。その後、差分グレースケール画像を構成する画素について、所定の輝度閾値に基づく閾値判定を行うことで多孔質材料のうち気孔に対応する部位を識別して、気孔に対応する部位を表す気孔識別画像を生成する。このようにして得られた気孔識別画像を用いて、閉気孔領域を特定することが可能である。ここで、Closing処理は、着目する画像に対して、膨張(Dilation)処理を施した後、圧縮(Erosion)処理を施す画像処理手法である。
【0041】
また、トップハット処理の対象となる画素数を規定した条件である処理対象条件について、複数の処理対象条件を予め設定しておき、複数の処理対象条件のそれぞれのもとで、グレースケール画像に対してトップハット処理を実施して、複数の差分グレースケール画像を生成してもよい。かかる場合には、複数の差分グレースケール画像のそれぞれに対して閾値判定が実施されて、複数の気孔識別画像が生成され、複数の気孔識別画像を合成することで、合成気孔識別画像が生成され、かかる合成気孔識別画像を用いて、閉気孔領域を特定することが可能である。
【0042】
また、上記のような方法に限定されるものではなく、例えば、気孔の連結構造を実際に解析することで閉気孔領域を特定して、グレースケール画像中から除外することも可能である。
【0043】
このような処理により、図2(c)に示したような、閉気孔領域を除去した画像を得ることができる。なお、図2(c)では閉気孔が残存しているように見えるかもしれないが、これは2次元で表示しているからであり、3次元でみると開気孔のみが存在していることが確認できている。
【0044】
≪開気孔領域識別ステップ≫
以上説明したような閉気孔領域除外処理が施された後のグレースケール画像に対して、開気孔領域識別ステップが行われる。開気孔領域識別ステップは、閉気孔領域を除外後のグレースケール画像にClosing処理又はAmbient Occlusion処理を施して、開気孔領域を識別するステップである。
【0045】
ここで、Ambient Occlusion処理は、着目する画像に対してあらゆる方向から光を当てることを想定し、光を当てることで発生する陰影の情報を加味した画像を新たに生成する画像処理手法である。本実施形態に係る開気孔領域識別ステップでは、これらClosing処理又はAmbient Occlusion処理により、閉気孔領域除外処理後のグレースケール画像に存在する開気孔領域を、識別する。
【0046】
◇Closing処理
まず、図3を参照しながら、Closing処理を用いた開気孔領域の識別処理について、具体的に説明する。
Closing処理は、上記のように、着目する画像を一旦所定の大きさだけ膨張させた後、所定の大きさだけ圧縮させる処理である。いま、図3(a)に例示したように、画像中にある大きさの孔部が存在する場合を考える。かかる孔部に対してClosing処理を行うと、膨張・圧縮させる大きさ(この大きさのことを、以下では、「カーネルサイズ」と称する。)に応じて、元来画像中に存在した孔部が、膨張・圧縮後に孔部として再現される場合と、再現されない場合とが発生することがわかる。従って、Closing処理により開気孔領域を識別する場合、このカーネルサイズをどのように設定するかが重要となる。
【0047】
いま、図3(a)に示した画像において、破線で囲った領域以下の大きさを有する孔部を、開気孔として識別したいと想定する。この場合に、図3(a)に破線で囲った領域の最大距離を特定する。また、画像を構成する画素の大きさ(ピクセルサイズ)が、開気孔領域を識別する際の空間分解能を与える。図3(a)における最大距離が4mmであり、ピクセルサイズが23μm/pixelであったとすると、カーネルサイズは、4mm/(23μm/pixel×2)=87pixelとなる。ここで、左記の計算でピクセルサイズを2倍しているのは、膨張の際に、破線で囲った領域の両側の端部から、膨張が生じるからである。カーネルサイズを87pixel以上に設定することで、直径4mm以下の孔部は、膨張・圧縮後に孔部として再現されるようになる。以上のように、開気孔領域の識別を行う際には、識別したい最大の大きさ(いわば、最大気孔径)を、着目する材料についての事前の検証により予め把握しておき、X線CT画像のグレースケール画像のピクセルサイズに応じて、上記のような計算により、カーネルサイズの最小値を決定すればよい。もし上記の把握が困難であれば、試料半径の1/2を最大気孔径として、計算してもよい。
【0048】
本発明者らによる検証によれば、直径10~20mmの鉄鉱石、鉄鉱石ペレット、焼結鉱の解析を行う場合、カーネルサイズを30pixel以上に設定しておけば、所望の最大気孔径に応じて十分な解析を行うことが可能であった。ただし、かかるカーネルサイズは、大きな値に設定することが好ましく、例えば100pixel程度の値に設定することが好ましい。また、このようなカーネルサイズ及びピクセルサイズは、評価を行っている途中では変更しないことが好ましい。これにより、より正確な気孔率の算出が可能となり、ひいてはより正確な被還元性の評価が可能となる。
【0049】
このように、Closing処理では、まず、図3(a)に示したような処理条件の設定が行われる。なお、かかる処理条件は、共通の処理条件を適用可能なサンプルを解析する際には、一度実施してしまえばよく、解析ごとに変更しなくともよい。
【0050】
このようにして処理条件が設定されると、処理対象とする画像(すなわち、閉気孔領域が除去された画像)に対して、設定したカーネルサイズによる膨張及び圧縮処理が行われる。図3(a)に示した画像に対して、カーネルサイズ100pixelのClosing処理を施した結果を、図3(b)に示した。かかるカーネルサイズの設定により、直径約4mmまでの孔部が、処理後に孔部として再現されるようになる。その後、図3(a)に示した画像から、図3(b)に示した画像を引くことで、図3(c)に示したように開気孔領域を識別することができる。
【0051】
◇Ambient Occlusion処理
続いて、図4を参照しながら、Ambient Occlusion処理を用いた開気孔領域の識別処理について、具体的に説明する。
Ambient Occlusion処理は、上記のように、着目する画像に対してあらゆる方向から光を当てることを想定し、光を当てることで発生する陰影の情報を加味した画像を新たに生成する画像処理である。いま、図2(c)に示した閉気孔領域が除外された画像に対して、Ambient Occlusion処理を施すことで得られた画像を、図4(a)に示した。図4(a)に例示したように、かかる処理によって、画像中には、着目している対象の形状に起因した、光が当たることによって生じる陰影が加味される。
【0052】
かかるAmbient Occlusion処理において、主な処理条件は、仮想的に配置される光源までの最大距離(Maximum Distance)と、光源の個数(Number of Rays)がある。かかる処理条件は、着目する材料の大きさや形状等に応じて適宜設定すればよいが、両者とも、良い精度を得るためになるべく大きな値に設定する方が好ましい。本発明者らによる検証の結果、例えば、Maximum Distanceは、34.8437mmに設定すれば、良好な精度を得ることができる。また、Number of Raysは、6以上に設定すれば、開気孔領域を良好に識別することができたが、例えば50程度の値に設定することが好ましいことがわかった。
【0053】
また、Ambient Occlusion処理において設定可能な他の処理条件としては、例えば、Number of random rotationsや、Smoothing kernel radiusがある。本発明者らによる検証の結果、Number of random rotationsの値は、0に設定してもよいが、大きな値に設定する方が、より精度の高い処理を行うことが可能であることが判明した。Number of random rotationsの値は、例えば100程度に設定することが好ましい。また、Smoothing kernel radiusの値については、1以上の値(例えば、2程度)に設定すればよいことが判明した。
【0054】
例えば以上のような条件を設定して処理を行うことで、図4(a)に示したような画像を得ることが可能となる。
【0055】
その後、得られた画像を構成する各画素について、その画素値を閾値判断することで、開気孔領域を識別することができる。例えば、各画素に対して、0以上1以下の値が画素値として付与されている場合に、鉄鉱石、鉄鉱石ペレット、焼結鉱に存在する開気孔領域を識別するためには、画素値の最小値を0.60~0.85の範囲になるように設定し、かつ、最大値を1に設定すればよいことが明らかとなった。このようにして識別された領域が、開気孔領域となる。図4(a)で得られた画像に対して、上記のような閾値判断をすることで得られた開気孔領域を、図4(b)に示した。
【0056】
なお、上記のような処理条件は、評価を行っている途中では変更しないことが好ましい。これにより、より正確な気孔率の算出が可能となり、ひいてはより正確な被還元性の評価が可能となる。また、かかる処理条件は、共通の処理条件を適用可能なサンプルを解析する際には、一度実施してしまえばよく、解析ごとに変更しなくともよい。
【0057】
以上のようにして、本実施形態に係る開気孔領域識別ステップでは、前処理が施されたグレースケール画像から、開気孔領域を識別する。なお、開気孔領域の識別方法は、上記の方法に限定されるものではなく、公知の各種の識別方法を用いることが可能である。
【0058】
≪開気孔率算出ステップ≫
以上のようにして、X線CT画像のグレースケール画像から開気孔領域が識別されると、かかる開気孔領域の体積を特定することができる。かかる体積は、解析に用いたアプリケーションの一機能を利用することで特定することも可能であるし、特定した開気孔領域の連結構造を解析することで特定することも可能である。また、開気孔領域の体積と同様に、着目するグレースケール画像について、基材領域の体積も特定する。この基材領域の体積は、本実施形態においては、例えば図2(b)の体積に対応している。この場合は、同様に、閉気孔領域の体積も特定する必要がある。図2(c)の体積は、基材体積と閉気孔領域の体積の合計値であるため、かかる合計値を使用する。これら3つあるいは2つの体積を特定することで、以下の式に基づき、開気孔領域の体積分率である開気孔率を算出することができる。
【0059】

開気孔率[%]={開気孔領域の体積/(基材領域の体積+開気孔領域の体積+閉気孔領域の体積)}×100
【0060】
◇比表面積について
還元性を有する材料の被還元性を評価するにあたって、被還元性に寄与する要因の一つとして、還元反応が進行するための原料と材料とが反応しうる表面積の大きさが考えられる。そこで、本実施形態に係る反応性指標算出ステップS15では、反応性を示す指標の一つとして、比表面積(単位体積当たりの表面積の大きさ)に着目する。
【0061】
例えば以上説明したような処理により、着目する多孔質材料について、基材領域と、気孔領域(開気孔領域+閉気孔領域)と、を識別することができる。また、以上説明したような処理に依らずとも、例えば3D可視化・解析アプリケーションに実現されている各種機能を用いて、基材領域と気孔領域とを識別できる場合もある。このような識別結果を用いることで、多孔質材料の全体積と、多孔質材料の表面積と、を算出することができる。
【0062】
多孔質材料の全体積と表面積とが得られることで、着目する多孔質材料の比表面積を算出することができる。すなわち、得られた表面積を全体積で除することで、着目する多孔質材料の比表面積を算出することができる。
【0063】
本実施形態に係る反応性指標算出ステップS15では、例えば以上のようにして得られた開気孔率又は比表面積の少なくとも何れかを、反応性を表す指標として使用する。
【0064】
[平均輝度値算出ステップS17]
先だって言及したように、X線CT画像を構成する画素値は、各画素に到達したX線が透過してきた領域における構成組織の影響を受けたものとなる。従って、X線CT画像を構成する画素値に着目することで、着目する多孔質材料の構成組織の違いについても、考慮することが可能となる。より詳細には、多孔質材料のX線CT画像のうち、基材領域に対応する画素の画素値に着目することで、多孔質材料の構成組織の違いを考慮することができる。そこで、本実施形態に係る被還元性評価方法では、多孔質材料の構成組織の違いを反映した情報として、X線CT画像(より詳細には、グレースケール画像)の平均輝度値に着目した。
【0065】
例えば、多孔質材料として焼結鉱に着目すると、X線CT画像の輝度を表す画素値は、焼結鉱を構成する(基材、基質としての)鉱物相に関する情報を反映している。本発明者の検討によれば、焼結鉱中の鉱物相は、画素値の高い順番に、酸化鉄(Fe、Fe)、カルシウムフェライト、シリケートスラグ、気孔、の順番であることが判明した。また、各鉱物相が示す被還元性については、酸化鉄(Fe>Fe)>カルシウムフェライト>シリケートスラグの順であるとされている。以上の知見より、X線CT画像における基材領域の画素値が高いということは、かかる部位に存在する酸化鉄の存在量が相対的に高いということを意味していることがわかる。
【0066】
そこで、本実施形態に係る平均輝度値算出ステップS17は、グレースケール画像取得ステップS13において取得したグレースケール画像に基づき、多孔質材料に対応する部分を構成する画素の輝度値を用いて、平均輝度値を算出する。
【0067】
ここで、以下の具体例でも示すように、平均輝度値として、多孔質材料の全体(例えば、多孔質材料の直径が2mm程度であるとすると、直径2mmの範囲全体)での平均輝度値を算出してもよい。ただし、焼結鉱を例に挙げると、還元反応は焼結鉱の表層側から進行していくために、表層部位の鉱物相の方が、還元反応初期から影響を受けるものと考えられる。そこで、多孔質材料について、特に表層部位の鉱物相の情報を加味することで、より正確な被還元性の評価が実現されることが期待される。
【0068】
以上のような知見から、平均輝度値算出ステップS17では、上記の平均輝度値として、多孔質材料の表面から、所定深さの位置までの領域の平均輝度値を算出することが好ましい。
【0069】
多孔質材料の表面から、どのくらいの深さまでの領域を考慮するかについては、着目する多孔質材料の諸特性に応じて、適切に設定すればよい。例えば、以下の焼結鉱に関する具体例を考慮すると、多孔質材料の表面から、深さ方向に100μm以上500μm以下の位置までの領域に着目して、平均輝度値を算出してもよい。
【0070】
以下では、図5図7を参照しながら、上記のような平均輝度値の算出処理、特に、表面から所定深さまでの表層部位の領域における平均輝度値の算出処理について、詳細に説明する。
【0071】
以下、図5図7を参照しながら、かかる平均輝度値の算出処理について、詳細に説明する。図5及び図6は、本実施形態に係る平均輝度値算出ステップで実施される表層グレースケール画像の生成処理について説明するための説明図であり、図7は、本実施形態に係る平均輝度値算出ステップで生成される表層グレースケール画像の一例を示した説明図である。
【0072】
多孔質材料の全域にわたる平均輝度値を算出する場合には、得られたグレースケール画像のうち、多孔質材料に対応する領域について平均輝度値を算出すればよい。ただし、多孔質材料の表面から所定深さまでの領域について平均輝度値を算出する場合には、以下で説明するような表層部位のグレースケール画像(以下、表層グレースケール画像)を生成し、かかる表層グレースケール画像を用いて平均輝度値を算出することが簡便である。
【0073】
表面から所望の深さの位置までの表層グレースケール画像を得るためには、図5に模式的に示したように、まずマスキング画像を生成することが好ましい。
【0074】
かかるマスキング画像を得るためには、まず、グレースケール画像生成ステップで得たグレースケール像に対してセグメンテーション処理(対象画像から、注目する部位を切り取る処理)を施して、基質領域が抽出されたセグメンテーション画像を生成する。その後、得られたセグメンテーション画像に対して圧縮処理を施して、圧縮画像を生成する。圧縮処理を実施する際の圧縮率は、表層部位として着目する所望の深さ領域を考慮して、決定すればよい。例えば、表面から深さ方向に100μmまでの位置までの領域について、平均輝度値を算出したいときには、表層から深さ方向に100μmまでの領域が強調されたマスキング画像が得られるように、圧縮処理を実施する際の圧縮率を調整すればよい。続いて、生成したセグメンテーション画像から圧縮画像の差をとることで、着目する表層部位のみが強調された、マスキング画像を得ることができる。
【0075】
続いて、図6に示したように、グレースケール画像取得ステップで得られたグレースケール画像に対して、上記のようにして生成したマスキング画像を掛け合わせることで、着目する位置までの領域の平均画素値を算出するための、表層グレースケール画像を生成する。得られた表層グレースケール画像について、画素値の合計値を算出し、生成したマスキング画像の体積で除することで、多孔質材料の表面から、所定の深さの位置までの領域の平均輝度値を算出することができる。
【0076】
以上のようにして算出した表層グレースケール画像の一例を、図7に示した。図7では、図7の左上に示したX線CT画像のグレースケール画像に対し、それぞれ圧縮率を変えながらマスキング画像を生成している。これにより、表面から深さ方向に100μmの位置までの領域、表面から深さ方向に250μmの位置までの領域、及び、表面から深さ方向に500μmの位置までの領域のそれぞれについて、表層グレースケール画像を生成することができる。
【0077】
[被還元性評価ステップS19]
被還元性評価ステップS19は、各種のコンピュータやサーバ等の情報処理装置により実施されてもよいし、着目する材料の生産管理者等の人間が実施してもよい。本実施形態に係る被還元性評価ステップS19は、反応性指標算出ステップS15で算出された反応性を示す指標と、平均輝度値算出ステップS17で得られた平均輝度値と、の積に基づき、着目している多孔質材料の被還元性を評価するステップである。
【0078】
本実施形態に係る被還元性評価方法においては、以下の具体例でも示すように、平均輝度値そのものは、着目している多孔質材料の被還元性に対して、良好な相関性を示す数値ではない。しかしながら、本発明者による検討の結果、開気孔率や比表面積という反応性を表す指標に対して、平均輝度値を乗じることで得られた積が、被還元性に対して、極めて良好な相関性を示すことが判明した。
【0079】
すなわち、本実施形態に係る被還元性評価ステップS19では、「開気孔率×平均輝度値」で得られる指標、「比表面積×平均輝度値」で得られる指標、又は、「開気孔率×比表面積×平均輝度値」で得られる指標を、多孔質材料の被還元性を評価するための評価指標として用いる。
【0080】
図8は、評価指標と還元率との相関性を模式的に示した説明図である。
図8に模式的に示し、また、以下で改めて具体例を挙げながら示すように、被還元性を有する多孔質材料から算出される評価指標と、かかる材料の被還元性(例えば、JIS M8713:2009に規定される還元試験法(JIS-RI)で得られる「還元率RI」、1000℃でCO還元した際の還元率である「R1000」、1200℃でCO還元した際の還元率である「R1200」等)とは、高い相関があることが明らかとなった。このような評価指標と還元率との相関性に基づき、着目している多孔質材料についての評価指標から、その被還元性を評価することができる。
【0081】
ここで、かかる評価は、得られた評価指標から、「被還元性は悪い/中程度である/良い」のような、定性的な評価を行うものであってもよい。また、図8に例示したような相関性を表す直線の式(すなわち、いわゆる検量線)を用いて、得られた評価指標から還元率の具体的な値を算出するといった、定量的な評価を行うものであってもよい。なお、いわゆる検量線は、図8に例示したような直線である必要はなく、相関性を適切に表現可能な曲線又は直線を設定すればよい。
【0082】
ここで、多孔質材料の被還元性を評価する際には、共通する処理条件に基づき算出された気孔率のデータ群と比較することが好ましい。具体的には、例えばClosing処理に基づき算出された開気孔率に基づき評価を行う際には、共通する処理条件で実施されたClosing処理から得られた開気孔率のデータ群と比較を行うことが好ましい。このようにして評価を行うことで、着目する多孔質材料の被還元性を、より正確に評価することが可能である。
【0083】
このような処理を行うことにより、着目している材料の被還元性を適切に評価することが可能となる。
【0084】
以上、本実施形態に係る被還元性評価方法について、詳細に説明した。
【0085】
(被還元性評価方法の具体例1-焼結鉱の評価)
本具体例では、条件を変えた5水準の焼結鍋試験を実施して、焼結鉱サンプル(直径20mm)を準備した。各水準から3粒の焼結鉱サンプル粒を取り出し(計15粒)、特許文献2に記載されたようなX線CT装置にて、焼結鉱粒の三次元X線CT画像を得た。
【0086】
その後、上記のCT測定を実施した各焼結鉱粒を、還元炉にて還元した。より詳細には、1000℃から1200℃の温度域にかけては、5℃/分の昇温速度で昇温させながら、N:22.8L/分、CO:10L/分、H:1.2L/分のガス条件で還元を行った。温度が1200℃に到達したら、Nガスのみに切り替えると同時に、急冷した。なお、本具体例において、1200℃還元率は、還元試験前後の試料の質量減少量から求めた、質量変化率とした。本試験では、還元によって試料から取り除かれるのは、酸素のみであるため、この質量変化は、減少した酸素量に等しいと考えられる。そのため、質量変化率は、還元率に相当する指標として機能する。
【0087】
本具体例1は、同一のサンプルについて、X線CT測定と還元との双方を行う必要があることから、還元前に破壊を伴う分析は実施できないため、質量変化率を指標とした。なお、上記のような1200℃還元率(質量減少率)は、具体例2に示す高温荷重試験法で求められたR1200と高い相関があり、数値は異なるものの、ほぼ同一の意味合いを有するものである。
【0088】
得られたそれぞれのX線CT画像を用いて、Ambient Occlusion処理に基づき開気孔率を算出するとともに、先だって説明した方法により、比表面積を算出した。また、平均輝度値については、表面から、深さ方向に250μmの位置までの領域についての表層グレースケール画像を生成し、算出した。
【0089】
得られたそれぞれの1200℃還元率の分布状況について、開気孔率との関係、比表面積との関係、及び、平均輝度値との関係をグラフ化するとともに、近似直線と相関係数Rとを算出した。得られた結果を、図9A図9Cに示した。
【0090】
図9A図9Cにおいて、横軸は、それぞれ、開気孔率[%]、比表面積[μm/μm]、平均輝度値[a.u.]であり、縦軸は、1200℃還元率[%]である。図中には、得られた分布から規定される近似直線と、その相関係数Rの値を追記している。
【0091】
図9A及び図9Bから明らかなように、開気孔率及び比表面積のそれぞれは、1200℃還元率と高い相関が得られていることがわかる(開気孔率のR:0.8430、比表面積のR:0.8405)。一方、図9Cから明らかなように、平均輝度値と1200℃還元率との相関係数Rは、0.0130となっており、平均輝度値と1200℃還元率との間には、相関が確認されなかった。
【0092】
次に、開気孔率×平均輝度値と1200℃還元率との関係、比表面積×平均輝度値と1200℃還元率との関係、開気孔率×比表面積×平均輝度値と1200℃還元率との関係をそれぞれ図示したものを、図10A図10Cに示した。
【0093】
図10A図10Cにおいて、横軸は、それぞれ、開気孔率×平均輝度値、比表面積×平均輝度値、開気孔率×比表面積×平均輝度値であり、縦軸は、1200℃還元率[%]である。図中には、得られた分布から規定される近似直線と、その相関係数Rの値を追記している。
【0094】
得られた相関係数Rを見ると、図10A及び図10Bにおいて、順に、0.8612、0.8662となっていることがわかる。図9A図10A、及び、図9B図10Bをそれぞれ比較すると、相関係数Rの値は、平均輝度値を乗じた場合(図10A図10B)の方が高い値を示している。かかる結果から、反応性を示す指標(開気孔率、比表面積)に対して、1200℃還元率に相関を示さなかった平均輝度値を乗じたものの方が、1200℃還元率に対して、より高い相関を示していることがわかる。
【0095】
また、開気孔率、比表面積、及び、平均輝度値を乗じたもの(図10C)については、図10A及び図10Bと比較して、更に高い相関係数Rの値を示しており(0.8996)、2つの反応性を示す指標と、平均輝度値とをそれぞれ用いることで、還元率をより正確に見積もることが期待できる。
【0096】
ここで、図10A図10Cに示した結果は、焼結鉱の表面から、深さ方向に250μmの位置までの領域についての平均輝度値を考慮した結果であった。続いて、平均輝度値を考慮する際の深さ方向位置を変えながら、相関係数Rがどのように変化するかを検証した。この際、図9A図10Bに示した15粒の焼結鉱サンプルについて、表面からの深さ位置を、100μm、200μm、250μm(図10A図10Cの場合)、300μm、400μm、500μm、1000μmとした場合の平均輝度値、及び、粒子全体を考慮した場合の平均輝度値をそれぞれ算出して、これらの値で補正した開気孔率、比表面積、開気孔率×比表面積に対して、1200℃還元率との比較を実施した。得られた結果を、図11に示した。
【0097】
なお、図11では、平均輝度値を考慮しなかった場合を、表面からの深さ位置=0μmとして示しており、粒子全体の平均輝度値を考慮した場合を、表面からの深さ位置=3000μmとして示している。
【0098】
図11を見ると、表面からの深さ位置に関わらず、いずれの条件においても、平均輝度値を考慮することで、考慮しなかった場合よりも相関係数Rが改善していることがわかる。また、開気孔率×平均輝度値、及び、比表面積×平均輝度値の相関係数Rは、表面からの深さ位置=100μmにおいて、最大値を示した。一方、開気孔率×比表面積×平均輝度値の相関係数Rについては、表面からの深さ位置=300μmまで値が向上し、300μm以降は、値がほぼ変化がないという結果であった。
【0099】
図11に示した結果から、表面からの深さ位置に依らず、反応性を示す指標に対し、平均輝度値を乗じることで、相関がより向上すること、及び、着目する指標によって異なるものの、表面からの深さ位置=100~300μmまでの領域の平均輝度値を考慮することで、より高い相関係数Rが得られていることがわかる。
【0100】
(被還元性評価方法の具体例2-焼結鉱の評価)
図9A図11に示した具体例は、X線CT画像を得た焼結鉱サンプルのそのものを還元試験に供したため、同一の試料情報を比較したものであった。しかしながら、大量に生産される実機での焼結鉱の被還元性評価に対して、本手法を展開するのは、現実的に不可能である。そこで、以下の具体例では、各焼結鍋試験から3粒の焼結鉱粒を採取し、上記具体例1と同様の解析を実施して、開気孔率、比表面積、平均輝度値それぞれについて、平均値を取得し、各試験の操業データと比較した。
【0101】
本具体例では、JIS M8713:2009に従って測定されたRI(JIS-RI)と、高温荷重試験にて求めたR1000(1000℃での還元率)及びR1200(1200℃での還元率)とを、還元率として用いた。高温荷重試験は、内径85mm、高さ70mmのるつぼ内に10~15mmφの焼結鉱粒500gを、コークスで上下をサンドイッチする形で装入し、そのるつぼに対して、98kPaの荷重をかけつつ、CO:29.4%、H:3.6%、N:67.0%の還元ガスを流し、1600℃まで加熱して実施した(非特許文献1、非特許文献2)。加熱中、排ガス分析によるガス組成モニタリングを実施した。還元率は、事前測定した(還元前の)焼結鉱の成分分析値と排ガス組成の結果より、算出した。R1000、R1200は、それぞれ1000℃及び1200℃時点での還元率である。
【0102】
本具体例においても、得られたそれぞれのX線CT画像を用いて、Ambient Occlusion処理に基づき開気孔率を算出するとともに、先だって説明した方法により、比表面積を算出した。また、平均輝度値については、表面から、深さ方向に250μmの位置までの領域についての表層グレースケール画像を生成し、算出した。
【0103】
図12Aの上段には、開気孔率と各還元率(RI、R1000、R1200)との比較結果を示しており、図12Aの下段には、開気孔率×平均輝度値と各還元率との比較結果を示している。また、各グラフ中には、得られた近似直線と相関係数Rとを、あわせて示している。平均輝度値を考慮することで、相関係数Rの値は、RI:0.6285→0.6467、R1000:0.7666→0.8045、R1200:0.7886→0.8209と変化している。この結果より、平均輝度値を考慮しなくとも、開気孔率と各還元率とは良好な相関を示しているだけでなく、平均輝度値を考慮することで、相関がより向上していることがわかる。
【0104】
図12Bは、図12Aと同様にして、比表面積と各還元率(RI、R1000、R1200)との比較結果を示したものである。平均輝度値を考慮することで、相関係数Rの値は、RI:0.7251→0.7553、R1000:0.7284→0.7767、R1200:0.7900→0.8339と変化している。この結果より、平均輝度値を考慮しなくとも、比表面積と各還元率とは良好な相関を示しているだけでなく、平均輝度値を考慮することで、相関がより向上していることがわかる。
【0105】
また、図13には、開気孔率×比表面積×平均輝度値と、各還元率との関係を比較した結果を示した。開気孔率×比表面積×平均輝度値という評価指標と、各還元率との間には、それぞれ高い相関係数が確認できた(RI:0.7773、R1000:0.8171、R1200:0.8719)。
【0106】
以上のことから、具体例1に示したような同一サンプルの場合だけでなく、実際の操業データにおいても、開気孔率や比表面積といった反応性を示す指標に対し、平均輝度値を更に考慮することで、焼結鉱の還元指標をより正確に見積もることが可能であることが明らかとなった。
【0107】
次に、具体例1と同様にして、平均輝度値を考慮する際の深さ方向位置を変えながら、相関係数Rがどのように変化するかを検証した。この際、図12A図12Bに示した3粒の焼結鉱サンプルについて、表面からの深さ位置を、100μm、200μm、250μm(図12A図12B図13の場合)、300μm、400μm、500μm、1000μmとした場合の平均輝度値、及び、粒子全体を考慮した場合の平均輝度値をそれぞれ算出して、これらの値で補正した開気孔率、比表面積、開気孔率×比表面積に対して、各還元率との比較を実施した。得られた結果を、図14A図14Cに示した。
【0108】
図14A図14Cから明らかなように、表面からの深さ位置に関わらず、いずれの条件においても、平均輝度値を考慮することで、考慮しなかった場合よりも相関係数Rが改善していることがわかる。また、相関係数Rは、表面からの深さ位置=100μmにおいて、最大値を示した。
【0109】
図14A図14Cに示した結果から、表面からの深さ位置に依らず、反応性を示す指標に対し、平均輝度値を乗じることで、相関がより向上すること、及び、着目する指標によって異なるものの、表面からの深さ位置=100μmまでの領域の平均輝度値を考慮することで、より高い相関係数Rが得られていることがわかる。
【0110】
以上、図9A図14Cを参照しながら、本実施形態に係る被還元性評価方法について、具体的に説明した。
【0111】
≪第2の実施形態≫
(被還元性評価方法について)
以下では、図15図17を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る被還元性評価方法について、詳細に説明する。
【0112】
上記の第1の実施形態において言及したように、着目する多孔質材料についてのX線CT画像のグレースケール画像を画像処理することで得られる比表面積は、多孔質材料の還元反応に用いられる還元性物質との反応性を示す反応性指標として利用可能な物性値である。そこで、以下で説明する本発明の第2の実施形態では、X線CT画像のグレースケール画像を画像処理することで得られる比表面積ではなく、着目する多孔質材料を非破壊で測定することで得られる比表面積そのものを、多孔質材料の還元反応に用いられる還元性物質との反応性を示す反応性指標として利用する場合について説明する。
【0113】
なお、本実施形態に係る被還元性評価方法で着目する多孔質材料は、第1の実施形態で着目した多孔質材料と同様のものであるため、以下では詳細な説明は省略する。
【0114】
<被還元性評価方法の流れについて>
図15は、本発明の第2の実施形態に係る被還元性評価方法の流れの一例を示した流れ図である。
本実施形態に係る被還元性評価方法は、図15に示したように、X線CT画像取得ステップS11と、グレースケール画像取得ステップS13と、反応性指標算出ステップS16と、平均輝度値算出ステップS17と、被還元性評価ステップS20と、を有している。
【0115】
ここで、本実施形態に係るX線CT画像取得ステップS11、グレースケール画像取得ステップS13、及び、平均輝度値算出ステップS17については、第1の実施形態において説明したX線CT画像取得ステップS11、グレースケール画像取得ステップS13、及び、平均輝度値算出ステップS17の各ステップと同様であるため、以下では詳細な説明は省略する。
【0116】
[反応性指標算出ステップS16]
本実施形態に係る反応性指標算出ステップS16は、各種の比表面積測定装置、及び、かかる測定装置で得られた測定結果を解析する各種のコンピュータやサーバ等の情報処理装置により実施されるステップである。
【0117】
反応性指標算出ステップS16は、着目する多孔質材料と、多孔質材料の還元反応に用いられる還元性物質と、の反応性を示す指標を算出するステップである。
【0118】
ここで、本実施形態に係る反応性指標算出ステップS16では、上記のような反応性を示す指標として、着目する多孔質材料を非破壊の測定方法により測定することで得られる比表面積を用いる。
【0119】
なお、比表面積の測定方法として、いわゆる透過法を用いるにしろ、気体吸着法を用いるにしろ、比表面積測定の際には、着目する多孔質材料の表面に、用いた吸着質が吸着してしまう。そのため、着目する多孔質材料についての比表面積の測定は、X線CT画像の取得後(X線CT画像取得ステップS11の後)に実施することが好ましい。
【0120】
本実施形態に係る反応性指標算出ステップS16では、公知の各種の比表面積の測定方法を用いて、着目する多孔質材料の比表面積を測定することが可能である。本実施形態に係る反応性指標算出ステップS16では、上記のような測定方法によって測定された比表面積を、反応性を示す指標として用いる。
【0121】
ここで、比表面積を測定するための測定方法として、JIS Z8830:2013に規定された比表面積測定BET法を用いて、着目する多孔質材料のBET比表面積を測定することが好ましい。比表面積測定BET法を用いることで、着目する多孔質材料の比表面積を、より簡便かつより高精度に特定することが可能となる。なお、用いる測定装置については、特に限定されるものではなく、上記規格に準じたものを適宜利用することが可能である。
【0122】
この際、測定に用いる吸着質としての不活性ガスとしては、例えば、窒素、又は、クリプトンを用いればよい。また、比表面積測定BET法の測定条件としては、例えば、測定温度を約-195℃(液体窒素にて冷却することで実現する。)とし、フリースペース容積をおよそ14cmとすればよい。その上で、相対圧範囲0.10~0.25における吸着等温線に基づいて、着目する多孔質材料のBET比表面積を、上記規格に従って算出すればよい。
【0123】
[被還元性評価ステップS20]
被還元性評価ステップS20は、各種のコンピュータやサーバ等の情報処理装置により実施されてもよいし、着目する材料の生産管理者等の人間が実施してもよい。本実施形態に係る被還元性評価ステップS20は、反応性指標算出ステップS16で算出された反応性を示す指標(すなわち、比表面積)と、平均輝度値算出ステップS17で得られた平均輝度値と、の積に基づき、着目している多孔質材料の被還元性を評価するステップである。
【0124】
本実施形態に係る被還元性評価方法においても、平均輝度値そのものは、着目している多孔質材料の被還元性に対して、良好な相関性を示す数値ではない。しかしながら、本発明者による検討の結果、比表面積という反応性を表す指標に対して、平均輝度値を乗じることで得られた積が、被還元性に対して、極めて良好な相関性を示すことが判明した。
【0125】
すなわち、本実施形態に係る被還元性評価ステップS20では、「比表面積×平均輝度値」で得られる指標を、多孔質材料の被還元性を評価するための評価指標として用いる。
【0126】
以下で改めて具体例を挙げながら示すように、被還元性を有する多孔質材料について測定された比表面積(例えば、BET比表面積)と、かかる材料の被還元性(例えば、JIS M8713:2009に規定される還元試験法(JIS-RI)で得られる「還元率RI」)とは、高い相関があることが明らかとなった。このような比表面積と還元率との相関性に基づき、着目している多孔質材料についての評価指標(すなわち、比表面積)から、その被還元性を評価することができる。
【0127】
ここで、かかる評価は、得られた評価指標から、「被還元性は悪い/中程度である/良い」のような、定性的な評価を行うものであってもよい。また、相関性を表す直線の式(すなわち、いわゆる検量線)を用いて、得られた比表面積から還元率の具体的な値を算出するといった、定量的な評価を行うものであってもよい。なお、いわゆる検量線は、直線である必要はなく、相関性を適切に表現可能な曲線又は直線を設定すればよい。
【0128】
ここで、多孔質材料の被還元性を評価する際には、同じ測定条件のもとで測定された比表面積のデータ群と比較することが好ましい。このようにして評価を行うことで、着目する多孔質材料の被還元性を、より正確に評価することが可能である。
【0129】
このような処理を行うことにより、着目している材料の被還元性を適切に評価することが可能となる。
【0130】
以上、本実施形態に係る被還元性評価方法について、詳細に説明した。
【0131】
(被還元性評価方法の具体例3-焼結鉱の評価)
本具体例では、条件を変えた5水準の焼結鍋試験を実施して焼結鉱サンプルを準備し、その中から直径5mmのものを3粒取り出して、焼結鉱サンプル粒とした(計15粒)。これら15粒の焼結鉱サンプル粒について、特許文献2に記載されたようなX線CT装置にて、焼結鉱粒の三次元X線CT画像を得た。
【0132】
得られたそれぞれのX線CT画像を用いて、表面から深さ方向に100μmまでの領域についての表層グレースケール画像を生成し、平均輝度値を算出した。
【0133】
その後、上記のCT測定を実施した各焼結鉱粒について、Micromeritics社製の測定装置(型番:トライスターII 3020)により、Krガスを用いてBET比表面積を測定した。この際、測定温度を約-195℃(液体窒素にて冷却することで実現する。)とし、フリースペース容積をおよそ14cmとした上で、相対圧範囲0.10~0.25における吸着等温線に基づいて、各焼結鉱粒のBET比表面積を、上記規格に従って算出した。
【0134】
その後、BET比表面積の測定を終えた各焼結鉱粒を、還元炉にて還元した。より詳細には、1000℃から1200℃の温度域にかけては、5℃/分の昇温速度で昇温させながら、N:22.8L/分、CO:10L/分、H:1.2L/分のガス条件で還元を行った。温度が1200℃に到達したら、Nガスのみに切り替えると同時に、急冷した。なお、本具体例において、1200℃還元率は、還元試験前後の試料の質量減少量から求めた、質量変化率とした。本試験では、還元によって試料から取り除かれるのは、酸素のみであるため、この質量変化は、減少した酸素量に等しいと考えられる。そのため、質量変化率は、還元率に相当する指標として機能する。
【0135】
本具体例3は、同一のサンプルについて、X線CT測定と還元との双方を行う必要があることから、還元前に破壊を伴う分析は実施できないため、質量変化率を指標とした。なお、上記のような1200℃還元率(質量減少率)は、具体例4に示すJIS-RIと相関があり、数値は異なるものの、ほぼ同一の意味合いを有するものである。
【0136】
得られたそれぞれの1200℃還元率の分布状況について、BET比表面積との関係、及び、BET比表面積×平均輝度値との関係をそれぞれグラフ化するとともに、近似直線と相関係数Rとを算出した。得られた結果を、図16に示した。
【0137】
図16において、横軸は、比表面積[m/g](上段のグラフ)、比表面積×平均輝度値[a.u.](下段のグラフ)であり、縦軸は、1200℃還元率[%]である。図中には、得られた分布から規定される近似直線と、その相関係数Rの値を追記している。
【0138】
図16の上段に示したグラフから明らかなように、BET比表面積は、1200℃還元率と相関が得られていることがわかる(R:0.6548)。
【0139】
また、図16の下段に示したグラフにおいて、得られた相関係数Rを見ると、0.7116となっていることがわかる。図16に示した2つのグラフを比較すると、相関係数Rの値は、平均輝度値を乗じた場合(下段のグラフ)の方が高い値を示している。かかる結果から、反応性を示す指標であるBET比表面積に対して平均輝度値を乗じたものの方が、1200℃還元率に対して、より高い相関を示していることがわかる。
【0140】
(被還元性評価方法の具体例4-焼結鉱の評価)
上記具体例3で焼結鍋試験により準備した各焼結鉱サンプルの中から、直径が20mmのものを3粒ずつ採取し、上記具体例3と同様の解析を実施して、それぞれ、平均輝度値を算出するとともに、BET比表面積を測定した。その後、得られた3粒についての平均輝度値とBET比表面積のそれぞれを、更にサンプル数(3つ)で平均して、以下の評価に用いた。
【0141】
本具体例では、JIS M8713:2009に従って測定されたRI(JIS-RI)を、還元率として用いた。還元率は、事前測定した(還元前の)焼結鉱の成分分析値と排ガス組成の結果より、算出した。
【0142】
得られたそれぞれの還元率RI(JIS-RI)の分布状況について、BET比表面積との関係、及び、BET比表面積×平均輝度値との関係をそれぞれグラフ化するとともに、近似直線と相関係数Rとを算出した。得られた結果を、図17に示した。
【0143】
図17において、横軸は、比表面積[m/g](上段のグラフ)、比表面積×平均輝度値[a.u.](下段のグラフ)であり、縦軸は、還元率RI[%]である。図中には、得られた分布から規定される近似直線と、その相関係数Rの値を追記している。
【0144】
図17の上段に示したグラフから明らかなように、BET比表面積は、還元率RIと相関が得られていることがわかる(R:0.7028)。
【0145】
また、図17の下段に示したグラフにおいて、得られた相関係数Rを見ると、0.7999となっていることがわかる。図17に示した2つのグラフを比較すると、相関係数Rの値は、平均輝度値を乗じた場合(下段のグラフ)の方が高い値を示している。かかる結果から、反応性を示す指標であるBET比表面積に対して平均輝度値を乗じたものの方が、還元率RIに対して、より高い相関を示していることがわかる。
【0146】
以上のことから、具体例3に示したような同一サンプルの場合でなくても、反応性を示す指標であるBET比表面積に対し、平均輝度値を更に考慮することで、焼結鉱の還元指標をより正確に見積もることが可能であることが明らかとなった。
【0147】
以上、図16及び図17を参照しながら、本実施形態に係る被還元性評価方法について、具体的に説明した。
【0148】
<変形例>
ここで、第1の実施形態に係る被還元性評価方法で着目した反応性を示す指標である、X線CT画像から得られる開気孔率又は比表面積と、第2の実施形態に係る被還元性評価方法で着目した反応性を示す指標である、比表面積測定結果から得られる比表面積(例えば、BET比表面積)と、の双方を用いて、着目する多孔質材料の被還元性を評価することも可能である。
【0149】
例えば、X線CT画像由来の開気孔率と、比表面積測定から得られた比表面積(例えばBET比表面積)と、平均輝度値と、を乗じたものに基づき、被還元性の評価を行ってもよい。また、X線CT画像由来の比表面積と、比表面積測定から得られた比表面積(例えばBET比表面積)と、平均輝度値と、を乗じたものに基づき、被還元性の評価を行ってもよい。更には、X線CT画像由来の開気孔率及び比表面積と、比表面積測定から得られた比表面積(例えばBET比表面積)と、平均輝度値と、を乗じたものに基づき、被還元性の評価を行ってもよい。
【0150】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0151】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではない。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲、後述するような本発明の技術的範囲に属する構成及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要件は、その効果を損なわない範囲内で、任意に組み合わせることが可能である。また、当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0152】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的又は例示的なものであって、限定的ではない。つまり、本発明に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0153】
なお、以下のような構成も、本発明の技術的範囲に属する。
(1)
被還元性を有する多孔質材料の被還元性を評価する方法であって、
前記多孔質材料の三次元形状及び構成組織を表す輝度値で構成された画像であるX線CT画像を取得するX線CT画像取得ステップと、
取得した前記X線CT画像から、当該X線CT画像のグレースケール画像を取得するグレースケール画像取得ステップと、
前記多孔質材料と、前記多孔質材料の還元反応に用いられる還元性物質との反応性を示す指標を算出する反応性指標算出ステップと、
取得した前記グレースケール画像に基づき、前記多孔質材料に対応する部分を構成する画素の輝度値を用いて平均輝度値を算出する平均輝度値算出ステップと、
前記反応性を示す指標と、前記平均輝度値と、の積に基づき、前記多孔質材料の被還元性を評価する被還元性評価ステップと、
を含む、被還元性評価方法。
(2)
前記平均輝度値算出ステップは、前記平均輝度値として、前記多孔質材料の表面から、所定深さの位置までの領域の平均輝度値を算出する、(1)に記載の被還元性評価方法。
(3)
前記平均輝度値算出ステップは、前記多孔質材料の表面から、深さ方向に100μm以上500μm以下の位置までの領域に着目して、前記平均輝度値を算出する、(2)に記載の被還元性評価方法。
(4)
前記多孔質材料は、鉄鉱石、鉄鉱石ペレット又は焼結鉱である、(1)~(3)の何れか1つに記載の被還元性評価方法。
(5)
前記反応性指標算出ステップは、取得した前記グレースケール画像に基づき、前記反応性を示す指標を算出する、(1)~(4)の何れか1つに記載の被還元性評価方法。
(6)
前記反応性指標算出ステップは、
前記多孔質材料を、JIS Z8830:2013に規定された比表面積測定BET法によって測定して、BET比表面積を求め、
求めた前記BET比表面積を、前記反応性を示す指標として用いる、(1)~(4)の何れか1つに記載の被還元性評価方法。
(7)
前記反応性指標算出ステップは、
前記グレースケール画像から、前記多孔質材料の全体積と、前記多孔質材料の外部と繋がっている気孔が存在する領域である開気孔領域と、を識別し、識別した前記開気孔領域の体積と、前記多孔質材料の全体積と、から、前記開気孔領域の体積分率である開気孔率を算出し、
前記反応性を示す指標として、前記開気孔率を用いる、(5)に記載の被還元性評価方法。
(8)
前記反応性指標算出ステップは、
前記グレースケール画像から、前記多孔質材料の全体積と、前記多孔質材料の表面積と、を特定して、前記多孔質材料の表面積を前記多孔質材料の全体積で除した値である比表面積を算出し、
前記反応性を示す指標として、前記比表面積を用いる、(5)に記載の被還元性評価方法。
(9)
前記反応性指標算出ステップは、
前記グレースケール画像から、前記多孔質材料の全体積と、前記多孔質材料の外部と繋がっている気孔が存在する領域である開気孔領域と、を識別し、識別した前記開気孔領域の体積と、前記多孔質材料の全体積と、から、前記開気孔領域の体積分率である開気孔率を算出するとともに、
前記グレースケール画像から、前記多孔質材料の全体積と、前記多孔質材料の表面積と、を特定して、前記多孔質材料の表面積を前記多孔質材料の全体積で除した値である比表面積を算出し、
前記反応性を示す指標として、前記開気孔率と前記比表面積との積を用いる、(5)に記載の被還元性評価方法。
(10)
前記反応性指標算出ステップは、
前記グレースケール画像に対してClosing処理を実施し、予め定めた最大気孔径以下の気孔径を有する部位を、前記多孔質材料の外部と繋がっている気孔が存在する領域である開気孔領域として識別し、
前記開気孔領域に関する識別結果を用いて、前記反応性を示す指標を算出する、(5)、(7)、(8)、(9)の何れか1つに記載の被還元性評価方法。
(11)
前記反応性指標算出ステップは、
前記グレースケール画像に対してAmbient Occlusion処理を実施し、予め定めた範囲内の画素値を有する部位を、前記多孔質材料の外部と繋がっている気孔が存在する領域である開気孔領域として識別し、
前記開気孔領域に関する識別結果を用いて、前記反応性を示す指標を算出する、(5)、(7)、(8)、(9)の何れか1つに記載の被還元性評価方法。
(12)
前記反応性指標算出ステップは、
対象画像に対してClosing処理を施した後に、前記対象画像から前記Closing処理を施した後の画像を差し引く処理であるトップハット処理を、前記グレースケール画像を構成する全ての画素に対して実施して、トップハット処理が施されたグレースケール画像である差分グレースケール画像を生成し、
前記差分グレースケール画像を構成する画素について、所定の輝度閾値に基づく閾値判定を行うことで前記多孔質材料のうち気孔に対応する部位を識別し、前記気孔に対応する部位を表す気孔識別画像を生成し、
前記気孔識別画像を用いて、前記反応性を示す指標を算出する、(10)又は(11)に記載の被還元性評価方法。
(13)
前記反応性指標算出ステップは、
前記トップハット処理の対象となる画素数を規定した条件である処理対象条件について、複数の前記処理対象条件が設定されており、
前記複数の処理対象条件のそれぞれのもとで、前記グレースケール画像に対して前記トップハット処理が実施されて、複数の前記差分グレースケール画像が生成され、
前記複数の差分グレースケール画像のそれぞれに対して前記閾値判定が実施されて、複数の気孔識別画像が生成され、
前記複数の気孔識別画像を合成することで、合成気孔識別画像が生成され、
前記合成気孔識別画像を用いて、前記反応性を示す指標を算出する、(12)に記載の被還元性評価方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17