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特開2024-55770下水道管の外部水浸入部の補修工法及び補修装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055770
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】下水道管の外部水浸入部の補修工法及び補修装置
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20240411BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
E03F7/00
E03F3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137985
(22)【出願日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2022162806
(32)【優先日】2022-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】509341606
【氏名又は名称】株式会社川瀬工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110003454
【氏名又は名称】弁理士法人友野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 孝道
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063BA02
2D063BA37
2D063EA03
2D063EA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】下水道管の外部水浸入部に止水材を充填し弾性シール状態を得るとともに管内面の外部水浸入部の周辺部についても弾性シール状態を得ること。
【解決手段】走行ロボットを下水道の本管内に走行させカメラで本管、現在使用中の取付管および廃棄取付管に外部水浸入部の存在、状況、位置等を調査確認する調査確認ステップS1を行い、外部水浸入部がある場合に、走行ロボットに備えた止水材充填装置を用いて止水材を外部水浸入部に充填する止水材充填ステップS4を行い、止水材の前記外部水浸入部への充填は、止水材が本管および廃棄取付管にひび割れ部や破損孔に充満状態に充填するだけでなく、管内面のひび割れ部や破損孔を周辺部を被覆するように充填する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体を下水道の本管内に走行させ前記走行体に備えた撮像機構により前記下水道の本管、取付管、廃棄取付管の少なくともいずれかにおけるひび割れ部または破損孔である外部水浸入部の位置を含む現在映像を撮像し、地上側のモニターにより外部水浸入部の存在の有無を確認する調査確認ステップと、
前記外部水浸入部がある場合に、記走行体または別の走行体に備えた止水材充填装置を用いて止水材を管内面側より前記外部水浸入部を占めて充満状態に充填するだけでなく管外面に沿って広がるように充填するとともに管内面の前記外部水浸入部の周辺部を被覆するように充填する止水材充填ステップとを含む
ことを特徴とする下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項2】
前記止水材充填ステップにおいて、前記外部水浸入部が前記止水材の前記外部水浸入部への充填が前記本管の外面に及ばない恐れがあるひび割れである場合に、前記止水材充填ステップに先行して、前記走行体に備えたドリルにより前記外部水浸入部に管内面より管外面に到達する止水材流動孔を穿孔する止水材流動孔形成ステップを設ける
ことを特徴とする請求項1に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項3】
冷却水がドリル中心孔を通り先端より流出するように構成された前記ドリルを用いて前記止水材流動孔形成ステップを行う
ことを特徴とする請求項2に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項4】
前記調査確認ステップにおいて、前記本管、前記取付管および前記廃棄取付管に補修対象の外部水浸入部が存在するか否かの判断をアルゴリズムにより行うものであって、
前記モニターに前記撮像機構により撮像した現在映像と、前記現在映像に並べて現在映像比較できるようにデータベースに記憶されている過去映像とを映し、両現在映像の近似性に基づいて前記現在映像が、外部水浸入量の多、中、少、無しの水量把握を通じて補修の要・不要を判断するとともに、前記現在映像により外部水浸入部の発生位置、大きさ、形状の状況把握による補修規模、補修方法を選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項5】
前記調査確認ステップにおいて、前記本管、前記取付管および前記廃棄取付管に補修対象の外部水浸入部が存在するか否かの判断をAIにより行うものであって、
前記モニターに前記撮像機構により撮像した現在映像と、前記現在映像に並べて現在映像比較できるようにデータベースに記憶されている過去映像とを映し、前記モニターに備える演算部により前記現在映像の水流・水量と前記過去映像の水流・水量との近似性を数量比較し外部水浸入量の多、中、少、無しの水量把握を通じて補修の要・不要を判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項6】
前記止水材充填ステップは、前記外部水浸入部が前記取付管または前記廃棄取付管の管口部から離れた位置に存在する場合には、止水材充填圧力に抗し得る剛性を有するゴムからなる放置バルーンを膨らませた状態で前記取付管または前記廃棄取付管の上部に入れて閉塞し、前記取付管または前記廃棄取付管の管口部から前記放置バルーンまでの空間に前記止水材を充填する
ことを特徴とする請求項1に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項7】
前記止水材の充填箇所の管表面に堆積土砂、ヌメリを含む密着阻害物がある場合に、前記密着阻害物をジェット水流により除去する洗浄ステップを、前記止水材充填ステップに先行して行う
ことを特徴とする請求項1に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項8】
前記管内面の前記外部水浸入部を含む周囲を所要肉厚の前記止水材で遮蔽するよう前記止水材を充填形成するための型枠を設置する型枠設置ステップを、前記止水材充填ステップに先行し設ける
ことを特徴とする請求項1に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項9】
前記管内面の前記型枠を設置する部位を前記走行体に備えるカッターにより所要深さ切削する管内面切削ステップを、前記型枠設置ステップに先行し設ける
ことを特徴とする請求項8に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項10】
前記型枠内に充填した前記止水材の形状が安定した後に前記型枠を撤去する型枠撤去ステップを設ける
ことを特徴とする請求項8もしくは9に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項11】
前記型枠の撤去後に前記止水材の周辺形状を成形する止水材周辺形状成形ステップを設ける
ことを特徴とする請求項10に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項12】
前記止水材充填ステップの後に、前記走行体に備えた撮像機構により前記外部水浸入部の補修後の現在映像を撮像し、地上側のモニターの現在映像を観察して前記外部水浸入部への前記止水材の充填が十分であるか否かを確認する充填後確認ステップを設ける
ことを特徴とする請求項10に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項13】
前記充填後確認ステップにおいて、補修後の外部水浸入部が存在するか否かの判断をAIにより行うものであって、
前記モニターに前記撮像機構により撮像した補修後現在映像を映し、前記モニターに備える演算部による前記補修後現在映像中に外部水浸入の有無を画素変化の有無により判断する
ことを特徴とする請求項12に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項14】
前記充填後確認ステップにおいて前記止水材の外部水浸入部への充填が十分でない箇所が存在する場合に、前記止水材の外部水浸入部への充填が十分でない箇所に前記止水材を再度充填する
ことを特徴とする請求項12または13に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項15】
前記止水材充填ステップにおいて前記止水材充填装置に供給する前記止水材は、被充填空間を占めて形状固定される硬化型樹脂または非硬化型樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項16】
前記硬化型樹脂は、熱硬化型樹脂または時間硬化型樹脂を特徴とする請求項15に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項17】
前記止水材充填ステップにおいて前記止水材充填装置に供給する前記止水材は、常温よりも所要高い温度に加熱すると固体状態から流動し易い液体状態になる加熱流動性を有し地中温度に冷却されると被充填空間を占めて形状固定され半永久的に硬化せず弾性シールド機能を有する物性を備えた樹脂を流動状態に加熱して用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
【請求項18】
前記止水材充填ステップにおいて前記止水材充填装置に供給する前記止水材は、以下の(1)-(22)に列挙する不定形止水材のいずれか1つまたは複数の組み合わせを選択し適用する
ことを特徴とする請求項1に記載の下水道管の外部水浸入部の補修工法。
(1)ポリブデン樹脂止水材、
(2)エポキシ樹脂止水材、
(3)超速硬性セメント、
(4)アロフィックス(製品名;超微粒子注入剤)、
(5)ジェットセメント(製品名;超早硬モルタル)、
(6)止水セメント(製品名;超早強性接着剤)、
(7)液状で疎水性を有し二液硬化型のポリウレタン系止水材、
(8)液状で親水性を有し二液硬化型のポリウレタン系止水材、
(9)液状またはペースト状で水膨潤性を有し一液硬化型の親水性ポリウレタン系止水材、
(10)ペースト状で水膨潤性を有し一液硬化型のゴム/高吸水性ポリマー複合系止水材、
(11)ペースト状で非堆積膨張性を有し一液硬化型の変性シリコン系止水材、
(12)ペースト状で非堆積膨張性を有し一液硬化型のシリコーン/エポキシ複合系止水材、
(13)ペースト状で非堆積膨張性を有し一液硬化型のフロロシリコーン止水材、
(14)液状またはペースト状で堆積膨張性を有し非硬化型の高吸水性アクリル系ポリマー止水材、
(15)液状で非堆積膨張性を有し二液硬化型のアクリル系エマルション止水材、
(16)ペースト状で非堆積膨張性を有し非硬化型の無溶剤系止水材、
(17)ペースト状で非堆積膨張性を有し一液硬化型のフッ素系止水材、
(18)ペースト状で非堆積膨張性を有し非硬化型のポリオレフィン系止水材、
(19)ペースト状で非堆積膨張性を有し非硬化型のオレフィン/アクリル複合系止水材、
(20)ペースト状のアスファルトエマルション止水材、
(21)ペースト状で一液硬化型のベントナイト系止水材、
(22)ペースト状で二液硬化型の珪酸ソーダ系止水材、
【請求項19】
下水道の本管内を走行できる走行部と、
前記下水道の本管、取付管および廃棄取付管についてのひび割れ部または破損孔である外部水浸入部の存在、位置を含む状況を調査もしくは確認するために前記本管、前記取付管および前記廃棄取付管の内面を撮像できる撮像部と、
前記走行体または別の走行体に備えられ請求項17または18に記載の止水材を供給される止水材充填装置とを備え、
前記外部水浸入部がある場合に、前記止水材充填装置は、前記止水材を管内面側より前記外部水浸入部を占めて充満状態に充填するだけでなく管外面に沿って広がるように充填するとともに管内面の前記外部水浸入部の周辺部を被覆するように充填する構成である
ことを特徴とする下水道管の外部水浸入部の補修装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば下水道管の外部水浸入部の補修工法及び補修装置に係り、特に、雨水や地下水、伏流水等が下水道管の本管、取付管、または廃棄取付管に生じているひび割れ部や破損孔等から浸入する状態を解消するよう補修する、下水道管の外部水浸入部の補修工法及び補修装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理する必要がない雨水や地下水、湧き水、伏流水等(外部水と称するものとする。)は河川や湖沼、海に直接流すことができる。外部水が下水道管の本管、取付管、または廃棄取付管に生じているひび割れ部や破損孔等(外部水浸入部と称するものとする。)から浸入する状態を放置すると、下水処理場の処理能力が必要以上に大きくなり、下水処理コストが高く付き、さらに下水道管の周りの土砂が下水道管に流入し道路陥没と管閉塞を惹き起こす恐れがある。
【0003】
このため、下水道管に外部水浸入部が発生していないか否か定期的に外部水浸入部の存在の有無、状況を監視し、外部水浸入部が存在すれば外部水浸入部を解消するよう適切な補修工事が必要になる。
【0004】
すなわち、外部水浸入部は、下水道管の本管、取付管、または廃棄取付管にひび割れ部や破損孔等として不明に生じるので、下水処理場に近い本管の水量が通常より多くなることが観測されたときには、上流側の本管内にカメラを備えた走行ロボットを走行させ、さらに取付管内にもカメラを挿入して外部水浸入部の存在の有無、状況を監視し、外部水浸入部が存在すれば適切な補修工事を行う。
【0005】
外部水浸入部が本管に生じたひび割れ部である場合には、ひび割れ部に止水材を充填する必要があり、また破損孔であって管壁が消失している場合には、管壁を作り直すことを含めて破損孔を閉じて止水材を充填する必要がある。
【0006】
外部水浸入部が本管ではなく取付管に生じたひび割れ部や破損孔である場合には、取付管に対して止水材でひび割れ部や破損孔を閉塞するように補修すれば良いが、取付管が現在使用中の取付管である場合と廃棄取付管である場合とでは補修方法が異なってくる。
【0007】
外部水浸入部が現在使用中の取付管に生じている場合には、取付管の管口部を閉鎖しないで周囲を閉塞するように止水材を充填する必要があり、さらに、外部水浸入部が取付管の管口部より上方位置に生じている場合には、止水材を外部水浸入部の内側にライニングした状態に充填する必要がある。
【0008】
外部水浸入部が廃棄取付管に生じている場合には、廃棄取付管の管口部を含む周辺部を閉塞するように止水材を充填する必要がある。そして、止水材による止水は永続的なものである必要がある。さらに、廃棄取付管が本管の内方に突出した状態に本管に外部水浸入部が生じた場合、廃棄取付管の管口部を含む周辺部を閉塞する前に、本管の管壁および取付管の突出部を元の口径に回復するための円筒切削をする必要がある。
【0009】
特許文献1は下水道本管との接続部位を含む取付管の補修方法を開示している。
【0010】
この補修方法によれば、下水道本管側から取付管の管口部を介し上方へ送り込んだテレビカメラで上方部を撮影しその現在映像を現在使用中の取付管の管口部の周囲および管口部から離れた地上側でモニターにより外部水浸入部が存在するか否かの状況把握する工程を有する。
【0011】
また、この補修方法によれば、取付管が本管内へ陥没している場合には、下水道本管内へ送り込んだテレビカメラで陥没部を撮影して状況把握する工程と、取付管の本管内への突出管端部を切除する切除工程とを有する。
【0012】
さらに、この補修方法によれば、現在使用中の取付管の管口部より離れた上部に破損部がある場合には、テレビカメラで陥没部を撮影して状況把握する工程と、破損部を閉塞するように取付管に筒状に形成されている樹脂吸着材に熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含浸させたライニング材を反転挿入しライニング材の本管内の突出部位を切除するライニング切除工程を有する。
【0013】
そして、この補修方法によれば、取付管の管口部に袋体を挿入膨張して仮閉止する閉止工程と、取付管の開口部の周りの下水道本管の内周面に密着する型枠を配置する型枠設置工程と、型枠内に樹脂モルタルなどからなる補修用樹脂材を注入する樹脂材注入工程と、型枠と袋体を取り除き下水道本管の内周面を研磨する研磨工程と含む構成である。
【0014】
特許文献2は、下水道本管に接続された放置取付管の補修方法を開示している。
【0015】
この補修方法によれば、放置取付管が本管内に陥没しかつ放置取付管の周囲の外部水浸入部を閉塞する場合には、下水道本管側から送り込んだテレビカメラを介して行う状況把握工程と、型枠を本管内面に密着させて放置取付管の管口部を含む周辺の外部水浸入部を閉塞する充填用型枠設置工程と、外部水浸入部にシリカセメント等の土質安定材を充填して硬化させる空間閉塞工程と、充填用型枠撤去工程と含む構成である。
【0016】
また、この補修方法によれば、放置取付管が本管内に陥没しかつ放置取付管の周囲の外部水浸入部を閉塞する場合には、突出部の切削を行う切削工程と、放置取付管内にシリカセメント等の土質安定材を充填して硬化させる空間閉塞工程と、型枠を本管内面に密着させて放置取付管の管口部を含む周辺の外部水浸入部を閉塞する注入用型枠設置工程と、耐食性注入物を注入して硬化させる耐食処理工程と、注入用型枠撤去工程と、耐食性注入物の表面処理を行う仕上げ工程と含む構成である。
【0017】
特許文献3は下水道本管との接続部位を含む取付管の補修方法を開示している。
【0018】
この補修方法によれば、下水道の本管及び/もしくは取付管内の外部水浸入部の状況を調査する調査確認工程と、調査確認工程で把握した状況に応じて取付管内を補修するための取付管補修工程と、取付管内に堆積した土砂等を本管内より洗浄する取付管内洗浄工程と、充填空隙を限定するため本管または取付管にバルーン型の特殊型枠を設置する特殊型枠工程と、充填空隙を埋めるよう泡モルタルを注入するとともに取付管内の気体を排気する泡モルタル注入・気体排気工程と、泡モルタル注入後、取付管の管口部を樹脂系の閉塞材で閉塞する取付管口部閉塞工程と含む構成である。廃棄取付管に外部水浸入部が存在する場合には廃棄取付管内に泡モルタルを充填し、廃棄取付管の管口部を含む周囲を樹脂系の閉塞材で閉塞する。現在使用中の取付管の管口部の周囲に外部水浸入部が存在する場合には、取付管の管路を確保するとともに型枠を本管内面に密着させて外部水浸入部を閉塞し泡モルタルを充填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許第3626720号公報
【特許文献2】特許第4782757号公報
【特許文献3】特許第4652471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
特許文献1によれば、現在使用中の取付管の管口部より離れて破損部がある場合に熱硬化性樹脂を含浸させたライニング材を反転挿入してなるライニング材は破損部を閉塞していないのでライニング材と取付管との間の隙間を通して外部水が浸入することを完全には回避できない。
【0021】
特許文献1-3は同様の問題点がある。すなわち、型枠が本管内面に密着して廃棄取付管の管口部の周囲を閉塞するよう設置され、特許文献1では樹脂モルタルが、また特許文献2では耐食性注入物が、特許文献3では泡モルタルを止水材に用い充填されるから、泡モルタルは本管の外部水浸入部の孔端面とのみ接触した状態に充填され硬化することになり、補修用樹脂材と取付管の内壁との間に微小な隙間が生じてしまい、ここから外部水が浸入することを完全には回避できない。
【0022】
さらに、特許文献2によれば、廃棄取付管内に充填するシリカセメントの硬化に長時間かかり、シリカセメントが硬化するまでは次の工程に移れないので、作業効率に支障をきたし、加えてシリカセメントは初期強度が低く、また強度発揮に時間が掛かる。また、不要になった取付管を最終的に撤去したい場合に、シリカセメントの撤去作業が非常に行い難い。
【0023】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を企図してなされたものであり、止水材が外部水浸入部の端面(本管の破断面)を充填シールするだけでなく、外部水浸入部を管内外から重ねて閉塞する工夫を加え、しかも、従来の止水材とは異なり弾性シール機能を有し外部水浸入部を完全遮蔽することができ、補修時間を短縮できる下水道管の外部水浸入部の補修工法及び補修装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、本願の第1の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、走行体を下水道の本管内に走行させ前記走行体に備えた撮像機構により前記下水道の本管、取付管、廃棄取付管の少なくともいずれかにおけるひび割れ部または破損孔である外部水浸入部の位置を含む現在映像を撮像し、地上側のモニターにより外部水浸入部の存在の有無を確認する調査確認ステップと、前記外部水浸入部がある場合に、記走行体または別の走行体に備えた止水材充填装置を用いて止水材を管内面側より前記外部水浸入部を占めて充満状態に充填するだけでなく管外面に沿って広がるように充填するとともに管内面の前記外部水浸入部の周辺部を被覆するように充填する止水材充填ステップとを含むことを特徴とする構成である。
【0025】
本願の第2の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第1の発明態様の構成に加え、前記止水材充填ステップにおいて、前記外部水浸入部が前記止水材の前記外部水浸入部への充填が前記本管の外面に及ばない恐れがあるひび割れである場合に、前記止水材充填ステップに先行して、前記走行体に備えたドリルにより前記外部水浸入部に管内面より管外面に到達する止水材流動孔を穿孔する止水材流動孔形成ステップを設ける構成である。
【0026】
本願の第3の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第2の発明態様の構成に加え、冷却水がドリル中心孔を通り先端より流出するように構成された前記ドリルを用いて前記止水材流動孔形成ステップを行う構成である。
【0027】
本願の第4の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第1の発明態様の構成に加え、前記調査確認ステップにおいて、前記本管、前記取付管および前記廃棄取付管に補修対象の外部水浸入部が存在するか否かの判断をアルゴリズムにより行うものであって、前記モニターに前記撮像機構により撮像した現在映像と、前記現在映像に並べて現在映像比較できるようにデータベースに記憶されている過去映像とを映し、両現在映像の近似性に基づいて前記現在映像が、外部水浸入量の多、中、少、無しの水量把握を通じて補修の要・不要を判断するとともに、前記現在映像により外部水浸入部の発生位置、大きさ、形状の状況把握による補修規模、補修方法を選択する構成である。
【0028】
本願の第5の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第1の発明態様の構成に加え、前記調査確認ステップにおいて、前記本管、前記取付管および前記廃棄取付管に補修対象の外部水浸入部が存在するか否かの判断をAIにより行うものであって、前記モニターに前記撮像機構により撮像した現在映像と、前記現在映像に並べて現在映像比較できるようにデータベースに記憶されている過去映像とを映し、前記モニターに備える演算部により前記現在映像の水流・水量と前記過去映像の水流・水量との近似性を数量比較し外部水浸入量の多、中、少、無しの水量把握を通じて補修の要・不要を判断する構成である。
【0029】
本願の第6の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第1の発明態様の構成に加え、前記止水材充填ステップは、前記外部水浸入部が前記取付管または前記廃棄取付管の管口部から離れた位置に存在する場合には、止水材充填圧力に抗し得る剛性を有するゴムからなる放置バルーンを膨らませた状態で前記取付管または前記廃棄取付管の上部に入れて閉塞し、前記取付管または前記廃棄取付管の管口部から前記放置バルーンまでの空間に前記止水材を充填する構成である。
【0030】
本願の第7の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第1の発明態様の構成に加え、前記止水材の充填箇所の管表面に堆積土砂、ヌメリを含む密着阻害物がある場合に、前記密着阻害物をジェット水流により除去する洗浄ステップを、前記止水材充填ステップに先行して行う構成である。
【0031】
本願の第8の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第1の発明態様の構成に加え、前記管内面の前記外部水浸入部を含む周囲を所要肉厚の前記止水材で遮蔽するよう前記止水材を充填形成するための型枠を設置する型枠設置ステップを、前記止水材充填ステップに先行し設ける構成である。
【0032】
本願の第9の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第9の発明態様の構成に加え、前記管内面の前記型枠を設置する部位を前記走行体に備えるカッターにより所要深さ切削する管内面切削ステップを、前記型枠設置ステップに先行し設ける構成である。
【0033】
本願の第10の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第8または第9の発明態様の構成に加え、前記型枠内に充填した前記止水材の形状が安定した後に前記型枠を撤去する型枠撤去ステップを設ける構成である。
【0034】
本願の第11の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第10の発明態様の構成に加え、前記型枠の撤去後に前記止水材の周辺形状を成形する止水材周辺形状成形ステップを設ける構成である。
【0035】
本願の第12の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第10の発明態様の構成に加え、前記止水材充填ステップの後に、前記走行体に備えた撮像機構により前記外部水浸入部の補修後の現在映像を撮像し、地上側のモニターの現在映像を観察して前記外部水浸入部への前記止水材の充填が十分であるか否かを確認する充填後確認ステップを設ける構成である。
【0036】
本願の第13の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第12の発明態様の構成に加え、前記充填後確認ステップにおいて、補修後の外部水浸入部が存在するか否かの判断をAIにより行うものであって、前記モニターに前記撮像機構により撮像した補修後現在映像を映し、前記モニターに備える演算部による前記補修後現在映像中に外部水浸入の有無を画素変化の有無により判断する構成である。
【0037】
本願の第14の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第12または第13の発明態様の構成に加え、前記充填後確認ステップにおいて前記止水材の外部水浸入部への充填が十分でない箇所が存在する場合に、前記止水材の外部水浸入部への充填が十分でない箇所に前記止水材を再度充填する構成である。
【0038】
本願の第15の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第1の発明態様の構成に加え、前記止水材充填ステップにおいて前記止水材充填装置に供給する前記止水材は、被充填空間を占めて形状固定される硬化型樹脂または非硬化型樹脂を用いる構成である。
【0039】
本願の第16の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第15の発明態様の構成に加え、前記硬化型樹脂は、熱硬化型樹脂または時間硬化型樹脂を用いる構成である。
【0040】
本願の第17の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第1の発明態様の構成に加え、前記止水材充填ステップにおいて前記止水材充填装置に供給する前記止水材は、常温よりも所要高い温度に加熱すると固体状態から流動し易い液体状態になる加熱流動性を有し地中温度に冷却されると被充填空間を占めて形状固定され半永久的に硬化せず弾性シールド機能を有する物性を備えた樹脂を流動状態に加熱して用いる構成である。
【0041】
本願の第18の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、第1の発明態様の構成に加え、前記止水材充填ステップにおいて前記止水材充填装置に供給する前記止水材は、以下の(1)-(22)に列挙する不定形止水材のいずれか1つまたは複数の組み合わせを選択し適用する構成である。
(1)ポリブデン樹脂止水材、
(2)エポキシ樹脂止水材、
(3)超速硬性セメント、
(4)アロフィックス(製品名;超微粒子注入剤)、
(5)ジェットセメント(製品名;超早硬モルタル)、
(6)止水セメント(製品名;超早強性接着剤)、
(7)液状で疎水性を有し二液硬化型のポリウレタン系止水材、
(8)液状で親水性を有し二液硬化型のポリウレタン系止水材、
(9)液状またはペースト状で水膨潤性を有し一液硬化型の親水性ポリウレタン系止水材、
(10)ペースト状で水膨潤性を有し一液硬化型のゴム/高吸水性ポリマー複合系止水材、
(11)ペースト状で非堆積膨張性を有し一液硬化型の変性シリコン系止水材、
(12)ペースト状で非堆積膨張性を有し一液硬化型のシリコーン/エポキシ複合系止水材、
(13)ペースト状で非堆積膨張性を有し一液硬化型のフロロシリコーン止水材、
(14)液状またはペースト状で堆積膨張性を有し非硬化型の高吸水性アクリル系ポリマー止水材、
(15)液状で非堆積膨張性を有し二液硬化型のアクリル系エマルション止水材、
(16)ペースト状で非堆積膨張性を有し非硬化型の無溶剤系止水材、
(17)ペースト状で非堆積膨張性を有し一液硬化型のフッ素系止水材、
(18)ペースト状で非堆積膨張性を有し非硬化型のポリオレフィン系止水材、
(19)ペースト状で非堆積膨張性を有し非硬化型のオレフィン/アクリル複合系止水材、
(20)ペースト状のアスファルトエマルション止水材、
(21)ペースト状で一液硬化型のベントナイト系止水材、
(22)ペースト状で二液硬化型の珪酸ソーダ系止水材、
【0042】
本願の第19の発明態様に係る下水道管の外部水浸入部の補修装置は、下水道の本管内を走行できる走行部と、前記下水道の本管、取付管および廃棄取付管についてのひび割れ部または破損孔である外部水浸入部の存在、位置を含む状況を調査もしくは確認するために前記本管、前記取付管および前記廃棄取付管の内面を撮像できる撮像部と、前記走行体または別の走行体に備えられ第17または18の発明態様に係る前記止水材を供給される止水材充填装置とを備え前記外部水浸入部がある場合に、前記止水材充填装置は、前記止水材を管内面側より前記外部水浸入部を占めて充満状態に充填するだけでなく管外面に沿って広がるように充填するとともに管内面の前記外部水浸入部の周辺部を被覆するように充填する構成である。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、止水材が外部水浸入部の端面を充填シールするだけでなく、外部水浸入部を管内外から重ねて閉塞する工夫を加え、しかも、従来の止水材とは異なり弾性シール機能を有し外部水浸入部を完全遮蔽することができ、補修時間を短縮できる下水道管の外部水浸入部の補修工法及び補修装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法を示すフローチャートである。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法の全体の概要図である。
図3A】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置で使用する止水材の他例を示す。
図3B】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置で使用する止水材の他例を示す。
図3C】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置で使用する止水材の他例を示す。
図3D】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置で使用する止水材の他例を示す。
図3E】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置で使用する止水材の他例を示す。
図3F】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置で使用する止水材の他例を示す。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法を示す図である。
図5A】本発明の第3の実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法を示す。
図5B】本発明の第3の実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法を示す。
図6A】本発明の第4の実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法を示す。
図6B】本発明の第4の実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法を示す。
図7A】本発明の第5の実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法を示す。
図7B】本発明の第5の実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法を示す。
図8A】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置で使用する止水材の一例を示す。
図8B】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置で使用する止水材の他例を示す。
図8C】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置で使用する止水材の他例を示す。
図9A】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置で使用する止水材の他例を示す。
図9B】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置で使用する止水材の他例を示す。
図9C】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置で使用する止水材の他例を示す。
図10A】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置で使用する止水材の他例を示す。
図10B】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置で使用する止水材の他例を示す。
図11A】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法におけるアルゴリズムおよびAIの判断で用いる浸入水無しの映像例を示す。
図11B】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法におけるアルゴリズムおよびAIの判断で用いる浸入水多の映像例を示す。
図11C】本発明の一実施形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法におけるアルゴリズムおよびAIの判断で用いる浸入水少の映像例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法について図面を参照して説明する。
【0046】
図1は、本発明の実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法のフローチャートである。このフローチャートから分かるように、この補修工法において、調査確認ステップS1、止水材予備加熱ステップS3、止水材充填ステップS4、及び施工後確認ステップS6は必須の構成であり、事前処理工ステップS2及び事後処理工ステップS5は選択的(任意)構成である。
【0047】
本発明の補修工法に係る必須の構成要件に対応する部分は、調査確認ステップS1と、止水材充填ステップS4である。
【0048】
すなわち、本発明に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法は、調査確認ステップS1と、止水材充填ステップS4とを含む。調査確認ステップS1は、走行体を下水道の本管内に走行させ前記走行体に備えた撮像機構により前記下水道の本管、取付管、廃棄取付管の少なくともいずれかにおけるひび割れ部または破損孔である外部水浸入部の位置を含む現在映像を撮像し、地上側のモニターにより外部水浸入部の存在の有無を確認する。止水材充填ステップS4は、前記外部水浸入部がある場合に、止水材を前記走行体または別の走行体に備えた止水材充填装置に供給し、前記止水材充填装置を用いて前記止水材を管内面側より前記外部水浸入部を占めて充満状態に充填するだけでなく管外面に沿って広がるように充填するとともに管内面の前記外部水浸入部の周辺部を被覆するように充填する。なお、加熱により流動性を有する止水材と加熱を必要としない流動性を有する止水材の詳細については後述する。
【0049】
[調査確認ステップS1]
外部水浸入部は、図2に示す下水道管の本管1、現在使用中の取付管2および廃棄取付管3に(原因が必ずしも明らかでない場合もある)ひび割れ部や破損孔等として生じる。そのため、定期的にまたは下水処理場に近い本管の水量が通常より多くなることが観測され外部水浸入部の発生が想定されるときに、調査確認ステップS1を行う。
【0050】
調査確認ステップS1は、本管1内にカメラ12を備えた走行ロボット11を走行させてカメラ12で本管1、現在使用中の取付管2、および廃棄取付管3の内面を撮影し、ケーブル13で繋がっている地上配備の車両14に装備したモニター15で外部水浸入部の存在の有無、状況等を監視し、外部水浸入部の存在が確認されたときに事前処理工ステップS2と止水材予備加熱ステップS3とに移行する。前述したように、止水材予備加熱ステップS3は、加熱により流動性を有する止水材を用いるときにだけ適用する。
【0051】
調査確認ステップS1では、外部水浸入部が本管1、現在使用中の取付管2、および廃棄取付管3のいずれの位置にどのような状況で生じているかについて、カメラ12及びモニター15を介して確認を行う。具体的には、ひび割れ部または破損孔が生じている位置と管径とひび割れ部の長さと隙間、または破損孔の大きさと形状等の確認を行う。
【0052】
さらに、本管内に現在使用中の取付管2または廃棄取付管3の内端が陥没しているか、外部水浸入部に対応する管内面に土砂やヌメリ、その他の堆積物、付着物が存在しているか、ひび割れ部の隙間が小さく止水材を管内面から充填しても管外面へ到達しにくい状態であるか、ひび割れ部および/または破損孔を隠蔽するように型枠を設けて充填空間を画成することが適切である等について調査確認する。
【0053】
上述した確認/調査としては、撮像されたイメージを車両14内の確認者が視認によって確認/調査する態様が代表的であるが、これに限らず、当該イメージがたとえばネットワークを介して送信された先(たとえば遠隔地にある作業所/センター等)内の確認者が視認によって確認/調査する態様であってもよいし、或いは、これら車両14や遠隔地で画像解析プログラム(公知のものを用いることができるため、詳述はしない)によって画像上の乱れを認識することでひび割れ部または破損孔が生じている位置と管径とひび割れ部の長さと隙間、または破損孔の大きさと形状等を認識させる態様であってもよい。
【0054】
[事前処理工ステップS2]
事前処理工ステップS2は、調査確認の内容に応じて、(1)切削と穿孔とヌメリ・堆積物除去等の事前処理工を行う場合と、(2)事前処理工を行わないで外部水浸入部を隠蔽するように型枠設置工を行う場合と、(3)事前処理工を行いさらに型枠設置工を行う場合と、(4)事前処理工と型枠設置工のいずれも行わない場合とに分けられる。
【0055】
上記(1)の事前処理工の一層詳細について説明する。(1a)廃棄取付管が本管に陥没している状態において、廃棄取付管の本管内面よりも内方に突出している管口部を本管内面より引っ込む状態になるまで切削する場合と、(1b)ひび割れ部の隙間が狭く止水材を管内面側から塗り込んでも(充填しても)止水材が管外面側に到達しない恐れがある状態においてコンクリート穿孔用のドリルによりひび割れ部に沿って1つまたは複数の貫通孔を設ける場合と、(1c)管内面にヌメリや堆積物、土砂が存在する状態においてジェット水流および/またはブラシロールにより除去する場合と、(1d)廃棄取付管内の止水材を充填する密閉空間を限定的に画成するため特殊風船を挿入し膨張させる場合と、等がある。以降では、(走行)ロボットが行為主体であるものとして説明を行うが、これは、かかる下水管が、作業環境的に、或いは物理的に、人間が作業するのに適しない環境であっても人間に代替して作業を行うことができることを示すものであり、また、(走行)ロボットを操作する作業者が当該(走行)ロボットを通じて、作業を行う態様であっても、或いは(走行)ロボットが公知のプログラムに基づいて自律的に作業を行う態様であっても、いずれでもよい。
【0056】
貫通孔を設ける場合には、走行ロボットに装備されたロボットハンドに把持されるドリルマシンのドリルにより、走行ロボットが水を掛けながら先行して行う。
【0057】
ヌメリや堆積物、または土砂を走行ロボットが除去する場合には、走行ロボットに装備されたロボットハンドに把持されるジェット水噴射ノズル、またはモータ付きブラシロール回転装置により行う。
【0058】
特殊風船は、走行ロボットに装備されたロボットハンドに把持される保持枠に係止されており、走行ロボットがこの特殊風船を廃棄取付管の管口部よりも上方位置に挿入する。その位置で走行ロボットに装備された空気給送ポンプにより圧縮空気を連結チューブを介して給送し特殊風船を膨張させ廃棄取付管の内面を閉塞した状態とし、保持枠を本管内に回収する。
【0059】
型枠設置工は、走行ロボットに装備されたロボットハンドに把持される1つのまたは複数分割された型枠を管内面に密着するよう押し付けて固定し型枠で外部水浸入部を隠蔽するように設置する。型枠は、ひび割れ部や破損孔を含んで管内面周辺部との間に数mm~十数mmのギャップを有するように外部水浸入部を隠蔽する。外部水浸入部が本管を分断するように生じたひび割れである場合には、型枠は本管の内周を一周する状態に設ける。廃棄取付管が管口部の上方位置で食い違い状に分断しているときには、廃棄取付管の管口部を含む周辺部を閉塞するように型枠を設ける。
【0060】
なお、事前処理工ステップS2で用いる走行ロボットは、調査確認ステップS1で用いる走行ロボットまたは別の走行ロボットに、カメラのほか、上述したドリルマシン、ジェット水噴射ノズル、またはモータ付きブラシロール回転装置、等を装備する。
【0061】
[止水材予備加熱ステップS3]
止水材予備加熱ステップS3は、止水材として、常温よりも所要高い温度に加熱されると流動状態になり地中温度に冷却されると短時間に硬化していくが完全硬化とはならず少し硬い状態を保持する素材として、たとえばシリコンゴムのような弾性シール機能を有する樹脂材(例えば、合成ポリオレフィン系コンパウンド;商品名「アクアストップ」)を好適に用いる。止水材予備加熱ステップS3は、止水材を流動状態に加熱し止水材充填ステップにおいて用いる止水材充填装置に供給できるよう準備を行うことである。
【0062】
加熱により流動性(充填性)を有する止水材を用いる場合には、止水材予備加熱ステップS3が必要であるが、加熱を必要としない流動性(充填性)を有する止水材を用いる場合には、止水材予備加熱ステップS3は不要である。
【0063】
止水材予備加熱ステップS3では、例えば60℃の温度では流動性を有し常温以下では半永久的に完全には硬化せず弾力性を有する止水材を60℃に予備加熱する。そして、補修位置の走行ロボットに装備されたロボットハンドに把持される止水材充填装置のプランジャに供給する。止水材充填装置は、地上側に装備される加熱タンクで加熱され粘性流体圧送ポンプによりホースを通して止水材充填装置に圧送される。なお、止水材充填装置は建築物の壁面の壁面パネル(たとえば軽量コンクリートパネル)-壁面パネル間の目地に充填される粘性を有する目地埋め材、を充填するのに用いる(たとえばノズル式)充填機や充填ガン等の装置と同等の装置が用いられる。
【0064】
[止水材充填ステップS4]
止水材充填ステップS4では、止水材が図2に示す本管1、現在使用中の取付管2、または廃棄取付管3のひび割れ部や破損孔に充満状態に充填されることで当該ひび割れ部や破損孔をシールするだけでなく、管内面および管外面のひび割れ部や破損孔を含む周辺部まで被覆するように充填されシールするようにしてもよい。
【0065】
止水材充填ステップS4では、走行ロボットに備えたロボットハンドに把持される止水材充填装置のたとえば充填ガンがひび割れ部または破損孔である外部水浸入部に向けて位置保持された状態で、走行ロボットが充填ガンより止水材を充填する。
【0066】
[事後処理ステップS5]
事後処理ステップS5では、型枠を設置した場合には、走行ロボットが型枠を取り外し、(図示しない回収機構により)地上に回収することができる。この模様はカメラによって撮像され、この撮像データがケーブル13を介してモニター15に表示されるものを作業者14内もしくは遠隔地に所在する作業者が視認することで、或いは上述したように、画像処理アルゴリズムを介して画像処理されたものを公知の画像認識アルゴリズムによって不調和部分の検出をさせることで、施工状況確認を行い、外部水浸入部に充填不十分箇所または未充填箇所が存在する場合には、走行ロボットが止水材充填を行う。止水材の表面部に凹凸があるときには表面部を滑らかにする左官成形を行う。左官成形は、走行ロボットに備えたロボットハンドで把持する左官コテにより走行ロボットが行う。
【0067】
[施工後確認ステップS6]
施工後確認ステップS6では、走行ロボットが型枠の取り外した後に、カメラによる施工状況の最終確認を行う。この最終確認の態様も上記と同様に、作業者による視認もしくは画像認識等を含む後述するアルゴリズムまたはAIにより行われてよい。
【0068】
[第1の実施の形態]
[外部水浸入部が本管1に生じたひび割れ部および/または破損孔である場合]
この場合には、走行ロボットが止水材充填装置の充填ガン(細い筒部)を宛がいひび割れ部に沿って移動させつつ止水材を充填するようにしてもひび割れ部に止水材を充満状態に充填することが難しい。このため、以下のような作業手順を採用するのが好ましい。
【0069】
図3A図3B図3C図3D図3E図3Fは、本発明の第1の実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法を示す概念図である。まず、図3Aに示すように、走行ロボットは、走行ロボット11に備えたロボットハンド16が把持するコンクリート切削用のエンドミルまたはブラシロール17で管内面の外部水浸入部Xを含む周辺に付着しているヌメリ、その他の付着物を除去する。次いで、外部水浸入部Xがひび割れ部である場合には、図3Bに示すように、走行ロボットは、走行ロボット11に備えた水噴射ノズル18をひび割れ部Xの内部に当ててひび割れ部Xに存在するヌメリや堆積物を除去する。次いで、外部水浸入部Xがひび割れ部である場合であって、ひび割れ部の隙間が狭い場合には、図3Cに示すように、走行ロボットは、走行ロボット11に備えたロボットハンド16Cが把持するドリル19で管内外が貫通するようにひび割れ部に合わせて一つまたは複数の貫通孔20を穿設する。次いで、外部水浸入部Xがひび割れ部と破損孔のいずれである場合も、図3Dに示すように、走行ロボットは、走行ロボット11Dに備えたロボットハンド16D1が把持する型枠21をひび割れ部Xを隠蔽するように管内面に密着させ、次いで、ロボットハンド16D2が把持する止水材充填装置22の吐出ガン22aにより止水材Mをひび割れ部に沿って盛り付ける。止水材Mはひび割れ部Xと貫通孔20の管内外面に沿って広がり硬化する。次いで、図3Eに示すように、走行ロボットは、走行ロボット11Eに備えたロボットハンド16F1が把持する成形用コテ23で止水材Mの管内面側部分を平滑に成形するとともに輪郭の斜面部を成形する。
【0070】
なお、外部水浸入部Xが破損孔でなくひび割れ部である場合の限定工法として、図3Dに示す工程に替えて図3Fに示す工程を実施することができる。図3Fに示す工程においては、走行ロボットは、走行ロボット11Fに備えたロボットハンド16F1が把持する塗りコテ24をひび割れ部Xを隠蔽するように管内面に密着させる。ロボットハンド16F2が把持する止水材充填装置22の吐出ガン22aはロボットハンド16F1が把持する塗りコテ24の中央孔に嵌入している。次いで、走行ロボットは、吐出ガン22aより止水材Mをひび割れ部Xに合わせて吐出しつつ塗りコテ24で止水材Mに圧力を加え止水材Mをひび割れ部Xと貫通孔20とに塗り込む。
【0071】
この結果、止水材Mは、止水材充填装置内では加熱され流動状態であるところ、吐出ガンより吐出されひび割れ部Xおよび貫通孔20に充満状態に塗り込まれ、さらに、管内面および管外面に沿ってひび割れ部Xを隠蔽するように周辺部に広がる状態になると、周囲の冷熱と熱交換して短時間に流動性を失い、地中温度にまで冷却されて半永久的にシリコンゴムのような弾性シール機能を有する状態になる。これにより、止水材は、ひび割れ部Xに充満して止水するだけでなく、止水材の流動性喪失効果のためにひび割れ部Xに対し管内面および管外面の周辺部まで閉塞した状態になり有効に浸水防止できることとなる。
【0072】
なお、貫通孔を設けるためのドリルは、基端より先端部に近い位置まで中空部を設け、中空部の奥域端よりドリルの先端近傍の側面部に連通する水出孔を設けることで、貫通孔の穿孔時に冷却水を供給するようにするのが好ましい。また、エンドミルやブラシロールで管内面を切削または研削するときに、好適には(図示しない冷却水供給機構により)冷却水を供給する。また、ロボットハンドが把持するコテについては、所要面積を有するコテの中央に設けられた貫通孔に止水材充填装置の充填ガンが差し込み固定されるのが好ましい。走行ロボットは、こうしたコテを管内面のひび割れ部を含む周辺部をランダムな移動経路で反復移動して、コテにより止水材を寄せて移動しひび割れ部に強制的に押し込みようにするのが好ましい。
【0073】
[第2の実施の形態]
[外部水浸入部が現在使用中の取付管2に生じたひび割れ部である場合]
図4に示すように、この場合は、本管に生じたひび割れ部に対する補修工法と同様である。
【0074】
まず、走行ロボットは、走行ロボット11に備えたロボットハンド16が把持するエンドミルで現在使用中の取付管2の内面のひび割れ部Xを含む周辺部を切削する(不図示)。次いで、走行ロボットは、型枠21をひび割れ部Xを隠蔽するように管内面に密着し、次いで、ロボットハンド16が把持する止水材充填装置22の吐出ガン22aにより止水材Mをひび割れ部に沿って盛り付ける。切削することにより止水材は厚く管内面に密着するように設けられる。
【0075】
[第3の実施の形態]
[外部水浸入部が廃棄取付管3の管口部より上方位置に生じている場合]
この場合には、以下の手順で行う。
【0076】
図5A図5Bは、本発明の第3実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法を示す。まず、図5Aに示すように、走行ロボットは、走行ロボット11に備えたロボットハンド16Aが把持する水噴射ノズル18(またはブラシロール)により管内面の外部水浸入部X(ひび割れ部と破損孔の両者を含む)を含む周辺に付着しているヌメリ、その他の付着物を除去し、さらに、本管1の内面の廃棄取付管3の管口部の周辺部のヌメリ、その他の付着物を除去する。次いで、図5Bに示すように、廃棄取付管3の止水材を充填するための限定された密閉空間を形成するために、走行ロボットは、止水材の充填に先行して特殊風船25を廃棄取付管3の管口部より上部位置へ挿入し上部位置で膨張させ、次いで、廃棄取付管3の管口部より膨張した特殊風船25の近傍まで空気抜きチューブ(不図示)を挿入する。次いで、走行ロボットは、走行ロボット11に備えたロボットハンド16Bが把持する型枠21を、本管1の内面に廃棄取付管3の管口部を含む周辺部を閉塞するように設置する。この型枠21は、廃棄取付管3の管口部の周辺部では、本管内面との間に数ミリの隙間となる閉塞空間を形成する。次いで、走行ロボットは、型枠21の中央部に設けた差し込み孔に止水材充填装置22の充填ガン22aを差し込み、止水材Mを噴射することにより、止水材を廃棄取付管3の管口部からヌメリや堆積物を取り除いた内部までの空間、および本管内面の廃棄取付管3の管口部の周辺部をフランジ状に覆うように止水材Mを充填する。走行ロボットは、止充填終了間際に空気抜きチューブを抜き取る。特殊風船25は空気抜きチューブを抜き取ると逆止弁の作用で膨張状態に維持され、特殊風船25はそのまま放置状態に保持されてもよい。上記作業によって、止水材Mは、半永久的にシリコンゴムのような弾性シール機能を有する状態になって外部水浸入部Xを閉塞するとともに廃棄取付管3の管口部の周辺部においても二重に閉塞し、外部水浸入部Xから外部水の浸入がなくなる。その後、走行ロボットは、型枠21を取り外し、必要があれば左官仕上げを行う。
【0077】
[第4の実施の形態]
[外部水浸入部が廃棄取付管3が本管内に陥没し廃棄取付管3と本管1とに生じた場合]
この場合には、以下の手順で行う。
【0078】
図6A図6Bは、本発明の第4実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法を示す。まず、図6Aに示すように、走行ロボットは、走行ロボット11に備えたロボットハンド16Aが把持するエンドミル17で本管1内面の破損孔Xの周辺部を数mm切削するとともに、この切削面に合わせるように、廃棄取付管3の管口部の端面を切削する。また、走行ロボットは、廃棄取付管3の内面の破損孔Xの周囲のヌメリや堆積物を水噴射、ブラシロールにより取り除く。走行ロボットは、切削時、ロボットハンド16Bが把持する水噴射ノズル18により、切削位置に向けて水を噴射する。さらに、走行ロボットは、水噴射ノズル18により廃棄取付管3の内部を水洗浄しヌメリ、その他の付着物を除去する。次いで、図6Bに示すように、走行ロボットは、廃棄取付管3の止水材を充填するための限定された密閉空間を形成するために、止水材の充填に先行して特殊風船25と空気抜きチューブ(不図示)とを挿入する。次いで、走行ロボットは、走行ロボット11に備えたロボットハンド16Cが把持する型枠21を、本管1の内面に廃棄取付管3の管口部の周囲の破損孔Xを含む周辺部を閉塞するように設置する。この型枠21は、廃棄取付管3の管口部の周辺部では、本管内面との間に数ミリの隙間となる閉塞空間を形成する。次いで、走行ロボットは、ロボットハンド16Dが把持する止水材充填装置22の充填ガン22aを型枠21の中央部に設けた差し込み孔に差し込み、充填ガン22aより止水材Mを閉塞空間に噴射することにより、止水材Mを廃棄取付管3の内部、および本管内面の廃棄取付管3の管口部の周辺部の型枠21で密閉された空間に充填する。この際、走行ロボットは、止充填終了間際に空気抜きチューブを抜き取り、特殊風船25はそのまま放置状態に保持されてもよい。これによって、止水材Mが廃棄取付管3に充満状態に充填されるだけでなく廃棄取付管3の破損孔Xにも浸入し、廃棄取付管3の管口部を含む周辺部を本管1の内外面に沿って広がり、地中温度に冷却されて半永久的にシリコンゴムのような弾性シール機能を有する状態になって破損孔Xからの外部水の浸入を防止できる。その後、走行ロボットは、型枠21を取り外す。
【0079】
[第5の実施の形態]
[外部水浸入部が現在使用中の取付管2の管口部の周囲に生じた場合]
この場合は、以下の手順で行う。
【0080】
図7A図7Bは、本発明の第5実施の形態に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法を示す。まず、図7Aに示すように、走行ロボットは、本管1内面の取付管2の周囲の破損孔Xのさらに周辺部に対し、ロボットハンド16Bが把持する水噴射ノズル18の水噴射(および/またはブラシロール(不図示))によりヌメリや堆積物を取り除いてから、走行ロボット11に備えたロボットハンド16Aが把持するエンドミル17で数mm切削する。この切削時、走行ロボットは、切削位置に向けて水を噴射する。次いで、走行ロボットは、取付管2の管口部を特殊風船25を挿入し膨張させて閉塞する。次いで、図7Bに示すように、走行ロボットは、本管1内面の取付管2の周囲の破損孔Xのさらに周辺部に対し、走行ロボット11に備えたロボットハンド16Cが把持する型枠21で閉塞する。この型枠21は、取付管2の管口部の周辺部では、本管内面との間に数ミリの隙間となる閉塞空間を形成する。次いで、走行ロボットは、ロボットハンド16Dが把持する止水材充填装置22の充填ガン22aを型枠21の中央部に設けた差し込み孔に差し込み、充填ガン22aより止水材Mを充填する。これによって、止水材Mが取付管2の周囲の破損孔Xに充満状態に浸入し、取付管2の管口部の周囲の本管1の内外面に沿って広がり、地中温度に冷却されて半永久的にシリコンゴムのような弾性シール機能を有する状態になって破損孔Xからの外部水の浸入を防止できる。その後、走行ロボットは、型枠21と特殊風船25を取り外す。
【0081】
[外部水浸入部が存在するか否か判断するためのアルゴリズム]
図1に示す調査確認ステップS1において、本管、取付管および廃棄取付管に補修対象の外部水浸入部が存在するか否か、および外部水浸入部の補修の緊急性の要否の判断をアルゴリズムにより行うものであって、モニターに撮像機構により撮像した現在映像と、現在映像に並べて現在映像比較できるようにデータベースに記憶されている過去に発生した本管、取付管または廃棄取付管のいずれかの同一の発生箇所である外部水浸入部の過去映像(例えば図11(A)、(B)、(C))とを映し、両現在映像の近似性に基づいて現在映像が、外部水浸入量の多、中、少、無しの水量把握を通じて補修の要・不要、緊急度を判断するとともに、現在映像により外部水浸入部の発生位置、大きさ、形状の状況把握による補修規模、補修方法を選択する。
【0082】
[外部水浸入部が存在するか否か判断するためのAI]
図1に示す調査確認ステップS1において、本管、取付管および廃棄取付管に補修対象の外部水浸入部が存在するか否か、および外部水浸入部の補修の緊急性の要否の判断をAIにより行うものであって、モニターに撮像機構により撮像した現在映像と、現在映像に並べて現在映像比較できるようにデータベースに記憶されている過去に発生した本管、取付管または廃棄取付管のいずれかの同一の発生箇所である外部水浸入部の過去映像とを映し、モニターに備える演算部により現在映像の水流・水量と過去映像(例えば図11(A)、(B)、(C))の水流・水量との近似性を数量比較し外部水浸入量の多、中、少、無しの水量把握を通じて補修の要・不要、緊急度を判断する。
【0083】
[本発明に係る止水材について]
上記第1-第5の実施の形態では、止水材充填ステップにおいて適用する止水材は、常温よりも所要高い温度に加熱すると固体状態から流動し易い液体状態になる加熱流動性を有し地中温度に冷却されると被充填空間を占めて形状固定され半永久的に硬化せずシリコンゴムのような弾性シールド機能を有する物性を備えた樹脂を選択し、使用に際して、流動状態に加熱して止水材充填装置に供給するものである。
【0084】
しかし、本発明に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置において適用する止水材は、被充填空間を占めて形状固定される硬化型樹脂または非硬化型樹脂を用いる構成であればよい。硬化型樹脂は、熱硬化型樹脂または時間硬化型樹脂を含む。
【0085】
しかし、本発明に係る下水道管の外部水浸入部の補修工法および補修装置において適用する止水材は、加熱流動性を有するものに限定されるものではなく、加熱を必要としない常温で液状またはペースト状である以下の不定形止水材の1種を充填するか、または複数種を混ぜて充填しまたは混ぜることなく二段階充填により適用することができる。
(1)ポリブデン樹脂止水材(製品名);図8(A)
ポリブデン樹脂は、イソブチレンを主体とし、一部にノルマルーブデンが反応した共重合体からなる長鎖の合成系炭化水素化合物で、合成反応での条件によって例えば40℃において約20~200,0002/sで透明な粘稠稠着性、化学安定性、耐水性、耐薬品性のある液体ポリマーである。例えば、三井化学株式会社製のビューロン(製品名)
(2)エポキシ樹脂止水材(製品名);図8(B)
株式会社石川インキ製の製品番号011135と011136)、他に例えば、東栄管機製の漏水防止剤(ジョイナーW;製品名)。
(3)Gロックワン(製品名);図8(C)
日藻工材株式会社製の超速硬性セメント
(4)アロフィックス(製品名);図9(A)
太平洋マテリアル株式会社製の超微粒子セメントと硬化材(アロフィクスSS)とを組み合わせてなる超微粒子注入剤。
(5)ジェットセメント(製品名);図9(B)
住友大阪セメント製の超早硬モルタル)、
(6)止水セメント(製品名);図9(C)
サンホーム工業製の超早強性接着剤)
(7)シスイドン(製品名);図10(A)
サンユレック株式会社製の液状で疎水性を有し二液硬化型のポリウレタン系止水材、
(8)ミクストグラウト(製品名);図10(B)
株式会社MASUDA製の特殊水性エマルションと親水性ポリウレタン樹脂を併用した液状で親水性を有し二液硬化型のポリウレタン系止水材、
【0086】
加熱流動性を有するものに限定されるものではなく、加熱を必要としない常温で液状またはペースト状である以下の不定形止水材の1種を充填するか、または複数種を混ぜて充填しまたは混ぜることなく二段階充填により適用することができる。
【0087】
上記の(1)-(8)の止水材の他、以下の(9)-(22)に示す加熱しなくても流動性を有し超早硬を有する止水材を用いることができる。
(9)ハイセル OH-1AX
エレホン化成工株式会社製の液状またはペースト状で水膨潤性を有し一液硬化型の親水性ポリウレタン系止水材、
(10)ペースト状で水膨潤性を有しゴム/高吸水性ポリマー複合系止水材、例えば、
一液硬化型および二液硬化型のパイルロックNS-V(製品名);日本化学塗料株式会社製、
サンストッパー(製品名);大日化成株式会社製、
(11)ペースト状で非堆積膨張性を有する変性シリコン系止水材、
変成シリコン(オルガノシロキサンをもつ有機ポリマー)を主成分とした一液硬化型および二液硬化型のシーリング材、
(12)ペースト状で非堆積膨張性を有し一液硬化型のシリコーン/エポキシ複合系止水材、
株式会社スリーボンド製の弾性接着剤・シール材 TB3950
(13)ペースト状で非堆積膨張性を有し一液硬化型のフロロシリコーン止水材、
信越化学工業株式会社製のRTVフロロシリコーンゴム(製品名)
(14)液状またはペースト状で堆積膨張性を有し非硬化型の高吸水性アクリル系ポリマー止水材、
日本化学塗料株式会社製の速乾型止水材・バイロック(製品名)
日本化学塗料株式会社製の速乾型止水材・ケミカコート(製品名)
(15)液状で非堆積膨張性を有し二液硬化型のアクリル系エマルション止水材、
トーヨーマテラン株式会社製のペーストモルタル(製品名)
(16)ペースト状で非堆積膨張性を有し非硬化型の無溶剤系止水材、
株式会社ヘルメチック製の二液アクリル系速乾接着剤 HT-Bond777(製品名)
(17)ペースト状で非堆積膨張性を有し一液硬化型のフッ素系止水材、
株式会社ヘルメチック製のコンクリートクラック補修材TSE-050(製品名)
(18)ペースト状で非堆積膨張性を有し非硬化型のポリオレフィン系止水材、
株式会社ヘルメチック製のストッパブルパテ(製品名)
株式会社立基製の2100アクアストップ(製品名)
(19)ペースト状で非堆積膨張性を有し非硬化型のオレフィン/アクリル複合系止水材、
カスター・ピーエヌ・ジャパン株式会社製のKBフレックス200(製品名)
(20)ペースト状のアスファルトエマルション止水材、
成瀬化学株式会社製のナルストップ(製品名)
(21)ペースト状で一液硬化型のベントナイト系止水材、
クニミネ工業株式会社製のクニシールパテXL(製品名)
(22)ペースト状で二液硬化型の珪酸ソーダ系止水材(東曹産業株式会社製)
【0088】
以上説明してきたように、本発明の各の実施の形態/実施の形態によれば、止水材が下水道管の外部水浸入部の端面(本管の破断面)を充填シールするだけでなく、外部水浸入部を少なくとも管内面から重ねて閉塞する工夫として外部水浸入部を閉塞するように止水材を管内面と管外面に沿って延在するように盛り付けるものであり、しかも、止水材として、従来のセメント系のものとは異なり半永久的に硬化することなく弾性を有しシール性を有する樹脂が用いるので、止水材が外部水浸入部から脱落せず外部水浸入部を完全遮蔽することができ、止水材の充填から硬化までの時間を短縮できる下水道管の外部水浸入部の補修工法を提供することができる。
【0089】
なお、上記では、本発明の一の実施の形態として、主に下水道管の外部水浸入部の補修工法について説明してきたが、本発明に係る技術思想は、下水道管の(主に外部水浸入部についてのだがこれに限定されない)補修装置として実現することもできる。
【0090】
以上説明してきたように、本発明の上記実施形態及び/もしくは各態様によれば、止水材を外部水浸入部へ充満状態に充填するだけでなく、本管等の管内面のひび割れ部や破損孔の周辺部を被覆するか、または、止水材を本管の外部水浸入部を占めて充満するとともに本管の内外面に沿って広がらせて外部水浸入部を遮蔽する構成であるので、外部水浸入部を完全遮蔽することができ、補修時間を短縮でき、さらに、従来の止水材とは異なり弾性シール機能を有するので外部水浸入部を完全遮蔽することができ、建築業、建設業をはじめとする各種産業において大いなる利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0091】
1…本管
2…現在使用中の取付管
3…廃棄取付管
11…走行ロボット
12…カメラ
13…ケーブル
14…車両
15…モニター
16,16A,16B,16C,16D1,16D2,16E…ロボットハンド
17…エンドミルまたはブラシロール
18…水噴射ノズル
19…ドリル
20…貫通孔
21…型枠
22…止水材充填装置
22a…吐出ガン
23…成形用コテ
24…塗りコテ
25…特殊風船
26…エンドミル
X…外部水浸入部(破損孔,ひび割れ部)
M…止水材
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C