(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005585
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】帯電防止剤とその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/16 20060101AFI20240110BHJP
H05F 1/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C09K3/16 102E
H05F1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105827
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】591120240
【氏名又は名称】浜中 博義
(71)【出願人】
【識別番号】516280369
【氏名又は名称】有限会社アップロード
(74)【代理人】
【識別番号】100087550
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 莞爾
(72)【発明者】
【氏名】浜中 博義
【テーマコード(参考)】
5G067
【Fターム(参考)】
5G067AA01
5G067AA05
5G067CA02
(57)【要約】
【課題】絶縁体プラスチック成型物や、シリカガラス等の表面に対して、後処理で十分に有効な静電気対策を行うことが可能な非イオン性表面塗布型帯電防止剤とその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の帯電防止剤は、非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒と、活性化した水とを含む組成物であり、ミセルを形成している。活性化した水は、水分子の運動エネルギーが増している状態の水であり、水に対して、遠赤外線の中で波長が極端に長い極遠赤外線領域のものを一瞬照射することで、再現性良く誘導される。また、極遠赤外線は、水単独ではなく、非イオン界面活性剤や水溶性溶媒を含んだ溶液に対して照射しても良い。
それにより、振動及び回転エネルギーを得た連続相の水分子群が組成物全体を運動機能性ミセル溶液として、対象とする絶縁体表面で首尾よく均質、薄膜吸着していくので、安全で有用な静電気処理を可能にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒と、活性化した水とを含む組成物であり、ミセルを形成していることを特徴とする帯電防止剤。
【請求項2】
前記非イオン界面活性剤は、多価アルコールと、飽和又は不飽和脂肪酸もしくは高級アルコールとで構成された多価アルコール脂肪族炭化水素結合物であることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止剤。
【請求項3】
前記非イオン界面活性剤は、OH基が2~6の多価アルコールと、炭素数が8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸もしくは高級アルコール残基とで構成されたエステルもしくはエーテル化合物であることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止剤。
【請求項4】
前記非イオン界面活性剤は、エチレングリコールモノカプリルエーテル、トリグリセリンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノベヘネート、ソルビタンジラウレート、ソルビントールモノステアレート、ソルビトールジカプリレート、テトラグリセリンモノオレート、ポリオキシエチレンジカプリレート、マン二タンモノカプリレート、グリセリンモノカプリレート、トリグリセリンモノパルミテート、テトラグリセリンモノイソステアレート、トリグリセリンモノカプリレート、ポリオキシエチレンモノカプリート、のうち選択された1種又は2種以上含むことを特徴とする請求項1に記載の帯電防止剤。
【請求項5】
前記活性化した水は、遠赤外線の中で波長が長い極遠赤外線領域の波長を含む赤外線を照射させた水であることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止剤。
【請求項6】
非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒と、水とを含んで構成された、帯電防止剤として用いられるミセル組成物の製造方法であって、
前記水単独に対して、もしくは前記水を含む組成物に対して、遠赤外線の中で波長が長い赤外線領域を含む遠赤外線を作用させる工程を含むことを特徴とする帯電防止剤の製造方法。
【請求項7】
非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒と、水とを含んで構成された、帯電防止剤として用いられるミセル組成物の製造方法であって、
前記水に対して、遠赤外線の中で波長が長い極遠赤外線領域の波長を含む赤外線を放射する工程と、
前記赤外線を放射した前記水と、前記非イオン界面活性剤と、前記水溶性溶媒とを合わせてミセルを形成する工程と、
を含むことを特徴とする帯電防止剤の製造方法。
【請求項8】
非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒と、水とを含んで構成された、帯電防止剤として用いられるミセル組成物の製造方法であって、
前記水溶性溶媒と、前記水とを合わせた組成物に対して、遠赤外線の中で波長が長い極遠赤外線領域の波長を含む赤外線を放射する工程と、
前記赤外線を放射した前記組成物と、前記非イオン界面活性剤とを合わせてミセルを形成する工程と、
を含むことを特徴とする帯電防止剤の製造方法。
【請求項9】
非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒と、水とを含んで構成された、帯電防止剤として用いられるミセル組成物の製造方法であって、
前記非イオン界面活性剤と、前記水とを合わせた組成物に対して、遠赤外線の中で波長が長い極遠赤外線領域の波長を含む赤外線を放射してミセルを形成する工程と、
前記赤外線を放射した前記組成物と、前記水溶性溶媒とを合わせる工程と、
を含むことを特徴とする帯電防止剤の製造方法。
【請求項10】
非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒と、水とを含んで構成された、帯電防止剤として用いられるミセル組成物の製造方法であって、
前記非イオン界面活性剤と、前記水溶性溶媒と、前記水とを合わせた組成物に対して、遠赤外線の中で波長が長い極遠赤外線領域の波長を含む赤外線を放射してミセルを形成する工程、
を含むことを特徴とする帯電防止剤の製造方法。
【請求項11】
前記赤外線の放射は、同じ磁極同士を相対させて配置した磁石の内面にゲルマニウム内在黒雲母を付着させて構築した非磁界空間の内部に、前記水、又は前記水を含む組成物を通過させることにより行うものである、
ことを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項に記載の帯電防止剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体の静電気発生を抑制する帯電防止剤として機能する組成物とその製造方法に係り、詳しくは、絶縁体の表面に対し、塗布や展着といった後処理して静電気対策を行う表面塗布型の帯電防止剤とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業面での製品化工材料や家庭生活用品製造材料等で今や無くてはならない物になっている各種のプラスチックの大半は絶縁体である。この絶縁体プラスチックは、例えば、現代の我々の生活に無くてはならないエネルギーである電気の不意な無差別漏洩を防ぐ性質を有するため、大いに役立っている。
【0003】
ところが、絶縁体プラスチックの中に静電気が滞留して次第に帯電状態が強くなり、それが一気に放電した場合、人間に電撃を与えることがある。また、絶縁体プラスチックの中に静電気が滞留すると、近辺にある電気・電子機器に不規則な作用を起こさせるだけに滞らず、極端な場合、その機器自体を破壊してしまうこともある。ゆえに、それらの弊害を回避させる静電気対策は是非とも必要である。
【0004】
この問題を解決するため、これまでプラスチック製品に対して講じられてきた静電気対策の方法は、大別して二つである。第一の方法は、プラスチック製品を成型する時に、プラスチック原材料に相溶させて適切に分散、固定させる事を目的とする内部練り込み型帯電防止剤の使用である。また、第二の方法は、製造したプラスチック成型物の表面に塗布し、イオン対を有する極性有機物類等を最外層に配することを目的とする表面塗布型帯電防止剤の使用である。
【0005】
この表面塗布型帯電防止剤は、プラスチック原材料の種類にあまり関係なく使用できるので、より汎用性があるが、これまでの表面塗布型帯電防止剤は、その大半がイオン性界面活性剤を利用して性能強化策を講じるものであり、対象となるプラスチック原材料に対する吸着安定性に重点を置いたものであった。
【0006】
しかしながら、プラスチック製品には、例えば、分子量分布や枝分かれ構造が存在し、その上、微視的に見て結晶化度の差異もあるため、プラスチック成型物の表面に展着させたイオン性界面活性剤系帯電防止剤分子群が、理想的に単分子膜吸着をして、再現性ある電荷漏洩性能を発揮し続けることは難しかった。
【0007】
一方、本発明者は、人がより安心して日常生活を送るために、各種プラスチック材料が絶縁体であるという特徴を堅持しつつ、静電気の発生を確実、かつ、安定的になくす方法を検討した結果、新しいメカニズムに基づくより高性能な帯電防止剤を提案し、工業物質として非常に強い解離性のあるイオン伝導性プラスチック用表面処理型帯電防止剤についての性能発現状況を示している(例えば、非特許文献1を参照)。
【0008】
つまり、今や職場や家庭に限らず、各方面での技術革新テーマで静電気の発生を確実に防止することが求められている状態時にあり、一層有効な化学構造物を見出す事だけに目を向けずに検討することが必要になってきている。しかも、人間と共に多くの動植物が存在しているという環境下において、どの部分に対しても弊害をもたらさないということを念頭において慎重に検討することが必要になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献1】プラスチックスエージ、2010年12月号「ドナー・アクセプターハイブリッド系帯電防止剤(1) -ボロンの特異な結合性と固有の性質の両方を利用して、プラスチック等の絶縁体の帯電防止を的確、かつ安定的に行う-」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、周辺の環境への配慮に加えて、その絶縁体類を取り扱う人の安全性をも重視する、新規な作用機構を呈する塗布型の帯電防止剤が求められているが、出願人が知る限り、そのような帯電防止剤は未だ提案されていない。
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、絶縁体プラスチック成型物や、乾燥気流等の繰り返し接触で帯電し易いシリカガラス等の表面に対して、後処理で静電気対策を行うことが可能な表面塗布型の帯電防止剤とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、地球規模での動植物と人間との調和を今後一層念頭に置いて研究を進める中で、これまでの構造探査中心の化学物質による帯電防止性能の比較試験とは別に、静電気発生と蓄積の起点となる表面での帯電を生じさせない状態を電気伝導性の無い非イオン物質だけで安心、安全に構築することを追求した。
【0012】
本発明者は、上述の現状を強く意識した上で、次のような具体的な必要条件を定めて開発に着手した。
(1)絶縁体プラスチックの最表面を起点にし、気流の繰り返し接触によって発生し、蓄積して全体に及ぶ帯電荷を、初めから確実に発生させない状態にするための処理方法と、処理状態が目視できる表面塗布型の帯電防止剤の開発を行う。
(2)帯電防止効果としては、処理した絶縁体材料表面で強制帯電荷を、全く発生しない状態にするか、もしくは5sec以内の短時間で電気的に中性となる状態(OV)まで完全漏洩させる性能を発揮する持続的帯電荷漏洩性を発現させる。
(3)帯電荷漏洩物質として、食品や食品添加物もしくは化粧品原料として以前から広く使われている、安全性の高い非イオン界面活性剤を選定し、絶縁体材料(絶縁体プラスチック成型物)に展着させる。
【0013】
上述の(1)~(3)の指針の元に本発明者は、従来から試されているイオン解離性の強さを重視したカチオン系表面塗布型帯電防止剤のカテゴリーでの構造決定方法とは全く異なる理論により帯電防止剤を開発した。
【0014】
つまり、本発明は、人間だけでなく、環境やその中で育つ動植物における種々の日常生活や使用する生産用具で有害となる静電気の発生と消滅を目的にして、第一に高安全性が広く認められている食品ないしは化粧品原料よりなる非イオン型のミセル群を原料にした。そして、それに対して、例えば、安心な自然エネルギーとして知られる極遠赤外線を常温下で放射(接触)させるという、極めて簡易な物理処理を行ったものである。このように。本発明は、安全かつ安心して簡単に、応用性のある新規運動科学による帯電抑制方法を確立することを志向したものである。
【0015】
具体的に、本発明の帯電防止剤は、非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒と、活性化した水とを含む組成物であり、ミセルを形成していることを特徴とする。
ここで、活性化した水とは、水分子の運動エネルギーが増している状態のことをいい、例えば、遠赤外線の中で波長が長い極遠赤外線領域の波長を含む赤外線を照射(作用)させることで得ることができる。具体的には、例えば、非磁界条件下でゲルマニウム含有黒雲母より放射される、遠赤外線の中で波長が極端に長い極遠赤外線領域のものを一瞬照射することで再現性良く誘導される。また、極遠赤外線は、水単独ではなく、非イオン界面活性剤や水溶性溶媒を含んだ溶液に対して照射しても良い。
【0016】
非イオン界面活性剤は、水に溶けたときにイオン化しない親水基をもっているため、水の硬度や電解質の影響を受けにくく、また、乳化性や分散性等の性能面で優れており使い易く望ましい。このような非イオン界面活性剤としては、エステル型や、エーテル型、エステル・エーテル型、又は疎水器と親水基がアミド結合したタイプの脂肪酸アルカノールアミドル型であっても良い。
【0017】
この非イオン界面活性剤としては、例えば、多価アルコールと、飽和又は不飽和脂肪酸もしくは高級アルコールと、で構成された多価アルコール脂肪族炭化水素結合物を挙げることができる。エステル系の非イオン界面活性剤のうち、グリセリン脂肪酸エステルや、ソルビタン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、等の脂肪酸エステルは、食品添加物として認可されており、食品の乳化剤や化粧品分野で広く使用されているため、安全性に優れているため望ましい。特に、OH基が2〜6の多価アルコールと、炭素数が8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸もしくは高級アルコール残基と、で構成されたエステルもしくはエーテル化合物は、応用範囲が広く安価なため望ましい。
【0018】
このような非イオン界面活性剤としては、例えば、エチレングリコールモノカプリルエーテル、トリグリセリンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノベヘネート、ソルビタンジラウレート、ソルビントールモノステアレート、ソルビトールジカプリレート、テトラグリセリンモノオレート、ポリオキシエチレンジカプリレート、マン二タンモノカプリレート、グリセリンモノカプリレート、トリグリセリンモノパルミテート、テトラグリセリンモノイソステアレート、トリグリセリンモノカプリレート、ポリオキシエチレンモノカプリート、のうち選択された1種又は2種以上含むものであるが、それ以外の非イオン界面活性剤では、例えば、テトラグリセリンモノラウリルエーテルや、ドデシレンジメトキシエーテル等のエーテル型構造の物でも良い。
【0019】
また、本発明の帯電防止剤においては、組成物中に水溶性溶媒を含むものとすることが望ましい。水溶性溶媒は、非イオン界面活性剤のミセルをより小さく保ち、透明性を維持するものとして機能する。つまり、水溶性溶媒が含まれていないと、組成物は処理液として大きなミセルを形成して透明性を害する方向になり、不透明もしくは半透明に分散溶解させる部分が多くなってしまうおそれがある。ゆえに、例えば、エタノールのような一価アルコールが水溶性溶媒として組成物中に含まれていることが望ましい。また、水溶性溶媒は、プラスチック等の絶縁体に馴染み易いため、この点でも望ましい。
このような水溶性溶媒としては、上述した一価アルコールに限らず、水に溶け易い、例えば、親水性の高い低級アルコール、もしくは親水基であるヒドロキシ基の数が多い多価アルコールとしても良い。
【0020】
また、本発明の帯電防止剤の製造方法は、非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒と、水とを含んで構成された、帯電防止剤として用いられるミセル組成物の製造方法であって、前記水単独、もしくは前記水を含む組成物に対して、遠赤外線の中で波長が長い極遠赤外線領域を含む遠赤外線を作用させる工程を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の帯電防止剤の製造方法は、具体的には、非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒と、水とを含んで構成された、帯電防止剤として用いられるミセル組成物の製造方法であって、前記水に対して、遠赤外線の中で波長が長い極遠赤外線領域の波長を含む赤外線を放射する工程と、前記赤外線を放射吸収した前記水と、前記非イオン界面活性剤と、前記水溶性溶媒とを合わせてミセルを形成する工程を含むことを特徴とする。
すなわち、帯電防止剤の製造過程において、水単独に対して、遠赤外線の中で波長が長い赤外線領域を含む遠赤外線を作用させる工程を含むものである。
【0022】
また、本発明の帯電防止剤の製造方法は、非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒と、水とを含んで構成された、帯電防止剤として用いられるミセル組成物の製造方法であって、前記水溶性溶媒と、前記水とを合わせた組成物に対して、遠赤外線の中で波長が長い極遠赤外線領域の波長を含む赤外線を放射する工程と、前記赤外線を放射した前記組成物と、前記非イオン界面活性剤とを合わせてミセルを形成する工程を含むものすることもできる。
すなわち、帯電防止剤の製造過程において、水溶性溶媒を含む水に対して、遠赤外線の中で波長が長い赤外線領域を含む遠赤外線を作用させる工程を含むものである。
【0023】
また、本発明の帯電防止剤の製造方法は、非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒と、水とを含んで構成された、帯電防止剤として用いられる運動機能性ミセル組成物の製造方法であって、前記非イオン界面活性剤と、前記水とを合わせた組成物に対して、遠赤外線の中で波長が長い極遠赤外線領域の波長を含む赤外線を放射してミセルを形成する工程と、前記赤外線を放射した前記組成物と、前記水溶性溶媒とを合わせる工程を含むものすることもできる。
すなわち、帯電防止剤の製造過程において、非イオン界面活性剤を含む水に対して、遠赤外線の中で波長が長い極遠赤外線領域を含む遠赤外線を作用させる工程を含むものである。
【0024】
さらに、本発明の帯電防止剤の製造方法は、非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒と、水とを含んで構成された、帯電防止剤として用いられるミセル組成物の製造方法であって、前記非イオン界面活性剤と、前記水溶性溶媒と、前記水とを合わせた組成物に対して、遠赤外線の中で波長が長い極遠赤外線領域の波長を含む赤外線を放射してミセルを形成する工程を含むものすることもできる。
すなわち、帯電防止剤の製造過程において、非イオン界面活性剤と水溶性溶媒とを含む水に対して、遠赤外線の中で波長が長い赤外線領域を含む遠赤外線を作用させる工程を含むものである。
【0025】
このように本発明の帯電防止剤は、製造過程の何れかにおいて、水単独に対して、もしくは水を含む組成物に対して、遠赤外線の中で波長が長い極遠赤外線領域を含む遠赤外線を作用させる工程を含むことで水分子の運動エネルギーを高める。そして、この活性化した水によって組成物の成分が効率良く混ざり合い、ミセルが形成されることになるものである。
【0026】
そして、本発明の帯電防止剤の製造方法において、赤外線の放射は、同じ磁極同士を相対させて配置した磁石の内面にゲルマニウム内在黒雲母を付着させて構築した非磁界空間の内部に、水、又は水を含む組成物を通過させることにより行うものである。つまり、極遠赤外線領域の波長は長く、地球磁場(地磁気)といった外部からのエネルギーの影響を受け易い。ゆえに、極遠赤外線領域を含む遠赤外線が邪魔されずに、水単独もしくは非イオン界面活性剤や水溶性溶媒を含んだ溶液に対して照射されるように、地磁気等の影響を避けるため非磁界空間を形成し、当該空間内部において極遠赤外線領域を含む遠赤外線を照射することが望ましい。
【0027】
このように本発明は、イオン伝導性に依存せずに、人間生活の中で普段から食したり、肌に付けたりして、食品や食品添加物、あるいは基礎化粧品原料として用いられている温和な非イオン物質でミセルを作成するものである。このような非イオン物質は、人間だけでなく、共存している動植物並びに空気を含めた自然環境を害さないので望ましい。また、非イオン物質類を、水や、水-アルコール混合系に均一溶解させる際、非磁界空間で最長波長の極遠赤外線を放射して、水分子に効率良く共鳴吸収させることで、個々の水分子を振動、回転させた状態にした自己振動するミセル溶液とするものである。
【0028】
そして、このミセル溶液を対象物となる絶縁体の表面に効率良く自動拡張させる。すなわち、絶縁体の表面に塗布(展着)して均質な超薄膜を形成させ続けるように仕向けて、水分子の運動性を持続させる。これにより、対象物の表面に帯びていた帯電荷の消滅を行うと共に、それ以降の帯電現象を制御するようにしたものである。
【0029】
上述したように本発明では、表面塗布型の帯電防止剤としての性能を強め、持続させるための方策として、前以って分散相の水分子に波動エネルギーを付与させておく。本発明者は、人間生活の中で、飲用も含めて日常的に普通に使用されている水分子に、長波長の遠赤外線を効率よく作用させることで、運動性が向上することを、例えば、『プラスチックエージ 2021年3月号、私的プラスチック工業史-人と技術とプラスチックと-<XVIII> (3)研究者として生き続けることを決意し、独立する」』(以下、「非特許文献2」という。)において示している。
【0030】
具体的には、本発明者は、非特許文献2において、磁気引力を利用せず、磁力を発信させる永久磁石のN極同士(もしくはS極同士)を相対させ、この両方の永久磁石内側の最表面にゲルマニウム内在黒雲母を付着させることで非磁界空間を構築させ、この非磁界空間の内部に水を通過させることで、個々の水分子が振動や回転のエネルギーを有して活性化することを示している。この際、遠赤外線放射物質を正しく作用させることが重要であり、その点でゲルマニウム含有黒雲母は非常に勝れた永久協力材料になる。これは、連続相の水分子群に最長波長の極遠赤外線を素早く瞬間的かつ正確に作用させる技術である。
【0031】
このように本発明では、今日まで延々と人間や他の動植物の生活、成長に貢献してきた、ごく身近な食糧源や水、及び周辺にある自然界の光線波長等を合理的に組みわせて、系全体の水分子1個1個の振動及び回転を助長させ続ける温和な遠赤外線を効率よく利用したものである。
【0032】
本発明では、水もしくは水と水溶性溶媒との混合溶媒に、食品及び/又は化粧品原料として用いられている非イオン界面活性剤を溶解させたミセル溶液が、自己振動活性液となり、これまでの表面塗布型の帯電防止剤とは異なる機構によって、静電気を発生させないことを確認した。
【0033】
これにより、帯電防止処理を行う対象が増えて、水単独または水とアルコールとの混合溶液中で非イオン界面活性剤をミセル溶液にした本発明の帯電防止剤は、絶縁体プラスチック成型物や無機物のガラス面に容易に展着させることができ、自然に均質拡散するという利点が見出された。
【0034】
また、多量の水の接近で機能性ミセルが取り除かれたり、またその部分への不水溶性有機物質の付着で、本機能性整合膜が乱されたりして一時機能が思い通りに見られなくなる場合であっても、運動活性を持続している本発明の表面塗布型帯電防止剤を、少量使用して一拭きするだけで、自動的に均質整合膜ができ、清浄な無帯電荷表面が復活するものとなる。しかも。一方で別途再吸着力性の強い無機ガラス面の完全復活が同様組成物の分子振動作用よって首尾よくなされているので応用性がさらに広がることも判明した。
【発明の効果】
【0035】
本発明の塗布型帯電防止剤によれば、水溶液中でイオン解離しない非イオン物質だけの構造であっても、連続相の水分子群の相互運動性が全体的に働いているので、樹脂成形体の表面に塗布することにより通常の状況では静電気を発生させない、優れた帯電防止性を示すことができる。また、本発明の塗布型帯電防止剤は、種々の絶縁体材料から無機物系のガラス製品類等の表面まで区別なく、振動エネルギーの作用により円滑に拡張し続ける事で、帯電しない状態を再現性良く、長時間構築させる事が可能になる。
ゆえに、本発明を実施することにより、近年の著しい電子産業の発展と共に重要な問題となってきた静電気対策を期待通り、適宜、安心、安全、単純に行うことができるので、各方面で大いに役立つものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に係る帯電防止剤を製造するための処理で用いる極遠赤外線の領域を説明する図である。
【
図2】本発明に係る帯電防止剤に含まれる水分子を活性化させる状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る帯電防止剤の実施の形態の一例について、図面に基づき説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるため技術的に種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0038】
本実施の形態における帯電防止剤は、非イオン界面活性剤と、水溶性溶媒と、活性化した水とを含む組成物であり、ミセルを形成しているものであって、例えば、以下の事項(A)及び(B)により特定することができ、対象とするプラスチック全体を効率よく処理することができる
【0039】
(A)OH基が2〜6個からなる多価アルコールと、炭素数が8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸及び/又はアルコールとの間のエステル系もしくはエーテル系非イオン界面活性剤の1種もしくは2種以上を、極遠赤外線の波長を利用して活性化させた水-アルコール混合液中に共鳴分散させ、自己振動拡散型のミセル状態にする。
(B)薄膜、均質で高品質、かつ再現性良く表面改質させる物理的手段として、イオン解離性の無い非イオン界面活性剤系表面塗布型の帯電防止剤組成物質中の水成分に対して、非磁界条件下で長波長の極遠赤外線を照射し、一つ一つの水分子に対してもれなく振動、回転エネルギーを付与させた状態を継続して保持させる。つまり、これまでの非イオン型帯電防止剤類には無かった自己運動機能を付与して、性能向上に寄与させる。
【0040】
ここで、活性化した水とは、水分子の運動エネルギーが増した状態のことをいい、例えば、遠赤外線の中で波長が長い極遠赤外線領域の波長を含む赤外線を照射(作用)させることで得ることができる。極遠赤外線とは、
図1に示すように、遠赤外線の中で波長が長い領域部分の赤外線をいう。どの程度の波長領域部分を遠赤外線というかについては諸説あって明確な定義はないが、一般的に、1.5μm~100μmの赤外線領域を遠赤外線といい、100μm~1000μmの赤外線領域を極遠赤外線というとされている。
【0041】
また、長波長の極遠赤外線を分子量最小の液体である水全体に効率よく共鳴吸収させ、水分子に、振動や回転のエネルギーを持たせるための非磁界空間の構築は、上述した非特許文献2において示されているが、例えば、
図2に示すことができる。
図2は、本発明に係る帯電防止剤に含まれる水分子を活性化させる状態を説明する模式図であって、永久磁石MのN極同士を相対させた両方の永久磁石M内側の最表面に、ゲルマニウム内在黒雲母Gを付着させ、この非磁界空間を構築させた導管10の内部に水を通過させることを示している。その結果、ゲルマニウム内在黒雲母Gから放射される極遠赤外線がクラスター状態の水分子Wに吸収され、瞬時に高効率で個々の水分子Wに振動及び回転のエネルギーを付与し、活性化した水分子W′となる。そして、振動及び回転のエネルギーを得た連続相の水分子群が、組成物全体を運動機能性ミセル溶液とする。
【0042】
なお、図において活性化した水分子W′に示されている矢印は、水分子が回転のエネルギーを有して活性化していることを示し、また、同波線は、水分子が振動のエネルギーを有して活性化していることを示している。
【0043】
この技術を導く水分子群への振動や回転運動エネルギーの付与機構については、前述の非特許文献2において理論的に説明しているが、これまでの研究は、水相としての媒体機能を利用することに終始しており、本出願のように、一つ一つの水分子が及ぼす運動の継続性を利用するという帯電防止方法は全く知られていなかった。
【0044】
本発明者は、非磁界空間で効率よく極遠赤外線を共鳴吸収させた多価アルコール・脂肪酸エステル系非イオン界面活性剤類の水-アルコール系ミセル溶液の1種もしくは2種以上を使用してプラスチック表面を処理し、この表面に吸着又は固定させたミセル溶液が、環境安全性と独自のエネルギー的拡張性を有する新規な運動機能性表面塗布型の帯電防止剤として作用する事を先ず確認した。
【0045】
そして、本発明者は、イオン電導性を有しない界面活性物質が、波動物理学を利用してそれぞれ水系溶液の状態でプラスチック表面の静電気対策を再現性良く、円滑に行っている様子を複数確認し、新規な形態の表面塗布型帯電防止剤として位置付けた。
【0046】
本発明において、イオン解離性を有しない一般的な日常生活用の安全物質が帯電防止効果を発揮する物理的要因としては、種々異なるHLB値よりなる非イオン界面活性剤類のミセルが、水とアルコールとの間の広範囲の混合比率で、自己振動回転エネルギーを作用させ続けることである。その結果、ミセルとしての活動度が運動学的に高められた状態を保持するという好結果を生むこととなる。
【0047】
また、本発明の極遠赤外線を共鳴吸収した自己振動性表面塗布型の帯電防止剤が、性能発現力を高め、かつ、それを持続させる形態として、非イオン界面活性剤の成分は、単一物質又は複数混合物に関係ない。つまり、水-アルコール混合液中で自己振動したミセルをつくる非イオン界面活性剤の成分は、自動分散して均質かつ稀薄に広がって安定した状態になる。また、透明度を低下せず、ベト付き性も感じさせずに留まり続けるので、帯電防止性能の持続力が保持されるのである。
【0048】
ゆえに、本発明の水-アルコール混合液系での多価アルコールの脂肪族エステル型及びエーテル型非イオン界面活性剤の自己振動ミセルへの変革は、ミセル溶媒を作る前の水単独の場合でも、水-アルコール混合液調整後でも、水と非イオン界面活性剤との混合液調整後でも、水と水溶性溶媒と非イオン界面活性剤との混合溶液調整後の何れでも、含水物質であれば差し控えない。
【実施例0049】
続いて、本発明の一例を実施例に基づいて説明する。本発明に係る帯電防止剤として、代表的に試験を行った多価アルコールの脂肪族エステル型及びエーテル型の非イオン界面活性剤ミセル組成物の内容を以下に示す。なお、使用可能な多価アルコールの脂肪族エステル型及びエーテル型の非イオン界面活性剤構造物と、その使用量、及び対象とする絶縁体プラスチック原材料については、それらだけに限定されるものではない。
多価アルコール脂肪族エステル型及びエーテル型の非イオン界面活性剤ミセル組成物としては、以下に示す原料の配合にて組成物1乃至8を調整した。
【0050】
(組成物1)
組成物1は、エチレングリコールモノカプリルエーテル1.0質量%と、エチルアルコール89.0質量%と、活性化した水10.0質量%とを含むミセル溶液である。
【0051】
(組成物2)
組成物2は、トリグリセリンモノラウレート0.2質量%と、ポリ(6モル)オキシエチレンモノベヘネート0.1質量%と、ソルビタンジラウレート質量%と、エチルアルコール89.0質量%と、活性化した水10.6質量%とを含むミセル溶液である。
【0052】
(組成物3)
組成物3は、ソルビントールモノステアレート0.2質量%と、ソルビトールジカプリレート0.5質量%と、エチルアルコール79.3質量%と、活性化した水20.0質量%とを含むミセル溶液である。
【0053】
(組成物4)
組成物4は、テトラグリセリンモノオレート0.2質量%と、ポリ(6モル)オキシエチレンジカプリレート0.5質量%と、マン二タンモノカプリレート0.3質量%と、エチルアルコール69.0質量%と、活性化した水30.0質量%とを含むミセル溶液である。
【0054】
(組成物5)
組成物5は、グリセリンモノカプリレート0.2質量%と、トリグリセリンモノパルミテート0.2質量%と、エチルアルコール60.0質量%と、活性化した水39.6質量%とを含むミセル溶液である。
【0055】
(組成物6)
組成物6は、テトラグリセリンモノイソステアレート0.1質量%と、トリグリセリンモノカプリレート0.1質量%と、ポリ(6モル)オキシエチレンモノカプリート質量%と、エチルアルコール30.6質量%と、活性化した水69.0質量%とを含むミセル溶液である。
【0056】
(組成物7)
組成物7は、テトラグリセリンモノラウリルエーテル0.3質量%と、2-エチルへキシルモノイソステアレート0.1質量%と、エチルアルコール50.0質量%と、エチレングリコール5.0質量と、活性化した水44.6質量%とを含むミセル溶液である。
【0057】
(組成物8)
組成物8は、ドデシレンジメトキシエーテル0.2質量%と、ポリ(20モル)オキシエチレンソルビタンモノラウレート0.5質量%と、エチルアルコール65.0質量%と、グリセリン5.0質量%と、活性化した水29.3質量%とを含むミセル溶液である。
【0058】
また、本発明の帯電防止剤組成物との性能比較物として、二つ比較組成物を調整した。
(比較組成物1)
比較組成物1は、上述した組成物1の配合において、10.0%混入させた活性化した水の代わりに、通常使用のイオン交換水を使用した以外は同一としたものである。
(比較組成物2)
比較組成物2は、上述した組成物6の配合において、69.0%混入させた活性化した水の代わりに、通常使用のイオン交換水を使用した以外は同一としたものである。
【0059】
〔実施例1〕
帯電防止効果を確認する試験として、厚さ1mm、面積1m2をした灰褐色不透明ABS樹脂板の片面に対して、組成物1乃至8と、比較組成物1及び2を、それぞれ2gずつ噴霧した後、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、ABS樹脂板の表面に対する摩擦帯電性の観察と、表面抵抗率の測定を行った。また、何の処理も施さないABS樹脂板についても、同様の観察と測定を併せて行った。
【0060】
摩擦帯電性の観察は、樹脂面に各組成物を噴霧した後、1〜2分を要して不織布で全面的に引き延し、試験体の1cm下部に置かれた2mm辺の紙片の吸着性の有無で判定した。なお、摩擦帯電性の観察は、処理直後と、1週間後に、それぞれ行った。
また、表面抵抗率の測定は、シムコジャパン社製の表面抵抗率測定器を用い、24時間後と、1週間後に、それぞれ行った。
その結果を、以下の[表1]にそれぞれ示す。
【0061】
【0062】
[表1]に示す結果より、本発明に基づく帯電防止剤である組成物1乃至8で処理したABS樹脂板は、摩擦帯電性が無く、また、無処理の場合や比較組成物1及び2で処理した場合に比して、表面抵抗率の値が著しく低下することがわかる。これは、本発明に基づく帯電防止剤は、特定の溶液としての全体運動の力が継続して作用することで、対象とするプラスチック材料の帯電防止剤被膜を首尾よく修復し続けるものと考えられる。
ゆえに、本発明に基づく帯電防止剤によれば、導電被膜(活性化している水分子の膜)をプラスチック材料の表面に形成し、静電気を漏洩させる(この膜を通電させることで静電気をリークさせる)帯電防止効果が得られていることが確認できた。
【0063】
〔実施例2〕
帯電防止効果を確認する試験として、厚さ2.5mmの透明MMA樹脂板の両面に、常温で組成物1乃至8と、比較組成物1及び2を、それぞれ少量噴霧した後、MMA樹脂の全光線透過率の測定と、表面抵抗率の測定、表面に対する摩擦帯電性の観察、及び呼気呼吸後の曇り消去の観察をそれぞれ行った。また、何の処理も施さない透明MMA樹脂板についても、同様の測定と観察を併せて行った。
【0064】
全光線透過率の測定は、JIS-K7375に基づいてそれぞれ行った。
また、呼気呼吸後の曇り消去の観察は、樹脂面から5cm離れた距離で呼気をひと吹きし、その後の完全濡れ時間をそれぞれ測定することにより行った。
なお、表面抵抗率の測定と、摩擦帯電性の観察は、上述した実施例1と同様の方法で、それぞれ1週間後のみ行った。
その結果を、以下の[表2]にそれぞれ示す。
【0065】
【0066】
[表2]に示す結果より、本発明に基づく帯電防止剤である組成物1乃至8で処理したMMA樹脂板においては、無処理の場合や比較組成物1及び2で処理した場合に比して、全光線透過率の低下が無く、表面抵抗率の値が著しく低下し、また、摩擦帯電性も無いことがわかる。また、樹脂面に親水性薄膜が均質に形成されているかどうかを比較観察するための呼気呼吸後の曇り消去の観察においても良好であり、樹脂面に親水性薄膜が均質に形成されていることがわかる。
また、本発明に基づく帯電防止剤においては、水分子の振動力が液態の水相全体を動かしつつ組成物の最表面を修復し、この作用が水分子の完全蒸発まで続くことの良い結果をもたらしていると推測される。
【0067】
〔実施例3〕
帯電防止効果を確認する試験として、50〜60℃で押し出し化工した厚さ80μmの透明A-PETシートの片面に、組成物1乃至6と、比較組成物1及び2を、それぞれ少量噴霧した後、透明A-PETシートの全光線透過率の測定と、表面抵抗率の測定と、シート表面及び裏面に対する摩擦帯電性の観察と、呼気呼吸後の曇り消去の観察を、帯電防止効果を確認する試験としてそれぞれ行った。また、何の処理も施さない透明A-PETシートについても、同様の測定と観察を併せて行った。
【0068】
全光線透過率の測定と、呼気呼吸後の曇り消去の観察は、上述した実施例2と同様の方法で行った。
また、表面抵抗率の測定と、摩擦帯電性の観察は、上述した実施例1と同様の方法で、それぞれ1週間後のみ行った。
その結果を、以下の[表3]にそれぞれ示す。
【0069】
【0070】
[表3]に示す結果より、本発明に基づく帯電防止剤である組成物1乃至8で処理したPETシートにおいてもまた、無処理の場合や比較組成物1及び2で処理した場合に比して、全光線透過率の低下が無く、表面抵抗率の値が著しく低下し、また、摩擦帯電性も無いことがわかる。また、呼気呼吸後の曇り消去の観察においても良好であり、樹脂面に親水性薄膜が均質に形成されていることがわかる。また、本発明に基づく帯電防止剤において、性能伝播機構が連続した隣接する範囲にまで有効に働くことが確認できた。
【0071】
〔実施例4〕
帯電防止効果を確認する試験として、高所へ取り付けられることとなる不透明ポリカーボネート管の表面に、組成物1乃至8と、比較組成物1及び2を、それぞれ噴霧した後、ポリカーボネート管の表面抵抗率の測定と、照度変化の観察、及び表面付着物の観察を、帯電防止効果を確認する試験としてそれぞれ行った。また、何の処理も施さないポリカーボネート管の表面に対する表面抵抗率の測定と、照度変化の観察、及び表面付着物の観察も併せて行った。
【0072】
つまり、炭酸エステル系のポリカーボネートは、接触する化学物質に対して敏感に影響を受け易く、一方でそれ自体では安定に存在するので、屋内の高所での照明材料としては有用であるため、人間生活や物品の製造現場等で多量に使われている。しかしながら、一体成型を行う内部練り込み型帯電防止剤として十分に性能発揮する製品はまだ見出されていない。
しかも、ポリカーボネート製の蛍光照明用具は、高所に取り付けられている例が多く、製品寿命により交換する必要があっても作業が簡単ではないため、絶縁体として帯電荷を蓄積した状態で長期間、不潔な塵埃を吸着し続け、不衛生で性能不足のまま高所に設置されている場合が多い。ゆえに、ポリカーボネート製の蛍光照明用具に対する帯電防止効果を確認する試験を行った。
【0073】
照度変化の観察は、内外の空気共に接触する温度10℃~15℃、相対湿度25~35%の環境下の部屋の床から3mの天井部分にポリカーボネート管を取り付け、取り付け前と、2ヶ月間連続固定した後の変化を比較して行った。
また、表面付着物の観察は、同様に取り付けた6カ月後の不透明ポリカーボネート管について、目視により表面付着物の有無を確認することにより行った。
なお、表面抵抗率の測定は、上述した実施例1と同様の方法で、高所への取り付け前と、取り付け2ヶ月後について、それぞれ行った。
その結果を、以下の[表4]にそれぞれ示す。
【0074】
【0075】
[表4]に示す結果より、本発明に基づく帯電防止剤である組成物1乃至8で処理したポリカーボネート照明用具においてもまた、無処理の場合や比較組成物1及び2で処理した場合に比して、表面抵抗率の値が著しく低下し、また、照度変化も無く、表面付着物も無いことがわかる。しかも、これまで内部練り込み型の帯電防止剤でも十分な帯電防止効果を得ることができずに、徐々に不衛生なチリや埃を付着して、照度を低下させていた高所取り付けのポリカーボネート照明用具に対して、本発明に基づく帯電防止剤は、単純な初期作業だけでかなり役立つ物になることが見いだされた。
【0076】
〔実施例5〕
帯電防止効果を確認する試験として、空手道競技に用いられる透明ポリカーボネート樹脂製の顔面保護用具(以下、単に「透明ポリカーボネート保護具」という。)の表面に、組成物1乃至8と、比較組成物1及び2を、それぞれ噴霧した後、保護用具の全光線透過率の測定と、摩擦帯電性の観察と、呼気呼吸後の曇り消去の観察をそれぞれ行った。また、何の処理も施さない透明ポリカーボネート保護具の全光線透過率の測定と、摩擦帯電性の観察と、呼気呼吸後の曇り消去の観察も併せて行った。
【0077】
つまり、構造安定性の良好なポリカーボネートは、透明製品としての用途も多く、その一例として、空手道競技の顔面保護用具(商品名:メンホー)の材料として公式に使用されている。本実施例では、この透明ポリカーボネート保護具に対する帯電防止効果を確認する試験を行った。
【0078】
全光線透過率の測定と、呼気呼吸後の曇り消去の観察は、上述した実施例2と同様の方法で行った。
また、摩擦帯電性の観察は、上述した実施例1と同様の方法で、処理直後と、1週間後に、それぞれ行った。
その結果を、以下の[表5]にそれぞれ示す。
【0079】
【0080】
[表5]に示す結果より、本発明に基づく帯電防止剤である組成物1乃至8で処理した透明ポリカーボネート保護具においてもまた、無処理の場合や比較組成物1及び2で処理した場合に比して、全光線透過率の低下が無く、また、摩擦帯電性も無く、呼気呼吸後の曇り消去の観察においても良好であり、樹脂面に親水性薄膜が均質に形成されていることがわかる。つまり、本発明に基づく帯電防止剤は、極めて簡単に保護具に塗付することができ、しかも、人体に極めて安全で、顔面保護具の光線透過率を低下させず、呼気付着後の曇り消去時間が極めて短いという条件を満たすと共に、不潔なチリ、埃も吸収させない無帯電化性能を有した製品とすることができた。
【0081】
以上の実施例1乃至5により、本発明の帯電防止剤は、種々のプラスチック材料において帯電防止性能を発現するという事実が確認された。しかも、本発明の帯電防止剤は、極めて安全な非イオン物質だけで、絶縁体の表面に対して、塗布や展着といった極めて簡易な後処理での作業により静電気対策を行うことができる。