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特開2024-55855二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムおよび炭素選別方法
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  • 特開-二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムおよび炭素選別方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055855
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムおよび炭素選別方法
(51)【国際特許分類】
   B07B 4/02 20060101AFI20240411BHJP
   B04C 5/26 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B07B4/02
B04C5/26
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174491
(22)【出願日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2022-0128291
(32)【優先日】2022-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523381000
【氏名又は名称】インスティテュート・フォー・アドバンスト・エンジニアリング
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE FOR ADVANCED ENGINEERING
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム・デウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ユンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ボラム
(72)【発明者】
【氏名】キム・ヒソン
【テーマコード(参考)】
4D021
4D053
【Fターム(参考)】
4D021FA02
4D021GA02
4D021GA29
4D021HA10
4D053AA03
4D053AB01
4D053BA07
4D053BB02
4D053BC01
4D053BD04
4D053CD21
4D053DA10
(57)【要約】
【課題】ブラックパウダーに含まれている有価金属を効果的に回収できるようにする二次電池ブラックパウダーの炭素選別システム及び炭素選別方法を提供する。
【解決手段】本発明は、二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムおよび炭素選別方法に関する。そのうち炭素選別システムは、パウダー原料を供給するための原料供給機と、パウダー原料が上下方向に流動可能に上下方向に延びて形成される長チャンバを提供する主反応器と、主反応器内のパウダー原料が流動するように長チャンバにガスを供給するガス供給機と、主反応器の上端部に接続され、主反応器の上端部に浮遊したパウダー原料を供給してもらいパウダー原料から炭素を捕集するサイクロンユニットとを含むことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウダー原料を供給するための原料供給機;
前記パウダー原料が上下方向に流動可能に上下方向に延びて形成される長チャンバを含む主反応器;
前記主反応器内の前記パウダー原料が流れるように前記長チャンバにガスを供給するガス供給機;及び
前記主反応器の上端部に接続され、前記主反応器の前記上端部に浮遊した前記パウダー原料を供給してもらい、前記パウダー原料から炭素を回収するサイクロンユニットを含む、
二次電池ブラックパウダーの炭素選別システム。
【請求項2】
前記主反応器は、
上端部に前記原料供給機を接続し、下端部に前記ガス供給機を接続し、内部に前記長チャンバを設ける反応本体;及び
前記長チャンバの下部に配置され、前記ガスが通過するように複数の分散孔を提供する分散板を含む、
請求項1に記載の二次電池ブラックパウダーの炭素選別システム。
【請求項3】
前記分散孔は、
1mm以上2mm以下の範囲の直径を有する、
請求項2に記載の二次電池ブラックパウダーの炭素選別システム。
【請求項4】
前記ガス供給機は、
1~100LPM(Liter/Min)の範囲のガスを前記主反応器に供給して前記パウダー原料を流動させる、
請求項1に記載の二次電池ブラックパウダーの炭素選別システム。
【請求項5】
前記サイクロンユニットは、
前記主反応器の前記上端部に連続的に接続され、前記主反応器から供給された前記パウダー原料から前記炭素を連続的に回収する複数のサイクロンを含む、
請求項1に記載の二次電池ブラックパウダーの炭素選別システム。
【請求項6】
前記複数のサイクロンユニットは、
前記主反応器の前記上端部に連続的に接続される第1サイクロンと第2サイクロンとを含み、
前記第1サイクロンは、
遠心力を使用して炭素が予め設定された量より多く含まれている前記パウダー原料を1次選別する第1サイクロン部;
1次選別された前記パウダー原料を捕集するために前記第1サイクロン部の下端に接続される第1回収部;
前記主反応器の前記上端部と前記第1サイクロン部との間を接続する第1流入管部;及び
前記第1サイクロン部で上昇旋回するパウダー原料を前記第1サイクロン部の外部に案内する第1排出管部を含み、
前記第2サイクロンは
遠心力を使用して炭素が所定の量より多く含まれている前記パウダー原料を2次選別する第2サイクロン部;
2次選別された前記パウダー原料を捕集するために前記第2サイクロン部の下端に接続される第2回収部;
前記第1排出管部と前記第2サイクロン部とを接続する第2流入管部;及び
前記第2サイクロン部で上昇旋回する前記パウダー原料を前記第2サイクロン部の外部に案内する第2排出管部を含む、
請求項5に記載の二次電池ブラックパウダーの炭素選別システム。
【請求項7】
前記主反応器および前記サイクロンユニットの内壁にはフッ素樹脂コーティング(PTFE)が形成される、
請求項1に記載の二次電池ブラックパウダーの炭素選別システム。
【請求項8】
前記反応本体は、
1段本体部;及び
前記1段本体部の直径より大きい直径を有するように前記1段本体部の上部に傾斜して接続する2段本体部を含み、
前記2段本体部の直径は、前記1段本体部の直径よりも2倍以上大きい、
請求項2に記載の二次電池ブラックパウダーの炭素選別システム。
【請求項9】
パウダー原料を主反応器に供給する段階;
前記主反応器内の前記パウダー原料が流れるように前記主反応器にガスを供給する段階;
前記主反応器の上端部に浮遊した前記パウダー原料をサイクロンユニットに供給する段階;及び
前記サイクロンユニット内の前記パウダー原料から炭素を回収する段階を含む、
二次電池ブラックパウダーの炭素選別方法。
【請求項10】
前記炭素を回収する段階は、
前記主反応器の前記上端部に接続された第1サイクロンを介して、炭素が予め設定された量より多く含まれている前記パウダー原料を1次回収し、前記第1サイクロンと連続的に接続された第2サイクロンを介して、炭素が予め設定された量より多く含まれている前記パウダー原料を2次回収する、
請求項9に記載の二次電池ブラックパウダーの炭素選別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムおよび炭素選別方法に関する発明である。本研究は、2022年度企画財政部(政府)の財源により韓国エネルギー技術評価院の支援を受けて行われた再生資源の低炭素産業原料化技術開発研究事業の、廃リチウムリン酸鉄電池(LFP)からの炭素低減型電池原料化技術開発(課題固有番号:1415182084、課題番号:20229A10100100)に関連する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池需要の急増とともに、素材の価格引き上げに伴い、リサイクル技術の需要が徐々に増加している。二次電池の再使用、リサイクルなどに関連する技術の確保が切実な状況である。
【0003】
これにより、廃電池から有価金属を回収するために、集電体から陽極/陰極の混合粉末であるブラックパウダーを回収する。ブラックパウダーには、陰極の主要物質である炭素と陽極物質であるリチウムを含む酸化物が混在しているため、焼却工程を利用したり、浮遊選別方法によりブラックパウダーから炭素を除去している。
【0004】
ところで、焼却工程により炭素をブラックパウダーから除去する場合、多量の二酸化炭素が発生するだけでなく、炭素によってリチウムを含む酸化物の還元が発生する可能性があり、炉内雰囲気によって炭素が分解し、発熱反応により予想できなかった副反応などを起こす可能性がある。また、浮遊選別方法により炭素をブラックパウダーから除去する場合、湿式工程で効率が低下し、気泡剤の洗浄など追加工程が要求され、工程コスト上昇の追加的な問題が発生することがある。
【0005】
これにより、ブラックパウダー内の炭素除去に使用される熱的エネルギーに対する工程コストなどを簡素化し、ブラックパウダーから炭素を除去する際に発生する二酸化炭素低減のための前処理技術が緊急な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施例は、密度分級方式により、二次電池ブラックパウダーから炭素を除去し、ブラックパウダーに含まれている有価金属を効果的に回収できるようにする二次電池ブラックパウダーの炭素選別システム及び炭素選別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、パウダー原料を供給するための原料供給機;前記パウダー原料が上下方向に流動可能に上下方向に延びて形成される長チャンバを含む主反応器;前記主反応器内の前記パウダー原料が流れるように前記長チャンバにガスを供給するガス供給機;及び前記主反応器の上端部に接続され、前記主反応器の前記上端部に浮遊した前記パウダー原料を供給してもらい、前記パウダー原料から炭素を捕集するサイクロンユニットを含む、二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムが提供されることができる。
【0008】
また、前記主反応器は、上端部に前記原料供給機を接続し、下端部に前記ガス供給機を接続し、内部に前記長チャンバを設ける反応本体;及び前記長チャンバの下部に配置され、前記ガスが通過するように複数の分散孔を提供する分散板を含む、二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムが提供されることができる。
【0009】
また、前記分散孔は、1mm以上2mm以下の範囲の直径を有する、二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムが提供されることができる。
【0010】
また、前記ガス供給機は、1~100LPM(Liter/Min)の範囲のガスを前記主反応器に供給して前記パウダー原料を流動させる、二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムが提供されることができる。
【0011】
また、前記サイクロンユニットは、前記主反応器の前記上端部に連続的に接続され、前記主反応器から供給された前記パウダー原料から前記炭素を連続的に回収する複数のサイクロンを含む、二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムが提供されることができる。
【0012】
さらに、前記複数のサイクロンユニットは、前記主反応器の前記上端部に連続的に接続される第1サイクロンと第2サイクロンとを含み、前記第1サイクロンは、遠心力を使用して炭素が予め設定された量より多く含まれている前記パウダー原料を1次選別する第1サイクロン部;1次選別された前記パウダー原料を捕集するために前記第1サイクロン部の下端に接続される第1回収部;前記主反応器の前記上端部と前記第1サイクロン部との間を接続する第1流入管部;及び前記第1サイクロン部で上昇旋回するパウダー原料を前記第1サイクロン部の外部に案内する第1排出管部を含み、前記第2サイクロンは遠心力を使用して炭素が所定の量より多く含まれているパウダー原料を2次選別する第2サイクロン部;2次選別された前記パウダー原料を捕集するために前記第2サイクロン部の下端に接続される第2回収部;前記第1排出管部と前記第2サイクロン部とを接続する第2流入管部;及び前記第2サイクロン部で上昇旋回する前記パウダー原料を前記第2サイクロン部の外部に案内する第2排出管部を含む、二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムが提供されることができる。
【0013】
また、前記主反応器および前記サイクロンユニットの内壁にはフッ素樹脂コーティング(PTFE)が形成される、二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムが提供されることができる。
【0014】
また、前記反応本体は、1段本体部;及び前記1段本体部の直径より大きい直径を有するように前記1段本体部の上部に傾斜して接続する2段本体部を含み、前記2段本体部の直径は、前記1段本体部の直径よりも2倍以上大きい、二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムが提供されることができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、パウダー原料を主反応器に供給する段階;前記主反応器内の前記パウダー原料が流れるように前記主反応器にガスを供給する段階;前記主反応器の上端部に浮遊した前記パウダー原料をサイクロンユニットに供給する段階;及び前記サイクロンユニット内の前記パウダー原料から炭素を回収する段階を含む、二次電池ブラックパウダーの炭素選別方法が提供されることができる。
【0016】
また、前記炭素を回収する段階は、前記主反応器の前記上端部に接続された第1サイクロンを介して、炭素が所定の量より多く含まれている前記パウダー原料を1次回収し、前記第1サイクロンと連続的に接続された第2サイクロンを介して、炭素が所定の量より多く含まれている前記パウダー原料を2次回収する、二次電池ブラックパウダーの炭素選別方法が提供されることができる。
【発明の効果】
【0017】
また、本発明の実施例によれば、リチウム二次電池のブラックパウダーから炭素を選択的に分離して除去することにより、リサイクルする工程の原料としてブラックパウダーを使用する際、ブラックパウダーに対するリサイクル工程効率を向上させることができ、これにより二次電池リサイクル工程の経済性を向上させ、様々な産業に適用することが可能であるという効果がある。
【0018】
また、本発明の実施例によれば、ブラックパウダーに含まれる炭素を密度分級を用いて選別して除去することにより、ブラックパウダーに対する高温熱処理時に発生するCOガスを最小化することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施例による二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムを示した構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例による二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムの分散板を示した平面図である。
図3図3は、本発明の一実施例による二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムに適用されたブラックパウダーの熱重量分析結果を示したグラフである。
図4図4は、本発明の一実施例により、1mm分散ホールの分散板から回収したブラックパウダーの熱重量分析結果を示したグラフである。
図5図5は、本発明の一実施例により、2mm分散ホールの分散板から回収したブラックパウダーの熱重量分析結果を示したグラフである。
図6図6は、本発明の他の実施例による二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムを示した構成図である。
図7図7は、本発明による二次電池ブラックパウダーの炭素選別方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例による構成及び作用を添付の図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は、特許請求可能な本発明の様々な側面(aspects)の一つであり、下記の説明は本発明の詳細な技術の一部をなすことができる。
【0021】
但し、本発明の説明において公知の構成または機能に関する具体的な説明は、本発明を明瞭にするために省略することができる。
【0022】
本発明はいろいろな変更ができ、様々な実施例を含むことができるところ、特定の実施例を図面にて例示し、詳細な説明をしようとする。しかしながら、これは本発明を特定の実施形態に限定することを意図するものではなく、本発明の思想や技術範囲に含まれるすべての変更、均等物、および/または代替物を含むものとして理解されるべきである。
【0023】
第1、第2などの序数を含む用語は様々な構成要素を説明するために使用され得るが、対応する構成要素はそのような用語によって限定されない。これらの用語は、ある構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0024】
本出願で使用される用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定することを意図していない。単数の表現は、文脈上明らかに他に意味がない限り、複数の表現を含む。
【0025】
以下、添付の図面を参照して本発明の一実施例による二次電池ブラックパウダーの炭素選別システムについて説明する。
【0026】
図1乃至図2を参照すると、本発明の一実施例による炭素選別システム10は、パウダー原料に含まれている炭素を密度分級によって選別的に除去することにより、炭素が除去されたパウダー原料に対するリサイクル工程の効率を向上させることができる。このような炭素選別システム10は、原料供給機100、主反応器200、ガス供給機300、およびサイクロンユニット400を含むことができる。
【0027】
原料供給機100は、主反応器200に供給するためのパウダー原料を収容することができる。本実施例において、パウダー原料は、リチウム二次電池のリサイクルのために廃リチウム二次電池パックの解体/分離工程後、陽極と陰極内の集電体を除去して回収したリチウムイオン二次電池のブラックパウダーであることができる。ブラックパウダーには、炭素と共に有価金属であるLi、Ni、Co、Mnなどの金属が含まれているが、ブラックパウダーから炭素を除去すると、ブラックパウダーに含まれている有価金属に対する回収効率を増大することができる。
【0028】
原料供給機100は、パウダー原料が収容可能な原料ホッパー110と、原料ホッパー110に収容されているパウダー原料を主反応器200に選択的に提供する原料弁120とを含むことができる。原料弁120は、パウダー原料が原料ホッパー110から主反応器200に移動する移動経路を開閉することにより、原料ホッパー110内に収容されているパウダー原料を主反応器200に選択的に供給することができる。
【0029】
主反応器200は、ガスの流れによってパウダー原料が上下方向に移動可能な空間を提供することができる。主反応器200は反応本体210および分散板220を含むことができる。反応本体210は、上下方向に流れるように上下方向に延びて形成された長チャンバ211を提供することができる。
【0030】
主反応器200の内壁にはフッ素樹脂コーティング(PTFE)を形成することができる。主反応器200の内面にフッ素樹脂コーティング(PTFE)を形成することにより、二次電池ブラックパウダー内の炭素が静電気力が高く、主反応器200の内面に融着されるとき、炭素排出が容易に行われることができ、炭素の回収率を向上させることができる。
【0031】
反応本体210の長さは、パウダー原料の原料/密度などを考慮して炭素を選別的に浮遊させることができるように設計することができる。反応本体210の長さは、パウダー原料の流動距離に対応することができる。本実施例において、反応本体210の長さは1500mmであることができる。反応本体210の上端部には原料供給機100を接続することができる。下端部にはガス供給機300を接続することができる。
【0032】
一方、炭素分離のために、以下のWen&Yu(1966)の式(式1)を用いて最小流動化速度を計算して流量を選定することができる。このWen&Yuの公式(式1)は通常公式であるため、これについての詳細な説明は省略する。
【0033】
【数1】
【0034】
ただし、既知の流動粒子サイズおよび粒子密度を示す固体流動粒子特性として、気体特性(気体粘度および気体密度)の関数であるアルキメデス数と関係する。そして、最小流動化速度よりも高い流量を用いる理由は、本最小流動化式には分散板が考慮されていないため、分散板により減衰される流量を考慮して最小流動化速度より高い速度の流速で行った。
【0035】
【表1】
【0036】
表1を参照すると、NCMブラックパウダー内の炭素の平均粒度は8、10、15ミクロンでそれぞれ計算し、この時の密度は2,260kg/mに設定した。NCM正極材は10、15、25ミクロンで、密度は4,620kg/mで計算した。NCM正極材は、タップ密度ではなくLiNiO2密度を参照した。
【0037】
分散板220は長チャンバ211の下部に配置することができる。分散板220は、パウダー原料中の炭素が反応本体210の上端部に流れるようにガス供給機300から供給されたガスを長チャンバ211の上側に伝達することができる。分散板220には、反応本体210との固定のためのクランプ孔221とガスを通過させる複数の分散孔222を形成することができる。複数の分散孔222は、分散板220の中央部に形成される1mm以上2mm以下の範囲の径の貫通孔であることができる。
【0038】
分散孔222の形状が単純な孔の形態で作られ、分散孔222の直径が粉末の直径よりも大きい2mmを超える場合、分散孔222の直径によって粉末が分散板220の下に落下する可能性がある。分散孔222の直径が1mm未満の場合、空気注入がスムーズでないため、主反応器200内に空気を投入する際に、空気が投入される主反応器200の空気投入部と分散板220との間に陽圧が形成される可能性があり、分散板220の上部へのガス伝達が円滑でなく、流動特性が低下する可能性がある。
【0039】
ガス供給機300は、主反応器200内のパウダー原料が流れるように主反応器200の長チャンバ211にガスを供給することができる。ガス供給機300から供給されるガスの供給流量は、1~100LPM(Liter/Min)の範囲であることができる。ガスの供給流量が1LPM未満であると、主反応器200内で、パウダー原料を流動させて炭素を主反応器200の上端部側に浮遊させることが難しくなり、ガスの供給流量が100LPMを超えると、パウダー原料中の重い物質も炭素と共に、主反応器200の上端部側に浮遊するため、主反応器200内で炭素の選別が困難になる可能性がある。
【0040】
本実施例において、ガス供給機300から供給されるガスは、20~100LPMの空気を用いたが、これに限定されず、ガス供給機300から供給されるガスは、空気以外にも、パウダー原料内の炭素を円滑に分級することができる様々な種類のガスであってもよい。一例として、ガス供給機300から供給されるガスは、アルゴン、窒素、またはこれらを少なくとも含む混合ガスであってもよい。
【0041】
サイクロンユニット400は、パウダー原料に旋回流を誘導することにより、パウダー原料に含まれている炭素を分離回収することができる。サイクロンユニット400は、主反応器200の上端部に浮遊したパウダー原料を供給してもらうことができ、供給されたパウダー原料から炭素を回収することができる。
【0042】
サイクロンユニット400の内壁には、ブラックパウダーに多量に含まれている炭素と正極材とを効果的に分離するためにフッ素樹脂コーティングを形成することができる。これは、炭素の高い静電気により、サイクロンユニット400に炭素微粒子が付着して分級効率を低下させる可能性があるからである。これにより、サイクロンユニット400の内壁にフッ素樹脂コーティングを形成することにより、静電気を最小限に抑え、炭素の回収を効果的に向上させることができる。
【0043】
サイクロンユニット400は、主反応器200の上端に連続的に接続される複数のサイクロンからなることができる。一例として、サイクロンユニット400は、主反応器200の上端に連続的に接続される第1サイクロン410および第2サイクロン420を含むことができる。
【0044】
第1サイクロン410は、第1サイクロン部411、第1回収部412、第1流入管部413、及び第1排出管部414を含むことができる。第1サイクロン部411は遠心力を利用して、炭素が予め設定された量より多く含まれているパウダー原料を1次選別することができる。ここで、予め設定された量の炭素が含まれているパウダー原料は、原料供給機100を介して供給されたパウダー原料と理解することができ、炭素が予め設定された量より多く含まれているパウダー原料は、原料供給機100を介して供給されたパウダー原料に含まれている炭素よりも多量の炭素を含むパウダー原料として理解することができる。
【0045】
第1サイクロン部411の一側部は、第1流入管部413が偏心して接続することができる。第1サイクロン部411の内部に流入した、炭素が予め設定された量より多く含まれているパウダー原料は、遠心力により第1サイクロン部411の内壁に沈着され、重力と下方を向く気流により第1回収部412に下降することができる。第1回収部412は、第1サイクロン部411の下端に接続することができる。第1回収部412は、第1サイクロン部411で下降する炭素が予め設定された量より多く含まれているパウダー原料を捕集して回収することができる。第1サイクロン部411と第1回収部412との間には、第1回収弁416が設けられることができる。第1回収弁416は、第1サイクロン部411から第1回収部412に移動する経路を選択的に開閉することができる。
【0046】
第1流入管部413は、主反応器200の上端部と第1サイクロン部411の一側部との間を連結することができる。第1流入管部413には、主反応器200から第1サイクロン部411に移動する移動経路を開閉する第1流入弁415が設けられることができる。第1流入弁415が開かれるように調整されると、主反応器200の上端部に浮遊したパウダー原料をサイクロンユニット400に供給することができる。
【0047】
第1排出管部414は、第1サイクロン部411の上部中央に配置されることができる。第1排出管部414は、第1サイクロン部411で上昇旋回するパウダー原料を第1サイクロン部411の外部に案内することができる。第1排出管部414には、第2サイクロン420の第2流入管部423を接続することができる。
【0048】
第2サイクロン420は、第2サイクロン部421、第2回収部422、第2流入管部423、及び第2排出管部424を含むことができる。第2サイクロン部421は、第1サイクロン410から供給された炭素が予め設定された量より多く含まれているパウダー原料を2次選別することができる。
【0049】
第2サイクロン部421の一側部には、第2流入管部423を偏心して接続することができる。第2サイクロン部421の内部に流入した炭素が予め設定された量より多く含まれているパウダー原料は、遠心力により第2サイクロン部421の内壁に沈着され、重力と下方を向く気流により第2回収部422に下降することができる。第2回収部422は、第2サイクロン部421の下端に接続することができる。第2回収部422は、第2サイクロン部421で下降する炭素が予め設定された量より多く含まれているパウダー原料を捕集して回収することができる。第2サイクロン部421と第2回収部422との間には、第2回収弁426が設けられることができる。第2回収弁426は、第2サイクロン部421から第2回収部422に移動する経路を選択的に開閉することができる。
【0050】
第2流入管部423は、第1サイクロン410の第1排出管部414と第2サイクロン部421の一側部との間を連結することができる。第2流入管部423には、第1サイクロン410から第2サイクロン420に移動する移動経路を開閉する第2流入弁が設けられることができる。第2流入弁が開かれるように調整されると、第1サイクロン410に排出されたパウダー原料は第2サイクロン420に供給されることができる。
【0051】
第2排出管部424は、第2サイクロン部421の上部中央に配置されることができる。第2排出管部424は、第2サイクロン部421で上昇旋回するパウダー原料を第2サイクロン部421の外部に案内することができる。第2排出管部424には、パウダー原料が外部に排出される経路を選択的に開閉する排出弁が設けられることができる。
【0052】
排出弁は、主反応器200およびサイクロンユニット400の差圧および内圧を全体的に調整することができる。例えば、排出弁が閉じられると、パウダー原料が第2サイクロン420から外部に排出される経路が遮断されるため、主反応器200およびサイクロンユニット400の内部圧力を上昇させることができる。
【0053】
これらの主反応器200、第1サイクロン410、および第2サイクロン420は、支持フレーム500によって支持されることができる。支持フレーム500は、主反応器200、第1サイクロン410、および第2サイクロン420を支持するためのハウジング/構造を含むことができる。
【実施例0054】
本発明の構成は、リチウム二次電池に集電体であるCu、Alが除去されたブラックパウダーを原料として流動層乾式密度分級を行った。主反応器200は、パウダー原料粉末の流動化を視覚的に確認することができるように50mmの直径を有するアクリル材料から作られた。
【0055】
主反応器200の高さは分散板から約1500mmの高さに設定することにより、パウダー原料粉末の流動距離を確保した。パウダー原料に含まれている炭素は、パウダー原料内の他の物質よりも比較的密度が低いため、サイクロンユニット400を介して、比較的密度の低い炭素がより多く含まれているパウダー原料粉末を回収することができた。
【0056】
サイクロンユニット400は、連続して配置される第1サイクロン410と第2サイクロン420とで構成することにより、パウダー原料に対する分級効率を向上させた。初期300gのパウダー原料を熱重量分析を用いて平均炭素量を測定した。
【0057】
本実施例で用いたパウダー原料は、リチウム二次電池正極と負極、そしてバインダー及び他の有機物が混在しているリチウムイオン二次電池のブラックパウダーであるため、より正確な炭素量の確認のために、カーボン/硫黄(Carbon/Sulfur)分析器と熱重量分析器を一緒に分析した。
【0058】
まず、パウダー原料を主反応器200に投入し、ガス供給機300を介して20~30LPMの空気を主反応器200に供給することにより、主反応器200内のパウダー原料を流動化した。主反応器200内のパウダー原料の流動層の安定した形成のために、分散板を主反応器200に設置した。分散孔の大きさが1mm径と2mm径の2種類の分散板を主反応器200に設置して実験した。主反応器200内のパウダー原料を一定時間流動化させた後、第1サイクロン410に回収されたパウダー原料粉末の熱重量分析を行い、パウダー原料に対する炭素量の変化を分析した。
【0059】
図3を参照すると、パウダー原料の熱重量分析の結果、370℃までは約6%の重量減少があった。このときは二次電池電極の製造時に使用されたバインダーおよび他の有機物が分解される温度領域と判断された。600~800℃の領域では本格的な炭素の分解が起こることが推測できた。原料炭素の分析結果を下記表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
熱重量分析により、800℃以上の温度では追加の重量減少が起こらず、パウダー原料粉末で最終57%の質量が存在することと分析された。
【0062】
図4を参照すると、分散孔が1mmの分散板を用いてパウダー原料に対する流動層分級を試験した後、第1サイクロン410で捕集されたパウダー原料粉末の熱重量分析結果、600℃まではパウダー原料と同じ重量減少を示したが、800℃以上の高温で最終36.2%の重量が存在することと分析された。
【0063】
これは、熱重量分析完了後、炭素が完全に除去されたという仮定のもとに残りの重量のみを比較した場合、比較的軽い炭素が形成された流動層により、約36%の炭素が1次サイクロンにさらに捕集されたことが確認できた。これは、1次サイクロンのカーボン/硫黄分析の結果、パウダー原料粉末の炭素量は平均62.88%で、炭素の定量分級効率は約34%と分析され、これは熱重量分析と類似することが確認できた。
【0064】
図5を参照すると、分散孔が1mmの分散板を用いて、同じ条件で流動層分級を試験した熱重量分析の結果、600℃まで同様の重量減少挙動を示し、最終的に37.8%の重量が残った。これを上記と同様の方法で換算した時、33%の炭素が第1サイクロンにさらに捕集され、分散孔が1mmである分散板の第1サイクロン410のカーボン/硫黄分析の結果、61.13%で分級効率は約32%と確認された。
【0065】
例えば、本発明による炭素選別システムにより、パウダー原料粉末から約30%の炭素を乾式工程を通じて除去することができ、これにより、熱処理による炭素除去時、COxガス発生量が最大30%以上低減することができると予想される。
【0066】
一方、図6を参照すると、本発明の変形例として、主反応器200は、長手方向に互いに異なる直径を有する多段反応本体210を含むことができる。一例として、反応本体210は、1段本体部212と、1段本体部212の直径よりも大きい直径を有する2段本体部213とを提供する2段構造であってもよい。
【0067】
主反応器200の直径サイズが相異なる2段で構成される場合、直径が増大する部分で流速が減少し、分級により容易になる。なぜなら、一定の直径を有する主反応器の場合、主反応器200の上端まで一定の流速が維持されるため、流量と圧力をより微細に調整しなければならず、主反応器200の長さが相対的に高くなければならない。一方、主反応器200が直径の相異なる2段に作製される場合、減少した流速により比較的重い粉末の再沈降が起こるため、一定の直径を有する主反応器に比べて主反応器200の全体 高さを減らすことができる。
【0068】
そして、上部に位置する反応本体210は、下部に位置する反応本体210の直径より少なくとも2倍以上増加することができる。例えば、2段本体部213の直径は、1段本体部212の直径より少なくとも2倍以上であってもよい。これにより、1段本体部212から2段本体部213に上方向に移動する粉末は、流速の減少により分散板220から1段本体部212までは流動化は継続的に進行し、比較的重い粉末は再沈降を起こし、比較的軽い炭素流は第1サイクロン410部に移動することができる。
【0069】
2段本体部213の長さと1段本体部212の長さとを比較すると、2段本体部213の長さと1段本体部212の長さとの比は、1:1比であってもよく、2段本体部213の長さが1段本体部212の長さよりも短くてもよい。これは、ハイドロサイクロンのサイズとは大きな関連性はない。ハイドロサイクロンの場合、回収効率のために、円筒部の高さ、円錐部の高さ、流入口の高さ、流入口の幅などを考慮して設計することができ、回収しようとする物質の粒度、密度によって定められることができる。さらに、ハイドロサイクロンの設計はガス流入速度などを考慮することができ、このようなハイドロサイクロンの設計は反応本体の設計値よりも運用する条件(流量、粒度、密度など)に依存することがある。
【0070】
本実施例において、主反応器200は直径が相異なる2段構造について説明したが、これに限定されず、主反応器200は直径が相異なる3段以上の構造を提供することができる。
【0071】
以下では、本発明の一実施例による二次電池ブラックパウダーの炭素選別方法について説明する。
【0072】
図7を参照すると、二次電池ブラックパウダーの炭素選別方法は、パウダー原料を主反応器に供給する段階S100と、主反応器にガスを供給する段階S200と、パウダー原料をサイクロンユニットに供給する段階S300と、炭素を回収する段階S400とを含むことができる。
【0073】
前記パウダー原料を主反応器に供給する段階S100では、原料供給機に収容されたパウダー原料を主反応器に供給することができる。主反応器に供給されるパウダー原料は、リチウムイオン二次電池のブラックパウダーであることができる。主反応器には、分散孔が1mmの分散板または分散孔が2mmの分散板を設けることができる。
【0074】
前記主反応器にガスを供給する段階S200では、パウダー原料が主反応器に供給された状態で、ガス供給機のガスを主反応器に供給することができる。主反応器内のガスの供給により、主反応器内のパウダー原料は流動層を形成しながら流動化することができる。ガス供給機から供給されるガスの供給流量は、1~100LPM(Liter/Min)の範囲であることができる。
【0075】
前記パウダー原料をサイクロンユニットに供給する段階S300では、主反応器内のガス供給を介して、パウダー原料が主反応器で安定した流動層を形成すると、主反応器の上端部に浮遊したパウダー原料、言い換えれば、炭素が予め設定された量より多く含まれているパウダー原料をサイクロンユニットに供給することができる。
【0076】
前記炭素を回収する段階S400では、炭素が予め設定された量より多く含まれているパウダー原料を回収することができる。炭素が予め設定された量より多く含まれているパウダー原料は、原料供給機から供給されたパウダー原料よりも多量の炭素を含むパウダー原料として理解することができる。
【0077】
前記炭素を回収する段階S400では、主反応器の上端部に接続されている第1サイクロンを介して、炭素が予め設定された量より多く含まれているパウダー原料を1次回収することができ、第1サイクロンと連続的に接続されている第2サイクロンを介して、炭素が予め設定された量より多く含まれているパウダー原料を2次回収することができる。
【0078】
上述のように、本発明は、リチウム二次電池のブラックパウダーから炭素を選択的に分離して除去することにより、リサイクルする工程の原料としてブラックパウダーを使用する際、ブラックパウダーに対するリサイクル工程効率を向上させることができ、ブラックパウダーに含まれる炭素を密度分級を用いて選別して除去することにより、ブラックパウダーへの高温熱処理時に発生するCOxガスを最小化することができるという優れた利点を有する。
【0079】
以上、本発明の実施例を具体的な実施形態として説明したが、これは例示に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、本明細書に開示された基礎思想に従う最も広い範囲を有するものと解釈されるべきである。当業者は、開示された実施形態を組合せ/置換して適示されていない形状のパターンを実施することができるが、これも本発明の範囲から逸脱しないであろう。 さらに、当業者は本明細書に基づいて開示された実施形態を容易に変更または修正することができ、そのような変更または変形も本発明の権利範囲に属することは明らかである。
【符号の説明】
【0080】
10:炭素選別システム、20:炭素選別方法、100:原料供給機、200:主反応器、210:反応本体、220:分散板、221:分散ホール、300:ガス供給機、400:サイクロンユニット、410:第1サイクロン、411:第1サイクロン部 、412:第1回収部、413:第1流入管部、414:第1排出管部、415:第1流入弁、416:第1回収弁、420:第2サイクロン、421:第2サイクロン部、422:第1回収部、423:第1流入管部、424:第1排出管部、425:第1流入弁、426:第1回収弁、500:支持フレーム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7