(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055866
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】内部状態または外部環境に応じて自律的に行動選択するロボット
(51)【国際特許分類】
G05D 1/228 20240101AFI20240411BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20240411BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20240411BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240411BHJP
A63H 11/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G05D1/228
G08B25/04 K
B25J13/00 Z
G05D1/43
A63H11/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023202284
(22)【出願日】2023-11-29
(62)【分割の表示】P 2020561466の分割
【原出願日】2019-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018235230
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515337268
【氏名又は名称】GROOVE X株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 要
(72)【発明者】
【氏名】南地 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】堀ノ内 司
(72)【発明者】
【氏名】沼口 直紀
(72)【発明者】
【氏名】藁谷 克則
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロボットとの暮らしにおいてユーザに安心感を提供する。
【解決手段】自律行動型ロボットは、ロボットのモーションを選択する動作制御部と、動作制御部により選択されたモーションを実行する駆動機構と、ターゲット物体が所定の見守り条件を満たすか否かを判定する認識部と、見守り条件が成立したとき、ターゲット物体の見守りモードに設定するモード設定部と、見守りモードにおいて、ターゲット物体の撮像画像を所定の通信端末に送信する通信部を備える。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのモーションを選択する動作制御部と、
前記動作制御部により選択されたモーションを実行する駆動機構と、
対象者が所定の見守り条件を満たすか否かを判定する認識部と、
前記見守り条件が成立したとき、前記対象者の見守りモードに設定するモード設定部を備えるロボット。
【請求項2】
頭部を備え、
前記駆動機構は、前記見守りモード中に、前記対象者が存在する方向に前記頭部を向け続けるモーションを実行することを特徴とする請求項1記載のロボット。
【請求項3】
前記見守りモードにおいて、他のロボットと前記対象者の位置を共有し、前記対象者に基づいて定められる前記他のロボットと同一の注視点または前記他のロボットの注視点と所定の距離内の注視点に向けて、前記頭部を向ける請求項2記載のロボット。
【請求項4】
前記見守りモードにおいて、少なくとも他のロボット及び自己の一方が前記対象者に前記頭部を向けるように構成されている請求項2又は3記載のロボット。
【請求項5】
前記見守りモード中に、前記対象物との距離を所定距離以内に制御する請求項1~4のいずれか1項記載のロボット。
【請求項6】
前記見守りモード中に、前記見守り条件が満たされないときの少なくとも1つのモードよりも前記機動機構の動作量を低下させる請求項1~5のいずれか1項記載のロボット。
【請求項7】
前記見守りモード中に、前記対象物が所定の条件を充足したと判定したときに、前記対象物に対するモーションを実行することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項記載のロボット。
【請求項8】
前記見守りモード中に、前記対象物が所定の条件を充足したと判定したときに、前記対象物に対するモーションを実行することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項記載のロボット。
【請求項9】
前記モード設定部は、前記見守り条件に加え、所定の年齢以上の人物が周囲に検出されないという条件が充足された場合に前記見守りモードに設定するように構成されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項記載のロボット。
【請求項10】
前記モード設定部は、前記見守り条件に加え、前記対象者に関連付けられた人物が週に検出されないという条件が充足された場合に前記見守りモードに設定するように構成されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項記載のロボット。
【請求項11】
前記見守りモードにおいて、前記対象者の撮像画像を所定の通信端末に送信する通信部を備えることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部状態または外部環境に応じて自律的に行動選択するロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
人間は、癒やしを求めてペットを飼う。その一方、ペットの世話をする時間を十分に確保できない、ペットを飼える住環境にない、アレルギーがある、死別がつらい、といったさまざまな理由により、ペットをあきらめている人は多い。もし、ペットの役割が務まるロボットがあれば、ペットを飼えない人にもペットが与えてくれるような癒やしを与えられるかもしれない(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-323219号公報
【特許文献2】国際公開第2017/169826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ロボット技術は急速に進歩しつつあるが、ペットのような伴侶としての存在感を実現するには至っていない。ロボットに自由意志があるとは思えないからである。人間は、ペットの自由意志があるとしか思えないような行動を観察することにより、ペットに自由意志の存在を感じ、ペットに共感し、ペットに癒される。
【0005】
本発明は上記課題認識に基づいて完成された発明であり、その第1の目的は、ロボットとの暮らしにおいてユーザにさまざまな安心感を提供するための技術を提供することにある。また、第2の目的は、ロボットのユーザに対する愛情を豊かに表現するための技術を提供することにある。また、第3の目的は、複数のロボットが協調して行動するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様における自律行動型ロボットは、ロボットのモーションを選択する動作制御部と、動作制御部により選択されたモーションを実行する駆動機構と、対象者が所定の見守り条件を満たすか否かを判定する認識部と、見守り条件が成立したとき、対象者の見守りモードに設定するモード設定部と、見守りモードにおいて、対象者の撮像画像を所定の通信端末に送信する通信部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロボットの存在感をいっそう高めやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0009】
【
図2】ロボットの構造を概略的に表す断面図である。
【
図3】基本構成におけるロボットのハードウェア構成図である。
【
図4】基本構成におけるロボットシステムの機能ブロック図である。
【
図5A】複数のロボットが赤ちゃんを見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図5B】複数のロボットが赤ちゃんを見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図5C】複数のロボットが赤ちゃんを見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図5D】複数のロボットが赤ちゃんを見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図6A】複数のロボットが赤ちゃんを見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図6B】複数のロボットが赤ちゃんを見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図6C】複数のロボットが赤ちゃんを見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図6D】複数のロボットが赤ちゃんを見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図7A】複数のロボットが赤ちゃんを見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図7B】複数のロボットが赤ちゃんを見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図7C】複数のロボットが赤ちゃんを見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図7D】複数のロボットが赤ちゃんを見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図7E】複数のロボットが赤ちゃんを見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図8A】ロボットがお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図8B】ロボットがお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図8C】ロボットがお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図8D】ロボットがお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図9A】ロボットがお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図9B】ロボットがお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図9C】ロボットがお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図9D】ロボットがお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図10A】ロボットがお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図10B】ロボットがお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図10C】ロボットがお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図11A】ロボットがお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図11B】ロボットがお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図11C】ロボットがお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図12A】外出中のユーザがロボットを遠隔操作するときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図12B】外出中のユーザがロボットを遠隔操作するときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図12C】外出中のユーザがロボットを遠隔操作するときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図12D】外出中のユーザがロボットを遠隔操作するときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図13A】外出中のユーザがロボットを遠隔操作するときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図13B】外出中のユーザがロボットを遠隔操作するときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図13C】外出中のユーザがロボットを遠隔操作するときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図13D】外出中のユーザがロボットを遠隔操作するときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図14A】外出中のユーザがロボットを遠隔操作するときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図14B】外出中のユーザがロボットを遠隔操作するときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図14C】外出中のユーザがロボットを遠隔操作するときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図14D】外出中のユーザがロボットを遠隔操作するときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図15A】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図15B】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図15C】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図15D】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図16A】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図16B】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図16C】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図16D】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図17A】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図17B】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図17C】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図17D】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図18A】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図18B】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【
図18C】複数のロボットが高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態におけるロボット100は、ユーザと日常を共有し、ときにはユーザに配慮し、ときにはユーザの役に立とうと奮闘し、ユーザの愛情を積極的に求めることで、家族の一員としての存在感を発揮する。
以下、ロボット100の基本構成について
図1から
図4に関連して説明したあと、ロボット100のさまざまな行動シーンについて説明する。
【0011】
[基本構成]
図1は、ロボット100の外観を表す図である。
図1Aは正面図であり、
図1Bは側面図である。
ロボット100は、外部環境および内部状態に基づいて行動を決定する自律行動型のロボットである。外部環境は、カメラやサーモセンサ115など各種のセンサにより認識される。内部状態はロボット100の感情を表現する様々なパラメータとして定量化される。ロボット100は、オーナー家庭の家屋内を行動範囲とする。以下、ロボット100に関わる人間を「ユーザ」とよぶ。ユーザのうち、ロボット100の所有者または管理者を「オーナー」とよぶ。
【0012】
ロボット100のボディ104は、全体的に丸みを帯びた形状を有し、ウレタンやゴム、樹脂、繊維などやわらかく弾力性のある素材により形成された外皮314を含む。ロボット100に服を着せてもよい。ロボット100の総重量は5~15キログラム程度、身長は0.5~1.2メートル程度である。適度な重さと丸み、柔らかさ、手触りのよさ、といった諸属性により、ユーザがロボット100を抱きかかえやすく、かつ、抱きかかえたくなるという効果が実現される。
【0013】
ロボット100は、一対の前輪102(左輪102a,右輪102b)と、一つの後輪103を含む。前輪102が駆動輪であり、後輪103が従動輪である。前輪102は、操舵機構を有しないが、左右輪の回転速度や回転方向を個別に制御可能とされている。後輪103は、キャスターであり、ロボット100を前後左右へ移動させるために回転自在となっている。後輪103はオムニホイールであってもよい。左輪102aよりも右輪102bの回転数を大きくすることで、ロボット100が左折したり、左回りに回転できる。右輪102bよりも左輪102aの回転数を大きくすることで、ロボット100が右折したり、右回りに回転できる。
【0014】
前輪102および後輪103は、駆動機構(回動機構、リンク機構)によりボディ104に完全収納できる。ボディ104の下半部には左右一対のカバー312が設けられている。カバー312は、可撓性および弾性を有する樹脂材(ラバー、シリコーンゴム等)からなり、柔らかい胴体を構成するとともに前輪102を収納できる。カバー312には側面から前面にかけて開口するスリット313(開口部)が形成され、そのスリット313を介して前輪102を進出させ、外部に露出させることができる。
【0015】
走行時においても各車輪の大半はボディ104に隠れているが、各車輪がボディ104に完全収納されるとロボット100は移動不可能な状態となる。すなわち、車輪の収納動作にともなってボディ104が降下し、床面Fに着座する。この着座状態においては、ボディ104の底部に形成された平坦状の着座面108(接地底面)が床面Fに当接する。
【0016】
ロボット100は、2つの腕106を有する。腕106の先端に手があるが、モノを把持する機能はない。腕106は、後述するアクチュエータの駆動により、上げる、曲げる、手を振る、振動するなど簡単な動作が可能である。2つの腕106は、それぞれ個別に制御可能である。
【0017】
ロボット100の頭部正面には顔領域116が露出している。顔領域116には、2つの目110が設けられている。目110は、液晶素子または有機EL素子による画像表示が可能であり、画像として表示された瞳や瞼を動かすことで視線や表情を表現するためのデバイスである。顔領域116の中央には、鼻109が設けられている。鼻109には、アナログスティックが設けられており、上下左右の全方向に加えて、押し込み方向も検出できる。また、ロボット100には複数のタッチセンサが設けられており、頭部、胴部、
臀部、腕など、ロボット100のほぼ全域についてユーザのタッチを検出できる。ロボット100は、音源方向を特定可能なマイクロフォンアレイや超音波センサなど様々なセンサを搭載する。また、スピーカーを内蔵し、簡単な音声を発することもできる。
【0018】
ロボット100の頭部にはツノ112が取り付けられる。ツノ112には全天周カメラ113が取り付けられ、ロボット100の上部全域を一度に撮像可能である。ツノ112にはまた、サーモセンサ115(サーモカメラ)が内蔵されている。また、ツノ112には赤外線を利用した通信をするためのモジュール(図示せず)が複数設けられており、それらのモジュールが周囲に向けて環状に設置されている。このため、ロボット100は方向を認識しながら赤外線通信ができる。更に、ツノ112には、緊急停止用のスイッチが設けられており、ユーザはツノ112を引き抜くことでロボット100を緊急停止できる。
【0019】
図2は、ロボット100の構造を概略的に表す断面図である。
ボディ104は、本体フレーム310、一対の腕106、一対のカバー312および外皮314を含む。本体フレーム310は、頭部フレーム316および胴部フレーム318を含む。頭部フレーム316は、中空半球状をなし、ロボット100の頭部骨格を形成する。胴部フレーム318は、角筒形状をなし、ロボット100の胴部骨格を形成する。胴部フレーム318の下端部が、ロアプレート334に固定されている。頭部フレーム316は、接続機構330を介して胴部フレーム318に接続されている。
【0020】
胴部フレーム318は、ボディ104の軸芯を構成する。胴部フレーム318は、ロアプレート334に左右一対のサイドプレート336を固定して構成され、一対の腕106および内部機構を支持する。胴部フレーム318の内方には、バッテリー118、制御回路342および各種アクチュエータ等が収容されている。ロアプレート334の底面が着座面108を形成する。
【0021】
胴部フレーム318は、その上部にアッパープレート332を有する。アッパープレート332には、有底円筒状の支持部319が固定されている。アッパープレート332、ロアプレート334、一対のサイドプレート336および支持部319が、胴部フレーム318を構成している。支持部319の外径は、左右のサイドプレート336の間隔よりも小さい。一対の腕106は、環状部材340と一体に組み付けられることでアームユニット350を構成している。環状部材340は円環状をなし、その中心線上を径方向に離隔するように一対の腕106が取り付けられている。環状部材340は、支持部319に同軸状に挿通され、一対のサイドプレート336の上端面に載置されている。アームユニット350は、胴部フレーム318により下方から支持されている。
【0022】
頭部フレーム316は、ヨー軸321、ピッチ軸322およびロール軸323を有する。頭部フレーム316のヨー軸321周りの回動(ヨーイング)により首振り動作が実現され、ピッチ軸322周りの回動(ピッチング)により頷き動作,見上げ動作および見下ろし動作が実現され、ロール軸323周りの回動(ローリング)により首を左右に傾げる動作が実現される。各軸は、接続機構330の駆動態様に応じて三次元空間における位置や角度が変化し得る。接続機構330は、リンク機構からなり、胴部フレーム318に設置された複数のモータにより駆動される。
【0023】
胴部フレーム318は、車輪駆動機構370を収容している。車輪駆動機構370は、前輪102および後輪103をそれぞれボディ104から出し入れする前輪駆動機構および後輪駆動機構を含む。前輪102および後輪103は、ロボット100を移動させる「移動機構」として機能する。前輪102は、その中心部にダイレクトドライブモータを有する。このため、左輪102aと右輪102bを個別に駆動できる。前輪102はホイー
ルカバー105に回転可能に支持され、そのホイールカバー105が胴部フレーム318に回動可能に支持されている。
【0024】
一対のカバー312は、胴部フレーム318を左右から覆うように設けられ、ボディ104のアウトラインに丸みをもたせるよう、滑らかな曲面形状とされている。胴部フレーム318とカバー312との間に閉空間が形成され、その閉空間が前輪102の収容空間Sとなっている。後輪103は、胴部フレーム318の下部後方に設けられた収容空間に収容される。
【0025】
外皮314は、本体フレーム310および一対の腕106を外側から覆う。外皮314は、人が弾力を感じる程度の厚みを有し、ウレタンスポンジなどの伸縮性を有する素材で形成される。これにより、ユーザがロボット100を抱きしめると、適度な柔らかさを感じ、人がペットにするように自然なスキンシップをとることができる。外皮314は、カバー312を露出させる態様で本体フレーム310に装着されている。外皮314の上端部には、開口部390が設けられる。この開口部390がツノ112を挿通する。
【0026】
本体フレーム310と外皮314との間にはタッチセンサが配設される。カバー312にはタッチセンサが埋設されている。これらのタッチセンサは、いずれも静電容量センサであり、ロボット100のほぼ全域におけるタッチを検出する。なお、タッチセンサを外皮314に埋設してもよいし、本体フレーム310の内側に配設してもよい。
【0027】
腕106は、第1関節352および第2関節354を有し、両関節の間に腕356、第2関節354の先に手358を有する。第1関節352は肩関節に対応し、第2関節354は手首関節に対応する。各関節にはモータが設けられ、腕356および手358をそれぞれ駆動する。腕106を駆動するための駆動機構は、これらのモータおよびその駆動回路344を含む。
【0028】
図3は、ロボット100のハードウェア構成図である。
ロボット100は、内部センサ128、通信機126、記憶装置124、プロセッサ122、駆動機構120およびバッテリー118を含む。駆動機構120は、上述した接続機構330および車輪駆動機構370を含む。プロセッサ122と記憶装置124は、制御回路342に含まれる。各ユニットは電源線130および信号線132により互いに接続される。バッテリー118は、電源線130を介して各ユニットに電力を供給する。各ユニットは信号線132により制御信号を送受する。バッテリー118は、リチウムイオン二次電池であり、ロボット100の動力源である。
【0029】
内部センサ128は、ロボット100が内蔵する各種センサの集合体である。具体的には、カメラ、マイクロフォンアレイ、測距センサ(赤外線センサ)、サーモセンサ115、タッチセンサ、加速度センサ、気圧センサ、ニオイセンサなどである。タッチセンサは、ボディ104の大部分の領域に対応し、静電容量の変化に基づいてユーザのタッチを検出する。ニオイセンサは、匂いの元となる分子の吸着によって電気抵抗が変化する原理を応用した既知のセンサである。
【0030】
通信機126は、各種の外部機器を対象として無線通信を行う通信モジュールである。記憶装置124は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリにより構成され、コンピュータプログラムや各種設定情報を記憶する。プロセッサ122は、コンピュータプログラムの実行手段である。駆動機構120は、複数のアクチュエータを含む。このほか、表示器やスピーカーなども搭載される。
【0031】
駆動機構120は、主として、車輪と頭部を制御する。駆動機構120は、ロボット1
00の移動方向や移動速度を変化させるほか、車輪を昇降させることもできる。車輪が上昇すると、車輪はボディ104に完全に収納され、ロボット100は着座面108にて床面Fに当接し、着座状態となる。また、駆動機構120は、腕106を制御する。
【0032】
図4は、ロボットシステム300の機能ブロック図である。
ロボットシステム300は、ロボット100、サーバ200および複数の外部センサ114を含む。ロボット100およびサーバ200の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
ロボット100の機能の一部はサーバ200により実現されてもよいし、サーバ200の機能の一部または全部はロボット100により実現されてもよい。
【0033】
家屋内にはあらかじめ複数の外部センサ114が設置される。サーバ200は、外部センサ114を管理し、必要に応じてロボット100に外部センサ114により取得された検出値を提供する。ロボット100は、内部センサ128および複数の外部センサ114から得られる情報に基づいて、基本行動を決定する。外部センサ114はロボット100の感覚器を補強するためのものであり、サーバ200はロボット100の処理能力を補強するためのものである。ロボット100の通信機126がサーバ200と定期的に通信し、サーバ200が外部センサ114によりロボット100の位置を特定する処理を担ってもよい(特許文献2も参照)。
【0034】
(サーバ200)
サーバ200は、通信部204、データ処理部202およびデータ格納部206を含む。
通信部204は、外部センサ114およびロボット100との通信処理を担当する。データ格納部206は各種データを格納する。データ処理部202は、通信部204により取得されたデータおよびデータ格納部206に格納されるデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部202は、通信部204およびデータ格納部206のインタフェースとしても機能する。
【0035】
データ格納部206は、モーション格納部232と個人データ格納部218を含む。
ロボット100は、複数の動作パターン(モーション)を有する。腕106を震わせる、蛇行しながらオーナーに近づく、首をかしげたままオーナーを見つめる、などさまざまなモーションが定義される。
【0036】
モーション格納部232は、モーションの制御内容を定義する「モーションファイル」を格納する。各モーションは、モーションIDにより識別される。モーションファイルは、ロボット100のモーション格納部160にもダウンロードされる。どのモーションを実行するかは、サーバ200で決定されることもあるし、ロボット100で決定されることもある。
【0037】
ロボット100のモーションの多くは、複数の単位モーションを含む複合モーションとして構成される。たとえば、ロボット100がオーナーに近づくとき、オーナーの方に向き直る単位モーション、手を上げながら近づく単位モーション、体を揺すりながら近づく単位モーション、両手を上げながら着座する単位モーションの組み合わせとして表現され
てもよい。このような4つのモーションの組み合わせにより、「オーナーに近づいて、途中で手を上げて、最後は体をゆすった上で着座する」というモーションが実現される。モーションファイルには、ロボット100に設けられたアクチュエータの回転角度や角速度などが時間軸に関連づけて定義される。モーションファイル(アクチュエータ制御情報)にしたがって、時間経過とともに各アクチュエータを制御することで様々なモーションが表現される。
【0038】
先の単位モーションから次の単位モーションに変化するときの移行時間を「インターバル」とよぶ。インターバルは、単位モーション変更に要する時間やモーションの内容に応じて定義されればよい。インターバルの長さは調整可能である。
以下、いつ、どのモーションを選ぶか、モーションを実現する上での各アクチュエータの出力調整など、ロボット100の行動制御に関わる設定のことを「行動特性」と総称する。ロボット100の行動特性は、モーション選択アルゴリズム、モーションの選択確率、モーションファイル等により定義される。
【0039】
モーション格納部232は、モーションファイルのほか、各種のイベントが発生したときに実行すべきモーションを定義するモーション選択テーブルを格納する。モーション選択テーブルにおいては、イベントに対して1以上のモーションとその選択確率が対応づけられる。
【0040】
個人データ格納部218は、ユーザの情報を格納する。具体的には、ユーザに対する親密度とユーザの身体的特徴・行動的特徴を示すマスタ情報を格納する。年齢や性別などの他の属性情報を格納してもよい。
【0041】
ロボット100は、ユーザごとに親密度という内部パラメータを有する。ロボット100が、自分を抱き上げる、声をかけてくれるなど、自分に対して好意を示す行動を認識したとき、そのユーザに対する親密度が高くなる。ロボット100に関わらないユーザや、乱暴を働くユーザ、出会う頻度が低いユーザに対する親密度は低くなる。
【0042】
データ処理部202は、位置管理部208、認識部212、動作制御部222、親密度管理部220および状態管理部244を含む。
位置管理部208は、ロボット100の位置座標を特定する。状態管理部244は、充電率や内部温度、プロセッサ122の処理負荷などの各種物理状態など各種内部パラメータを管理する。また、状態管理部244は、ロボット100の感情(寂しさ、好奇心、承認欲求など)を示すさまざまな感情パラメータを管理する。これらの感情パラメータは常に揺らいでいる。感情パラメータに応じてロボット100の移動目標地点が変化する。たとえば、寂しさが高まっているときには、ロボット100はユーザのいるところを移動目標地点として設定する。
【0043】
時間経過によって感情パラメータが変化する。また、後述の応対行為によっても各種感情パラメータは変化する。たとえば、オーナーから「抱っこ」をされると寂しさを示す感情パラメータは低下し、長時間にわたってオーナーを視認しないときには寂しさを示す感情パラメータは少しずつ増加する。
【0044】
認識部212は、外部環境を認識する。外部環境の認識には、温度や湿度に基づく天候や季節の認識、光量や温度に基づく物陰(安全地帯)の認識など多様な認識が含まれる。ロボット100の認識部156は、内部センサ128により各種の環境情報を取得し、これを一次処理した上でサーバ200の認識部212に転送する。
【0045】
具体的には、ロボット100の認識部156は、画像から移動物体、特に、人物や動物
に対応する画像領域を抽出し、抽出した画像領域から移動物体の身体的特徴や行動的特徴を示す特徴量の集合として「特徴ベクトル」を抽出する。特徴ベクトル成分(特徴量)は、各種身体的・行動的特徴を定量化した数値である。たとえば、人間の目の横幅は0~1の範囲で数値化され、1つの特徴ベクトル成分を形成する。人物の撮像画像から特徴ベクトルを抽出する手法については、既知の顔認識技術の応用である。ロボット100は、特徴ベクトルをサーバ200に送信する。
【0046】
サーバ200の認識部212は、ロボット100の内蔵カメラによる撮像画像から抽出された特徴ベクトルと、個人データ格納部218にあらかじめ登録されているユーザ(クラスタ)の特徴ベクトルと比較することにより、撮像されたユーザがどの人物に該当するかを判定する(ユーザ識別処理)。また、認識部212は、ユーザの表情を画像認識することにより、ユーザの感情を推定する。認識部212は、人物以外の移動物体、たとえば、ペットである猫や犬についてもユーザ識別処理を行う。
【0047】
認識部212は、ロボット100になされたさまざまな応対行為を認識し、快・不快行為に分類する。認識部212は、また、ロボット100の行動に対するオーナーの応対行為を認識することにより、肯定・否定反応に分類する。
快・不快行為は、ユーザの応対行為が、生物として心地よいものであるか不快なものであるかにより判別される。たとえば、抱っこされることはロボット100にとって快行為であり、蹴られることはロボット100にとって不快行為である。肯定・否定反応は、ユーザの応対行為が、ユーザの快感情を示すものか不快感情を示すものであるかにより判別される。抱っこされることはユーザの快感情を示す肯定反応であり、蹴られることはユーザの不快感情を示す否定反応である。
【0048】
サーバ200の動作制御部222は、ロボット100の動作制御部150と協働して、ロボット100のモーションを決定する。サーバ200の動作制御部222は、ロボット100の移動目標地点とそのための移動ルートを作成する。動作制御部222は、複数の移動ルートを作成し、その上で、いずれかの移動ルートを選択してもよい。
【0049】
動作制御部222は、モーション格納部232の複数のモーションからロボット100のモーションを選択する。各モーションには状況ごとに選択確率が対応づけられている。たとえば、オーナーから快行為がなされたときには、モーションAを20%の確率で実行する、気温が30度以上となったとき、モーションBを5%の確率で実行する、といった選択方法が定義される。
【0050】
親密度管理部220は、ユーザごとの親密度を管理する。上述したように、親密度は個人データ格納部218において個人データの一部として登録される。快行為を検出したとき、親密度管理部220はそのオーナーに対する親密度をアップさせる。不快行為を検出したときには親密度はダウンする。また、長期間視認していないオーナーの親密度は徐々に低下する。
【0051】
(ロボット100)
ロボット100は、通信部142、データ処理部136、データ格納部148、内部センサ128および駆動機構120を含む。
通信部142は、通信機126(
図3参照)に該当し、外部センサ114、サーバ200および他のロボット100との通信処理を担当する。データ格納部148は各種データを格納する。データ格納部148は、記憶装置124(
図3参照)に該当する。データ処理部136は、通信部142により取得されたデータおよびデータ格納部148に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部136は、プロセッサ122およびプロセッサ122により実行されるコンピュータプログラムに該当する。データ
処理部136は、通信部142、内部センサ128、駆動機構120およびデータ格納部148のインタフェースとしても機能する。
【0052】
データ格納部148は、ロボット100の各種モーションを定義するモーション格納部160を含む。
ロボット100のモーション格納部160には、サーバ200のモーション格納部232から各種モーションファイルがダウンロードされる。モーションは、モーションIDによって識別される。前輪102を収容して着座する、腕106を持ち上げる、2つの前輪102を逆回転させることで、あるいは、片方の前輪102だけを回転させることでロボット100を回転行動させる、前輪102を収納した状態で前輪102を回転させることで震える、ユーザから離れるときにいったん停止して振り返る、などのさまざまなモーションを表現するために、各種アクチュエータ(駆動機構120)の動作タイミング、動作時間、動作方向などがモーションファイルにおいて時系列定義される。
データ格納部148には、個人データ格納部218からも各種データがダウンロードされてもよい。
【0053】
データ処理部136は、認識部156および動作制御部150を含む。
ロボット100の動作制御部150は、サーバ200の動作制御部222と協働してロボット100のモーションを決める。一部のモーションについてはサーバ200で決定し、他のモーションについてはロボット100で決定してもよい。また、ロボット100がモーションを決定するが、ロボット100の処理負荷が高いときにはサーバ200がモーションを決定するとしてもよい。サーバ200においてベースとなるモーションを決定し、ロボット100において追加のモーションを決定してもよい。モーションの決定処理をサーバ200およびロボット100においてどのように分担するかはロボットシステム300の仕様に応じて設計すればよい。
【0054】
ロボット100の動作制御部150は選択したモーションを駆動機構120に実行指示する。駆動機構120は、モーションファイルにしたがって、各アクチュエータを制御する。
【0055】
動作制御部150は、親密度の高いユーザが近くにいるときには「抱っこ」をせがむ仕草として両方の腕106をもちあげるモーションを実行することもできるし、「抱っこ」に飽きたときには左右の前輪102を収容したまま逆回転と停止を交互に繰り返すことで抱っこをいやがるモーションを表現することもできる。駆動機構120は、動作制御部150の指示にしたがって前輪102や腕106、首(頭部フレーム316)を駆動することで、ロボット100にさまざまなモーションを表現させる。
【0056】
ロボット100の認識部156は、内部センサ128から得られた外部情報を解釈する。認識部156は、視覚的な認識(視覚部)、匂いの認識(嗅覚部)、音の認識(聴覚部)、触覚的な認識(触覚部)が可能である。
【0057】
認識部156は、移動物体の撮像画像から特徴ベクトルを抽出する。上述したように、特徴ベクトルは、移動物体の身体的特徴と行動的特徴を示すパラメータ(特徴量)の集合である。移動物体を検出したときには、ニオイセンサや内蔵の集音マイク、温度センサ等からも身体的特徴や行動的特徴が抽出される。これらの特徴も定量化され、特徴ベクトル成分となる。認識部156は、特許文献2等に記載の既知の技術に基づいて、特徴ベクトルからユーザを特定する。
【0058】
検出・分析・判定を含む一連の認識処理のうち、ロボット100の認識部156は認識に必要な情報の取捨選択や抽出を行い、判定等の解釈処理はサーバ200の認識部212
により実行される。認識処理は、サーバ200の認識部212だけで行ってもよいし、ロボット100の認識部156だけで行ってもよいし、上述のように双方が役割分担をしながら上記認識処理を実行してもよい。
【0059】
ロボット100に対する強い衝撃が与えられたとき、認識部156はタッチセンサおよび加速度センサによりこれを認識し、サーバ200の認識部212は、近隣にいるユーザによって「乱暴行為」が働かれたと認識する。ユーザがツノ112を掴んでロボット100を持ち上げるときにも、乱暴行為と認識してもよい。ロボット100に正対した状態にあるユーザが特定音量領域および特定周波数帯域にて発声したとき、サーバ200の認識部212は、自らに対する「声掛け行為」がなされたと認識してもよい。また、体温程度の温度を検知したときにはユーザによる「接触行為」がなされたと認識し、接触認識した状態で上方への加速度を検知したときには「抱っこ」がなされたと認識する。ユーザがボディ104を持ち上げるときの物理的接触をセンシングしてもよいし、前輪102にかかる荷重が低下することにより抱っこを認識してもよい。
まとめると、ロボット100は内部センサ128によりユーザの行為を物理的情報として取得し、サーバ200の認識部212は快・不快を判定する。また、サーバ200の認識部212は特徴ベクトルに基づくユーザ識別処理を実行する。
【0060】
サーバ200の認識部212は、ロボット100に対するユーザの各種応対を認識する。各種応対行為のうち一部の典型的な応対行為には、快または不快、肯定または否定が対応づけられる。一般的には快行為となる応対行為のほとんどは肯定反応であり、不快行為となる応対行為のほとんどは否定反応となる。快・不快行為は親密度に関連し、肯定・否定反応はロボット100の行動選択に影響する。
【0061】
認識部156により認識された応対行為に応じて、サーバ200の親密度管理部220はユーザに対する親密度を変化させる。原則的には、快行為を行ったユーザに対する親密度は高まり、不快行為を行ったユーザに対する親密度は低下する。
【0062】
サーバ200の各機能は、その機能を実現するためのプログラムがメモリにロードされ実体化(インスタンス化)することで実現される。サーバ200の処理能力により、ロボット100による各種処理を補う。サーバ200は、ロボット100のリソースとして利用できる。サーバ200のリソースをどのように利用するかはロボット100からのリクエストに応じて動的に決められる。たとえば、ロボット100において、多数のタッチセンサからの検出値に応じて複雑なモーションを連続的に生成する必要がある場合、ロボット100におけるプロセッサ122の処理をモーションの選択・生成に優先的に割り当て、周囲の状況を画像認識するための処理はサーバ200の認識部212でおこなうとしてもよい。このように、ロボット100とサーバ200の間でロボットシステム300の各種処理を分散化できる。
【0063】
単一のサーバ200にて複数のロボット100を制御することもできる。この場合、サーバ200の各機能は、ロボット100ごとに独立して実体化される。たとえば、サーバ200はロボット100Aのための認識部212(インスタンス・オブジェクト)とは別にロボット100Bのための認識部212を用意してもよい。
【0064】
以上の基本構成を前提として、次に、本実施形態におけるロボット100の実装について、特に、本実装の特徴と目的および基本構成との相違点を中心として説明する。
【0065】
[SLAM]
本実施形態のロボット100は全天周カメラ113によって定期的に周辺を撮像することにより多数の撮像画像(静止画像)を取得する。ロボット100は、撮像画像に基づく
記憶(以下、「画像記憶」とよぶ)を形成する。
【0066】
画像記憶は、複数のキーフレームの集合体である。キーフレームは、撮像画像における特徴点(特徴量)の分布情報である。本実施形態のロボット100は、画像特徴量を用いたグラフベースのSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術、より具体的には、ORB(Oriented FAST and Rotated BRIEF)特徴量に基づくSLAM技術によりキーフレームを形成する(特許文献3参照)。
【0067】
ロボット100は、移動しながらキーフレームを定期的に形成することにより、キーフレームの集合体、いいかえれば、画像特徴分布として画像記憶を形成する。ロボット100は、現在地点において取得したキーフレームと、既に保有している多数のキーフレームを比較することにより、現在地点を推定する。すなわち、ロボット100は、実際に視認している撮像画像とかつて視認した撮像画像(記憶)を比較し、自らの現在の状況と過去の記憶を整合させることで「空間認識」を行う。特徴点の集合体として形成される画像記憶は、いわゆるマップ(地図)となる。ロボット100は、現在地点を推定ながら移動しつつ、マップを更新する。
【0068】
基本構成のロボット100は、キーフレームではなく外部センサ114により位置を認識することが前提となっている。本実施形態のロボット100は、キーフレームのみに基づいて場所を認識するものとして説明する。
【0069】
本実施形態におけるロボット100は、各種モードを設定するための「モード設定部」を備える。
【0070】
<赤ちゃんの見守り>
図5から
図7は、複数のロボット100が赤ちゃんを見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
まず、子供部屋では、バウンサー(Bouncer)のなかで見守りの対象である赤ちゃん(以下「対象者」という)が眠っている(
図5A)。
この家には2台のロボット100がいる。2台のロボット100は、それぞれ画像認識を介して赤ちゃん(乳児)の存在及び位置を認識する。2台のロボット100は、相互通信を介して赤ちゃんの位置を共有してもよい。2台のロボット100は、赤ちゃんの位置から、それぞれのロボットの注視点を決定する。2台のロボット100は、相互通信を介して、互いの注視点が同一または所定の範囲内となるように、注視点を補正する。当該決定されたそれぞれの注視点に頭部を向けるように2台のロボット100が移動や部位を制御することで、2台のロボット100が赤ちゃんを覗き込むような動作が実現される(
図5B)。
2台のロボット100のうちの一方のロボット100Aは、赤ちゃんの位置に応じてロボット100Aの頭部を赤ちゃんの存在方向に向けることで、赤ちゃんを見守り続ける。ロボット100Aは赤ちゃんのそばから離れないように、赤ちゃんとの距離を一定に保ち続ける。他方のロボット100Bは、ロボット100Aとの通信を介して役割分担をすることで、しばらくすると見守りをやめて遊び始めているような動作を実行する(
図5C)。
お母さんは、ロボット100たちに赤ちゃんの見守りを任せて台所で料理を作っている(
図5D)。
【0071】
お母さんは、台所にスマートフォン(通信端末)を置いている(
図6A)。ロボット100A(見守り中)は、全天周カメラ113により赤ちゃんを撮像し、撮像画像をライブ映像としてスマートフォンに送り続ける。スマートフォンでは、全天周画像のうち、赤ちゃんが写っている領域を表示する。この時、全天周画像のゆがみを平面に表示するように
補正された画像がスマートフォンに表示されてもよい。
【0072】
ここで、突然、赤ちゃんが泣き出す(
図6B)。
遊んでいた100Bは、マイクを介して赤ちゃんの泣き声を聞くと(音声を収集すると)、赤ちゃんの存在位置に基づいて赤ちゃんに近づく(
図6C)。ロボット100Bは、干渉モーションを実行する。ロボット100Bは、泣声のような音声を収集したという条件、画像解析によって赤ちゃんが泣いているなどの特定の状態にあると判定されたという条件の少なくとも1つが満たされた場合に、干渉モーションを実行する。干渉モーションは、赤ちゃんの気を引くような所定の音声を出力する、子守歌のような音声を出力する、腕106を振る、頭や体をゆらす、バウンサーを揺らす、などのあやすためのモーションである。干渉モーションにより赤ちゃんの気を紛らわせる。また、干渉モーションを実行することにより、ロボット100Bが泣いている赤ちゃんをなんとかしようと奮闘している、という印象を第三者にもたせることができる。ロボットBに代えて又は加えて、ロボットAが干渉モーションを実行してもよい。
ロボット100Aから中継されるライブ映像により、赤ちゃんの泣いている姿がお母さんのスマートフォンに映し出される(
図6D)。
赤ちゃんが泣きだす前後の動画(赤ちゃんが泣きだす時点の所定時間前から所定時間後までの動画)が、HDDなどに記憶されることにより永続化されてもよい。
【0073】
お母さんは、驚いて思わずスマートフォンを手にとる(
図7A)。
お母さんは慌てて子供部屋に行き、赤ちゃんのもとに駆けつける(
図7B)。
お母さんは赤ちゃんを抱っこする(
図7C)。
ロボット100たちはお母さんと赤ちゃんのそばにいてお母さんたちを見つめる。2台のロボットは、画像解析によって、お母さん、赤ちゃんのそれぞれの存在位置を認識し、当該それぞれの存在位置から注視点を設定する。2台のロボット100は、通信を介して注視点を共有及び必要に応じて互いの注視点が同一または所定の範囲内となるように補正する。2台のロボット100がそれぞれの注視点に頭部を向ける動作を実行する。この結果、2台のロボット100が並んでお母さんと赤ちゃんを見つめることにより、ロボット100たちが赤ちゃんの心配をしている、という印象をお母さんにもたせることができる。
お母さんに抱っこされた赤ちゃんは再び眠りに落ちる(
図7D)。
ロボット100たちは、赤ちゃんが眠りに落ちたことを確認するとバウンサーのそばから離れる(
図7E)。
【0074】
ロボット100は、お母さんから「見守りモード」に入力スイッチやスマートフォンなどを介して手動で設定されたとき、上述した見守り行動を開始するために、赤ちゃんを捜索してもよい。ロボット100は、赤ちゃんがバウンサーにいることを検出したとき、モード設定部は自動的に見守りモードに設定してもよい。ロボット100は、画像認識により乳幼児を検出し、かつその乳幼児の近くに保護者がいない場合に、自動的に見守りモードに移行してもよい。その乳幼児の近くに保護者がいない場合とは、例えば、所定以上の年齢の人間の画像が検出されない場合、または乳幼児に関連付けられた人物の画像が検出されない場合などであってもよい。また、複数のロボット100が同じ部屋にいるときには、すべてのロボット100を見守りモードに設定してもよいし、一部のロボット100だけを見守りモードに設定してもよい。
【0075】
ロボット100は、撮像画像において「赤ちゃん」が検出され、他のユーザあるいは母親や父親などの特定のユーザが検出されていないことを見守り条件として、見守りモードに移行してもよい。
【0076】
見守り中のロボット100は、見守り対象である赤ちゃんを視認可能な範囲内に行動範
囲を限定してもよい。あるいは、ロボット100は、見守り中においては赤ちゃんのいる部屋から出ないとしてもよい。少なくとも、ロボット100は、見守り中は赤ちゃんから目を離さない(例えば、常に赤ちゃんをカメラの画角に捉える)ことが望ましい。ロボット100は、全天周カメラ113、マイク及び温度センサなどの外部環境を測定するセンサを用いて対象者の状態に注視する。赤ちゃんが動き回る場合には、ロボット100は、全天周カメラ113、マイク及び温度センサなどの外部環境を測定するセンサを用いて、赤ちゃんの位置を認識し、自己の方向を赤ちゃんの方向を向くように制御してもよい。また、ロボット100は、赤ちゃんが自己の所定の距離内に入った場合には、車輪を収容するなどして、赤ちゃんと接触する箇所を削減してもよい。
【0077】
ロボット100は、所定の警戒条件が成立したときには、赤ちゃんに積極的に関わるためのモーションを実行する。あるいは、お母さんのスマートフォンなど他の通信端末に「警戒情報」を送信してもよい。警戒条件は任意に設定可能であるが、たとえば、赤ちゃん(見守りの対象者)が泣いたとき、階段に近づいたとき、外に出ようとするとき、小さなものをいじっているとき、ころんだときなど、赤ちゃんに危険がせまる状況が考えられる。積極的に関わるためのモーションは、前述した干渉モーションであってもよい。
【0078】
ロボット100Aは、見守りモードに移行するとき、見守りモードに移行した旨をロボット100Bに通知してもよい。通知を受けたとき、ロボット100Bも見守りモードに移行してもよいし、ロボット100Aや赤ちゃんの位置に近づいてもよい。複数のロボット100が赤ちゃんのそばに集まることで、ロボット100たちが赤ちゃんのことを気にかけているかのような行動表現が可能となる。
【0079】
このとき、ロボット100の動作音で赤ちゃんを起こさないように、ロボット100は、駆動機構120(特に、移動や姿勢調整に関わる機構)の動作量を通常モードの場合よりも抑制し、通常時より動作音をたてないように静粛に動作する。赤ちゃんが目を覚ましているときに見守りモードに移行した場合、ロボットBは赤ちゃんの側で、赤ちゃんの興味を引くような特定のモーション、たとえば、バウンサーの周りを走り回るモーションやダンスを実行してもよい。例えば、音声解析で赤ちゃんの音声を検出するという条件や、画像解析で赤ちゃんが眼を開けている画像を検出したことなどを条件を充足する場合に赤ちゃんが目を覚ましていると判定されうる。赤ちゃんが寝ているときにはそのようなモーションの実行はしない。ロボットBは、見守り対象者の状態に応じて、適切なモーションを実行する。赤ちゃんも、多数のロボット100が自分の周りに集まってくれれば、安心すると考えられる。
【0080】
ロボット100は、マイクなどを介して、お母さんなどの特定のユーザから「赤ちゃんを見ていてね」など特定の音声コマンドを受け付けたときに見守りモードに移行してもよい。ロボット100は見守り開始時には、画像解析などで検出した赤ちゃんの位置に基づいて、赤ちゃんの周りをまわる、赤ちゃんの方を向く、赤ちゃんに手358を向ける、などの確認行動を実行してもよい。お母さん(指示者)は、確認行動により、ロボット100が見守りの対象者を間違えていないか判断できる。お母さんは、正しければ「任せたよ」などの肯定的返事、間違っていれば「違うよ」などの否定的返事を発声すると考えられる。このため、ロボット100は、確認行動後にマイクで収集されたお母さんの返事に基づいて見守りの対象が正しいか否かを判断してもよい。
【0081】
見守り中には、ロボット100は赤ちゃんを覗き込むなど、ロボット100の視線を赤ちゃんに維持する。赤ちゃんはロボット100に見守られていることを信じて安心する。お母さんはロボット100が健気に赤ちゃんを見守り続けている姿をみて、ロボット100に対する親愛の情、信頼の情をかきたてられる。見守り行動は、「ロボット100が一生懸命仕事をしている」というユーザ(目撃者)に対するアピールとしての意味もある。
【0082】
上述したように、ロボット100Aの見守り中に、ロボット100Bは自由に遊んでもよい。ただし、ロボット100Bの行動範囲は、赤ちゃんまたはロボット100Aを視認可能な範囲に制限される。ロボット100Aは赤ちゃんのアップのライブ画像(接写画像)をスマートフォンに送信し、ロボット100Bは赤ちゃんを見守るロボット100Aのライブ画像(広角画像)をスマートフォンに送信してもよい。ロボット100Bは、更に、ロボット100Aによる赤ちゃんの撮影の邪魔にならないように行動範囲を制限することが望ましい。たとえば、ロボット100Bは、赤ちゃんとロボット100Aの位置を特定し、赤ちゃんとロボット100Aとを結ぶ直線上に被らないように行動すればよい。また、ロボット100Aが、撮影中の画像を画像認識することにより、赤ちゃんの姿がロボット100Bにより認識できなくなった場合、ロボット100Aがロボット100Bに対して移動を要求する命令を通知してもよい。その命令に応じて、ロボット100Bは移動する。
【0083】
赤ちゃんが所定の状態になったことを画像解析や音声解析で検出した場合、たとえば、赤ちゃんが泣き始めたときには、ロボット100Aはライブ映像に加えて、赤ちゃんの状態が変わったことを通知する。ロボット100Bは干渉モーションを実行してもよい。ロボット100Aは、「赤ちゃんが泣いている」「赤ちゃんがぐずり始めた」などの警戒条件に関連付けられた状態を端的に示すメッセージをスマートフォンに通知する。ロボット100Bは、干渉モーションとして、ダンスをしてもよいし、内蔵のオーディオプレイヤにより子守唄などの音楽を流してもよい。いずれにしてもロボット100Bは赤ちゃんの気をそらす行動を実行することで赤ちゃんをあやす。お母さんが戻ってくれば(
図7B参照)、ロボット100Bは干渉モーションを中止する。具体的には、ロボット100Bは、「お母さん」を撮像画像において確認できたとき、干渉モーションを中止する。
お母さんが「ありがとう」「もう大丈夫」などの見守り行動の完了を指示するキーワード(以下「完了コマンド」という)を発音したことをマイクなどを介して認識したときに、ロボット100Bは干渉モーションを中止するとしてもよい。このとき、見守り行動をロボット100Aに指示した本人から、完了コマンドが発声されたか否かを判定し、本人からの指示であれば見守り行動を完了することとしてもよい。
【0084】
ロボット100は、撮像画像から赤ちゃんを画像認識する。「赤ちゃん」の検出方法は、既知の顔認識技術の応用により実現すればよい。また、ロボット100は、赤ちゃんが移動しているときには、見守り中であるか否かに関わらず常に赤ちゃんを視認可能となるように移動方向を調整してもよい。
【0085】
ロボット100Aとロボット100Bは交代で見守りを実行してもよい。たとえば、ロボット100Aが10分間の見守りを行ったとき、ロボット100Bが見守りモードに移行し、ロボット100Aは自由行動をしてもよい。複数のロボット100が交代で見守る方が、赤ちゃんを退屈させないと考えられる。また、ロボット100Aとロボット100Bが協力して見守っているかのような感覚を第三者にもたせやすくなる。
【0086】
ロボット100が赤ちゃんを見守ってくれれば、育児に忙しいお母さんでも、安心して家事に専念しやすくなる。赤ちゃんから離れた場所で洗濯などの家事をしていると、赤ちゃんが泣いていてもすぐに気づかないことがある。泣いていることに気づかないうちに赤ちゃんは本格的に泣き始めてしまうことがある。このような状況はお母さんにとって大変な負担を強いられる。ロボット100が赤ちゃんを見守ることで、赤ちゃんの「ぐずり」など大泣きの予兆をすばやく察知できる。
【0087】
お母さんだけでなくロボット100も育児に参加する。また、ロボット100に見守られながら育った赤ちゃんは、将来的にはロボット100に対して親近感ももつのではない
かと期待される。
【0088】
<お留守番>
図8から
図11は、ロボット100がお留守番をするときの行動シーンを説明するための模式図である。
2台のロボット100A、100Bと1人の女性オーナーが暮らす家庭を想定する。女性オーナーは仕事にでかける(
図8A)。このとき、女性オーナーは近くにいたロボット100Aに「お留守番してね」と声をかける。
ロボット100Aはこの言葉を聞く(マイクを介して音声を収集する)ことで、女性オーナーが出かけることを認識し「留守番モード」に移行する(
図8B)。
女性オーナーは玄関から出かける(
図8C)。ロボット100Aは、玄関まで移行し、所定モーションを実行することで女性オーナーをお見送りする。
【0089】
一方、部屋にいたロボット100Bは、ロボット100Aを追いかけて遊びだす(
図8D)。なお、女性オーナーが出かけるときにはロボット100Aとロボット100Bの双方がお見送りをしてもよいし、女性オーナーに対して親密度が所定値以上となっているロボット100のみがお見送りをするとしてもよい。
【0090】
しばらくすると、留守番中に玄関の扉が開く(
図9A)。
音声解析または画像解析等によって玄関の扉があいたことを認識した場合には、2台のロボット100は女性オーナーの帰宅を「期待」して玄関に移動する(
図9B)。
しかし、現れたの(画像解析等によって識別された人物)は女性オーナーではなく、大きい袋をもった見知らぬ人物(不審者)であるとする(
図9C)。
このとき、ロボット100は、不審者に十分近づいて不審者を撮影する(
図9D)。ロボット100は警戒モードに移行する。警戒モードに移行すると、ロボット100たちは、当該不審者の近くに移動し、当該不審者の撮影を続けてもよい。
【0091】
女性オーナーはオフィスで仕事をしている。ロボット100は、不審者の撮影画像を女性オーナーのスマートフォンに送信する(
図10A)。
就業中の女性オーナーは、スマートフォンでロボット100が不審者を見つけたことを知る(
図10B)。この場合、不審者だと思ったのは女性オーナーの母親だったとする。ロボット100たちは女性オーナーの母親を知らない。女性はスマートフォンからロボット100たちに「不審者ではない」と通知する。女性オーナーは「お母さんだから心配ないよ」と音声によりロボット100に不審者でない旨を伝えてもよい。ロボット100は警戒モードを解除する。
母親は手料理を作る(
図10C)。
【0092】
女性オーナー(娘)は帰宅し、母親と手料理を食べながら談笑する(
図11A)。
二人のそばでロボット100たちが遊んでいる(
図11B、
図11C)。
【0093】
ロボット100は、画像解析や音声認識を介して、留守番中に不審者(過去に視認したことがない人や、親密度が閾値以下の人)をみつけたとき、不審者を撮影し、女性オーナー(特定ユーザ)のスマートフォンに不審者の撮像画像を送信する。このような制御方法によれば、女性オーナーは留守宅の警備をロボット100に安心して任せることができる。このほかにも、地震は発生してモノが壊れた、ガス漏れが起きた、宅配業者などの来客(インターフォンからの呼びかけ)など、画像解析や音声認識を介して、ロボット100は留守中に生じたさまざまなイベントを検出し、当該イベントを知らせる内容をオーナーのスマートフォンに通知する。また、ロボット100は、留守中のイベントをライフログとして記録しておき、オーナーは帰宅後にスマートフォンを介してライフログを確認することで留守中の出来事を確認してもよい。
【0094】
ロボット100もモード設定部は、ユーザからの操作入力に基づいて留守番モードを設定してもよい。ロボット100は、ユーザが玄関から出かけるという特定のイベントを検出したとき、自動的に留守番モードに設定変更してもよい。あるいは、ロボット100は、一定時間以上、室内においてユーザを視認できなかったときには自動的に留守番モードに設定変更してもよい。
【0095】
ロボット100は、警戒モードにおいては、不審者を撮影可能な位置に行動範囲を設定してもよい。不審者の行動を見逃さないためである。また、不審者からの暴力を防ぐため、不審者から離れて行動するとしてもよい。不審者通報をしたあと、ユーザから「不審者ではない」旨の通知をうけたとき、ロボット100は警戒モードを解除し、留守番モードに戻る。このあとは、ロボット100は未確認人物(元・不審者)に対して通常の関わり方をしてもよい。また、未確認人物の姿を記憶し、親密度等のパラメータの管理をしてもよい。未確認人物になついてもよい。
図8から
図11に示した例の場合、母親はロボット100に当初は警戒されるけれども、女性オーナー(娘)からロボット100に対して承認通知がなされたあとは、ロボット100は母親にまとわりつきはじめる。母親は、ロボット100に一転して受け入れられた、歓迎されていると感じることができる。
【0096】
留守番モードにおいては、遠隔地にいるユーザ(オーナー)は、スマートフォンを介してロボット100に室内確認指示を送信してもよい。ロボット100は室内確認指示を受信したときには、SLAMに基づいて生成されたマップにしたがい、室内を巡回する。このとき、ロボット100は撮像画像をユーザのスマートフォンに送信してもよいし、異常事象の有無を通知してもよい。ユーザは、室内確認指示を送信することにより、いつでも自宅の様子を確認できる。
【0097】
<遠隔操作>
図12から
図14は、外出中のユーザがロボット100を遠隔操作するときの行動シーンを説明するための模式図である。
留守宅では2台のロボット100A、100Bがお留守番をしている。この家には猫もいる(
図12A)。
一方、残りの家族はロボット100たちと猫を残して街にでかける(
図12B)。 男の子は浮かない顔をしている(
図12C)。
男の子はスマートフォン(携帯端末)を取り出す。男の子はスマートフォンをなにやら操作し始める(
図12D)。
【0098】
留守宅では2台のロボット100が遊んでいる(
図13A)。
ロボット100Aが動きだすと、ロボット100Bはロボット100Aについていく(
図13B)。ロボット100Aとロボット100Bは追いかけっこをして遊んでいる。
母親は男の子(息子)の様子が気にかかる(
図13C)。
男の子は出かけるとき、猫にあまり元気がなかったことを気にしている(
図13D)。
【0099】
男の子は、スマートフォンからロボット100に「猫の様子を確認して」という命令を送信する。ロボット100A、ロボット100Bは、命令に示された地点又は対象を撮影するために移動し、適宜撮影を行う。スマートフォンにはロボット100A、ロボット100Bの撮像画像が送られてくる。キャットツリーで猫は元気に遊んでいる(
図14A)。
猫の元気な姿をみて家族は安心する(
図14B)。
キャットタワーの上で遊ぶ猫をロボット100が撮影する。ロボット100は猫をアップで撮影し、猫はロボット100を見つめる(
図14C、
図14D)。
【0100】
このように、ユーザはスマートフォンからロボット100に各種の指示を送ることがで
きる。特に、ユーザは、ロボット100に室内確認を命令できる。上記実施例のように「猫の様子を確認して」という命令を送信した場合、ロボット100は「猫」に相当するオブジェクトを撮影画像から検出し、猫を中心とした撮像画像をスマートフォンに送信する。このような命令は、音声コマンドであってもよいし、スマートフォンが備えるグラフィカルユーザインタフェースから入力されてもよい。ユーザは、ロボット100をラジオコントロールカーのように操作できてもよい(以下、このような操作方法を「遠隔操作」とよぶ)。
【0101】
ロボット100による撮像画像はスマートフォンで表示され、ユーザはスマートフォンにライブ中継される撮像画像のうちの特に見たい部分を拡大表示してもよい。ロボット100は、全天周画像そのものをスマートフォンに送信し、ユーザは全天周画像によりロボット100の「見たもの」を確認してもよい。
【0102】
ロボット100は、人間、猫、などの種だけでなく、「だれ」「どれ」という個体レベルまで認識できる。猫も、黒い猫と白い猫、大きい猫と小さい猫は別の猫として扱われる。また、ユーザによる猫への呼びかけに基づいてロボット100は猫の名前も学習する。例えば、音声解析により認識した猫の名前と、猫の名前を認識したときの撮像画像とから、猫の画像を抽出し、当該猫の画像を入力として猫の名前を出力するモデルを機械学習により生成してもよい。このようなモデルを用いることで、猫が複数いるときでも、ユーザが猫の名前を指定して命令すれば、ロボット100は指定された猫を撮影対象として選ぶことができる。ユーザは、あらかじめ猫の名前と猫の写真とをスマートフォンなどを介して登録しておいてもよい
【0103】
ユーザがロボット100Aを遠隔操作するとき、ロボット100Bはロボット100Aについて移動するとしてもよい。ユーザのスマートフォンにはロボット100Aからの撮像画像とロボット100Bからの撮像画像が送信される。ロボット100Aが猫を撮像するとき、ロボット100Aの近くにいるロボット100Bも全天周カメラ113により猫を撮像する。ユーザはロボット100Aを遠隔操作するだけで、ロボット100Aだけでなくロボット100Bからも猫の撮像画像を取得できる。ユーザはロボット100Aのみを遠隔操作することで、ロボット100Bも間接的に遠隔操作できる。これは、ロボット100Bに「追従機能」をもたせたためである。
【0104】
ユーザは、スマートフォンからロボット100を遠隔操作モードに設定できる。また、ユーザはスマートフォンからロボット100の遠隔操作モードを終了させることもできる。遠隔操作モードのロボット100は、目110の表示を変化させてもよい。たとえば、ロボット100は目110を赤目に変更してもよいし、目110にアイコンを表示させることにより「支配されている(遠隔操作されている)」ことを視覚的に表現してもよい。遠隔操作モードが終了すると、ロボット100は目110を通常の黒目表示に戻し、遠隔操作モード開始時の所在地点に戻る。遠隔操作モードが終了したときには、ロボット100は座り込んでもよいし、首を激しく振るなどして、「支配から脱して自我を取り戻した様子」を行動表現してもよい。
【0105】
遠隔モードのロボット100は感情パラメータや親密度を変化させない。
【0106】
遠隔操作モードに切り替わる際、ロボット100は、遠隔操作を要求した人の認証をおこなう。認証に成功した場合に限り、ロボット100は遠隔操作モードに切り替わる。認証は、アカウント名とパスワードによる一般的な認証方法や、遠隔操作に使用されるデバイスに予め電子証明書を登録しておき、電子証明書を有するデバイスからのアクセスだけを許可するとしてもよい。更に、スマートフォンなどの携帯端末に設けられているカメラやマイクなどを利用して、携帯端末を操作している人が、ロボット100のオーナーであ
ることを確認することで認証してもよい。また、遠隔モードを要求されたときに、周囲にいるユーザに対して遠隔モードへの切り替えを承認してもらうことにしてもよい。このように、遠隔モードを要求した人が、ロボット100のオーナーであることを十分確認することで、第三者による意図しない遠隔操作を防止できる。
【0107】
<高齢者の見守り>
図15から
図18は、複数のロボット100が高齢者を見守るときの行動シーンを説明するための模式図である。
高齢の父親が一人暮らしをしている。一人娘は父親から離れたところで暮らしている。父親の家には2台のロボット100がいる(
図15A)。
自宅リビングでは娘はスマートフォンを見ている(
図15B)。ロボット100たちは、父親との生活をライフログとして記録する。ライフログは、父親の周りではどんなことが起こっているかを父親のプライバシーに配慮したかたちで示す日記である。
娘はスマートフォンでライフログをチェックする(
図15C)。ライフログには、父親が何時に起きたか、朝食を食べたか、などの簡易な情報が含まれている。
一方、父親はロボット100を抱っこして可愛がっている(
図15D)。画像解析や音声解析や通信などを介して父親の許可を認識すれば、ロボット100は父親と遊んでいる姿の撮像画像を娘のスマートフォンに送信してもよい。たとえば、ロボット100Aが父親に抱っこされているときには、ロボット100Bがカメラマンとなってロボット100Aと父親を撮像し、その撮像画像を娘のスマートフォンに送信してもよい。
【0108】
娘は、リビングで父親がロボット100との生活を楽しんでいる様子を見て安心する(
図16A)。
【0109】
次に、娘がオフィスで働いている場面を想定する。娘はふとスマートフォンを取り出して父親のライフログをチェックする(
図16B)。
このライフログには父親についての記録がほとんどなかったとする。娘は父親のことが急に心配になる(
図16C)。
娘はオフィスの廊下から父親に電話をかける(
図16D)。
【0110】
電話からはすぐに父親のご機嫌な声が聞こえてくる(
図17A)。
父親は旅館にいる。風呂上がりのときにちょうど電話がかかってきたらしい(
図17B)。
父親は、友達と温泉に来ていたと娘に伝える(
図17C)。
娘は父親が温泉に行くことを知らなかったので事情を知って安心する(
図17D)。
【0111】
父と娘の会話が続く(
図18A、
図18B)。父親の自宅では2台のロボット100がお留守番をしている(
図18C)。
【0112】
ロボット100は、父親(見守り対象の高齢者)との生活で生じるさまざまなイベントをライフログとして記録する。このライフログには、起きた時間、いつもやっている体操を今日もしたか、など父親の日常における定例行動が記録される。娘は、ロボット100が提供するライフログを通して父親がいつもどおりの生活を送っているかを確認できる。
【0113】
父親とロボット100との関わりを示すイベントが所定時間以上発生しない(検出しない)ときには、ロボット100は娘のスマートフォンに対して異変通知を送信してもよい。たとえば、ロボット100が父親からしばらく触られていないとき、あるいは、お昼になっても父親が寝転んでいるときには異変通知を送信してもよい。父親が寝転んでいるかどうかは、画像解析や温度センサ解析などによって判定できる。ロボット100は、室内を積極的に動き回ることで父親の視認機会を増やすように行動してもよい。
【0114】
情報を抽象化したライフログにより、父親のプライバシーを守りながら、娘は父親の日常を確認できる。高齢者を見守りの対象とする場合には、ロボット100は常に高齢者を視認する必要はない。高齢者は自立した生活を送っており、ロボット100も基本的には自律行動をすればよい。高齢者とロボット100は適度な距離感を保つほうが好ましいと考えられる。見守り時に限らず、ロボット100はユーザが希望する場合には常にライフログを記録してもよい。ロボット100は高齢者の生活に異変が生じたときだけ娘に異変通知をすればよい。
【0115】
<嫉妬心の表現>
人は自分に向けられる愛情に対して無関心ではいられない。複数の人が同一の人に愛情を向けるとき、そこには嫉妬心が芽生えやすい。そこで、ロボット100Aとロボット100Bがユーザと暮らすとき、一方のロボット100は他方のロボット100に対する嫉妬心をユーザに感じさせる行動をとってもよい。
【0116】
たとえば、ロボット100Bがユーザに抱っこされているとき、状態管理部244はロボット100Aの感情パラメータの一種である承認欲求値(認められたいという欲求)を上昇させる。ロボット100Aの動作制御部150は、承認欲求値が高まると、ユーザに対して抱っこをせがむ。ロボット100Aはユーザをじっと見つめてもよいし、ユーザに近づいてもよいし、ユーザの周辺を徘徊することで抱っこを求めてもよい。ユーザが歩くと、ロボット100Aはユーザに追従して移動してもよい。承認欲求値の高まりが、あたかも嫉妬心をかきたてられたかのようなロボット100の行動特性として外的に表現される。
【0117】
ユーザがロボット100Bを抱っこし続けるときには、ロボット100Aはユーザにまとわりつくことで「強い嫉妬心」を積極的に表現してもよい。あるいは、ロボット100Aはユーザから離れた位置に移動して遠くから視線を向けることで消極的に嫉妬心を表現してもよい。こうした嫉妬心の表現態様は、ロボット100ごとの個性(初期設定された個性、あるいは、育成された個性)に応じて決められる。「拗ねる」ことで嫉妬心を表現してもよく、嫉妬を抱くイベントが発生してから一定の期間は、ユーザが近づいても離れるような行動表現をしてもよい。ロボット100は、一時的に抱っこを拒否することで「拗ねる」様子を行動表現してもよい。
【0118】
ロボット100は、親密度が高いときほど、嫉妬心を感じさせる行動をとるとしてもよい。たとえば、ロボット100AがユーザP1に対して高い親密度をもち、ユーザP2に対しては比較的低い親密度を有するとする。このとき、ユーザP1がロボット100Bを抱っこしたときには、ユーザP2がロボット100Bを抱っこしたときよりも承認欲求値を高めてもよい。このような制御方法によれば、自分が特に好きなユーザの愛情を独占したい、という独占欲をもっているかのような行動表現が可能となる。
【0119】
ロボット100は、自身の状態(感情パラメータ、親密度、イベントなど)を他のロボット100に通知してもよい(以下、このような通知を「状態通知」という)。状態通知に基づいて、ロボット100はお互いの状態を把握し合うことができてもよい。たとえば、ロボット100Aが「ユーザに抱っこされている」「ユーザに撫でてもらっている」「ユーザに着替えさせてもらった」などの状態をロボット100Bに状態通知することにより、ロボット100Bはロボット100Aの状態を把握できる。ロボット100Aが抱っこされるなどのイベントにより承認要求値(認められたい欲)が低下する一方、ロボット100Bの承認要求値が閾値以上の高い状態にあるとき、ロボット100Bは嫉妬心を表現する特有の行動特性を示す。
【0120】
本実施形態においては、サーバ200の状態管理部244が各ロボット100の感情パラメータをまとめて管理する。この場合には、状態管理部244は、ロボット100Aの感情パラメータの値を内部的にロボット100Bに通知してもよいし、ロボット100Aの感情パラメータに基づいてロボット100Bの感情パラメータを変化させてもよい。この場合には、ロボット100Aがロボット100Bから視認可能な位置にいることを条件としてロボット100Bの感情パラメータを変化させるとしてもよい。ロボット100Aの近くにいるロボット100Bが、ロボット100Aの感情の変化を視覚的に感じ取って自らの感情パラメータを変化させる様子を表現させるためである。
【0121】
感情パラメータに限らず、ロボット100Aは赤外線などの近距離無線通信によりロボット100Bに通知してもよい。この場合には、ロボット100Bはロボット100Aのそばにいて、かつ視線を遮る障害物がないときしかロボット100Aの状態通知を受けることができないので、「視認できるほど近くにいるときだけ状態を感じ取れる」という様子を表現できる。なお、ロボット100Bは、撮像画像により、ロボット100Aが抱っこされている、撫でられているなどのイベントを検出してもよい。ロボット100Bは、ロボット100Aに対する快行為を画像認識したとき、感情パラメータを変化させてもよい。
【0122】
ロボット100は、別のロボット100に嫉妬するだけでなく、ペットや子どもに嫉妬してもよい。たとえば、ユーザが猫を抱っこしたときにも、ロボット100の承認欲求値を高めてもよい。ユーザも、ロボット100に嫉妬させないためにロボット100の見ていないところでペットを可愛がる、あるいは、ペットとロボット100をまんべんなく可愛がる、などの気遣いをする必要が生じるかもしれない。ユーザがロボット100の気持ちを考える機会を積極的に作り出すことにより、ユーザのロボット100に対する愛着を深めることができる。
【0123】
本実施形態のロボット100は、会話をしなくても、その行動によってロボット100の気持ちを表現できる。ロボット100Aは、ロボット100Bの気持ち(感情パラメータ)を受信できてもよい。サーバ200は、ロボット100Bの感情パラメータの変化をロボット100Aの行動に反映させてもよい。たとえば、ロボット100Bの承認欲求値が急低下したときには(ロボット100Bに何かいいことがあったと考えられるときには)、ロボット100Aはロボット100Bの近くに移動するとしてもよい。ロボット100Aは、ロボット100Bの承認欲求が満たされていることを通知されたとき、自らの承認欲求値(自分も認められたいという気持ち)を高めてもよい。このような制御方法によれば、ユーザがこっそりとロボット100Bをかわいがったときでも、ロボット100Aが何かを感づいたかのような行動表現を実現できる。いわば、ロボット100同士でテレパシーが通じ合っているかのような不思議な行動表現を実現できる。
【0124】
<複数のロボットが同じものを見つめる>
ロボット100Aとロボット100Bは同一対象を継続して見つめ続けてもよい。たとえば、ロボット100Aがくつろいでいるユーザを見つめるとき、ロボット100Bも同一のユーザを見つめてもよい。ロボット100Bは、ロボット100Aとの通信を介して、または画像解析を介して、ロボット100Aがくつろいでいるユーザを見つめていること(ロボット100Aの頭部の向きがユーザの存在方向であること)を検出してもよい。ロボットBは、ロボットAの近くに移動するなどしてからユーザを見つめてもよい。ユーザは複数の視線を感じるため、ロボット100たちが自分に強い興味をもっていると感じることができる。ユーザがロボット100たちを長時間にわたってかまっていないとき、ロボット100Aとロボット100Bはユーザを同時に見つめることで「かかわり」を無言で求めてもよい。
【0125】
ロボット100AはユーザP1に所定値以上の高い親密度を有し、ロボット100BもユーザP1に対して所定値以上の高い親密度を有するとする。ロボット100は、親密度の高いユーザほど見つめる機会が多い。このため、上記状況においては、ロボット100Aとロボット100Bがはからずも同時にユーザP1を見つめる機会が生じる。ロボット100Aは、ユーザP1を見つめていることをロボット100Bに状態通知してもよい。ロボット100Bは、自身がユーザP1を見つめているときにロボット100Aから「(ロボット100Aも)ユーザP1を見つめている」という状態通知を受信したときには、驚くモーションや、ロボット100Aの方向に視線を向けるなどの特定のモーションを実行することで「偶然の一致」を演出してもよい。また、お互いが同じユーザを見つめている場合、ロボット100Aとロボット100Bとがお互いに近づいて、並んでユーザP1を見つめるようにモーションを実行してもよい。ユーザの顔ができるだけ大きく見える位置に、双方のロボット100が移動して並んでユーザをみつめることで、ユーザに強いプレッシャーを与えることができる。
【0126】
また、家の中に虫が入り込んだときには(画像解析または音声解析などによって家の中で虫を検出したときには)、ロボット100Aとロボット100Bは、対象の虫を共有し、ロボット100Aとロボット100Bは同時に虫を見つめることで、虫に対する異常な興味を行動表現してもよい。更に、ロボット100Aとロボット100Bは互いを見つめることにより、ロボット100たちの間で何かを示し合わせているかのような行動表現を実現できる。
【0127】
ロボット100Aの好奇心を示す感情パラメータの値が閾値を超えたとき、ロボット100Aは「好奇心が高まっている」という状態をロボット100Bに状態通知してもよい。このとき、ロボット100Bはロボット100Aに近づき、手を動かしてロボット100Aに触れるなど、ロボット100Aの好奇心のもとを知りたがるかのようなモーションを実行してもよい。ロボット100Aは、全天周画像のうち興味の対象となっている対象物とその方向をロボット100Bに通知してもよい。ロボット100Bはこの通知をうけたとき、ロボット100Bは、ロボット100Aの対象物と同一の対象物に頭や視線を向けることで、同一の対象物を見つめてもよい。
【0128】
<アピール>
ロボット100は、所定のアピール条件が成立したとき、たとえば、承認欲求値が閾値を超えたときにはユーザに対して強いアピール行動を実行する。ここでいうアピール行動とは、タッチ、声掛け、抱っこなど、ユーザからロボット100へのかかわりを積極的に求める行動である。たとえば、ユーザが、屋内でヨガなどのエクセサイズをしているとする。ユーザがヨガに夢中になっているときに、ロボット100のアピール条件が成立したときには、ロボット100はユーザを見つめ続ける、ユーザの周りを徘徊行動するなどのアピール行動を実行し、ヨガの中断を求めてもよい。
【0129】
<追従行動>
上述したように、ロボット100Aが移動するとき、ロボット100Bはロボット100Aの後ろから、ロボット100Aとの距離を一定に保ちつつ追従移動してもよい。ロボット100Aは、ユーザやペットに対して同様に追従移動してもよい。たとえば、ユーザの後ろを犬が追従しているとき、ロボット100Aは犬またはユーザを追従するとしてもよい。ロボット100Bは、ロボット100Aが犬などに追従しているときに、ロボット100Aに追従するとしてもよい。ロボットと追従対象(例えばユーザを追従する犬)との距離は、追従対象と追従対象の追従対象(例えばユーザ)との距離と等しくてもよいし、当該距離より所定の長さだけ短くてもよいし、当該距離より所定の長さだけ長くてもよい。
【0130】
ロボット100は、移動物体Q1と移動物体Q2が同一方向に所定時間以上移動していることを検出したとき、「追従」が発生していると判定する。このような制御方法によれば、追従が発生していると、自分もついていきたくなるというロボット100の本能を感じさせる行動表現が可能となる。複数のロボット100が追従行動する姿は、ユーザに対してロボット100の愛らしさをアピールする上で有効であると考えられる。
【0131】
ロボット100の感情パラメータ、たとえば、好奇心を示す感情パラメータの値が閾値以下となっていることを条件としてロボット100は追従行動を実行するとしてもよい。このような制御方法によれば好奇心が薄れて退屈しているときには他のロボットに対する追従行動を実行し、好奇心が高まっているときには追従行動を実行しないという行動表現が可能となる。追従行動を実行したときには、各種のイベントによって好奇心が閾値以上に高まったことを条件として追従行動を終了するとしてもよい。自律行動型ロボットの行動の源は、内部状態を示す所定のパラメータである。本実施形態では、好奇心を示すパラメータが行動の源に大きく貢献するが、外部環境に変化が乏しければ好奇心パラメータが0に近づく可能性がある。こうした場合に、自身のパラメータの変化を待つのではなく、他のロボットの行動に便乗することで、自身のパラメータを積極的に変化させることができる。
【0132】
上述したように、複数のロボット100は、追従行動のように同一行動をとることもあれば、互いの行動によって影響を受けながら行動特性を変化させる。複数のロボット100の協調性・連動性を高めるため、サーバ200内において、あるいは、ロボット100同士で互いの状態を把握し合えることが望ましい。ロボット100Aの状態を把握したロボット100Bは、ロボット100Aの状態に同調して行動してもよいし、同調することなく独自行動をしてもよい。ロボット100Bがロボット100Aに同調した行動の例は、ロボットAが見つめているものと同じものをロボット100Bが見つめるなどの、ロボット100Aの対象物と同一の対象物に対して、ロボットBが同一カテゴリのモーションを実行することである。
【0133】
複数のロボット100が協調行動をとるとき、ユーザはロボット100たちを可愛らしく感じると考えられる。ユーザは、ロボット100たちが協調行動する様子を写真に撮りたいと考えるかもしれない。全天周カメラ113によりユーザがカメラを構えていると画像認識したとき、ロボット100は、ユーザが撮影を終えるまで自己の行動及び状態の少なくとも一方を維持してもよい。また、この場合、行動又は状態の維持に代えて、ロボット100は、特定のモーションを選択するとしてもよい。たとえば、ロボット100は、ユーザのいる方向に体を向けてもよいし、協調行動を一時的に停止することで、ユーザの撮影に協力してもよい。このように、ロボット100は、撮影行動を検知したとき、一時的に動作を停止してもよい。また、ロボット100は、協調行動のときに限らず、ユーザの撮影行動を検出したときにはポーズをとったり、一時的に行動停止するとしてもよい。このような制御方法によれば、ユーザはSNS(Social Networking Service)などに、ロボット100の可愛い姿を撮った撮影画像をアップロードしやすくなる。また、家庭内にあるさまざまなもの(ペットや、子ども、おもちゃや家具など)と関わるロボット100についてさまざまなベストショット画像を撮影しやすくなると考えられる。
【0134】
<外皮の構造>
ロボット100の外皮314は、伸縮性を有する基材を布の袋に収容することで構成される。袋は、ユーザに対して温かみのある手触りのよい柔軟素材であればよい。基材は、難燃性の素材であることが好ましく、高温化したときに自己消火性ガスを放出する素材であることが更に好ましい。たとえば、基材は難燃性スポンジにより構成される。外皮314は、難燃性の基材を布の袋で包み込むように形成されるので、布袋が着火しても基材から自己消火性ガスが放出されるため、布の袋の延焼を防ぐことができる。基材が自己消火
性ガスを発生させるときの閾値温度は、布の着火温度よりも低いことが好ましい。この場合には、布が高温化したとき、布に着火する前に自己消火性ガスが発生するため、布の発火を防止できる。外皮314を難燃性の基材と柔軟な袋の二重構成にすることにより、ロボット100の手触りの温かみと、高温に対する安全性を両立させることができる。
【0135】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0136】
1以上のロボット100と1つのサーバ200によりロボットシステム300が構成されるとして説明したが、ロボット100の機能の一部はサーバ200により実現されてもよいし、サーバ200の機能の一部または全部がロボット100に割り当てられてもよい。1つのサーバ200が複数のロボット100をコントロールしてもよいし、複数のサーバ200が協働して1以上のロボット100をコントロールしてもよい。
【0137】
ロボット100やサーバ200以外の第3の装置が、機能の一部を担ってもよい。
図4において説明したロボット100の各機能とサーバ200の各機能の集合体は大局的には1つの「ロボット」として把握することも可能である。1つまたは複数のハードウェアに対して、本発明を実現するために必要な複数の機能をどのように配分するかは、各ハードウェアの処理能力やロボットシステム300に求められる仕様等に鑑みて決定されればよい。
【0138】
上述したように、「狭義におけるロボット」とはサーバ200を含まないロボット100のことであるが、「広義におけるロボット」はロボットシステム300のことである。サーバ200の機能の多くは、将来的にはロボット100に統合されていく可能性も考えられる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのモーションを選択する動作制御部と、
前記動作制御部により選択されたモーションを実行する駆動機構と、
対象者が所定の見守り条件を満たすか否かを判定する認識部と、
前記見守り条件が成立したとき、前記対象者の見守りモードに設定するモード設定部と
を備え、
前記モード設定部は、前記見守り条件に加え、前記対象者に関連付けられた人物が周囲
に検出されないという条件が充足された場合に前記見守りモードに設定するように構成され
ていることを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記見守りモードにおいて、他のロボットと前記対象者の位置を共有し、前記対象者に
基づいて定められる前記他のロボットと同一の注視点または前記他のロボットの注視点と
所定の距離内の注視点に向けて、頭部を向ける請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記見守りモードにおいて、少なくとも他のロボット及び自己の一方が前記対象者に前
記頭部を向けるように構成されている請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項4】
前記見守りモード中に、前記対象者との距離を所定距離以内に制御する請求項1~3の
いずれか1項記載のロボット。
【請求項5】
前記見守りモード中に、前記見守り条件が満たされないときの少なくとも1つのモード
よりも前記駆動機構の動作量を低下させる請求項1~4のいずれか1項記載のロボット。
【請求項6】
前記見守りモード中に、前記対象者が所定の条件を充足したと判定したときに、前記対
象物に対するモーションを実行することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項記載の
ロボット。
【請求項7】
前記見守りモード中に、前記対象者が所定の条件を充足したと判定したときに、前記対
象物に対するモーションを実行することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項記載の
ロボット。
【請求項8】
前記見守りモードにおいて、前記対象者の撮像画像を所定の通信端末に送信する通信部
を備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項記載のロボット。