(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055845
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】有機物処理装置及び有機物処理方法
(51)【国際特許分類】
B01J 8/02 20060101AFI20240411BHJP
B01J 35/39 20240101ALI20240411BHJP
B01J 35/50 20240101ALI20240411BHJP
【FI】
B01J8/02 Z
B01J35/02 J
B01J35/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174111
(22)【出願日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2022162241
(32)【優先日】2022-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】393030718
【氏名又は名称】イー・ディー・エル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】久保 博一
(72)【発明者】
【氏名】谷内 利光
【テーマコード(参考)】
4G070
4G169
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB05
4G070BB05
4G070CA25
4G070CB16
4G070CC03
4G070CC06
4G070DA12
4G169AA02
4G169AA15
4G169BA04A
4G169BA48A
4G169CA07
4G169CA10
4G169CA15
4G169CA17
4G169DA06
4G169EA04X
4G169EE03
4G169HA01
4G169HC32
4G169HE01
(57)【要約】
【課題】光触媒粒子の摩耗を防ぎ、メンテナンスの手間を無くす又は削減することができる。
【解決手段】有機物を含む気体である被処理気体を処理する有機物処理装置であって、内部に光触媒粒子が封入された第1ケースを有する有機物処理部と、光触媒粒子を加熱する第1加熱部を有する加熱部と、被処理気体を有機物処理部に供給する供給部と、を備える。光触媒粒子は、第1ケースの上端まで充填されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む気体である被処理気体を処理する有機物処理装置であって、
内部に光触媒粒子が封入された第1ケースを有する有機物処理部と、
前記光触媒粒子を加熱する第1加熱部を有する加熱部と、
前記被処理気体を前記有機物処理部に供給する供給部と、
を備え、
前記光触媒粒子は、前記第1ケースの上端まで充填されている
ことを特徴とする有機物処理装置。
【請求項2】
有機物を含む気体である被処理気体を処理する有機物処理装置であって、
内部に光触媒粒子が封入された第1ケースを有する有機物処理部と、
前記光触媒粒子を加熱する第1加熱部を有する加熱部と、
前記被処理気体を前記有機物処理部に供給する供給部と、
を備え、
前記供給部は、前記第1ケースの内部で前記光触媒粒子を動かさない程度の風速で前記被処理気体を供給する
ことを特徴とする有機物処理装置。
【請求項3】
前記供給部は、毎秒0.13m以下の風速で前記被処理気体を供給する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機物処理装置。
【請求項4】
前記有機物処理部は、前記被処理気体を流入させる流入部と、前記流入部と前記第1ケースとの間に設けられた第2ケースと、を有し、
前記第2ケースの内部は、前記光触媒粒子が設けられておらず、
前記加熱部は、前記第2ケースの内部を加熱する第2加熱部を有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の有機物処理装置。
【請求項5】
前記第1加熱部は、前記第1ケースの中央部における前記光触媒粒子が略300℃±30℃となるように前記光触媒粒子を加熱する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の有機物処理装置。
【請求項6】
前記第1加熱部は、前記第1ケースの中央部における前記第1ケースの中央部における前記光触媒粒子が略450℃以上かつ略550℃以下となるように前記光触媒粒子を加熱し、
前記第2加熱部は、前記第2ケースの中央部の温度が略500℃以上かつ略520℃以下となるように前記第2ケースの内部を加熱する
ことを特徴とする請求項4に記載の有機物処理装置。
【請求項7】
有機物を含む気体である被処理気体を、内部に加熱された光触媒粒子が封入された第1ケースを有する有機物処理部に供給して前記被処理気体を処理する有機物処理方法であって、
前記光触媒粒子は、前記第1ケースの上端まで充填されていることを特徴とする有機物処理方法。
【請求項8】
有機物を含む気体である被処理気体を、内部に加熱された光触媒粒子が封入された第1ケースを有する有機物処理部に供給して前記被処理気体を処理する有機物処理方法であって、
前記第1ケースの内部で前記光触媒粒子を動かさない程度の風速で前記被処理気体を前記第1ケースに供給する
ことを特徴とする有機物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物処理装置及び有機物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、有機物を光触媒粒子に接触させ、加熱によって活性化された光触媒と酸素によって目的物質を酸化又は分解する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引用文献1に記載の発明では、処理を促進させるために光触媒粒子を浮遊させているが、光触媒粒子を浮遊させることで光触媒粒子を摩耗させてしまう。その結果、摩耗して減った光触媒粒子を定期的に補充する必要があり、メンテナンスに手間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、光触媒粒子の摩耗を防ぎ、メンテナンスの手間を省くことができる有機物処理装置及び有機物処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る有機物処理装置は、例えば、有機物を含む気体である被処理気体を処理する有機物処理装置であって、内部に光触媒粒子が封入された第1ケースを有する有機物処理部と、前記光触媒粒子を加熱する第1加熱部を有する加熱部と、前記被処理気体を前記有機物処理部に供給する供給部と、を備え、前記光触媒粒子は、前記第1ケースの上端まで充填されていることを特徴とする。また、本発明に係る有機物処理装置は、例えば、有機物を含む気体である被処理気体を処理する有機物処理装置であって、内部に光触媒粒子が封入された第1ケースを有する有機物処理部と、前記光触媒粒子を加熱する第1加熱部を有する加熱部と、前記被処理気体を前記有機物処理部に供給する供給部と、を備え、前記供給部は、前記第1ケースの内部で前記光触媒粒子を動かさない程度の風速で前記被処理気体を供給することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の別の態様に係る有機物処理方法は、例えば、有機物を含む気体である被処理気体を、内部に加熱された光触媒粒子が封入された第1ケースを有する有機物処理部に供給して前記被処理気体を処理する有機物処理方法であって、前記光触媒粒子は、前記第1ケースの上端まで充填されていることを特徴とする。また、本発明の別の態様に係る有機物処理方法は、例えば、有機物を含む気体である被処理気体を、内部に加熱された光触媒粒子が封入された第1ケースを有する有機物処理部に供給して前記被処理気体を処理する有機物処理方法であって、前記第1ケースの内部で前記光触媒粒子を動かさない程度の風速で前記被処理気体を前記第1ケースに供給することを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる有機物処理装置によれば、光触媒粒子が第1ケースの上端まで充填されている、または、第1ケースの内部で光触媒粒子を動かさない程度の風速で被処理気体を供給するため、第1ケースの内部で光触媒粒子を動かさない状態で被処理気体が有機物処理部で処理される。これにより、光触媒粒子の摩耗を防ぎ、メンテナンスの手間を省くことができる。
【0009】
前記供給部は、毎秒0.13m以下の風速で前記被処理気体を供給してもよい。これにより、効率よく有機物を処理することができる。
【0010】
前記有機物処理部は、前記被処理気体を流入させる流入部と、前記流入部と前記第1ケースとの間に設けられた第2ケースと、を有し、前記第2ケースの内部は、前記光触媒粒子が設けられておらず、前記加熱部は、前記第2ケースの内部を加熱する第2加熱部を有してもよい。これにより、光触媒粒子の温度低下を防ぎ、効率よく有機物を処理することができる。
【0011】
前記第1加熱部は、前記第1ケースの中央部における前記光触媒粒子が略300℃±30℃となるように前記光触媒粒子を加熱してもよい。また、前記第2加熱部は、前記第1加熱部は、前記第1ケースの中央部における前記第1ケースの中央部における前記光触媒粒子が略450℃以上かつ略550℃以下となるように前記光触媒粒子を加熱し、前記第2加熱部は、前記第2ケースの中央部の温度が略500℃以上かつ略520℃以下となるように前記第2ケースの内部を加熱してもよい。これにより、効率よく有機物を処理することができる。
【発明の効果】
【0012】
光触媒粒子の摩耗を防ぎ、メンテナンスの手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】ケース11の概略を示す図であり、(A)は光触媒粒子12がケース11に略全量封入されている様子を示し、(B)は光触媒粒子12がケース11に略半量封入されている様子を示す。
【
図3】入口と出口におけるガスの残存率を示すグラフである。
【
図4】試験時の温度変化を示すグラフであり、(A)は光触媒粒子がケースに略全量封入されている場合であり、(B)は光触媒粒子がケースに略半量封入されている場合であり、(C)はケースにガラスビーズのみが封入されている場合である。
【
図7】試験を行うときのケース11の内部の状態を模式的に示す図であり、(A)は光触媒粒子12及びガラスビーズ51を充填した場合であり、(B)はガラスビーズ51のみ充填した場合である。
【
図8】ガスの残存率を示すグラフであり、(A)はトルエンガスの場合であり、(B)はエタノールガスの場合であり、(C)はメチルメルカプタンガスの場合である。
【
図9】試験時の温度変化を示すグラフであり、(A)は光触媒粒子がケースに封入されており、かつ、通気量が10mL/分の場合であり、(B)は光触媒粒子がケースに封入されており、かつ、通気量が20mL/分の場合であり、(C)は光触媒粒子がケースに封入されておらず(ガラスビーズのみ)、かつ、通気量が10mL/分の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の有機物処理装置は、有機物を含む気体である被処理気体を処理する装置である。また、以下の実施の形態では、有機物としてトルエン、エタノール、メチルメルカプタン、被処理気体としてトルエン、エタノール、メチルメルカプタンを希釈してガス化したトルエンガス、エタノールガス、メチルメルカプタンガスを用いたが、本発明の有機物及び被処理気体はこれらに限られない。有機物は、例えば、アセトン、酢酸エチル等でもよい。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、有機物処理装置1の概略を示す図である。有機物処理装置1は、主として、有機物処理部10と、加熱部20と、供給部30と、冷却部35と備える。有機物処理部10と供給部30及び有機物処理部10と冷却部35とは、配管40(41、42)により接続されている。
【0016】
有機物処理部10は、主として、ケース11(本発明の第1ケースに相当)と、保温ケース13とを有する。保温ケース13は、ケース11を覆うように設けられている。ただし、保温ケース13は必須ではない。
【0017】
図2は、ケース11の概略を示す図である。ケース11の内部には、複数の光触媒粒子12が封入されている。
【0018】
ケース11は、例えば、両端が覆われた略円筒形状である。ただし、ケース11の形状はこれに限られず、両端が覆われた筒状であればよい。
図2では、説明のため、内部が視認できるように透明な樹脂を用いてケース11を製作したが、ケース11の材質はこれに限られない。例えば、ケース11は石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等の耐熱ガラスを用いて製作されていてもよいし、金属を用いて製作されていてもよい。
【0019】
ケース11の上端には、配管41が設けられており、ケース11の下端には、配管42が設けられている。配管41を介してケース11の内部に被処理気体が流入し、配管42を介してケース11から被処理気体が流出する。
【0020】
光触媒粒子12は、光により活性化する触媒の粒子である。光触媒としては、例えば、二酸化チタン(以下、酸化チタンという)、酸化亜鉛等を採用することができる。本実施の形態では、光触媒粒子12に酸化チタンの粒子を用いる。本実施の形態では、光触媒粒子12の粒子径は直径1~2mm程度であるが、粒子径はこれに限られない。また、本実施の形態では、光触媒粒子12は球状であるが、粒子の形状も球状に限られない。
【0021】
図2(A)は、光触媒粒子12がケース11に略全量(光触媒粒子12の体積がケース11の容積と略同量)封入されている様子を示す。つまり、
図2(A)では、光触媒粒子12がケース11の上端まで充填されている。
【0022】
なお、直径40mmの円筒形状を有するケース11を用いる場合には、光触媒粒子12を略100mL用いることで、光触媒粒子12がケース11の上端まで充填される。この状態では、ケース11の内部に光触媒粒子12が隙間なく(すなわち、隣接する光触媒粒子12どうしが当接するように)充填されており、例えば光触媒粒子12に直径1~2mmの球形の酸化チタン(堺化学工業(株) CS-300S-12)を用いた場合の充填密度は1.1kg/Lである。
【0023】
図2(B)は、光触媒粒子12がケース11に略半量(光触媒粒子12の体積がケース11の容積の略半分)封入されている様子を示す。直径40mmの円筒形状を有するケース11を用いる場合には、光触媒粒子12を50mL用いることで、光触媒粒子12がケース11に半量封入される。
【0024】
図1の説明に戻る。加熱部20は、光触媒粒子12を加熱するものであり、主として、ヒータ21と、温度コントローラ22と、を有する。ヒータ21は、電熱線を用いたヒータであり、例えば、シーズヒータ、ニクロム線ヒータである。ヒータ21は、ケース11の側面に巻回されている。ケース11は金属製であるため、ヒータ21の熱がケース11を介して光触媒粒子12に伝わることで、光触媒粒子12が加熱される。なお、
図1では、ヒータ21がケース11の外周面に沿って巻回されているが、ヒータ21がケース11の内周面に沿って巻回されていてもよい。
【0025】
温度コントローラ22は、ヒータ21に接続されている。ケース11の内部又は側面には温度センサ(図示省略)が設けられており、温度センサで測定された温度に基づいて温度コントローラ22がヒータ21の温度を調整する。本実施の形態では、温度センサは、ケース11の内部であって、光触媒粒子12がケース11に略半量封入されている(
図2(B)参照)ときに光触媒粒子12が封入される部分に設けられている。これにより、温度センサが光触媒粒子12に当接して、光触媒粒子12の温度を直接測定することで、光触媒粒子12の温度が一定になるように温度コントローラ22がヒータ21の温度を制御することができる。
【0026】
有機物処理部10の上流側には、供給部30が設けられている。供給部30は、例えばブロアを有し、被処理気体を有機物処理部10に供給する。被処理気体は、配管41を介して供給部30から有機物処理部10に供給される。
【0027】
有機物処理部10の下流側には、有機物処理部10を通過した被処理気体を冷却する冷却部35が設けられている。なお、冷却部35は必須ではない。
【0028】
次に、有機物処理装置1を用いて被処理気体を処理する方法について説明する。供給部30は、有機物処理部10、ここでは内部に加熱された光触媒粒子12が封入されたケース11に被処理気体を供給する。これにより、被処理気体が光触媒粒子12に当たり、光触媒粒子12により被処理気体に含まれる有機物が分解される。このとき、ケース11の内部で光触媒粒子12を動かさない状態で被処理気体を処理する。
【0029】
ケース11の内部で光触媒粒子12を動かさない状態にするために、具体的には、光触媒粒子12をケース11の上端まで充填する。または、ケース11の内部で光触媒粒子12を動かさない状態にするために、具体的には、ケース11の内部で光触媒粒子12を動かさない程度の風速で被処理気体をケース11に供給する。
【0030】
表1及び
図3は、有機物処理装置1で被処理気体を処理した結果を示す。表1の試験条件1は、略100mLの光触媒粒子12を用い、光触媒粒子12をケース11の上端まで充填した場合である。また、本試験では、被処理気体としてトルエンガスを用いた。表1の試験条件2は、略50mL(ケース11半量分)の光触媒粒子12を用い、光触媒粒子12と同体積のガラスビーズ及び光触媒粒子12をケース11の上端まで充填した場合である。試験条件2において、光触媒粒子12がケース11の中央に位置するように、ケース11の下部及び上部にガラスビーズを封入した。表1の試験条件3は、ガラスビーズをケース11の上端まで充填した場合である。試験条件1~3においては、光触媒粒子12及びガラスビーズの少なくとも一方がケース11の上端まで充填されているため、ケース11の内部で光触媒粒子12が動かない。なお、ガラスビーズは粒径が1.5mm~2.5mmの球形状のものを用いたが、ガラスビーズの形状及び粒径はこれに限られない。
【0031】
また、この実験は、被処理気体のガス濃度が660ppm程度、光触媒粒子12の温度が300℃±30℃という条件下で行った。また、この実験において、被処理気体の供給量は毎分10Lとした。実験に用いたケース11は直径40mmの円筒形状を有するため、流量は毎秒0.13m(0.13m/sec)である。
【表1】
【0032】
表1における入口濃度、出口濃度は、それぞれ、ケース11と配管41、42との境界部近傍において被処理気体をバックに採取して、バック内の被処理気体におけるトルエンの濃度を測定した。濃度の測定は、ガスクロマトグラフ-水素炎イオン化検出器(GC-FID法)を用いた。また、表1における減衰率は、以下の数式(1)により算出した。
減縮率(%)=(入口濃度-出口濃度)/入口濃度×100・・・(1)
【0033】
図3では、入口と出口におけるガスの残存率を示している。出口における残存率は入口濃度に対する出口濃度の割合であり、出口濃度/入口濃度×100で算出した。また、入口ではまだ処理が行われていないため、入口における残存率は100%である。
【0034】
表1及び
図3より、光触媒粒子12をケース11に半量、全量入れたときのいずれの場合(試験条件1、2)においても、90%以上の減衰率が得られた。すなわち、光触媒粒子12をケース11に半量、全量入れた場合には、90%以上のトルエンが分解されたことが分かった。そして、光触媒粒子12をケース11に入れなかった場合の減衰率に比べて、光触媒粒子12をケース11に半量、全量入れた場合の減衰率の方が優位に高かった。また、光触媒粒子12をケース11に半量又は全量入れた場合には、光触媒粒子12をケース11に入れなかった場合に比べて残存率が優位に低かった。これにより、ケース11内の光触媒粒子12によりトルエンが効率的に処理されていることが分かる。
【0035】
また、光触媒粒子12をケース11に全量入れた場合(試験条件1)には、光触媒粒子12をケース11に半量入れた場合(試験条件2)に比べて減衰率が高かった。また、光触媒粒子12をケース11に全量入れた場合には、光触媒粒子12をケース11に半量入れた場合に比べて残存率が優位に低かった。これにより、光触媒粒子12の量が多い方がより多くのトルエンが処理されていることが分かる。
【0036】
図4は、試験時の温度変化を示すグラフである。ケース11の中央部の温度が300℃となるように、温度コントローラ22でヒータ24を制御した。温度測定は、ガス流路(配管41)入口(
図1のa参照)、ケース11入口(
図1のb参照)、ケース11中央部(
図1のc参照)、ケース11出口(
図1のd参照)、ガス流路(配管42)出口(
図1のe参照)で行った。
図4より、いずれの場合においても、ケース11の中央部における光触媒粒子12又はガラスビーズが略300±30℃となるように加熱されていた。
【0037】
次に、光触媒粒子12の動きについて説明する。本発明では、光触媒粒子の摩耗を防ぐため、供給部30が光触媒粒子12を動かさない(浮遊、拡散等させない)ようにする。そのため、被処理気体の供給量を変えて光触媒粒子12の動きを観察した。
【0038】
表2は、被処理気体の供給量を変えたときの光触媒粒子12の動きを観察した結果を示す。この実験では、ケース11を透明な材料で製作し、ケース11の内部の様子を観察した。実験に用いたケース11は直径40mmの円筒形状を有する。表2における「容器全量」は、略100mLの光触媒粒子12をケース11に充填した場合(
図2(A)参照)を表し、表2における「容器半量」は、略50mLの光触媒粒子12をケース11の半量だけ入れた場合(
図2(B)参照)を表している。
【表2】
【0039】
表2より、光触媒粒子12をケース11に半量、全量入れたときのいずれの場合においても、被処理気体の供給量が毎分40L(風速0.52m/sec)以下であれば、光触媒粒子12が動かないことが分かった。したがって、光触媒粒子12の量にかかわらず、供給部30が0.52m/sec以下の風速で有機物処理部10に被処理気体を供給すれば、ケース11の内部で光触媒粒子12を動かさずに有機物処理装置1が被処理気体を処理することができる。
【0040】
本実施の形態によれば、光触媒粒子12を用いて被処理気体に含まれる有機物を分解処理することができる。また、ケース11の内部で光触媒粒子12を動かさないように供給部30が被処理気体を供給することで、光触媒粒子の摩耗を防ぎ、メンテナンスの手間を省くことができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、被処理気体の供給量を減らし、流量を毎秒0.13m(0.13m/sec)以下とすることで、効率よく有機物を処理することができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、ヒータ21をケース11の側面に巻回して光触媒粒子12を加熱したが、光触媒粒子12を加熱する方法はこれに限られない。
図5は、変形例にかかる有機物処理装置1Aの概略を示す図である。有機物処理装置1Aは、主として、有機物処理部10と、加熱部20Aと、供給部30と、冷却部35とを備える。
【0043】
加熱部20Aは、光触媒粒子12を加熱するものであり、主として、ヒータ23と、温度コントローラ22と、を有する。ヒータ23は、ヒータ21と同様に、電熱線を用いたヒータである。ヒータ23は、ケース11の内部に設けられており、ケース11内部の光触媒粒子12に接触する。これにより、ヒータ23の熱を直接光触媒粒子12に伝えることができる。
【0044】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施の形態に係る有機物処理装置2について説明する。なお、有機物処理装置1と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0045】
図6は、有機物処理装置2の概略を示す図である。有機物処理装置2は、主として、有機物処理部10Aと、加熱部20Bと、供給部30と、冷却部35と備える。有機物処理部10A及び供給部30は、配管40により接続されている。
【0046】
有機物処理部10Aは、主として、ケース11と、保温ケース13A、ケース14(本発明の第2ケースに相当)とを有する。保温ケース13Aは、保温ケース13と大きさが異なり、ケース11、14を覆うように設けられている。ただし、保温ケース13Aは必須ではない。
【0047】
ケース14は、ケース11の上流側に設けられている。供給部30から供給された被処理気体は、まずケース14に流入する。ケース14は、内部が空洞である。また、ケース14の内部には、光触媒粒子12が設けられていない。
【0048】
加熱部20Bは、主として、光触媒粒子12を加熱するヒータ25と、ケース14の内部を加熱するヒータ24と、温度コントローラ22、26とを有する。
【0049】
ヒータ24は、電熱線を用いたヒータであり、ケース14の内部に設けられている。なお、ヒータ24は、ケース14の中央部近傍に配置されていることが望ましい。ヒータ24はケース14の内部で被処理気体を熱し、熱せられた被処理気体はケース11に供給される。ヒータ25は、ヒータ21と同様に電熱線を用いたヒータであり、ケース11の側面に巻回されている。ヒータ25は、ケース11の内周面に沿って巻回されており、ケース11の内部に設けられた光触媒粒子12の一部に当接する。
【0050】
温度コントローラ22は、ヒータ25に接続されている。また、温度コントローラ26は、ヒータ24に接続されている。ケース11、14等には温度センサ(図示省略)が設けられている。温度センサで測定された温度に基づいて、温度コントローラ22がヒータ25の温度を調整し、かつ、温度コントローラ26がヒータ24の温度を調整する。
【0051】
次に、有機物処理装置2を用いて被処理気体を処理する方法について説明する。供給部30は被処理気体を、有機物処理部10、ここでは、先ずケース14に、次にケース11に供給する。つまり、供給部30から供給された被処理気体は、初めにケース14に流入する。ケース14の内部にヒータ24が設けられているため、供給部30から供給された被処理気体がケース14内部を通過するときにヒータ24に触れることで温められて、温められた被処理気体がケース11に導かれる。ケース11では、光触媒粒子12を動かさない状態で被処理気体を処理する。
【0052】
次に、有機物処理装置2で被処理気体を処理した試験結果について説明する。表3~5に試験結果を示す。この試験は、被処理気体としてトルエンガス、エタノールガス、メチルメルカプタンガスの3種類を用い、各ガスの濃度は約200ppmとした。また、被処理気体の供給量は、毎分10L(ケース11の流速が毎秒0.13m)又は毎分20L(ケース11の流速が毎秒0.26m)とした。また、容量100mLのケース11を用い、ケース11の内部に光触媒粒子12を50mL及びガラスビーズ51を50mLを封入した場合と、ケース11の内部にガラスビーズ51を100mLを封入した場合との比較を行った。
【0053】
図7は、試験におけるケース11の内部の状態を模式的に示す図であり、(A)は光触媒粒子12及びガラスビーズ51を半分ずつ充填した場合であり、(B)はガラスビーズ51のみを充填した場合である。
図8(A)では、ケース11の下部からガラスビーズ51を35ml、光触媒粒子12を50ml(ケース11半量分)、ガラスビーズ51を15mlの順に積層した。ケース11の容量は100mlであるため、光触媒粒子12及びガラスビーズ51がケース11の上端まで充填されている。
図8(B)では、ガラスビーズがケース11の上端まで充填されている。光触媒粒子12及びガラスビーズ51は、表1に示す試験で用いたものと同様である。いずれの場合でも、ケース11の内部で光触媒粒子12及びガラスビーズ51が動かない状態で被処理気体が処理された。
【0054】
試験は、以下の順で行った。まず、有機物処理装置2の温度が安定したら(
図9参照、後に詳述)、トルエンガスを通気して、ガス流路(配管41)の入口(
図6のa参照)及びガス流路(配管42)の出口のガス(
図6のf参照)をサンプル数n=3で採取した。次に、トルエンガス通気によるサンプルの採取後5分程度経過して有機物処理装置2の温度が安定したら(
図9参照、後に詳述)、エタノールガスを通気して、ガス流路入口及びガス流路出口のガスをサンプル数n=3で採取した。エタノールガス通気によるサンプルの採取後5分程度経過して有機物処理装置2の温度が安定したら(
図9参照、後に詳述)、メチルメルカプタンガスを通気して、ガス流路入口及びガス流路出口のガスをサンプル数n=3で採取した。入口濃度、出口濃度は、それぞれ、ガス流路入口、ガス流路出口において被処理気体をバックに採取して、バック内の被処理気体におけるトルエンガス、エタノールガス、メチルメルカプタンガスの濃度をそれぞれ測定した。
【0055】
表3はトルエンガスを用いた試験結果であり、表4はエタノールガスを用いた試験結果であり、表5はメチルメルカプタンガスを用いた試験結果である。また、
図8は、ガス流路入口とガス流路出口におけるガスの残存率を示すグラフであり、(A)はトルエンガスの場合、(B)はエタノールガスの場合、(C)はメチルメルカプタンガスの場合である。濃度の測定は、ガスクロマトグラフ-水素炎イオン化検出器(GC-FID法)を用いた。また、減衰率は、数式(1)(上述)により算出した。残存率の算出方法は
図3の場合と同様である。
【表3】
【表4】
【表5】
【0056】
表1より、光触媒粒子12をケース11に半量入れたときには、ガラスビーズ51のみに比べて減衰率が高く、また残存率も低かった。したがって、トルエンガス、エタノールガス、メチルメルカプタンガスの全ての有機物について、光触媒粒子12により有機物が処理されたことが分かった。また、3種類の有機物のうち、トルエンガス及びエタノールガスのときには、光触媒粒子12により効率的に有機物が処理された。特に、脱臭装置の評価の指標として用いられるトルエンガスの場合には、ガラスビーズ51のみではトルエンガスがほとんど処理されておらず減衰率が9.1%であったのに対し、光触媒粒子12を用いたときの減衰率が優位に高く、光触媒粒子12により効率的にトルエンガスが処理されることが分かった。
【0057】
なお、表3~5に示す実験は光触媒粒子12をケース11に半量入れて行っており、光触媒粒子12をケース11に全量入れた場合には光触媒粒子12をケース11に半量入れた場合に比べて減衰率が高い(表1参照)ため、光触媒粒子12をケース11に全量入れた(光触媒粒子12がケース11の上端まで充填された)ときには表3~5及び
図8に示す結果と同等以上の良好な結果となり得る。
【0058】
図9は、試験時の温度変化を示すグラフである。ケース11、14の中央部における温度センサの測定結果が略500℃程度となるように、温度コントローラ22、26でヒータ24、25を制御した。温度測定は、ガス流路入口(
図5のa参照)、ケース14入口(
図5のb参照)、ケース14中央部(
図5のc参照)、ケース11中央部(
図5のd参照)、ケース11出口(
図5のe参照)、ガス流路出口(
図5のf参照)で行った。その結果、ケース14の中央部の温度は略500℃以上かつ略520℃以下であり、ケース11の中央部における光触媒粒子12又はガラスビーズ51の温度は略500℃±50℃(略450℃以上かつ略550℃以下)であった。また、ガスを採取したとき(
図9の網掛け部参照)には、いずれも、ケース11、14の中央部における温度センサの測定結果が略500℃程度で安定していた。
【0059】
なお、光触媒粒子12がケース11に封入されている場合において、ケース11出口(
図5のe参照)、ガス流路出口(
図5のf参照)の温度は、通気量が10mL/分の場合(
図9(A)参照)よりも、通気量が20mL/分の場合(
図9(B)参照)の方が高くなった。通常、通気量が増えるとガスと光触媒粒子12との接触時間が減少することで減衰率が低下すると考えられるが、トルエンガスの場合(表3参照)には、通気量が20mL/分の場合が通気量が10mL/分の場合よりも減衰率が高かった。この理由として、通気量が増えてガスがケース11を早く通過することにより、ケース11出口及びガス流路出口(
図5のe、f参照)の温度が高くなったためと考えられる。
【0060】
本実施の形態によれば、被処理気体がケース14内で温められるため、ケース11内の光触媒粒子12が被処理気体により冷やされにくくなる。このため、光触媒粒子12の温度低下を防ぎ、効率よく有機物を処理することができる。
【0061】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成の追加、削除、置換等をすることが可能である。
【0062】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、「略円筒形状」とは、厳密に円筒形状の場合には限られない。また、例えば、単に略中央等と表現する場合において、厳密に中央等の場合のみでなく、略中央等の場合を含むものとする。また、例えば、「略500℃」とは、厳密に500℃の場合には限られず、±5℃程度の誤差を含むものとする。
【0063】
また、「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、端近傍という場合に、端の近くのある範囲の領域であって、端を含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0064】
1、1A、2:有機物処理装置
10、10A:有機物処理部
11 :ケース
12 :光触媒粒子
13、13A:保温ケース
14 :ケース
20、20A、20B:加熱部
21、23、24、25:ヒータ
22、26:温度コントローラ
30 :供給部
35 :冷却部
40、41、42:配管