(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055831
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】超電導電磁石コンポーネントおよびそれを含む等時性サイクロトロン
(51)【国際特許分類】
H05H 13/00 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
H05H13/00
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023173509
(22)【出願日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】63/413,790
(32)【優先日】2022-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518296517
【氏名又は名称】禾榮科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HERON NEUTRON MEDICAL CORP.
【住所又は居所原語表記】No.66-2, Shengyi 5th Rd., Zhubei City, Hsinchu County, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】邱 顯浩
(72)【発明者】
【氏名】劉 嘯青
【テーマコード(参考)】
2G085
【Fターム(参考)】
2G085AA11
2G085BC03
2G085BC04
2G085BC09
2G085BC18
(57)【要約】
【課題】超電導電磁石コンポーネントを提供する。
【解決手段】中心軸の周りに配置される超電導メインコイル、中心軸周りに超電導メインコイル内に配置される超電導トリムコイル群、及び超電導トリムコイル群に配置され第1の集束コイル群と第2の集束コイル群を含み、第1の集束コイル群及び第2の集束コイル群は第1の扇形構造を有し、中心軸の周りに並べて配置され隣接する2つの第1の集束コイルの電流方向は反対である第1の集束コイルと第2の扇形構造を有し、第1の集束コイル内に対応して配置され隣接する2つの第2の集束コイルの電流方向は反対である第2の集束コイルを含む超電導集束コイル群を含む等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネントであって、
中心軸の周りに配置され、上部メインコイルと下部メインコイルとを含み、上部メインコイルと下部メインコイルとの間に正中面がある超電導メインコイル、
前記中心軸周りに前記超電導メインコイル内に配置され、上部トリムコイル群と下部トリムコイル群とを含み、前記正中面は前記上部トリムコイル群と前記下部トリムコイル群との間に位置する超電導トリムコイル群、および
前記超電導トリムコイル群の前記正中面から離れた側に配置され、上部集束コイル群と下部集束コイル群とを含み、前記正中面は前記上部集束コイル群と前記下部集束コイル群との間に位置し、前記上部集束コイル群および前記下部集束コイル群は、
第1の扇形構造をそれぞれ有し、前記中心軸の周りに並べて配置され、隣接する2つの第1の集束コイルの電流方向は反対である複数の第1の集束コイルと、
第2の扇形構造をそれぞれ有し、前記複数の第1の集束コイル内に対応して配置され、隣接する2つの第2の集束コイルの電流方向は反対である複数の第2の集束コイルとをそれぞれ含む超電導集束コイル群を含む等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項2】
前記超電導メインコイル0の外半径は300mm~600mmの間である請求項1に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項3】
前記超電導メインコイルの厚さは30mm~50mmの間である請求項1に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項4】
前記上部メインコイルまたは前記下部メインコイルの高さは200mm~500mmの間である請求項1に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項5】
前記上部メインコイルと前記下部メインコイルとの間の垂直方向の間隔は、20mm~200mmの間である請求項1に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項6】
前記上部トリムコイル群と前記下部トリムコイル群は、4つのサブトリムコイルをそれぞれ含み、前記4つのサブトリムコイルは、前記中心軸に沿って前記超電導メインコイルの周りに順次に配置される請求項1に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項7】
前記サブトリムコイルの厚さは、10mm~50mmの間である請求項6に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項8】
前記サブトリムコイルの高さは、10mm~50mmの間である請求項6に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項9】
前記上部トリムコイル群と前記下部トリムコイル群との間の垂直方向の間隔は、20mm~200mmの間である請求項1に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項10】
複数の第1の集束コイルおよび複数の第2の集束コイルの中心角は45°である請求項1に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項11】
前記超電導集束コイル群は、前記複数の第1の集束コイルおよび前記複数の第2の集束コイルからなり、前記複数の第1の集束コイルの前記第1の扇形構造のサイズは、前記複数の第2のフォーカシングコイルの前記第2の扇形構造のサイズよりも大きい請求項1に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項12】
各前記第1の集束コイルと前記中心軸との間の最短の水平方向の間隔は15mm~100mmであり、最長の水平方向の間隔は250mm~570mmであり、
各前記第2の集束コイルと前記中心軸との間の最短の水平方向の間隔は17mm~150mmであり、最長の水平方向の間隔は80mm~200mmである請求項11に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項13】
各第1の集束コイルおよび各第2の集束コイルは、2mm~20mmの厚さを有する請求項1に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項14】
各第1の集束コイルおよび各第2の集束コイルは、100mm~200mmの高さを有する請求項1に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項15】
前記正中面上の各第1の集束コイルと前記隣接する第2の集束コイルとの間には、0.1T~5.4Tの間の磁場強度の差がある請求項1に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項16】
前記正中面上で荷電粒子ビームが受ける磁場強度は1.4T~2.7Tである請求項1に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項17】
前記正中面上の荷電粒子ビームの抽出された運動エネルギーは5MeV~35MeVの間である請求項1に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項18】
前記超電導メインコイル、前記超電導トリムコイル群、および前記超電導集束コイル群はそれぞれ鉄心のない超電導コイルである請求項1に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項19】
前記鉄心のない超電導コイルの材料は、NbTi、Nb3Sn、MgB2、Bi-2212、Bi-2223(BiSrCaCuO)、YBCOを含む請求項18に記載の等時性サイクロトロンの超電導電磁石コンポーネント。
【請求項20】
正の荷電粒子源を生成するように構成されたジェネレータ、
前記ジェネレータと連通しており、前記正の荷電粒子源を抽出し、バンチ(bunch)し、集束させて、正の荷電粒子ビームを形成するように構成される注入管、
前記注入管と連通しているキャビティ、
前記キャビティ内に配置され、前記キャビティ内に進入した前記正の荷電粒子ビームの進行方向を偏向させるように構成されるインフレクター、
前記キャビティ内に配置され、前記超電導電磁石コンポーネントの正中面が、前記曲げられた正荷電粒子ビームを収容する、請求項1に記載の超電導電磁石コンポーネント、
前記キャビティ内に配置され、前記正の荷電粒子ビームを前記正中面上で共鳴加速するように構成される加速装置、
前記キャビティ上に配置され、前記共鳴加速された正の荷電粒子ビームを前記正中面から前記キャビティの外側に導くように構成された出口、および
前記注入管および前記キャビティと流体連通する複数の抽気装置を含む等時性サイクロトロン。
【請求項21】
前記正の電荷粒子源はH+である請求項20に記載の等時性サイクロトロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年10月6日に出願された米国仮特許出願番号第63/413790号からの優先権を主張するものであり、これらの全ては引用によって本願に援用される。
【0002】
本発明は、粒子加速器に関するものであり、特に、超電導電磁石コンポーネントおよびそれを含む等時性サイクロトロンに関するものである。
【背景技術】
【0003】
中性子捕捉療法(NCT)は、中性子吸収の優れた元素を特定の場所に送達することで行われる放射線療法の一種であり、次に、異なる元素の中性子吸収度の違いを利用して選択的治療を行うことにより、他の健康な組織を破壊することなく癌細胞を正確に破壊するものである。
【0004】
具体的には、既存の等時性サイクロトロンは、水素イオン(H-)ビームを加速し、炭素箔を含む伸縮装置を用いてH-の二重電子を剥離し、陽子ビームのエネルギーを定めることができる。しかしながら、H-の二重電子を剥離すると、カーボンフォイル(炭素箔)と伸縮装置の温度が上昇する。伸縮装置とカーボンフォイルが冷えるのを待つと、出力の陽子ビームの電流を制限する。一方、H-の電流が大きすぎると、カーボンフォイルの寿命もそれに伴い短くなる。言い換えれば、既存の設計はアイソトープの生成にのみ適しており、固定エネルギーと大電流の陽子ビームの生成には適していないため、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の分野に適用するのが困難である。従って、中性子捕捉療法の開発および応用を促進するためには、大電流の陽子ビームを安定して供給できる等時性サイクロトロンの開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超電導電磁石コンポーネントおよびそれを含む等時性サイクロトロンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態では、超電導電磁石コンポーネントが提供される。超電導電磁石コンポーネントは、超電導メインコイル、超電導トリムコイル群、超電導集束コイル群を含む。超電導メインコイルは、中心軸の周りに配置され、超電導メインコイルは、上部メインコイルと下部メインコイルとを含み、上部メインコイルと下部メインコイルとの間には正中面があり、粒子ビームを加速させる。超電導トリムコイル群は、中心軸周りに超電導メインコイル内に配置される。超電導トリムコイル群は、上部トリムコイル群と下部トリムコイル群とを含み、正中面は上部トリムコイル群と下部トリムコイル群との間に位置する。超電導集束コイル群は、超電導トリムコイル群の正中面から離れた側に配置される。超電導集束コイル群は上部集束コイル群と下部集束コイル群とを含み、正中面は上部集束コイル群と下部集束コイル群との間に位置する。上部集束コイル群および下部集束コイル群は、複数の第1の集束コイルおよび複数の第2の集束コイルをそれぞれ含む。各第1の集束コイルは、第1の扇形構造を有し、中心軸の周りに並べて配置され、隣接する2つの第1の集束コイルの電流方向は反対である。各第2の集束コイルは、第2の扇形構造を有し、第1の集束コイル内に対応して配置され、隣接する2つの第2の集束コイルの電流方向は反対である。
【0007】
いくつかの実施形態では、等時性サイクロトロンが提供される。等時性サイクロトロンは、ジェネレータ、注入管、キャビティ、インフレクター、上述の超電導電磁石コンポーネント、加速装置、出口(outlet)、および複数の抽気装置を含む。ジェネレータは、正の荷電粒子源を生成するように構成される。注入管は、ジェネレータと連通しており、正の荷電粒子源を抽出し、バンチ(bunch)し、集束させて、正の荷電粒子ビームを形成するように構成される。キャビティは、注入管と連通している。インフレクターは、キャビティ内に配置され、キャビティ内に進入した正の荷電粒子ビームの進行方向を偏向させるように構成される。電磁石コンポーネントはキャビティ内に配置され、電磁石コンポーネントの正中面は曲げられた正の荷電粒子ビームを収容する。正の荷電粒子ビームの方向は、注入管がキャビティに進入する方向から正中面の中央領域に向かって曲げられ、正の荷電粒子ビームの進行方向は正中面に位置する。加速装置はキャビティ内に配置され、正の荷電粒子ビームを正中面上で共鳴加速するように構成される。出口は、キャビティ上に配置され、共鳴加速された正の荷電粒子ビームを正中面からキャビティの外側に自発抽出するように構成される。複数の抽気装置は、注入管およびキャビティと連通しており、真空度を維持する。
【0008】
本開示の超電導電磁石コンポーネントおよび等時性サイクロトロンは、様々な種類の中性子捕捉療法装置に適用することができる。本開示の特徴および利点をより理解しやすくするために、添付の図面とともに様々な実施形態を以下に特に引用し、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の実施形態の態様は、以下の詳細な説明および添付の図面を通じて明確に理解することができる。図面は、業界の標準的な慣行に従って、さまざまな特徴が縮尺通りに描かれていない。実際、さまざまな特徴の寸法は、明確に説明できるようにするために、任意に拡大または縮小されることがある。
【
図1】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による超電導電磁石コンポーネントを示す分解図である。
【
図2】
図2は、本開示のいくつかの実施形態による超電導電磁石コンポーネントを示す斜視断面図である。
【
図3】(a)は、本開示のいくつかの実施形態による超電導電磁石コンポーネントを示す上面図である。(b)は、は、本開示のいくつかの実施形態による超電導電磁石コンポーネントの部分拡大図である。
【
図4】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による超電導電磁石コンポーネントを示す側面図である。
【
図5】
図5は、本発明のいくつかの実施形態による等時性サイクロトロンを示す概略図である。
【
図6】
図6は、本開示のいくつかの実施形態による超電導電磁石コンポーネントを含む等時性サイクロトロンの正中面上に形成された磁場を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本開示のいくつかの実施形態による超電導電磁石コンポーネントを含む等時性サイクロトロンの正中面上の荷電粒子の移動軌跡を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の開示は、提供される超伝導電磁石コンポーネントおよびそれを含む等時性サイクロトロンを実施するための多くの異なる実施形態または例を提供する。本開示を簡潔に説明するために、複数の要素および複数の配列の特定の実施形態が以下に述べられる。これらはもちろん単に例示するためであり、それに限定するという意図はない。例えば、下記の開示において、第1の特徴が第2の特徴の上(または「上(on)」または「上方(above)」)に形成されるということは、第1と第2の特徴が直接接触して形成される複数の実施形態を含むことができ、且つ第1と第2の特徴が直接接触しないように、付加的な特徴が第1と第2の特徴の間に形成される複数の実施形態を含むこともできる。また、本開示は、複数の例において同じ構成要素の符号または文字を繰り返し用いる可能性がある。繰り返し用いる目的は、簡易化した、明確な説明を提供するためのもので、説明される様々な実施形態および/または構成の関係を限定するものではない。
【0011】
本明細書で言及される「上」、「下」、「左」、「右」などの方向の用語および同様の用語は、図面内の方向を指すものである。従って、本明細書で用いられる方向性に関する用語は、本開示を説明するためのものであり、限定するためのものではない。
【0012】
本開示のいくつかの実施形態では、「配置する」、「接続する」、および同様の用語など、配置および接続に関する用語は、特に指定しない限り、2つの特徴が互いに直接接触していることを指すことができ、または2つの特徴が互いに直接接触していないことを指すこともでき、2つの特徴間に更なる接続の特徴があることもある。配置と接続に関する用語は、両方の特徴が可動である場合、または両方の特徴が固定される場合も含まれることができる。
【0013】
さらに、明細書および特許請求の範囲で用いられる「第1」、「第2」などの序数は、異なる特徴を修正するため、または異なる実施形態もしくは範囲を区別するために用いられるものであり、特徴の数、上限または下限を制限するものではなく、特徴の製造順序または配置順序を制限するものではない。
【0014】
本明細書で使用される用語「約」、「実質的に」などは、一般に、所定の値または所定の範囲の10%以内、5%以内、3%以内、2%以内、1%以内、または0.5%以内を意味する。本明細書で与えられる値は近似値であり、すなわち、「約」の意味は、「約」または「実質的に」の具体的な説明がなくても暗示される可能性がある。
【0015】
特に定義されない限り、本明細書で用いられる技術的および科学的用語を含む全ての用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。理解されることであろうが、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、本開示の関連技術と、背景または文脈に適合する意味を有するものとして解釈されるべきであり、特に定義されない限り、理想化されたまたは過度に形式的な方法で解釈されるべきではない。
【0016】
いくつかの既存の等時性サイクロトロンでは、通常、荷電粒子ビームとして水素イオン(H-)が用いられ、荷電粒子ビームは加速装置によって電磁石コンポーネントの正中面上で共鳴加速される。荷電粒子ビームが特定のエネルギーまで加速されると、H-の2つの電子がH-の経路上に配置されたカーボンフォイルによって剥離され、水素イオン(H+)を形成することができる。このように、荷電粒子ビームの電気的特性が変化(H-からH+へ)すると、荷電粒子ビームは磁場によって引っ張られ(時計回り(または反時計回り)の回転から反時計回り(または時計回り)の回転へ)、予想通りの経路でサイクロトロンから取り出される。
【0017】
しかしながら、大電流の荷電粒子ビームによる衝撃はカーボンフォイルを急激に加熱し、カーボンフォイルの寿命が短くなる。一方、荷電粒子ビームのエネルギー(運動エネルギーなど)が高くなると、カーボンフォイルの温度がさらに上昇し、カーボンフォイルの寿命が短くなる。大電流を必要とする中性子捕捉療法装置では、寿命の短いカーボンフォイルは、定期的なカーボンフォイルの交換回数を増加させ、これにより不便さを増し、カーボンフォイルの分解および組み立てによる損傷のリスクを増大させる。また、より低い電流のみが用いられて装置を動作させる場合、装置の開発とアプリが制限され、低電流で中性子捕捉療法を行う治療時間は、高電流で中性子捕捉療法を行う治療時間よりも長くなる。これは、治療中の患者の快適さを損なうだけでなく、治療時間が長くなることでアクシデントの確率も高くなる。
【0018】
上述の課題を解決するために、本開示は等時性サイクロトロン用の超電導電磁石コンポーネントおよびそれを含む等時性サイクロトロンを提供する。具体的には、電磁石コンポーネントは、鉄心のない3種類の超電導コイルからなり、そこに入射した荷電粒子ビーム(例えばH+)に等時性の回転運動を行わせ、特定の運動エネルギーで自発抽出されるように構成される。このように、既存のサイクロトロンと比較して、本開示の等時性サイクロトロン(上述の超電導電磁石コンポーネントを含む)は、カーボンフォイルによって荷電粒子ビームの経路を制御する必要がなく、大電流の陽子ビームを安定して発生させることができるため、中性子捕捉療法装置に、より効果的に用いられることができる。一方、本発明の超電導コイルは鉄心を含まないため、大幅な軽量化効果も有することができる。いくつかの実施形態では、鉄心のない超電導コイルの材料は、NbTi、Nb3Sn、MgB2、Bi-2212、Bi-2223(BiSrCaCuO)、YBCO、これらの組み合わせ、または他の適切な材料であることができ、これらを含むことができるが、本開示はこれに限定されない。
【0019】
本開示の等時性サイクロトロンは中性子捕捉療法装置に適用されることができると上述したが、本開示の適用はこれに限定されないことに留意されたい。例えば、本開示の等時性サイクロトロンは、アイソトープ生成装置のような大電流の陽子ビームの使用を必要とする装置にも適用することができる。本開示をより明確かつ理解しやすくするために、本開示の各構成要素を以下に詳細に説明する。
【0020】
図1、
図2、
図3(a)、
図3(b)、および
図4は、それぞれ、本開示のいくつかの実施形態による超電導電磁石コンポーネントの分解図、斜視断面図、上面図、部分拡大図、および側面図を示している。これらの図に示されるように、超電導電磁石コンポーネント1は、超電導メインコイル10、超電導トリムコイル群20、および超電導フォーカシングコイル群30を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、超電導メインコイル10は、中心軸Aの周りに配置され、内部に収容空間Sを形成する。収容空間Sは、超電導トリムコイル群20および超電導フォーカシングコイル群30を収容するように用いられる。いくつかの実施形態では、超電導メインコイル10は、鉄心のない(即ち、コアレス)中空環状壁であることができ、中空環状壁は中心軸Aに沿って垂直に延在する。超電導メインコイル10は、上部メインコイル10Aと下部メインコイル10Bとを含み、上部メインコイル10Aと下部メインコイル10Bは互いに対称に配置される。上部メインコイル10Aと下部メインコイル10Bとの間には正中面Pがある。いくつかの実施形態では、超電導メインコイル10は、荷電粒子ビームの水平集束、アイソクロニズム、サイクロトロン運動、および特定の運動エネルギーでの自己抽出に用いられる一次磁場を生成するように構成される。メイン水平集束磁場は、荷電粒子ビームが正中面P上を移動するときに進行方向に垂直に水平集束されるようにすることができる。
【0022】
図1に示されるように、いくつかの実施形態では、超電導メインコイル10の外半径d1は300mm~600mmの間であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、超電導メインコイル10の外半径d1は、300mm、360mm、420mm、480mm、540mm、570mm、600mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。いくつかの実施形態では、超電導メインコイル10の内半径d2は250mm~570mmの間であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、超電導メインコイル10の内半径d2は、250mm、320mm、380mm、440mm、500mm、530mm、570mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。いくつかの実施形態では、超電導メインコイル10の厚さt1は30mm~50mmの間であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、超電導メインコイル10の厚さt1は、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、上部メインコイル10Aまたは下部メインコイル10Bの高さh1は200mm~500mmの間であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、上部メインコイル10Aまたは下部メインコイル10Bの高さh1は、200mm、300mm、320mm、340mm、360mm、380mm、400mm、500mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。
図2に示されるように、いくつかの実施形態では、上部メインコイル10Aと下部メインコイル10Bとの間の垂直方向の間隔s1(組み立てられた状態での)は、20mm~200mmの間であるが、これに限定されない。例えば、上部メインコイル10Aと下部メインコイル10Bとの間の垂直方向の間隔s1は、20mm、40mm、60mm、100mm、150mm、200mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。垂直方向の間隔s1の半分は、
図4に示されるように、上部メインコイル10Aと中間面Pとの間、または下部メインコイル10Bと中間面Pとの間の間隔である。
【0024】
いくつかの実施形態では、超電導トリムコイル群20は、中心軸Aの周りに超電導メインコイル10の収容空間S内に配置される。いくつかの実施形態では、超電導メインコイル10と同様に、超電導トリムコイル群20は、鉄心のない(コアレス)中空環状柱であることができ、中空の環状柱は超電導メインコイル10の内壁によって囲まれている。
図2に示されるように、いくつかの実施形態では、超電導トリムコイル群20と超電導メインコイル10との間の水平方向の間隔s2は0mm~100mmの間であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、超電導トリムコイル群20と超電導メインコイル10との間の水平方向の間隔s2は、0mm、5mm、10mm、15mm、20mm、50mm、100mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、超電導トリムコイル群20は、上部トリムコイル群20Aと下部トリムコイル群20Bとを含み、上部トリムコイル群20Aと下部トリムコイル群20Bは、互いに対称に配置される。正中面Pは、上部トリムコイル群20Aとロアトリムコイル群20Bとの間に位置する。いくつかの実施形態では、超電導トリムコイル群20は、微調整された等時性および特定の運動エネルギーの自発抽出(spontaneous extraction)に必要な磁場を生成するように構成される。微調整用のトリムコイルの磁場は、メインコイルの磁場と協同し、荷電粒子ビームがより安定して正中面P上で特定の運動エネルギーまで加速され、自発抽出されるようにすることができる。
図2に示されるように、いくつかの実施形態では、上部トリムコイル群20Aと下部トリムコイル群20Bとの間の垂直方向の間隔s3は、20mm~200mmの間であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、上部トリムコイル群20Aと下部トリムコイル群20Bとの間の垂直方向の間隔s3は、20mm、40mm、60mm、80mm、100mm、200mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。垂直方向の間隔s3の半分は、
図4に示されるように、上部トリムコイル群20Aと中間面Pとの間、または下部トリムコイル群20Bと中間面Pとの間の間隔である。
【0026】
図2に示されるように、いくつかの実施形態では、上部トリムコイル群20Aは4つのサブトリムコイル21A~24Aを含み、下部トリムコイル群20Bは4つのサブトリムコイル21B~24Bを含む。サブトリムコイル21A~24Aは、中心軸Aに沿って上部メインコイル10A内に順次に配置され、サブトリムコイル21B~24Bは、中心軸Aに沿って下部メインコイル10B内に順次に配置される。しかしながら、本開示は、上述のサブトリムコイルの数に限定されない。他の実施形態では、サブトリムコイルの数は必要に応じて調整されることができる。例えば、上部トリムコイル群20Aに含まれるサブトリムコイルの数は3つ、5つ以上であってもよく、下部トリムコイル群20Bに含まれるサブトリムコイルの数は3つ、5つ以上であってもよい。いくつかの実施形態では、2つの隣接するサブトリムコイル21A~24Aと、21B~24Bとの間の水平方向の間隔s4は、1.0mm~50mmの間であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、2つの隣接するサブトリムコイル21A~24Aと、21B~24Bとの間の水平方向の間隔s4は、1.0mm、5mm、10mm、15mm、20mm、50mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。
【0027】
図2に示されるように、いくつかの実施形態では、サブトリムコイル21A~24Aと21B~24Bの厚さt2は、10mm~50mmの間であるが、これに限定されない。例えば、サブトリムコイル21A~24Aと21B~24Bの厚さt2は、10mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、50mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。いくつかの実施形態では、サブトリムコイル21A~24Aと21B~24Bの高さh2は10mm~50mmの間であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、サブトリムコイル21A~24Aと21B~24Bの高さh2は、10mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、50mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。サブトリムコイル21A~24Aと21B~24Bは、それぞれ異なる厚さt2、高さh2、水平方向の間隔s4を有することができ、互いに同じであることに限定されないことに留意されたい。
【0028】
いくつかの実施形態では、超電導集束コイル群30は、正中面Pから離れた超電導トリムコイル群20の側に配置される。超電導集束コイル群30は、上部集束コイル群30Aと下部集束コイル群30Bとを含み、上部集束コイル群30Aと下部集束コイル群30Bは互いに対称に配置される。正中面Pは、上部集束コイル群30Aと下部集束コイル群30Bとの間に位置する。いくつかの実施形態では、超電導集束コイル群30は、荷電粒子ビームを正中面P上に垂直に集束させる垂直集束磁場を生成するように構成される。
図2に示されるように、いくつかの実施形態では、上部集束コイル群30Aと下部集束コイル群30Bとの間の垂直方向の間隔s5は、40mm~300mmの間であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、上部集束コイル群30Aと下部集束コイル群30Bとの間の垂直方向の間隔s5は、40mm、75mm、100mm、125mm、300mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。垂直方向の間隔s5の半分は、
図4に示されるように、上部集束コイル群30Aと中間面Pとの間、または下部集束コイル群30Bと中間面Pとの間の間隔である。
【0029】
図3(a)に示されるように、いくつかの実施形態では、上部集束コイル群30Aは、複数の第1の集束コイル31Aおよび複数の第2の集束コイル32Aを含む。各第1の集束コイル31Aは、第1の扇形構造を有し、中心軸Aの周りに並べて配置され、隣接する2つの第1の集束コイル31Aの電流方向は反対である。換言すれば、隣接する2つの第1の集束コイル31Aによって形成された磁場は、異なる磁界強度を有する。
【0030】
また、各第2の集束コイル32Aは、第2の扇形構造を有する。第1の集束コイル31Aの第1の扇形構造の大きさは、第2の集束コイル32Aの第2の扇形構造の大きさよりも大きい。いくつかの実施形態では、各第2の集束コイル32Aは各第1の集束コイル31Aに対応して配置され、2つの隣接する第2の集束コイル32Aの電流方向は反対である。換言すれば、隣接する2つの第2の集束コイル32Aによって形成された磁界は、異なる磁界強度を有する。
【0031】
いくつかの実施形態では、各第1の集束コイル31Aおよびその中の第2の集束コイル32Aは、外側領域近傍に垂直集束磁場および内側領域近傍に垂直集束磁場を提供するようにそれぞれ構成される。各群の第1の集束コイル31Aとその中の第2の集束コイル32Aの電流方向は同じであり、各群の第1の集束コイル31Aおよびその中の第2の集束コイル32Aの電流方向は、隣接する他の群の第1の集束コイル31Aおよびその中の第2の集束コイル32Aの電流方向と異なる。いくつかの実施形態では、第1の集束コイル31Aおよびその中の第2の集束コイル32Aに対応する正中面P上の磁場強度が高い領域を山(hill)Hと呼び、第1の集束コイル31Aおよびその中の第2の集束コイル32Aに対応する正中面P上の磁場強度が低い領域を谷(valley)Vと呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、正中面P上の山値と谷値との間の磁場強度の差は0.1T~5.4Tであるが、本開示はこれに限定されない。例えば、磁場強度の差は、0.1T、0.5T、1.0T、1.5T、2.0T、2.7T、5.4T、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。
【0032】
上部集束コイル群30Bと同様に、下部集束コイル群30Bも複数の第1の集束コイル31Bおよび複数の第2の集束コイル32Bを含む。第1の集束コイル31Bの構造および配置は、第1の集束コイル31Aと同様であり、第2の集束コイル32Bの構造および配置は、第2の集束コイル32Aと同様であるため、ここでは説明を省略する。いくつかの実施形態では、集束コイル群30は、第1の集束コイル31A、31B、および第2の集束コイル32A、32Bのみからなり、他の集束コイル群を含まない。異なる大きさの扇形構造の集束コイルを2組密に並べて配置することにより、荷電粒子ビームはより安定かつ正確に正中面P上に垂直に集束されることができる。
【0033】
図3(a)に示されるように、いくつかの実施形態では、第1の集束コイル31Aと31Bおよび第2の集束コイル32Aと32Bのそれぞれの中心角θは45°である。言い換えれば、第1の集束コイル31Aと31Bおよび第2の集束コイル32Aと32Bは、それぞれ8つであり、これらは中心軸Aの周りに並べて配置される。上述では中心角θは45°と定義しているが、これらの集束コイルが密に配置されて接触することを防ぐために、中心角θは45°よりも若干小さく、例えば44°、43℃、42℃、41℃、または40℃にすることができることに留意されたい。いくつかの実施形態では、第1の集束コイル31Aと第2の集束コイル32A、または第1の集束コイル31Bと第2の集束コイル32Bとの間の水平方向の間隔s6は、0.0mm~20mmの間であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、第1の集束コイル31Aと第2の集束コイル32A、または第1の集束コイル31Bと第2の集束コイル32Bとの間の水平方向の間隔s6は、0.0mm、5mm、10mm、20mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。
【0034】
図3(b)に示されるように、いくつかの実施形態では、各第1の集束コイル31A、31Bと中心軸Aとの間の最短の水平方向の間隔s7は15mm~100mmであり、最長の水平方向の間隔s8は250mm~570mmであるが、本開示はこれに限定されない。例えば、最短の水平方向の間隔s7は、15mm、25mm、50mm、100mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができ、最長の水平方向の間隔s8は、250mm、350mm、400mm、450mm、500mm、570mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。いくつかの実施形態では、各第2の集束コイル32A、32Bと中心軸Aとの間の最短の水平方向の間隔s9は17mm~150mmであり、最長の水平方向の間隔s10は80mm~200mmであるが、本開示はこれに限定されない。例えば、最短の水平方向の間隔s9は、17mm、50mm、100mm、150mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができ、最長の水平方向の間隔s10は、80mm、90mm、100mm、110mm、120mm、200mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。
【0035】
図2に示されるように、いくつかの実施形態では、第1の集束コイル31A、31Bおよび第2の集束コイル32A、32Bの厚さt3は、2mm~20mmの間であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、第1の集束コイル31A、31Bおよび第2の集束コイル32A、32Bの厚さt3は、2mm、5mm、10mm、20mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。いくつかの実施形態では、第1の集束コイル31A、31Bおよび第2の集束コイル32A、32Bの高さh3は、50mm~300mmの間であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、第1の集束コイル31A、31Bおよび第2の集束コイル32A、32Bの高さh3は、50mm、100mm、150mm、200mm、300mm、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。
【0036】
上述のように、本開示は、上述の構成を有する超電導電磁石コンポーネントを提供することにより、効果的に正中面P上の荷電粒子ビームに等時性および自発抽出の効果を持たせることができる。いくつかの実施形態では、正中面P上で荷電粒子ビームが受ける平均磁場強度は約1.4T~2.7Tであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、正中面P上で荷電粒子ビームが受ける平均磁場強度は、約1.4T、1.8T、2.2T、2.7T、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。いくつかの実施形態では、正中面P上の荷電粒子ビームの抽出された運動エネルギーは5MeV~35MeVの間であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、正中面P上の荷電粒子ビームの抽出された運動エネルギーは、5MeV、10MeV、20MeV、35MeV、または上述の値の間の任意の値または値の範囲であることができる。いくつかの実施形態では、正中面P上の荷電粒子ビームの抽出された運動エネルギーは30MeVであることができ、これにより中性子捕捉療法装置に好ましく用いられることができる。本開示では、荷電粒子は全てH+であることに留意されたい。
【0037】
図5は、本発明のいくつかの実施形態による等時性サイクロトロンを示す概略図である。図に示されるように、等時性サイクロトロンCは、ジェネレータ2、注入管3、キャビティ4、インフレクター5、上述の超電導電磁石コンポーネント1、加速装置6、出口(outlet)7、および複数の抽気装置8を含む。ジェネレータ2は、正の荷電粒子源(例えば、H
+)を生成するように構成される。いくつかの実施形態では、ジェネレータ2は、H
+、H
-、または他の可能な粒子を生成することができるが、本開示はこれらに限定されない。注入管3は、ジェネレータ2と連通しており、正の荷電粒子源(例えば、H
+)を抽出し、バンチ(bunch)し、集束させて、正の荷電粒子ビーム(例えば、H
+)を形成するように構成される。いくつかの実施形態では、注入管3は、H
+のみをキャビティ内に導入し、他の種類の粒子(例えば、H
-)を排除することができる。
【0038】
キャビティ4は、注入管3と連通しており、インフレクター5、超電導電磁石コンポーネント1、および加速装置6を収容するように用いられる。インフレクター5は、キャビティ4内に配置され、キャビティ4内に進入した正の荷電粒子ビームの進行方向を偏向させ、正の電荷粒子ビームを電磁石コンポーネント1内の正中面Pに入射するように構成される。電磁石コンポーネント1はキャビティ4内に配置され、電磁石コンポーネント1の正中面Pは曲げられた正の荷電粒子ビームを収容する。電磁石コンポーネント1の詳細な特徴は、上述を参照し、その説明は省略する。加速装置6は、キャビティ内に配置され、正の荷電粒子ビームを正中面P上で共鳴加速する(例えば、高周波(RF)を用いて)ように構成される。出口7は、キャビティ4上に配置され、共鳴加速された正の荷電粒子ビームを正中面Pからキャビティの外側に抽出するように構成される。抽気装置8は、注入管3およびキャビティ4と流体連通しており、キャビティ4の内部の真空を維持するように構成される。既存の装置と比較して、本開示の等時性サイクロトロンCは、荷電粒子ビームとしてH-を用いないため、荷電粒子ビームの経路上に電子を剥離するためのカーボンフォイルを提供する必要がない。このように、カーボンフォイルによって電子を剥離し、荷電粒子の経路を変えることなく、本開示のサイクロトロンはカーボンフォイルの寿命限界によって制限されないため、大電流で高エネルギーの陽子ビームを出力する効果が得られる。
【0039】
図6~
図7は、本発明のいくつかの実施形態による超電導電磁石コンポーネントを含む等時性サイクロトロンの正中面上に形成される磁場と荷電粒子の移動軌跡をそれぞれ示している。以下、参考のために本開示の一例を示す。以下の表1に示すように、実施例の超電導電磁石コンポーネント1の各コンポーネントの寸法パラメータである。
【0040】
【0041】
以下の表2に示すように、実施例の超電導電磁石コンポーネント1の各コンポーネントの電流パラメータである。
【0042】
【0043】
以下の表3に示すように、以下は実施例の試験結果である。
【0044】
【0045】
図6に示されるように、上述の超電導電磁石コンポーネントに基づいて、本開示の装置により形成される磁場は、交互の山領域Hと谷領域Vとからなり、荷電粒子を正中面P上に安定して集束させることができる。
図7の運動軌跡Tに示されるように、加速器に牽引された後、荷電粒子は正中面P上で複数の等時性ループを経て、自発抽出が達成され、その抽出エネルギーは29.4MeVである。従って、本開示の装置は、中性子捕捉療法装置、他のアイソトープ生成装置、またはエネルギーを抽出するのに適した他の装置において効果的に用いられることができる。
【0046】
実施形態の特徴を概説している。当業者は、同じ目的を実行するため、および/または本明細書に導入される実施形態の同じ利点を達成するための他のプロセスおよび構造を設計または修正するための基礎として本開示を容易に使用できることを理解できる。当業者はまた、そのような同等の構造が本開示の趣旨および範囲から逸脱せず、且つそれらは、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書で様々な変更、置換、および代替を行うことができることを理解するべきである。
【符号の説明】
【0047】
1 超電導電磁石コンポーネント
10 超電導メインコイル
10A 上部メインコイル
10B 下部メインコイル
20 超電導トリムコイル群
20A 上部トリムコイル群
20B 下部トリムコイル群
21A~24A、21B~24B サブトリムコイル
30 超電導フォーカシングコイル群
30A 上部集束コイル群
30B 下部集束コイル群
31A、31B 第1の集束コイル
32A、32B 第2の集束コイル
2 ジェネレータ
3 注入管
4 キャビティ
5 インフレクター
6 加速装置
7 出口
8 抽気装置
A 中心軸
C 等時性サイクロトロン
d1 外半径
d2 内半径
H 山
h1、h2、h3 高さ
P 正中面
S 収容空間
s1、s3、s5 垂直方向の間隔
s2、s4、s6 水平方向の間隔
s7、s9 最短の水平方向の間隔
s8、s10 最長の水平方向の間隔
T 運動軌跡
t1、t2、t3 厚さ
V 谷
θ 中心角
(
図1関連)
1 超電導電磁石コンポーネント
10 超電導メインコイル
10A 上部メインコイル
10B 下部メインコイル
20 超電導トリムコイル群
20A 上部トリムコイル群
20B 下部トリムコイル群
30 超電導フォーカシングコイル群
30A 上部集束コイル群
30B 下部集束コイル群
A 中心軸
d1 外半径
d2 内半径
h1 高さ
P 正中面
S 収容空間
t1 厚さ
(
図2関連)
10A 上部メインコイル
10B 下部メインコイル
20A 上部トリムコイル群
20B 下部トリムコイル群
21A~24A、21B~24B サブトリムコイル
30A 上部集束コイル群
30B 下部集束コイル群
A 中心軸
h2、h3 高さ
P 正中面
S 収容空間
s1、s3、s5 垂直方向の間隔
s2、s4 水平方向の間隔
t2、t3 厚さ
(
図3(a)関連)
1 超電導電磁石コンポーネント
10A 上部メインコイル
30A 上部集束コイル群
31A 第1の集束コイル
32A 第2の集束コイル
A 中心軸
H 山
V 谷
θ 中心角
(
図3(b)関連)
31A 第1の集束コイル
32A 第2の集束コイル
A 中心軸
s6 水平方向の間隔
s7、s9 最短の水平方向の間隔
s8、s10 最長の水平方向の間隔
(
図4関連)
10A 上部メインコイル
10B 下部メインコイル
20A 上部トリムコイル群
20B 下部トリムコイル群
31A、31B 第1の集束コイル
32A、32B 第2の集束コイル
A 中心軸
P 正中面
(
図5関連)
1 超電導電磁石コンポーネント
2 ジェネレータ
3 注入管
4 キャビティ
5 インフレクター
6 加速装置
7 出口
8 抽気装置
C 等時性サイクロトロン
P 正中面
(
図6関連)
正中面の磁場
(
図7関連)
陽子の移動軌跡
RF間隔
T 運動軌跡
【外国語明細書】