(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055782
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】内部冷却を備えたアブレーションブローブ
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023156690
(22)【出願日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】22200327
(32)【優先日】2022-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】アンデル・ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】アドラー・マルクス
(72)【発明者】
【氏名】カルヒャー・フェリクス
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK13
4C160KK27
4C160KK36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内部冷却を備えたアブレーションプローブを提供すること。
【解決手段】本発明に係るアブレーションプローブは、ホース(11)上に保持されている少なくとも1つの電極(15)および/または(16)を備える。終端部において、アブレーションプローブには閉鎖部分(17)が設けられ、その閉鎖部分(17)から、ワイヤ(28)がホース(11)を貫通して全長にわたって延在する。ワイヤ(28)には、電極(15、16)を冷却するための側面開口部(32、33)を有し、かつ、終端部で閉じられている流体供給ライン(29)が取り付けられている。流体供給ライン(29)がワイヤ(28)に固定されているため、電極(15、16)に対する開口部(32、33)の軸方向位置合わせが実現され、電極(15、16)の冷却が不均一になり得る位置ずれが避けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にHFアブレーション用のアブレーションプローブ(10)であって、
少なくとも1つの第1電極(15、16)が配置され、かつ、遠位側で閉じられた管腔(18)を含む、可撓性を有するホース(11)と、
前記管腔(18)内に配置され、かつ、前記第1電極(15)の領域に少なくとも1つの側面開口部(32)と、前記第2電極(16)の領域に少なくとも1つの第2側面開口部(33)とを有する、流体供給ライン(29)とを備える
アブレーションプローブ。
【請求項2】
前記流体供給ライン(29)は、遠位側で閉じられている
請求項1に記載のアブレーションプローブ。
【請求項3】
前記ホース(11)には、遠位側に閉鎖部分(17)が設けられている
請求項1に記載のアブレーションプローブ。
【請求項4】
前記閉鎖部分(17)は、絶縁材料または導電材料からなる
請求項3に記載のアブレーションプローブ。
【請求項5】
前記閉鎖部分(17)は、非導電材料と導電材料との組合せからなる
請求項3に記載のアブレーションプローブ。
【請求項6】
前記閉鎖部分(17)は、絶縁体(35)と、遠位端面において覆われていない金属体(36)とからなる
請求項5に記載のアブレーションプローブ。
【請求項7】
前記絶縁体(35)は、前記金属体(36)のコーティングで形成されている
請求項6に記載のアブレーションプローブ。
【請求項8】
前記閉鎖部分(17)は、前記管腔(18)を貫通して延在するワイヤ(28)に接続されている
請求項3に記載のアブレーションプローブ。
【請求項9】
前記流体供給ライン(29)は、少なくとも1つの位置で前記ワイヤ(28)に接続されている
請求項8に記載のアブレーションプローブ。
【請求項10】
固体材料からなる前記ワイヤ(28)と、前記流体供給ライン(29)とを組み合わせたものは、引張力の支持と流体の供給とを兼ね備えるチューブよりも、同じレベルの引張強度において曲げ抵抗が小さい
請求項9に記載のアブレーションプローブ。
【請求項11】
前記ワイヤ(28)と前記流体供給ライン(29)とは、締付手段(34)によって互いに接続されている
請求項9または10に記載のアブレーションプローブ。
【請求項12】
前記電極(15、16)は、可撓性を有する
請求項1~10のいずれか1項に記載のアブレーションプローブ。
【請求項13】
前記ホース(11)は、途切れなく構成されている
請求項1~10のいずれか1項に記載のアブレーションプローブ。
【請求項14】
前記流体供給ライン(29)は、プラスチックホースである
請求項1~10のいずれか1項に記載のアブレーションプローブ。
【請求項15】
前記第1側面開口部(32)および前記第2側面開口部(33)は、レーザ穿孔である
請求項1~10のいずれか1項に記載のアブレーションプローブ。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか1項に記載のアブレーションプローブを使用する腫瘍アブレーションの方法であって、
前記アブレーションプローブ(10)を、処置を必要とする領域、例えば腫瘍を有する組織に穿刺するステップと、
前記少なくとも1つの電極(15)を、前記処置を必要とする組織内に位置決めするステップと、
前記電極(15)に電流を供給するステップと、それと同時に
前記流体供給ラインを介して、前記電極に取り囲まれた管腔(18)へ送られ、かつ、ジュール・トムソン効果を用いて冷たさを生じさせるために前記スロットル開口部(32)を介して前記管腔(18)に放出される気体流体によって冷たさを発生させることにより、前記電極(15)を冷却するステップと、
前記牽引ワイヤ(28)を介して前記閉鎖部分(17)に引張力を伝達することによって、前記アブレーションプローブ(10)を引き抜くステップとを含む
方法。
【請求項17】
前記金属体(36)の前方の遠位側に位置する組織を切開し、この方法で穿刺しやすくするために、前記アブレーションプローブ(10)の穿刺中、前記金属体(36)に電圧を印加する
請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に生体組織のHFアブレーション用の、アブレーションプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、HFアブレーション用プローブは、例えば組織(例えば、肺または肝臓)に入り込んだ腫瘍などの失活のために、組織切片を失活させる働きをする。
【0003】
特許文献1には、発電機の出力部に接続される2つの電極がホース状基体上に保持された、指定された構成のアブレーションプローブが示されている。それらの電極は、組織に穿刺された場合、組織に電流を流し、この方法で組織を加熱するために、ホース状基体の遠位端部上に互いに軸方向距離をおいて配置されている。
【0004】
電極に接触している組織の乾燥を避けるために、電極を冷却するのが好都合であることが分かっている。この目的のために、ホースに取り囲まれた管腔(ルーメン)には、電極温度が限度内に維持されるように冷却剤が供給される。
【0005】
この原理はまた、特許文献2、特許文献3または特許文献4に示されるように、プローブによって実現される。さらなる先行技術が、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、および特許文献14に開示されている。さらに、特許文献15から、側面出口開口部を有する極低温流体毛細管を備える凍結プローブが知られている。
【0006】
組織の処置中、電極に直接接触している組織が乾燥によりオーム抵抗が大きくならず、湿ったまま、ひいてはオーム抵抗が小さいままであるように、電極は冷却されなければならない。したがって、冷却の働きをする冷却剤が、器具の遠位端部で出力される。この目的のために、ホースの管腔内部には、遠位端部に少なくとも1つの開口部を有する流体供給毛細管が配置され、その開口部を介して冷却流体が流出し、プローブの遠位端部、ひいては電極も冷却する。この構成は、特に、特許文献16に記載されている。
【0007】
特許文献17には、流体供給ラインを有する心臓カテーテルが開示されており、その流体供給ラインは、カテーテルに取り囲まれた管腔内に配置され、遠位端部に近接して複数の側面出力流開口部を含む。それらの側面出力流開口部は、カテーテルの遠位端部への冷却剤供給の働きをする。
【0008】
特許文献18には、生体組織の低温処置用のプローブが開示されている。このプローブは、実質的にホース本体からなり、そのホース本体の遠位端部には、ホース壁を貫通して延在する複数の熱伝導素子が配置されている。第1の変形例では、ホースの管腔内部に流体供給ラインが配置され、その流体供給ラインは、それぞれ1つの流体流をそれぞれの熱伝導素子上に方向付ける複数の側面出口開口部を含む。別の変形例では、プローブの管腔内部に複数の流体毛細管が配置され、それらの流体毛細管のそれぞれの遠位出口開口部は、それぞれ1つの熱伝導素子に割り当てられている。
【0009】
生体組織にプローブを穿刺しやすくするために、プローブの遠位端部の外側に、例えばブラケット形状の電極を設けることがさらに知られており、その電極は、電流供給部に接続され、作動する場合、組織を切開するのに有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3788974号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1181896号明細書
【特許文献3】国際公開第2012/012869号
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0010201号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第3323366号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第3769706号明細書
【特許文献7】米国特許第6106524号明細書
【特許文献8】国際公開第99/08633号
【特許文献9】欧州特許第1432360号明細書
【特許文献10】欧州特許第2768563号明細書
【特許文献11】欧州特許第0754075号明細書
【特許文献12】欧州特許第3763314号明細書
【特許文献13】欧州特許第3437579号明細書
【特許文献14】国際公開第94/11059号
【特許文献15】独国特許出願公開第102008024946号明細書
【特許文献16】欧州特許出願公開第3788974号明細書
【特許文献17】国際公開第2012/012869号
【特許文献18】米国特許出願公開第2005/0010201号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
処置される組織切片のサイズに関して機能性が制限されることのない、可能な限り細い、すなわち直径の小さいアブレーションプローブを提供することが、ますます所望されている。2.5mm未満の直径が意図され、それによって、もたらされる電極面も、それに応じて小さくなる。一方、それにより、電極面の電流密度が増加するため、電極を冷却する必要がある。
【0012】
それらを起点とし、本発明の目的は、内部冷却を備えたアブレーションプローブを提供することであり、それによって、本発明は、特に、プローブ径のさらなる縮小、また一方では、アブレーション処置の要求品質を保証するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1に記載のアブレーションプローブによって達成される。
【0014】
本アブレーションプローブは、少なくとも1つまたはさらに2以上の電極が上に配置されている可撓性を有するホースを備え、それらの電極は、ホースの軸方向に互いに離れている。電極は、ホースの遠位端部上または遠位端部の近くに配置されている。そのため、電極は、ホースの全周、および、好ましくはホースの直径の倍数である(遠位端部と近位端部との間で測定される)軸方向長さにわたって延在することが好ましい。電極は、きつい側面湾曲に追従できるように可撓性を有することが好ましい。電極は、この目的のために、らせんばねのタイプで構成することができる。それにより、電極は、金属スリーブと比較して、軸方向の電気伝導率および熱伝導率が低い。
【0015】
電極は、それぞれの電極からホースの近位端部まで延在し、かつ、その近位端部で適切な接続手段を介して供給ジェネレータに接続可能な電気ラインに接続されている。供給ジェネレータは、高周波交流電圧を供給し、ひいては高周波電流を出力するように構成されていることが好ましい。
【0016】
ホースは、ホースの近位端部から遠位端部まで延在し、かつ、その遠位端部で閉じられている管腔を取り囲んでいる。例えば、この目的のために、ホースと強固に接続され、ホースの管腔を閉じる閉鎖部分を設けることができる。管腔内部には、ホースの近位端部から電極まで遠位方向に延在する流体供給ラインが配置されている。近位端部において、流体供給ラインには、例えば供給装置内に配置された極低温流体源への接続を可能にするために、適切な接続デバイスを設けることができる。したがって、供給装置は、電極を冷却するための極低温流体源と、電極に電流を供給するためのジェネレータとを1つの装置内に含むことができる。また、分離された構成も可能である。そのような別個の装置を、適切なインタフェース、例えばBUSによって接続し、装置システムを形成することができる。
【0017】
流体供給ラインは、終端部で閉じられていることが好ましく、それによって、流体供給ラインは、電極の領域にそれぞれ少なくとも1つの側面開口部を含む。このようにして、電極を均一に冷却するために、電極それぞれで、すなわち電極に取り囲まれたそれぞれの体積内で、極低温流体が放出される。電極での極低温流体の特定の放出により、高い偏差が要求される場所、すなわち電極で、高い冷却力を局所的にかつ正確に得ることができる。一方、他の領域の強すぎる冷却、ひいてはプローブ上での組織の凍結は起こらない。そうすることで、アブレーション性能を損なうことなく、一方ではアブレーションプローブの性能向上、他方ではさらなる直径縮小を実現することができる。
【0018】
流体供給ライン上の電極の領域には、1またはさらに複数の側面開口部をそれぞれ設けることができる。しかしながら、流体出口となる側面開口部すべての断面の合計は、流体供給ラインの内部チャネルの断面よりも小さいことが好ましい。この手段により、流体供給ラインの長さに沿った圧力減少が最小限に抑えられ、ノズルとして働く側面開口部に実質的に集中する。このようにして、冷却効果が電極の領域に非常に良好に局在する。特に、電極は、それらの熱伝導率とは無関係に有効に冷却され得る。
【0019】
流体供給ラインは、その終端部を、流体供給ラインと剛性接続を確立する接着剤または別の適切な材料の閉鎖部分またはストッパで実現することができる。流体供給ラインは、例えばPE、PETもしくはPEEK、または、弾性係数が低い別の適切な材料の細いプラスチックホースであることが好ましい。側面開口部は、直径が50μm~150μm、好ましくは85μm~125μmのレーザ穿孔であることが好ましい。流体供給ラインの内径は、0.4mm~0.7mm、例えば0.6mmまたは0.57mmであることが好ましい。したがって、流体供給ラインは、極めて可撓性を有する。
【0020】
電極を支持するホースを閉じるための閉鎖部分は、例えばプラスチックもしくはセラミックなどの絶縁材料、またはさらに金属からなり得る。特に、閉鎖部分はまた、電気絶縁材料と導電材料との組合せからもなり得る。閉鎖部分の導電領域は、例えば、生体組織への器具の穿刺を助けるために電極として、使用することができる。閉鎖部分の導電部は、絶縁材料からほとんど突出していないか、または突出していないことが好ましい。この方法で遠位端部に形成された電極により、生体組織を横方向に損傷させることなく、器具を生体組織に穿刺しやすくすることができる。
【0021】
閉鎖部分は、閉鎖部分からアブレーションプローブの管腔を貫通して当該アブレーションプローブの近位端部まで延在し、かつ、その近位端部で固定されている抗張力ワイヤに強固に接続されていることが好ましい。そのワイヤは、患者、特に患者の組織から器具を取り外している間、引張力を支持する働きをする。ワイヤは、いずれの場合も、例えばアブレーション電極が組織に付着することによる処置問題の場合にも、器具を安全に取り出すことができるようにホースに引張力がかからないようにする。その牽引ワイヤは、外力、例えばアクセスシステムの曲げによって引き起こされる変形の後の復元力が高いことが好ましい。
【0022】
本発明に係るアブレーションプローブにおいて、流体供給ラインは、少なくとも1つの位置で牽引ワイヤに接続されている。そのため、流体供給ラインは、電極間、ひいては(任意選択の)複数のノズル間で牽引ワイヤに接続されていることが好ましい。あるいは、流体供給ラインはまた、他の領域、好ましくは電極の領域以外で牽引ワイヤに接続することもできる。そうすることで、器具が曲がり、またはよじれている間に流体供給ラインの側面開口部が電極に対して軸方向に位置ずれすることが避けられる。それによって、安全で信頼性のある取扱いが可能になり、機能に影響を与えることなく、小さい曲げ半径を実現することができる。
【0023】
器具の曲げには、電極が可撓性を有することも寄与している。例えば、電極は、らせん状に巻かれたワイヤまたはらせんスリット付きスリーブなどによって形成することができる。半円スリットが設けられたスリーブなどの他の曲げ可能なスロット付き構造体も、使用することができる。さらに、引張力を支持するための牽引ワイヤと、流体を供給するためのチューブ形状とにおける機能分離により、流体圧力を支持するための十分な壁厚と、引張力を支持するための材料剛性とを有する流体ラインと比較して、最終的に、低い曲げ剛性を実現することが可能になる。本発明に係る構成において、引張力を支持するために、高い引張強度と、低い断面二次モーメントの形状とを有する(固体)材料を選択することができる。これは、(流体圧力を支持するには十分な)低い剛性と、大きい内断面とを有する材料からなる流体ラインと組み合わされる。しかしながら、材料可撓性が高いため、断面二次モーメントが高くても悪影響はない。
【0024】
本発明の有利な実施の形態のさらなる詳細は、従属請求項の主題である。図面には、本発明の実施の形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、供給装置に接続された本発明に係るアブレーションプローブの斜視原理図である。
【
図2】
図2は、縦方向に切断されたアブレーションプローブの遠位端部における管腔内の図である。
【
図3】
図3は、
図1または
図2によるアブレーションプローブの末端部分の斜視図である。
【
図5】
図5は、アブレーションプローブの管腔内部に配置された流体供給ホースの遠位端部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、内視鏡用途、例えば肺腫瘍を失活させるための気管支鏡用途に使用可能であるが、他の目的にも使用可能なアブレーションプローブ10を開示している。アブレーションプローブ10は、アブレーションプローブ10の近位端部12から遠位端部13まで延在する、可撓性を有する長尺のホース11を備える。近位端部12には、アブレーションプローブ10を供給装置14に接続するために、1以上のプラグまたは別の適切な接続デバイスが設けられている。
【0027】
ホース11は、適切な生体適合性プラスチック、例えばPE、PET、PEEKなどから作られた可撓性プラスチックホースであることが好ましい。ホース11の長さは、数メートルにすることができるが、直径は、1mm~3mmの範囲内にある。用途に応じて他の寸法も可能であり、用途によっては他の寸法が都合がよい。
【0028】
アブレーションプローブ10の近位端部13は、軸方向Aに互いに離れている、第1電極15と、少なくとも好ましくは第2電極16とを含む。必要に応じて、電流が供給され得る追加電極を設けることができる。器具は、また、単一の電極のみ有することもでき、モノポーラ器具として構成され得る。ホース11には、さらに、その遠位端部に、
図2から明らかな内部管腔18を遠位側で閉じる閉鎖部分17が設けられている。
【0029】
ホース11は、この管腔を取り囲んでおり、それによって、ギャップも途切れもなく構成されている。ホース11の壁は、途切れも貫通孔も含まない。電極15、16は、特に、横長凹部、例えばトラフ19が、ホース11の壁にエンボス加工された領域の、ホース11上に配置されている。そのトラフ19内に、電極15、16の接続部20、21が配置されている。接続部20、21から、電気ライン22、23が、ホース11に沿って外側に近位方向に端部12まで延在し、端部12において、装置14用のプラグまたは別の接続デバイスに接続されている。ライン22、23は、適切な接続手段、例えば圧着バレル22a、23aによって接続部20、21に接続されている。
図2に示すように、圧着バレル22a、23aは、接続された電極15、16それぞれのすぐ近くに配置することができ、または両方とも近位電極16の近位に交互に配置することができる。
【0030】
ライン22、23は、ホース11と、非常に可撓性を有する摺動性プラスチックから作られていることが好ましいカバーホース24との間のギャップを貫通して延在する。電極15、16間には、電極15、16間の離隔部分として働くスリーブ形状の絶縁体25を配置することができる。さらに、遠位電極15と閉鎖部分17との間に、別の絶縁体26を配置することができる。
【0031】
閉鎖部分17は、その遠位外面が丸みを帯びていることが好ましい。例えば、閉鎖部分17は、半球状に構成することができる。半球ヘッドから、シャンク27が管腔内に延在し、それにより、シャンク27は、形状嵌合によって、および/または、接着剤もしくは他の適切な取付手段によって、ホース11に固定されている。さらに、閉鎖部分17は、引張力を近位端部から遠位端部13に確実に伝達するために、閉鎖部分から、例えばアブレーションプローブ10の近位端部12に設けられたアブレーションプローブ10の力伝達部まで延在するワイヤ28に接続されていることが好ましい。アブレーションプローブ10の力伝達部は、また、アブレーションプローブ10の長さの途中に配置することもできる。
【0032】
管腔18内部には、細いプラスチックホースとして構成できるが、該当する場合は金属毛細管としても構成できる流体供給ライン29が配置されている。その流体供給ラインは、電極15、16を冷却し、その後、冷却管腔18を通って装置14に流れ戻る冷却流体を放出する働きをする。冷却流体は、装置14もしくはアブレーションプローブ10の近位端部12で環境中に放出することができ、または、回収およびリサイクルすることもできる。
【0033】
流体供給ライン29は、その遠位端部30で閉じられている。例えば、固化した接着剤31(
図5)をこの目的に使用することができ、その固化した接着剤31は、ストッパとして流体供給ライン29の遠位端セクションに配置されている。
【0034】
流体供給ライン29は、出口ノズルとなる第1側面開口部32と、同様に出口ノズルとなる第2側面開口部33とを含む。第1開口部32は、第1電極15を冷却する働きをするため、第1電極15と軸方向に位置合わせして(すなわち、第1電極15に取り囲まれた空間内に)配置されている。それにより、開口部32は、電極15の中心よりもわずかに遠位に配置されていることが好ましい。第2側面開口部33は、第2電極16に取り囲まれた空間の内部に配置されている。したがって、第2側面開口部33は、第2電極16と位置合わせして配置されており、電極16の中心に対してわずかに遠位側に配置することができる。
【0035】
開口部32、33は、互いに離れて実質的に同一に構成されている。図示するように、開口部32、33は、同じ径方向に、もしくはさらに互いに対して周方向にずらして配置することができ、または、断面を異なるようにすることができる。
【0036】
しかしながら、
図2および
図5に関連する開口部32の以下の説明および記述は、開口部33にも同様に適用される。
【0037】
流体供給ライン29の内径は1ミリメートルのおよそ半分の範囲内にあり得るが、レーザドリルによって形成されることが好ましい開口部32の直径は、1ミリメートルのおよそ10分の1しかない。そうすることで、すべての開口部32、33によって形成されるノズル断面は、内径の自由流の断面(断面積)、ひいては流体供給ライン29の管腔よりも著しく小さい。
【0038】
提示した実施の形態において、各電極15、16に対して、それらの数とは無関係に、いずれの場合も1つのノズル開口部32、33が個別に割り当てられている。しかしながら、互いに軸方向および/または周方向にずれている2以上の開口部を、各電極15、16に割り当てることも可能である。それにより、特に長い電極15、16の場合にも、電極の確実かつ均一な冷却が可能になる。
【0039】
電極15、16に対する開口部32、33の安全な軸方向相対位置決めを保証するために、流体供給ライン29は、その遠位端部で軸方向に固定されている。この目的のために、流体供給ライン29は、例えば、ばね鋼、または、例えばニチノールなどの、好ましくは変形後の復元傾向が高い、特定の引張強度を有する別の材料から作ることができるワイヤ28に接続することができる。また、プラスチックワイヤを使用することも可能である。
【0040】
流体供給ライン29をワイヤ28に取り付けるために、それらは、例えば局所的に1つの位置のみで、またはさらに複数の位置で互いに接続することができる。特に、その接続部は、電極15、16間、ひいては開口部32、33間に配置することができる。ワイヤと流体供給ライン29との接続部は、例えば流体供給ライン29とワイヤ28とを摩擦嵌合により結び付ける、締付手段34によって実現することができる。締付手段34は、例えば、収縮ホース34の形態で構成することができ、ワイヤ28および流体供給ライン29は、収縮ホース34を貫通して延在し、収縮ホース34は、ワイヤ28と流体供給ライン29とを互いに締め付ける。収縮ホースの代わりに、別の適切な接続手段、例えば、金属製圧着バレル、接着接合部、溶融固化した接着剤による接続部、ばねクランプなどを用いることもできる。
【0041】
さらに、ワイヤ28と流体供給ライン29との接続部に加えて、またはその代わりに、流体供給ライン29の遠位端部と閉鎖部分17との接続部を設けることが可能である。この目的のために、例えば、接着接合部、圧着接合部、圧縮接合部などを設けることができる。例えば、流体供給ホース29の閉端部は、シャンク27の孔内に接着剤で付けることができる。しかしながら、流体供給ホース29が、特にその遠位端部の領域で、電極15、16に対して軸方向に動かないように固定されていることが、すべての実施の形態において重要である。このようにして、患者への内視鏡の使用中におけるホース11の伸びまたは曲げから生じる、流体供給ホースおよびその側面開口部32、33の位置ずれを避けることができる。
【0042】
末端部分17は、
図3および
図4それぞれから明らかである。末端部分17は、プラスチックもしくはセラミックなどの絶縁材料から完全に作ることができ、または、例えば炭化タングステンなどの金属から完全に形成することもできる。しかしながら、
図3および
図4には、末端部分17が金属体36および絶縁体35から形成されている特定の実施の形態を示す。金属体36は、閉鎖部分17の丸みを帯びた端面において覆われていないことが好ましく、それによって、金属体36は、閉鎖部分17の丸みを帯びた遠位端面を越えてわずかに突出しているか、または突出していない。絶縁体35は、また、金属体36を越えてわずかに遠位側に突出することもできる。例えば、それによって金属体36は、
図3に示すように、その遠位端部で十字形にすることができる。また、単純な弧または3以上の脚を有する星などの他の形状も可能である。金属体36は、絶縁体35を貫通して延在し、
図4に示すように、近位シャンク端部から突出している。近位シャンク端部において、金属体36は、例えば溶接接合部37によって、引張抵抗を有する方法でワイヤ28に接続することができる。あるいは、末端部分17はまた、絶縁材料のコーティングの形態で絶縁体が施されている金属体によって形成することもできる。
【0043】
引張力を支持するワイヤ28には、装置14から電圧および電流を供給するために、近位端部12に電気的接続デバイスを設けることができる。そうすることで、金属インレー36は、生体組織へのアブレーションプローブ10の穿刺中、カッティング電極として有効になる。
【0044】
これまで説明したアブレーションプローブ10は、以下のように動作する。
【0045】
アブレーションプローブ10は、単独で、または、それぞれのアクセス器具、例えば内視鏡を介して、もしくは肺腫瘍のアブレーションの場合には気管支鏡を介して、患者の気管支樹に挿入される。その後、アブレーションプローブ10は、内視鏡から、処置を必要とする組織、例えば肺腫瘍に向かって遠位方向にさらに動かされ、当該組織に穿刺される。これは、機械的にのみ行うことができ、または、遠位電極が存在する場合は、例えば電気的サポートを有するインレー36の形態で行うことができる。この目的のために、インレー36によって形成された電極は、電気エネルギーがワイヤ28を介してインレー36に供給されることで作動する。その後、アブレーションプローブ10は、両方の電極15、16が腫瘍内部に位置決めされるまで、腫瘍に穿刺される。遠位電極36は、その後、無効になる。
【0046】
ここで、電極15および16には、処置電圧が印加され、処置電流が供給される。同時にまたは直後に、冷却流体が流体供給ライン29に供給され、その結果、開口部32、33から流出する。冷却流体、例えば二酸化炭素は、数十バール(例えば65バール)の高い圧力で流体供給ライン29内に存在し、開口部32、33を通過して、数バール以下のより低い圧力が存在する管腔18に入る。そのため、開口部32、33は、スロットル開口部として働き、それによって、ジュール・トムソン効果により冷たさが発生する。不動の位置合わせ、すなわち電極15、16に対する開口部32、33の軸方向位置合わせにより、冷却効果は、各電極15、16のほぼ均一な冷却が保証されるように、特に電極15、16に対して略中心に生じる。それにより、アブレーションプローブ10の直径が、例えば2.3mm以下の非常に小さい値まで小型化によって縮小され、その結果、電極15、16における電流密度が高くなる場合も、電極15、16の広範囲すぎる加熱、ひいては当接する組織の乾燥が避けられる。しかしながら、本発明による概念を用いることで、電極冷却の改善および均一化を行うことができ、それによって、アブレーション処置の品質が向上する。
【0047】
本発明に係るアブレーションプローブ10は、ホース11上に保持されている少なくとも1つの電極15および/または16を備える。終端部において、アブレーションプローブ10には閉鎖部分17が設けられ、その閉鎖部分17から、ワイヤ28がホース11を貫通して全長にわたって延在する。ワイヤ28には、電極15、16を冷却するための側面開口部32、33を有し、かつ、終端部で閉じられている流体供給ライン29が取り付けられている。流体供給ライン29がワイヤ28に固定されているため、電極15、16に対する開口部32、33の軸方向位置合わせが実現され、電極15、16の冷却が不均一になり得る位置ずれが避けられる。
【符号の説明】
【0048】
10 アブレーションプローブ
11 ホース
12 アブレーションプローブ10の近位端部
13 アブレーションプローブ10の遠位端部
14 装置
15 第1電極
16 第2電極
17 閉鎖部分
18 ホース11の管腔
19 トラフ
20、21 電極15、16の接続部
22、23 ライン
22a、23a 圧着バレル
24 カバーホース
25、26 絶縁体
27 シャンク
28 牽引ワイヤ
29 流体供給ライン
30 流体供給ラインの遠位端部
31 接着剤
32 第1側面開口部/ノズル開口部
33 第2側面開口部/ノズル開口部
34 締付手段/収縮ホース
35 絶縁体
36 金属体
37 溶接接合部
【外国語明細書】