(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055872
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】誘電体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 3/00 20060101AFI20240411BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20240411BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240411BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20240411BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240411BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240411BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20240411BHJP
H01B 3/44 20060101ALI20240411BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240411BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01B3/00 A
C08L27/12
C08L101/00
C08K7/00
C08K3/36
C08K3/22
C08L27/18
H01B3/44 P
H01B3/44 C
H05K1/03 610H
H05K1/03 630H
H05K1/03 610R
C08J5/18 CEW
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001134
(22)【出願日】2024-01-09
(62)【分割の表示】P 2023172471の分割
【原出願日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2022162085
(32)【優先日】2022-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】上田 有希
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】澤木 恭平
(72)【発明者】
【氏名】細川 萌
(72)【発明者】
【氏名】田中 義人
(72)【発明者】
【氏名】山内 昭佳
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
5G303
5G305
【Fターム(参考)】
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5G303AA05
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(57)【要約】
【課題】比誘電率のテラヘルツ高周波帯域(110~330GHz)における、比誘電率の周波数依存性を小さくする誘電体及びその製造方法を得る。
【解決手段】ファブリペロー共振器 Jバンドで測定した220GHzから330GHzまでの周波数に対する比誘電率(Dk)の傾きが0.00001以上0.0005以下である誘電体。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファブリペロー共振器 Jバンドで測定した220GHzから330GHzまでの周波数に対する比誘電率(Dk)の傾きが0.00001以上0.0005以下であることを特徴とする誘電体。
【請求項2】
ファブリペロー共振器 Jバンドで測定した170GHzの比誘電率(Dk)の平面方向の90°異方性が0.02以下であることを特徴とする誘電体。
【請求項3】
ファブリペロー共振器 Jバンドで測定した220GHzの誘電正接(Df)が0.00153以下であることを特徴とする誘電体。
【請求項4】
ファブリペロー共振器 Jバンドで測定した330GHzの誘電正接(Df)が0.00165以下であることを特徴とする誘電体。
【請求項5】
誘電体は、樹脂及び球状のフィラーを含む請求項1~4のいずれかに記載の誘電体。
【請求項6】
フィラーは、シリカ、酸化チタン、アルミナ及びフォルステライトからなる群より選択される少なくとも1である請求項5に記載の誘電体。
【請求項7】
フィラーは、実質的に球状シリカである請求項5記載の誘電体。
【請求項8】
フィラーは、平均粒径が0.1~10μmである請求項5記載の誘電体。
【請求項9】
樹脂は、フッ素樹脂である請求項5記載の誘電体。
【請求項10】
フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、テトラフロロエチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体及びテトラフロロエチレン-ヘキサフロロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1の重合体を一部又は全部とするものである請求項9記載の誘電体。
【請求項11】
一次粒子径が0.05~10μmのフッ素樹脂粒子を原料として使用して得られたものである請求項9に記載の誘電体。
【請求項12】
フッ素樹脂粒子は、体積基準累積50%径が0.05~40μmである請求項11記載の誘電体。
【請求項13】
テラヘルツ帯用プリント基板、テラヘルツ帯用誘電材料又はテラヘルツ帯用積層回路基板に使用されるものである、請求項1~4のいずれかに記載の誘電体。
【請求項14】
シート形状を有するものである請求項1~4のいずれかに記載の誘電体。
【請求項15】
フッ素樹脂粒子とフィラーを混合して成膜することを特徴とする請求項14に記載の誘電体の製造方法。
【請求項16】
フッ素樹脂粒子とフィラーを混合し、その他の成分を加えることなく成膜する工程を有することを特徴とする請求項14に記載の誘電体の製造方法。
【請求項17】
銅箔及び請求項14に記載の誘電体を必須の層とし、テラヘルツ帯用プリント基板、テラヘルツ帯用誘電材料又はテラヘルツ帯用積層回路基板に用いられる銅張積層体。
【請求項18】
請求項17に記載の銅張積層体を有することを特徴とする回路用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は誘電体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波用プリント配線板において、伝送損失が小さい高周波用プリント配線板が求められている。このような高周波用プリント配線板において、フッ素樹脂フィルムを使用することが公知である(特許文献1等)。また、配線基板材料としてフィラーを配合したフッ素樹脂を使用することについて、特許文献2、3に記載されている。
【0003】
さらに、特許文献4には、真球状シリカ粒子をフッ素樹脂に配合したフッ素樹脂組成物を回路用基板に使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-8260
【特許文献2】特開昭63-259907号公報
【特許文献3】特表2022-510017
【特許文献4】国際公開2020/145133
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、テラヘルツ高周波帯域(110~330GHz)における、比誘電率の周波数依存性を小さくする誘電体及びその製造方法を得ることを目的とするものである。
更に、比誘電率の異方性が小さい誘電体及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
更に、高周波帯域における誘電正接が小さい誘電体及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ファブリペロー共振器 Jバンドで測定した220GHzから330GHzまでの周波数に対する比誘電率(Dk)の傾きが0.00001以上0.0005以下であることを特徴とする誘電体である。
本開示は、ファブリペロー共振器 Jバンドで測定した170GHzの比誘電率(Dk)の平面方向の90°異方性が0.02以下であることを特徴とする誘電体でもある。
【0007】
本開示は、ファブリペロー共振器 Jバンドで測定した220GHzの誘電正接(Df)が0.00153以下であることを特徴とする誘電体でもある。
本開示は、ファブリペロー共振器 Jバンドで測定した330GHzの誘電正接(Df)が0.00165以下であることを特徴とする誘電体でもある。
【0008】
上記誘電体は、樹脂及び球状のフィラーを含むことが好ましい
上記フィラーは、シリカ、酸化チタン、アルミナ及びフォルステライトからなる群より選択される少なくとも1であることが好ましい。
上記フィラーは、球状シリカのみであることが好ましい。
上記フィラーは、平均粒径が0.1~10μmであることが好ましい。
【0009】
上記樹脂は、フッ素樹脂であることが好ましい。
上記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、テトラフロロエチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体及びテトラフロロエチレン-ヘキサフロロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1の重合体を一部又は全部とするものであることが好ましい。
上記誘電体は、一次粒子径が0.05~10μmのフッ素樹脂粒子を原料として使用して得られたものであることが好ましい。
【0010】
上記フッ素樹脂粒子は、体積基準累積50%径が0.05~40μmであることが好ましい。
上記誘電体は、
テラヘルツ帯用プリント基板、テラヘルツ帯用誘電材料又はテラヘルツ帯用積層回路基板に使用されるものであることが好ましい。
上記誘電体は、シート形状を有するものであることが好ましい。
【0011】
本開示は、フッ素樹脂粒子とフィラーを混合して成膜する工程を有することを特徴とする上述した誘電体の製造方法でもある。
上記誘電体の製造方法は、フッ素樹脂粒子とフィラーのみを混合し、その他の成分を加えることなく成膜することが好ましい。
【0012】
本開示は、銅箔及び上述した誘電体を必須の層とする銅張積層体でもある。
本開示は、上記銅張積層体を有することを特徴とする回路用基板でもある。
【発明の効果】
【0013】
本開示の誘電体は、比誘電率のテラヘルツ高周波帯域の周波数依存性を小さくすることができる。
更に、比誘電率の異方性を小さくすることができる。
更に、高周波帯域における誘電正接を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示を詳細に説明する。
近年、電子製品の高周波化に基づいて、配線基板においても、高周波に対応した性能が求められるようになっている。
第1に、高周波帯域において、周波数による比誘電率の差を生じることは好ましいことではない。このような誘電体は、銅張積層体にしたときに周波数毎に銅配線の配線幅を変更する必要があり、配線が複雑になってしまう。また配線幅を変更できない場合は、特定の周波数でしか使用できなくなってしまう。
よって、このような状態を生じないようにするためには、比誘電率の周波数依存性が小さい誘電体を得ることが必要となる。
第2に、高周波帯域において、比誘電率の異方性が小さい誘電体を得ることが望まれる。
比誘電率の異方性があると、銅張積層体にしたときに銅配線を直線以外に設計する際にその方向によって配線幅を変更する必要があるという点で好ましくない。
更に、220GHzの330GHzというそれぞれの周波数に対する誘電正接(Df)が低いものであることが好ましい。フッ素樹脂による誘電体は、誘電正接が低いものを使用することで、高周波信号の伝送損失が小さい低損失材料を得ることを目的として使用されるものであることから、誘電正接の値が小さいものであることが好ましい。本開示においては、これらの性能を有する誘電体を得ることを目的とするものである。
【0015】
(比誘電率の周波数依存性)
本開示の第一の誘電体は、ファブリペロー共振器 Jバンドで測定した220GHzから330GHzまでの周波数に対する比誘電率(Dk)傾きが0.00001以上0.0005以下である。
すなわち、高周波帯域における比誘電率の周波数依存性が小さいことを意味するものである。
【0016】
本開示において、比誘電率と誘電正接は、室温25℃、湿度50%の条件でネットワークアナライザ(N5290a、キーサイト・テクノロジー社製)とファブリペロー共振器(EMラボ社製)を用いて、各周波数の比誘電率(Dk)、誘電正接(Df)を測定したものである。
【0017】
更に、比誘電率の傾きは、220GHzから330GHzの比誘電率の値をプロットし、算出したものである。
【0018】
上記傾きが0.00001以上0.0005以下であると、銅張積層体にしたときに周波数毎に銅配線の配線幅を変更する必要がない。また幅広い周波数で使用できる。上記上限は、0.0004であることがより好ましく、0.0002であることが更に好ましい。
【0019】
(比誘電率の異方性)
本開示の第二の誘電体は、170GHzの比誘電率(Dk)の平面方向の90°異方性が0,02以下であるである。
すなわち、高周波帯域における比誘電率の異方性が小さいことを意味するものである。
【0020】
更に、比誘電率の平面方向90°異方性は、室温25℃、湿度50%の条件でネットワークアナライザ(N5290A、キーサイト・テクノロジー社製)とファブリペロー共振器(EMラボ社製)を用いて、170GHzの比誘電率(Dk)を平面方向0°と90°で測定し、その差を算出したものである。
【0021】
上記異方性が0.02以下であると、銅配線を直線以外に設計する際にその方向によって配線幅を変更する必要がないという点で好ましいものである。上記上限は、0.018であることがより好ましく、0.016であることが更に好ましい。
【0022】
(220GHzの誘電正接(Df))
本開示の第三の誘電体は、220GHzの誘電正接が0.00153以下である。すなわち、このような誘電正接を有することで、高周波信号の伝送損失が小さい低損失という効果を有するものである。上記上限は、0.00152であることがより好ましく、0.00151であることが更に好ましい。上記下限は特に限定されるものではないが、0であることがより好ましい。
なお、本明細書において、誘電正接は、室温25℃、湿度50%の条件でネットワークアナライザ(N5290A、キーサイト・テクノロジー社製)とファブリペロー共振器(EMラボ社製)を用いて、測定したものである。
【0023】
(330GHzの誘電正接(Df))
本開示の第四の誘電体は、誘電正接が0.00165以下である。すなわち、このような誘電正接を有することで、高周波信号の伝送損失が小さい低損失という効果を有するものである。上記上限は、0,00164であることがより好ましく、0.00163であることが更に好ましい。上記下限は特に限定されるものではないが、0であることがより好ましい。
【0024】
本開示の誘電体は、上述した第一~第四のいずれか一つの性質を有するものであってもよいし、2以上の性質を兼ね備えたものであってもよいし、すべての性質を兼ね備えたものであってもよい。
【0025】
(誘電体)
本開示の誘電体は、上述したいずれかのパラメータを満たすものであれば特に限定されるものではないが、球状のフィラー及びフッ素樹脂を含有する組成物であることが好ましい。このような組成物において、必要に応じて組成を調整することで、上述したパラメータを満たす誘電体とすることができる。以下に、このような誘電体において使用することができる球状のフィラー及びフッ素樹脂について詳述する。
【0026】
(フッ素樹脂)
本開示のフッ素樹脂シートは、フッ素樹脂を含有するものである。フッ素樹脂は、低誘電性を有するものであることから、本開示の目的において好適に使用することができる。
【0027】
本開示において使用することができるフッ素樹脂は特に限定されるものではないが、例えば、ポリテトラフルオエオエチレン〔PTFE〕、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体〔FEP〕、TFE/アルキルビニルエーテル共重合体〔PFA〕、TFE/HFP/アルキルビニルエーテル共重合体〔EPA〕、TFE/クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕共重合体、TFE/エチレン共重合体〔ETFE〕、ポリフッ化ビニリデン〔PVdF〕、分子量30万以下のテトラフルオロエチレン〔LMW-PTFE〕等が挙げられる。一種類で使用してもよいし、二種類以上を混合しても良い。
上記フッ素樹脂は、低誘電性という観点から、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体〔FEP〕、TFE/アルキルビニルエーテル共重合体〔PFA〕であることが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)であることが特に好ましい。PTFEはフィブリル性を有するものが好ましい。フィブリル性を有するPTFEとは未焼成のポリマー粉末をペースト押出できるPTFEを意味する。
【0028】
(ポリテトラフルオロエチレン)
PTFEは、変性ポリテトラフルオロエチレン(以下、変性PTFEという)であってもよいし、ホモポリテトラフルオロエチレン(以下、ホモPTFEという)であってもよいし、変性PTFEとホモPTFEの混合物であってもよい。なお、高分子PTFEにおける変性PTFEの含有割合は、ポリテトラフルオロエチレンの成形性を良好に維持させる観点から、10重量%以上98重量%以下であることが好ましく、50重量%以上95重量%以下であることがより好ましい。ホモPTFEは、特に限定されず、特開昭53-60979号公報、特開昭57-135号公報、特開昭61-16907号公報、特開昭62-104816号公報、特開昭62-190206号公報、特開昭63-137906号公報、特開2000-143727号公報、特開2002-201217号公報、国際公開第2007/046345号パンフレット、国際公開第2007/119829号パンフレット、国際公開第2009/001894号パンフレット、国際公開第2010/113950号パンフレット、国際公開第2013/027850号パンフレット等で開示されているホモPTFEを好適に使用できる。中でも、高い延伸特性を有する特開昭57-135号公報、特開昭63-137906号公報、特開2000-143727号公報、特開2002-201217号公報、国際公開第2007/046345号パンフレット、国際公開第2007/119829号パンフレット、国際公開第2010/113950号パンフレット等で開示されているホモPTFEが好ましい。
【0029】
変性PTFEは、TFEと、TFE以外のモノマー(以下、変性モノマーという)とからなる。変性PTFEには、変性モノマーにより均一に変性されたもの、重合反応の初期に変性されたもの、重合反応の終期に変性されたものなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。変性PTFEは、TFE単独重合体の性質を大きく損なわない範囲内で、TFEとともに微量のTFE以外の単量体をも重合に供することにより得られるTFE共重合体であることが好ましい。変性PTFEは、例えば、特開昭60-42446号公報、特開昭61-16907号公報、特開昭62-104816号公報、特開昭62-190206号公報、特開昭64-1711号公報、特開平2-261810号公報、特開平11-240917、特開平11-240918、国際公開第2003/033555号パンフレット、国際公開第2005/061567号パンフレット、国際公開第2007/005361号パンフレット、国際公開第2011/055824号パンフレット、国際公開第2013/027850号パンフレット等で開示されているものを好適に使用できる。中でも、高い延伸特性を有する特開昭61-16907号公報、特開昭62-104816号公報、特開昭64-1711号公報、特開平11-240917、国際公開第2003/033555号パンフレット、国際公開第2005/061567号パンフレット、国際公開第2007/005361号パンフレット、国際公開第2011/055824号パンフレット等で開示されている変性PTFEが好ましい。
【0030】
変性PTFEは、TFEに基づくTFE単位と、変性モノマーに基づく変性モノマー単位とを含む。変性モノマー単位は、変性PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分である。変性PTFEは、変性モノマー単位が全単量体単位の0.001~0.500重量%含まれることが好ましく、好ましくは、0.01~0.30重量%含まれる。全単量体単位は、変性PTFEの分子構造における全ての単量体に由来する部分である。
【0031】
変性モノマーは、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン(CTFE)等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロアルキルエチレン(PFAE)、エチレン等が挙げられる。用いられる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0032】
パーフルオロビニルエーテルは、特に限定されず、例えば、下記一般式(1)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。
CF2=CF-ORf・・・(1)
【0033】
式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。
【0034】
本明細書において、パーフルオロ有機基は、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基である。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0035】
パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(1)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)が挙げられる。パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。PAVEとしては、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)が好ましい。
【0036】
上記パーフルオロアルキルエチレン(PFAE)は、特に限定されず、例えば、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、パーフルオロヘキシルエチレン(PFHE)等が挙げられる。
【0037】
変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VDF、PAVE、PFAE及びエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0038】
上記フッ素樹脂は、溶融成形不可能であることが好ましい。溶融成形不可能であるとは、融点以上に加熱しても、樹脂が十分な流動性を有さず、樹脂において一般的に使用される溶融成形の手法によって成型することができない樹脂を意味する。
【0039】
本開示においては、このような溶融成形不可能であるようなフッ素樹脂を使用し、これをフィブリル化するような成形方法によってフッ素時樹脂シートとするものであることが好ましい。当該成型方法については、後述する。
【0040】
上記PTFEは、SSGが2.0~2.3であることが好ましい。このようなPTFEを使用すると、高い強度(凝集力及び単位厚さあたりの突き刺し強度)を有するPTFE膜を得やすい。大きい分子量を有するPTFEは長い分子鎖を有するため、分子鎖が規則的に配列した構造を形成しにくい。この場合、非晶質部の長さが増加し、分子同士の絡み合いの度合いが増加する。分子同士の絡み合いの度合いが高い場合、PTFE膜は、加えられた負荷に対して変形しにくく、優れた機械的強度を示すと考えられる。また、大きい分子量を有するPTFEを使用すると、小さい平均孔径を有するPTFE膜を得やすい。
【0041】
上記SSGの下限は、2.05であることがより好ましく、2,1であることが更に好ましい。上記SSGの上限は、2.25であることがより好ましく、2.2であることが更に好ましい。
【0042】
標準比重〔SSG〕はASTM D-4895-89に準拠して試料を作製し、得られた試料の比重を水置換法によって測定したものである。
【0043】
本実施形態において、PTFE粉末を構成するPTFEの分子量(数平均分子量)は、例えば、200~1200万の範囲にある。PTFEの分子量の下限値は、300万であってもよく、400万であってもよい。PTFEの分子量の上限値は、1000万であってもよい。
【0044】
PTFEの数平均分子量の測定方法としては、標準比重(Standard Specific Gravity)から求める方法、及び、溶融時の動的粘弾性による測定法がある。標準比重から求める方法は、ASTM D-4895 98に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D-792に準拠した水置換法によって実施することができる。動的粘弾性による測定法は、例えば、S.Wuによって、Polymer Engineering & Science, 1988, Vol.28, 538、及び、同文献1989, Vol.29, 273に説明されている。
【0045】
また、上記PTFEは、最大吸熱ピーク温度(結晶融点)は340±7℃であることが好ましい。
【0046】
PTFEは示差走査熱量計で測定した結晶融解曲線上の吸熱カーブの最大ピーク温度が338℃以下の低融点PTFEと、示差走査熱量計で測定した結晶融解曲線上の吸熱カーブの最大ピーク温度が342℃以上の高融点PTFEであっても良い。
【0047】
低融点PTFEは、乳化重合法で重合し製造された粉末であり、前記の最大吸熱ピーク温度(結晶融点)を有し、誘電率(ε)は2.08~2.2、誘電正接(tan δ)は1.9×10-4~4.0×10-4である。市販品としては、たとえばダイキン工業(株)製のポリフロンファインパウダーF201、同F203、同F205、同F301、同F302;旭硝子工業(株)製のCD090、CD076;デュポン社製のTF6C、TF62、TF40などがあげられる。
【0048】
高融点PTFE粉末も、乳化重合法で重合し製造された粉末であり、前記の最大吸熱ピーク温度(結晶融点)を有し、誘電率(ε)は2.0~2.1、誘電正接(tan δ)は1.6×10-4~2.2×10-4と全体的に低い。市販品としては、たとえばダイキン工業(株)製のポリフロンファインパウダーF104、F106;旭硝子工業(株)製のCD1、CD141、CD123;デュポン社製のTF6、TF65などがあげられる。
【0049】
なお、両PTFE重合粒子が2次凝集した粉末の平均粒径は通常、250~2000μmであることが好ましい。特に、溶媒を用いて造粒して得られる造粒粉末は予備成形の際の金型充填時の流動性が向上する点から好ましい。
【0050】
上述したような各パラメータを満たす粉末形状のPTFEは、従来の製造方法により得ることができる。例えば、国際公開第2015-080291号や国際公開第2012-086710号等に記載された製造方法に倣って製造すればよい。
【0051】
(溶融成形可能なフッ素樹脂)
上述したように、本開示の誘電体はポリテトラフルオロエチレン樹脂であることが最も好ましい。一方で、溶融成形可能なフッ素樹脂を使用して、上述したパラメータを有する成形体を得ることもできる。このような観点により、溶融成形可能なフッ素樹脂についても以下詳述する。
【0052】
フッ素樹脂は、溶融成形可能なフッ素樹脂であることがより好ましく、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を有する共重合体(CTFE共重合体)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、及びポリビニルフルオライド(PVF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン・ビニリデンフルオライド共重合体等が挙げられる。
これら溶融成形可能なフッ素樹脂の中でも、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が好ましい。
【0053】
上記フッ素樹脂フィルムを構成する樹脂は、ガラス転移温度が、40℃以上であることが好ましい。40℃以上であれば、たとえばロールフィルムを室温で保管する場合、環境温度での変形が起こりにくいという点で好ましく、60℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましい。上記上限は、特に限定されないが、接着性の観点で、200℃以下であることが好ましく、160℃であることがより好ましく、120℃以下であることが更に好ましい。
【0054】
上記PFAは、融点が180~340℃であることが好ましく、230~330℃であることがより好ましく、280~320℃であることが更に好ましい。上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0055】
上記PFAとしては、特に限定されないが、TFE単位とPAVE単位とのモル比(TFE単位/PAVE単位)が70/30以上99.5/0.5未満である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、70/30以上98.9/1.1以下であり、更に好ましいモル比は、80/20以上98.5/1.5以下である。TFE単位が少なすぎると機械物性が低下する傾向があり、多すぎると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。上記PFAは、TFE及びPAVEのみからなる共重合体であってもよいし、TFE及びPAVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1~10モル%であり、TFE単位及びPAVE単位が合計で90~99.9モル%である共重合体であることも好ましい。TFE及びPAVEと共重合可能な単量体としては、HFP、CZ3Z4=CZ5(CF2)nZ6(式中、Z3、Z4及びZ5は、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Z6は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2~10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、CF2=CF-OCH2-Rf7(式中、Rf7は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。その他の共重合可能な単量体としては、たとえば酸無水物基を有する環状炭化水素単量体などであり、酸無水物系単量体としては、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、無水マレイン酸などが挙げられる。酸無水物系単量体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0056】
上記PFAは、メルトフローレート(MFR)が0.1~100g/10分であることが好ましく、0.5~90g/10分であることがより好ましく、1.0~85g/10分であることが更に好ましい。なお、本明細書においてMFRは、ASTM D3307に準拠して、温度372℃、荷重5.0kgの条件下で測定し得られる値である。
【0057】
上記FEPとしては、特に限定されないが、TFE単位とHFP単位とのモル比(TFE単位/HFP単位)が70/30以上99/1未満である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、70/30以上98.9/1.1以下であり、更に好ましいモル比は、80/20以上97/3以下である。TFE単位が少なすぎると機械物性が低下する傾向があり、多すぎると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1~10モル%であり、TFE単位及びHFP単位が合計で90~99.9モル%である共重合体であることも好ましい。TFE及びHFPと共重合可能な単量体としては、アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。その他の共重合可能な単量体としては、たとえば酸無水物基を有する環状炭化水素単量体などであり、酸無水物系単量体としては、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、無水マレイン酸などが挙げられる。酸無水物系単量体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0058】
上記FEPは、融点が150~320℃であることが好ましく、200~300℃であることがより好ましく、240~280℃であることが更に好ましい。上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
上記FEPは、MFRが0.01~100g/10分であることが好ましく、0.1~80g/10分であることがより好ましく、1~60g/10分であることが更に好ましく、1~50g/10分であることが特に好ましい。
【0059】
上記フッ素樹脂は、官能基が少ないほうがよく、とくに不安定末端基数が少ないほうがよい。このようなフッ素樹脂は製造時(重合反応時)の条件調整によって作製する方法や、重合後のフッ素樹脂に対してフッ素ガス処理、熱処理、超臨界ガス抽出処理等を行うことで不安定末端基数を低減化する方法などがある。処理効率に優れている点、不安定末端基の一部又は全部が-CF3に変換され安定末端基となる点からフッ素ガス処理が好ましい。このように不安定末端基数を低減したフッ素樹脂を使用すると、静電正接が低下し、電気信号の損失が低下するという点で好ましいものである。
【0060】
上記不安定末端基数は、特に限定されるものではないが、フッ素樹脂の主鎖炭素数106個あたり450以下であることが好ましく、250以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましく、50以下であることが最も好ましい。誘電正接低減
の効果を考慮すると、10未満が好ましく、5以下がさらに好ましい。
【0061】
不安定末端基としては、具体的に-COF、-COOH free(遊離のCOOH)、-COOH bonded(会合している-COOH)、水酸基(-CH2OHなど)、-CONH2、-COOR(R=CH3など)、-CF2H、-OCOO-R(ノルマルプロピルカーボネートなど)等の官能基を挙げることができる。
【0062】
不安定末端基数は、具体的には、以下の方法で測定する。まず。上記フッ素樹脂を溶融させて、圧縮成形することで、厚さ0.25~0.3mmのフィルムを作製する。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析により分析して、上記フッ素樹脂の赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化されて官能基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得る。この差スペクトルに現れる特定の官能基の吸収ピークから、下記式(A)に従って、上記フッ素樹脂における炭素原子1×106個あたりの不安定末端基数を算出する。
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
【0063】
参考までに、本明細書における不安定末端基について、吸収周波数、モル吸光係数及び補正係数を表1に示す。また、モル吸光係数は低分子モデル化合物のFT-IR測定データから決定したものである。
【0064】
【0065】
上記フッ素化処理は、フッ素化処理されていないフッ素樹脂とフッ素含有化合物とを接触させることにより行うことができる。
【0066】
上記フッ素含有化合物としては特に限定されないが、フッ素化処理条件下にてフッ素ラジカルを発生するフッ素ラジカル源が挙げられる。上記フッ素ラジカル源としては、F2ガス、CoF3、AgF2、UF6、OF2、N2F2、CF3OF、フッ化ハロゲン(例えばIF5、ClF3)等が挙げられる。
【0067】
上記F2ガス等のフッ素ラジカル源は、100%濃度のものであってもよいが、安全性の面から不活性ガスと混合し5~50質量%に希釈して使用することが好ましく、15~30質量%に希釈して使用することがより好ましい。上記不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられるが、経済的な面より窒素ガスが好ましい。
【0068】
上記フッ素化処理の条件は、特に限定されず、溶融させた状態のフッ素樹脂とフッ素含有化合物とを接触させてもよいが、通常、フッ素樹脂の融点以下、好ましくは20~220℃、より好ましくは100~200℃の温度下で行うことができる。上記フッ素化処理は、一般に1~30時間、好ましくは5~25時間行う。上記フッ素化処理は、フッ素化処理されていないフッ素樹脂をフッ素ガス(F2ガス)と接触させるものが好ましい。
【0069】
本明細書において、フッ素樹脂を構成する各単量体単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0070】
(球状のフィラー)
本開示の誘電体は、フィラーを含有することが好ましい。フィラーを配合することで、線膨張係数を低くすることができる点で特に好ましい。
本開示において使用することができるフィラーとしては特に限定されず、アラミド繊維、ポリフェニルエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレン、ポリアミド、全芳香族ポリエステル樹脂から選ばれる一種以上である有機充填材、セラミックス、タルク、マイカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ガラス繊維、ガラス片、ガラスビード、炭化ケイ素、弗化カルシウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム、二硫化モリブデン、フォルステライト及び炭酸カリウムウイスカから選ばれる一種以上である無機充填材などを挙げることができる。これらの2種以上を併用するものであってもよい。
【0071】
これらのなかでも、特に、シリカ、酸化チタン、アルミナ及びフォルステライトからなる群より選択される少なくとも1であることが、低損失であるという観点から好ましい。さらに、シリカであることが最も好ましい。
【0072】
上記球状のフィラーは球状シリカのみからなるものであることが特に好ましい。上述したように、フィラーを配合する目的は、線膨張係数を低くする点にあるが、異方性が高いフィラーを配合すると、上述した誘電体の各性質を満たすものとすることが困難となる。上記球状シリカは、比誘電率の異方性と周波数依存性が小さいという点で好ましいものである。
【0073】
上記球状シリカ粒子は、その粒子形状が真球に近いものを意味しており、具体的には、球形度が0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上がさらに好ましく、0.95以上が最も好ましい。球形度はSEMで写真を撮り、その観察される粒子の面積と周囲長から、(球形度)={4π×(面積)÷(周囲長)2}で算出される値として算出する。1に近づくほど真球に近い。具体的には画像処理装置(スペクトリス株式会社:FPIA-3000)を用いて100個の粒子について測定した平均値を採用する。
【0074】
本開示で使用する球状シリカ粒子は、粒径が小さい方から体積を積算したときにD90/D10が2以上(望ましくは2.3以上、2.5以上)、D50が10μm以下であることが好ましい。更に、D90/D50が1.5以上であることが好ましい(更に望ましくは1.6以上)。D50/D10が1.5以上であることが好ましい(更に望ましくは1.6以上)。粒径が大きな球状シリカ粒子の間隙に粒径が小さな球状シリカ粒子が入ることが可能になるため、充填性に優れ、且つ、流動性を高くすることができる。特に粒度分布としてはガウス曲線と比較して粒径が小さい側の頻度が大きいことが好ましい。粒径はレーザ回折散乱方式粒度分布測定装置により測定可能である。また、所定以上の粒径をもつ粗粒をフィルタなどで除去したものであることが好ましい。
【0075】
上記球状シリカ粒子は、吸水性が1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。吸水性は乾燥時のシリカ粒子の質量を基準とする。吸水性の測定は乾燥状態にある試料を40℃ 80%RHに1時間放置し、カールフィッシャー水分測定装置で200℃加熱により生成する水分を測定し、算出する。
【0076】
また上記球状シリカ粒子は、誘電体を600℃で30分間、大気雰囲気下で加熱することでフッ素樹脂を焼き飛ばし、球状シリカ粒子を取り出したのち、上述の方法を用いて上記各パラメータを測定することもできる。
【0077】
本開示で使用されるシリカ粒子は、表面処理が施されたものであってもよい。表面処理を予め施すことで、シリカ粒子の凝集を抑制することができ、樹脂組成物中にシリカ粒子を良好に分散させることができる。また、誘電正接を低くできる点でも好ましいものである。
【0078】
上記表面処理としては特に限定されるものではなく、公知の任意のものを使用することができる。具体的には例えば、反応性官能基を有するエポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、疎水性のアルキルシラン、フェニルシラン、フッ素化アルキルシランなどのシランカップリング剤による処理、プラズマ処理、フッ素化処理等を挙げることができる。
【0079】
上記シランカップリング剤として、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネートシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン、アクリロキシトリメトキシシラン等のアクリルシラン等が例示される。
【0080】
上記球状シリカ粒子は、市販のシリカ粒子で上述した性質を満たすものを使用するものであってもよい。市販のシリカ粒子としては、例えば、デンカ溶融シリカ FBグレード(デンカ株式会社製)、デンカ溶融シリカ SFPグレード(デンカ株式会社製)、エクセリカ(株式会社トクヤマ製)、高純度合成球状シリカ粒子 アドマファイン(株式会社アドマテックス製)、アドマナノ(株式会社アドマテックス製)、アドマフューズ(株式会社アドマテックス製)、等を挙げることができる。
【0081】
より具体的には、アミノプロピルシラン、アミノシラン、ビニルシラン、疎水性のアルキルシラン、フェニルシラン、3-メルカプトプロピルシラン、3-アクリロキシプロピルシラン、3-メタクリロキシプロピルシラン、p-スチリルシラン、シリルプロピルコハク酸無水物、3-イソシアネートプロピルシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルシラン等によって表面処理を施したものであることが特に好ましい。
これらのシランカップリング剤を用いて表面処理を施すことにより、フィラー表面に存在する極性官能基が反応し、極性官能基の量が低減するため電気特性に優れる。
【0082】
(組成物)
本開示の誘電体は、上述したフィラー及びフッ素樹脂を含有するものである。必要に応じて、フィラー、フッ素樹脂以外の成分を含有するものであってもよいし、フィラー及びフッ素樹脂のみからなるものであってもよい。フィラー及びフッ素樹脂以外の成分の含有量は、10重量%以下であることが好ましい。
【0083】
本開示の誘電体は、組成物の全量に対して、フィラーの含有量が70重量%以下であることが好ましい。このような範囲でフィラーを含有させることで、線膨張係数が低くでき、成形性しやすいという点で好ましい。
上記フィラーの配合量の下限は、特に限定されるものではないが、線膨張整数を低く出来るという観点から、40重量%であることが好ましい。
上記上限は、68重量%であることがより好ましく、65重量%であることが更に好ましい。上記下限は、40重量%であることがより好ましく、45重量%であることが更に好ましい。
【0084】
本開示の誘電体は、線膨張係数が10~100(ppm/℃)であることが好ましい。上記範囲内であることで、低収縮で寸法安定性に優れた誘電体となる点で好ましい。上記上限は、90であることがより好ましく、80であることが更に好ましい。上記下限は、12であることがより好ましく、15であることが更に好ましい。本明細書における線膨張係数は、TMA―7100(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いたTMA測定を引張モードで行い、サンプル片として、長さ20mm、幅5mm、厚み0.1~0.5mmに切出したシートを用いて、チャック間を10mmに設定し、49mNの荷重をかけながら昇温速度2℃/分で-10~160℃でのサンプルの変位量から線膨張率を求めた。
【0085】
(フッ素樹脂シートの製造方法)
本開示のフッ素樹脂シートは、フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレンである場合、フッ素樹脂粒子とフィラーを混合して成膜することによって得ることができる。その製造方法を限定するものではないが、ペースト押出成形、粉体圧延成形等によって行うことができる。溶融成形可能なフッ素樹脂な樹脂の場合の製造方法は限定するものではないが、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形、真空・圧空成形、押出成形等によって行うことができ、溶融混練に使用する装置は特に限定されず、二軸押出機、単軸押出機、多軸押出機、タンデム押出機等を使用できる。
【0086】
上述したように、本開示のフッ素樹脂シートに使用するフッ素樹脂としては、溶融成形不可能であるフッ素樹脂を使用することが好ましい。このようなフッ素樹脂を使用した場合、これをシート状に成形する場合は、原料としての粉末状のPTFEをフィブリル化することで成形することが好ましい。
【0087】
上記粉末状のPTFEは、一次粒子径が0.05~10μmのものを使用することが好ましい。このようなものを使用することで、分散性に優れるという利点がある。なお、ここでの一次粒子径は、ASTM D 4895に準拠し測定した値である。
【0088】
上記粉末状のPTFEは、二次粒子径が500μm以上のポリテトラフルオロエチレン樹脂を50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。二次粒子径が500μm以上のPTFEが当該範囲内のものであることによって、強度の高い合剤シートを作製できるという点で利点を有する。
二次粒子径が500μm以上のPTFEを用いることで、より抵抗が低く、靭性に富んだ合剤シートを得ることができる。
【0089】
上記二次粒子径の下限は、300μmであることがより好ましく、350μmであることが更に好ましい。上記二次粒子径の上限は、700μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることが更に好ましい。二次粒子径は例えばふるい分け法などで求めることができる。
【0090】
上記粉末状のPTFEは、より高強度でかつ均質性に優れるフッ素樹脂シートが得られる
ことから、平均一次粒子径が50nm以上であることが好ましい。より好ましくは、100nm以上であり、更に好ましくは150nm以上であり、特に好ましくは200nm以上である。PTFEの平均一次粒子径が大きいほど、その粉末を用いてペースト押出成形をする際に、ペースト押出圧力の上昇を抑えられ、成形性にも優れる。上限は特に限定されないが500nmであってよい。重合工程における生産性の観点からは、350nmであることが好ましい。
【0091】
上記平均一次粒子径は、重合により得られたPTFEの水性分散液を用い、ポリマー濃度を0.22質量%に調整した水性分散液の単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真における定方向径を測定して決定された平均一次粒子径との検量線を作成し、測定対象である水性分散液について、上記透過率を測定し、上記検量線をもとに決定できる。
【0092】
本開示に使用するPTFEは、コアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造を有するPTFEとしては、例えば、粒子中に高分子量のポリテトラフルオロエチレンのコアと、より低分子量のポリテトラフルオロエチレンまたは変性のポリテトラフルオロエチレンのシェルとを含む変性ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。このような変性ポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば、特表2005-527652号公報に記載されるポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0093】
ペースト押出成形、粉体圧延成形の具体的な方法は特に限定されるものではないが、以下に一般的な方法を記載する。
【0094】
(ペースト押出成形)
上記シートの製造方法は、炭化水素系界面活性剤を使用して得られたPTFE粉末と押出助剤とを混合する工程(1a)、得られた混合物をペースト押出成形する工程(1b)、押出成形で得られた押出物を圧延する工程(1c)、圧延後のシートを乾燥する工程(1d)、乾燥後のシートを焼成して成形体を得る工程(1e)を含むものであってよい。上記ペースト押出成形は、上記PTFE粉末に顔料や充填剤等の従来公知の添加剤を加えて行うこともできる。
【0095】
上記押出助剤としては特に限定されず、一般に公知のものを使用できる。例えば、炭化水素油等が挙げられる。
【0096】
(粉体圧延成形)
上記シートは、粉体圧延成形によって成形することもできる。粉体圧延成形は、樹脂粉体に剪断力を付与することで、フィブリル化させ、これによってシート状に成形する方法である。その後、焼成して成形体を得る工程を含むものであってよい。
より具体的には、
フッ素樹脂及びフィラーを含む原料組成物を混合しながら、剪断力を付与する工程(1)
前記工程(1)によって得られた混合物をバルク状に成形する工程(2)及び
前記工程(2)によって得られたバルク状の混合物をシート状に圧延する工程(3)
を有する製造方法によって得ることができる。
なお、このような粉体圧延成形によってシートとする場合は、フッ素樹脂粒子と無機フィラーのみを混合して成形することが好ましい。
【0097】
(積層体)
本開示の誘電体は、プリント配線基板用のシートとして、その他の基材と積層して使用することができる。
【0098】
上述した誘電体の片面又は両面に銅箔を接着させることで、銅張積層体とすることもできる。上述したように、本開示のフッ素樹脂を含むフィルムは、プリント配線基板用途において特に好適に使用することができるものであるから、このような銅張積層体として好適に使用することができる。
【0099】
上記銅箔は、Rz1.6μm以下であることが好ましい。すなわち、本開示のフッ素樹脂組成物は、Rz1.6μm以下という平滑性の高い銅箔への接着性も優れたものである。
更に、銅箔は、少なくとも上述したフッ素樹脂フィルムと接着する面が1.6μm以下であればよく、他方の面は、Rz値を特に限定するものではない。
【0100】
上記銅箔は、厚みは特に限定されないが、1~100μmの範囲であることが好ましく、5~50μmの範囲内であることがより好ましく、9~35μmがさらに好ましい。
【0101】
上記銅箔は特に限定されるものではなく、具体的には例えば、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
【0102】
Rz1.6μm以下の銅箔としては特に限定されず、市販のものを使用することができる。市販のRz1.6μm以下の銅箔としては、例えば、電解銅箔CF-T9DA-SV-18(厚み18μm/Rz0.85μm)(福田金属箔粉工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0103】
上記銅箔は、本開示のフッ素樹脂フィルムとの接着強度を高めるために、表面処理を施したものであってもよい。
【0104】
上記表面処理は特に限定されないが、シランカップリング処理、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、電子線処理などであり、シランカップリング剤の反応性官能基としては、特に限定されないが、樹脂基材に対する接着性の観点から、アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、及びエポキシ基から選択される少なくとも1種を末端に有することが好ましい。また、加水分解性基としては、特に限定されないが、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基などが挙げられる。本開示で使用する銅箔は、防錆層(クロメート等の酸化物皮膜等)、耐熱層等が形成されたものであってもよい。
【0105】
上記シラン化合物による表面処理層を銅箔表面上に有する表面処理銅箔は、シラン化合物を含む溶液を調製した後、この溶液を用いて銅箔を表面処理することによって製造することができる。
【0106】
上記銅箔は、表面に、樹脂基材との接着性を高めるなどの観点から、粗化処理層を有するものであってもよい。
なお、粗化処理が本開示において要求される性能を低下させるおそれがある場合は、必要に応じて銅箔表面に電着させる粗化粒子を少なくしたり、粗化処理を行わない態様としたりすることもできる。
【0107】
銅箔と表面処理層との間には、各種特性を向上させる観点から、耐熱処理層、防錆処理層及びクロメート処理層からなる群から選択される1種以上の層を設けてもよい。これらの層は、単層であっても、複数層であってもよい。
【0108】
上記銅張積層板は、更に、銅箔および誘電体以外の層を有するものであってもよい。当該銅箔およびフッ素樹脂フィルム以外の層は、ポリイミド、モディファイドポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルファイド、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ビスマレイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、及び、ポリブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0109】
これらの銅箔および誘電体以外の層は、上述した樹脂からなるものであれば特に限定されない。また、当該銅箔およびフッ素樹脂フィルム以外の層は、厚みが、12.5~260μmの範囲内のものであることが好ましい。
【0110】
上記銅張積層板は、銅層を形成するのはロールフィルムの片面でも両面でも構わない。銅層を形成する方法としては、ロールフィルムの表面に銅箔を積層(粘着)する方法、蒸着法、めっき法などが挙げられる。銅箔を積層する方法としては、熱プレスによる方法が挙げられる。熱プレス温度は誘電体フィルムの融点-150℃~誘電体フィルムの融点+40℃が挙げられる。熱プレスの時間は例えば1~30分である。熱プレスの圧力は、0.1~10MPaという方法によって製造することができる。
【0111】
上記銅張積層板は、その用途を特に限定されず、回路用基板として使用される。プリント基板とは半導体やコンデンサチップなどの電子部品を電気的に接続すると同時に、限られた空間内に配置し固定するための板状部品である。本銅張積層体から形成されるプリント基板の構成は特に制限はない。プリント基板は、リジッド基板、フレキシブル基板、リジッドフレキシブル基板のいずれであってもよい。プリント基板は、片面、基板、両面基板、多層基板(ブルドアップ基板等)のいずれであってもよい。特に、フレキシブル基板、リジット基板用に好適に使用することができる。特に110GHz以上の高周波用プリント基板として好適に使用することができる。
【0112】
回路用基板としては特に限定されず、上述した銅張積層板を使用して、一般的な方法によって製造することができる。
【0113】
回路基板用の積層体は、銅箔層及び上述したフッ素樹脂フィルムおよび基材層を有することを特徴とする積層体でもある。基材層としては特に限定されないがガラス繊維からなる布帛層、樹脂フィルム層を有することが好ましい。
【0114】
上記ガラス繊維からなる布帛層は、ガラスクロス、ガラス不織布等からなる層である。
ガラスクロスとしては市販のものが使用でき、フッ素樹脂との親和性を高めるためにシランカップリング剤処理を施されたものが好ましい。ガラスクロスの材質としてはEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、低誘電率ガラスなどが挙げられるが、入手が容易である点からEガラス、Sガラス、NEガラスが好ましい。繊維の織り方としては平織でも綾織でも構わない。ガラスクロスの厚さは通常5~90μmであり、好ましくは10~75μmであるが、使用するフッ素樹脂フィルムよりは薄いものを用いることが好ましい。
【0115】
上記積層体は、ガラス不織布をガラス繊維からなる布帛層として使用するものであってもよい。ガラス不織布とは、ガラスの短繊維を少量のバインダー化合物(樹脂あるいは無機物)で固着したもの、あるいはバインダー化合物を使用せずにガラス短繊維を絡ませることによってその形状を維持しているものであり、市販のものが使用できる。ガラス短繊維の直径は好ましくは0.5~30μmであり、繊維長は好ましくは5~30mmである。バインダー化合物の具体例としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂等の樹脂や、シリカ化合物等の無機物が挙げられる。バインダー化合物の使用量はガラス短繊維に対して通常3~15質量%である。ガラス短繊維の材質としてはEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、低誘電率ガラスなどが挙げられる。ガラス不織布の厚さは通常50μm乃至1000μmであり、100~900μmであることが好ましい。尚、本願におけるガラス不織布の厚さは、JIS P8118:1998に準じ、(株)小野測器製のデジタルゲージDG-925
(荷重110グラム、面径10mm)を用いて測定した値を意味する。フッ素樹脂との親和性を高めるために、ガラス不織布にシランカップリング剤処理を施してもよい。
【0116】
ガラス不織布の多くは空隙率が80%以上と非常に高いので、フッ素樹脂からなるシートより厚いものを使用し、圧力によって圧縮して用いることが好ましい。
【0117】
上記ガラス繊維からなる布帛層は、ガラスクロスとガラス不織布とを積層した層であってもよい。これによって、相互の性質が組み合わせられて、好適な性質を得ることができる。
上記ガラス繊維からなる布帛層は、樹脂を含浸させたプリプレグの状態であってもよい。
【0118】
上記積層体は、ガラス繊維からなる布帛層とフッ素樹脂フィルムが界面で接着していてもよく、ガラス繊維からなる布帛層にフッ素樹脂フィルムの一部もしくはすべてが含侵されていてもよい。
更に、ガラス繊維からなる布帛にフッ素樹脂組成物を含侵させてプリプレグを作成したものであってもよい。このようにして得られたプリプレグに対して、更に、本開示のフッ素樹フィルムを積層したものであってもよい。この場合、プリプレグを作成する際に使用するフッ素樹脂組成物としては特に限定されるものではなく、本開示のフッ素樹脂フィルムを使用することもできる。
【0119】
上記基材層として用いる樹脂フィルムとしては、耐熱性樹脂フィルム、熱硬化性樹脂フィルムが好ましい。耐熱性樹脂フィルムとしては、ポリイミド、モディファイドポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルファイドなどが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブタジエンなどを含むものが挙げられる。
耐熱性樹脂フィルムおよび熱硬化性樹脂フィルムは強化繊維を含んでいても良い。強化繊維としては特に限定されないが、例えばガラスクロス、とくに低誘電タイプのものが好ましい。
耐熱性樹脂フィルムおよび熱硬化性樹脂フィルムの誘電特性、線膨張係数、吸水率などの特性は特に限定されないが、たとえば、20GHzにおける誘電率は3.8以下が好ましく、3.4以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましい。20GHzにおける誘電正接は、0.0030以下が好ましく、0.0025以下がより好ましく、0.0020以下が更に好ましい。線膨張係数は100ppm/℃以下が好ましく、70ppm/℃以下がより好ましく、40ppm/℃以下が更に好ましい。吸水率は1.0%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.1%以下が更に好ましい。
【実施例0120】
以下、本開示を実施例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例においては特に言及しない場合は、「部」「%」はそれぞれ「質量部」「質量%」を表す。
【0121】
シート作製方法1(ペースト押出成形)
表3に示す割合でフッ素樹脂粉末(PTFE)と球状シリカを所定量計量し、ドライアイス存在下、ミキサーで混合した。混合中の温度は-10℃以下であった。
得られた混合粉末にオイル(IPソルベント2028)を18~23wt%添加し、混合し、5時間程度熟成させた。
熟成させた組成物を圧力3MPa条件で予備成形し、予備成形した成形体を40℃、50mm/minの条件で押出し、押出サンプルを得た。押出サンプルを2本ロールで圧延し(ロール間隙:500~80μmに設定)、膜厚125μmのサンプルを得、200℃、2時間乾燥し、360℃で、15分焼成することでシートを得た。
【0122】
シート作製方法2(粉体圧延成形)
表3に示す割合でフッ素樹脂粉末(PTFE)とシリカを所定量計量し、ワンダークラッシャーで室温中、メモリ6で30秒×2回攪拌した。得られた粉末を2本ロールで圧延し(ロール間隙:100μmに設定)、膜厚130μmのサンプルを得、360℃で、15分焼成することでシートを得た。
【0123】
なお、各実施例において使用した球状シリカは、アドマテックス社製SC6500-SQ(平均粒子径2.1μm)を原料として使用し、一部の実施例においては表2に示した表面処理を施したものである。実施例9の球状シリカはアドマテックス社製FE920D-SQ(平均粒子径5.8μm)、実施例10の球状シリカはアドマテックス社製20GA―C2(平均粒子径2.0μm)を使用した。
【0124】
なお、使用したフッ素樹脂粉末(PTFE)は、以下の性質を有するものである。
平均粒径:500μm
見掛密度:460g/L
標準比重:2.17
測定方法はASTM D 4895に準拠
【0125】
【0126】
【0127】
(エッチング)
樹脂層付銅箔(RO3003G2、NF-30)の銅箔を塩化第2鉄水溶液でエッチングして、流れる清水で2~5分間洗浄し、更に蒸留水で洗浄し、温度80±3℃の恒温槽中で約60分間乾燥し、単体の樹脂層を回収した。
【0128】
(比較例1)
市販の銅張積層板である、RO3003G2(Rogers社製)をエッチングし、樹脂層を得た。
【0129】
(比較例2)
市販の銅張積層板である、NF-30(Taconic社製)をエッチングし、樹脂層を得た。
【0130】
(評価方法)
(誘電率、誘電正接の測定方法)
室温25℃、湿度50%の条件でネットワークアナライザ(N5290A、キーサイト・テクノロジー社製)とファブリペロー共振器 Jバンド(220~330GHz)、Dバンド(110~170GHz)(FP-J、FP-D、EMラボ社製)を用いて、各周波数の比誘電率(Dk)、誘電正接(Df)を測定した。
結果を表4に示す。
【0131】
【0132】
表4より、実施例1~10の誘電体は、220~330GHzの周波数による比誘電率の差が小さく、このような誘電体は、銅張積層体にしたときに周波数毎に銅配線の配線幅を変更する必要ない。また170GHzの比誘電率の異方性が小さい誘電体を得ることができ、銅配線を直線以外にも自由に設計することが可能となる。
更に、220GHzの330GHzというそれぞれの周波数に対する誘電正接(Df)が低いものであることが好ましい。誘電正接が低いものを使用することで、220~330GHzの伝送損失が小さくなるので好ましい。