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特開2024-55830無変調結合を用いたデュアルデジタル位相同期ループ
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  • 特開-無変調結合を用いたデュアルデジタル位相同期ループ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055830
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】無変調結合を用いたデュアルデジタル位相同期ループ
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/08 20060101AFI20240411BHJP
   H04L 7/033 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H03L7/08 220
H04L7/033 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023173452
(22)【出願日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】17/961,741
(32)【優先日】2022-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518364964
【氏名又は名称】ルネサス エレクトロニクス アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RENESAS ELECTRONICS AMERICA INC.
【住所又は居所原語表記】1001 Murphy Ranch Road, Milpitas, California 95035, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メノ・ティエルド・スパイカー
【テーマコード(参考)】
5J106
5K047
【Fターム(参考)】
5J106AA04
5J106CC38
5J106CC52
5K047AA03
5K047AA06
5K047GG02
5K047MM47
5K047MM48
5K047MM55
(57)【要約】
【課題】複数のネットワークを同期させるための半導体装置を提供する。
【解決手段】
半導体装置は、第1の信号を出力するように構成されたアナログ位相同期ループ(APLL)を含むことができる。さらに、半導体装置は、第2の信号を出力するように構成された第1のデジタル位相同期ループ(DPLL)を含むことができる。さらに、半導体装置は、第3の信号を出力するように構成された第2のDPLLを含むことができる。第1の信号と第2の信号との組み合わせを使用して第1の出力クロック信号を生成することができる。第3の信号から第2の信号を減算して得られた差を使用して第2の出力クロック信号を生成することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
第1の信号を出力するように構成されたアナログ位相同期ループ(APLL)と、
第2の信号を出力するように構成された第1のデジタル位相同期ループ(DPLL)と、
第3の信号を出力するように構成された第2のDPLLと、
を備え、
前記第1の信号と前記第2の信号との組み合わせを使用して第1の出力クロック信号が生成され、
前記第3の信号から前記第2の信号を減算して得られた差を使用して第2の出力クロック信号が生成される、
半導体装置。
【請求項2】
前記第1の信号と前記第2の信号との組み合わせを受信し、前記第1の出力クロック信号を出力するように構成された整数分周器と、
前記差および前記組み合わせを受信し、前記第2の出力クロック信号を出力するように構成された分数分周器と、
をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
複数の分数分周器をさらに備え、
前記複数の分数分周器の各々は、前記第2の出力クロック信号のコピーを出力するように構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第3の信号から前記第2の信号を減算する前に、前記第2の信号をフィルタリングするように構成されたローパスフィルタをさらに備え、
前記ローパスフィルタの帯域幅は、前記APLLの帯域幅に基づいている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の出力クロック信号が生成される前に、前記差をスケーリングするように構成されたスケーラをさらに備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
周波数分周器をさらに備え、
前記周波数分周器は、
前記第1の信号と前記第2の信号との組み合わせを受信するように構成されたマルチモジュラス分周器と、
前記第1の信号と前記第2の信号との差の組み合わせを受信するように構成されたシグマ・デルタ変調器と、
前記第2の出力クロック信号におけるジッタを低減させるように構成されたジッタ低減回路と、
を備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1のDPLLの帯域幅と前記第2のDPLLの帯域幅との差は、所定の閾値よりも小さい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2の出力クロック信号は、前記第1のDPLLの動作から独立している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
複数のトランシーバと、タイミング回路と、を備える装置であって、
前記タイミング回路は、前記複数のトランシーバのうちの第1のトランシーバから第1の基準信号を受信し、前記複数のトランシーバのうちの第2のトランシーバから第2の基準信号を受信し、第1の出力クロック信号を前記複数のトランシーバのうちの第2のトランシーバに出力し、第2の出力クロック信号を複数のクロック回路のうちの第2のクロック回路に出力するように構成されており、
前記第1の出力クロック信号は、前記タイミング回路内のアナログ位相同期ループ(APLL)によって生成された第1の信号と、前記タイミング回路内の第1のデジタル位相同期ループ(DPLL)によって生成された第2の信号との組み合わせに基づいており、
前記第2の出力クロック信号は、前記タイミング回路の第2のDPLLによって生成された第3の信号から前記第2の信号を減算して得られた差に基づいている、
装置。
【請求項10】
前記タイミング回路は、
前記第1の信号と前記第2の信号との組み合わせを受信し、前記第1の出力クロック信号を出力するように構成された整数分周器と、
前記差および前記組み合わせを受信し、前記第2の出力クロック信号を出力するように構成された分数分周器と、
を備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記タイミング回路は、複数の分数分周器を備え、前記複数の分数分周器の各々は、前記第2の出力クロック信号のコピーを出力するように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記タイミング回路は、前記第3の信号から前記第2の信号を減算する前に、前記第2の信号をフィルタリングするように構成されたローパスフィルタを備え、前記ローパスフィルタの帯域幅は、前記APLLの帯域幅に基づいている、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記タイミング回路は、前記第2の出力クロック信号が生成される前に、前記差をスケーリングするように構成されたスケーラを備える、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記タイミング回路は、周波数分周器を備え、
前記周波数分周器は、
前記第1の信号と前記第2の信号との組み合わせを受信するように構成されたマルチモジュラス分周器と、
前記第1の信号と前記第2の信号との差の組み合わせを受信するように構成されたシグマ・デルタ変調器と、
前記第2の出力クロック信号におけるジッタを低減させるように構成されたジッタ低減回路と、
を備える、請求項9に記載の装置。
【請求項15】
前記第1のDPLLの帯域幅と前記第2のDPLLの帯域幅との差は、所定の閾値よりも小さい、請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記第2の出力クロック信号は、前記第1の基準信号から独立している、請求項9に記載の装置。
【請求項17】
複数のネットワークを同期させるためにタイミング回路を動作させる方法であって、
アナログ位相同期ループ(APLL)を動作させて第1の信号を出力するステップと、
第1のデジタル位相同期ループ(DPLL)を動作させて第2の信号を出力するステップと、
第2のDPLLを動作させて第3の信号を出力するステップと、
前記第1の信号と前記第2の信号とを組み合わせて第1の出力クロック信号を生成するステップと、
前記第3の信号から前記第2の信号を減算して第2の出力クロック信号を生成するステップと、
を含み、
前記第2の出力クロック信号は、前記第1のDPLLの動作から独立している、
方法。
【請求項18】
複数の分数分周器を動作させて前記第2の出力クロック信号のコピーを複数出力するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ローパスフィルタを動作させて、前記第3の信号から前記第2の信号を減算する前に、前記第2の信号をフィルタリングするステップをさらに含み、
前記ローパスフィルタの帯域幅は、前記APLLの帯域幅に基づいている、
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のDPLLの帯域幅と前記第2のDPLLの帯域幅との差は、所定の閾値よりも小さい、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、半導体装置に関し、より詳細には、デュアルデジタル位相同期ループの無変調結合を実現することができるタイミング回路に関する。
【背景技術】
【0002】
トランシーバおよびクロック回路を含むタイミング回路は、複数のネットワークに接続されて、それらのネットワークを同期させることができる。タイミング回路は、アナログ位相同期ループ(APLL)やデジタル位相同期ループ(DPLL)などの複数の位相同期ループを含むことができる。APLLは、アナログ位相検出器、チャージポンプ、ループフィルタ、およびフィードバックループ内の電圧制御型発振器(VCO)を含むことができる。DPLLは、デジタル位相検出器、ループフィルタ、およびデジタル制御型発振器(DCO)を含むことができる。DPLLは、デジタル位相検出器とループフィルタを含むので、一般的にAPLLよりも小さい。APLLとDPLLとを組み合わせることで、タイミング回路から出力された信号のジッタを低減させる混合信号位相同期ループを形成することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態において、一般に、複数のネットワークを同期させるための半導体装置が提供される。半導体装置は、第1の信号を出力するように構成されたアナログ位相同期ループ(APLL)を含むことができる。さらに、半導体装置は、第2の信号を出力するように構成された第1のデジタル位相同期ループ(DPLL)を含むことができる。さらに、半導体装置は、第3の信号を出力するように構成された第2のDPLLを含むことができる。第1の信号と第2の信号との組み合わせを使用して第1の出力クロック信号を生成することができる。第3の信号から第2の信号を減算して得られた差を使用して第2の出力クロック信号を生成することができる。
【0004】
一実施形態において、一般に、複数のネットワークを同期させるための装置が提供される。装置は、複数のトランシーバと、タイミング回路と、を含むことができる。タイミング回路は、複数のトランシーバのうちの第1のトランシーバから第1の基準信号を受信するように構成され得る。さらに、タイミング回路は、複数のトランシーバのうちの第2のトランシーバから第2の基準信号を受信するように構成され得る。さらに、タイミング回路は、第1の出力クロック信号を複数のトランシーバのうちの第2のトランシーバに出力するように構成され得る。さらに、タイミング回路は、第2の出力クロック信号を複数のクロック回路のうちの第2のクロック回路に出力するように構成され得る。第1の出力クロック信号は、タイミング回路内のアナログ位相同期ループ(APLL)によって生成された第1の信号と、デジタル位相同期ループ(DPLL)によって生成された第2の信号との組み合わせに基づくことができる。第2の出力クロック信号は、タイミング回路の第2のDPLLによって生成された第3の信号から第2の信号を減算して得られた差に基づくことができる。
【0005】
一実施形態において、複数のネットワークを同期させるためにタイミング回路を動作させる方法が提供される。該方法は、アナログ位相同期ループ(APLL)を動作させて第1の信号を出力するステップを含むことができる。さらに、該方法は、第1のデジタル位相同期ループ(DPLL)を動作させて第2の信号を出力するステップを含むことができる。さらに、該方法は、第2のDPLLを動作させて第3の信号を出力するステップを含むことができる。さらに、該方法は、第1の信号と第2の信号とを組み合わせて第1の出力クロック信号を生成するステップを含むことができる。さらに、該方法は、第3の信号から第2の信号を減算して第2の出力クロック信号を生成するステップを含むことができる。第2の出力クロック信号は、第1のDPLLの動作から独立したものであり得る。
【0006】
上述した概要は、例示的なものであり、いかなる場合でも限定的であることを意図していない。上述した例示的な態様、実施形態、および特徴に加えて、さらなる態様、実施形態、および特徴が、添付の図面および以下の詳細な説明を参照することで明らかになるであろう。図面において、同様の参照符号は、同一または機能的に類似する要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態における、無変調結合を用いたデュアルデジタル位相同期ループのための例示的なシステムを示すブロック図である。
図2】一実施形態におけるタイミング回路の詳細を示すブロック図である。
図3】一実施形態における、図2のタイミング回路の詳細を追加的に示すブロック図である。
図4】一実施形態における、無変調結合を用いたデュアルデジタル位相同期ループを実現することができる例示的なプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、本願に記載の様々な実施形態の理解を促すために、特定の構造、構成要素、材料、寸法、処理ステップ、および技術などを含む多数の特定の詳細が記載されている。しかしながら、当業者であれば、本願に記載の様々な実施形態が、これらの具体的な詳細なしに実現され得ることを理解するであろう。場合によっては、本願を不明瞭にしないために、既知の構造または処理ステップの詳細に関する説明を省略する。
【0009】
図1は、一実施形態における、無変調結合を用いたデュアルデジタル位相同期ループのための例示的なシステムを示すブロック図である。このシステム100は、通信装置102と、ネットワーク103a、103b、104a、および104bなどの複数のネットワークを含むことができる。一実施形態において、通信装置102は、電気通信ネットワーク回路として実装され得る。電気通信ネットワーク回路の例として、スイッチ(例えば、同期イーサネット(SyncE)、スイッチ)やルータを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、システム100は、ネットワーク103a、103b、104a、および104bなどの複数のネットワーク(例えば、2つ以上のネットワーク)を同期させるように実装され得る。ネットワーク103a、103b、104a、および104bは、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、SONET/SDH/PDHなどの時分割多重方式(TDM)のネットワーク、および/またはイーサネットベースのパケットネットワークであり得る。
【0010】
通信装置102は、1つまたは複数のトランシーバ106aおよび106bを含むことができる。一実施形態において、トランシーバ106a、106b、106c、および106dは、イーサネット物理層トランシーバチップであり得る。トランシーバ106a、106b、106c、および106dは、ネットワーク103a、103b、104a、および104b、クロック回路108、ならびに/またはタイミング回路110との間でデータを送受信するように構成され得る。さらに、通信装置102は、少なくとも1つのクロック回路108を含むことができる。一実施形態において、クロック回路108は、時刻同期プロトコル(PTP)タイミング回路であり得る。さらに、通信装置102は、タイミング回路110を含むことができる。一実施形態において、タイミング回路110は、ネットワークカードであり得る。図1の実施例は4つのネットワーク、4つのトランシーバ、および1つのクロック回路を示しているが、通信装置102は、任意の数のネットワーク、トランシーバ、およびクロック回路を含むことができる。
【0011】
一実施形態において、トランシーバ106a、106b、106c、および106d、クロック回路108、ならびにタイミング回路110は、電気通信ネットワーク全体、サーバラック、またはその他のタイプの通信装置およびネットワークに展開され得る。一実施形態において、システム100は、単一の半導体集積回路(または半導体パッケージまたは装置)として実装され得る。別の実施形態において、トランシーバ106a、106b、106c、および106d、クロック回路108、ならびにタイミング回路110は、プリント回路基板上の個々の半導体ICとして実装され得る。
【0012】
トランシーバ106aは、ネットワーク103aに結合され、ネットワーク103aとの間で信号を送受信するように構成され得る。さらに、トランシーバ106aは、クロック回路108およびタイミング回路110との間で信号を通信するように構成され得る。トランシーバ106bは、ネットワーク103bに結合され、ネットワーク103bとの間で信号を送受信するように構成され得る。さらに、トランシーバ106bは、クロック回路108およびタイミング回路110との間で信号を通信するように構成され得る。トランシーバ106cは、ネットワーク104aに結合され、ネットワーク104aとの間で信号を送受信するように構成され得る。さらに、トランシーバ106cは、クロック回路108およびタイミング回路110との間で信号を通信するように構成され得る。トランシーバ106dは、ネットワーク104bに結合され、ネットワーク104bとの間で信号を送受信するように構成され得る。さらに、トランシーバ106dは、クロック回路108およびタイミング回路110との間で信号を通信するように構成され得る。
【0013】
一実施形態において、クロック回路108は、IEEE1588準拠のパケットベースのタイミングスキームを実装することができる。少なくとも1つのクロック回路108の各々は、マスタークロックまたはスレーブクロックとして構成され得る。マスタークロックとして実装された場合のクロック回路108は、スレーブクロックとして実装される他のクロック回路に同期メッセージを送信することができる。
【0014】
一実施形態において、ネットワーク103aおよび103bは送信ネットワークであり得、ネットワーク104aおよび104bは受信ネットワークであり得る。これにより、データ111aおよび111bは、通信装置102を介して、ネットワーク103aおよび103bからネットワーク104aおよび104bにそれぞれ送信され得る。ネットワーク103aおよび103bが送信ネットワークである場合、トランシーバ106aおよび106bは、データ111aおよび111bからそれぞれの物理基準クロック信号113aおよび113bをそれぞれ回復することができる。一実施形態において、回復した物理基準クロック信号113aおよび113bは、SyncE物理クロック信号であり得る。トランシーバ106aおよび106bは、回復した物理基準クロック信号113aおよび113bをタイミング回路110に送信することができる。スレーブクロックとして実装された場合のクロック回路108は、基準信号115をタイミング回路110に送信することができる。基準信号115は、PTP位相クロック信号などの内部基準クロックであり得る。タイミング回路110は、物理基準クロック信号113aと周波数および/または位相がロックされた出力クロック信号117と、物理基準クロック信号113bと周波数および/または位相がロックされた出力クロック信号119とを生成することができる。タイミング回路110は、出力クロック信号117および119をトランシーバ106bおよびクロック回路108bにそれぞれ送信することができる。これにより、タイミング回路110は、同期された周波数および位相の下でデータ111aおよび111bをネットワーク104aおよび104bに送信することができる。また、一実施形態において、タイミング回路110は、基準信号115と周波数および/または位相がロックされた出力クロック信号を生成することができる。
【0015】
タイミング回路110は、周波数および/または位相がロックされた信号を生成するように構成された複数のアナログ位相同期ループ(APLL)および複数のデジタル位相同期ループ(DPLL)を含むことができる。アナログ位相同期ループ(APLL)とデジタル位相同期ループ(DPLL)との組み合わせは、タイミング回路110の出力におけるジッタを低減させる混合信号位相同期ループ(PLL)を形成することができる。一態様において、複数のAPLL・DPLLの組み合わせをタイミング回路に実装することができる。ただし、APLLがDPLLよりも大きい場合があるので、複数のAPLLは比較的大きな回路基板面積を占有する場合があり、これは装置サイズを増大させる。さらに、APLLを追加すると複数のVCO間の誘導結合が増加して、ジッタ性能が低下する可能性がある。一部の実装では、装置サイズを低減させるように複数のDPLLに結合された単一のAPLLを含むことができる。ただし、これらの実装では、APLL出力を複数のDPLLからの出力と乗算することによって生成された高周波クロックを分周するために分数分周器(FOD)が利用されており、FODは、整数分周器で実装されたAPLLほどにジッタを低減させることができない。
【0016】
さらに、一部の実装では、APLLを制御するための第1のDPLLと、フィードバックおよび出力クロックを生成するためのFODに結合された第2のDPLLとが利用される。第1のDPLLは、比較的低いジッタの出力クロックを提供することができ、第2のDPLLは、比較的高いジッタの出力クロックを提供することができる。FODに対するクロックがAPLLから提供され、APLLが第1のDPLLによって制御されているので、第2のDPLLからの出力クロックは、両方のDPLLによって制御される。第1のDPLLの帯域幅が第2のDPLLの帯域幅よりも著しく低い場合、第1のDPLLからのAPLLへの変調信号は、第2のDPLLによって抑制されることができる。しかしながら、この実装では、第1のDPLLの帯域幅が第2のDPLLの帯域幅よりも著しく低くなるように制限されている。
【0017】
本明細書に記載のタイミング回路110は、APLLを制御するための第1のDPLLと、フィードバックおよび出力クロックを生成するためのFODに結合された第2のDPLLと、を含むことができる。APLLに適用される第1のDPLLからの変調は、出力または第2のDPLLから減算され得る。これにより、第1のDPLLの帯域幅と第2のDPLLの帯域幅とが同じであるか著しく異なっているかにかかわらず、第1のDPLLからの変調を抑制することができる。したがって、タイミング回路110は、複数のDPLLの帯域幅が類似している(例えば、同一またはほぼ同一である)用途に実装され得る。さらに、類似する帯域幅は、タイミング回路110内の異なるDPLL間の誘導結合を低減させることができる。本明細書に記載のタイミング回路110の一部の例示的な用途は、独立したクロックで動作するネットワークまたは無線基地局、または分離しておく必要があるSynEクロック信号を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
図2は、一実施形態におけるタイミング回路の詳細を示すブロック図である。(図1にも示す)タイミング回路110の詳細が図2に示されている。タイミング回路110は、デジタル位相同期ループ(DPLL)204と、DPLL206と、整数分周器212と、アナログ位相同期ループ(APLL)210と、分数分周器(FOD)220と、を含むことができる。一実施形態において、DPLL204およびDPLL206は、同一の構成要素を含むことができる。
【0019】
DPLL204は、第1の基準信号 Ref_clk1を受信することができ、そのRef_clk1を使用して整数分周器212の出力信号Out_clk1を同期させることができる。DPLL204は、フィードバックループを含むことができる。フィードバックループは、出力信号205とRef_clk1とを比較して、出力信号205とRef_clk1との差(例えば、位相差、振幅差、または周波数差)を決定することができる。この差は、望ましくない周波数を除去するためにDPLL204によってフィルタリングされ得る。DPLL204からの出力信号205のフィードバックに基づくフィルタリングされた差は、 APLL210の周波数設定に適用され得る。これにより、APLL210のVCOは、Ref_clk1と周波数および/または位相がロックされた出力信号211を生成することができる。
【0020】
DPLL206は、DPLL204と同様に機能することができる。ここで、DPLL206は、第2の基準信号Ref_clk2を受信することができ、そのRef_clk2を使用してFOD220の出力信号Out_clk2を同期させることができる。出力信号Out_clk2は、Ref_clk2と周波数および/または位相がロックされ得る。図1に示す実施例を参照すると、Ref_clk1は物理基準クロック信号113aであり得、Ref_clk2は物理基準クロック信号113bであり得る。1つまたは複数の実施形態において、Ref_clk1およびRef_clk2のうちの一方が図1に示す基準信号115であり得る。APLL210は、DPLL204および206と同様に機能しながら異なる構成要素を含むことができる。例えば、APLL210は、基準入力信号として局部発振器信号(LO)を受信することができ、そのLOを使用してAPLL210の出力信号211を同期させることができる。
【0021】
一実施形態において、(DPLL206からの)出力信号205および出力信号207は、APLL210および/またはFOD220を調整するための分数周波数オフセットを表すマルチビットデジタルデータ信号であり得る。出力信号205は、APLL210および減算ノード208に分配され得る。一実施形態において、APLL210は、クロック信号211を生成するために、APLL210内のVCOの出力を変調させる変調信号として出力信号205を使用することができる。APLL210は、クロック信号211を整数分周器212に送信することができる。整数分周器212は、クロック信号211を分周して出力クロック信号Out_clk1を生成することができる。Out_clk1は、DPLL204によって受信された基準信号Ref_clk1と(例えば、周波数および/または位相が)ロックされ得る。また、分数分周器220がクロック信号211を分周して出力クロック信号Out_clk2を生成することができる。
【0022】
減算ノード208において、出力信号205は、DPLL206からの出力信号207から減算され得る。減算ノード208は、差分信号209を分数分周器220に出力することができる。ここで、差分信号209は、出力信号205と207との差であり得る。一実施形態において、差分信号209は、FOD220を調整するための分数周波数オフセットを表すマルチビットデジタルデータ信号であり得る。分数分周器220は、非整数の分周比でクロック信号211を分周するように構成され得る。減算ノード208における減算によって、出力クロック信号Out_clk2において出力信号205が無変調になるか、クロック信号211から相殺され得る。例えば、出力信号205がAPLL210の出力周波数を10ppm(parts per million)だけ増加させる周波数オフセットを示す場合、また、出力信号207が3ppmの周波数オフセットを示す場合、差分信号209は、-7ppmの周波数オフセットを示すことができる。クロック信号211は、10ppmのオフセットを有することができ、分数分周器220の出力周波数は、差分信号209によって10ppm押し下げられることができ、分数分周器220の出力周波数の正味の結果は3ppm(例えば、出力信号207と同じ)であり得る。
【0023】
分数分周器220で出力信号205を相殺した結果、分数分周器220から出力された出力クロック信号Out_clk2は、基準信号Ref_clk2と(例えば、周波数および/または位相が)ロックされ得る。図1に示す実施例を参照すると、Out_clk1は出力クロック信号117であり得、Out_clk2は出力クロック信号119であり得る。さらに、出力信号205を相殺することで、Out_clk1とOut_clk2を互いから独立させることができる。例えば、Out_clk2は、Ref_clk1に依存しなくなる可能性がある。したがって、Out_clk1は、Ref_clkとロックされ得、Out_clk2は、Ref_clk2とロックされ得る。Out_clk1とOut_clk2とが互いから独立しているので、DPLL204およびDPLL206は、DPLL204からAPLL210に供給される変調信号(例えば、出力信号205)を抑制するための追加のハードウェアを実装する必要がなく、同様の帯域幅の下で動作することができる。また、DPLL204およびDPLL206の帯域幅は、異なる帯域幅のDPLLを有するようにタイミング回路110を設計するという制限なしに、柔軟に調整され得る。さらに、タイミング回路110は、同様の帯域幅または異なる帯域幅を有するデュアルDPLLに対して実装され得る。
【0024】
図3は、一実施形態における、図2のタイミング回路の詳細を追加的に示すブロック図である。図3に示す一実施形態において、タイミング回路110は、DPLL204とAPLL210との間に接続されたスケーラ302およびシグマ・デルタ変調器(SDM)304をさらに含むことができる。さらに、タイミング回路110は、減算ノード208の出力と分数分周器220との間に接続されたスケーラ308を含むことができる。さらに、一実施形態において、タイミング回路110は、DPLL204と減算ノード208との間に接続されたデジタルローパスフィルタ(LPF)306を含むことができる。APLL210は、回路ブロック312と、ローパスフィルタ314と、VCO316と、マルチモジュラス分周器(MMD)318と、を含むことができる。回路ブロック312は、位相および周波数検出器と、チャージポンプと、を含むことができる。分数分周器220は、MMD322と、SDM324と、ジッタ低減回路326と、を含むことができる。一実施形態において、MMD322、SDM324、およびジッタ低減回路を含む分数分周器220を実装することで、LCベースのAPLLを使用してAPLL210を実装することができる。
【0025】
スケーラ302は、出力信号205をアップスケールまたはダウンスケールすることができ、出力信号205のスケーリングされたバージョンは、SDM304に入力され得る。SDM304は、出力信号205のスケーリングされたバージョンを、例えば、より低いビット数およびより高い周波数のデジタル信号に変換することができる。SDM304からの変換された出力信号205は、APLL210のMMD318に供給され得る。MMD318は、出力信号205によって制御され、出力クロック信号211に対して分周を行うことができる。分周されたクロック信号は、MMD318から回路ブロック312に供給され得る。回路ブロック312は、MMD318からの分周されたクロック信号とLOクロック信号との間の位相差および周波数差を決定することができる。この差は、出力信号211を調整および/または生成するために、LPF314からVCOに渡される。
【0026】
スケーラ308は、差分信号209をアップスケールまたはダウンスケールすることができ、差分信号209のスケーリングされたバージョンは、SDM324に入力され得る。SDM324は、差分信号209のスケーリングされたバージョンを、例えば、より低いビット数およびより高い周波数のデジタル信号に変換することができる。SDM304からの差分信号209のスケーリングされたバージョンは、FOD220のMMD322に供給され得る。MMD322は、差分信号209のスケーリングされたバージョンおよびMMD322によって制御され、APLL210からクロック信号211を受信し、クロック信号211に対して分周を行うことができる。MMD322およびSDM324からの結果は、ジッタ低減回路326に供給されて、Out_clk2信号のジッタを低減させることができる。
【0027】
一実施形態において、第1の信号経路は、DPLL204の出力から減算ノード208を介した分数分周器220への経路であり得、第2の信号経路は、DPLL204からAPLL210を介した分数分周器220への経路であり得る。LPF306は、DPLL204の出力と減算ノード208との間に位置することができる。これにより、信号が第1の経路と第2の経路を介して分数分周器220に入力されるタイミングのバランスをとるために、第1の信号経路を減速させることができる(例えば、出力信号205をフィルタリングすることによって)。例えば、第2の信号経路よりも比較的早く電流が第1の信号経路に流れる場合、LPF306は、第1の信号経路を減速させることができる。
【0028】
第1の信号経路および第2の信号経路は、DPLL204およびAPLL210の帯域幅に基づいて異なる速度を有することができる。例えば、DPLL204の帯域幅がAPLL210よりもあまり小さくない場合、LPF306は、第1の信号経路を減速させることができる。一実施形態において、DPLL204の帯域幅とAPLL210の帯域幅との差が大きくなると、LPF306の効果が無視できるようになる可能性がある。LPF306の帯域幅は、APLL210の帯域幅に基づいてプログラム可能であり得る。例えば、本明細書に記載の出力信号205の無変調または相殺は、LPF306の帯域幅をAPLL210の帯域幅に合わせることによって最適化され得る。
【0029】
さらに、一実施形態において、タイミング回路110は、分数分周器330など、分数分周器220の追加のコピーを少なくとも1つ含むことができる。追加の分数分周器の各々は、出力信号211および差分信号209のスケーリングされたバージョンを受信し、Out_clk2のそれぞれのコピーを出力することができる。例えば、追加の分数分周器330は、Out_clk2と同一であり得るOut_clk2’を出力することができる。
【0030】
図4は、一実施形態における、無変調結合を用いたデュアルデジタル位相同期ループを実現することができる例示的なプロセスのフローチャートである。図4に示すプロセス400は、例えば、上述したタイミング回路110を用いて実現されてもよい。例示的なプロセスは、1つまたは複数のブロック402、404、406、408、および/または410によって示される1つまたは複数の操作、動作、または機能を含んでもよい。個別のブロックとして図に示されているが、所望の用途に応じて、様々なブロックを追加のブロックに分割したり、より少ないブロックに組み合わせたり、省略したり、異なる順序で実行されたり、並行して実行されたりしてもよい。
【0031】
プロセス400は、複数のネットワークを同期させるように、タイミング回路(例えば、図1図3に示すタイミング回路110)によって実行されることができる。プロセス400は、ブロック402で開始することができる。ブロック402において、タイミング回路は、アナログ位相同期ループ(APLL)を動作させて第1の信号を出力することができる。プロセス400は、ブロック402からブロック404に進むことができる。ブロック404において、タイミング回路は、第1のデジタル位相同期ループ(DPLL)を動作させて第2の信号を出力することができる。プロセス400は、ブロック404からブロック406に進むことができる。ブロック406において、タイミング回路は、第2のDPLLを動作させて第3の信号を出力することができる。1つまたは複数の実施形態において、ブロック402、404、および406は、任意の順序で、または並行して実行され得る。
【0032】
プロセス400は、ブロック402からブロック404に進むことができる。ブロック404において、タイミング回路は、第1の信号と第2の信号とを組み合わせて第1の出力クロック信号を生成することができる。プロセス400は、ブロック402からブロック404に進むことができる。ブロック404において、タイミング回路は、第3の信号から第2の信号を減算して第2の出力クロック信号を生成することができる。第2の出力クロック信号は、第1のDPLLの動作から独立したものであり得る。1つまたは複数の実施形態において、ブロック408および410は、任意の順序で、または並行して実行され得る。
【0033】
一実施形態において、タイミング回路は、複数の分数分周器を動作させて第2の出力クロック信号の複数のコピーを出力することができる。一実施形態において、タイミング回路は、ローパスフィルタを動作させて、第3の信号から第2の信号を減算する前に、第2の信号をフィルタリングすることができる。ここで、ローパスフィルタの帯域幅は、APLLの帯域幅に基づいている。一実施形態において、第1のDPLLの帯域幅と第2のDPLLの帯域幅との差は、所定の閾値よりも小さい。
【0034】
図におけるフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能性、および動作を示している。これに関して、フローチャートまたはブロック図における各ブロックは、指定された論理機能を実装するための1つまたは複数の実行可能命令を含む命令のモジュール、セグメント、またはその一部を表すことができる。いくつかの代替的な実施例において、ブロックに示された機能は、図に示す順序からはずれて発生してもよい。例えば、連続して示されている2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実現されてもよく、関係する機能に応じて、場合によっては逆の順序で実現されてもよい。また、ブロック図および/またはフローチャートの各ブロック、ならびにそれらのブロックの組み合わせは、指定された機能または動作を実行する、または特別な目的のハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせを実行する、特別な目的のハードウェアベースのシステムよって実現され得ることに留意されたい。
【0035】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用されており、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用される単数を表す用語は、特に明示されない限り、その複数を含むことも意図している。また、本明細書で使用される「備える」という用語は、記載されている特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を画定するが、1つまたは複数の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しないことに留意されたい。
【0036】
添付の特許請求の範囲に記載のすべての手段またはステップと機能要素の対応する構造、材料、操作、およびそれらの等価物は、具体的に記載されている他の要素と組み合わせて機能を実現するための任意の構造、材料、または操作を包含することを意図している。本発明の開示されている実施形態の説明は、例示および説明のために提供されているが、網羅的であること、あるいは開示された形態に限定されることを意図していない。当業者には、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、多くの修正および変形を適用することができることが明らかであろう。上述した実施形態は、本発明の原理および実用化を最適に説明するために、また、検討される特定の用途に適するように種々の修正を伴う様々な実施形態について本発明を当業者が理解できるように、選択および説明されたものである。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】