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▶ エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055810
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】水中油型エマルジョン系消泡剤組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20240411BHJP
   C08L 83/12 20060101ALI20240411BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240411BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20240411BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20240411BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240411BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20240411BHJP
   B01D 19/04 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B01J13/00 A
C08L83/12
C09D5/02
C09D167/00
C09D171/00
C09D183/04
C09D11/00
B01D19/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023172047
(22)【出願日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/123790
(32)【優先日】2022-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ スン
(72)【発明者】
【氏名】ヤンリン フー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーナス ニードバラー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ ミュンスター
(72)【発明者】
【氏名】クスファン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ギャング リー
(72)【発明者】
【氏名】ハイイ ファン
(72)【発明者】
【氏名】スーザン ストラック
【テーマコード(参考)】
4D011
4G065
4J002
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4D011CA02
4D011CC01
4D011CC04
4G065AA02
4G065AB10Y
4G065AB11Y
4G065AB28Y
4G065AB35
4G065AB38
4G065BA07
4G065BA09
4G065BA11
4G065BB06
4G065CA06
4G065DA04
4G065DA06
4G065DA09
4G065EA01
4G065EA02
4J002CP181
4J002HA07
4J038DD001
4J038DF001
4J038DL031
4J038HA446
4J038KA09
4J038MA10
4J038NA09
4J039AE06
4J039AE07
4J039AE11
4J039BA21
4J039BB01
4J039BE16
4J039BE22
4J039BE23
4J039BE30
4J039CA06
4J039EA44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた消泡能力と優れた相溶性を持ち、低せん断力下(例えば、印刷工程中にインク配合物に添加される場合)で容易に分散する消泡剤組成物を提供する。
【解決手段】(I)油相と、(II)水相と、(III)少なくとも1つのO/W乳化剤と、(IV)共乳化剤として少なくとも1つのW/O乳化剤と、を含む消泡剤組成物であり、前記水相の量が前記組成物の総重量に対し20~90重量%、好ましくは60~85重量%であり、前記油相が、(A)成分Aとして少なくとも1つまたは複数の植物油と、(B)成分Bとして少なくとも1つまたは複数のポリエーテルエステルと、(C)少なくとも1つまたは複数のポリエーテル変性ポリシロキサンと、(D)必要に応じて、成分Dとして少なくとも1つまたは複数の疎水性粒子と、を含む油中油型エマルジョンである組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)油相と、
(II)水相と、
(III)少なくとも1つのO/W乳化剤と、
(IV)共乳化剤として少なくとも1つのW/O乳化剤と、
を含む消泡剤組成物であり、
前記水相の量が前記組成物の総重量に対し20~90重量%、好ましくは60~85重量%であり、
前記油相が、
(A)成分Aとして少なくとも1つまたは複数の植物油と、
(B)成分Bとして少なくとも1つまたは複数のポリエーテルエステルと、
(C)少なくとも1つまたは複数のポリエーテル変性ポリシロキサンと、
(D)必要に応じて、成分Dとして少なくとも1つまたは複数の疎水性粒子と、
を含む油中油型エマルジョンである組成物。
【請求項2】
前記成分Aは、大豆油、菜種油、キャノーラ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、落花生油およびパーム油またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記成分Bは、ポリオキシアルキレンエステルおよびポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルエステルからなる群から選択される、請求項1または請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレンエステルは、PEG、PPG、ポリエチレン-プロピレングリコールおよび脂肪酸に由来する、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸の炭素鎖長がC2~C22、好ましくはC10~C18である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記PEGのEO単位が5~50モル、好ましくは8~10モルである、請求項4または請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記PPGのPO単位が10~100モル、好ましくは14~55モルである、請求項4または請求項5記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリエチレン-プロピレングリコールのEO-PO単位の総モルが5~100モル、好ましくは10~80モルである、請求項4または請求項5記載の組成物。
【請求項9】
前記成分Cは一般式(I):
O-A-[B-A-] (I)
(式中、Aは、平均式(C2pO-)(式中、pの値は2.8~4、qの値は15~100、好ましくはpの値は2.8~3.5である。)を有するポリオキシアルキレンブロックであり、
Bは、平均式[SiO(R-](式中、R基は同一かまたは異なり、それぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基またはフェニル基を表し、gの値は10~100、好ましくは15~70である。)を有するポリシロキサンブロックであり、
は、同一かまたは異なり、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、
fの値は、1~20、好ましくは4~15である。)
と一致し、および/、または
前記成分Cは一般式(II):
【化2】
(式中、R基は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、
mの値は20~80、nの値は5~10であり、
xの値は0~10、yの値は5~40である。)
と一致する、請求項1~請求項8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
前記疎水性粒子は、疎水性ヒュームドシリカおよび疎水性ワックスから選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記油中油型エマルジョンは、その総重量に対し、
(a)20~80重量%、好ましくは40~60重量%の前記成分Aと、
(b)10~40重量%、好ましくは15~25重量%の前記成分Bと、
(c)10~70重量%、好ましくは10~50重量%、より好ましくは20~40重量%の前記成分Cと、
(d)必要に応じて、1~10重量%、好ましくは2~5重量%の前記成分Dと、
を含む、請求項1~請求項10のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
増粘剤および/またはpH調整剤を含む、請求項1~請求項11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
請求項2~請求項11のいずれか一項記載の油中油型エマルジョン。
【請求項14】
請求項1~請求項12のいずれか一項記載の消泡剤組成物を含む、塗料組成物またはインク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物油系消泡剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水性系には通常、表面張力を低下させる界面活性剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤などが配合されており、容易に泡が形成されるため、コーティングおよびインク業界では、水性コーティングおよびインク系における発泡が普遍的課題である。最近では、コーティングおよびインクの製造中、インク印刷中およびコーティング適用工程中に発生する泡を防止または除去できる種類の消泡剤が市場に導入されている。
【0003】
例えば、印刷インク業界では、鉱物油またはシリコーン油系のエマルジョン型消泡剤が主に使用されていた。しかし、鉱物油は人間の健康に悪影響を与える可能性がある。よって、鉱物油が食品と接触する水性インク配合物に使用される場合、有害である。シリコーン油系消泡剤は、この種の消泡剤をインク系に分散させるのに十分なせん断力がない状態で印刷工程に添加されると、印刷インク層に欠陥を生じる傾向がある。
【0004】
優れた消泡能力を備えた既知のポリエーテル変性シロキサン系消泡剤は、水性塗料およびインク系における相溶性に関してシリコーン油よりも優れた性能を発揮するが、インク系に分散させるためのせん断力が適用時だけ低い場合は、相溶性は十分でない。
【0005】
健康に優しい植物油系消泡剤は分散しやすいものの、印刷中に発生する泡を打ち消すほどの力はない。
【0006】
したがって、ポリエーテル変性ポリシロキサンと植物油との組み合わせにより、食品と接触する水性コーティングおよびインク系に特に有利な消泡剤組成物を提供することが望ましい。ただし、特に植物油の消泡能力を高めるためにポリエーテル変性ポリシロキサンを比較的多量に使用する場合、ポリエーテル変性ポリシロキサンと植物油は互いに溶解することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術の欠陥を少なくとも部分的に克服すること、そして、優れた消泡能力と優れた相溶性を持ち、低せん断力下(例えば、印刷工程中にインク配合物に添加される場合)で容易に分散する消泡剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、
(I)油相と、
(II)水相と、
(III)少なくとも1つのO/W乳化剤と、
(IV)共乳化剤として少なくとも1つのW/O乳化剤と、
を含む消泡剤組成物であり、
水相の量が組成物の総重量に対し20~90重量%、好ましくは60~85重量%であり、
油相が、
(A)成分Aとして少なくとも1つまたは複数の植物油と、
(B)成分Bとして少なくとも1つまたは複数のポリエーテルエステルと、
(C)少なくとも1つまたは複数のポリエーテル変性ポリシロキサンと、
(D)必要に応じて、成分Dとして少なくとも1つまたは複数の疎水性粒子と、
を含む油中油型エマルジョンである、新しい消泡剤組成物の発見によって達成される。
【0009】
発明の詳細な説明
用語「シロキサン」および「ポリシロキサン」は、本発明では同義語として使用される。
用語「消泡剤組成物」および「水中油型エマルジョン」は、本発明では同義語として使用される。
本明細書の文脈において、用語「油相」および「油中油型エマルジョン」は同義として理解されるべきである。
本願の場合、用語「消泡剤」は、泡を防ぐ製品および配合物と、泡を破壊して脱気を可能にする製品および配合物との両方を包含する。実際には、これらの製品特性間の移行部はあいまいであるため、消泡剤という一般的な総称が使用される。
【0010】
驚くべきことだが、本発明の油中油型エマルジョンは安定であり、本発明の消泡剤組成物の油相として使用できることが分かっている。
理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、ポリエーテルエステルが、分散相としてのポリエーテル変性ポリシロキサンと連続相としての植物油とからなる油中油型エマルジョン中で、相溶化剤または安定剤としての機能を有すると信じている。
【0011】
成分Aとしての植物油
植物油は、当技術分野で慣例的に使用されているものから選択され得る。本発明において有用な植物油は通常、室温では液体である。ほとんどの種類の植物油が飽和および/または不飽和脂肪酸のトリグリセリドである。
好ましくは、成分Aは、大豆油、菜種油、キャノーラ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、落花生油およびパーム油またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0012】
成分Bとしてのポリエーテルエステル
好ましくは、成分Bは、ポリオキシアルキレンエステルおよびポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルエステルからなる群から選択される。
ポリオキシアルキレンエステルは、PEG、PPG、ポリエチレン-プロピレングリコールおよび脂肪酸に由来することが特に好ましい。
【0013】
好ましくは、脂肪酸の炭素鎖長はC2~C22、より好ましくはC10~C18である。
ポリプロピレングリコールのPO単位は、好ましくは10~100モル、より好ましくは14~55モルであってよい。
ポリエチレングリコールのEO単位は、好ましくは5~50モル、より好ましくは8~10モルであってよい。
ポリエチレン-プロピレングリコールのEO-PO単位の合計モルは、好ましくは5~100モル、より好ましくは10~80モルである。
【0014】
ポリオキシアルキレンエステルは、平均一般式(III):
-(EO)(PO)-R (III)
(式中、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、-RC(O)O-(式中、Rは、炭素数2~22、好ましくは炭素数10~18の一価の脂肪族飽和または不飽和炭化水素基である。)、-ヒドロキシル(ただし、RおよびRは、同時にヒドロキシルを表さないことを条件とする。)から選択される基を表し、
値aは0~50、値bは0~100(ただし、a+b=5~100であってよいことを条件とする。))
に対応する。
【0015】
およびRが同一であっても異なっていてもよく、RC(O)O-(式中、Rは、炭素数2~22、好ましくは10~18の一価の脂肪族飽和または不飽和炭化水素基である。)を表す場合、そのようなポリオキシアルキレンエステルは、ジエステルである。
およびRのいずれか一方がヒドロキシル基を表す場合、ポリオキシアルキレンエステルはモノエステルである。
【0016】
ポリオキシアルキレンエステルは、植物油中にポリエーテルシロキサンを分散させるために、さまざまなモノエステルの混合物、さまざまなジエステルの混合物、またはモノエステルとジエステルの混合物であってもよい。
ポリオキシアルキレンエステルの例は、PEG400オレイン酸ジエステルまたはPPG2000トール油ジエステルである。
【0017】
所望の特性を得るために、ポリオキシアルキレンエステルの他に、ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルエステルを追加でまたは代替として使用することができる。
ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルおよびそのエステルの場合、式(IV)の構造は、例えば以下のとおりである。
【0018】
【化1】
【0019】
式中、グリセリル基単位の値zは1~10であってよく、EO合計単位のx1+x2+x3は0~50であってよく、PO合計単位のy1+y2+y3は0~100であってよく、EOおよびPO合計単位は5~100であってよい。
、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、RC(O)O-(式中、Rは、炭素数2~22、好ましくは10~18の一価の脂肪族飽和または不飽和炭化水素基である。)を表す。
【0020】
あるいは、R、RおよびRのいずれか1つまたは2つは、ヒドロキシル基を表し、それらの残りは、同一かまたは異なり、RC(O)O-(式中、Rは、炭素数2~22、好ましくは10~18の一価の脂肪族飽和または不飽和炭化水素基である。)を表す。
【0021】
上記で定義したポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルエステルは、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
特に、R、RおよびRすべてがヒドロキシル基を表すポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルを、上記で定義したポリオキシアルキレンエステルと一緒に使用して、ポリエーテルシロキサンを植物油中に分散させ得る。
特に、R、RおよびRがヒドロキシル基を表すポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルを、ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルエステルと一緒に使用して、ポリエーテルシロキサンを植物油中に分散させ得る。
適切なポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルとしては、PPG4000グリセリルエーテルが挙げられる。適切なポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルエステルとしては、PPG4000グリセリルオレイン酸トリエステルが挙げられる。
【0022】
成分Cとしてのポリエーテル変性ポリシロキサン
好ましくは、成分Cは一般式(I):
O-A-[B-A-] (I)
(式中、Aは、平均式(C2pO-)(式中、pの値は2.8~4、qの値は15~100、好ましくはpの値は2.8~3.5である。)を有するポリオキシアルキレンブロックであり、
Bは、平均式[SiO(R-](式中、R基は同一かまたは異なり、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基またはフェニル基を表し、gの値は10~100、好ましくは15~70である。)を有するポリシロキサンブロックであり、
は、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、
fの値は1~20、好ましくは4~15である。)
と一致し、および/、または
成分Cは一般式(II):
【0023】
【化2】
【0024】
(式中、R基は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、
mの値は20~80、nの値は5~10であり、
xの値は0~10、yの値は5~40である。)
と一致する。
【0025】
式(I)による成分Cは原則的に知られている。さらなる製造方法は欧州特許第0331952号明細書に開示されている。
式(II)による成分Cは原則的に知られている。さらなる製造方法は国際公開第2009/138205号パンフレットに開示されている。
【0026】
消泡活性をさらに高めるために、追加の固体、例えばシリカ、ワックスおよび固体を添加し得ることも同様に考えられる。このような添加剤は当業者に知られている。
【0027】
疎水性粒子が疎水性ヒュームドシリカおよび疎水性ワックスから選択される場合が好ましい。
好ましくは、疎水性粒子は、疎水的に修飾されたシリカ粒子および/またはエチレンビスステアラミド(EBSワックス)もしくはポリエチレンワックス(PEワックス)のようなワックスであってよい。
【0028】
好ましくは、組成物は油中油型エマルジョンを含み、当該油中油型エマルジョンはその総重量に対し、
(a)20~80重量%、好ましくは40~60重量%の成分Aと、
(b)10~40重量%、好ましくは15~25重量%の成分Bと、
(c)10~70重量%、好ましくは10~50重量%、より好ましくは20~40重量%の成分Cと、
(d)必要に応じて、1~10重量%、好ましくは2~5重量%の成分Dと、
を含む。
【0029】
経済性と消泡性能の観点から、油中油型エマルジョンは、その総重量に対して20重量%および50重量%のポリエーテル変性ポリシロキサンを含むことが好ましい。
油中油型エマルジョンは、鉱油を含まないことが好ましい。
好ましくは、本発明の消泡剤組成物は増粘剤および/またはpH調整剤を含む。
乳化剤は、Davis法によるHLB値の計算に基づいて選択されてよい。O/W乳化剤のHLB値が8~20、より好ましくは10~18である場合が好ましい。
共乳化剤としてのW/O乳化剤のHLB値が2~8、より好ましくは2~5である場合が好ましい。
乳化剤の総量は、消泡剤組成物の総重量に対し、好ましくは2~10重量%、より好ましくは3~8重量%である。
【0030】
増粘剤は、アルカリ膨潤性エマルジョン増粘剤であることが好ましく、これは水中で油相を安定化させるために使用される。アルカリ膨潤性エマルジョン増粘剤の量は、消泡剤組成物の総重量に対し、好ましくは1~5重量%、より好ましくは2~4重量%である。
【0031】
pH調整剤はNaOH溶液であってもよく、これはpH値を7~9に調整してアルカリ膨潤性エマルジョン増粘剤を膨潤させ、粘度を調整してエマルジョンを安定化するために使用される。
O/W乳化剤と、共乳化剤としてのW/O乳化剤とが水相に溶解できる場合が好ましい。
【0032】
本発明の消泡剤組成物は、塗料配合物およびインク配合物などの水性配合物に対して優れた相溶性を有するだけでなく、優れた消泡能力も有している。
【0033】
本発明の別の態様によれば、
(A)成分Aとして少なくとも1つまたは複数の植物油と、
(B)成分Bとしての少なくとも1つまたは複数のポリエーテルエステルと、
(C)少なくとも1つまたは複数のポリエーテル変性ポリシロキサンと、
(D)必要に応じて、成分Dとして少なくとも1つまたは複数の疎水性粒子と、
を含む油中油型エマルジョンが提供される。
【0034】
好ましくは、油中油型エマルジョンは、その総重量に対し、
(a)20~80重量%、好ましくは40~60重量%の成分Aと、
(b)10~40重量%、好ましくは15~25重量%の成分Bと、
(c)10~70重量%、好ましくは10~50重量%、より好ましくは20~40重量%の成分Cと、
(d)必要に応じて、1~10重量%、好ましくは2~5重量%の成分Dと、
を含む。
【0035】
本発明はさらに、消泡剤組成物を製造するための油中油型エマルジョンの使用を提供する。
【0036】
本発明のさらなる態様は、分散液、ミルベース、ペンキ、コーティングもしくは印刷インク、インクジェット、粉砕樹脂、顔料濃縮物、着色剤調製物、顔料調製物、充填剤調製物またはコーティング組成物を製造するための消泡剤組成物の使用である。
【0037】
以下の実施例は、本発明を当業者に説明するために提供されるものにすぎず、記載される主題または記載される方法を何ら限定するものではない。
【実施例0038】
本発明は、以下の実施例により詳細に説明される。本発明の範囲は、実施例の実施形態に限定されるべきではない。
【0039】
1.本発明の消泡剤組成物及び比較組成物の製造
実施例1
5gのEBSワックスを160℃で溶かし、高速分散機により3000rpm下で45gの菜種油中に分散させた。次いで、10gのPEG400オレイン油ジエステルと、10gのPPG2000トール油ジエステルとをその混合物に500rpm下で添加した。次いで、欧州特許第0331952号明細書の実施例に従って製造したポリエーテル変性ポリシロキサンと、国際公開第2009/138305号パンフレットの比較例6に従って製造したポリエーテル変性ポリシロキサンとの混合物30gをその混合物に添加し、その混合物を500rpmで30分間混合し、油相を形成した。次いで、その油相を少なくとも一晩放置して、油中油型エマルジョンを得た。
71gの水を反応器に入れ、次いで、2.5gのTego Tagat R200(HLB値:18、W/O乳化剤として、Evonik社製)と、1.5gのTego Arknol S2(HLB値:5、共乳化剤として、Evonik社製)と、を真空下、300rpmかつ80℃でその水に添加した。次いで、4gのRheovis(登録商標)AS1125(アルカリ膨潤性エマルジョン増粘剤、BASF社製)を300rpm下で10分間添加した。上で調製した油相混合物20gを添加し、得られた混合物を30分間混合した。 次いで、0.25gのNaOH水溶液(50%)と、0.75gの殺生物剤とを添加し、さらに10分間混合した。次いで、得られた混合物を均質化して、本発明の消泡剤組成物を得た。
【0040】
実施例2
実施例2では、EBSワックスの代わりにPEワックスを使用し、菜種油の代わりに大豆油を使用したことを除いて、実施例1のものと同じ調製手順を使用して実施例2の水中油型エマルジョンを調製した。
【0041】
実施例3
実施例3は、10gのPEG400オレイン油ジエステルと、10gのPPG2000トール油ジエステルとの代わりに、20gのPPG2000トール油ジエステルを使用したことを除いて、実施例1と同じ方法で調製した。
【0042】
実施例4
この実施例の水中油型エマルジョンは、5gのEBSワックス、45gの菜種油、10gのPEG400オレイン油ジエステル、10gのPPG2000トール油ジエステル、および30gのポリエーテルシロキサン混合物の代わりに、3gのEBSワックス、27gの菜種油、20gのPPG2000トール油ジエステル、および50gのポリエーテルシロキサン混合物を使用したことを除いて、実施例1のものと同じ方法で調製した。
【0043】
実施例5
実施例5は、59gの水を反応器に入れ、次いで、3.75gのTego Tagat R200(HLB値:18、W/O乳化剤として)と、2.25gのTego Arknol S2(HLB値:18、共乳化剤として)と、30gの油相混合物とを添加したことを除いて、実施例1のものと同じ方法で調製した。
【0044】
実施例6
実施例6の水中油型エマルジョンは、5gのEBSワックスと、45gの菜種油と、30gのポリエーテルシロキサン混合物との代わりに、3gのPEワックスと、27gの大豆油と、50gのポリエーテルシロキサン混合物とを使用したことを除いて、実施例1のものと同じ方法で調製した。
【0045】
実施例7
実施例7は、10gのPEG400オレイン油ジエステルと10gのPPG2000トール油ジエステルの代わりに、10gのPEG400オレイン油ジエステルと10gのPPG4000グリセリルエーテルを使用したことを除いて、実施例1のものと同じ方法で再度調製した。
【0046】
実施例8
実施例8は、10gのPEG400オレイン油ジエステルと10gのPPG2000トール油ジエステルの代わりに、10gのPEG400オレイン油ジエステルと10gのPPG4000グリセリルオレイン油トリエステルを使用したことを除いて、実施例1のものと同じ方法で調製した。
【0047】
比較例1~4
比較例1~4は、疎水性粒子およびポリエーテルエステルを使用しないこと以外は実施例1のものと同じ方法で製造した。
【0048】
2.性能試験用インク配合物の製造
本発明の消泡剤を、シリコーン油消泡剤、ポリエーテルシロキサン消泡剤、鉱油消泡剤および植物油消泡剤のような他の従来技術の消泡剤技術と比較するために、以下の2つのインク配合物を試験した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
3.油相の安定性試験
植物油中のポリエーテルシロキサンの安定性をチェックするために、ポリエーテルエステルの有無による油相の安定性を比較した。調製した油相試料を室温で保管し、相分離が起こるかどうかを確認した。安定性試験の結果を表4に報告する。重量%はすべて、それぞれの油相の総重量に対するものである。
【0053】
【表4】
【0054】
本発明の油中油型エマルジョン(実施例1~8)は相分離を一切示さないことが判明した。成分Bを含まない比較例は、相分離を示すことが判明した。
【0055】
4.相溶性試験
主に印刷工程中に消泡剤組成物を添加した。したがって、消泡剤をインク系に分散させるためのせん断力は低くてよい。この工程をシミュレートするには、消泡剤をインク配合物に添加して手で混合し、次いで、Lanetaチャート上に7ミクロンの湿潤膜厚で描画し、膜が乾燥した後、相溶性をチェックする。
相溶性については、点数によってランク付けする:
5点:消泡剤の液滴による欠陥のない最高の相溶性、
4点:軽微な欠陥あり
3点:インク層に少しの欠陥あり、
2点:多少の欠陥あり、
1点:多くの欠陥あり、
0点:消泡剤による欠陥が多く、最悪の相溶性。
【0056】
有効含有量が100%であるD-foam RC-920(Clariant社が供給しているシリコーン油消泡剤)を、インク配合物に対し0.1%で後添加した。本発明によるエマルジョン型消泡剤(実施例1および実施例4)、Tego(登録商標)Foamex1488、およびTego(登録商標)Foamex825(後者の2つの消泡剤は、両方ともEvonik社によって供給されているポリエーテルシロキサンエマルジョン消泡剤である。)はすべて、エマルジョン中の油分が20%であり、インク配合物に対し0.3%で後添加した。2つの植物油系消泡剤、Evonik社が供給しているTego(登録商標Foamex833、およびEvonik社が供給しているTego(登録商標)Foamex18はそれぞれ、有効含有量が100%であり、インク配合物に0.3%で添加した。2つの鉱油型消泡剤、BASF社が供給しているFoamstar ST2410AC、およびEvonik社が供給しているTego(登録商標)Foamex9はそれぞれ有効含有量が100%であり、相溶性の対照としてインク配合物に0.3%でそれぞれ添加した。上記のパーセンテージはすべて重量%である。
両方のインク配合物における試験結果を表5および表6に示す。
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
シリコーン油およびポリエーテルシロキサンエマルジョン消泡剤と比較して、本発明の消泡剤組成物の実施例1および実施例4は、インク配合物中での相溶性が著しく向上し、低せん断力下であってもあまり多くの欠陥を引き起こさなかった。このような相溶性は、植物油消泡剤の相溶性にも匹敵する。
【0060】
5.消泡試験
消泡性能については、ステンレス鋼のバブルストーンを用いて200gのインクにさまざまな種類の消泡剤をそれぞれ入れ、2.0L/分の空気流量で空気を送り、泡を発生させるバブリング試験法により、比較する。さまざまな種類の消泡剤をインク配合物にそれぞれ後添加し、手で簡単に混合する。その後、最大30分間泡の高さを記録する。泡の高さが低いほど、消泡能力が優れている。
0.3重量%の本発明の消泡剤組成物(実施例1および実施例4)を、両方のインク系にそれぞれ添加した。鉱物油(Foamstar ST2410AC)、植物油系消泡剤(Tego(登録商標)Foamex833およびTego(登録商標)Foamex18)、およびポリエーテルシロキサンエマルジョン消泡剤(Tego(登録商標)Foamex1488)の両インク系への添加量も0.3重量%であった。有効含有量100重量%のシリコーン油消泡剤(D-foam RC-920)の両インク系への添加量は、0.1重量%であった。
両方のインク配合物における試験結果を表7および表8に示す。
【0061】
【表7】
【0062】
【表8】
【0063】
結果が示すように、本発明による両方のインク配合物は、植物油消泡剤と比較して、消泡能力の顕著な向上を示した。その性能は、ポリエーテルシロキサンエマルジョン消泡剤に匹敵しさえする。鉱物油消泡剤と比較すると、有効含有量が27重量%と低い場合でも、(適用される政府の規制に従って鉱物油の添加が許可された場合に)インク配合物に一般的に使用される有効含有量100重量%の鉱物油よりも消泡能力が優れている。
上記の説明は、当業者が本発明を作製および使用できるようにするために提示されており、特定の用途およびその要件に関連して提供されている。好ましい実施形態に対する種々の変更は、当業者には容易に明白であり、本明細書で定義される一般原理は、本発明の真意および範囲から逸脱することなく他の実施形態および用途に適用され得る。よって、本発明は、示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理および特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。これに関して、本発明の特定の実施形態は、広く考慮すると、本発明のすべての利点を示しているとは限らない。
【外国語明細書】